平成29年6月定例会 第9回岩手県議会定例会会議録

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〇8番(佐藤ケイ子君) 改革岩手の佐藤ケイ子でございます。
このたび、先輩、同僚議員の御配慮のもと、3回目の一般質問の機会をいただき感謝申し上げます。
まずもって、元県議会議員であり私の政治の師であります小原宣良氏が、6月10日に御逝去されました。宣良さんの県議会での最後の発言は、伊藤勢至議長のもとに開会された平成19年3月臨時会でした。岩手競馬存続の修正案に賛成討論し、1人の人間の生活を救えない者が140万県民の生活を救うことはできないと繰り返し述べられました。私は、この政治信条を肝に銘じ、謙虚に県政課題に取り組んでいかなければならないと改めて思っております。皆様の御指導よろしくお願い申し上げます。
それでは、通告に従い、順次質問いたします。最初に、若者の県内定着について伺います。
人材確保があらゆる業界で深刻な問題となってきています。県内においても同様の状況にあり、特に、東日本大震災津波からの復興を目指す沿岸地域における人材不足は顕著であるため、若者の県内就職率の向上を図ることが喫緊の課題です。
いわてで働こう推進協議会が行った県内若年者雇用動向調査の結果が6月12日に公表されました。それによると、県内学生の57%が県内への就職を希望しており、また、本県出身者で見ると69.2%が県内で働きたいと考えていることから、地元就職志向が高いことがわかります。
しかし、平成29年3月新卒者の県内就職内定者の割合は、平成22年3月の新卒者に比べ、短大は63.7%で5.6ポイントの減、専門学校、専修学校は57.4%で5.4ポイントの減となっており、高校と大学は、就職説明会やインターンシップなど県内企業を知ってもらう取り組みなどにより、高校は66.2%で11.6ポイントの増、大学も45%で11.5ポイントの増と上昇しているものの、県立大学の県内就職率が43.5%、県立産業技術短期大学校の県内就職率が約50%と低い状況にあります。
また、この調査の結果では、県内企業の知名度の低さのほか、就職に当たって学生が重視しているのは、賃金よりも仕事の内容、職種、労働時間、休日、休暇の条件、企業の雰囲気、自分の技能、能力、専門性が生かせるなどといった働きやすい職場環境であることが明らかになっています。
そこで知事にお伺いいたしますが、県は、これまで新卒者の県内への就職率の向上にどう取り組んできたのか、また、今後どのような対策を講じようと考えているのか、御所見をお伺いいたします。
一方、首都圏の企業は、給料や手当などの有利な条件を示し、積極的な求人活動を行っています。県外就職を希望する学生は、賃金や福利厚生なども重視していることが、同調査の結果でもわかるところです。
しかし、過日、横手市長の講演において、県外就職を望む風潮があるものの、首都圏と地方の住居、通勤時間、子育て環境、公共施設、治安、自然環境と余暇などをデータ化して比較してみると、地方で暮らす優位性が明らかになってくるという興味深いお話がありました。
そこで、岩手県に就職したほうが実質的に豊かな暮らしができるということを具体的に、積極的にPRすべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
次に、新たな奨学金返還助成制度の創設について伺います。
若者の人材確保と定着を図るため、県と産業界が2億円を出捐し、いわて産業人材奨学金返還支援基金を創設し、奨学金返還支援制度を設けたことは、大きな前進と評価しますが、対象者が限定的であり、若者定着を広く呼びかけるには至らないのではないかと思われます。
秋田県では、金額は3年間で最大60万円と少ないものの、民間企業に就職するほぼ全ての人が対象となること、募集人員の制限がないこと、正規雇用に限らないこと、既に卒業した者も対象となるなどといった助成対象範囲が広い制度を開始したということです。人口減少への危機感や本気度がうかがえ、若者定着に強力に取り組んでいるようです。
本県においても、助成対象の範囲がより広い新たな奨学金返還助成制度を創設すべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
2点目は、生涯未婚対策について伺います。
国立社会保障・人口問題研究所から生涯未婚率の調査結果が公表されました。これによると、50歳まで一度も結婚したことのない人の割合を示す生涯未婚率が、平成27年は全国平均で、男性23.37%、女性14.06%となっています。また、岩手県では、男性が26.16%と全国で2番目に生涯未婚率が高くなっています。
結婚は個人の自由ではありますが、結婚を希望しながら、社会的要因で希望がかなえられないとすれば、施策を講じなければなりません。
岩手県内の男性の生涯未婚率の高さの要因をどのように捉えているのかお伺いいたします。
生涯未婚率が高い要因は、賃金や将来の生活設計が不安定である非正規雇用労働者が増大している雇用環境に原因があるのではないでしょうか。
同研究所が昨年公表した第15回出生動向基本調査、結婚と出産に関する全国調査において、18歳から34歳までの未婚者のうち、いずれは結婚したいと考えている人は、男性の86%、女性の89%を占め、結婚したい人の割合は高いものの、ハードルとして結婚資金を挙げる人が最も多く、男女とも40%を超えており、職業や仕事上の問題を挙げる人の割合も増加しています。非正規雇用労働者の割合が4割に近づき、低賃金と雇用の不安定化が結婚を難しくしている一因となっていると思われます。
雇用環境改善は国の労働政策次第ではありますが、本県でも、雇用環境の改善に向け官民一体での取り組みを進めるべきと考えます。所見をお伺いいたします。
次に、“いきいき岩手”結婚サポートセンター─i-サポについて伺います。
i-サポは、現在、盛岡及び宮古において、マッチング事業と婚活イベント情報などの発信、結婚支援フォーラムの開催などといった普及啓発事業を行っています。その中でも特に重要な事業であるマッチング事業については、会員数が平成27年度の460人から、平成29年度5月末で合計1、074人となっているほか、お見合い回数なども増加傾向にあると聞いています。
これまでのi-サポの運営に対する評価と課題をどのように捉えているのか。また、本年の秋から県南地域に新たなセンターを設置するとのことですが、成果を出すためには、より強力な運営体制にする必要があると考えます。所見をお伺いいたします。
3点目は、県職員の労働環境について伺います。
働き方改革が注目されている昨今、本県でも、昨年度から働き方改革推進運動を開始し、参加企業を募集していますが、まず、県職員の働き方改革に本気で取り組むべきと考えます。
知事は、県民や企業のほか、県庁内における働き方の見直しやワーク・ライフ・バランスなどを進めていくため、みずからが県の代表者として仕事と家庭の両立支援などに率先して取り組むとし、昨年6月にイクボス宣言を表明しておりますが、職員の働き方改革やワーク・ライフ・バランスの推進に向けた知事の意欲をお伺いいたします。
次に、知事部局における欠員について伺います。
知事部局における今年度当初の欠員は123人で、特別募集で40人のマンパワー確保に努めているということですが、来年度の新規採用予定者は140人程度と示されており、退職予定者を踏まえれば改善に向かうとは思えません。また、任期付職員の平成29年4月での正職員化は少数にとどまっており、現場の期待を損なったのではないでしょうか。
東日本大震災津波からの復興事業に加え、昨年の台風第10号被害の復興業務が重なり、多くの職場で欠員が生じ、現場が疲弊していると聞いています。特に、獣医師、保健師、建築士を初めとする専門職が恒常的に不足しており、県行政の専門性確保に支障を来すのではないかと思われます。
そこで、職種ごとの欠員状況はどうなっているのか伺います。また、欠員解消への積極的な姿勢をお示し願います。
次に、超過勤務の縮減対策について伺います。
平成28年度における職員の超過勤務時間が、全庁平均では年間200時間、本庁では320時間と、東日本大震災津波時の大混乱時期以上に大幅に増加したということです。
職員の超過勤務の縮減を図ることは重要な問題であり、具体的にどのような対策を講じているのか伺います。
次に、非常勤職員の待遇改善について伺います。
地方公務員のうち、期限付臨時職員や非常勤職員は全国で65万人もおり、官制ワーキングプアとも言われています。
本県の知事部局でも、臨時、非常勤職員は1、100人を超え、学校職場でも1、800人を超える方々が、不安定な身分のもと低賃金で働いていますが、この方々がいなければ仕事が回らない状況です。
本年5月11日に地方公務員法及び地方自治法の一部改正が行われ、平成32年4月に施行となりますが、処遇改善のための財源問題、会計年度任用職員への転換に絡む正規職員の採用抑制など、さまざまな課題もあると言われています。
法改正の趣旨は、任用の適正化と勤務条件の確保にあるはずで、不利益が起こらないようにしなければならないと考えますが、どのように認識しているのかお伺いいたします。
次に、教員の長時間勤務について伺います。
教員の多忙化が問題となっており、小学校教員の約3割、中学校教員の約6割が過労死ラインに達していると報道されています。本県の高等学校においても、平成28年度で、1カ月の時間外勤務が100時間以上の教員の割合が7.6%、80時間以上100時間未満の教員の割合が5.5%と、実に13.1%が月80時間以上の時間外勤務を行っているとのことです。
県教育委員会としても、職員団体や関係団体との協議等により、学校現場の事務の簡素化、部活動休養日の設定、市町村に対する小中学校教員の勤務時間の把握と労働安全衛生体制の構築の依頼などといった対策を講じてきたというものの、いまだ小中学校教員の時間外勤務について、全ての市町村での実態把握に至っていないとのことです。
そこで、県教育委員会として、小中学校教員の勤務実態の把握に向け、これまでどのような取り組みを行ってきたのか伺います。
また、教員の勤務負担を軽減するため、今後、県教育委員会としてどのような対策を講じていくつもりなのか伺います。
4点目は、子供の貧困対策について伺います。
国民生活基礎調査によると、平成27年の子供の貧困率は13.9%と昨日の新聞報道がありました。これは、過去最悪だった前回、平成24年の16.3%より2.4ポイント改善したものの、依然として高目の水準にあり、子供の貧困対策が強く求められています。
本県では、平成28年3月にいわての子どもの貧困対策推進計画を策定しましたが、施策の推進に当たり、具体性に欠けているのではないかと考えます。例えば、1、教育支援、2、生活支援、3、保護者への就労支援、4、経済的支援、5、被災児童等への支援と5本の柱、22項目が示されているものの、指標は、スクールソーシャルワーカーの配置12人を平成31年度までに5人増員する目標以外は、ほとんど現状と変わらないと言っていいほどの目標数値になっていると思っています。
大分県は、子供の貧困対策を担当する学校安全・安心支援課を新設するとともに、貧困家庭の児童を早期に発見し支援が受けられるよう、スクールソーシャルワーカーの増員、各学校区へのアドバイザーの配置などを行っており、また、京都府では、生活困窮などの子供の総合支援拠点であるこどもの城の開設による子供の居場所づくりや、子ども食堂への食材提供体制構築事業を行うなど、多くの県が、より具体的な対策事業を行っています。
そこで知事にお伺いいたしますが、本県においても、子供の貧困対策の具現化に向けた専門の担当部署等の設置や、より踏み込んだ事業の展開が必要と考えます。御所見をお伺いいたします。
次に、実態調査について伺います。
愛知県では、部署横断型プロジェクトチームを設置し、子供の貧困大規模実態調査を実施済みで、この調査の分析の結果後に具体的な施策をまとめる予定と聞いています。また、沖縄県や愛知県、大阪府、北海道などでも実態調査を行い、具体的な対策に乗り出そうとしています。県内でも、盛岡市は、県立大学と共同でひとり親世帯の実態調査を行い、問題が浮き彫りになったとのことです。
本県の子供の貧困対策が現実的でない要因は、実態調査を行っていないことによる切迫感の不足が原因であると思えてなりません。本県でも実態把握を行った上で対策を講じていくべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
〔副議長退席、議長着席〕
次に、就学援助費について伺います。
生活保護を受給する要保護世帯に対する就学援助費は、半額が国庫補助ですが、入学前に購入するランドセル代など、就学予定者に対する支給についても補助対象とされました。
これを受け、市町村によっては、生活保護に準ずる程度に困窮し、援助が必要と認められる世帯─準要保護世帯に対する就学援助においても、新入学学用品を入学前に支給する取り組みが既に実施されています。
そこで、入学前に入学準備金を支給している県内市町村の状況を伺います。また、市町村の財政力によって、準要保護世帯の認定基準に差があることから、認定基準の緩和を図っていく必要があると考えます。準要保護世帯の認定基準の緩和が図られるよう、市町村に対する財政的支援も必要と考えますが、所見をお伺いいたします。
5点目は、介護保険制度について伺います。
平成12年にスタートした介護保険制度は、3年ごとの介護保険事業計画に基づき運営が行われており、現在は、平成27年度から平成29年度までの第6期計画に基づき運営されています。
これまで、見直しのたびに介護保険料は引き上げられ、65歳以上の第1号被保険者の全国平均保険料は、当初の2、911円から、現在は5、514円となっています。また、介護サービス利用者の自己負担は、1割から、所得によっては2割負担と倍になりました。
政府は、一億総活躍プランで介護離職ゼロを打ち出したものの、介護離職は毎年10万人とも言われ、仕事と介護の両立は難しい現実です。利用者と家族は負担増に苦しみ、サービス事業者は人材確保と経営問題が発生し、それぞれ納得できない制度になりつつあります。保険あって介護なし、国家的詐欺ではないかと言われていますが、介護保険制度が崩壊すれば生存権まで影響する問題であり、制度の充実を求めたいと思います。
そこで、来年度が第7期の初年度になっていますので、3点にわたって伺います。
まず、自己負担割合の増加の影響について伺います。
介護保険料や利用者の自己負担増を盛り込んだ介護保険法などの改正法が、5月26日、自民党、公明党、日本維新の会などの賛成多数で可決成立し、一部を除き来年4月に施行されます。これにより、現役世代並みの所得がある人の自己負担割合が2割から3割に上がり、また、平成29年8月からは、総報酬割が一部導入されることで、40歳から64歳までの第2号被保険者の介護保険料負担が、収入に応じてさらに増す場合があります。
平成27年8月から、所得に応じて自己負担割合が1割負担から2割負担に変更され、また、施設での食費や居住費の負担軽減のための補足給付の要件も厳格化されており、この影響が検証されないまま、さらなる負担増を求めることはいかがなものかと思います。
そこで、平成27年度の制度改正により自己負担割合が増加した人数は何人か。自己負担割合の増加により介護サービスの抑制につながっていないか伺います。また、さらなる自己負担割合の増加の課題をどう捉えているか、あわせて伺います。
次に、介護予防・日常生活支援総合事業について伺います。
国は、介護施設整備の限界と介護費用を削減するため在宅介護を進めており、各市町村において、地域包括ケアシステム構築に向けた取り組みが進められていますが、その一環として、今年度から、県内全ての市町村で要支援1、2などの事業対象者への介護予防・日常生活支援総合事業がスタートしました。
しかし、地域においては、多様なサービスの担い手となるボランティアなどが少なく、実質的に多様なサービスは増加していないのではないかと思われます。
県は、市町村に対する情報提供などにより、新しい総合事業が適切に実施されるよう支援に取り組むこととしていますが、県内市町村における総合事業の実施状況と課題をどう捉えているのか伺います。
次に、介護職員不足について伺います。
厚生労働省が発表した介護人材需給推計によると、2025年度には介護職員が全国で約253万人必要になるとされています。これに対し、供給の見込みは約215万人と、およそ38万人の介護職員が不足する見込みであり、介護職員の不足は深刻な状況にあります。
県では、介護人材キャリア支援員によるマッチング支援、介護福祉士等修学資金の貸付制度、同制度における再就職準備金の創設などを行っていますが、効果があらわれてきているのでしょうか。また、今後の対策をどのようにしようと考えているのか伺います。
6点目は、国民健康保険の統合について伺います。
市町村国保の運営が厳しい中、都道府県の広域になれば財政が安定するのではないかとか、国の財政支援でこれ以上は悪くならないだろうといった雰囲気の中、来年度から国保の都道府県単位化が始まろうとしています。一方で、国が都道府県を使い、市町村を目標管理していくとも言われています。このことによって、受診抑制や国保税の負担増、差し押さえなどといった国保事業の後退や、市町村ごとに丁寧に何とか維持してきた国保税制度が崩れていくのではないかと懸念されます。
県は、5月22日に標準保険料率の試算を公表しましたが、1人平均11万3、937円で、平成27年度比6、781円の増となっています。現在は、市町村ごとの事情により個別に保険料を決定しており、試算結果と現在の保険料の比較は簡単にはできませんが、加入者負担が多くなるのではないかと危惧されます。赤字補填のため一般会計からの繰り入れを行っている市町村は、平成27年度に10市町村であり、それらを加味すれば実際の保険料は変わる可能性があります。
そこで、県内では医療供給体制の地域格差や保険料と医療環境の不平等感がさらに意識化されるのではないかといった問題もあり、保険料の激変緩和を図る必要があると思いますが、どのように認識しているのか伺います。
次に、標準保険税率の決定について伺います。
県は、市町村間で生じる差額などを分析し、市町村ごとの標準保険料率について来年1月の決定を目指すとしていますが、来年1月の決定では、市町村にとって厳しい日程となると考えます。標準保険料率の決定スケジュールを前倒しすることができないか伺います。
次に、国保連の役割について伺います。
岩手県国民健康保険団体連合会─国保連では、現在、医療機関等から請求された診療報酬請求書等の審査と支払い事務を行っているほか、保険者の事務の効率化を支援するため事務の共同処理事業を行っていますが、国保の制度改革によって国保連の役割は変わることになるのか伺います。
7点目は、農業振興について伺います。
まず、種子法廃止について伺います。
主要農作物種子法は、稲、麦、大豆といった主要農作物の優良な種子の生産や普及を進める必要性から、都道府県に、主要農作物の原種及び原原種の生産や普及すべき奨励品種を決定するための試験の実施を義務づけてきました。
しかし、国は、都道府県中心の現制度では、民間企業が開発した稲の品種で奨励品種に採用されたものがないことなどから、民間の開発意欲を阻害しているとし、民間活力を活用した種子の開発、供給体制を構築するため種子法を廃止しました。このことにより、種子生産への都道府県の関与が弱まり、種子供給や品質の不安定化、外国資本による種子生産の独占化への危惧などの問題が懸念されています。
本県にとって優良な種子の安定供給は重要な問題と考えますが、県は、種子法廃止の影響をどのように捉え、どのように対応しようとしているのか伺います。
次に、耕作放棄地対策について伺います。
耕作放棄地が年々増加しており、平成27年には全国で約42万ヘクタールに達しています。また、再生利用が可能とされる遊休農地は約13万ヘクタールとなっています。
国は、平成26年4月に農地中間管理事業を開始し、農地中間管理機構が農地の貸し借りなどのマッチングを担うことで農地利用の促進を図っていますが、何世代も未登記が続き所有者が不明な農地については、他の農業者が利用することができず、一度荒廃すると放置されたままのケースがほとんどです。
このため、所有者が不明な農地について、知事が裁定を行うことで、同機構を通して農業者が利用できるよう制度化されました。耕作放棄地の増加は地域の衰退につながるため、知事裁定の仕組みを設けたことはよいことだと考えます。
制度開始以降、裁定まで進んだケースはありませんでしたが、本年2月に静岡県が全国で初めて知事裁定を行い、3月には青森県でも知事裁定が行われました。なお、静岡県では、地理情報システム─GISの活用なども行い、耕作放棄地の見える化を図っていくようです。
耕作放棄地の再生については、知事裁定制度の活用に加え、農業委員会の活動も課題となりますが、今後、本県の耕作放棄地対策をどのように進めようとしているのか伺います。
次に、青年就農給付金利用者への支援について伺います。
新たに農業経営を目指す若い就農者を支援するため、平成24年度から年間150万円の青年就農給付金を給付する制度が創設され、現在は、農業次世代人材投資資金に制度名が変更されました。
なお、就農後の経営確立を支援する経営開始型では、交付期間終了後、交付期間と同期間以上営農を継続しなかった場合、資金の返還が求められることになっています。
新規就農者を確実にふやし、途中で営農をやめることがないよう継続的な支援が必要ですが、現状では、農業改良普及員の不足などから支援が行き届いていないとの声や、親元就農では制度が使いにくいという声も聞かれます。
そこで、この制度の受給者数及び就農開始や離農など、活用状況と課題を伺います。また、青年就農給付金を利用した新規青年就農者に対する支援の強化が必要と考えますが、所見をお伺いいたします。
以上でございます。答弁によっては再質問させていただきます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 佐藤ケイ子議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、新卒者の県内就職率の向上についてでありますが、これまで県では、県内各地域に配置する就業支援員により新規高卒者の県内就職を支援してきたほか、若者やその保護者など関係者が県内の産業や県内企業を知り、県内への就職につなげるための各種取り組みを実施してまいりました。また、例年開催している岩手労働局やふるさといわて定住財団と連携した県内及び首都圏における就職面接会に加えまして、昨年度からはいわてで働こう推進協議会を核として全県的な働き方改革推進運動を展開しており、県内企業の優良事例をいわて働き方改革アワードとして表彰するなど、広く情報発信を図ってきたところであります。また、県内各大学のインターンシップ事業の支援や、国の支援制度を活用した理工系大学生等の県内ものづくり産業への就業を促進するいわて産業人材奨学金返還支援制度の創設などを行ってきたところであります。
今年度におきましては、これらの取り組みに加え、新たに、若者や女性を初め広く県民に岩手で働くことの魅力を感じてもらうとともに、県内企業をよく知ってもらう場として、いわてで働こう総合イベントの開催、首都圏等在住学生を対象とする企業とのインターンシップ等の交流事業でありますおかえりいわてツアーの実施、働き方改革のモデル企業を創出するため、意欲的に取り組む企業を専門的に支援するコンサルタント事業の実施など、これらを総合的に推進していくことにより新卒者の県内就職率の向上に取り組んでまいります。
次に、職員の働き方改革の推進についてでありますが、県では、県民がみずからの希望に応じて仕事と生活の調和を大切にしながら充実した生活を送ることができるよう、県内の企業や団体の参画を得て働き方改革の取り組みを進めているところであり、庁内におきましても、こうしたワーク・ライフ・バランスを重視した働き方改革を推進していくことが重要であります。
このため、次世代育成支援及び女性活躍推進のための特定事業主行動計画をもとに、業務の見直し等による超過勤務の縮減、女性職員のキャリア形成、能力向上を目的とした研修の実施や相談体制の充実、男女を問わず、子供の出生予定がある職員に対する休暇取得や勤務時間等の希望を踏まえた支援など、子育てしやすく、仕事と生活の調和がとれる職場環境づくりに取り組んできたところであります。また、今年度においては、今後の女性活躍や人材育成のあり方を含めた職員の働き方改革を検討するため、部局横断の検討組織を設置し、検討に着手したところであります。
今後におきましても、引き続き超過勤務の縮減や育児休業、介護休暇などを取得しやすい環境づくりに努め、職員の仕事と生活の両立を応援できるよう働き方改革に取り組んでまいります。
次に、子供の貧困対策についてでありますが、県では、いわての子どもの貧困対策推進計画に基づいて、保健福祉部門はもとより、教育部門や労働部門など各分野が連携して取り組んできたところであり、今年度は、ひとり親家庭の支援者養成セミナーの開催や生活困窮世帯等の子供の学習支援の充実など、取り組みの拡充を図ったところであります。
子供の貧困対策を一層推進するため、今年度、新たに庁内関係部局で構成する連絡調整会議を設置し、この中で計画の進捗状況の確認や新たな支援施策の検討を行うなど、部局横断的に取り組んでいくこととしています。こうした取り組みに加えまして、子供の支援に取り組む団体等と課題や支援ニーズ等について率直な意見交換を行い、議論を深めていくことなどにより、子供の将来がその生まれ育った環境に左右されることなく、自分の将来に希望を持てる社会の実現に向けて教育支援や生活支援などの子供の貧困対策を総合的に推進してまいります。
その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
〔商工労働観光部長菊池哲君登壇〕
〇商工労働観光部長(菊池哲君) まず、岩手で暮らす豊かさのPRについてでありますが、県では、若者の県内就職を推進するため、県内の仕事や就職情報を掲載した冊子いわて就活ガイドや、県内新聞社の協力で発行しておりますタブロイド版イワテバコを県内外に広く配布するとともに、本県への移住、定住を促進するガイドブックいわてイーハトー部に入ろうを作成し、学生を対象とした就職説明会や県外での移住相談会などで広く情報発信を行っているところでございます。さらに、県内の高校3年生の卒業時におきましては、県内産業や岩手と東京の暮らしの比較等を掲載いたしました、知ってる?いわてのいいところというカレンダーを卒業生全員に配っております。
これらのPR媒体には、就職、移住、定住情報等にあわせて、住環境、通勤通学時間、子育て環境などを比較したデータを盛り込むことにより、岩手の優位性について多面的に紹介し、PRに努めているところでございます。
今後も、引き続き本県で暮らす豊かさについて積極的に情報発信していくことによりまして県内就業促進に取り組んでまいります。
次に、奨学金返還支援制度についてでありますが、県といたしましては、厳しい財政状況の中、中小企業団体等からの産業人材確保についての要望も踏まえまして、地域産業の牽引役となる産業や、戦略的に振興する産業に必要な人材を確保するための国の支援制度を活用し、理工系大学生等の学生や既卒者の本県ものづくり産業への就業を支援するいわて産業人材奨学金返還支援制度を創設したところでございます。
本制度では、国のスキームに従い、地域経済の牽引役として成長が期待されるものづくり産業に必要な高度技術人材の確保を支援することとし、対象範囲については、岩手県ふるさと振興総合戦略において、戦略的に振興することとしている産業分野としたところでございます。
今年度から運用を開始した本制度でございますので、当面はこれにより高度技術産業人材の確保、定着と本県ものづくり産業の振興の両面の取り組みを進めてまいりますが、これに加え、各地域で行われている就職面接会や大学生等の企業見学会等の拡充等の取り組み、さらに、いわてで働こう推進協議会の各構成団体とも連携した働き方改革の着実な推進など、若者の県内への還流、定着に向けた総合的な施策を一層促進してまいります。
次に、雇用環境の改善に向けた取り組みについてでありますが、まずもって国においては、キャリアアップ助成金制度の活用やハローワークによるいわゆる学卒ジョブサポーターによる支援など、正社員就職、正社員転換の推進に取り組んでいるところでございまして、県におきましても、県内企業に積極的に諸制度を活用するよう促しているところでございます。
また、県では、岩手県労働局が設置いたしました岩手県正社員転換・待遇改善等実現本部への参画を行うとともに、国や市町村等と連携しながら県内経済団体等への要請活動などを一体的に展開しているところでございます。とりわけ非正規労働者の正社員転換、待遇改善につきましては、経営者側の取り組みが重要でありますことから、いわてで働こう推進協議会におきましても、今年度、特に注力する分野として位置づけ、より一層の雇用環境の改善に向け官民一体となって取り組んでいくこととしております。
〔保健福祉部長八重樫幸治君登壇〕
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) まず、県内の男性の生涯未婚率の高さの要因についてでありますが、結婚に対する価値観やライフスタイルの多様化などによりその要因の絞り込みは困難ですが、平成27年度に公益財団法人いきいき岩手支援財団が県内の25歳から49歳までの独身者を対象に実施した結婚に関する意識調査によると、結婚が難しい理由として、男性では自分の経済力が弱いことや出会いのチャンスが少ないことが上位となっており、これらがその要因の一つとなっていると考えられます。
次に、“いきいき岩手”結婚サポートセンター─i-サポの運営についてでありますが、本年4月から6月までの3カ月間で成婚会員が9組誕生し、昨年度の10組と合わせて累計で19組となったところであり、登録会員も増加しているなど、おおむね順調に運営されているものと認識しています。
一方、成婚会員のさらなる増加に向けては、新たな会員の確保と多くのマッチング機会の提供が重要であり、特に県央地域と同等の人口を有する県南地域の利用促進を図る必要があると考えています。このため、県南地域に既設のセンターと同等の機能を有するセンターを本年10月に設置し、新規会員の増加や会員の利便性の向上を図ることとしており、専任スタッフ3名を配置して入会登録、お相手検索、お見合い等のマッチング事業をさらに強化するとともに、民間企業や結婚支援団体等への訪問を実施し、積極的にセンター利用を働きかけていきたいと考えております。
次に、子供の貧困の実態調査についてでありますが、本県ではこれまで、生活保護世帯の子供や就学援助を受けている子供の割合など、公的支援の対象となっている子供に関する統計資料等により子供の貧困の実態を把握してきたところであります。都道府県レベルにおいては、それぞれの県で調査手法は異なるものの、昨年度までに11都道府県で子供の貧困に関する実態調査を実施してきたと承知しています。このため、今年度、新たに設置する庁内関係部局の連絡調整会議の中で、他県の例も参考にしながら調査項目や調査方法等についての検討を行っていきたいと考えております。
なお、議員御紹介のとおり、昨年度は盛岡市が実態調査を実施したほか、本年度、新たに三つの市で調査が予定されているところであり、その調査結果を参考にするとともに、当該市町村とも連携を図りながら、今後、県が取り組むべき施策を検討してまいります。
次に、介護保険制度に係る自己負担割合の増加の影響と課題についてでありますが、平成27年8月から一定以上の所得がある方の負担割合が2割とされ、本県では平成29年3月末時点で4、435人が2割負担となっています。その影響は、本県においては、2割負担導入の前後の比較で、サービス受給者数、サービス利用回数等に大きな変化は見られないところであります。
また、平成30年8月からは2割負担者のうち現役並みの所得の方が3割負担となり、国の試算によると、2割負担者の約4分の1が負担増となる見込みです。
一般的に、介護サービスは継続して利用され、負担が長期に及ぶことから、これまでも国に対して、制度改正に伴う運用上の課題等を十分に把握した上で必要な見直しを行うよう求めてきたところであります。今後においても、サービスの利用状況等を通じて制度改正の影響を把握し、必要な提言、要望を行っていきます。
次に、県内の介護予防・日常生活支援総合事業の状況と課題についてでありますが、平成29年6月1日現在における介護予防・生活支援サービス事業の実施状況を見ると、従来の介護予防訪問介護、通所介護に相当するサービスについては全ての市町村で実施していますが、それ以外の多様なサービスについて、実施済み、または今年度中の実施を予定しているのは、訪問型13市町村、通所型16市町となっています。多様なサービスの創出等を進める上では、地域資源の把握や関係者との調整、担い手の養成などが課題となっており、県では、地域において新たなサービスの創出や担い手の確保などの調整役を担う生活支援コーディネーターを養成するなどして、多様なサービスの提供に向けた市町村の取り組みを継続的に支援していくこととしています。
次に、介護職員不足に向けた対策についてでありますが、介護人材キャリア支援員によるマッチング支援では、昨年度は295名が、今年度も5月までに57名が県内事業所に就業しました。また、介護福祉士等修学資金貸付制度において、養成施設就学者に対しては平成21年度から平成28年度までに416名に対し貸し付けが行われ、本年4月1日現在、337名が県内の事業所に就業し、さらに、昨年11月から開始した再就職準備金については本年6月現在で7名に対し貸し付けが行われ、県内の事業所での就業に結びつくなど、それぞれ一定の効果を上げてきたところであります。
しかしながら、依然として人材不足が顕著な状況にあるため、今後は、介護職員初任者研修の受講料補助に係る補助対象者の拡充や介護助手に係る普及啓発など新たな取り組みも展開していくほか、関係団体や市町村が行う人材確保に関する事業に補助を行うなど、関係団体等とも連携し介護人材確保に取り組んでいきます。
次に、国民健康保険の保険料についてでありますが、現在、各市町村においては個別に保険料率を決定しているところですが、制度改革後は、都道府県が医療費水準等を勘案し、市町村ごとに国民健康保険事業費納付金の額を決定するとともに、納付金を納めるために必要な標準保険料率を市町村ごとに示すこととされており、市町村においては、この標準保険料率を参考として、条例により保険料率を決定することとなっています。平成30年度より財政運営の仕組みが変わることに伴い、市町村によっては保険料負担が上昇することも考えられることから、被保険者の保険料負担が急激に変化することがないよう激変緩和措置を講じることを検討しており、どのような措置を講じることができるかについては、今後、市町村と協議してまいります。
次に、標準保険料率の決定スケジュールについてでありますが、市町村ごとの納付金、標準保険料率を算定するためには、翌年度の医療給付費や公費などを推計するための係数を用いる必要があり、この係数は国が示すこととされています。国においては、国の予算編成を踏まえて12月末をめどに確定係数を提示することとしており、確定係数が示された後に県が納付金、標準保険料率を決定することとなるため、決定の時期を前倒しするのは困難であります。
なお、国においては、10月をめどに仮係数を提示することとしており、県では、仮係数に基づく納付金、標準保険料率を算定し、市町村に提示する予定であることから、市町村においては、これを参考として予算編成や保険料率改定などの準備を進めていただくこととしています。
次に、国民健康保険団体連合会の役割についてでありますが、国民健康保険団体連合会は、制度改正後においても、引き続き、診療報酬請求等の審査、支払い事務のほか、保険者が行う事務の共同処理事業などを担っていくものと考えています。制度改革に当たっては、県内統一的な運営方針を定め、市町村が行う事務の効率化、広域化や医療費の適正化などを推進することとしており、国保連合会が行う共同処理事業の拡大や、保有している特定健診等の各種データを活用した市町村の保健事業に対する支援など、国保連合会が果たす役割はますます重要になってくるのではないかと考えています。
〇議長(田村誠君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
〔総務部長佐藤博君登壇〕
〇総務部長(佐藤博君) まず、知事部局における欠員についてでありますが、本年4月1日現在において一般行政職65人、総合土木職26人等の欠員となっており、一般行政職及び総合土木職の2職種で欠員の約7割を占めているところであり、ほかにも、議員御指摘のとおり獣医師などの専門職の欠員が生じているところでございます。
欠員の解消に向けては、これまでも、新規職員採用数の大幅な拡大、任期付職員や再任用職員の採用、都道府県等からの応援職員の受け入れ、任期付職員経験者の任期の定めのない職員への採用を進めてきたところでございます。
今年度におきましては、これらの取り組みに加え、職員の特別募集を実施しているほか、次年度以降の採用に向け、県内外の大学やこれらの父母会の会合に出向いて、県職員の業務内容、やりがいや魅力を説明するなど、採用試験受験者の確保、強化に努めているところでございます。また、ジョブカフェいわてを通じ、県外の大学等に進学している学生やU・Iターンを希望する一般求職者へ職員採用に関するダイレクトメールの配信を行うなど、新たな情報発信にも努めているところです。震災復興、台風災害に加え、新たな政策課題などの行政需要に対応していくため、これらの人材確保に向けた取り組みを継続するとともに、事務事業の効率化や重点化などにも十分配意しながら、職員体制の確保充実に向けて対策を講じてまいります。
次に、超過勤務の縮減対策についてでありますが、平成28年度の知事部局の1人当たり月平均超過勤務時間数は16.7時間であり、これは、復興業務の本格化や台風第10号災害への対応、希望郷いわて国体、希望郷いわて大会の開催業務、宮城県で発生した高病原性鳥インフルエンザ対応などにより、前年度の13.7時間と比較して3時間増加しているところです。
これまでも、超過勤務の縮減に向けて、事前命令と事後確認の徹底や定時退庁日の設定、事務分担の見直し、業務支援の活用等により縮減に努めてきたところでございますが、今年度においては、各所属で策定する業務方針に仕事と生活の両立のための具体的な方策を新たに記載することとし、各所属長のリーダーシップのもと、実情に応じた働き方の見直しなどに取り組んでいるところです。また、こうした取り組みに加え、各部局や広域振興局の管理課長等をメンバーとする会議で超過勤務の縮減や年次休暇の取得促進につながる取り組みを検討し、有用な事例は全庁で共有を図るなど、各所属の仕事と生活の両立に向けた取り組みを支援していくこととしています。
次に、非正規職員の待遇改善についてでありますが、今般の法改正により創設される会計年度任用職員制度について、国はその立法過程におきまして、改正法の趣旨は、臨時、非常勤職員の適正な任用や勤務条件の確保であること、勤務条件の確保に伴う財政上の制約を理由とした処遇の引き下げは法の趣旨に沿わないものであること、制度導入後も、地方公共団体の運営は任期の定めのない常勤職員を中心とする原則を維持するべきであることとの説明を行っています。
今後、制度の円滑な運用のため必要とされる事項等について国から通知が発出される予定であり、その内容や、他の都道府県の動向等を踏まえた上で対応を検討していくこととしています。
〔農林水産部長紺野由夫君登壇〕
〇農林水産部長(紺野由夫君) まず、主要農作物種子法廃止の影響についてでありますが、これまで県は、主要農作物種子法に基づき、原種、原原種の生産や種子生産圃場の審査などの業務を行ってきたところであります。今般、種子法を廃止する法律が成立し、県が実施してきた業務の法的根拠が喪失することにより、粗悪な種子の流通や種子供給量の不足などが懸念されているところであります。
このため、県では、国に対して、本県農業の重要作物である稲、麦、大豆の種子生産に関するガイドラインの制定や、県が行う種子の生産、普及に対する地方交付税措置の継続を要望してきたところであります。国では、今後とも都道府県中心の種子生産を継続できるよう、都道府県の役割や種子の品質等に関する基準を種苗法の関連通知で規定するとしており、県では、これら国の動向も踏まえながら、引き続き、優良な種子を安定的に生産、供給する体制を堅持してまいります。
次に、耕作放棄地対策についてでありますが、これまで、耕作放棄地の発生防止に向けては、中山間地域等直接支払制度などを活用した農業生産活動等への支援や農業委員会等による農地パトロールなどに取り組んできたところであります。また、耕作放棄地の再生に向けては、農業委員会が農地の状況等を確認し、所有者から貸し付けの意向が示された場合には、農地中間管理機構と連携し受け手とのマッチングに取り組むとともに、耕作放棄地再生利用緊急対策交付金等を活用し、刈り払い作業や土壌改良などを推し進めてきたところであります。
今後は、これらの取り組みに加え、農業委員会の農地利用最適化推進委員などによる情報収集活動や、農用地の集積、集約化の強化に向け、農地中間管理機構と担い手組織とが締結した連携協定に基づき、出し手の掘り起こしや担い手の意向確認をきめ細かに行い、さらに、所有者が不明な場合には知事裁定の制度も活用し、関係団体と一丸となって担い手への農地集積と耕作放棄地対策に向け取り組んでまいります。
次に、青年就農給付金利用就農者に対する支援についてでありますが、経営が軌道に乗るまでの支援を行う経営開始型の受給者は、制度が創設された平成24年度以降466名で、このうち離農した者は12名、2.6%となっております。
受給者には、これまで普及センターが中心となって、生産技術の習得や機械、施設の導入などの支援に取り組んできたところであります。しかし、昨年度、受給者を対象に実施した経営状況調査では、就農5年後の販売目標額の達成割合が約4割と低かったことから、所得の確保に向けて、技術レベル、労働力、機械設備など、個々の状況に応じた綿密な生産計画と販売戦略を作成し、それに基づいた実践が必要になっているところであります。
このため、今後は、個々のレベルに応じた技術指導に加え、経営計画の作成や複式簿記の習得など、きめ細かなフォローアップにより、早期に経営を確立し、地域の担い手として定着できるよう積極的に支援してまいります。
〔教育長高橋嘉行君登壇〕
〇教育長(高橋嘉行君) 教員の勤務時間についてでありますが、教員の職務は、個々人の自主性、創造性に期待する面が大きいことや、校内での業務に加え、校外での自己研さんや活動など多様性があり、単純にその測定をすることが困難なこと等から、法令上、原則的には超過勤務命令を行わないこととされ、その勤務の多様性に対しては、教職調整額という給与上の措置が講じられており、制度的に超過勤務の記録を行うこととされていない実情にあります。
しかしながら、このような制度的な考えと教員の勤務実態との乖離があることに加え、学校教育の推進に当たり、教員の心身の健康、士気の高揚が極めて重要であることから、県教育委員会におきましては、関係団体との合意形成を図りながら、市町村教育委員会、各学校に対し、超過勤務の実態の記録とともに、校務分掌の平準化など学校マネジメントへの活用を働きかけてきております。
現在、全ての県立学校と29の市町村において勤務実態の把握が行われておりますが、未実施の町村に対しても、できるだけ早期に取り組まれるよう引き続き要請しているところであります。
本県における教員の負担軽減については、これまで、少人数学級の推進や部活動休養日の確実な設定などに取り組んできたところでありますが、今後においても、さらなる推進策を学校関係者、職員団体等との理解のもとに、その成果を積み上げていくとともに、現在、国においては、教員勤務実態調査の結果等を踏まえ、教職員体制のあり方などの総合的な方策の検討を中央教育審議会に諮問いたしておりますので、県教育委員会といたしましては、この動向を注視しつつ、教職員定数の充実や抜本的な改善の実現に向けて、関係団体とも十分に連携しながら、引き続き国に対し強く要望してまいります。
次に、就学援助費についてでありますが、準要保護世帯に対する就学援助については、いわゆる三位一体改革により、国庫補助事業から地方への税源移譲と地方交付税措置へ移行し、以降は市町村の単独事業として実施されているものであり、支給内容や認定基準について、毎年度、各市町村で検討が行われ、保護者負担の実情等を考慮した見直しが行われてきております。
新入学児童生徒学用品費の入学年度開始前の支給については、昨年度から、八幡平市を初め4市村において実施されており、さらに、多くの市町村でその検討が行われていると承知いたしております。
また、準要保護就学援助制度については、実施主体である市町村に対し地方交付税措置が講じられておりますことから、市町村と県の役割分担として、県が重ねて財政的支援を行うことは難しいと考えておりますが、この制度には、経済的理由により就学が困難な子供の学ぶ機会を保障するための重要な役割がありますので、今後におきましても、引き続き各市町村の考えを尊重しつつ、県内各市町村における支給時期や内容、認定基準等について情報提供を行いながら、各市町村の実情を踏まえた、より適切な運用が図られるよう助言してまいります。
〇8番(佐藤ケイ子君) 答弁ありがとうございました。何点か再質問させていただきたいと思いますけれども、この雇用労働政策が、本当に地域の末端まで大きな影響を与えているなというのを常々私は感じております。労働者派遣法の問題とか労働基準法の残業規制とかもゆるゆるになっているとか、最低賃金法の問題とか、やはり地方で暮らしていくにはなかなか厳しいな。それが、結婚や出産にも影響してきますし、公務職場でも、学校職場でも、それから、子供たちにも大きな影響を与えているのが、この雇用労働政策だと思っております。
それで、まず、さきに岩手で暮らす豊かさをPRできないのかということで質問いたしましたけれども、先ほどの答弁でも、イーハトー部に入ろうとか、そういうものが出ていますよというので、こういう質問をする中で、いわてイーハトー部に入ろうとか、いわて就職ガイドとかが出ているということを知りましたが、これは、Iターン、Uターンの方々向けでして、やはり高校の段階から、岩手に残る、親元というか地元に残ることの意味を意識する、それから、親も意識することが非常に大事ではないかと思っておりました。
それで、秋田県では、人口減少で本当に切迫感があるなと、危機感を感じているのだと思いますけれども、暮らしやすさの貨幣価値というものを出しております。働きやすさとか、教育、子育て、それから自然環境とかライフスタイルとか、そういったものを貨幣価値にあらわしておりまして、平均賃金は低いけれども、秋田で暮らすと、さらに年間128万何がしのアップ分があるんですよ、そういった数字を出している。それから、やっぱりこの横手市の講演会でもあったんですけれども、秋田で暮らすと、収入は例えば38万6、000円ぐらいだ、東京は44万円だと。ただし、消費支出が秋田の場合は24万9、000円、東京の場合は33万幾らで、残るお金は実質的には地方のほうがいいんじゃないのという意識化を図っているようなんですね。
それが本当に定着にどの程度生かされるかはわからないところですけれども、そうしたあらゆる活動が必要なんだなと。それも、若いときから必要だなと私は本当に思っておりまして、そうした意味でも、さまざまな政策を、子供、学生に意識化させるということよりも、親、先生にどうやってPRできるのかということを私は意識してほしいと思っておりまして、御検討いただきたいと思います。御所見をいただきたいと思います。
それから、新たな奨学金助成制度の関係ですけれども、高度人材育成の関係では、制度をスタートさせたばかりで、まだ実質的に始まっていないわけですが、一般的に、奨学金返済に苦しんでいる若者が非常に多いわけです。奨学金というよりも教育ローンですね。日本学生支援機構によると、平均借り入れ280万円、300万円近く借金がある状態で社会人としてスタートしている。大学を出たけれども、本当に仕事が続けられるんだろうか不安だ。給料が安くて、返済も大変だし、結婚も考えられない。結婚資金をためるのは夢のまた夢だなという本当に大変な状況が若い人たちにある。
どうやってそういう人たちを応援できるのかということ、それから、地元に定着すれば少しでもそういったお役に立てるんだよということも、やっぱり県で検討していただきたいと思っておりまして、さらに、ぜひさまざまな助成制度を創設、検討いただきたいと思っております。改めて所見をお伺いいたします。
各県では、中小企業に就職される方とか、金額も安いんですけれども、応援制度をつくっておりまして、これは各県の知恵の出しどころということなのではないかと思っておりまして、どうぞ御検討をお願いいたします。
次に、欠員の関係です。
これは、知事部局における欠員の関係ですけれども、建築士と獣医師の関係でお伺いしたいのですが、建築職は、先ほども二十数名の欠員があるということですが、建築士というのは本来はクリエーティブな仕事ですけれども、役所の建築行政職は、ほかの方が設計したものを検査するとか、本当に地道な部分が多くて、なかなかそれを希望する人がいない。さらには初任給が低いということなどもあって、なかなか応募してもらえないということですので、大幅な初任給改善が必要なのではないかと考えております。そうしなければ、この建築職確保は難しいと思っております。
それから、獣医師の関係です。先ほど千葉伝議員への答弁にもありまして、実際に欠員が出ていると数字も出ておりましたけれども、岩手県の獣医師の過重というものが出ているようです。管理頭数というものがあって、牛だったら1、豚だったら0.2、鳥だったら0.01で換算するのだそうですけれども、1人当たりの獣医師の管理頭数、全国は4、247頭に対して、岩手県は8、262頭を担当しているということで、岩手県の獣医師は大変です。
それから、初任給調整手当の部分でも、北海道とか青森県は15年間で670万円ぐらいの手当が出る。岩手県は370万円ぐらいしかない。半分ぐらいしか出ない。そういうことで、かなり専門職確保については難しい状況にあるということです。
ですから、技術の必要な専門職を確保するための処遇改善などの対策が必要ですので、ぜひ御検討いただきたいと思っております。御所見を伺います。
それから、教員の長時間勤務の問題です。
先日、女性議員と語る会というものを行いました。多くの教員から、多忙だと、もう悲鳴をお聞きいたしました。これは、教育委員会も本当はわかっていらっしゃるんだろうと思いますけれども、こんな声がありました。体調を崩す先生が多い。お互いに、倒れないように何とか頑張ろうと声をかけ合って、何とかしのいでいる。
それから、部活の問題ですね。中学校の部活、月2回の休日休みと週1休みをとろうとしている。それはいいけれども、平日の活動時間が異常に長い。マスコミなどでも、子供は8時になったらテレビに出ないわけですけれども、もう9時過ぎまでやっている。それで、本当に子供も疲弊している、指導者も大変だ。親の理解を得られるように醸成していかなければならない。それは、教育委員会もそうですし学校もそうですけれども、部活に対しての親の理解を得られるような活動が必要なのではないか。親の会が熱心で、部活がハード。学力向上と言いつつ、宿題が多いわけですけれども、それを子供たちはこなせないとか、親の意識改革が必要だ。
それから、育休の代替教員の不足の問題も出ていました。育休取得の意識は浸透している。だけれども、代替教員が確保できません。人探しにもう連絡しまくっている状況です。人材バンクが必要ではないでしょうか。県教育委員会は免許更新時に登録をしてもらっているわけですから、そういったものをチェックできないのかというような問題があります。また、非常勤職員が多過ぎる。学校現場に講師の先生が多くて、正職員の先生に雑多な仕事で負担がかかり過ぎるといったようなさまざまな問題が出されております。
そうしたものを一つ一つ改善しなければならないわけですけれども、やはり市町村教育委員会も、県教育委員会も、本当に協力的に、どちらも主体的に、これは県の仕事、市町村の仕事ではなくて、どちらも積極的な取り組みをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
〇商工労働観光部長(菊池哲君) まず、先生方や保護者を通じた岩手で暮らす豊かさの効果的なPRについてということで、先ほど御答弁申し上げました事例、カレンダーのお話とか、さまざまな媒体の展開、先ほどは御答弁しませんでしたが、ウエブ登録などをしていただいての情報提供など、さまざまなことを今始めたばかりでございまして、例えばカレンダーの関係ですと、高校の先生方、高校だけということになりますけれども、先生方も御理解が大分進んできているなという手応えはございますが、まだ着手したばかりですので、今年度も引き続きさまざまなことを検討して、効果的な情報提供、定着に向けて努力していきたいと思っております。
次に、新たな奨学金返還助成制度の創設というお話でございまして、私どもといたしましては、今年度スタートさせた、先ほど御説明申し上げました制度の運用をしながら、人材需要の動向とか、さらには、産業界からの基金の今後の出方とか、産業界とどの程度タイアップして、効果的な人材還流ができるかといったようなことを見定めながら、次なる展開について研究していく期間もある程度いただきたいと思っておりまして、当面は、研究させていただきたいと思っております。
一方、おっしゃるとおり、奨学金の負担の問題については確かに大きな問題になっているとは思っておりますが、国において、意欲、能力があるにもかかわらず、経済的理由で進学を断念している子供たち向けにということで、返還の必要がない、いわゆる給付型の奨学金制度をことしスタートさせたのは、御案内のとおりです。
平成30年度から本格運用されるということですが、ことしからの、特に経済的に厳しい学生等を対象とした一部先行による制度実施ということですので、この運用状況や活用の状況なども参考にしながら考えていきたいと思っております。
〇総務部長(佐藤博君) 建築士及び獣医師の人材確保についてのお尋ねでございますが、まず、先ほどの欠員の状況の中で、総合土木職が26名の欠員、建築の職員は1名の欠員というところでございます。
建築士の確保に向けては、職員採用試験における建築職の今お話ししました採用のほかに、例えば、一級建築士免許を有する民間企業等での職務経験者を対象にしました選考採用を行うとか、それからまた、職員が職務と関連する資格の取得を図る場合に、受験料とか、あるいは検定料等を対象にしまして、その一部を助成することとしてございます。
また、建築職の職員が建築士の資格取得を希望する場合においても、それは助成の対象にしているところでございます。
それから、獣医師の確保に向けてでございますが、先ほど農林水産部長が答弁しているところと重複するわけでございますけれども、修学資金の貸し付けであるとか、免許を有する者の随時募集、それから、議員から今、御指摘のあったとおり、初任給の引き上げとか手当の増額等を実施しているところではございます。
それぞれ、獣医師については業務が過重との指摘もございますが、建築士、それから獣医師それぞれの所管部局と連携しながら、これら専門職種の確保に向けた取り組みに努めてまいりたいと考えてございます。
〇教育長(高橋嘉行君) 教員の負担軽減についてでございます。
ただいまは、具体的かつ詳細な事例を御紹介いただき大変ありがとうございました。我々も、そういう課題認識のもとで、何とかこれを前に進めたいということで、協議の場等をつくりながら、そのような取り組みを進めてきたところでございます。
現状認識とか今後の取り組みの方向性については、先ほど御答弁申し上げたとおりでございますけれども、県教育委員会は市町村立学校職員の任命権者でございますので、主体的な立場で、また、議員の御指摘も十分に踏まえながら、課題の解決に向けて、市町村教育委員会との連携のもとに着実に進めていきたいと考えております。
日程第3 議案第37号水門・陸閘自動閉鎖システム(衛星通信系)整備工事の請負契約の締結に関する議決の変更に関し議決を求めることについて及び日程第4 議案第38号北上川上流流域下水道北上浄化センター受変電設備更新工事の請負契約の締結に関する議決の変更に関し議決を求めることについて
〇議長(田村誠君) この際、日程第3、議案第37号及び日程第4、議案第38号を一括議題といたします。
これより質疑に入ります。
質疑の通告がありますので発言を許します。高橋孝眞君。

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