平成29年9月定例会 第10回岩手県議会定例会会議録

前へ 次へ

〇12番(工藤誠君) 創成いわての工藤誠でございます。今般、3度目の一般質問の機会をいただきました。
今議会は、知事、議員ともに4年任期の折り返し後、初の議会となります。この間、東日本大震災津波からの復興に取り組むさなか、台風第10号による大きな災害もありましたが、県民が一丸となって成功させた希望郷いわて国体、希望郷いわて大会の開催という後世に語り継がれるような出来事があった貴重な2年間であったと私は振り返っております。今後は、この経験を生かしながら、さらに思いを新たにし、一層気持ちを引き締めて議会活動に邁進したいと考えているところであります。
それでは、通告に従いまして順次質問させていただきます。
初めに、人口減少問題について伺います。
去る8月30日、秋田市で開催された北海道・東北六県議会議員研究交流大会において、先輩議員の御配慮により、岩手県の人口減少対策の取り組みについて発表させていただきました。この研究交流大会を通じ、それぞれの道県における総合戦略の内容、また、出生率の向上や子育て支援、若者の雇用の場の確保、女性の活躍支援などについて、それぞれが知恵を絞り、地域の特性を生かしながら取り組みを進めている状況を拝聴し、改めて人口減少問題について感じたところがありますので、県の今後の取り組みなどを伺いたいと思います。
本県の人口推計については、2016年の約127万人が2040年には日本創成会議の推計で88万7、000人、国立社会保障・人口問題研究所の推計では93万8、000人と、いずれも100万人を割り込む厳しい見通しであります。一方で、合計特殊出生率が人口置きかえ水準である2.07に回復し、社会減ゼロを達成した場合、104万人程度を維持することができると予測されていますが、その実現が容易でないことは今さら申し上げるまでもありません。
私は、2040年を一つの目途として考えた場合、あと23年という期間はそう長い期間ではないと考えております。また、この期間中においても確実に人口は減少していくわけであります。したがって、ふるさと振興総合戦略に基づく施策は、より迅速かつ効果的に進めなければならず、この総合戦略を進める上で、県、市町村、県民などがそれぞれどのような役割を担っているのかをしっかりと理解し、県民一丸となった取り組みとして展開していくことが重要であると考えます。
そのためには、公共交通、道路などのインフラ整備、農林水産業や商工業などの産業の形、福祉、医療、介護、教育などの各分野の姿が人口が100万人を割り込む2040年にどのようになっているのか、どのようにあるべきかを県がわかりやすく示し、その上で目標に向かって取り組むことが重要と考えますが、現在、知事の描く2040年の本県のグランドデザインとあわせて所感をお伺いします。
本県は、総合戦略の中で、特にも若者と女性の活躍支援に重点を置いているとのことであります。若者支援については、平成25年度からいわて若者会議を継続して開催しているほか、情報発信やコミュニティーづくりの場としていわて若者交流ポータルサイトコネクサスの運営や、本年7月には、若者の交流や活動を発信する語らいの場としていわて若者カフェを開設されました。また、女性の活躍支援についても、いわて女性の活躍促進連携会議を設置し、平成29年度はその中に5部会を設置して分野ごとの交流や研修会を開催しているほか、女性キャリアアップセミナー、男性のためのワーク・ライフ・バランスセミナーなどを開催しています。このような場を通じ、若者や女性から今後の岩手のあり方などを見据えてどのような意見が出されているのか、また、そうした意見を具体的にどのように今後の施策に反映していくお考えか伺います。
さらに、こうした取り組みを展開している本県は、若者や女性が大いに活躍できるフィールドであることを首都圏を初めとした県外に積極的に発信し、岩手に戻りたい、岩手で働きたい、岩手で暮らしたいという若者や女性のU・Iターンにつなげていくことが重要と考えますが、どのような今後の展開をお考えか伺います。
国土交通省と総務省の調査によると、2010年以降、いわゆる消滅集落が190カ所に上るとのことであります。今後さらに人口減少が進めば、まずは幹線道路や鉄道沿線から離れている小規模な集落から影響が出始め、各種行政サービスが受けられない状況が生じてきます。そして、その影響は徐々にまちの中心部においてもあらわれ、産業の空洞化や空き家の増加、そして地域の伝統行事が途絶えるなど、地域コミュニティーの低下につながっていくことは容易に想定されます。
このような縮小社会の到来に向け、今後、実効性のある施策を展開していくためには、県と市町村の役割分担と連携がより重要となります。県と市町村の役割分担や連携について、知事は、市町村長との意見交換を行うなどの中で、現状における課題をどのように認識した上で、地域コミュニティーが低下していくことへの対策をどのように講じていくお考えか伺います。
次に、県北振興について伺います。
人口減少問題と関連しますが、人口減少は県北圏域や沿岸圏域において大きく進行する状況にあります。ただし、沿岸圏域は東日本大震災津波の影響があり、今後の復興状況も見きわめなければなりませんので単純には比較できないことから、県北圏域を県央、県南の2圏域と比較してみますと、県北圏域においては、平成22年と平成27年の国勢調査に基づく人口は12万3、110人から11万5、007人と8、103人の減少、減少率は6.6%となっており、県央圏域1.0%、県南圏域3.5%の減少率と比較しても大きな減少率となっています。さらに、2040年の国立社会保障・人口問題研究所の人口推計では、県北圏域は7万5、196人まで減少し、減少率は約35%と見込まれており、県央圏域約20%、県南圏域約27%の減少率と比較して極めて厳しい状況になるものです。
こうした県北圏域の人口減少に歯どめをかける対策は、早急かつ大胆なものでなければならないと考えます。県北・沿岸振興本部長である副知事におかれては、県北圏域の人口減少の現状や将来推計をどのように受けとめておられるのでしょうか。これまでの取り組みとその課題認識、今後の具体的な施策とあわせてお示し願います。
各産業分野においては、まず、県北圏域の基幹産業である農林水産業が高齢化や担い手不足の影響から従事者が減少し、深刻な状況にあります。県北の農業といえば、ブロイラーを中心とする畜産、葉たばこ、高冷地野菜、そして果樹などの生産が盛んであると言われてきましたが、こうした分野はさらに伸ばしていく必要があります。一方で、農業の衰退に歯どめをかけていくためには新たな取り組みが必要と考えますが、今後どのような施策をもって県北の農業を成長させようと考えているのか、現在の取り組み状況とあわせてお示し願います。
製造業については、アパレル産業が活躍していることは雇用と地域経済に大きな貢献をしていると考えますが、過日、私が住む町に本社がある製パン工場が閉鎖したとの報道もあったとおり、企業を取り巻く環境は厳しく、若者が地元に定着するような新たな企業誘致が必要であります。
先般、商工文教委員会の県内調査で新工場建設が決まったデンソー岩手を視察し、今後の事業展開や約400人の雇用増に伴う対応について説明をお聞きしました。また、東芝メモリの半導体新工場の建設が決まるなど、新たな事業展開や雇用の増加、地域経済への貢献など、県南圏域においては明るい話題が出てきております。しかしながら、県北圏域における企業誘致は、二戸地区、久慈地区に拠点工業団地が整備されているものの一向に分譲率が上がっておらず、その先行きに明るい見通しが見えない状況にあります。
県は、平成29年度に新規の県北広域産業力強化促進事業費補助や企業立地促進奨励事業費補助の要件緩和を行っているところでありますが、さらに企業誘致を進めるための新たな制度の創設や、県南圏域の誘致企業の協力工場をふやすための技術支援についても施策を講じながら、企業誘致に積極的に取り組むべきと考えます。これまでの県北圏域における企業誘致の状況と、進展していない原因の分析、そして今後の具体的な取り組みについて伺います。
今後、県北圏域の定住人口が確実に減少していく状況にあって、これを補うため、交流人口をふやしていくことが大きな地域振興の柱になると考えます。例えば、御所野遺跡、天台寺、九戸城跡、漆や金田一温泉などに加え、最近では、アニメハイキュー!!の聖地などの観光資源を結びつけ、安比高原スキー場を訪れるインバウンドの観光客も取り込むことができればさらに効果が大きいと思われます。北海道新幹線の開業から1年半ほどになりますが、県北圏域の観光にどのような効果が出ているのか伺います。
また、震災被災地への修学旅行などの誘致やあまちゃん効果を生かした観光展開など、久慈地区と二戸地区を結びつけながら広域的に観光施策を展開していくことが必要と考えますが、これまでの取り組み内容や成果、今後の方向性についてあわせて伺います。
さらに行政面においても、まずは各市町村がみずからのまちづくりにしっかりと取り組む、その上で広域的に連携、協力し、互いによきところはさらに盛り上げ、不足するところは補いながら進むということではないかと考えます。特に県北圏域は、今後あらゆる面でさらなる広域連携が必要と考えますが、現時点で県はこの推進方策をどのように考えておられるのか、市町村間の連携の取り組みをどのように促し、支援する考えか伺います。
次に、ものづくり産業の振興について伺います。
新聞紙上では、連日のようにAIやIoTの記事が報道されています。車の自動運転はもとより、冷蔵庫が不足している食品を感知し、即座に注文してくれるなどといった生活環境が遠くない時期に訪れると思われます。こうした変革により、農業や建設業、医療、介護、福祉など、あらゆる分野の現在の取り組みを大きく見直していくことが求められてきていることも事実であります。
本県においては、県南圏域を中心に自動車、半導体関連産業の集積が進んでおりますが、AIやIoTの進歩が今後の産業振興施策にどのような変革、影響を及ぼすと分析されているのでしょうか。工業技術センターなどにおける取り組み状況、企業に対する技術支援や資金補助などの支援策の現状や今後の方向性とあわせてお示し願います。
過日、次世代を担うものづくり人材の育成と地域活性化についてをテーマに若者と県議会議員との意見交換会が一関工業高等専門学校で開催され、私も出席させていただきました。学生の皆さんから、地元に残って貢献したいが、希望する職種がない、都会に就職しても岩手に戻ってきたい、ベンチャービジネスがしたい、ILC誘致を進めて関係企業を誘致できればいいなど貴重な意見が出されました。また、商工文教委員会の所管事務調査では県立産業技術短期大学校も視察させていただきました。まさにこうした学校で学ぶ学生たちは、AI、IoT時代の中で今後の岩手のものづくり産業を背負っていく人材であり、このような人材をしっかりと地元に定着させていく必要があります。こうした学校で学ぼうとする地元の若者をふやしていくためには、現在の奨学金返還支援制度に加え、さらに地元就職を支援していく仕組みが求められると考えますが、今後のものづくりの人材の育成に向けた施策展開の方向性について伺います。
次に、IGRいわて銀河鉄道の今後の運営について伺います。
この第三セクター鉄道は、平成14年12月に開業し、ことしで15年目を迎えます。今から約30年前、盛岡以北の整備新幹線の着工に伴う並行在来線の経営分離反対運動があった中での第三セクター鉄道の設立、その後、沿線市町村による新駅の設置や駅舎の改修を初めとしたさまざまな支援など、実際に現場でかかわってきた者の一人として、現在、順調に運行されていることを感慨深く受けとめております。
こうした中、職員の不祥事や会計処理の不適正な事案が発生したことは極めて残念であり、今後、IGRが地域とともに歩む鉄道としてさらに発展していくことを願う観点から質問したいと思います。
不正事案の再発防止に向けて専務をトップとする業務改善プロジェクトチームが設置され、既に3カ月が経過しております。先週の取締役会において業務改善の状況報告もあったようですが、このプロジェクトチームによる具体的な検証結果や再発防止策などの検討状況について、公表時期やその方法などを含めてお示し願います。
また、平成25年から平成29年までの中期経営計画の本年が最終年となっており、既に次期中期経営計画の策定にも着手していると思われます。現時点において計画の評価と分析は行っているのか、また、今後どのような点に重点を置き、どういう持続可能な経営体制、そして施設整備に取り組んでいかれるのか、当面の収支見通しはどうなのか、沿線市町に新たな負担は生じないのか、あわせて伺います。
私は、今後、IGRが沿線住民の信頼を高めていくためには、地域貢献に向けた取り組みをさらに進めていくことが必要であると考えます。何よりも、IGRという鉄道は、県北振興に向けて交流人口を増加させていくために欠かすことのできないツールであります。IGRを利用して県北に人を集めるようなイベントを沿線市町と一緒に企画するような取り組みをさらに積極的に展開し、地域との一体感を高めていくことについて、現在の取り組み状況と今後の方向性について県の考え方も含めて伺います。
今後のIGRの運営を考えるとき、北斗星やカシオペアの寝台特急の運行廃止による減収や、トンネルや橋梁などの設備の老朽化対応に係る修繕費の増加、一方で、沿線市町において着実に進む人口減少、それに伴う利用者の減少など、極めて厳しい状況が予想されています。
しかしながら、IGRは、県北沿線住民の通学、通勤、通院など、生活の足、命の鉄道であります。将来にわたって何としても守っていかなければなりません。利用者の要望に配慮したダイヤ編成やサービスの向上、そして先ほども申し上げた地域貢献にも取り組みながら、地域や利用者に愛される鉄道として今後さらに発展していくことを強く願っております。
知事は、取締役会長として、また、筆頭株主である県の代表として、今後のIGRの運営について、どのように将来を見通した上で取り組んでいこうと考えておられるのか、その決意のほどをお聞かせください。
次に、県立高校の再編計画について伺います。
先般、前期5年計画の3年目となる平成30年度までの編成案が示されたところであり、これまでほぼ計画どおり学科の改編や学級減が進んでいると思います。前期計画の残り平成31年度、平成32年度においては、31校について校舎制による学校統合や学科改編、学級減が予定されており、平成32年度には現在の全日制課程63校が60校になる計画でありますから、実に半数に及ぶ学校が何らかの影響を受けることになります。
平成29年度の市町村要望においても、再編計画に関するものが11市町村から出されており、特に小規模校が存在する自治体から多くの要望が出されている状況です。前期計画のこれまでの進捗状況について、教育委員会はどのように評価されているのか伺います。
また、市町村から高校教育の充実を求める要望も多く出されていると思います。学級減を含めた高校再編計画に対する要望について、どのような対応を示してきたのか伺います。
今後、後期計画が平成33年度からの5カ年計画として策定されるわけであり、来年度の後半には計画策定に着手されるとのことです。まずは前期計画の着実な実行が優先されるものではありますが、平成36年4月の高校入学者数が9、986人と1万人を割り込む見込みとなっていることからも、かなり思い切った計画が策定されると予想されます。後期計画における県立学校の配置、高校教育のあり方について、現時点でその方向性をどのように考えているのか伺います。
特に、現在の農業高校3校、工業高校7校、商業高校3校、水産高校1校などの専門高校のあり方について、そのままの校数で維持されるのか、志願者が減少すれば、学科として存続させ、他の高校と統合することがあるのか。他県の取り組み状況の事例なども調査されているのであればあわせてお示し願います。
最後に、縄文遺跡群の世界遺産登録について伺います。
一戸町の御所野遺跡を含む北海道・北東北の縄文遺跡群の世界遺産登録の取り組みにつきましては、ユネスコへの国内推薦を得るべく、実に5度目の挑戦をいたしましたが、今回も見送りとなりました。極めて残念であります。しかしながら、縄文遺跡群世界遺産登録推進本部の副本部長である知事、そして教育長の御努力、また、県議会全議員から成る北海道・北東北の縄文遺跡群世界遺産登録推進議員連盟の御支援に心から感謝申し上げますとともに、既に6度目の挑戦に向けた取り組みがスタートしているわけであり、さらなる御努力、御支援をいただきますようお願い申し上げるものであります。
国の文化審議会世界文化遺産部会の記者会見では、推薦書について、北海道・北東北の地域文化圏という新しい視点での説明についてはかなり前進したが、世界的な価値をさらにわかりやすく説明することが必要であるという指摘がなされております。県では、文化審議会から示された課題をどのように分析しているのか、また、今後、推薦書を改訂していくに当たって、どのような視点から課題を克服していく必要があると考えているのか、新たな視点を含めて伺います。
また、新聞報道では、先送りの原因は登録戦略の問題であって、縄文文化自体には世界遺産としての価値が十分にあると述べられていました。まさに私も同様に考えます。これまで見送りのたびに当局は課題の解決に取り組むと言うだけの姿勢できました。しかし、その結果が5度の見送りになっております。この現実を解決していくためには、根本的な戦略の見直しが必要ではないかと思うものであります。すなわち、この膠着した状況を打破できるのは、平泉を世界文化遺産に登録した実績を持つ岩手県が縄文遺跡群世界遺産登録推進本部の事務局を担う青森県に対して取り組み戦略の見直しをしっかりと提言し、議論をリードする役目を担うべきだと強く思います。知事は、縄文遺跡群世界遺産登録推進本部の副本部長として、本部長である青森県知事に対して、構成資産の見直しなどを含めた推薦書作成のあり方など根本的な戦略の見直しについて早急に意見交換を行うなど、知事みずからが積極的にかかわっていくべきと考えますが、御所見をお伺いします。
また、8月31日には北海道・北東北知事サミットが開催され、4道県がこの問題についてさらに連携強化を図っていくことを確認したということでありますが、新たにどういう連携強化策を考えておられるのか具体的な内容をお知らせいただきたいと思います。
機運の醸成について伺います。
今回、国内推薦が決まった百舌鳥・古市古墳群では、近畿圏に展開する銀行のATMの初期画面を古墳のPR画面とすること、山手線1編成11両の車両を借り切って車体広告を載せるなど、機運の醸成に対する取り組み方が大胆で、かつ民間企業とも連携しながら取り組んできています。
また、御所野遺跡は、北海道・北東北の縄文遺跡群の南のゲートウエーになれるものです。ここを起点として、八戸市の是川遺跡、青森市の三内丸山遺跡、また、鹿角市の大湯環状列石につなげるため、御所野遺跡にインフォメーションセンターを整備し、御所野遺跡の紹介や県内の世界遺産である平泉や橋野鉄鉱山などの文化財の紹介もあわせて行うことができれば、さらに大きな機運の醸成につながることが期待されます。岩手県もフォーラムの開催、パネル展や世界遺産授業の実施に取り組んでいますが、官民挙げての大胆な機運の醸成に取り組む必要があるのではないでしょうか。新たな機運の醸成にどのように取り組むお考えか伺います。
来年度、国内推薦がかなえば、2年後の2020年のユネスコ世界遺産委員会においては必ずや登録が果たせると確信しております。そして、この年は、復興五輪として東京オリンピック・パラリンピックの開催年となります。東京オリンピック・パラリンピックは、スポーツの祭典ではありますが、日本文化を世界に発信する機会としても重要な意味を持つものであります。東日本大震災からの復興を果たす日本を、東北の姿を世界に発信できるとともに、三つの世界遺産を持ち、漆や南部鉄器など、岩手県ならではの魅力を世界に向けてさらに高める機会であります。ラグビーワールドカップ2019釜石開催の成功とあわせて、岩手県に新たな文化、スポーツの歴史が刻まれ、希望郷いわての実現、さらには幸福度の構成要素の一つになると確信しております。その意味でも、関係者の皆さんには、ぜひとも6度目の挑戦では国内推薦をかち得るよう、今度こそではなく、今度で必ず決めるという強い意思を持って取り組まれるよう一層の奮起を期待することを申し上げ、私の質問を終わります。
なお、答弁によっては再質問をさせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 工藤誠議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、2040年のグランドデザインについてでありますが、岩手県人口ビジョンでは、岩手県ふるさと振興総合戦略の三つの柱である岩手で働く、岩手で育てる、岩手で暮らすに基づく取り組みを県民総参加で進めることにより、出生率の向上と社会減ゼロを実現して、2040年に100万人程度の人口を確保することを展望しています。
総合戦略では、こうした展望の実現に向けて10のプロジェクトを掲げ、それぞれの分野ごとの現状と課題、具体的な取り組みや成果目標、県、市町村、関係団体等の役割など、ふるさと振興の目指す方向性等を示しています。
このようなふるさと振興の先にある2040年の本県の姿として、子供からお年寄りまで、あらゆる世代が生き生きと暮らしている岩手、県外とつながり、新しい発想にあふれている岩手、若い世代を初めとする多くの人々が集い、イノベーションが創出され、活力ある地域社会が形成されている岩手を目指しており、これに向けて全力で取り組んでまいります。
次に、地域コミュニティーの対策についてでありますが、人口減少や高齢化の進展により、地域コミュニティー機能の低下が懸念されており、市町村においても地方創生の重要な課題の一つとして、地域コミュニティー活動の支援や担い手の育成などが挙げられています。
地域コミュニティーへの支援は、住民に身近な市町村の役割が基本と考えておりますが、地域を衰退させないためには、こうした課題に、県としても市町村と連携しながら対応していくことが必要と認識しています。
このため県では、地域で抱えている課題に主体的に取り組む団体を元気なコミュニティ特選団体に認定し、優良事例の普及啓発に取り組んでいますほか、地域おこし協力隊などの活用促進やセミナー等の開催、移住定住のモデル的な活動を行う地域コミュニティー団体への補助、地域公共交通ネットワークの構築に向けた市町村への補助など、さまざまな取り組みを行っておりまして、今後も、市町村と連携しながら、地域コミュニティーの活性化に取り組んでまいります。
次に、今後のIGRの運営についてでありますが、IGRは、開業以来、自社が起こした事故もなく安全・安定運行を確保してきたほか、平成23年度からの貨物線路使用料制度の改正以降、財務上も内部留保を積み増しながら経営強化を図ってきたところであります。沿線人口の減少などの環境変化に対しても、新駅の設置を初め、旅客営業の強化などにより、収益確保のための取り組みを着実に進めてきたものと考えております。
また、将来見込まれる車両更新などの大規模な設備投資に対しては、県と沿線市町が経営安定化基金に毎年一定額を積み立て、これを支援することとしているなど、県、沿線市町が一体となってその経営を支えているところであります。
今後も、沿線人口の減少や施設老朽化による修繕、設備更新の増加など、IGRの経営を取り巻く環境は厳しさを増していくものと認識しておりますが、本県の生活路線として重要な役割を果たすIGRに対しては、一層の経営の効率化を求めるとともに、県、沿線市町、IGRが、引き続き一体となって安定経営のための取り組みを進め、地域に貢献する県民鉄道として将来にわたり鉄路を維持してまいります。
次に、縄文遺跡群世界遺産登録推進本部の副本部長としてのかかわりについてでありますが、御所野遺跡という重要な資産を有する岩手県の知事として、これまで推薦書素案作成や国への働きかけなどに主体的にかかわり、本年7月の文化審議会の国内推薦の審議に向けては、昨年12月に行われた国会議員連盟による現地視察や、4月の世界遺産登録推進総決起大会などにも直接出向き、関係道県の知事等と一体となった活動を展開してきたところであります。
今回の文化審議会の審議において、残念な結果となりましたが、一方では、北海道・北東北の縄文遺跡群を地域文化圏として再構築したこと等について評価され、新しい光が見えてきており、このような動きを加速させるため、現在、4道県知事等による推進本部会議をできるだけ早期に開催し、今後の推薦書素案改訂のあり方などについて議論したい旨、本県から働きかけているところでありまして、今後においても、できる限りのかかわりを果たしてまいります。
次に、早期登録に向けた連携強化策についてでありますが、8月の北海道・北東北知事サミットにおきましては、北海道・北東北の縄文遺跡群は、狩猟、採集、漁労を基盤として定住が開始、発展、成熟した縄文文化を今に伝える人類共通の遺産として普遍的な価値を有するものであることの再確認や、世界遺産登録の早期実現に向け、来年度こそユネスコへの推薦を得られるよう、推薦に向けた諸課題の解決に加えて、機運の醸成についても、これまで以上に4道県及び関係市町が連携を図り、全力で取り組んでいくことを確認したところであります。
新たな連携強化策については、縄文遺跡群世界遺産登録推進本部に8月に設置したプロジェクトチームにおいて、17資産の各自治体の担当者と専門家による複数回の議論の場を設け、文化審議会から示された課題の解決を図り、推薦書素案のブラッシュアップに取り組んでいくこととしたところであり、また、各道県主催の縄文フォーラムでのテーマを統一することや、個々の遺跡で17資産全体の説明を行う案内板を設置することなどでも合意いたしました。
4道県関係自治体での連携をこれまで以上に強化し、来年度こそという思いで、国内推薦が得られるよう努力してまいります。
その他のお尋ねにつきましては副知事及び関係部長から答弁をさせますので、御了承をお願いします。
〔副知事千葉茂樹君登壇〕
〇副知事(千葉茂樹君) 県北圏域の現状認識等についてでありますが、県北圏域では、議員御指摘のとおり、これまで県平均を上回るスピードで人口減少が進み、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口においても厳しい見通しが示されておりますことから、県においては、県北・沿岸振興本部を中心に、若い世代の定着等に向け、産業振興の取り組みを重点的に進めてきたところであります。
具体的には、これまで地域の特徴的な産業振興の取り組みとして、ブロイラー産業を初めとする食産業の振興やアパレル産業の認知度向上につながる情報発信、農業分野における冬恋などのブランド果物の販路拡大を推進したことに加え、地域産業の中核となり得る企業の誘致や、その業容拡大の支援を進めてきているところであります。
こうした取り組みを積み重ねてきたことにより、県内外からの注目度が高まり、企業取引の拡大にもつながっておりますほか、ブロイラー産業においては、国内最大規模となる工場が竣工するなど、業容拡大も進み、雇用の創出にもつながっていると考えております。
しかしながら、現在の有効求人倍率の高どまりにより雇用確保が難しくなってきており、今後、人口減少の進展に伴い、さらなる労働力不足が懸念されますことから、若者の地元定着や女性の活躍の場を広げる取り組みを一層推進する必要があるものと考えております。
このような認識のもと、今後、県北圏域では、現在全県的に進めております取り組みや、これまで県北圏域で進めてきました取り組みに加え、県北圏域の企業誘致等を推進するため、今年度創設いたしました新たな補助制度や企業立地補助制度の要件緩和措置の効果的な活用、農業への新規参入を促進するため、県北圏域の特性を生かした収益性の高い品目の導入やスマート農業など新技術の導入、国内漆関連産業の一大産地形成に向けた漆の生産拡大や漆製品の高付加価値化などとともに、御所野遺跡や天台寺など、地域の特徴的な観光資源を生かした交流人口の拡大にも取り組むなど、県北圏域独自の取り組みを一層強化してまいります。
県北振興に当たりましては、これまで以上に、市町村を初め、関係団体、企業等の連携を強化しつつ、全庁挙げて取り組んでまいります。
〔環境生活部長津軽石昭彦君登壇〕
〇環境生活部長(津軽石昭彦君) まず、若者や女性からの意見等についてでありますが、今年度実施したいわて若者会議では、よりよい岩手の未来を創るというテーマで、各地域で活躍する若者からの発表があったところであります。
若者からは、移住者の交流会や移住体験ツアーなどの移住定住支援やリノベーションによる遊休公共施設の積極利用、県外の企業、団体も岩手の圏域として見る新しい考え方など、人口減少の克服や新たなまちづくりについて、若者らしい意欲的な提案があったところであります。
また、いわて女性の活躍促進連携会議では、各分野別の部会から、岩手は、交通渋滞も少なく、都会にはない働きやすさや暮らしやすさがある。また、特定分野だけではなく、さまざまな分野の女性の後継者や経営者ともっと交流がしたいなど、それぞれの状況に応じた意見があったところであります。
今後、このような意見を関係部局とも共有し、より効果的な若者、女性支援施策に反映してまいりたいと考えております。
次に、県外発信についてでありますが、岩手の若者、女性が生き生きと活躍している姿を県内外にアピールすることは、ふるさと振興にも大きく寄与するものと考えております。
このため、インターネットやSNSの利用率の高い若者、女性向けには、交流ポータルサイトコネクサスや岩手への定住等専用ホームページであるイーハトー部に入ろうなどで、本県の魅力や移住者が活躍する姿を紹介するとともに、いわて若者会議、いわて若者文化祭などでの活発な意見交換やパフォーマンスを動画配信するなど、県外への情報発信に努めているところでございます。
このほか、首都圏でも集客が多いフォーラムやイベントへのブース出展や、いわて若者会議の首都圏開催など、岩手の魅力を実感していただけるような工夫をしてまいります。
今後も、関係部局とも連携しながら、さまざまな方法で岩手の魅力や可能性を積極的に発信し、若者、女性の移住、定住にもつなげてまいりたいと考えております。
〔農林水産部長紺野由夫君登壇〕
〇農林水産部長(紺野由夫君) 農業の今後についてでありますが、県北地域の基幹産業である農業を成長させていくためには、新品目の導入による経営規模の拡大や、機械化体系の導入等により生産性の向上を図るとともに、地域の特色ある農産物のブランド化や高付加価値化等の取り組みを推進していくことが重要であります。
このため県では、県北地域に適した主食用米品種の開発や、冬期間における菌床シイタケ等の導入による周年生産体系の構築、高い収益の確保が見込める春まきタマネギの品種選定と機械移植技術の確立、リンゴの冬恋のブランド化、エゴマを活用した商品開発への支援などの取り組みを進めているところであります。
こうした取り組みに加え、今後は、さらに収益性の高い農業を実現するため、施設園芸における作物に最適なCO2濃度等を整える環境制御技術の導入、無人走行トラクターや搾乳ロボットによる作業の省力化、クラウド上で圃場単位の収支や作業履歴等を管理する営農支援システムの導入など、ICT等の先端技術を活用したスマート農業を推進し、県北の地域経済を支える農業が、将来にわたって持続的に発展するよう取り組んでまいります。
〔商工労働観光部長菊池哲君登壇〕
〇商工労働観光部長(菊池哲君) まず、県北振興に係る企業誘致についてでありますが、県ではこれまで、食産業や電子部品産業、造船業など、地域産業の中核となり得る企業の誘致や誘致企業の業容拡大に取り組んできた結果、平成23年度から現在までで、新設が9件、増設が6件となっております。
特に、平成28年度には医療用機械器具製造企業が立地を決定し、将来の二次展開など新たな産業の集積も期待されるところであります。また、昨日は、国内最大規模となるブロイラー加工工場が竣工し、県北地域における主要産業の今後ますますの成長が見込まれるところでございます。
企業の進出決定に当たっては、工場用地や交通アクセス、エネルギー、上下水道などのインフラに加え、関連産業の集積状況とその技術力等のいわゆる地域産業力を総合的に判断して決定されるものと捉えておりまして、各市町村におかれましても、今年度創設した補助制度を活用し、地域の産業力の強化を進めるほか、県北圏域に立地している企業の取引先等への誘致活動を強化していただくこととしておりまして、さらには、最近の取り組みが進み、県南圏域の企業との取引開始に向けた動きも出始めておりますことから、引き続き市町村や関係機関と連携して取り組んでいくこととしております。
次に、県北圏域における広域観光についてでありますが、まず、北海道新幹線開業による効果については、昨年の観光入り込み客数は、台風第10号などの影響により前年を約10%下回りましたが、本年においては、例えば、夏休み期間における7月25日から8月17日までの新幹線二戸駅における乗降客数は、開業前の一昨年同期に比べ約2%の増となっており、観光入り込み客数の増加を期待しているところでございます。
次に、広域的な観光振興施策の展開についてですが、馬仙峡や久慈琥珀博物館など県北広域をめぐるモデルルートをPRすることで、二戸駅を玄関として、御所野縄文公園や小袖海岸などを周遊するバスツアーの運行を支援するなど、広域的な誘客拡大に取り組んでまいりました。
その中でも、特に自然や歴史文化、体験型コンテンツを広域的に組み合わせた教育旅行の誘致に力を入れてきたところでありまして、昨年の教育旅行客の入り込みは、震災前の平成22年に比べ約76%増加したところでございます。
今後におきましても、三陸鉄道の一貫経営や(仮称)三陸防災復興博、ラグビーワールドカップ釜石開催を契機に、欧米に特に訴求力のある縄文文化を代表する御所野縄文公園を初め、浄法寺塗などの伝統文化も組み合わせた広域観光を国内外に売り込み、誘客拡大を図ってまいります。
次に、人工知能やモノのインターネットの進歩とものづくり産業の振興についてでありますが、まず、AIやIoTなどの先端技術がもたらす影響等についてですが、AIやIoTなどの先端技術は、ものづくり企業の生産性向上のみならず、農業分野、医療、介護分野等における利活用など対象となる領域が広範にわたることから、ものづくり産業だけではなく、さまざまな異業種と連携した新製品、新サービスの開発や新産業の創出などの多角的な視点での産業振興施策が必要になるとの認識を持っております。
次に、工業技術センターの取り組み状況についてですが、県内ものづくり産業の技術開発拠点という機能を生かし、企業や他の試験研究機関と連携し、例えば、農業分野におけるIoTによる栽培管理システムの開発など、先端技術を活用した研究開発に取り組んでいるところでございます。
次に、企業に対する技術支援策等の現状についてですが、県においては、産学官連携により行うAIを搭載した農作業用ロボットの開発支援など技術開発の支援や、いわて戦略的研究開発推進事業などによる資金面での支援を行っており、このような先端技術を活用した連携は、今後のILC関連産業への展開にもつながるものと認識しております。
最後に、今後の方向性についてですが、県においては、こうした先端技術を活用し、新製品開発や新産業創出を進めるため、ものづくり企業に対しまして、国の大型補助制度の導入や融資制度の積極的活用を促すほか、ILC関連産業への展開を見据えた研究開発の支援について対応してまいります。
次に、ものづくり人材の育成についてでありますが、県内の工業高等専門学校や産業技術短期大学校等に意欲的に学ぼうとする地元の若者をふやしていくためには、まずもって、ものづくりに対する興味の醸成が必要であり、特に小学生から高校生までの各段階に応じたものづくり教育やキャリア教育の実践が重要であると認識しております。
このため、産業界と行政が一体となった地域ものづくりネットワーク等が実施する小・中・高生や教職員等を対象とした工場見学や地元企業による出前授業などを展開しているところでございます。
さらに、地元就職の促進に向けては、いわてで働こう推進協議会による取り組みに加え、インターンシップや企業技術者による技術講習会、就職ガイダンスや企業面接会の開催、県の就職情報サイトを通じた企業情報の発信など、各種の支援策を講じているところでございます。
こうした取り組みにより、次世代を担うものづくり人材が着実に育成され、県内に定着するよう、今後とも関係機関等と一体となって取り組んでまいります。
〔政策地域部長藤田康幸君登壇〕
〇政策地域部長(藤田康幸君) 市町村の広域連携についてでありますが、ライフスタイルの多様化などによりまして、市町村の枠を超えた広域的な対応が一層重要になると認識しております。
このため、二戸地域では、雇用問題への広域的な対応として、県や市町村、関係団体で構成する協議会が、国の実践型地域雇用創造事業の採択を受けまして、雇用の確保や求職者の人材育成などに取り組んでいるところでございます。
また、県では、市町村間の連携を促進するため、今年度、地域経営推進費の市町村事業に広域連携事業を新設いたしまして、県北圏域におきましては、二戸地域の4市町村が連携した地域の魅力を伝えるいわてカシオペアブランド発掘・発信事業を採択したところでございます。この事業では、二戸地域の観光資源や特産品の戦略的な情報発信、観光体験ツアーのほか、プロジェクトチームによる新たな広域連携施策の立案などに取り組むこととしているところでございます。
県といたしましては、今後も広域的な視点から、地域の課題に対し、市町村と一体となって取り組んでまいりたいと考えております。
次に、不正事案の再発防止についてでございますが、IGRにおきましては、6月に専務取締役をトップとする業務改善プロジェクトチームを設置いたしまして、業務の適正化、合理化、効率化等の視点に立った取り組みを進めているところでございます。
このプロジェクトチームにおきましては、9月末までに6回の検討会議を行っておりまして、着服不正事案発生後に実施した全社緊急総点検なども踏まえつつ、信頼回復や業務効率化、情報共有の推進や社内の一体感醸成といった方策を検討しているところでございます。
IGRでは、この検討結果がまとまり次第、取締役会に報告した上で、ホームページで公表していく予定であると承知しております。
次に、中期経営計画の策定についてでありますが、現行の中期経営計画は、平成25年度に策定した10年間の新・経営ビジョンの経営理念や経営目標を達成するために前期5年計画として定められたものでありまして、現在、IGRでは、その評価、分析を行っているところでございます。
次期中期経営計画の策定に向けては、新・経営ビジョンに掲げる経営目標を達成することを基本として、県や沿線市町による経営への参画や支援、貨物線路使用料や国庫補助の制度を活用した計画的な設備更新などによりまして、安定的な経営が確保されるよう、現行の計画の評価、分析とあわせて検討が行われているところでございます。
IGRでは、現段階では、当面の収支見通しは分析中とのことでありますが、モータリゼーションの進展や人口減少などによりまして、今後の運営は厳しさを増している中、沿線市町等に追加的な財政負担が生じないよう、実効性ある次期中期経営計画の策定に向けた取り組みを支援してまいりたいと考えております。
次に、IGRの県北振興への役割についてでありますが、IGRでは、県北地域の沿線市町や住民などと連携した地域活性化や交流人口の拡大に取り組んでおりまして、例えば、本年6月に一戸町と連携して企画した奥中山高原をめぐるウオーキングイベントでは、IGRの利用などによりまして約200名の方々が参加し、好評であったと聞いております。
また、岩手川口駅の駅舎の改築に当たりましては、地元自治会と意見交換を重ねた上で、特産のキャベツをイメージしたデザインにするとともに、地域の展示交流機能も兼ね備えた設計にするなど、地域との一体感の醸成に努めているところでございます。
今後とも、沿線の持つ魅力や資源、地域のアイデアなどを生かし、IGRを活用したさまざまな交流機会の創出や情報発信などが図られるよう、県としても、沿線市町と連携してIGRの取り組みを支援してまいりたいと考えております。
〔文化スポーツ部長上田幹也君登壇〕
〇文化スポーツ部長(上田幹也君) 縄文遺跡群の世界遺産登録に向けた機運醸成についてでありますが、県では今年度、平泉と橋野鉄鉱山の二つの世界遺産とあわせて縄文遺跡群をPRすることにより、縄文遺跡群の貴重な価値や世界遺産登録の意義の浸透を図るなど、広く県民の機運醸成に取り組んでいるところであります。
具体的には、県内イベントにおいて世界遺産ブースを出展し御所野遺跡をPRしたほか、今月から御所野遺跡、平泉、橋野鉄鉱山のそれぞれのコースを設定し、スタンプラリーを実施するとともに、縄文フォーラムに加え、JR東日本と連携し、縄文遺跡群や県内世界遺産に関するパネル展を開催することとしております。これらの取り組みに加えまして、縄文遺跡群世界遺産登録推進本部では、ユーチューブによる動画配信や全国紙を活用した広告を展開するなど、首都圏を初め全国に向けてプロモーションを行っているところであります。
今後におきましても、推進本部や青森県を初めとする関係自治体、さらには企業等とも連携し、さまざまな媒体を活用しながら縄文遺跡群の世界遺産登録に向けた機運醸成に取り組んでまいります。
〔教育長高橋嘉行君登壇〕
〇教育長(高橋嘉行君) 新たな高校再編計画前期計画の評価についてでありますが、新たな県立高等学校再編計画は、望ましい学校規模の確保による学びの質の保証と、本県の地理的諸条件等を踏まえた学びの機会の保障を大きな柱に、昨年3月に策定したことは御案内のとおりであります。策定に当たりましては、統合対象校の所在する市町村の首長の方等からの要望、地域説明会等でいただいた多くの県民の皆様からの御意見等をできる限り反映させるよう努めたところであり、総体的には一定程度の御理解をいただいているものと認識いたしております。
県教育委員会といたしましては、再編計画の推進に当たり、まずは平成28年度から5年間の前期再編プログラムを着実に実施することが重要と考えており、毎年度の中学校卒業予定者数や各高校の入学者の状況等を把握し、関係者との意見交換を行いながら、おおむね計画に沿った学科改編等を進めることができていると考えております。
今後におきましても、各市町村における地方創生に向けた取り組みの推移や入学者の状況等を十分見きわめた上で、統合や学科改編の時期などについて丁寧に対応してまいります。
次に、再編計画に対する要望への対応についてでありますが、再編計画においては、本県高校教育のより一層の充実を図り、知、徳、体を備え調和のとれた人間形成、地域に根差した産業や今後の岩手の復興、発展を支え、ふるさとを守る人材の育成に取り組むことといたしております。
各市町村からは、高校の存続や学校規模の維持、高校の魅力化を図るための連携等さまざまな要望をいただいているところでございますが、再編計画策定後、平成28年度には、県内全市町村、全公立高校を訪問し、再編計画の考え方、今後の進め方等について意見交換を行ったところであり、本年度におきましても、前期計画に関係する市町村等との意見交換を行い、高校教育の充実に努めているところでございます。
少子化が進む中で、各市町村では、再編計画等を一つの契機として、地域における高校の魅力化の向上と入学者の確保等に向けた取り組みが進められているところであり、県教育委員会といたしましては、各市町村の地方創生の取り組み等をも踏まえつつ、適切な対応に努めてまいります。
次に、後期計画の方向性についてでありますが、後期計画の策定におきましても、新たな再編計画の基本的な考え方である、望ましい学校規模の確保による教育の質の保証と、本県の地理的諸条件等を踏まえた教育の機会の保障の観点は極めて重要であると考えております。
今後におきましても、中学校卒業予定者数は大幅な減少が見込まれており、仮に高校への入学者数の状況がこれまでの推移と同様の傾向で進むとすれば、後期計画ではさらなる統合や学級減の検討は避けて通れないものと考えております。
専門高校においては、専門分野の知識と技術を確実に習得し、地域産業を支え、さらには岩手の復興やふるさと振興に寄与する担い手を育成することなどが重要であると考えてはおりますが、他県では、小規模校において、専門教育の充実を図るため、複数の専門分野の学科を合わせ一定の規模を確保する高校を設置する動きなどが見られるところであり、本県におきましても、各専門分野の核となる専門高校の一定規模の確保とともに、専門分野の教育の質や機会を保障するための専門学科の機能の維持等についても検討することといたしております。
後期計画の検討に当たっては、各専門高校の状況、ブロックの配置等も考慮しながら、地域の産業構造や人材ニーズ、産業振興の方向性等を踏まえ、配置のあり方等について多面的な検討を行ってまいりたいと考えております。
次に、縄文遺跡群に対する文化審議会から出された課題への対応についてでありますが、その分析については、現在、縄文遺跡群世界遺産登録推進専門家委員会の各委員からの意見等を聞きながら4道県で分析中でありますが、昨年度示された課題についての対応は進んできたものと理解しているところでございます。特に、北海道・北東北という地域文化圏で顕著な普遍的価値を説明しようという新たな視点と、個々の遺跡の解説に充実が見られたことなどについては、文化審議会からもこれまでにない評価がなされたものと実感しているところでございます。
今年度における推薦書素案の改訂においては、世界遺産登録の実現に向けて、地域文化圏という新たな視点で北海道・北東北の縄文遺跡群の優位性、特異性等を他の地域文化圏と比較研究しながらさらに明確にしていくこと、各構成資産が全体としての価値に貢献している理由などについて一層充実した内容にしていくことなどについて、関係道県などとの十分な連携のもとに、文化庁や専門家委員会の助言をも得ながら一層のブラッシュアップに努めてまいります。
〇12番(工藤誠君) 御答弁ありがとうございました。
何点か再質問させていただきます。
初めに、人口減少問題についてでありますけれども、この問題は非常に大きな難しい問題であると思っておりますし、すぐに効果の出る対応策はなかなかないのが現状ではないかと思います。また、地方創生というものは総合戦略期間である5年間でなし遂げられるものではないと誰もが承知しているところでありますし、人口減少問題への対応は100年かかるというお話をされている方もおられます。
しかし、このまま地方が衰退していくことは、すなわち国が衰退する、国力が衰退することにつながると私は思っております。地方創生は国の創生であるとも思っています。この取り組みを地方だけの取り組みに終わらせるのではなく、国が積極的に取り組んでこそ地方が頑張れると思います。そのためには、人口減少対策の各種施策の展開に当たって、国は財政的支援策などを積極的に行うべきと私は考えますけれども、現状はどのような支援制度になっているのか。また、そういうことから、課題をどのように把握しているのか。さらに、今後において、県はどのようなさらなる財政的支援策などが必要であると認識されているのか伺いたいと思います。
次に、県北振興についてでございますけれども、先ほども触れましたが、企業誘致はなかなか進まず、ましてや先端産業の誘致などは非常に厳しい状況であります。一方で、県南圏域では自動車、半導体関連産業における人材確保が課題ともなっております。もちろん県北圏域への企業誘致が進むことを一番に望むものではありますけれども、広い県土を有する本県において、それぞれの圏域が抱える課題も少しずつ違っていると考えております。
こうしたとき、私は、県北に住む若い人たちが地元にも生活拠点を残しながら県南の企業に就職することに何らかの支援をしていくことが必要ではないかと考えております。例えば、週末に地元に戻るための交通費や県南に住む場合の住居費、単身赴任手当のような企業側の助成に県や市町村が上乗せして支援する仕組み、また、地元行事に参加するための休暇制度の創設などを企業に働きかけるような何らかの新しい視点の取り組みを県が仕掛けていってもいいのではないかと考えておりますので、その所見をお伺いしたいと思います。
また、県北圏域は、御案内のとおり、八戸地区との交流が古くから今日も続いております。この青森県南地区の大都市である八戸市との交流をさらに進めることは、県北圏域にとって、雇用の場の確保や観光振興のほか、医療や福祉分野、さらには日常生活の利便性の向上においても大きなメリットがあると考えます。八戸市を初めとした青森県南地区との交流、連携について、これまでの取り組み内容や成果、また、今後どのような分野で連携、協力の可能性を考えているのか伺いたいと思います。
次に、県立高校の再編についてでありますが、地域にとって、県立高校は極めて大きな存在でございます。しかしながら、中学校卒業者が減少することも事実でありますけれども、出生数そのものが減少している現状にございますので、地域としても現実をしっかりと受けとめなければならないと思っております。
高校再編計画は着実に進めていかざるを得ないとは思いますが、広大な県土を持つ岩手県ゆえに、次の時代を担う人材を育てる高等教育を均等に受けられる環境をいかに整えていくか、こういうことの責任は重大だと考えております。そして、そういう環境を整えていくためには、地域との連携が極めて重要であると考えます。前期計画の推進や後期計画策定に当たって、高等教育を均等に受けられる環境構築に向けた基本的な考え方、また、地域との連携の進め方をどのように考えているか伺いたいと思います。
次に、縄文遺跡群の世界遺産登録についてでございますが、4月26日に開催された縄文遺跡群世界遺産登録推進総決起大会には、推進連盟の国会議員を初め、4道県知事、4道県議会議員など多くの関係者が出席されました。知事、そして教育長も御記憶されていると思いますが、当日はたまたま修学旅行で東京に来ていた函館市立潮光中学校の皆さんも出席されました。そして、生徒会長の高田もえさんが、私たちの住む函館や戸井地区にも縄文遺跡がある。ほかの世界遺産に比べて派手さはないかもしれないが、古代の人の暮らしぶりに触れることのできる縄文遺跡の魅力を知ってもらいたい。世界遺産に登録されることで適切な管理、保護がなされ、後世に伝わってほしいという思いを話されました。本当にすばらしいお話であったと私は思います。このように、若い世代においてもたくさんの応援の輪が広がっています。
しかしながら、我々はあくまで応援団であります。根本の問題は推薦書の中身であり、戦略をどう構築していくかということでございます。さらに、その戦略を推進していく取り組み体制の充実も必要となります。教育委員会は、現在の取り組み体制は十分であると認識されているのか。専門職員が不足しているのであれば、新たに採用する。また、知事部局に対して、その充実、例えば縄文遺跡関係は教育委員会、平泉の拡張登録関係は文化スポーツ部と分かれていますが、一本化が必要であれば、そういうことも含めてしっかりと求めていく必要があると思いますが、教育長の所感を伺います。
〇政策地域部長(藤田康幸君) まず、人口減少対策についての国の財政措置についてでございますけれども、国におきましては、地方創生、人口減少対策のための財源といたしまして、今年度の地方財政計画にまち・ひと・しごと創生事業費を1兆円計上しているほか、地方創生推進交付金を1、000億円計上するなどの措置を講じているところでございます。
人口減少は、その要因や課題が地域ごとに大きく異なりますことから、地域の実情に応じて地方の自主性や主体性が最大限に発揮できる十分な財源の確保が不可欠であるほか、地方の実情を踏まえたより弾力的な運用が可能となる制度でなければならないと認識しておりまして、県といたしましては、全国知事会とも連携しながら、そのような制度改善につきまして国に対して強く求めているところでございます。
また、本県では、県外に転出する社会減が毎年3、000人から4、000人程度で推移しておりまして、そのうち18歳から22歳前後の間に集中している現状がありますことから、全国知事会とも連携いたしまして、地方大学の活性化などについても国に対して強く求めております。その結果、国におきましては、来年度の概算要求で地方大学の活性化として120億円が新規に要求されているところでございます。
次に、八戸市等との交流、連携についてでございますけれども、県北圏域と八戸圏域は、東北自動車道に加えまして、今後、三陸沿岸道路、八戸・久慈自動車道の開通によりまして高速道路網の利便性が一層高まることから、交流、連携の進展が期待できると考えております。
県では、いわて県民計画におきまして県北広域圏と八戸圏域との交流、連携を掲げまして、八戸、久慈、二戸の3首長と県北広域振興局、青森県三八地域県民局の2局長を構成員とする北緯40度ナニャトヤラ連邦会議に参加しまして、県境を越えた広域連携を推進しているところでございます。
この会議では、防災協力体制や広域観光など五つの専門部会を設置いたしまして、防災の相互応援協定の締結を初め、住民の交流を促進するためのPR事業や広域観光のイベント、販路開拓の商談会への共同出展などに取り組んでいるところでございます。
今後とも、新幹線やフェリーを活用した北海道からの誘客や八戸圏域との近接性や共通する地域資源を生かした産業振興など、青森県南地区との交流、連携に市町村と一体となって取り組んでまいりたいと考えております。
〇商工労働観光部長(菊池哲君) 例えば、移住や定住あるいは地元就職を促進するため、家賃や住宅取得費の一部助成、あるいは地域行事と連動した年次休暇制度などを設けている市町村や企業が幾つか見られてきております。こうした市町村が抱える地域課題の解決や、地域貢献など公益性のある取り組みに対する支援を行っていくことに、その主体である市町村が企業や団体と連携して取り組んでいくことは意義があることと受けとめております。
県といたしましては、そういった取り組みにどのようなかかわり方ができるのかについては今後考えていきたいと思っております。
〇教育長(高橋嘉行君) 高校再編計画についてでございます。
高校時代は、人生の進路選択を身近に意識しながら、集団生活を通じて社会性や協調性を一層育む大切な時期でございまして、また、生徒の適性や興味、関心等に応じ、希望する進路を実現する教育課程を整えていくためには、高校には一定規模以上の生徒数と学級数を確保することが望ましいと考えております。
一方で、一定規模が維持できない場合であっても、本県の地理的諸条件等を踏まえ、地域における学びの機会を保障することもまた重要であると考えておりまして、新たな高校再編計画におきましては、学校の最適規模についても考慮した計画としているところでございます。
前期計画の推進に当たりましては、地域との意見交換等を行いながらできる限りの教育活動の維持に努めているところでありますが、後期計画の策定に当たりましても、同様に丁寧な対応を図るとともに、社会情勢の変化等をも十分に踏まえながら、そしてまた、地域との協働にも十分対応しながら多面的な検討を進めていきたいと考えております。
次に、世界遺産登録に向けた取り組み体制についてでありますけれども、縄文遺跡群の世界遺産登録につきましては、今般の国内推薦書素案の国への提出後間もなかったこと等もございまして、文化スポーツ部の設置後におきましても引き続き教育委員会が主体となってその事務を所管することとなっておりますが、文化スポーツ部に異動となった関係職員については教育委員会職員としての併任の発令を行い、知事部局と教育委員会とが相互に密接に連携しながら一体的に取り組んできているところでございます。
今後の職員体制のあり方につきましては、業務の実態などをも見きわめながら、知事部局とも十分に連携し、適切に対応してまいりたいと考えております。
そして、世界遺産に関する事務は、登録事務にとどまらず、その後の適切な保存、効果的な活用などが継続的に展開されていくこともまた重要でございますので、その所管のあり方につきましても、議員御案内のとおり、一体性などを考慮することは重要な視点と考えております。いずれ、今後の組織体制のあり方につきましては、知事部局とも十分な合意形成のもとにその構築を図ってまいりたいと考えております。
〇12番(工藤誠君) 最後に、知事にお伺いしたいと思います。
縄文遺跡群の世界遺産登録については、先ほど知事から御答弁がございましたとおり、推進本部の会議を早期に開くというお話もございました。また、実務的には、プロジェクトチームを設置して、作業がもう既に始まっているということもございます。それに期待するわけでありますが、5度見送りになっているというこの実態は、極めて異例であると私は思っています。やはりしっかりと6度目ということを念頭に置いていただいて、危機感を持って、背水の陣をもって進んでいっていただきたいと思うものであります。
これまでも何度も申し上げてまいりましたけれども、この縄文遺跡群の世界遺産登録は、一戸町民のみならず、県北の人々にとっての悲願でございます。また、県北振興の大きな起爆剤となり、ひいては岩手県の今後の地域振興、観光振興に大きな貢献を果たすことは確実であると思っておりまして、何としても成功させなければならないと思っています。
ことしは、カシオペア連邦議会議員協議会や北部地区町村議会議長会という県北圏域の組織も一体となってこの実現に取り組んできました。一方で、5度の国内推薦の見送りを重ねるにつれまして、一生懸命取り組んでいる関係者、地域住民の不安、疲労は大きくなってきております。縄文遺跡群は世界遺産の価値を十分に有しているものであり、来年こそは国内推薦、そして世界遺産登録になると信じております。こうした一生懸命取り組んでいる関係者、地元住民を勇気づけるような言葉を6度目の挑戦に当たっての知事の決意としてしっかりお聞きしたいと思います。そのことで終わりたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 石器時代というのは世界中共有している一つの時代なわけですけれども、集落が形成され発展していくとともに、周りの木を切り尽くしてしまうとか資源を取り尽くしてしまうとか砂漠化したりして、結局、長続きしない。そういう中にあって、1万年続く人と人との共生、人と自然との共生を実現した縄文文化あるいは縄文文明というものは、まさに人類普遍の価値を有するものでございます。
なぜそれが北海道・北東北かということが課題としてあったわけでありますけれども、この点について、北海道・北東北に限定した地域性のある文化として、今回、専門家の皆さんからも評価をいただいたところでありますので、今まで越えられなかった部分を大きく越えることができたと感じております。
地元一戸町初め地域の皆さんには、世界遺産というような話がある前から、この貴重な遺産を地域、行政一体となって守ってきていただいているところでありまして、改めて感謝申し上げたいと思います。地元の皆さんの思いが実り、そして世界とつながることができるよう私も全力で頑張ってまいります。頑張りましょう。
〇議長(佐々木順一君) 次に、阿部盛重君。
〔7番阿部盛重君登壇〕(拍手)

前へ 次へ