平成28年6月定例会 第5回岩手県議会定例会会議録

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〇11番(田村勝則君) 一般質問の機会をいただきました創成いわての田村勝則であります。
1期目であるにもかかわらず、既に2回目の登壇の機会をいただきました。会派の諸先輩、議員各位に心から感謝を申し上げる次第であります。
私は、まず初めに、ふるさと振興の実現に向けた取り組みについて伺います。
初めに、達増知事は、去る23日の会見で東京都知事の辞任について問われ、都知事選の際に政策論争が生煮えだったのではないかということと、次期都知事選に向けては、誰がよいかもさることながら、どういう東京がよいかの議論も大いにするべきとの見解を述べておられます。不肖私もこの知事の見解に同感を覚える者の一人であります。トップリーダーは、ペイトリオティズム、すなわち愛郷心と熱い思いを持ってその目指す姿を示し、建設的な政策論争がなされ、その道に誤りなきよう期す重い責任を有しております。
この3月、司馬遼太郎没後20年を企画した冊子がNHK出版から発行されました。その中で、歴史家の磯田道史氏は、司馬文学について大要を次のように書いておられます。私のこれからの質問にも通底する重要な指摘でありますので、少し長い引用になりますが、お許しをいただきます。
司馬さんの文学の根底に流れているのは、後世をよくしたいとの使命感と志だった。そのため、作品の中で、日本が誤りに陥っていくときのパターンを何度も繰り返し示そうとした。例えば、集団の中に一つの空気のような流れができると、いかに合理的な個人の理性があっても押し流されていってしまう体質。あるいは、日本型の組織は、役割分担を任せると強みを発揮する一方、誰も守備範囲が決まっていない、いわゆる想定外と言われるような事態に対してはレーダー機能が弱いこと。また、情報を内部にため込み、組織外で共有する、未来に向け動いていく姿勢をとれないといった国民性の弱みの部分を描き出しているとお書きになっておられます。そのような点が我が岩手の県民性にもあるとするならば、これを克服し、よりよい岩手を築き上げていかねばなりません。
そこで、このたび定められました岩手県ふるさと振興総合戦略についてお伺いいたします。
これは、本県の人口ビジョンを踏まえ、人々の希望の実現を図るために、ふるさとを振興し、人口減少に立ち向かうための基本目標を定め、平成31年度までの主な取り組み方向やその施策を総合的かつ計画的に実施するための具体的な施策、数値目標を示すものとされております。ふるさと振興が積極的に展開され、岩手への新たな人の流れができ、年度ごとの数値目標が達成されたとしますと、24年後の平成52年には岩手の人口が100万人程度とされることになります。そこには、希望郷いわてを標榜する知事のイメージとして、どのような未来像、岩手の姿が描かれているのかお伺いいたします。
ふるさと振興も今年度は2年目を迎えるわけでありますが、この戦略には三つの柱が示されております。
一つ目は、岩手で働くということであります。やりがいと生活を支える所得が得られる。その仕事を創出し、岩手への新たな人の流れの創出を目指すという施策を推進するため、商工業、観光産業振興、仕事創出プロジェクトの取り組みが示されております。そして、その政策ごとに達成すべき成果目標、いわゆるKPIについてでありますが、岩手で働く高卒者の県内就職率を平成28年度では65.5%、4年後の平成31年度には67%としております。また、県内学卒者の今年度の県内就職率は49%、平成31年度にはこれを55%に引き上げる数値となっております。
そこで、本県の4月の有効求人倍率を見ますと1.28倍であります。震災後の最高値を更新しているのでありますが、有効求人数を見ると、前月比では0.7%、201人減少の2万8、719人、有効求職者数も2.8%、642人減少の2万2、520人であり、人数にすれば減少傾向ではあるものの、新規求人倍率を見ても1.74倍という高水準を示し、昨年同月比0.07ポイントの上昇率となっております。
このような良好な雇用、就職環境下にあって、私の調査によれば、例えば県立紫波総合高校の平成27年度の就職状況を見ると、卒業生165人、そのうち就職者は93人、そのうち72%の67人が県内に就職しております。また、県立山田高校の県内就職率は、平成25年度から平成27年度までの累計で68.9%。内陸の県立盛岡工業高校の場合は、学校が公表している平成26年度進路状況によれば48.9%と少し下回ってはいるものの、県内就職率は上がってきているという状況と聞いております。では、どのような業種に就職しているかということでありますが、一番多いのが製造業の1、076人。次いで卸売、小売業の409人、建設業の399人と続いております。
東北6県の状況はどのようなものでありましょうか調べてみました。本年3月の新規高卒者で県内就職者の割合が高いのは宮城県の80.6%。続いて山形県、福島県、秋田県と続き、残念ながら本県は5番目に位置しております。人口減少の大きな要因となっている若者の県外転出をいかにして食いとめたらいいのか、どのような手だてが必要なのか。総合戦略に示されている現状と課題を踏まえ、また、若者の非正規雇用者が増加傾向にあることや離職率が全国平均より高いことなど、雇用情勢の概況分析に的確に対応した、よりきめ細かな施策の強化が私は必要ではないかと考えます。新規高卒者を初め、学卒者の県内就職率向上に向けた取り組みについてお尋ねいたします。
加えて、岩手への新たな人の流れを創出するという観点から、U・Iターンの取り組みについてもお尋ねいたします。
次に、若者や女性の創業支援の充実強化についてであります。
若者の県外転出を食いとめるには多様な職種による仕事の創出が必要であり、そのための支援の充実強化にも取り組む必要があると考えます。本県の制度による創業資金の融資額は、平成24年度から平成26年度までの3年間で21.3億円となっております。今年度も3カ月を経過いたしました。今後の見通しと融資の状況についてもお尋ねいたします。
次に、観光産業の振興についてであります。
去る6月2日から5日まで、台湾友好議員連盟による視察の一員として台湾の視察を行ってまいりました。花巻からのチャーター便に乗り、私にとりましては初めての台湾ということもあり、極めて印象深い視察となりました。あの大震災には、我が岩手を初め、震災津波の被災地に多額の支援金をいただいております。その温かい御支援に対する感謝と今後の相互交流の促進を図るための表敬視察でありましたが、時差は1時間しかなく、台北の桃園国際空港までの所要時間は3時間半。国民性も穏やかということもあり、私は、3日間の視察、高雄市など表敬先での親日、友好的な対話などを通じ、これからの観光交流への期待感、特にも、本県への観光客の増加を見込めるとの印象を強く感じてまいりました。
もちろんそのためには、台湾の方々が求める観光資源や四季を通じた岩手のイベント情報の発信といった取り組みが求められます。こうした台湾との交流を本県観光産業の振興に生かしていくことについて知事の所感をお聞かせいただきたいと存じます。
また、台湾とのチャーター便の利用状況は現在どのようになっているのかについてもお尋ねいたします。あわせて、花巻空港の利用者数に係る重要業績評価指標─KPIの数値では平成28年度は40.3万人とされておりますが、今後の利用見通しはいかがでしょうか。
さらに、本県の観光産業の振興策についてであります。
総合戦略には、それぞれの数値が示されております。例えば、外国人の県内での延べ宿泊者数は今年度およそ7.7万人となっております。観光庁の統計調査による平成27年1月から12月の都道府県のそれぞれの宿泊者数の順位を数えてみると、本県は東北の中では宮城県、青森県に次いで多いものの、全国的には下位の部類に属しております。
また、先般、沿岸地域の観光にかかわる方からその課題についてもお聞きする機会がありました。主な点を申し上げれば、観光地として団体を受け入れるための施設の不足、弁当の提供元や休憩場所などの情報不足などであると言います。県として、現場で活動している方々の課題や提言を踏まえ、本県を訪れた旅行者におもてなし1位と言われる県になるような観光客の満足度を上げるための対応策を講じるべきと考えますが、いかがでしょうか。
ふるさと振興総合戦略では、重要な観光資源である世界遺産を県内に複数有している優位性を生かし、これを核として県内各地の多様な資源を組み合わせ、オール岩手の推進体制であるいわて観光キャンペーン推進協議会を中心に国内外からの誘客の拡大に努めるとしておりますが、具体的にはどのような推進施策を講じているのかお伺いいたします。
次に、二つ目の岩手で育てるについてであります。社会全体で子育てを支援し、出生率の向上を目指す取り組みについてお尋ねいたします。
先般、盛岡タイムスに、子供がふえない限り岩手の未来はないと題した意見広告が掲載されておりました。この記事には、自社グループで独自の少子化対策に取り組むとともに、岩手の子どもを増やす会を立ち上げた企業の代表と、現在、子育て真っ最中の母親でもある千葉絢子議員、ハクセル美穂子議員の対談内容が掲載されておりました。いつも独身のような若々しいお二人でありますが─笑うところではございませんよ─、家族のきずなや子育ての楽しさなど、いろいろと示唆に富む内容でありました。また、この企業では、第3子が産まれた場合には社員に対し100万円の支援をしているとの記述もありました。
このように、人材の育成のみならず、子育ても支援する企業がどんどんふえていくような岩手県ならではの施策が望まれます。本県の大きな、そして喫緊の課題である人口減少対策、この解決策は出生率の向上にあります。県では平成31年度の合計特殊出生率の目標値を1.45以上としておりますが、先月示されました県の施策に関する県民意識調査結果報告書によれば、安心して子供を産み育てられ、子育てがしやすい環境であることを重要と考える人の割合は85.4%、年代別では、30代が実に93.6%と高い数値が示されております。この期待に応えるためにも、多様な主体の総力を結集し、諸施策を進めねばなりません。安心して子供を産み育てられ、子育てがしやすい環境に関する取り組み状況についてお伺いいたします。
3番目の岩手で暮らすについてもお尋ねいたします。豊かなふるさとを支える基盤の強化を進め、地域の魅力向上を目指す施策についてであります。
この取り組みの主なものとして、世界遺産の普及及び新規登録に向けた取り組みがあります。本施策では、本県の世界遺産である平泉及び橋野鉄鉱山など豊かな岩手の文化遺産を確実に守り伝え、本県の世界遺産の価値を国内外に発信するとともに、平泉の文化遺産の拡張登録及び北海道・北東北の縄文遺跡群の登録に向けた取り組みを進めることとしておりますが、このほかにも、県教育委員会の取り組みとして文化財の調査指定、保護、保存管理の指導、公開、活用についてがうたわれております。北上川周辺、特にも我が紫波町は、平泉とゆかりの深い比爪館や大規模な寺院の存在が識者により指摘されております。このような県内各地の遺跡の調査は、遺跡の範囲確認調査なども含め、遅きに失しないよう関係機関と深い連携を図りつつ進めるべきと考えます。当局の見解、さらには対応策を伺います。
次に、北上川の洪水対策についてであります。
北上川は、幹川流路延長249キロメートル、流域面積は1万150平方キロメートルを有する東北第一の一級河川とされております。この川は、古来より舟運により文化、経済の交流が活発に行われ、中尊寺、毛越寺等の奥州藤原文化に見られるような東北独自の文化を育んでまいりました。その反面、狭窄部を有する地形特性ということもあり、これまで幾度となく洪水や氾濫に見舞われ、沿川地域は甚大な被害を受けてきた歴史があります。近年でも平成14年、平成19年と大規模な洪水が発生し、人命や住家などに甚大な被害をもたらしております。
このような状況下にあって、平成27年3月に示された資料によれば、堤防が必要な延長は約270キロメートルとされております。堤防整備率が低いことから、河川を管理する国土交通省では、平成24年に見直しがなされた北上川水系河川整備基本方針により、持続的な安全・安心の川づくりの実現、豊かな自然環境と河川景観の保全・創出、歴史・文化を育み地域をむすぶ悠久の流れの継承の3点を基本理念として整備が進められております。
しかしながら、御承知のように、この事業は一関遊水地の整備事業とあわせ進められており、事業費も多額を要することから、国の予算も厳しさを増す中にあって、被災地域の悲痛な願いに応える進捗状況にはありません。このことについては、本県議会でも昨年の9月定例会において国に対し早期整備についての意見書を可決しておりますが、事業のおくれは北上川上流の無堤地区の周辺住民や、移転という苦渋の決断をした企業にも大きな不安と焦燥感をもたらし、国や県への早期整備を求める声も強まっております。
大災害は、いつ何どき、どこで発生しても不思議ではないのであります。しかし、この自然災害は、早期対処によって防止が可能であります。県民の生命、財産や地域の遺産を守り抜くためにも、予算の確保、本事業の早期完成について国、県、周辺自治体が情報を共有し、連携して取り組むべきと考えます。県としての認識をお伺いいたします。
また、北上川清流化についてもあわせてお尋ねいたします。
このことについては、いわて県民計画の中にも示されているように、毎年度予算化もなされているところであります。今後も、施策として国と連携しての確実な中和処理を行うことや清流化の取り組みを広く県民に周知するとともに、旧松尾鉱山跡地での植樹活動の支援も行うこととしており、坑廃水処理の実施と新中和処理施設耐震補強工事の実施が計画の工程表に盛り込まれております。これらの工事は万全になされていると思いますが、改めて現状認識とその取り組みについて伺います。
最後に、いわての森林づくり県民税について伺います。
この税は、県民の共通財産である森林を次世代に引き継ぐため、平成18年度に創設、平成27年度までの税収は約72億円、企業、個人からの寄附金は約1、900万円と伺っております。この資金を財源に、混交林誘導伐については施工地1万4、000ヘクタールを実施し、住民団体などの活動支援、普及啓発活動などの実績も上げておりますが、さらに、第3期アクションプランでは、県民の支援や地域協働の取り組みなどの幅広い事業展開をし、森林の再生を推進することとしております。この事業には、県民の期待も大きいものがあります。したがって、私は、民間の立場で活動している方々の活用しやすいような組み立ても重要と考えます。
間伐は、水源涵養を初め地球温暖化の防止、多くの利点があります。
さらに、近ごろの新聞を拝見しますと、青井俊樹岩手大学名誉教授によれば、間伐や下草刈りは、熊の人里への出没を防ぐ効果があるとも指摘されております。そのあたりの情報も酌み取り、森林が地域の資源として再生保全され、次世代の有用な資産として活用されるよう望むものであります。県としての見解をお伺いいたします。
終わりに、冒頭取り上げましたように、本県を知事の言われる希望郷、よりよい岩手を築くためにも、生煮えの論争にならぬよう当局の真摯な答弁を御期待し、答弁によっては再質問をさせていただくことを申し添え、私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 田村勝則議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、ふるさと振興の実現による岩手の未来像についてでありますが、議員御指摘のとおり、岩手県人口ビジョンにおいては、ふるさと振興の三つの柱である岩手で働く、岩手で育てる、岩手で暮らすに基づく取り組みを県民総参加で進めることにより、出生率の向上と社会減ゼロを実現し、2040年に100万人程度の人口を確保することを展望しております。
この時期には、人口構造の偏りが改善に向かい、さらに2060年ごろには、あらゆる世代の人口が安定し始める定常状態に向かうことが見込まれます。このような人口の展望が実現した際の岩手の姿としては、子供からお年寄りまで、あらゆる世代が生き生きと暮らす岩手、県外とつながり、新しい発想にあふれる岩手が実現できるものと考えております。
次に、台湾からの誘客促進についてでありますが、台湾からの観光客の入り込み状況を宿泊者数で見ますと、平成27年には5万人泊を超え、過去最高となり、本県の外国人宿泊者数の半分以上になっています。
また、台湾と岩手県は、後藤新平や新渡戸稲造に代表される古くからのつながりに加え、東日本大震災津波の際には、物心両面にわたり多大な支援を受けていることからも、いわば特別な関係にあると認識しております。このつながりを、さまざまな分野での交流の拡大に結びつけていくことが重要であり、その中で観光が果たす役割は極めて大きいと考えています。
このため、いわて花巻空港への国際定期便の就航も見据え、従来から人気の春の桜、秋の紅葉に夏の祭り、冬の雪といったコンテンツを加えたプロモーションを展開してきておりまして、引き続き、四季を通じた誘客を強化していく考えであります。
次に、北上川の洪水対策についてでありますが、北上川流域においては、従来より、河川改修やダム、遊水地などの整備が進められてきたところであり、平成25年の集中豪雨においては、盛岡市街地を洪水被害から防ぐことができたことなど、整備の効果がしっかりとあらわれているものと認識しております。
また、国では、北上川の無堤地区への対応として、堤防整備や輪中堤などを計画的に推進していると承知しております。しかしながら、全国的には、昨年9月の関東・東北豪雨や、先月の九州、広島等西日本での梅雨前線豪雨による大きな災害が発生していることなどから、本県におきましても、洪水対策の重要性はますます高まってきているものと認識しております。
洪水から県民の生命、財産を守るとともに、県土の保全を図るため、今後とも、洪水対策を着実に進めていく必要があると考えており、予算の確保や一層の拡充について市町村と連携を図りながら、引き続き、国に強く訴えてまいります。
その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁をさせますので、御了承をお願いします。
〔商工労働観光部長菊池哲君登壇〕
〇商工労働観光部長(菊池哲君) まず、新規学卒者の県内就職率向上等に向けた取り組みについてでありますが、高校生に対しましては、各広域振興局等に就業支援員を配置し、高校との連携を強化し県内就職の支援を行っておりますほか、キャリア教育支援セミナーの開催や就職支援情報の提供、さらには、就職後のフォローアップセミナーなどを展開しているところでございます。
また、大学生等に対しましては、お盆など帰省時期に合わせ各地域で就職面接会を開催しているほか、就職ガイダンスや面接会を県内外で開催いたしまして、県内企業とのマッチングを図っているところでございます。
なお、県立大学や岩手大学におかれましては、県内外の大学等教育機関や経済団体等と連携いたしまして、インターンシップ、企業見学会、産学官連携による共同研究の促進などの取り組みを展開しておられまして、卒業生の地元定着や雇用創出についても取り組んでいただいているところでございます。
次に、U・Iターンの取り組みについてでございますが、県では、U・Iターンフェアの開催を初め、東京のUターンセンターに専門職員を置きまして、各種就職相談会等への対応、企業、大学等への訪問などによりまして、U・Iターン就職希望者と県内企業とのマッチングに努めているところでございます。
また、U・Iターンの一層の促進を図るため、昨年度からはジョブカフェいわてにU・Iターンサポートデスクを設置しU・Iターン就職等の相談に対応しておりますほか、今年度からは、新たに、東京のふるさと回帰支援センターにキャリアカウンセラーを配置することによりまして、就職と移住、定住のワンストップ相談体制を整備し、U・Iターンの支援体制を一層強化することとしております。
こうした取り組みを通じまして、岩手への新たな人の流れをつくり出していきたいと考えているところでございます。
次に、若者などの創業支援の充実強化についてでありますが、県では、若者や女性等の創業を支援するため、いわゆる創業セミナーの開催やビジネスプランの策定支援、創業体験の場の提供など、さまざまな取り組みを行っております。また、資金面では、いわて起業家育成資金によりまして、経営基盤が確立していない創業期の事業者を支援しているところでございます。
この資金の今年度の利用状況でございますが、4月から5月の2カ月間で既に4、000万円余となっており、また、昨年度の利用実績を見ますと、その前の3カ年度の平均額を上回る8億円弱の融資状況となっており、創業資金に対するニーズは、東日本大震災津波以降増加傾向にあります。
県といたしましては、引き続き、制度の周知を図るなど、若者や女性等の新規創業が促進されるよう努めてまいります。
次に、国内外の観光客への満足度を上げるための対応を含めた誘客への対応策についてでありますが、県内市町村を初め、観光関係事業者や報道機関等の参画により構成しておりますオール岩手の推進組織であるいわて観光キャンペーン推進協議会では、大きく四つの施策の柱を掲げ、各主体が連携、補完し合いながら、国内外からの誘客拡大に取り組んでいるところでございます。
順次、この四つの柱ごとに御説明申し上げますと、一つ目は、二つの世界遺産や三陸復興国立公園などのすぐれた観光資源を核とし、震災、防災学習や農山漁村の食、暮らしなど、体験型学習の旅行商品の充実を図る地域資源を生かした魅力的な観光地づくり、二つ目は、旅行商品の企画力の強化や内陸、沿岸をめぐるバスツアーの運行支援などにより、お客様の視点に立ったサービス向上を図る観光人材の育成、県内二次交通などの受け入れ態勢の整備、三つ目は、全国各地での各種観光キャンペーンの展開と、教育旅行等誘致説明会の開催などによる効果的な情報発信と誘客活動、そして四つ目には、海外旅行博等でのPRや海外旅行会社の招請などのプロモーション、いわゆるWi-Fiや外国語表示の整備支援など、受け入れ態勢の充実を図る国際観光の振興を進めているところでございます。
これらの取り組みによりまして、昨年の観光入り込み客数はほぼ震災前の水準まで回復し、外国人宿泊者数は震災前の水準を上回る過去最高となっております。しかしながら、外国人宿泊者数の伸びは全国に比べるとまだ低い状況となっておりますことから、今般の国の東北観光復興対策交付金を活用し、さらなる誘客拡大につなげていく考えでございます。
〔県土整備部長及川隆君登壇〕
〇県土整備部長(及川隆君) 台湾との定期チャーター便の利用状況等についてでありますが、平成26年度から本県初の台湾との定期チャーター便が運航され、利用率は、平成26年春は82.6%、秋は90.8%、平成27年春は82.2%となっています。
また、この春、5月26日から昨日6月30日まで、11往復22便が運航された春の定期チャーター便については、速報値で、台湾へのアウトバウンドの利用率が約90%、インバウンドを合わせた合計の利用率が約85%となっております。過去3季と比較しても、同等の実績を上げることができたと考えています。
いわて花巻空港の今後の利用見通しについてでありますが、国際線については、チャーター便の運航計画が未確定であることから不透明ではありますが、空港ビルの増改築により受け入れ能力が向上したこと、また、国内線は、名古屋線が1便増の1日4便化となったことなどを踏まえ、国際線、国内線合わせて、平成28年度の目標値40万3、000人を上回るよう、より一層の利用促進に取り組んでまいります。
〔保健福祉部長佐々木信君登壇〕
〇保健福祉部長(佐々木信君) 安心して子供を産み育てられ、子育てがしやすい環境の整備への取り組み状況についてでありますが、県では、昨年4月に施行したいわての子どもを健やかに育む条例の基本理念の一つとして、結婚、妊娠、出産及び子育ての各段階に応じた切れ目ない支援を掲げており、また、岩手県ふるさと振興総合戦略においては、社会全体で子育てを支援し、出生率の向上を目指すことを基本目標の一つに掲げております。
その実現に向け、昨年10月に、“いきいき岩手”結婚サポートセンター─i−サポを設置し、結婚支援に取り組んでいるほか、女性の特定不妊治療への助成に加え、昨年度、国に先駆けて男性不妊治療費助成事業を創設したところです。
また、子ども・子育て支援新制度に対応して、保育所等の施設整備による利用定員の拡大や、延長保育、病児、病後児保育等の多様な保育サービスの充実を支援するとともに、岩手県保育士・保育所支援センターによる保育人材の確保に取り組んでおります。さらには、子供の医療費助成の拡大による経済的負担の軽減や、いわて子育て応援の店協賛店登録の働きかけなど、子育てにやさしい環境の整備にも努めてきました。
本県の平成27年の合計特殊出生率は1.50と、前年比0.06ポイントの増となったところでありますが、今後もその向上を図っていく必要がありますことから、引き続き、県民、企業、NPO、行政など、地域社会を構成するあらゆる主体の理解と参画を得て、子育て支援に取り組んでまいります。
〔環境生活部長津軽石昭彦君登壇〕
〇環境生活部長(津軽石昭彦君) 北上川清流化についてでありますが、新中和処理施設は、昭和57年4月の稼働以来着実に坑廃水の処理を継続しており、これまで34年間、無事故で北上川の清流を確保してきており、本県の環境を保全する上で極めて重要な施設と認識しております。
この間、施設見学やパンフレットの作成等により清流化の取り組みを県民に周知し、NPOとの協働による植樹活動等、周辺の環境整備にも努めてきたところであります。
耐震補強工事につきましては、耐震診断に基づき順次工事に着手し、平成28年度末までに、坑廃水を処理するために必要な2系列分の耐震補強が完了する見込みであります。これによりまして、大規模地震時においても、通常どおり、処理を継続することが可能となるものであります。
また、地震等の各種災害を想定し薬剤や燃料を備蓄するとともに、毎年訓練を実施し、災害発生時に適切な対応ができるよう努めてきているところでございます。
今後におきましても、県民の安心・安全のため、施設を適切に維持管理し、北上川の清流の確保を図ってまいります。
〔農林水産部長紺野由夫君登壇〕
〇農林水産部長(紺野由夫君) いわての森林づくり県民税の活用策についてでありますが、この税は、平成18年度の創設から昨年度の第2期終了までの10年間取り組みを進めてきたところであり、公益上重要で緊急に整備が必要な人工林について、針葉樹と広葉樹の入り混じった針広混交林に誘導するための間伐を実施するとともに、地域住民やNPO法人等が主体的に取り組む森林整備活動や森林環境学習など、森林を守り育てる活動への支援などを行ってきたところでございます。
こうした取り組みによりまして、着実に森林の整備が進むとともに、森林、林業の役割や重要性に関する県民理解の醸成が図られてきているものと受けとめております。
今年度からスタートした第3期の5年間の取り組みは、環境重視の森林づくりと森林との共生の二つの柱による施策を展開していくこととしております。
まず、環境重視の森林づくりにつきましては、景観の悪化や倒木の危険性が高まる枯れたアカマツ林を伐採する広葉樹林への誘導、高齢ナラ林を若い林へ更新する森林病害虫に強い広葉樹の森づくり、森林の再生が自然の力では困難な箇所への植栽活動の支援など、新たな森林環境保全対策を追加したところであります。
また、森林との共生につきましては、より多くの県民が森林づくりに参画できるよう、森林の手入れを行う多様な人材を育成しようとするNPO法人等に対しチェーンソー等の機材導入を新たな支援対象にするなど、新たな取り組みを推進しているところでございます。
今後とも、県民の理解と参画のもと、多様な公益的機能を有する本県の森林環境を良好な状態で次世代に引き継いでいくため、その保全に努めてまいります。
〔教育長高橋嘉行君登壇〕
〇教育長(高橋嘉行君) 遺跡の調査についてでありますが、県教育委員会におきましては、現在、東日本大震災津波による被災地の埋蔵文化財の調査や、国指定史跡である柳之御所遺跡の全容解明と史跡整備に向けた発掘調査に主として取り組んできておりますが、あわせて、平泉文化研究の深化を図るため、衣川流域や紫波町内など、世界遺産平泉と関係が深い遺跡の調査にも取り組むとともに、市町村における調査等への支援を行ってきているところであります。
紫波町に関しましては日爪館跡の調査を実施し、その成果を本年3月に報告書として取りまとめたところであります。
このほか、県内市町村教育委員会においては、それぞれの市町村に所在する遺跡の調査などが行われているところでありますが、これらの取り組みは、本県の貴重な歴史の保存とあわせ、地域の皆様方に郷土への一層の愛着心を高めていただくことや、地域の活性化を図る上で極めて大事な取り組みでありますので、県教育委員会といたしましては、今後におきましても、技術的な助言や人的応援など、市町村における遺跡の調査や保存活用への支援を行ってまいります。
〇11番(田村勝則君) それでは再質問をさせていただきます。
まず、ふるさと振興についてであります。
あの3月11日の直後から、私は実家のある山田町に向かいました。そして、余りにも変わり果てたその光景を目の当たりにして、涙がとまりませんでした。その悲しみの中で今も忘れられないのは、目の前に広がる、本当にこんなことがあったのかと思うような静かな海であります。そして、寝る前に空を仰ぎました。本当にきれいな星空でございました。そのような自然とともに、瓦れきと化したまちのために、黙々と懸命に活動する若い自衛隊員の姿がありました。これは県庁の職員の方々もそうでありますが、警察官、消防隊員、多くの懸命な方々の使命感あふれるといいますか、そのような無心の活動、そういうものが私の心にはとどまっております。
先ごろ、ある政党の方が、防衛費は人を殺すための予算と発言したことが問題となっておりますが、私はこの言葉に強い憤りを覚えるものであります。
平成9年、我が紫波町が大規模な山林火災に見舞われました。当時は増田知事のときでありました。自衛隊の支援によって、早期の収束を図ることができました。多くの財産を損なわずに、そして死者やけが人が1人もなく、あの山林火災が収束したことを今も心にとどめているのであります。本当にありがたいなという思いを強く持っております。したがいまして、私にとりましては、防衛費は、国民を救い、国を守る予算であるとの思いが強くあります。
質問が横道にそれましたが、私にとってのふるさとは、生まれ育ったところ、あるいは祖先の眠るところであり、懐かしさを感じさせる風景などをイメージするわけですが、先ほどの達増知事の御答弁に、希望郷いわての描く姿のお話がございました。まさしく、そのようなことによって、よりよいふるさとが形成されていくことを願うものでありますが、ふるさと振興という言葉に、実はどうしても私は心にひっかかるものを感じるものであります。
そこで、知事のふるさと観、一体どのようなふるさと観をお持ちであるのか、お尋ねをいたします。
もう一点だけお伺いをいたします。
きょうの新聞、岩手日報には、一面で、北上川流域、最大規模の豪雨で、本県9市町、家屋倒壊のおそれありという、大きな見出しで報じられております。
岩手河川国道事務所の公表によれば、従来の1.2倍に拡大した洪水浸水想定区域の見直しや、早期避難が必要な区域を示すハザードマップを作成するための公表ということで報じられておりますが、実は、我が紫波町の地域座談会が先ごろまで各地域で行われておりました。そこで町当局が説明をしておりましたのは、3月に作成した防災マップ、ハザードマップであります。この資料は、前回の国土交通省などの公表資料あるいは数値をもとにつくられた防災マップでありまして、その数値が今回の発表によってまるっきり変わってくるのではないかと私には思われます。
そこで、県としても、先ほど私が質問で触れましたけれども、国や各地方自治体とさまざまな情報を共有して、そして一つの情報として流す、連携をとることが、いわゆる公共の無駄をなくし、そしてまた情報の共有化を図り、県民にも安心を与える施策につながっていくのではなかろうかと思います。県としてもっと主体的な取り組みをお願いしたいわけでありますが、その辺の情報の共有化や国と各地方自治体との連携強化をどのように図っていくのかについて改めて御見解をお聞かせいただければと存じます。
以上であります。
〇知事(達増拓也君) ふるさとのイメージについてでありますが、やはり、美しい自然、そして、その自然のもとで育まれてきた歴史や文化、その中で人が生き生きと暮らすことができる、そういう地域社会をふるさととしてイメージいたします。
そして、岩手県の場合は、日本全体にとってふるさとの役割を果たし、また、アジアや、さらに世界に対しても開かれたふるさととして、国内外の人たちにも愛されるような、そういうふるさとであればと思います。
〇県土整備部長(及川隆君) 北上川の洪水対策に係る連携についてでございますけれども、今回国から公表されました洪水浸水想定区域は、近年、全国的に計画規模を超えるような洪水が発生していることを踏まえまして、最大規模の洪水を想定したものであります。対象となる市、町には、今後、この浸水区域をもとに洪水ハザードマップの見直しを行って、円滑かつ迅速に避難ができるよう住民の方々へ周知していくこととなります。
ことし5月に国、県、市、町によりまして構成いたします北上川上流洪水減災対策協議会を設立したところでございます。この事務局は国と県が担っておりまして、これを活用しながらしっかりと関係機関相互の情報共有と必要な調整を図っていきたいと考えております。
県としても、ハードのみに頼らないソフト的な対策を講じていくことが重要であると認識してございまして、県管理河川における想定浸水区域の見直しを行うとともに、国や市町等と連携を図りながら、日ごろからの防災意識の向上や防災教育の充実、防災情報の周知など防災対策の推進に取り組んでまいりたいと考えています。
〇11番(田村勝則君) 今の北上川の問題でありますが、私が質問の中でも申し上げましたように、防災マップはあくまでも守りの姿勢の施策と私は思います。限られた予算の中でさまざまな県民の要望に応えていかなければいけない、そういうつらさは私も承知するわけでありますが、ぜひ、天災が人災にと言われないような施策を講じるためにも、県として、国と連携し、あるいは国に強く要望しながら予算の確保等を図り、いわゆる無堤地区などもございますが、それらをしっかりと点検して、予算の確保を進めながら事業の進捗を図っていただきたいと考えますが、改めてその点についての県としての思いをお伺いして私の質問を終わらせていただきます。
〇県土整備部長(及川隆君) 先ほど知事も申し上げましたとおり、洪水から県民の生命、財産を守るとともに、県土の保全を図るために今後とも洪水対策を着実に進めていく必要があると考えてございまして、予算の確保や一層の拡充について、市町村と連携を図りながら引き続き国に強く働きかけていくとともに、県としても必要な予算を確保してまいりたいと考えております。
〇議長(田村誠君) 傍聴者への配慮から、しばらくお待ち願います。
次に、千葉進君。
〔16番千葉進君登壇〕(拍手)

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