平成29年2月定例会 第8回岩手県議会定例会会議録

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〇41番(佐々木順一君) 改革岩手の佐々木順一でございます。
初めに、災害法制のあり方と大災害時に備えた緊急事態条項の要否についてお伺いいたします。
日本国憲法施行70年を迎えた本年、国会を中心に、具体的な憲法改正の論点整理の一つに、公教育の無償化や大災害などに備える緊急事態条項を検討対象にする動きが急速に浮上しております。
確かに、東日本大震災津波以降、昨年の熊本・大分地震、あるいは台風第10号による豪雨災害など、自然災害、気象災害が相次いで発生しており、天変地異が非常に多くなってきていることは事実でありますが、一般的に、緊急事態条項とは、有事、すなわち戦争を前提にしていることは世界の常識であります。
一方、改憲に強い意欲を示すある政党の緊急事態条項では、緊急事態を我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱などによる社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害、その他法律で定める緊急事態と定義するとともに、総理大臣が緊急事態を宣言すると、内閣は法律と同等の政令を制定することができるほか、総理大臣は財政上必要な支出、処分を行い、地方自治体の長に対し必要な指示を行うことができるとされる一方、何人も公の機関の指示に従わなければならないと明記されております。いわば緊急事態を宣言した総理大臣は、行政権のほかに、立法権、財政権、地方自治体に対する命令権、さらには、国民の人権までも制限することになるなど、全権を掌握することを可能とするものでありますが、いわゆる有事に対しては、我が国には既に有事法制が整備されていることから、改憲の必要性はないものと思います。
また、大規模な自然災害、気象災害というような緊急事態は、国内の特定の地域で起きるものであって、全国一斉に起きることはあり得ないことであり、現在の災害法体系で十分対応可能と判断するものであります。ついては、民主政治の根幹にかかわる問題でありますので、この点について知事の御見解をお伺いいたします。
引き続きお伺いいたしますが、災害対策基本法、災害救助法など、いわゆる災害法制全般に共通する課題は、災害現場で問題が生ずるたびに各省庁にお伺いを立てなければならない仕組みになっていることであります。
例えば、災害救助法の救助の種類には、応急仮設住宅の供与から食品の給与及び飲料水の供給、被服、寝具等の給与または貸与、医療及び助産、被災者の救出、埋葬などと記されているのみで、具体的なことは法律的には何も決められておらず、詳細は、内閣府告示や事務取扱要領に委ねられておりますが、これらは、あくまでも所管官庁が一方的に決めた運用基準であり、1秒、一刻を争う場合、事態を悪化させるおそれがあります。被災地の住民や施設などを管理し災害現場を把握しているのは地方自治体の首長であることから、一刻を争うような災害時には、大まかな基準以外の判断については、災害現場の首長に一定の権限を与えることこそ、極めて重要であると思います。
また、災害救助法は、応急的に必要な救助を行うことを目的としておりますが、5年以上も住まいを余儀なくされる応急仮設住宅を応急と位置づけたままでいることは、被災者の実態と心情を全く無視したものであり、改める必要があります。例えば、仮の住まいが長期にわたるような災害の場合は、その期間における被災者に対するハード、ソフト両面での支援策を、災害救助法とは切り離して体系的に整備する必要があるのではないでしょうか。
知事は、1期目は岩手・宮城内陸地震、2期目は東日本大震災津波、3期目は台風第10号による洪水災害というように、大規模な自然災害、気象災害を身をもって体験されていることから、現在の災害法制全般に精通している数少ない首長の一人でもあります。ついては、災害対応がより迅速可能となるよう、災害法制上の不都合な点を体系的に取りまとめ、これらを提言として県内外に発信するとともに、政府にその実現を迫ることこそ、とうとい命を奪われた犠牲者の無念さや被災者の心情に応える一つのとるべき道であると思いますし、多くの支援をいただいてきた被災県の知事としての役割の一つでもあると思いますが、御見解をお伺いいたします。
次に、子供の貧困対策と公教育の無償化についてお伺いいたします。
外圧によって成立したいわゆる子どもの貧困対策法の施行を踏まえ、2014年に大綱が閣議決定され、都道府県にも計画の策定を努力義務として求めております。政府は、毎年1回、実施状況について公表することになっておりますが、現段階では昨年度の進捗状況しか公表されておらず、対策法の効果を評価することは難しい状況にありますが、大綱の中に記されている教育の支援、生活の支援、保護者に対する就労の支援、さらには、子供の貧困に関する調査研究などを勘案して本県ではどう取り組まれてきたのか、明年度、重点的に取り組む施策はどのようなものがあるのか、本県の貧困の実態も含めお伺いいたします。
一方、大綱では、学校を貧困対策のプラットホームとすると位置づけられております。我が国の子供の6人に1人が相対的貧困に置かれていることや、労働分配率が低く、4割が非正規労働者の世界という雇用の実態、さらには、過疎化が地域の貧困の一つのあらわれでもあることなどを踏まえれば、今、教育現場に求められているのは、資質、能力に応じた学歴、学力保障による貧困の連鎖からの脱却、すなわち、今は貧しくとも、勉強さえすれば貧しさから抜け出せるという古風な論理を義務教育の現場で実践に移すことであり、特にも、公教育の完全無償化の実施は極めて有効な取り組みではないでしょうか。少なくとも、学校給食を初めとする義務教育の無償化が進展すれば、財政的に生活保護世帯に対する教育扶助や、準要保護世帯への就学援助のおおよそは不必要になるとともに、保護世帯の子供たちは、貧富の差を意識しないで学校へ通うことができるようになるなど、子供の精神面に与えている心の負担も解消することになります。
しかしながら、日本国憲法には、義務教育はこれを無償とするという理念を掲げながらも、教育基本法では、義務教育については授業料を徴収しないと、授業料の無償のみに限定、困窮者に限り経済的理由によって就学が困難な者に対して奨学の措置を講じなければならないという、いわば選別主義に基づく抑制的な発想をこの期に及んでまだとり続けなければならないことは、理解に苦しむところであります。
しかしながら、これまで教科書の無償化が実現され、高校授業料についても無償化の道が開かれるなど改善の試みが進められてきており、中でも、新聞報道によれば、全国的に見ると、7自治体が保護者から学校徴収金を取らない完全無償化を実施、約50の自治体が学校給食費の無償化を行っており、給食費の一部を補助する自治体は400近くに上っております。
子供たちの潜在的な未知なる才能が現在の貧困のために開花されることがなかったなら、未来の社会は大いなる損失をこうむることになり、このことに有効な手を打たないとなると、まさに政治の怠慢であります。
義務教育は自治事務でありますが、子供の貧困対策が国の将来を左右する喫緊の課題であるとの危機感を持つのであれば、貧困対策の有力な解決手段の一つとして、知事は、賛同する多くの首長らとともに、政府に公教育の完全無償化の実施を迫力を持って求めるべきと思いますが、御見解をお伺いいたします。
なお、これまでの取り組みを検証するまでもなく、個別法の改正など、改憲によらなくても義務教育を含め公教育の完全無償化は実現可能と思いますが、あわせてお伺いをいたします。
次に、震災復興についてお伺いいたします。
知事は、第2期の本格復興期間の最終年度に当たる本年度を本格復興完遂年と位置づけましたが、一方において、政府は、本年度から、5カ年にわたる復興・創生期間を、10年間の復興期間の総仕上げに向けた新たなステージと定めております。総仕上げ、復興完遂の言葉の解釈は受けとめ方によってそれぞれであることから、これらの定義づけが問題視されてきたところでありますが、重要な視点は、東日本大震災復興基本法に掲げられている基本理念、すなわち、復興は21世紀半ばにおける日本のあるべき姿を目指すことと、そのための復興の施策は、活力ある日本の再生を視野に入れた抜本的な対策とすること、加えて、一人一人の人間が、災害を乗り越えて豊かな人生を送ることができるようにすることを旨として行わなければならないと明記されており、この考え方に沿った各事業を展開し、基本理念の実現に関係機関が全力を挙げることであると思いますが、実態はベクトルもスピードも大きく乖離してきております。このことについて、知事はどのような認識をお持ちなのかお伺いいたします。
引き続きお伺いいたしますが、本県における直近の震災による死者、行方不明者は5、795人、避難者は、内陸、県外合わせて4、343人、合計1万138人、端的に言えば、町1個分が既に消滅していることになります。
一方、被災自治体の財政は、国費投入に加え、使い勝手は悪いものの、復興交付金基金の活用や、地方交付税算定における人口の減少幅を最大10%に抑える特例適用などによりそれなりに潤っておりますが、復興交付金制度も4年後には終了となります。地方交付税の激変緩和措置が2020年の次の国勢調査までとなると、数年後には経済活動は縮み、税収は減ることになることから、行政は財政計画が立てられなくなるおそれがあります。こうした現象は、さらなる人口流出に拍車をかけることになり、有効な対策を的確、機敏に打っていかなければ負のスパイラルを招くことになり、自治体消滅が現実のものとなるおそれも否定できないところであります。
県においても、第3期復興実施計画に、震災前に比べて三陸のよりよい復興、すなわちビルド・バック・ベターの実現を明記されており、その目的意識と決意は大いに評価するものでありますけれども、急激な人口増加が見込めない中、どのような危機感を持って復興に向き合うお考えなのか、今後懸念される事項と、これに対する対処方針についてお伺いいたします。
復興の主人公は、制度、財源などを活用しながら目標に向かって活動されている被災者一人一人であり、その活力の源泉は、基礎自治体を構成しているさまざまなコミュニティーの存在にありますが、コミュニティーへの支援等は自治事務であることから、第一義的には市町村が対応すべき性格のものでありますけれども、実態は、市町村単独では厳しい現状にあることは否めない事実であります。
平成29年度当初予算案によると、復興のみならず、ふるさと振興を図るため、本格的にコミュニティーの支援、育成等に正面から向き合う方針ですが、市町村や各種団体と県との役割をどう整理され効果を上げようとしているのか、具体的な施策も含めお伺いいたします。
この際、議会の東日本大震災津波復興特別委員会や岩手県東日本大震災津波復興委員会の議論などを踏まえ、新たな復興計画と次期の総合計画との実務的関係について、数点、簡潔にお伺いいたします。
県は、次期総合計画に新たな復興計画を位置づける方針を示しておりますが、新たな復興計画は、柔軟性と機動性がこれまで以上に求められることから、この点を十分考慮の上に、次期総合計画とは性質を異にし、位置づけられるべきものと思います。また、放射能汚染対策を含む風評被害対策は長期にわたるテーマであることから、新たな復興計画の中に別立てで盛り込む必要があります。また、専門委員会を含む岩手県東日本大震災津波復興委員会は新たなステージに入ることから、その役割と位置づけなども見直す必要があると思いますが、それぞれの取り扱いについてお伺いいたします。
次に、米問題について順次お尋ねいたします。
まず、水田の生産調整、すなわち減反政策の見直しがもたらす懸念について県の認識を伺います。
政府は、政権交代後、TPPなどに代表されるように大規模化や効率化路線を推し進め、農家のセーフティネットや地形条件なども考慮に入れず、1次産業を自由競争に委ねるかのごとく政策転換を強力に推進しております。減反政策の見直しはその代表的なものですが、およそ1年後にスタートするポスト生産調整の中身や理念はもとより、我が国の農業政策の方向性については政府は具体的なものは一切提示していないことから、現場では不安が募っております。
例えば、経営所得安定対策は今後どのようになるのか、水田フル活用の助成金単価などによっては、米価への影響はもとより、農家経営や農地維持にもこれまで以上に大きな影響をもたらすものと懸念しております。ついては、県として、減反政策の見直しの影響についてどう把握し、諸課題の解決のため、どのように対応すべきとお考えかお伺いいたします。
また、例えば、経営所得安定対策のうち、水田牧草についての助成金単価については、現在、10アール当たり3万5、000円が助成されておりますが、今後の取り扱いによっては、中山間地域の条件不利地の水田牧草地帯がそのまま耕作放棄地につながる懸念があります。水田牧草から水田放牧へより一層の政策誘導などがない場合、この懸念は、減反政策見直し後の遠くない時期に現実のものとなると思いますが、県の認識並びに対応策をお示し願います。
引き続きお伺いしますが、中山間地域の農地の保全は将来を担う世代の大きな課題であり、中山間地域を多く抱える本県農業にとっては最大の課題の一つであります。しかしながら、政府は、競争力強化や攻めの農業という名のもとに、平場の基盤整備には力を入れるものの、中山間地域のような条件不利地には見向きもしないのではないかと疑わざるを得ない状況であり、事実、国が行う中山間地域の基盤整備事業の助成単価が突然半減となったケースもあります。その点、本県では、平成27年度の補正予算で、活力ある中山間地域整備事業を県単事業として創設し、土地改良区の地区外も含めた条件不利地の農地整備に道を開きました。これはさまざまな事情でみずから作付管理ができないとしても、条件のよい農地に整備することで、他の担い手が耕作を受けやすくすることにもつながるものであり、課題となっている農地集積と耕作放棄地の予防や解消にも効果が期待できる施策として高く評価するものであります。
国が農地中間管理機構の成績を上げることが第一で、農地集積のための条件整備が二の次になるという逆さまの政策体系になっている現状において、この予算の拡充は今後とも必要であると思いますが、一方で、これまでの実施主体と実績を見ると、もう一歩踏み込んだ改革が必要ではないでしょうか。
これまで22地区が事業採択されておりますが、全て土地改良区が実施主体となっております。例えば、米どころの一関市や遠野市では、全水田面積の半分以上が土地改良区に入っていない状況であります。この予算こそ、土地改良区以外の実施主体として明記されている市町村などに広げていかなくては、真の意味で中山間地域の農地は守れないと思いますが、中山間地域の今後の農地整備のあり方について県の認識をお伺いいたします。
次に、本県の一次産品ブランド対策の一環として、東京オリンピックへの岩手食材の調達可能性についてお伺いいたします。
東京オリンピックの食材調達基準は本年度内に決定しますが、これに先立ち、作業部会の基準案が昨年末明らかになりました。
ロンドンオリンピック以来重視されている自然環境、生産の持続可能性、安全性等に配慮した調達物品等への認証制度である農産物で言えばGAP、水産物ではMSC、そして食材ではないものの、選手村の家具類に使用されている木材ではFSCなどの基準に比べれば後退したとの批判も少なくありませんが、それでも一定の厳しい基準を維持しながら、間口を広げ、国産を優先させるとの大方針が打ち出されたところであります。しかし、それでも国産材の調達にはハードルが高いものと予想されています。最も高いハードルは、GAP認証を要件としている点ですが、県内で取得している経営体は、わずか二つにとどまっている現状であります。
ちなみに、推奨すべき農産物としては、有機農業、障がい者が主体となって生産されていること、世界農業遺産や日本農業遺産への認定など、伝統的な農業を営み地域で生産されていることなどが示されているものの、岩手にとってはむしろ好都合なだけに、GAPもしくは上位基準の取得は、速やかに県を挙げて取り組むべき課題ではないでしょうか。
国内的には、GAPの取得はメリットがないと言われるものの、東京オリンピックやラグビーワールドカップ2019開催を控え、国際的な取引拡大を目指す本県にとっては、農業の国際力強化は極めて重要なテーマであり、県として一層取り組む必要があると考えますが、今後の具体的取り組みについてお示し願います。
一方、オリジナルブランド米金色の風の栽培要件にはGAPの取り組みが含まれており、安全や環境保全といった持続、継続性の点で、既に他のブランド米とは一線を画しております。金色の風が目指すのは、安心・安全を当然のものとしてさらに一段上の食味であり、それに付随する単価となることから、従来の等級や特A評価の上を行く基準の策定が重要と考えます。
既に先行している銀河のしずくでも、たんぱく含有量などの基準を設けて、これをクリアしないとブランド米としての出荷ができないという条件をつけておりますが、フラッグシップ米となる金色の風では、新たな物差しの導入も求められるのではないでしょうか。ついては、高値販売に向けた基本戦略、品質管理のための専用施設の必要性も含めお伺いいたします。
次に、ふるさと振興についてお伺いいたします。
平成29年は、岩手県ふるさと振興総合戦略の5年間の計画期間における中間年に当たっております。施策推進の目標の一つに、平成32年に本県における人口の社会減をゼロにするという意欲的な目標を掲げておりますが、平成27年における本県の社会増減を見ますと約4、000人の人口減少であり、平成26年の約3、000人の減少から1、000人増加し、社会減に歯どめがかからず、東京への人口流出が拡大している状況にあります。社会減をゼロまで引き上げるには、並大抵の取り組みでは実現が困難なことが見込まれることから、県当局のみならず、オール岩手の総力を挙げて、まさに県民総参加で取り組む必要があると考えますが、ふるさと振興総合戦略にどのように取り組み人口減少に対応されてきたのか、これまでの取り組み状況と成果や課題、さらには、これらを踏まえた今後の施策展開の方向性についてお伺いいたします。
次に、人口減少社会への対応についてお伺いいたします。
国では、平成26年のまち・ひと・しごと創生法の施行を踏まえ総合戦略を策定し、人口減少対策に国を挙げて取り組んでおりますが、現在置かれている地方の現状は、地域の経済、産業、医療、福祉や教育、さらには、最も大事な地方自治体を構成するあらゆるコミュニティーが疲弊していることから、これらを再生させる施策の展開が何より求められております。このようなことから、地方創生ではなく、地方再生とすべきであったと今でも思っておりますが、県では、国の動向や本県の現状を踏まえ、平成26年に人口問題対策本部を設置し、平成27年には岩手県の人口ビジョン、岩手県ふるさと振興総合戦略を策定し、さまざまな取り組みを進められています。
本県の人口流出に歯どめをかけ厳しい現状を打開するためには、あらゆる施策や財源を総動員し、各地域における暮らしやなりわいに寄り添ったきめ細かな取り組みを進めることが重要であり、岩手ならではの地方再生と人口減少対策に真剣に取り組む必要があります。
例えば、なりわいでは、商工業、観光業などの産業の振興が求められるところですが、特にも、本県のものづくり産業の牽引役である自動車関連産業について、より一層の集積や高度化を進めていく必要があります。県では、これまで、積極的な誘致活動を展開し、着実に成果を上げていますが、トヨタ自動車が推進するいわゆる国内第3の拠点化に向けた企業誘致の課題と今後の取り組みについてお伺いいたします。
次に、交流人口の拡大への取り組みについてお伺いいたします。
岩手の多彩な地域資源、観光資源を国内外に売り込み、交流人口や経済交流の拡大を進め、いわゆる外貨を獲得し、得られた所得を生産から流通、販売、そして消費を通じた域内循環させる取り組みも重要であります。
県では、今般、いわて国際戦略ビジョンを策定し、三つの戦略を掲げ、世界とのつながりを深め海外展開を促進していく方針を示すとともに、この戦略の二つ目に掲げた外国人観光客の誘致拡大では、国の東北観光復興対策交付金を最大限活用し、情報発信や誘客拡大に向けた受け入れ態勢の整備などさまざまな取り組みを推進しておりますが、この観光交付金などを活用しながら、どのように観光産業を展開されるお考えなのかお伺いいたします。
最後に、地場産業の振興についてお伺いいたします。
県では、すぐれた地域資源を生かした産業による地域経済の基盤強化にも取り組まれております。具体的には、南部鉄器や浄法寺塗などの伝統産業、鶏肉や水産加工品などの食産業、さらにはアパレル産業などが県内各地域に根差しており、これらの地場産業をさらに魅力ある産業として成長させていかなければなりません。また、地場産業の振興は、地域の活性化を初め、地域の文化、歴史を含めたさまざまな魅力を発現させていくことにもつながることから、人材の環流や定住、移住など、岩手への新たな人の流れを誘導する有効な手段の一つでもあります。
ついては、本県のすぐれた地域資源と文化に育まれた地場産業を今後どのように振興させていくお考えなのかお伺いいたしまして、一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 佐々木順一議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、緊急事態条項の要否についてでありますが、憲法審査会で議論されている自由民主党の憲法改正草案における緊急事態条項には、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等の社会秩序の混乱、大規模な自然災害等が発生したときに、緊急政令の制定や財政支出、地方公共団体の長に対する指示、国等の指示に対する国民の遵守義務等が盛り込まれていると承知しております。
これらの規定に関しては、災害対策基本法を初めとした災害関連法制や、国民保護法等の有事法制において対応が可能ではないかとの意見、憲法の保障する基本的人権への制約等を懸念する意見もありますことから、憲法審査会の場において、国民にわかりやすい形で十分に審議が尽くされるべきと考えております。
次に、迅速な災害対応の実現についてでありますが、大規模災害の発生時においては、住民の救出、救助、避難者への食料や生活必需品の供給、住家を失った被災者に対する応急仮設住宅の供与など、さまざまな応急対策を迅速に行う必要があります。
県においては、災害時における高齢者、障がい者等の要配慮者への福祉的支援が災害救助法の基本施策の一つであることを明確にするよう、また、応急仮設住宅の集約化に際し必要となる住環境整備等に要する全ての経費を災害救助法の対象とするよう、それぞれ国に要望してきたところであります。
また、地方自治体間が連携した水平補完による災害対応支援活動の制度的枠組みの創設を初めとした防災・復興に関する岩手県からの提言を一昨年に取りまとめ、第3回国連防災世界会議において発表するとともに、ホームページなどで情報発信をしてまいりました。
今後におきましても、東日本大震災津波を初めとするさまざまな災害の教訓を踏まえ、より迅速な災害応急対策や復旧、復興の実現に向けて、国に提言していきたいと思います。
次に、公教育の完全無償化についてですが、現在の義務教育における就学支援は、授業料、教科書の無償化のほか、要保護、準要保護世帯に対する就学援助等により行われていますが、県としては、これまで、子供の未来が生まれ育った環境によって左右されることはあってはならないという観点から、義務教育の機会均等と教育水準の維持向上のため必要な財源は国の責務として完全に保障するよう国に要望しているところであります。
全国では、議員御案内のとおり、中山間地域等の一部の自治体において、義務教育にかかる経費を保護者から徴収しない事例も出てきており、こうした取り組みの実情等も調査しながら、負担軽減のあり方等について研究してみたいと思います。
義務教育を含む公教育の完全無償化と憲法改正とのかかわりについては、義務教育の無償の範囲にかかわる最高裁の判例や、いわゆる教科書無償化法、高校無償化法等の立法の経緯等を勘案した場合、その実現のためには改憲によらず法改正等でも可能ではないかと考えます。
次に、東日本大震災復興基本法の基本理念等についてでありますが、国では、これまで、復興基本法の基本理念を受けて平成23年7月に定めた東日本大震災からの復興の基本方針により復興を進めてきたところでありますが、この基本方針には、三陸沿岸道路などの緊急整備や二重債務問題の解消、復興特区制度の創設など、本県からの提言が盛り込まれたところであります。
また、被災3県に復興局を置く体制を構築するとともに、復興交付金や取り崩し型復興基金など財政支援制度を創設したほか、平成28年度以降の財源フレーム決定に際し、一部地方負担が導入されましたものの、復興事業のほぼ全額が国費対象とされるなど、これまでの国の取り組みには一定の評価をしております。
一方で、事業用地の円滑な確保に向けた特例措置について、抜本的な制度改正を要望したにもかかわらず既存の制度や運用の見直しにとどまったほか、平成28年3月に定められた復興・創生期間における復興基本方針には、本県から要望したILCの実現や5年間の総括と検証などは盛り込まれなかったところであります。
県におきましては、復興基本法に先立ち平成23年4月に策定した東日本大震災からの復興に向けた基本方針に原則として掲げた、一人一人の幸福追求権を保障すること、犠牲者のふるさとへの思いを継承することを基本に、オール岩手で未来に追いつく復興を進めてきたところであります。
国においても、復興の後半において、復興基本法の基本理念に沿った形で、日本全体の総力を結集し、被災者一人一人の確かな復興が実現するよう強く要望してまいります。
次に、復興に向き合う上で懸念される事項等についてでありますが、沿岸地域においては、県平均を上回る人口の社会減が続いており、市町村においては、地域の状況に合わせて災害に強い安全なまちづくりを進めているところであります。
まちづくりを進める中で、復興の長期化に伴う被災者イコール復興者の皆さんの意向の変化等により、整備された土地の一部で利用が停滞していることや、高台移転に伴う移転元地の有効活用などが課題となっています。
県としては、まちづくりアドバイザーを派遣するなど、地域のまちづくりを支援するとともに市町村の課題把握に努め、国との調整や要望を行ってきたところでありますが、今後においても、市町村の実情に応じ、寄り添った支援を行ってまいります。
また、沿岸地域では、震災後、高校生の地元就職率が向上し、若者の地元志向が高まっており、これを一過性のものにしないためにも、復興後を見据えた産業振興や交流人口の拡大に取り組むことが重要であります。
このような認識のもと、現在策定中の第3期復興実施計画においては、基幹産業である漁業の担い手確保、育成や水産資源の回復、中小企業等の本格的な再建、U・Iターンの促進など、産業人材の確保、育成に重点的に取り組むこととしているほか、新しい三陸地域の創造を目指す三陸創造プロジェクトとして、復興道路等新たな交通ネットワークを活用した国内外との取引拡大による産業振興や、ラグビーワールドカップ2019の釜石開催等の機会を捉えた交流人口の拡大など、新たな交流による地域づくりを進めていくこととしています。
これらの取り組みを進めることにより、市町村、県、国が一体となって、被災からの復旧にとどまらない、三陸のよりよい復興の実現を目指してまいります。
次に、コミュニティーの支援等についてでありますが、各地域においては、新たなコミュニティー形成に向け、支援団体も含めさまざまな取り組みが行われているところでありますが、市町村によっては、コミュニティーづくりのためのノウハウや人材不足、支援団体との連携などの課題を抱えているところもあります。
このことから、県においては、これまで社会福祉協議会と連携して生活支援相談員による交流会の開催支援等を行ってきたところでありますが、平成29年度は、さらに市町村と支援団体等を調整するコーディネーターを配置し市町村を支援するほか、被災者の心の復興を支援する民間団体等の取り組みに対して補助し、活動を支援するための事業費を当初予算案に盛り込んだところであります。
また、被災地域におけるふるさと振興を図るためにも、コミュニティー活動の一層の活性化を図るための支援が必要と考えており、他の地域づくり団体のモデルとなる元気なコミュニティ特選団体の選定や、地域づくりフォーラムの開催等による先進取り組み事例の普及を図るとともに、企業等による郷土芸能や祭りなどの活動支援のマッチング、地域おこし協力隊や復興支援員などの外部人材のネットワーク構築、NPO団体などが行う定住、交流の促進に向けた取り組みへの支援などにより、県民、企業、NPO、市町村等の多様な主体と連携し、コミュニティーの再生、活性化に向けた取り組みを支援してまいります。
次に、ふるさと振興総合戦略についてでありますが、岩手県ふるさと振興総合戦略においては、ふるさとを消滅させないとの決意のもと、岩手で働く、岩手で暮らす、岩手で育てるの三つの柱に基づき、人口減少を引き起こすあらゆる生きにくさを生きやすさに転換し、岩手への新たな人の流れを生み出すための取り組みを推進しているところです。
総合戦略の展開により、いわて働き方改革推進運動の取り組みや本県への移住の動きに広がりが見られる中、本県の社会減は直近の平成28年で3、708人と、拡大が3年ぶりに縮小に転じたところであります。
一方、本県の社会減の主な要因となっている進学、就職期における若年層の県外転出が続いていますことから、平成29年度当初予算案を未来につなげる復興ふるさと振興予算と名づけ、復興とふるさと振興に重点的に取り組んでまいります。
具体的には、岩手で働くでは、ものづくり分野における高付加価値製品の開発や生産性向上による企業の魅力と雇用の質の向上、新たに創設した奨学金返還支援制度を活用した大学生等の県内への還流、定着促進などに取り組みます。
また、岩手で育てるでは、i-サポの拠点増設による出会いから結婚までの支援強化や、地域で妊産婦を支える体制の構築を進めます。
岩手で暮らすでは、若者、女性の活躍支援や産学官連携による新産業創出、起業を志向する学生向けの実務教育など、ふるさとの未来を担う人づくりを推進します。
また、東京一極集中の是正に当たっては、地方の取り組みとあわせて、国家戦略として国が十分な予算を確保して主体的に政策を展開していくことが不可欠でありますことから、国に対して、地方重視の経済財政政策を実施するよう、全国知事会などとも連動しながら強く訴えてまいります。
その他のお尋ねにつきましては関係部局長から答弁させますので、御了承をお願いします。
〔復興局長木村卓也君登壇〕
〇復興局長(木村卓也君) 新たな復興計画についてでありますが、平成31年度以降の復興に関する県の計画につきましては、昨日、知事から御答弁申し上げたところでございますが、国が平成32年度までと位置づける復興・創生期間と連動し、市町村における復興の取り組みの進捗との整合性に十分に配慮する必要がございますことから、県民的な議論を通じて策定していきたいと考えております。
また、放射性物質の影響による風評被害対策などにつきましては、現在策定している第3期復興実施計画に盛り込むことはもとより、復興計画期間にかかわらず継続して取り組む必要がございます。
平成31年度以降については、先ほど申し上げたとおり、復興に関する計画を策定する中でしっかりと議論してまいります。
復興委員会の役割と位置づけについてでございますが、復興に関する事項を調査、審議するため、岩手県東日本大震災津波復興委員会や各専門委員会においては、各分野のトップや有識者の方々から幅広い御議論をいただき、専門的な見地から御提言をいただいているところでございます。
第3期に入りましても、これらの委員会においては、被災地の復興の進捗に応じ、各施策の具体的な進め方などにつきまして、現地調査等を通じて御議論をいただくとともに、さまざまな御提言もいただきながら復興の取り組みを進めていきたいと考えております。
〔保健福祉部長佐々木信君登壇〕
〇保健福祉部長(佐々木信君) 子供の貧困対策の取り組みについてでありますが、本県における公的支援の対象となっている子供の状況につきましては、例えば生活保護世帯の子供や就学援助を受けている子供の割合は、近年、おおむね横ばいから微減の傾向にあります。
県では、子供の貧困対策を総合的に推進するため、平成28年3月にいわての子どもの貧困対策推進計画を策定し、今年度は、地域での取り組みを促進するため、民間団体と連携して子供の貧困対策の出前講座を県内各地で実施してきたほか、児童養護施設等の子供の大学等への進学や就職を支援するための貸付事業を開始するとともに、ひとり親家庭の親の就労支援のための給付金の拡充や、児童扶養手当の第2子以降加算額の増額にも取り組んできたところです。
こうした取り組みに加え、新たに、ひとり親家庭の支援者養成セミナーの実施や生活困窮世帯等の子供への学習支援の拡充に係る取り組みについて、平成29年度当初予算案に盛り込んだところであり、こうした取り組みにより子供の貧困対策を進めていく考えです。
〔農林水産部長紺野由夫君登壇〕
〇農林水産部長(紺野由夫君) まず、生産調整見直しの影響と対応についてでありますが、国による米の生産数量目標の配分が廃止されれば米の生産量が需要量を超え、全国的に米価が下落し、農業経営に大きな影響を及ぼすことが懸念されます。このため、関係機関、団体や県で構成する県農業再生協議会において、米政策の見直しに的確に対応する仕組みの検討を行っており、転作を含めた水田農業の推進方針を作成するとともに、毎年、県協議会が算定する市町村別の生産量の目安をもとに、市町村や農協等で構成する地域協議会が具体的な生産計画を作成し、それに沿った作付を進めることとしております。こうした取り組みを着実に推進することにより、米政策の見直し後においても需要に応じた主食用米の生産を進めてまいります。
次に、生産調整見直しに伴う耕作放棄地増加への懸念についてでありますが、国は、平成30年産以降も水田で飼料作物や麦、大豆などを生産する農業者に対し、交付金を直接交付する水田活用の直接支払交付金のような枠組みは基本的に必要との見解を示しております。
県では、水田を有効に活用し農業者の所得を確保していくため、国の交付金を最大限に活用しながら、主食用米と転作作物を組み合わせた取り組みを推進していくことが重要と考えております。
このため、交付金の助成水準の維持や制度の恒久化について国に要望してきたところであり、引き続き、必要な対応を国に求めるとともに、飼料用米や大豆への転換に加え、野菜、花卉等の高収益作物の生産拡大の促進、水田放牧の拡大などに積極的に取り組んでまいります。
次に、中山間地域の農地の整備についてでありますが、高齢化、過疎化が進行する中にあって、中山間地域の農業が維持、発展していくためには、地域の中心となる担い手の確保とあわせて、担い手への農地の集積、集約化と効率的な営農が可能な生産基盤の整備が必要であります。
このため、県では、平成27年度に市町村や土地改良区等を事業主体とする活力ある中山間地域基盤整備事業を創設し、制度、運用に関する説明会や意見交換会を実施するなど、市町村を初め関係者への周知を図ってきたところです。
また、円滑に事業実施できるよう、事業主体に対し設計書作成等の技術的支援を行うとともに、説明会等での意見を踏まえ、事業主体に農業法人を追加するなど制度の改善にも取り組んできたところであります。
今後につきましても、より効果の高い制度となるよう検討を進めるとともに、本事業の取り組み事例の紹介等を通じてさらなる事業の活用を促し、市町村を含む多様な事業主体が、中山間地域の立地条件やニーズに応じたきめ細やかな基盤整備に取り組めるよう支援してまいります。
次に、農業の国際力強化に向けた取り組みについてでありますが、GAPは食品の安全や品質の向上等を図る管理手法であり、輸出拡大やインバウンドの増加を見据えますと、国際水準であるJGAPやグローバルGAPの認証取得を進めていく必要があります。
県では、これまで、国のガイドラインに準拠した県版GAPの普及拡大を図ってきた結果、取り組み産地数は全体の64%、全国平均の3倍にまで拡大するなど、県版GAPの定着は相当程度進んできております。
一方、国際水準GAPの取得は、必要な手続の煩雑さや取得経費などコスト面から敬遠されており、JGAPの認証取得は2農場、グローバルGAPは1農場にとどまっているところであります。
このため、今後とも県版GAPの普及拡大に取り組み、国際水準GAPの取得に意欲のある経営体に対してJGAP指導員による重点指導を行うとともに、助成事業を活用するなど国際水準GAPの取得拡大に向けた取り組みを強力に進めてまいります。
次に、金色の風の販売戦略等についてでありますが、金色の風は、全国に誇る最高級プレミアム米として、おいしい御飯にこだわる方々から愛され続けるお米として、全国5位以内の相対取引価格を目指し、栽培適地は、県内一の良質米地帯である県南ひとめぼれ栽培地域としたところであります。さらに、全国最高水準の品質と食味を兼ね備えた金色の風を安定的に出荷するため、作付農家や栽培圃場の選定基準、栽培マニュアルに加え、県版GAPを厳守することにより消費者や実需者の評価を高め、信頼をかち取ることとしております。
今後、こうした取り組みに加えて、食味計を活用した品質のチェックと仕分けの徹底や、カントリーエレベーター等を利用したもみでの長期保管や均質化による品質管理の徹底など、安定した需要の確保と高価格での取引の実現に向けて取り組みを進めてまいります。
〔商工労働観光部長菊池哲君登壇〕
〇商工労働観光部長(菊池哲君) まず、自動車関連企業の誘致についてでありますが、自動車関連産業は裾野も広く、本県経済の牽引役として重要な役割を果たすことが期待され、その成長が東日本大震災津波からの復興にもつながることから、県では、これまで、関係機関と連携して、部品メーカーの集積と地場企業の育成を一体的に進めてきたほか、人材の育成等にも積極的に取り組んでまいりました。
さらに、トヨタ自動車や大手部品メーカーに対し、知事、副知事によるトップセールス等を積極的に行い、本年度は1月末時点で新規立地が6件、増設が6件となっており、着実に集積が進んできております。
近年の立地の特徴として、トヨタ自動車東日本に部品を供給するいわゆるサプライヤーの新規立地や増設に加え、これまで東北には少なかった製造工程の生産技術を担う設備、金型、治工具などの基盤技術系企業の県内企業との協業を前提とした進出が見られております。この動きは、これまで以上に地域に根差した産業へと集積が進んできているあらわれであり、自動車関連産業の中で培われた高い技術力は、ILC等も視野に、ほかの産業への波及効果も期待できる本県の強みとなってきております。
その一方、本県の企業立地環境は、工業用地の不足や人材の確保が課題となってきており、一義的には地元市町村が対応していくものではありますが、県としても市町村の状況や企業のニーズの把握を行い、市町村と連携して円滑な企業立地と事業展開が図られるよう取り組んでまいります。
次に、外国人観光客の誘客拡大に向けた取り組みについてでありますが、観光産業は経済波及効果が大きく裾野の広い産業であることから、観光消費単価が高いと言われております外国人観光客の誘致に積極的に取り組み、宿泊のみならず食事や買い物、さらにはレジャーなども視野に入れて観光消費を拡大させていくことが重要と認識しております。
このため、これまで国の交付金を活用するなどして、東北各県とも連携しながら、海外旅行博への出展や海外メディアを活用した情報発信、海外のキーパーソンの招請などによるプロモーションを展開するとともに、外国人観光客の観光消費の直接的な受け皿となる宿泊施設や商店、飲食店等を対象として、ハード、ソフト両面にわたり受け入れ態勢の整備に取り組むとともに、通訳や翻訳サービスのための多言語コールセンターの展開なども進めてきております。
今後におきましても、今年度中に策定されるいわて国際戦略ビジョンに基づき、農林水産物や伝統工芸品などを観光資源として積極的に活用し、まるごと岩手を売り込むとともに、本県全域にわたる一日でも長い周遊、滞在のために、スポーツやレジャーを初め体験型観光メニューも盛り込んだ旅行商品の造成、販売を推進し、観光消費の増大を促すことで、観光振興を通じ地域経済の活性化にもつなげていきたいと考えております。
次に、地場産業の振興についてでありますが、多彩で豊富な地域資源を活用し、地域に根差して産業活動を展開する地場産業は、雇用創出を図りながら地域経済を担うとともに、自然、歴史、文化と深いかかわりを有し、豊かな地域社会の持続的発展に貢献しているものと認識しております。
県内におきましては、企業や関係団体と市町村が一体となり、特徴的な地域資源を活用したオンリーワン商品の開発や競争力強化のための高付加価値化などを通じて、地域の強みを打ち出した取り組みが進んできているところであります。
このような地域の取り組みをさらに伸展させるため、県としましては、市町村や関係機関と連携し、強みの掘り起こしから産業化の各段階に応じた重層的な支援を進めております。
今後も、地域の強みを生かした取り組みをしっかりと支えていくことにより、地域が目指す産業の振興を図り、若者や女性に対しても訴求力のある魅力と活力あふれる地域づくりにもつながるよう努めてまいります。
〇議長(田村誠君) 次に、高橋孝眞君。
〔24番高橋孝眞君登壇〕(拍手)

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