平成29年2月定例会 第8回岩手県議会定例会会議録

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〇32番(関根敏伸君) 改革岩手の関根敏伸でございます。
代表質問の機会を与えていただきましたことに心から感謝申し上げ、これからの県政の方向性などを中心に、順次、知事に質問をいたします。よろしくお願い申し上げます。
まず初めに、今後の県政運営について伺います。
知事が就任されましてから4月で10年を迎えます。平成19年就任当初の岩手県を初めとして地方の経済は、大変厳しい状況にありました。100年に一度と言われる世界的金融危機であるリーマンショックにつながるサブプライムローンの問題が顕在化し、一方では、過去のバブル崩壊後の公共投資等により膨れ上がった県債残高の増加による県財政の課題が顕著となり、北海道においては夕張市が財政再建団体に移行するなど、厳しい環境下での船出であったと記憶をしております。
また、かろうじて存続が決まった岩手競馬の経営再建や、医師不足等を背景にして待ったなしの判断を迫られた県立病院改革への着手など、スタートラインは、まさに岩手の危機と呼べる状況にあったものと思われます。
さらに、未曾有の災害である東日本大震災津波だけにとどまらず、就任間もない平成20年には岩手・宮城内陸地震、平成25年には雫石町、矢巾町方面の大雨被害、そして昨年8月には台風第10号の発生と、まさに大規模な自然災害に立ち向かうことを強いられた10年でもあったのではないかと推察いたします。
こうした中での希望郷いわて国体、いわて大会の招致と昨年の成功体験は、知事の言われるソフトパワーがまさに県勢発展の大きな切り札になることを、多くの県民は実感していると思われ、新年度、新たに設置される文化スポーツ部は、そのソフトパワーを今後さらに大きく具現化する組織となると思われます。
知事は、就任当時、四つの広域振興圏を将来の自治体と位置づけた上、岩手を一つの独立した国に見立て、直接海外と取引を拡大することによって外貨を稼ぎ、岩手の将来を切り開くといった構想を披瀝されていたと記憶しております。
新年度に向かって新たな展開を見せる国際戦略ビジョンは、知事のかねてからの構想が、いよいよ大きく歩みを進めていくためのツールになってくるものと考えます。
1月のベトナム訪問を初め、さまざまな国にトップセールスを展開しつつ、衆議院議員時代等の活動を通じて、その可能性や課題などを肌で感じている知事にあって、世界経済に不確実性が増していると言われる中、新年度のスタートを切るに当たって、組織改編を行いながら、今、大きく国際戦略ビジョンを展開する意味と成功への鍵となるものは何であるのか、まずお伺いをいたします。
新年度以降の県政運営については、10年の歩みをしっかりと踏まえた上で、残り2年間のいわて県民計画を着実に実行するとともに、ふるさと振興総合戦略と間もなく策定される第3期復興実施計画との整合性をとりながら、次の新たな展開への準備を県民と協働してしっかり進めていくべき大切な期間になろうかと思います。
平成30年度には、県民計画と復興計画の両計画が終了を迎えます。また、平成32年度のふるさと振興総合戦略終了後にあっても、岩手の人口減少対策への取り組みは、大きな課題として残っていると思われます。
知事演述では、新しい幸福度指標も盛り込んだ次期総合計画策定にも触れておられますが、復興と人口減少への対応と次期総合計画における位置づけと整合性、計画策定着手の時期と現時点で想定される総合計画の性格、復興から先を見据えた岩手における県と市町村のあるべき姿についての知事のお考えをお聞かせください。
第3期復興実施計画について伺います。
東日本大震災津波発災直後の平成23年8月に、県は復興基本計画を策定し、未曾有の震災の復旧、復興に立ち上がりました。それに先立ち、同年4月には、県は、一人一人の幸福追求権を保障すること、犠牲者のふるさとへの思いを継承することの二つの原則を定め、第1期の基盤復興期間、第2期の本格復興期間の計画に真摯に向き合い、膨大な事業を着実に実施してまいりました。
先般、阪神・淡路大震災における復興の取り組みなどに見られた開発優先型の復興に警鐘を鳴らしつつ、岩手県が進めてきた復興を、人間、地域優先の復興と評価している本に出会いました。県民の人間復興、地域の自治の復興、そして地域資源の発掘、利活用をその特徴とし、一人一人の幸福追求権を保障するという岩手の復興の理念は、今後の復興の歩みに大きな励みになろうと思われます。
そうしたことからも、復興第1期、第2期の通算6年間で目指してきた復興の基本理念と方向性を再度強く担当部局に浸透させながら、各事業の進捗状況と事業効果については客観的な分析をし、課題を整理した上で、残された2年間の復興の総仕上げに当たるべきと考えます。
そこで知事に伺いますが、復興の6年間の歩みを御自身でどのように評価されておられますでしょうか。課題があったとすれば、それは何であるのかお伺いいたします。
復興とは、人々の生活、地域の経済社会の持続可能な発展に資する諸政策であると言われております。そうであれば、これからは復興事業の着実な実行とともに、復興後の地域社会を見据えた政策や施策に、よりその重きを置いていくことが必要になります。
第3期復興実施計画は、社会的包摂という観点に立って、県民初め、地域社会のあらゆる主体の参画、交流、連携の三つを重視する視点として掲げており、復興のみならず、今後の岩手県全体の地域づくりの視点として必要なものであると共鳴するところであります。
第3期の復興実施計画案の地域説明会などでは、復興計画終了後の復興の扱いについて、次期総合計画との兼ね合いや国の復興計画期間との整合性の中でさまざまな質問等もあったようでありますが、7年目以降の復興の取り組みを進めるに当たり、被災者一人一人の復興をなし遂げる、県民一人一人の幸福追求権を保障するという行政のトップである知事の決意と強いメッセージと、よりよい復興の姿を明確にしていくことこそが、被災者を勇気づけ、前向きの復興への歩みを続けていけるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
さらにまた、この10年間で、さまざまなリスク対応というものの知見を知事は蓄積されたものと思います。知事演述の中で、日本、世界に向けた防災力の向上への貢献という高い理想に触れられておりますが、具体的な貢献のあり方とメッセージの発信の方策をお聞きいたします。
災害公営住宅の完成、高台移転での持ち家の完成などで新しい生活を始められる被災者がふえてくる一方で、集約化された応急仮設住宅での生活を余儀なくされる方々も出てまいります。被災地ごとにさまざまな生活形態が誕生し、その形態ごとに新たな地域のきずなづくりが急務です。
つながりというものをこれからの岩手県政の施策展開の大きな柱に位置づけていこうとしている現状にあって、被災地の持続可能な地域づくりの前提となるコミュニティー再生支援について、市町村との役割分担の中で、県はどのような取り組みを進めていこうとしているのでしょうか。
また、さきの報道では、平成28年の魚市場の水揚げ量が10万トンを切り、水揚げ金額でも震災前平均の87%であったとされ、水産加工業者の人手不足も深刻であり、被災地の産業のかなめである水産業をめぐる状況は大変厳しいものがあります。
また、グループ補助金や県単独支援制度などによって再建を始めた被災事業所等にあっても、東日本大震災津波前と業績が同程度か上回るとしているのは、わずか50%程度にとどまっております。
なりわいの再生分野での第2期実施計画の構成事業のうち、進捗率が8割以上としているものは全事業の84%となっておりますが、以上の状況を踏まえる限り、事業の進捗と目指すべきなりわいの再生の実態にずれが生じているとの感を禁じ得ません。
人口減少により地域経済の市場規模が縮小し、東日本大震災津波後、地域経済を支えてきた復興事業が今後減少していく中、被災地のなりわいの再生は正念場を迎えると言っても過言ではありません。知事のなりわいの再生に対する現状認識と今後の実のある取り組み方策についてお知らせください。
続いて、未来につなげる復興ふるさと振興予算と命名された新年度当初予算案における財源の見通し等について伺います。
県は、県税や地方交付税などを加えた一般財源総額を今年度と同額程度に見積もり、特に県税については1、327億3、500万円と今年度対比3.2%、約40億円の増を見込んだ予算案となっております。伸びが見込まれる税目として、個人県民税が6億7、600万円、法人県民税が9億3、500万円、法人事業税が29億8、100万円と、復興需要や円安を背景とした企業業績の伸びと個人所得の伸びを前提としております。
一方、先ごろ成立した国の平成28年度補正予算では、円高等による企業収益の悪化により税収を当初見通しより1兆7、400億円余引き下げ、財源確保のためほぼ同額の赤字国債を発行する事態となっております。税収の減額補正は7年ぶりとのことでありますが、アベノミクスによる経済政策に限界が見え始めているとの指摘もあります。
さらに、国は平成29年度の税収を57兆7、120億円と見積もっておりますが、その根拠は、名目で2.5%増を前提とした政府経済見通しであり、日本経済の実態とはかけ離れているとの感があります。
そこで伺いますが、知事は、平成29年度予算編成における税収見通しをどのような根拠や数値的判断で立てられたのでしょうか。加えて、平成29年度予算案に示されたさまざまな産業施策等による効果については、どのように見込んでおられるのかお伺いいたします。
また、名目2.5%増という政府見通しによる経済成長が仮に実現されたとした場合、税収増加に対するプラス要因とともに、多額の県債を抱える我が県にとっては、金利上昇等による公債費の増額などのマイナス要因が、同時に県財政を直撃することになろうかと思います。
財源対策基金の減少や復興事業での自治体負担分の発生など、大変厳しい環境が続いておりますが、世界的に政治経済状況が不確実性を増している中、リスク対応を念頭に置いた知事の県財政運営の認識と方針をお伺いいたします。
続いて、新年度以降、重要性が増してまいります若者、女性活躍の支援について伺います。
ふるさと振興総合戦略の中で若者・女性の活躍支援プロジェクトが展開されております。知事は平成26年に、若者が一歩前に出て活躍できるよう、いわて若者活躍支援宣言を出されました。また、県庁内若手職員で構成する若手ゼミにより、人口減少に対応するための施策等について知事に提言が出されております。
同じく平成26年には、女性の活躍を推進することによって復興の加速化を進め、地域経済の活性化に寄与することを目的とした、いわて女性の活躍促進連携会議がつくられております。
新年度の事業でも、若者や女性の冠のついた事業が部局をまたいで数多く提案されております。若者や女性の就業支援への取り組み、アイデアを生かした地域を盛り上げる企画への応援、農業を初めとした1次産業や建設業への就業拡大など各般に及ぶ取り組みがめじろ押しでありますが、従来型の普及啓発や研修、講習、イベントへの支援といった事業が主体との印象も受けます。
新年度から事業推進の大きな役割を担う組織である若者女性協働推進室では、国際室、文化スポーツ部の設置に伴う所管事務の移管により、業務の集中化と効率化が期待されるところでありますが、さまざまな部局にまたがり進められていく若者、女性の活躍プロジェクトの数多くの事業を有機的につなげ、具体的成果に結びつけていくための実現の方策、それを束ねる組織体制のあり方等について、知事の御認識をお聞かせください。
また、新年度、いわて女性の活躍促進連携会議に設置される予定のけんせつ小町部会、就業促進部会など五つの部会によって、女性活躍支援が今後どのように進められていくのでしょうか。
さらに、若者や女性の視点や発想による活気ある事業体や多様な働き方の場を実現するということは、岩手のブランドイメージの向上とソフトパワーにもつながるものと思います。若者、女性の創業、起業支援などがより大切になってくると考えますが、具体的推進のためのお考えをお聞きいたします。
続きまして、働き方改革について伺います。
安倍総理が施政方針演説で最大のチャレンジと位置づけた働き方改革は、電通での過労死問題などをきっかけに国会での論戦の焦点になりつつあります。残業時間の問題だけにとどまらず、多様で柔軟な働き方を可能にすることは、生産年齢人口が長期的に減り続けていくことが確実な日本社会で、人材確保の観点からも待ったなしの課題であります。
日本の生産年齢人口は2030年には6、773万人と2013年度に比較し約1、100万人、14%程度減少すると言われております。現在、世界で第3位のGDPを誇る今の日本の繁栄は、実は今まで順調に伸び続けてきた人口上昇がその主たる要因であり、国民1人当たりのGDP、いわゆる労働生産性は、平成27年にはOECD加盟国中20位と以前に比べ相当下落しております。
今後、人口減少に向かう日本の成長を支えるには、労働生産性を欧米並みに引き上げることが不可欠であり、その鍵は、企業経営者と行政の意識改革、そして女性の社会参加の実現であるとされております。
県の試算では、人口減少等を背景に、今後、全産業の労働生産性が年平均で1.5%上昇したとしても、県内経済はマイナス成長が続くと予想しており、県民所得と国民所得との乖離を縮小するという施策目標を実現するためには、減っていく生産年齢人口をカバーする今以上の高い労働生産性を実現していくことが不可欠になります。このことから、働き方改革と労働生産性の向上策は、セットで実現していく必要があるということになります。
時間をいとわず仕事に打ち込むという日本独自の勤労観が、日本全体の労働生産性を上げ、高い経済成長に結びついたものというのが一般的な考え方でありますが、国内にあって、労働時間の長さと労働生産性の低さを指摘されている我が県にあっては、働き方改革のハードルは低くないと思われます。取り組みへの温度差が職場環境の格差や地域間格差にまで波及してくる可能性も否定できません。
そこで知事に伺いますが、働き方改革と生産性の向上の両立に向けた取り組みを県内にどのように加速し浸透させようとしているのでしょうか。官民で新しい働き方を支えるマネジメントシステムを確立する必要もあると考えますが、いかがでしょうか。
働き方改革とあわせ、子育て支援の一環として、女性の社会参加とより働きやすい職場環境づくりを目指し国が行っている事業所の保育所整備への助成事業について、県内ではなかなか広がっておらず、また、小規模事業者からは、事業活用のハードルが高いとの声も聞こえてまいります。
今後、産業振興を進めていく上では、地域の企業が一体となって働きやすい就労環境を整えていくことが重要であり、こうした事業所内の環境整備に取り組んでいく企業の広がりをさらに進める必要があると考えますが、いかがでしょうか。
続いて、地方創生の観点から、再生可能エネルギーについて伺います。
県の再生可能エネルギーについては、岩手県地球温暖化対策実行計画において、具体的対応の方向と目標が定められております。岩手県の再生可能エネルギーの推定利用可能量は全国2位と推計されており、その優位性を生かして、県では平成32年度目標として、再生可能エネルギーによる電力自給率を平成22年度の18.1%から35%に引き上げる目標を定めております。
また、新年度には、災害時の電力供給源として水素エネルギーの利活用を進めるための調査事業が拡充される見通しであり、目標の確実な達成に大きく期待をするところであります。
一方、火力を含めた全体の電力自給率は31.2%であり、約7割の電力をいまだ県外に依存する状況が続いていることになり、電力の地産地消、自立・分散型エネルギー供給体制の構築という観点からは、残念ながら十分とは言えないと感じております。
そこで知事にお聞きいたしますが、我が県の現在の電力自給率の現状にどのような認識をお持ちでしょうか。自立・分散型のエネルギー供給体制を標榜するに当たって、平成32年度目標以降のさらなる電力自給率向上への取り組みが必要と考えますがいかがでしょうか。
今後、省エネ、創エネ、電力自給率の向上等への取り組みによって、新たな投資や消費を拡大し、災害等へのリスク耐性を強化し、さまざまな取り組みによるイノベーションの誘発等に結びつけるため、現在の県内の状況下における経済への影響を数値化すると同時に、エネルギー開発を地元主導で実施していく仕掛けづくりや、得られたノウハウを地域に蓄積し開放する仕組みづくりなどによって、地方創生に結びつける方策も必要になってくるものと思います。
そのような意味からも、省エネや創エネなど地球温暖化対策そのものの取り組みに加えて、エネルギー自給率向上によるリスク分散や地域経済の活性化などの視点も加えた総合的、体系的な戦略も必要ではないかと考えますが、いかがでしょうか。
最後に、全国知事会議についてお伺いいたします。
本年7月、震災後、被災3県では初めての全国知事会議が、岩手県で開催される予定とされております。今後の復興の仕上げに向かう中、復興を進めるための人材と財源確保に向けた、またとない環境整備の場づくりになるものと大いに期待をしております。
地方創生という共通の課題を有する全国の知事をお招きし、その課題解決の理念や方策を共有するとともに、復興の完遂や創造的復興の象徴であるILCの誘致の実現、復興五輪を掲げる2020年東京オリンピックにおける合宿誘致などに向けた理解醸成を図るなど、国に向けたメッセージ性の強い会議となることを心から期待するものであります。
知事は、開催県、ホスト役の知事として、どのような姿勢と方針でこの知事会議に臨もうとされているのでしょうか。達増知事の全国知事会議に向けた強い思いをお伺いし、その成功により岩手の希望がさらに大きく膨らむことを心から祈念し、私の質問を終了させていただきます。
御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 関根敏伸議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、国際戦略ビジョンの展開等についてでありますが、これまで、上海万博、ミラノ万博と2度の万博への出展などを通じて、本県の観光資源や県産品への関心が高まってきており、さらに、ILCの実現に向けた取り組みやラクビーワールドカップ2019、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催など、岩手と世界がつながる大きな機会を迎えようとしている現在、さまざまな分野にわたる国際関連施策を一体的、戦略的に推進していくことが重要であります。
そのため、国際戦略ビジョンを策定するものであり、成長が見込まれる海外市場において、岩手のさまざまな魅力を岩手ブランドとして発信し、本県の商品やサービスの付加価値を高めながら海外展開を促進することは、我が国全体の人口減少傾向の中で、本県における産業振興と雇用の確保に資するものと考えております。
海外展開に際しては、経済分野のみならず、人的交流や学術、文化交流など、多面的、互恵的な交流を促進することが重要であり、その担い手となる岩手と世界をつなぐ多様なグローバル人材の育成を強化するとともに、多文化共生社会の実現に向けて取り組んでまいります。
次に、次期総合計画の策定についてでありますが、平成31年度を初年度とする次期総合計画では、本県を取り巻く社会経済情勢や復興の状況などを踏まえ、将来の岩手の目指す姿を展望し、そのために何をすべきかを示すこととし、平成30年度中の策定に向けて、今後、フレームや方向性等について検討を進めていきます。
具体的な内容については、今後、検討を本格化させることとなりますが、平成30年度までを計画期間とする復興計画との関係では、次期総合計画においても復興の取り組みを明確に位置づけ、国が平成32年度までと位置づける復興・創生期間とも連動し、市町村や国と一体となった取り組みを進めていく必要があると考えております。
次期総合計画では、岩手県人口ビジョンで掲げる2040年に100万人程度の人口を確保するという展望を実現するため、人口減少に歯どめをかける生きにくさから生きやすさへの転換、また、岩手への新しい人の流れの創出に向けた取り組みの方向性などについても、重要な要素になると考えております。
また、行政だけでなく、県民みんなの計画として、幸福をキーワードに、所得などの経済的要素に加えて、岩手が持つ多様な豊かさやつながりの価値などにも着目して、岩手の将来像を描いていければと考えており、今後、幅広い議論を進めていきます。
さらに、県と市町村のあるべき姿については、復興やその先の地域振興を進めるに当たって、方向性や戦略を共有する必要性を感じておりまして、これまで以上に連携を強化していくことが重要と考えております。
次に、復興の取り組みに対する評価等についてでありますが、平成28年度末には8割を超える災害公営住宅が完成する見込みであるほか、市町村の面整備事業では、宅地の完成区間が平成28年度末で5割を超える見込みとなっています。
また、防潮堤などの海岸保全施設の整備は平成28年度末で約4割の完成見込みとなっていますが、復興道路はかつてないスピードで整備が進んでおり、宮古-室蘭間の定期フェリー航路や釜石港の国際コンテナの定期航路の開設が予定されるなど、交通ネットワークの整備効果が発揮されています。さらに、水産業の生産基盤はほぼ復旧したほか、一部再開を含め約8割の被災事業所で事業が再開され、観光入り込み客数も震災前の8割を超える水準まで回復しています。
これまで、各事業の進捗状況などを踏まえ、人材の確保と予算の確実な措置が復興を推進していく上での最重要課題という認識のもと、国に対して要望を行うとともに、現在策定作業を進めている第3期復興実施計画でも復興の推進上の共通的課題としているところです。
今後、市町村による復興まちづくり事業が進展していく段階において、国を含めた関係者間の調整がますます重要になっていくところであり、県としても、市町村に寄り添いながら、国への要望も含め、課題解決に向けた取り組みを進めていきます。
次に、今後の復興に向けた決意等についてでありますが、これまで、東日本大震災津波からの復興に向けた基本方針の原則でもあります、一人一人の幸福追求権を保障すること、犠牲者のふるさとへの思いを継承すること、これらを基本とし、いのちを守り、海と大地と共に生きるふるさと岩手・三陸の創造の実現に向け復興の取り組みを進めてきました。来年度からの第3期復興実施計画期間でもこの考えに沿い、三陸のよりよい復興の実現に向け、復興事業の総仕上げを視野に復興の先も見据えた地域振興にも取り組みながら全力で復興を推進していきます。
次に、防災力の向上への貢献等についてでありますが、本県はこれまで、被災状況や復旧、復興に向けた取り組みについて国内外で報告しているほか、一昨年には防災・復興に関する岩手県からの提言を取りまとめて第3回国連防災世界会議において発表するとともに、ホームページなどで情報発信をしてきました。また、被災地に立地し、津波の教訓や復興の取り組みを世界や未来に伝える震災津波伝承施設の整備を進めるとともに、震災津波アーカイブシステムをインターネットを通じて来月末から公開する予定としております。
今後におきましても、あらゆる機会を捉え、国内、さらには世界の国々が防災や減災に生かせるような情報を発信していきます。
次に、被災地におけるコミュニティーの再生支援についてでありますが、コミュニティーの再生は暮らしの再建に向けた重要な課題であり、各地域においてさまざまな取り組みが行われているところですが、市町村によっては、コミュニティーづくりのためのノウハウや人材不足などの課題を抱えているところもあります。このことから、県におきましては、社会福祉協議会と連携して生活支援相談員による被災者の見守り、交流会等の開催支援などに努めてきたところですが、平成29年度は、さらに市町村と支援団体等を調整するコーディネーターの配置に要する経費について当初予算案に盛り込んだところであり、今後とも、県、市町村、支援団体が連携してコミュニティーの再生に取り組んでいきます。
次に、なりわいの再生についてでありますが、復興計画に基づく取り組みを進めてきた結果、生産基盤の面では水産業、商工業とも回復してきています。一方、水産業では水揚げ量の回復や担い手の確保、商工業では販路の回復や従業員の確保、原材料の調達といった課題が顕在化し、人口減や復興需要縮小による地域経済への影響も懸念される状況にあります。
県では、これまで、商談会の開催による販路拡大や就職面接会の開催による人材確保支援などを進めてきたところでありますが、平成29年度においては、養殖施設の効率的な利用等による漁業生産力の向上や企業間の連携、協業化の推進による新しいビジネス展開の支援などにも取り組むとともに、復興道路等の新たな交通ネットワークを活用した物流網や周遊ルートの構築等による産業振興、交流人口の拡大など、新しい三陸地域の創造に向けた具体的な取り組みを進めていきます。
次に、平成29年度の県税収入の見通しについてでありますが、企業収益の伸びや個人所得の向上等により県税収入は堅調に推移してきており、平成28年度決算では、収入ベースで初めて1、300億円を超えるものと見込んでいるところです。平成29年度当初予算案におきましては、このような賦課徴収状況を基礎として、経済指標や国の地方財政計画における税収見込み額等を踏まえて積算し、今年度の当初予算と比較して約40億円増の1、327億円余と見込んだところです。
また、産業施策等による税収への効果についてでありますが、平成29年度当初予算案では、足腰の強い地域経済基盤を築くため、地場企業への波及や雇用創出力の拡大が見込まれる自動車関連など本県の中核産業の振興を継続するとともに、産学官連携による新産業創出やローカル経済振興に向けた中小企業の育成強化など内発的な地域振興にも取り組むこととしており、こうした取り組みを通じて税源涵養を図っていきます。
次に、県財政運営の認識と方針についてでありますが、公債費負担適正化計画に基づく県債の新規発行額の抑制など、公債費の適正管理に努めていることによりプライマリーバランスは黒字が続いており、県債残高は着実に減少しています。県債の新規発行に当たっては、金利環境の動向を注視し、調達時期を工夫するとともに、現在の低金利環境を活用し、借りかえ時の金利上昇リスクのない超長期債を発行するなど、償還年限の多様化も図りながら将来の金利変動に備えた県債調達に努めているところです。
今後とも、毎年度の予算編成において、県税を含めた一般財源の確保や歳出の一層の選択と集中を進めることで収支不足の圧縮を図り、安定的な財政運営に努めていきます。
次に、若者・女性の活躍支援プロジェクトの実現方策等についてでありますが、復興をなし遂げ、人口減少に立ち向かっていくためには、若者や女性の活躍が重要であります。これまでも、若者の活躍については庁内若手職員で構成する若手ゼミにおいて部局横断的な施策が検討され事業化されるとともに、いわて若者会議やいわて若者文化祭を通じて県内の若者のネットワークが構築されてきております。また、女性の活躍については、女性活躍推進法の施行に先駆けていわて女性の活躍促進連携会議を設置し、産業団体や経済団体等と連携しながら経営者研修や女性管理職のロールモデル提供事業などの取り組みを進めることにより女性の活躍への関心の高まりが見られてきたところです。
平成29年度は、これらの取り組みを加速化させるため、若者女性協働推進室に新たに女性活躍支援の特命課長を配置するほか、人員も増員するなど組織体制の強化を図ったところであり、庁内連携組織である岩手県子ども・若者施策推進会議や女性活躍推進本部会議を通じて、全庁一丸となって若者、女性の活躍を推進していきます。
次に、いわて女性の活躍促進連携会議についてでありますが、これまで、産業団体、経済団体等と連携して、女性の活躍に向け、経営者への意識啓発などの取り組みを重点的に行ってきました。平成28年度の企業・事業所行動調査によれば、女性の登用に取り組む企業が増加しているほか、1月には県内の34の企業、団体がイクボス共同宣言を行い、女性活躍や働き方改革に本格的に取り組むことを表明するなど、実際に行動を起こす企業がふえている状況にあります。平成29年度においては、この連携会議に就業促進部会、子育て支援部会など五つの部会を設置し、女性の起業、多様な保育サービスの提供や保育士の確保、農山漁村、建設業や地域防災における女性の活躍の推進に向けて関係団体と連携して取り組んでいくこととしています。
今後とも、活躍する女性の姿や先進的な取り組み事例を情報発信するとともに、働き方改革推進運動の取り組みと連携して女性にとって働きやすい環境づくりを進め、個別の分野においても具体的な取り組みが進むよう努めてまいります。
次に、若者、女性の創業支援についてでありますが、創造性や多様性を有する若者や女性の創業を支援することは、復興とふるさと振興を進める上でも重要であります。創業しようとする人たちの多くは、新たなビジネスを生み出す柔軟な発想や行動力などを有している一方で、経営ノウハウや資金調達力の面で弱みがあるとも言われており、県では、創業に必要なスキルの習得や創業体験を支援しているほか、いわて起業家育成資金等により創業資金の手当てを行うなど、成長ステージに応じたさまざまな支援策を展開しています。
また、今年度から、県内大学と連携し、大学生等が創業について学ぶいわてキボウスター開拓塾を開設するなど、未来の起業家育成に向けた取り組みを行っており、今後も関係機関と連携し、若者、女性の創業支援に積極的に取り組んでいきます。
次に、働き方改革と生産性の向上の両立についてでありますが、復興とふるさと振興を進めていく上で、活力ある地域経済を維持し、発展させていくためには企業の生産性を高めていく必要があり、それを担う労働者が生き生きと働くことができる魅力ある労働環境となるよう、長時間労働の是正などの働き方改革の推進が不可欠であります。そのため県では、今年度から多数の企業の参加を得ていわて働き方改革推進運動を展開しているところであり、そのすぐれた取り組みを表彰するいわて働き方改革アワードの受賞企業の取り組みにおいても、働き方改革の推進が生産性向上につながっているということが示されています。
今後、運動の一層の拡大を図るとともに、来年度においては、専門家による個別企業への指導支援を強化し、働き方改革のモデル事例を創出することとしており、多くの企業が働き方改革を通じて生産性の向上を図るよう取り組んでいきます。
また、生産性の向上に向けては、経営革新の取り組みへの支援を初め、設備高度化やカイゼンの導入、新商品開発などを引き続き支援していくこととしており、こうした働き方改革と生産性の向上を不離一体の取り組みとして、いわてで働こう推進協議会を核とするオール岩手の体制でしっかり推進していきます。
次に、事業所内保育所の整備についてでありますが、仕事と子育ての両立を支援する就労環境の整備は、女性の活躍推進や人材の確保に資するとともに、従業員の多様な働き方に対応し安心して働ける条件を整えることで、企業の生産性向上にも寄与する、本県の産業振興施策上、極めて有効な取り組みと考えています。
今般、トヨタ自動車東日本から地元市町村と連携して事業所内保育所を設置する旨、報道発表がありましたが、これは、同社社員のみならず周辺企業の方や近隣住民も利用可能な施設であり、地域が一体となって就労環境の向上を図る先駆的な取り組みであります。また、県内で同様の取り組みが進められていることを踏まえて、県としては、これらの取り組みをモデルとして、小規模事業者を含む地域の企業や地元市町村、関係機関が一体となって就労環境を整備する動きが県内各地で加速されるよう支援していきます。
次に、電力自給率の現状認識と自給率向上に向けた取り組みについてでありますが、県では、岩手県地球温暖化対策実行計画において、平成32年度の再生可能エネルギーによる電力自給率を基準年の倍増とする35%を目標に掲げ、取り組みを進めているところであります。直近の平成27年度を見ると、当該年度の目標を2.1ポイント上回る21.1%となっており、順調に伸びてきております。
今後も、東日本大震災津波などの経験を踏まえた、災害にも強い自立・分散型エネルギー供給体制の整備や、エネルギーの地産地消による地域経済への波及効果を考慮すると、電力自給率は着実に高めていく必要があります。また、本県の全国的にも高い再生可能エネルギーのポテンシャルを生かしていくため、風力や地熱などの発電設備の導入を推進していくとともに、海洋や水素などの新たなエネルギーを活用していくほか、エネルギーの地産地消による地域経済の循環を一層推進することなどにより、現行計画期間以降においても電力自給率をさらに向上させるよう取り組みを進めていきます。
次に、リスク分散、地域経済の活性化等の視点による戦略についてでありますが、県では、平成28年3月に改定した岩手県地球温暖化対策実行計画に基づき、地域の防災拠点へ太陽光発電設備等を導入し、災害にも対応できる自立・分散型の再生可能エネルギー設備導入などに取り組むとともに、今後、集積が期待される風力発電では、県内企業のメンテナンス部門への参入を見据えた勉強会を開催するなど、産業化にも取り組んでいるところです。また、北上市を初めとしたスマートコミュニティーの推進、八幡平市での温泉熱を生かしたまちづくり、野田村での太陽光による市民共同発電所の設置、農業水利施設を活用した小水力発電の導入など、地域経済に対して好影響のある取り組みも広がってきているところです。
県としては、こうした地域主導による再生可能エネルギーの導入を進めていくことが災害時のリスク分散や地域経済の活性化を進める上で有効な手法と考えております。今後、これらの事例や県外の事例を参考に、その知見を市町村や事業者へ情報提供し事業化へつなげていく仕組みづくりを進めながら、地域の特性に応じた再生可能エネルギーの導入が図られるよう総合的に取り組んでいきます。
次に、全国知事会議に臨む姿勢と方針についてでありますが、全国知事会が主催する7月の全国知事会議では、大規模災害に備えた防災、減災対策や東日本大震災津波からの復興、地方創生など、地方が直面する喫緊の課題について議論が交わされるものと考えています。本県としては、関連する議題の中で、発災以降、全国からいただいた多くの支援に感謝をあらわすとともに継続した支援を呼びかけていくほか、東京一極集中の是正や地方重視の経済財政政策の推進などについて、国に対し各知事とともに強く訴えるなど、感謝と協調の姿勢で会議に臨みます。
また、被災地で初の開催となりますことから、震災の教訓や復興の現状も周知していく方針としており、会議の開催にあわせて沿岸部を視察する機会を設けるほか、震災からの復興を世界に発信する復興五輪の意義や、三陸創造プロジェクトに位置づけているILCの取り組みについても理解の醸成に努めてまいります。
〇議長(田村誠君) 次に、嵯峨壱朗君。
〔34番嵯峨壱朗君登壇〕(拍手)

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