平成29年6月定例会 第9回岩手県議会定例会会議録

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〇6番(柳村一君) 改革岩手の柳村一です。
先輩、同僚議員の皆様に登壇の機会を与えていただいたことに心より感謝申し上げ、通告に従い質問をいたします。
次期総合計画について質問いたします。
現在の自治体を取り巻く社会環境は、人口減少と高齢化の加速、低成長経済による厳しい財政状況、コンピューターやインターネットなどの情報、通信の発達など複雑化しています。
このような環境に対応するためには、自治体がみずからの創意工夫によって、それぞれに直面する課題の解決を図ることが必要です。これからの自治体には、人口減少と高齢化が進む中でのまちづくり、地域を活性化するための経済活力の創出、価値観の多様化やICTなどの進展への対応などが求められており、これらに加えて行政サービスの維持や充実、地域間競争といった課題に取り組むことが求められています。
国の指示を仰ぐのではなく、さまざまな自治体との連携も含めたみずからの創意工夫によって問題解決に取り組み、画一的な行政運営を脱却し、自治体に存在するあらゆる資源を活用し、地域事情に合った行政運営が今後の自治体に必要な姿勢です。国の定める既定の方針に従って事務を処理し、予算を執行するだけでは不十分であり、自治体に見合った目的や目標を定め、その実現に向けて事業を構想し、必要な予算や組織や人員を整え、行政運営を行っていかなければなりません。
現在の県の行政運営はいわて県民計画に基づいて行われており、この計画期間は平成21年度から平成30年度までの10年間です。達増知事は、ことしの知事演述において、平成29年度は、次期総合計画の策定に向け、岩手のあるべき姿とその実現のため、私たち岩手県民がなすべきことを考える年でもありますと述べておられます。
そこで、平成31年度を初年度とする予定の次期総合計画について伺います。
まず、復興計画等との整合性について伺います。
知事は、ことしの4月24日、知事記者会見の10年を振り返っての所感の中で、次期総合計画の策定にオール岩手の力を集約して、そしてよい次期総合計画をつくるということがテーマだと思っていますと発言されました。また、会見では、次期総合計画を県民を挙げて策定と思っている。県も県組織を挙げて取り組む。内容的には、復興にかかわる計画という部分が非常に重要な役割を果たすと思うといった趣旨の発言もされました。
復興基本計画の期間は平成30年度までであり、知事の言うとおり、復興に係る計画は次期総合計画にとって重要だと考えます。また、岩手県人口ビジョン、岩手県ふるさと振興総合戦略など、さまざまな計画との整合性も重要になると考えますが、それらの整合性についての考えを伺います。
次に、県民からの意見聴取について伺います。
知事は本年度、今後10年の岩手などをテーマに、広く県民、NPO、企業、有識者等の提案、意見を集め、次期総合計画に反映するとしていますが、その意見聴取の方法について伺います。あわせて、聴取した意見を計画の素案、ひいては次期総合計画にどのように取り入れていくのか伺います。
次に、市町村からの意見聴取について伺います。
都道府県は、市町村を包括する広域の地方公共団体とされ、広域にわたる事務や市町村に関する連絡事務などを処理するとされており、総合計画を策定する上で市町村の意見の反映も重要です。
そこで、次期総合計画への県内市町村の意見を反映するため、市町村要望以外の知事と首長との協議の場の設定についての考えを伺います。
最後に、幸福に関する指標の導入について伺います。
次期総合計画に幸福に関する指標の導入を検討するとしていますが、幸福に関する指標を総合計画に取り入れる意義について知事の所見を伺うとともに、どのような形で取り入れることを考えているのか伺います。
以上、次期総合計画についての質問です。
この後の質問は質問席から行いますので、よろしくお願いいたします。
〔6番柳村一君質問者席に移動〕
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 柳村一議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、復興計画等との整合性についてでありますが、平成31年度を初年度とする次期総合計画では、本県を取り巻く社会経済情勢や復興の状況などを踏まえ、将来の岩手の目指す姿を展望し、そのために何をすべきかを示すこととしています。
復興計画との関係では、次期総合計画においても、平成31年度以降に実施すべき復興の取り組みを明確に位置づけ、国が平成32年度までとしている復興・創生期間とも連動し、市町村や国と一体となった取り組みを進めてまいります。
〔議長退席、副議長着席〕
また、岩手県人口ビジョンで掲げる2040年に100万人程度の人口を確保するという展望を実現するため、人口減少に歯どめをかける生きにくさから生きやすさへの転換や、岩手への新しい人の流れの創出に向けた岩手県ふるさと振興総合戦略に基づく取り組みの方向性などについても、次期総合計画において重要な要素になると考えております。
さらに、条例に基づく計画や特定分野の施策をより具体的に推進する個別計画等との整合性にも留意しながら、次期総合計画の策定を進めてまいります。
次に、県民からの意見聴取についてでありますが、次期総合計画においては、県民みんなが力を結集し、行動していくための目指す将来像や取り組みの方向性を明らかにしたいと考えており、そのためには、岩手の未来のあるべき姿に向かって、今後10年間に何をすべきかを、県民を初め多様な主体と一緒になって考えることが重要であります。
このため、計画策定過程において、市町村や各種団体、若者、女性や大学生、岩手にゆかりのある県外在住者など、できるだけ多くの方々に意見を求めたいと考えておりまして、今年度後半を中心に、今後10年の岩手などをテーマとしてさまざまな意見交換の場を設定し、各種情報媒体を通じた発信も積極的に行いながら、幅広く県民等から御意見を伺っていきたいと考えております。
寄せられた意見については、オープンな形で県民等と共有し、さらなる議論や提言につなげ、次期総合計画の基本的な方向について審議いただく総合計画審議会に報告し、可能な限り計画づくりに反映させてまいります。
また、計画素案や最終案などの各段階においてパブリックコメントや地域説明会などを行い、一層の意見把握に努め、オール岩手で計画づくりを進めていきたいと考えております。
次に、幸福に関する指標の導入についてでありますが、県民の幸せのために県政を一層推進することが重要との考えに基づき、幸福に関する指標の次期総合計画への導入を検討しています。
指標の検討に当たっては、所得などの経済的要素のみならず、岩手に根差した風土や文化、暮らし、さらには東日本大震災津波からの復興に大きな力となっている地域や人とのつながりもより重要と考え、専門的な知見を有する有識者から幅広く意見を聞くため、昨年4月、岩手の幸福に関する指標研究会を設置し、議論を重ねています。
研究会では、これまで、主観的幸福感や、幸福に関連する仕事、収入、居住環境、安全、余暇、健康、子育て、教育、家族、コミュニティー、歴史・文化、自然環境の12の領域を体系的に整理し、これらの領域ごとの実感等について調査した県民意識調査の分析、また、客観的指標例の検討等を行ってきたところであります。
今後は、本年8月末を目途に最終報告を取りまとめていただく予定となっておりまして、その内容を踏まえて、次期総合計画における幸福指標の導入について、総合計画審議会の御意見も伺いながら検討を進めてまいります。
その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
〔政策地域部長藤田康幸君登壇〕
〇政策地域部長(藤田康幸君) 市町村からの意見聴取についてでありますが、次期総合計画の策定過程におきましてはできるだけ多くの方々に参画いただくことを考えておりまして、特に、住民により身近な地域づくりを担う市町村からは、復興やその先の地域振興を進めるに当たっての御意見を広く伺うことが重要と考えております。
県においては、これまでも、復興やふるさと振興などの県政の重要課題につきまして、毎年度、市町村長と知事等との意見交換会を開催いたしまして、県と市町村との間での共通理解と施策の連携が図られるよう努めてきたところでございます。
次期総合計画の策定に当たりましても、市町村長と知事等との意見交換会などの場におきまして、市町村と問題意識を共有しながら、今後10年間で重点的に取り組むべきことなどにつきまして幅広く意見交換を行い、できる限り計画に反映させてまいりたいと考えております。
〇6番(柳村一君) 御答弁ありがとうございました。
まだ2年あるので、これからだんだん肉がついていって次期総合計画ができるということで、指標に関してもことしの8月末に報告が出るというような御答弁でしたので、まだ早いのかと思いましたけれども、早い段階からいろいろなところの意見を聞くのは重要だと考えております。
また、市町村との意見交換の場で市町村の意見を吸い上げるとおっしゃっておりましたけれども、もし可能であれば、全市町村の首長を集めた場で、県と市町村が一緒になって、今後の岩手県をどうしていくんだというような意見交換の場の設定というものもいいのではないかと思いますので、御検討いただければありがたいと思っております。
次に移ります。岩手県文化・スポーツ振興戦略について質問いたします。
県は、文化、スポーツ振興に係る事業推進について、ことし3月に岩手県文化・スポーツ振興戦略を策定しました。また、その推進のため、今年度から教育委員会と知事部局の各部に分散している文化芸術分野とスポーツ分野を知事部局に一元化し、文化、スポーツに関する事務を担う専担組織として文化スポーツ部を新設しました。さらに、文化、スポーツ振興に係る広域振興局の体制を強化するため、各広域振興局に特命課長を1名ずつ配置しております。
そこで、希望郷いわて国体、いわて大会のレガシーを生かした文化、スポーツ施策の戦略的な展開を目指す文化・スポーツ振興戦略について伺います。
まずは、文化・スポーツ振興戦略の推進について伺います。
今年度、県は、文化スポーツ部の設置に続き、6月5日には岩手県文化・スポーツ振興戦略に基づき、文化、スポーツ振興に係る部局横断的な取り組みを進めるため岩手県文化・スポーツ事業推進本部を設置しました。各部局の政策の連携が期待されるところですが、文化、スポーツが有する多面的価値を、交流人口の拡大による観光産業の振興など、幅広い分野への波及効果に具体的にどのようにつなげていくのかお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 文化、スポーツの力を経済、観光などさまざまな分野で生かし、復興とふるさと振興を進めていくことが重要であり、このため、岩手県文化・スポーツ振興戦略に基づく施策を着実に推進するとともに、本年6月、庁内に設置した岩手県文化・スポーツ事業推進本部を中心に、交流人口の拡大による観光産業の振興など部局横断的な取り組みを戦略的に進めているところであります。
まず、スポーツにおいては、国体・大会のレガシーを継承し、ラグビーワールドカップ2019釜石開催や、東京2020オリンピック・パラリンピックを見据え、キャンプ地の誘致や、国内、国外から来訪する観客に県内の観光地を周遊していただく旅行商品の造成支援などに取り組んでまいります。
また、本年秋に設立を予定しているいわてスポーツコミッションを中心に、本県の多様なスポーツ資源を生かし、市町村や関係団体、観光事業者などと連携を図りながら、各種競技大会やスポーツ関連イベント、合宿等の誘致を進めるなど、スポーツツーリズムの振興に取り組んでまいります。
次に、文化においては、世界遺産の平泉、橋野鉄鉱山や宮沢賢治、石川啄木に代表される文学、豊かな自然や歴史、風土の中で培われた食文化や民話、伝統芸能など、本県が誇る文化資源を生かした鑑賞・体験イベントの実施などに引き続き取り組んでまいります。
また、文学や映画、ドラマ、漫画、アニメ等の舞台となった場所やゆかりの土地をファンが訪れる聖地巡礼の受け入れ態勢の整備やファン向けイベントの開催支援などに取り組んでまいります。
今後も、県や市町村、関係する団体、個人等が協力、連携し、文化やスポーツが持つ多面的価値を、社会的な力はもとより、観光産業などの経済的な力に発展させて、県民一人一人の個性と創造性が輝く地域づくりを進めてまいります。
〇6番(柳村一君) 昨年の希望郷いわて国体、いわて大会は、県民が一丸となってすばらしいものだったと思います。それをレガシーとして、今回、文化、スポーツを横断的にやるということで、さまざまな取り組みがあると思いますし、議員の方々からもいろいろな意見が出されておりますので、ぜひとも、文化スポーツ部をつくったことによって県が元気になるような施策に取り組んでいただきたいと思います。
その文化、スポーツに関するところで学校の部活動についてお伺いしたいと思います。部活動指導体制の充実のための学校と地域の連携について伺います。
競技力向上を図る上でも、また、将来、一人一人が楽しむことができるスポーツ社会を推進する上でも、学校教育における部活動は非常に重要ですが、部活動については生徒や教師への負担も指摘されております。
学校における部活動の指導体制の充実を図るため、部活動指導員の職務等を明らかにする学校教育法施行規則の一部を改正する省令が施行されました。その省令の施行に当たっての国の通知において、適切な練習時間や休養日の設定として、学校の設置者及び学校は、部活動指導員による指導を行う場合であっても、適切な休養を伴わない行き過ぎた活動は、生徒におけるさまざまな無理や弊害を生むことから、平成28年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果の取扱い及び活用についても踏まえ、練習時間や休養日を適切に設定すること、なお、文部科学省においては、平成29年度に部活動に関する総合的な実態調査等を行い、平成30年3月末を目途に、スポーツ医・科学の観点や学校生活等への影響を考慮した練習時間や休養日の設定を含む、運動部活動の在り方に関する総合的なガイドラインを策定することとしていること、生徒、保護者及び地域に対する理解の促進の中で、学校の設置者は、部活動指導員の確保に資するため、地域の体育協会、スポーツ団体及びスポーツクラブ等との連携を積極的に図ることとしております。
そこで、学校の部活動と総合型地域スポーツクラブ等との協働、連携をどのように推進し、問題の解決と部活動指導体制の充実を図るのかお伺いします。
〇教育長(高橋嘉行君) それぞれの学校におきましては、複雑化、多様化した課題を解決し、子供たちに必要な資質、能力を育んでいくためには、部活動においても地域との連携は極めて重要であると認識いたしております。
これまでも、多くの学校におきましては、地域のスポーツ指導者を外部コーチとして委嘱し、担当教員の指導を補完していただいてきておりますし、また、県教育委員会におきましては、アスレティックトレーナー等を学校に派遣しながらスポーツ医・科学を取り入れた運動部活動を推進するなど、教員の指導力向上や負担軽減を図るとともに、生徒にとって充実した部活動が推進されるように取り組んでまいりました。
本年度におきましては、スポーツ庁からの委託事業として、新たに採択された実践研究を通じて、総合型地域スポーツクラブなどの御協力をいただきながら、実践研究校に対して部活動の教育的意義等に関する研修を受講した指導者の派遣等を行い、地域連携のモデルとなる実践事例を県内に広めること等により、地域のスポーツ団体との連携をより一層推進していきたいと考えております。
〇6番(柳村一君) 文部科学省の指針は出たばかりですので、今後、どのような取り組みを行っていかなければいけないかという議論も出てくると思います。昨日来出ておりますけれども、教師の勤務の大変さという部分では、やはりこの部活動という部分もかなり占めていると思います。
それにおいても、部活動に対する保護者の理解というものが非常に必要になってくると思いますけれども、今後、部活動に対する地域と保護者の理解度を深めるためにどのような取り組みを行う考えなのか、考えがありましたらお伺いします。
〇教育長(高橋嘉行君) ただいまも申し上げましたけれども、本年度、新たにスポーツ庁からの委託事業をモデル事業として導入することとして、その中で総合型地域スポーツクラブ等との連携を深めていくということにいたしております。
それから、地域と協働することによって、どういう形がうまくいくのかというさまざまな課題も出てまいりますので、それを実証する、そしてまた学校に対する御理解をいただくということも大事でございますので、そういう面での意思疎通も十分図りながら、しっかり進めていく必要があると思っております。
部活動に関しましては、国では新しいガイドラインを年度内に策定すると、先ほど柳村議員から御紹介がございました。本県では、それに先んじて2月に一斉の休養日を設定して、現在、それが浸透しておりますので、また、国のガイドラインが出れば、それに合わせた全体的な見直しをあわせてやっていきたいと考えております。
〇6番(柳村一君) 県は先んじてやっているということで、教師に対する負担の面からも、今後、一生懸命取り組んでいただきたいと思います。
部活動については、強いチームとか結果を求めるところはやはり保護者の御理解が必要になってくると思いますので、そこら辺との、話し合いみたいなところも重要になってくると思います。
それから、昨日の文化スポーツ部長へのスポーツ振興施策についての質問に対して、競技力向上とトップアスリート育成についての答弁がありました。
そこで、文化スポーツ部として、中学生や高校生の選手強化についてどのように行おうとしているのかお伺いします。
〇文化スポーツ部長(上田幹也君) 文化スポーツ部における中学生、高校生の選手強化についてでございますが、国体等に出場する県代表選手あるいはチームを対象に、競技団体が県外遠征あるいはコーチの招聘等を行っておりまして、県はそれに対して支援を行っているということでございます。
〇6番(柳村一君) スポーツの施策を文化スポーツ部でやったときに、学校体育とスポーツ分野というのは連携していかなければいけない。そのところの中で、中学生、高校生の部分では重なるところがありますので、しっかり連携をとりながら、選手強化や学校体育の充実に向けて取り組んでもらいたいと思います。
昨年の国体の天皇杯、皇后杯2位というのは、先ほどの答弁でも最も貴重なレガシーということでありますし、あの感動は県民も覚えておるところであります。この先、国体の順位がもとの順位に戻らないように、しっかりと対策をしていただきたいと思います。
次に、産業創造県いわての実現について質問いたします。
岩手県人口ビジョンを踏まえ策定した岩手県ふるさと振興総合戦略の中で、岩手県の人口は1997年以降減少を続け、2014年には128万人と、ピークであった1960年と比べ12%減少しております。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、何ら対策を講じず、現状がこのまま継続することを前提とした場合、岩手県の人口は今後も減少を続け、2040年には93万8、000人になることが見込まれ、2115年には24万人にまで減少すると試算されております。
岩手県人口ビジョンでは、人口減少を引き起こすさまざまな生きにくさを生きやすさなどに転換していくとともに、岩手への新たな人口の流れを生み出すふるさと振興を積極的に展開し、2040年には100万人程度の人口を確保するよう展望しました。
岩手県ふるさと振興総合戦略の三つの基本目標の一つである岩手で働くでは、やりがいと生活を支える所得が得られる仕事を創出し、岩手への新たな人の流れの創出を目指しますとしています。また、施策推進目標を、若者の仕事や移住に関する願いに応え、県外への転出超過を解消する社会減ゼロを目指しますとし、2014年に2、975人減だった年間の人口社会増減を2020年にはゼロにするとしています。
そこで、人口減少の対策として、安定した雇用を創出する産業創造県いわての実現への施策について伺います。
まず、企業誘致について伺います。
企業誘致は、雇用機会や税収の確保のほか、交流人口の拡大、地域産品、資源の利活用など、地域にさまざまな効果をもたらします。県は、各種支援制度を活用しながら市町村と連携して企業誘致活動を行っています。
そこで、東日本大震災津波以降の企業誘致の実績と今後の取り組みについて伺います。
〇商工労働観光部長(菊池哲君) 企業誘致についてでありますが、東日本大震災津波以降の新規立地件数は平成28年度までで129件となっておりまして、自動車関連企業のほか、道路貨物運送業や倉庫業、物流センター等の物流関連企業の立地が進んできているところでございます。
今後においては、議員御指摘の人口減少への対応の観点などからも、市町村との緊密な連携のもと、地域産業、地域社会の持続的な発展等につながる企業誘致施策の展開に努めてまいりたいと考えております。
また、既に県内に立地し、地域において中核的な存在となっている企業に対しましては、そのニーズをよく把握しながら、業容の拡大や生産性向上、高付加価値化などにつながる取り組みを支援してまいる考えでございます。
〇6番(柳村一君) 129件というのは、県の考えでは多いと思いますか、少ないと思いますか。
〇商工労働観光部長(菊池哲君) 特に震災後の数年においての129件という数は、まずは御理解もいろいろあっての数と思っておりまして、順調に立地は進んできているのではないかと思っております。
〇6番(柳村一君) 企業誘致は全国各地で取り合いという状況の中で、被災した後129件、私もまずまず頑張っているのではないかと思っております。
先ほど部長が先に答弁したかもしれませんけれども、その中で、現存する中小企業もまた元気にすることによって雇用の創出も生まれてくると思いますので、中小企業の活性化に資する取り組みについてお伺いします。
平成26年度法人企業統計年報や平成26年経済センサス基本調査などによると、中小企業は企業数の99.7%、雇用の71%を占め、付加価値の51%を担うとともに、イノベーションの担い手として我が国の重要な経済主体となっています。しかし、中小企業を取り巻く環境は厳しく、売上高の伸び悩みや人手不足、設備の老朽化といった課題に直面しています。地域の経済活性化のためには、中小企業の生産性や競争力の強化、企業再生は重要です。
そこで、中小企業の活性化に資する県の取り組みについてお伺いします。
〇商工労働観光部長(菊池哲君) 中小企業の活性化に資する県の取り組みについてでありますが、県では、中小企業振興基本計画を策定し、企業の魅力向上や働きやすい環境の整備などを目指す姿としまして施策推進に取り組んでいるところでございます。
生産性の向上や競争力の強化につきましては、経営革新に向けた取り組みを推進しているほか、各種補助金の積極導入等を支援しているところでございます。また、経営者の高齢化が進む中、中小企業の持続的発展とともに、雇用の確保や活力ある地域経済の維持、発展のためにも、円滑な事業承継や、若手後継者が新事業、新分野に進出する、いわゆる第二創業の取り組みなどに対し、さまざまな支援を展開しているところでございます。さらに、やりがいのある仕事と充実した生活の調和を目指し、企業の生産性向上にもつながる働き方改革にも注力してきているところでございます。
県としましては、中小企業者の方々、そして行政、関係団体と一体となりまして、中小企業の活性化に今後も取り組んでいくこととしております。
〇6番(柳村一君) 岩手県の人口を維持していくためにはやはり働く場がなければいけないということでありますので、今後ますますの御努力をお願いしたいと思います。
企業を元気にするほかにやっぱり働き手も必要になるわけでありまして、若年層の地方還流の取り組みについてお伺いいたします。
国は、2016年改訂版のまち・ひと・しごと創生総合戦略において、地方への新しい人の流れをつくる施策として地方創生インターンシップの推進を目指しております。施策の概要は、東京圏への転入超過のうち、進学や就職を機に転入する若年層が大半を占めているため、首都圏在住の地方出身学生等の地方還流や地方在住学生の地方定着の推進を目的として、地元企業でのインターンシップの実施の全国展開を産学官挙げて支援する地方創生インターンシップに取り組み、地方企業の魅力の再発見を通じた地方就職、地元就職を支援し、東京一極集中の是正を図るとするものであります。主な重要業績評価指標は、地方創生インターンシップに参加する学生を受け入れる企業の数を2016年の6、441社の2倍としております。また、2016年改訂版まち・ひと・しごと総合戦略では、奨学金返還支援制度を活用した大学生の地方定着の促進も目指しております。
そこで、本県におけるインターンシップの促進など、若年層の地方還流の取り組みについてお伺いします。
〇商工労働観光部長(菊池哲君) 若年者の地方還流の取り組みについてでございますが、県といたしましては、従来から、学生等若者の地元への定着を促進していく上でインターンシップは非常に重要な鍵であると認識しておりまして、昨年度から始まった地方創生インターンシップのみならず、これまで長年にわたって県内各地において学生等と県内企業の連携によりさまざまな形で事業を展開してきているところでございます。昨年におきましては、このような取り組みは800件を超える企業の参加協力を得て実施してきたところでございます。
今年度におきましては、首都圏在住の学生等を対象とした夏休みを利用してのおかえりいわてツアーへの支援による展開、さらには、昨年度から行っておりますが、首都圏や仙台在住の本県出身学生等を対象としたインターンシップへの誘導を図るふるさと若者ミーティングを継続して開催するなど、これらの取り組みを通じまして本県への若者の地方還流を加速していきたいと考えております。
〇6番(柳村一君) インターンシップや企業の宣伝というものは、県がやっても結果にどのぐらい結びついているかというのはわからないと思いますので、そこら辺も調査して、有効な手段をどんどんつぎ込んでいくべきだと思います。国のほうでも被災地インターンシップなどが始まっておりますので、これはさらに今後注目されると思いますので、ぜひとも取り組んでいただきたいと思います。
今の答弁で奨学金返還支援制度については答弁がなかったようですし、昨日の答弁でも、新たな奨学金制度は今後研究するというような答弁でした。やっぱり奨学金に関しても使い勝手のいい奨学金制度を創設することが若者の還流につながると思いますので、そこら辺について、さらに研究して実行に移していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
次に、チャレンジ・ふるさとワークについてお伺いします。
総務省は、地域に雇用を生み出し、為替変動にも強い地域経済構造を構築するため、地域経済好循環推進プロジェクトのさらなる展開を推進するとしております。チャレンジ・ふるさとワークでは、若者などが一定期間働きながら地域での暮らしを学ぶふるさとワーキングホリデー、地域特性を生かしたサテライトオフィスの誘致戦略を策定するお試しサテライトオフィス、地域の若者のアイデアによる創業を支援する次世代コラボ創業支援事業、買い物支援など暮らしを支えるビジネスの確立を支援する地域の暮らしサポート実証事業などの施策を展開し、地域への人、情報の流れを創出するとしておりますが、県としてのこれらの事業実施の考えについてお伺いします。
〇政策地域部長(藤田康幸君) チャレンジ・ふるさとワークについてでございますが、総務省のチャレンジ・ふるさとワークという制度を構成する各種事業につきましては、地域への移住、定住の促進などを図るため、都市部の若者などを対象とした地域での仕事や田舎暮らしの体験、それから、地域の特性を踏まえた新たなビジネスの創出を行うものでございまして、趣旨としては大変意義あるものと考えております。
一方で、例えばふるさとワーキング・ホリデーにつきましては、若者などの受け入れに当たりまして、大規模な人数の受け入れや受け入れ先の企業等におきまして労働契約の締結が必要といったような課題がございまして、昨年度、事業の活用を検討したところでありますけれども、実施には至りませんでした。また、お試しサテライトオフィスや次世代コラボ創業支援事業、それから地域の暮らしサポート実証事業につきましては、開始から間もないため、事業の効果等についての検証や市町村への一層の周知が必要と考えております。
これまで県では、地方創生推進交付金を活用いたしまして、市町村と連携した短期移住体験ツアーの実施、それから、産学官が連携した本県企業でのインターンシップの取り組みなど同種の取り組みを積極的に展開しておりますけれども、国の財源を有効に活用していく観点からも、御指摘の事業の活用を含め、県、市町村においてより効果的な事業が展開されるよう検討を重ねてまいりたいと考えております。
〇6番(柳村一君) ふるさとワーキング・ホリデーとかお試しサテライトオフィスはまだ岩手県ではやっていないようでありまして、これらの取り組みはどちらかというと日本の西側の府県がすごく盛んであるようで、そういうところでは定住も促進しているような話が総務省からされております。若者の定住促進にもつながると思いますので、やはり国の予算がついているものについてはもう少し貪欲になって、今後、検討すべきだと思いますので、よろしくお願いいたします。
次に、共に生きるいわての実現について質問いたします。
まず、地域包括ケアシステム構築に向けた取り組みについて伺います。
高齢者が住みなれた地域で介護や医療、生活支援のサポート及びサービスを受けられるよう、市町村が中心となり、住まい、医療、介護、生活支援、介護予防のサービスが包括的に提供される地域包括ケアシステムの構築に向けた取り組みが、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に進められております。地域包括ケアシステムの構築は全国一律のシステムではなく、地域の実情や特性に合った体制を整えていくもので、保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて構築する必要があります。
市町村は、3年ごとの介護保険事業計画の策定、実施を通じ、地域包括ケア実現に向けた中核的な機関としての地域包括支援センターの設置、運営、高齢者に対する支援の充実と社会基盤の整備のために地域ケア会議の推進、在宅医療、介護を一体的に提供できる体制の構築、在宅生活を継続できるようにするため、生活支援サービスの充実と、元気な高齢者が生活支援の担い手として活躍するなどの高齢者の社会参加の仕組みづくりなど、地域包括ケアシステム構築に向けた取り組みを推進しています。
そこで、県内市町村の地域包括ケアシステム構築に向けた取り組み状況と市町村に対する県の支援状況についてお伺いします。
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) 市町村の地域包括ケアシステム構築の取り組みについてでありますが、構築に向けて段階的に取り組むこととされている事業のうち、介護予防・日常生活支援総合事業については、平成29年4月から県内全ての市町村が実施しているところであります。また、平成30年4月までに実施が求められている事業につきましては、平成29年6月に県が行った調査によれば、事業の一部着手も含め、平成28年度末までに実施済みと回答したのは、在宅医療・介護連携推進事業は25市町村、生活支援体制整備事業は19市町村、認知症初期集中支援事業は14市町村、認知症地域支援・ケア向上事業は19市町村となっています。
県では、これらの事業が期限までに確実に実施され、また、内容の充実が図られるよう、生活支援コーディネーターや認知症地域支援推進員など事業の担い手となる人材の養成を進めるほか、複数の市町村が共同で運営する在宅医療連携拠点の設置への補助や、県民の理解を深めるための公開セミナーの開催などにより市町村を支援しているところであります。
〇6番(柳村一君) この地域包括ケアシステムの構築については、都市部と農村部では運営の仕方が全く異なってくると思います。一次医療が整っているところはまだしも、一次医療がしっかりしていないところは二次医療に頼らざるを得なくなってくると思いますので、そこのところは県の支援が必要になってくると思います。また、全てのサービスを全ての市町村でそろえる必要もなく、その地域に合ったサービスの提供の仕方が必要になってくると思いますので、そこについても、県としてもしっかりとサービスの支援の仕方を考えながら市町村に寄り添っていただきたいと思います。
次に、法改正による影響について伺います。
ことし2月に地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律が公布されました。改正のポイントの一つである地域包括ケアシステムの深化、推進については、自立支援、重度化防止に向けた保険者機能の強化等の取り組みの推進として、都道府県による市町村に対する支援事業の創出と財政的インセンティブの付与の規定の整備、医療、介護の連携の推進として、医療、介護の連携等に関し、都道府県による市町村に対する必要な情報の提供、その他の支援の規定の整備、地域共生社会の実現に向けた取り組みの推進として、市町村による包括的支援体制づくり、福祉分野の共通項目を記載した地域福祉計画の策定の努力義務化を要点としています。また、もう一つのポイントである介護保険制度の持続可能性の確保については、2割負担者のうち特に所得の高い層の負担割合を3割とし、各医療保険者が納付する40歳から64歳の保険料について、報酬額に比例した負担とする介護納付金への総報酬割の導入を要点に挙げております。
そこで、市町村に対する支援事業の創出、医療、介護の連携等、必要な情報の提供、地域福祉計画の策定支援への県の取り組みについて現状と課題を伺います。また、2割負担者のうち特に所得の高い層の負担割合を3割にすることや、総報酬割を導入することによる県民への影響についてあわせてお伺いします。
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) 介護保険法改正による影響についてでありますが、地域包括ケアシステムの構築に向けては、先ほど答弁したとおり、これまでも市町村においてさまざまな取り組みが進められ、県では、課題となっている人材の育成や在宅医療連携拠点の設置、介護予防の取り組みなどを中心に支援してきたところであります。また、地域福祉計画についても、岩手県地域福祉支援計画に基づき、策定やその推進の支援に取り組んでおり、平成28年度末時点で27市町村が策定済み、3市村が今年度末までに策定する予定となっているところであります。こうした中で、今般の法改正により、地域包括ケアシステムの深化、推進のため、市町村の取り組みの一層の強化と都道府県による支援の充実が求められ、今後、国から取り組むべき具体的な方策が示されることから、市町村と連携してこれに的確に対応してまいります。
また、介護保険の自己負担割合の増加及び総報酬割の導入による県民への影響についてでありますが、3割負担が導入された場合であっても、所得に応じた自己負担の月額上限を超える部分については高額介護サービス費等が支給されるため、実質的に負担増となるのは、現在2割負担している方の約4分の1、本県では1、000人程度と見込まれます。
また、介護納付金への総報酬割導入によって、相対的に報酬が高い被用者保険組合の加入者は現在より負担がふえ、報酬が低い場合は減ることとなります。そのため、本県への影響を捉えることは難しいのですが、国の試算によりますと、負担増となるのは被用者保険組合加入者の約4割とされています。
〇6番(柳村一君) 3割負担については4分の1の1、000人程度ということと、総報酬割についてもさまざま影響があるようですけれども、質問しなかったインセンティブの付与という部分で、今後、介護保険が使いづらくなるのではないかという議論もされております。改正されたばかりで、どのような影響が出てくるのかは今後見ていかなければいけませんけれども、使えなくなるような介護保険になっては大変なことになると思いますので、そこら辺については、県としてもしっかり支援していただきたいと思います。
今、課題となっていると答弁されていた介護人材の育成と確保についてお伺いします。
国が目標としている2025年までの限られた期間で、必要な人材確保は最重要の課題であり、中重度の要介護者などの専門性が求められる身体介護などには専門職である介護人材を重点配分し、軽度の要介護者などの生活支援などには、若年層や壮年層に加えて元気な高齢者も含めた多様な担い手を育成、確保し、参画を推進することが必要になります。
そこで、地域包括ケアシステムの構築に欠かせない介護専門職や多様な担い手の人材の育成と確保の取り組みについてお伺いします。
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) 介護人材の育成と確保についてでありますが、専門的な介護人材の確保、定着のためには、介護職への参入促進とともに、職員の待遇改善を図ることが重要であります。このため、県では、関係団体と連携して介護福祉士等修学資金や再就職準備金の貸し付けを行うほか、介護人材キャリア支援員によるマッチング支援、労働環境の整備、改善を促すセミナーの開催、処遇改善を求める国への要望などの取り組みを行っているところであります。
また、軽度の要介護者などへの生活支援を担う人材については、市町村が中心となって、NPOや自治会など多様な主体による支え合いの体制づくりと並行して、その育成、確保が求められます。このため、県では、地域において新たなサービスの創出や多様な担い手の確保などの調整役を担う生活支援コーディネーターを養成するなどして、高齢者への生活支援を担う人材の育成と確保に向けた市町村の取り組みを支援しているところであります。
〇6番(柳村一君) おっしゃるとおり、待遇改善や処遇改善が介護人材確保にとっては一番必要な部分であると思いますが、現実問題として、介護人材の養成機関などでは定員割れをしております。今まで県としては、介護職を目指す個人に対しての支援策を講じてきておりますけれども、さらなる人材確保のために、例えば介護人材の養成機関への支援とか県が主体となって介護人材の養成機関を設置するとか、そういう取り組みもこれからは必要になってくるのではないかと思いますけれども、そこら辺のお考えについてお伺いします。
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) 介護専門人材の養成機関についてでありますが、本県には、平成29年4月1日現在で、介護職の中核を担うことが期待される介護専門人材の資格を取得するための養成機関として、県所管の実務者養成施設5機関と、いわゆる専門学校である介護福祉士養成校が5校あるほか、福祉系などの高等学校が4校あります。このうち、県所管の介護福祉士養成校5校の平成29年度の入学者数は102人で、定員252人に対する充足率は約4割であり、他の養成施設等の受講者数も低調であると聞いています。
定員割れは全国的な傾向であり、その原因としては、先ほど申し上げました介護従事者の賃金が低いことなど処遇面の課題について注目される一方で、介護の仕事のやりがいや魅力については十分理解されていないことなどが考えられます。
このため、県では、修学資金等の貸し付けにより養成校の学生の就学等を支援しているほか、平成28年度には、介護福祉士養成施設協会が行う介護人材の確保に関する事業に補助を行ったところであります。現在のところ、本県における介護福祉士養成のための受け皿が不足している状況にはないことから、県としては、修学資金等の貸し付けのほか、福祉に関する啓発、広報事業や児童生徒を対象にした出前講座、関係団体が行う介護の仕事の魅力を発信する事業などへの補助などを通じ、介護分野を志す学生数の拡大につながる取り組みを進めてまいります。
〇6番(柳村一君) 取り組みはないということですけれども、福祉大学等々は他県にあるわけでありまして、介護の上級資格を取るためには他県に行かなければいけない。以前、たしか県立大学にもあったと思いますけれども、社会福祉士とかそういう高等教育で捉えなければいけないという分野の人材育成も、今後、包括ケアシステムの場合は必要になってくると思いますので、県立大学等における養成についてお考えいただければと思います。
市町村と密に連絡をとり、地域事情に即した包括支援システムの構築は、限られた時間内にしっかりと整備していかないといけないと思いますので、高齢者が安心して住めるような社会に向けて今後も支援していただきたいと思います。
次に、子育て支援について質問いたします。
日本版ネウボラの導入についてお伺いします。
フィンランドの子育て支援であるネウボラについて、フィンランド大使館のホームページを引用して御紹介します。
男女共同参画の先進国で女性のほとんどがフルタイムで働くフィンランドでは、出生率が低迷する日本とは対照的に、合計特殊出生率は約1.8の水準を保っています。その理由の一つに挙げているのがネウボラという子育て支援です。
ネウボラはアドバイスの場という意味で、妊娠期から就学前までの子供の健やかな成長、発達の支援はもちろん、母親、父親、兄弟、家族全体の心身の健康サポートも目的としています。フィンランドでは、妊娠の予兆がある時点で、まずネウボラへ健診に行きます。ネウボラはどの自治体にもあり、健診は無料、全国でネウボラの数は850あるそうです。妊娠期間中は6回から11回、出産後も子供が学校に入学するまで定期的に通い、保健師や助産師といったプロからアドバイスをもらいます。また、担当制で基本的には同じ担当者が継続的にサポートをするので、お互いに信頼関係が築きやすく、問題の早期発見、予防、早期支援につながっています。
医療機関の窓口の役割もあり、出産入院のための病院指定、医療機関や専門家の紹介をします。利用者のデータは50年間保存されているため、過去の履歴から親支援に役立てたり、医療機関との連携に活用したり、効率的に子供とその家族を支援します。最近では、親の精神的支援、父親の育児推進がネウボラの重要な役目となっており、児童の虐待や夫婦間DVの予防的支援の役割も担っています。
現在、日本版ネウボラの導入が全国の市町村で始まっています。また、厚生労働省もフィンランドをモデルにした妊娠、出産、子育ての包括的支援拠点づくりを各自治体に奨励しています。安心して子供を産み育てられる環境を目指す上で、フィンランドのネウボラから学ぶことは多いと思います。
知事は、安心して子供を産み育てられる環境の整備に向け、安全・安心な出産環境の充実を掲げておりますが、このネウボラのような妊娠期からの切れ目のないワンストップ子育て支援の導入は効果的な手段と考えます。また、ネウボラの導入については、市町村ごとの制度となった場合、里帰り出産への対応などに差異が生じる可能性があり、全県一律の制度となることが望ましく、県が指導力を発揮するべきと思います。
そこで、知事は、昨年、イクボス宣言をされ、子育て環境の整備には熱意を持って当たられておられますが、日本版ネウボラの導入についての知事のお考えをお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 日本版ネウボラの導入についてでありますが、安心して妊娠、出産、子育てができる環境の整備は目の前にある重要な課題であり、ふるさと振興総合戦略の基本目標の一つであります社会全体で子育てを支援し、出生率の向上を目指す上でも重要な施策と考えております。
国では、日本版ネウボラとも呼ばれている子育て世代包括支援センターを平成32年度末までに全国の市町村に設置する方針を示しておりまして、県内では、現在、盛岡市など6市町が設置し、妊娠、出産、育児に関する相談支援や関係機関との連絡調整、支援プランの策定などを行っています。
このセンターが設置されることによって、市町村における相談窓口の明確化や妊産婦の心身の安定、児童虐待防止など、妊娠期から子育て期にわたるまでの切れ目のない支援につながりますことから、県では、母子保健に従事する市町村保健師等を対象とした研修会や各種会議を通じまして先行事例の紹介を行うなど、設置を働きかけてきたところであります。引き続き市町村と連携しながら、早期設置に向け取り組んでまいります。
〇6番(柳村一君) 岩手県は産婦人科医がいない地域とかいろいろな問題を抱えておりますけれども、やはり子育ては重要な問題であります。児童虐待の約4割は母親がやっているという現状があるようでございまして、フィンランドでは、このネウボラをやってから児童虐待がほとんどなくなったということでありますので、さまざまな夫婦間のDVとか、そういう部分でも効果があると思います。平成32年度から始まる国の施策の中にも組み入れてくると思いますので、支援をしっかりとお願いいたしたいと思います。
次に、保育士不足について伺います。
昨年2月15日に、はてな匿名ダイアリーに書かれた文章、保育園落ちた日本死ねは流行語大賞のトップテン入りし、社会問題にまで発展しました。その中で、オリンピックに使う金があるなら保育園をつくれというくだりがあります。確かに施設不足は問題ですが、保育園を建てれば待機児童の問題が解消するわけではありません。保育園が足りず待機児童問題が発生する背景には保育士不足という問題があります。保育園をふやすには資金を確保すればできますが、そこで働く保育士が不足していれば、結局、園児の受け入れを制限せざるを得ません。
また、2015年10月、厚生労働省の保育士等に関する関係資料によると、保育士登録者数は約119万人で、勤務者の数は約41万人となっており、潜在保育士は70万人以上ということになります。勤務者より潜在保育士のほうがはるかに多い理由は、賃金、責任の重さ、就業時間や休暇、雇用形態など複数の要因が絡み合っていると考えられます。
県は、これまでも保育士の人材育成と確保についてさまざまな事業を行ってきました。しかし、このような状況下では、解消に向けてさらなる支援が必要となります。
そこで、県内の各地域での保育士不足の現状とあわせ、人材育成と確保の取り組みについてお伺いします。
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) 保育士不足の現状と人材確保の取り組みについてでありますが、子ども・子育て支援新制度による量的拡充の進展に伴い保育士のニーズが高まっており、昨年度、県内全ての保育所を対象に県が実施した調査では、保育の受け皿を拡大するため必要となる保育士は130施設で213人との回答がありました。この調査において、保育士の確保が困難である主な理由は、勤務時間や休暇制度等のミスマッチや求められる賃金水準を満たせないなどであり、労働環境や給与待遇など複合的な要因により保育士の確保が困難となっているものと考えています。
このことから、県では、保育士等の賃金改善に係る処遇改善加算措置の周知等を行うとともに、年度途中の保育ニーズの増加に対応するため、潜在保育士の掘り起こしやマッチング支援、就職準備金の貸し付け、認定こども園に勤務する保育教諭を確保するための幼稚園教諭等の保育士資格の取得支援、就職後の定着を支援する新任保育士を対象とした就業継続支援研修などに取り組んでいるところでありますが、新卒者の本県への就職、定着支援を図るため、今年度から新たに保育士修学資金貸付制度を創設して、保育士の確保対策の一層の強化を図ることとしています。
〇6番(柳村一君) 130施設で213人というのは多いのか少ないのか。
あと、待機児童につきましても、実数ともまたかけ離れている部分がありますけれども、今まで県は、支援センターを設置してマッチング等の支援を行っております。それで効果も出ているようであります。
さらに、この前、説明がありました保育士修学資金貸付事業というものがありましたけれども、この事業の具体的な内容についてお伺いします。
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) 先ほどの調査で保育士の不足状況について、県内の施設で保育士の不足があると回答した施設数は130カ所、213人というのは、130カ所で保育士の不足があると回答した施設でありまして、不足がないと回答した施設が206カ所ありましたので、不足があると回答したところの割合は38.7%という結果でありました。
一方、県内の待機児童数は、本年の4月1日現在で178人という待機児童数となっておりまして、そうした待機児童を解消する意味合いもありまして、保育士修学資金貸付事業を実施するわけでございます。保育士養成施設に進学して、卒業後、保育士として県内の保育所等において勤務する意思を有する方に対して、今年度、20名の貸付枠ということで、基本額月額5万円、入学準備金20万円、就職準備金20万円ということで、保育施設を卒業して県内の保育所等において児童の保育等の業務に5年間従事した場合は返還を免除するという貸付金を創設したところであります。
〇6番(柳村一君) ということは、保育士が不足している施設が4割ぐらいしかないということですね。そういうことで、今回の新規の貸付制度なども、全県で募集するのではなく、例えば不足している事業所とかに優先的に使うような仕組みにすることによって、この不足している部分が解消されるのではないかと思いますけれども、条件的には、例えばそういう法人であったりとか事業所自体が、うちに来てくれるために貸し付けるというような制度みたいなものはないでしょうか。
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) 待機児童につきましては盛岡市周辺でも発生しておりまして、待機児童の解消も貸付制度を創設した理由の一つでありますし、また、他県から本県の養成施設に進学した方が本県にそのまま就職する場合、あるいは本県の方が他県の保育士養成施設を卒業して本県にUターンしてくる場合等々にも貸し付けを予定しておりますので、就職地を例えば盛岡市以外のところということで限定することは難しいのではないかと考えています。
もう一つのお尋ねであります保育所等での保育士確保のための資金等の状況でありますけれども、県内の市町村-花巻市、野田村等でありますが、あるいは社会福祉法人などで独自の奨学金を活用して新卒者を確保している例もあるということでございます。
〇6番(柳村一君) 保育士になるまでの資金援助というものも重要になってくると思いますけれども、保育士にしても、先ほどの介護人材にしても、根本には賃金等の待遇が悪いというところが一番の原因だと思いますので、県は、この点についても国にしっかりと訴えていただき、人材確保に向けて支援していただきたいと思います。
次に、国民健康保険制度改革についてお伺いします。
2015年5月27日に、持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律が成立し、来年度から、都道府県と市町村がともに国民健康保険の運営を担うことになります。都道府県は国民健康保険の財政運営の責任主体となり、国民健康保険運営の中心的な役割を担います。
そこで、国民健康保険制度改革について伺います。
まず、国民健康保険運営方針についてお伺いします。
新制度は、都道府県が財政運営の責任主体として中心的な役割を担うとされている一方、市町村においても、資格管理、保険給付、保険料率の決定、賦課徴収、保健事業等の地域における事業を引き続き担うこととされており、都道府県と市町村が一体となって、これらの事務を共通認識のもとで実施するとともに市町村が事業の広域化や効率化を推進できるよう、都道府県が県内の統一的な国民健康保険運営方針を定める必要があるとしております。また、都道府県は、市町村の意見を聞いた上で、この方針を策定するとされており、市町村においても、これを踏まえた国民健康保険の事務の実施に努めることとしています。
なお、改正法の施行は来年4月1日となっているため、都道府県は、地域の実情に応じ市町村との連携会議や国保運営協議会を前倒しで設置して検討を行うなど、国保運営方針の今年度中の策定を求めております。
そこで、ことし5月22日に開催した第1回岩手県国民健康保険運営協議会において示された岩手県国民健康保険運営方針の素案の内容と、協議会においてどのような意見が出されたのか伺うとともに、今年度のスケジュールについてお伺いいたします。
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) 国民健康保険運営方針についてでありますが、運営方針は、改正後の国民健康保険法の規定により、市町村における保険料の標準的な算定方法、保険税の徴収の適正な実施など必須項目4項目、医療費の適正化の取り組みなど任意項目4項目について定めることとされています。
5月22日に開催した運営協議会においては、これまでの市町村等との協議を踏まえた現時点での素案を示したところであり、この中では、保険料水準については、当面の間は統一せずに市町村ごとに設定すること、収納率目標については、被保険者数の規模に応じて設定することなどを記載しています。
運営協議会における意見については、運営方針の記載内容について質疑が交わされたところでありますが、医療費の適正化に向けた健康づくりや予防の取り組みなどについて御意見をいただいたところであります。
今後のスケジュールにつきましては、運営協議会における意見等を踏まえて素案を修正した上で、9月に開催する予定の第2回運営協議会において再度審議していただくこととしております。その後、10月に国民健康保険法に定められた手続である市町村からの意見聴取を行い、その意見などを踏まえてさらに修正した上で、11月に開催する予定の第3回運営協議会において審議の上、答申をいただくこととしており、答申を踏まえて12月に運営方針を決定する予定であります。
〇6番(柳村一君) とてもタイトなスケジュールで大変でしょうけれども、頑張ってもらいたいと思います。
今の答弁の中で、保険料を当面統一しないでいこうということでしたけれども、現在の市町村の状況では、財政調整基金等の取り崩しなども行われていると思いますので、その件についてお伺いします。
第1回岩手県国民健康保険運営協議会において、標準保険料率の試算の結果を公表しましたが、平成27年度の保険税と比較すると増加している市町村もあります。
これまでは、財政調整基金の取り崩しや一般会計からの法定外繰り入れにより保険税を軽減している市町村もありますけれども、制度改革後においても同様な取り扱いができるのかどうかお伺いします。
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) 財政調整基金等の取り扱いについてでありますが、各市町村が設置している基金については、国から、各市町村において平成30年度の保険料設定時に、基金の活用等により激変緩和に最大限注力していただきたいという考え方が示されており、市町村の判断により保険税の軽減に活用できることとなっています。
また、保険税負担を抑制するための一般会計からの法定外繰り入れにつきましては、平成27年5月の参議院厚生労働委員会において、厚生労働省保険局長から、市町村で判断いただくことであり、制度によって禁止することはできないが、できるだけ国民健康保険財政の健全な確保をお願いしたい旨の答弁がなされているところであります。
〇6番(柳村一君) ということは、今までどおりの運営でいくというような考えでいいのでしょうか。であれば、なぜ、今回、県と市町村が保険者になるのか、ここら辺の一番の目的は何だったのか、もしおわかりであればお伺いします。
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) 今回の制度改革は、都道府県が国民健康保険の財政運営の責任主体となることで財政運営の適正化等を図るものでありますし、あわせてその基金の措置がございます。毎年、全国ベースで3、400億円の安定化基金がございますので、そういった基金も活用しながら、今の個々の市町村の国保運営というところから、都道府県が財政運営の責任主体となって運営していくということでございます。
〇6番(柳村一君) 何か、結局は保険をうまく運営していくために県も取り入れてやっていくということなのでしょうけれども、日本の国民健康保険のいいところは、誰でも、どこでも、いつでも保険医療が受けられるというところでありますので、国民健康保険事業の安定した運営を今後も県がしっかりと支援していってくださることを望んでおります。
あしたは7月1日で岩手山の山開きでございます。皆様方も奮って登山していただくことをお願い申し上げまして、私の一般質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇副議長(工藤大輔君) この際、暫時休憩いたします。
午後3時43分 休 憩
出席議員(47名)
1  番 千 田 美津子 君
2  番 臼 澤   勉 君
3  番 千 葉 絢 子 君
4  番 ハクセル美穂子 君
5  番 菅野 ひろのり 君
6  番 柳 村   一 君
7  番 阿 部 盛 重 君
8  番 佐 藤 ケイ子 君
9  番 佐々木 宣 和 君
10  番 川 村 伸 浩 君
11  番 田 村 勝 則 君
12  番 工 藤   誠 君
13  番 高 田 一 郎 君
14  番 吉 田 敬 子 君
15  番 佐々木   努 君
16  番 千 葉   進 君
17  番 佐々木 朋 和 君
18  番 名須川   晋 君
19  番 軽 石 義 則 君
20  番 神 崎 浩 之 君
21  番 城内 よしひこ 君
22  番 福 井 せいじ 君
23  番 佐々木 茂 光 君
24  番 高 橋 孝 眞 君
25  番 木 村 幸 弘 君
26  番 小 西 和 子 君
27  番 工 藤 勝 博 君
28  番 高 橋 但 馬 君
29  番 小 野   共 君
30  番 郷右近   浩 君
31  番 高 橋   元 君
32  番 関 根 敏 伸 君
33  番 岩 崎 友 一 君
34  番 嵯 峨 壱 朗 君
35  番 中 平   均 君
36  番 五日市   王 君
37  番 斉 藤   信 君
38  番 小野寺   好 君
39  番 飯 澤   匡 君
41  番 佐々木 順 一 君
42  番 田 村   誠 君
43  番 伊 藤 勢 至 君
44  番 工 藤 勝 子 君
45  番 樋 下 正 信 君
46  番 柳 村 岩 見 君
47  番 千 葉   伝 君
48  番 工 藤 大 輔 君
欠席議員(1名)
40  番 渡 辺 幸 貫 君
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後4時3分 再 開
〇副議長(工藤大輔君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
日程第2、一般質問を継続いたします。工藤勝子さん。
〔44番工藤勝子君登壇〕(拍手)

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