平成28年6月定例会 第5回岩手県議会定例会会議録

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〇23番(佐々木茂光君) 自由民主クラブの佐々木茂光でございます。
平成28年6月定例会に当たり、一般質問を行います。登壇の機会を与えていただきました先輩、同僚議員の皆様に心から感謝を申し上げます。
質問に先立ち、改めて、岩手を壊滅の地にさらした東日本大震災津波でとうとい命を奪われ、亡くなられた方々の御冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。
そしてまた、本年4月に発生した熊本地震及び同地域での記録的な大雨により犠牲になられた方々の御冥福をお祈り申し上げるとともに、被害に遭われた方々にお見舞い申し上げます。
本県では、今も復興は道半ばであります。一日も早く地震、津波による災害からのモデルとなる復興を果たすことを切に願い、通告に従い、順次質問させていただきます。知事並びに関係部局長には誠意ある答弁をお願いいたします。
初めに、東日本大震災津波からの復興について伺います。
東日本大震災津波発災から5年3カ月が経過し、6度目の夏を迎えようとしております。今なお、約2万人もの方々が応急仮設住宅での生活を余儀なくされております。県では、平成26年度から平成28年度までの3年間を復興計画における本格復興期間と位置づけ、災害公営住宅の建設、住宅の再建や事業者の本設再開に向けた支援を進めておりますが、ことし4月末現在の防災集団移転促進事業による宅地完成戸数は計画戸数の64%の1、378戸、中心市街地を形成する土地区画整理事業は計画数の15%の773区画の整備にとどまっております。平成28年度末の住宅用宅地の供給見込みも、全体計画戸数7、863戸に対して4、304戸、55%の供給にとどまるものであり、宮城県の供給見込み81%に比べて低い数値となっております。
ことし1月から県が実施した復興に関する意識調査では、震災からの岩手県全体の復興の実感について、進んでいる、またはやや進んでいると回答した方が25.1%、おくれている、またはややおくれていると回答した方が46.7%との結果であり、おおよそ半数近い方がおくれているとの評価をしております。沿岸被災地では、建設費の高騰、マンパワー不足等による復興事業への影響等、時間の経過とともに新たな課題も生じ、住宅の再建や事業の本設再開に向け、先行きに不安を抱えております。
今後、復興と表裏一体の地方創生の取り組みも同時に進めていく中にあって、復興がおくれれば、さらなる人口減少の加速が懸念されます。沿岸被災地の現状をしっかりと認識し、取り組みを検証した上で、復興をなし遂げるための強いメッセージを県民に発信していくことが重要と思うのであります。
本年度は本格復興期間の最終年度であり、知事は、ことしを本格復興完遂年と位置づけておりますが、復興の進捗についてどのように評価しているのでしょうか。また、本年度の本格復興の完遂に向け、知事はどのような決意で臨んでおられるのかお伺いいたします。
ことし3月にマスコミが全国の有権者を対象に実施した世論調査では、回答者の8割が東日本大震災の風化を意識していると報じております。復興の現場では、震災から5年以上が経過し、全国各地からの支援者の帰還、再建に当たっての担い手不足の話題を耳にするにつれ、千年に一度と言われる東日本大震災津波も風化が進んできているとの危機感を感じずにはいられません。
ことしは希望郷いわて国体、希望郷いわて大会が開催され、全国からの来県者に対して、これまでの全国からの復興支援への感謝とともに、地震、津波の実情と復興への取り組みの現状を知っていただき、防災の必要性を発信し、また、復興を果たすための継続的な支援について理解していただくためにも重要な機会であります。復興のシンボルとも位置づけられた希望郷いわて国体、希望郷いわて大会において、震災の風化防止のための情報発信をどのように行っていくのか、知事にお伺いいたします。
沿岸被災地では、防災集団移転促進事業等による高台への住宅再建が行われていますが、資材の高騰により住宅の建設費が当初の想定を大きく上回っており、再建に不安を抱えております。また、大規模な土地区画整理事業による宅地造成を待つ被災者にとっては、応急仮設住宅での生活の長期化により、先行きが見通せなくなる方もふえてきていると感じております。
今後、土地区画整理事業により区画が整備されても、住宅の再建、集積が進まないという事態になれば、復興まちづくり計画は当初の想定と大きく乖離してしまいます。生活の基盤となる住宅再建は、被災者が真の復興に向けて自立していく第一歩と考えます。再建がピークを迎える今、持ち家被災者の自力再建に係る補助金の拡充など、住宅再建に対する追加的な支援を検討すべきと思いますが、県の御所見をお伺いいたします。
県は、震災で内陸部に避難した被災者向けに内陸に災害公営住宅を整備する準備を進めております。県が本年1月から実施した内陸避難者2、326世帯を対象とした意向調査では、昨年度末時点で、入居の希望を明らかにしている方々は343世帯、調査対象者の14.7%という結果となっており、未回答者等に確認を進めていると聞いております。
内陸に災害公営住宅を整備するとの方針は、内陸に避難されている方々の生活事情を考慮した上での対応と思いますが、一方で、沿岸地域で進められている復興事業や沿岸地域で暮らす被災者への影響等についても十分に考慮されなければならないと思うのであります。
改めて、内陸部における災害公営住宅の整備を行うとした考え方についてお示し願います。また、建設の時期、場所、戸数、入居者等については、今後どのように調整していく考えなのか、知事にお伺いいたします。
復興まちづくりの進捗に応じて事業者の本設再建が進められております。平成28年2月の被災事業所復興状況調査では、仮設の店舗、事務所により再開した事業所のうち、本設での再開を予定する事業所は75.6%との結果になっていますが、仮設による事業所の半数以上が再建時期を未定としております。本設再建までには、なお時間を要するものと言わざるを得ない状況であります。
また、売り上げの状況については、震災前と同程度、また震災前よりも上回っていると回答した事業者は、全体では47.6%となっていますが、小規模事業者の多い卸売、小売業は34.1%、飲食、サービス業は38.1%と、業績を回復できない事業者が多い結果となっております。
県では、グループ補助金を中心に事業者の再建支援を進めてきておりますが、これからが本設のピークとなります。事業用地の造成等の地域差を考慮しながら、グループ補助金等の制度の継続や、小規模事業者の再建に向けたきめの細かい支援が必要と思いますが、本設再開に向けた課題と今後の取り組みについてお伺いいたします。
陸前高田市では、農林漁家への民泊を利用した修学旅行の受け入れを進めております。本年度は、同市の3地区の26軒の民泊を利用して、おおよそ1、000人の学生を受け入れる予定と報じられております。こうした取り組みは、復興の途上にある沿岸地域での生活体験を通して、交流人口の拡大や、防災教育への理解と拠点化づくりを促進させるものであり、今後の観光施策としても大変有効であると思うのであります。このような取り組みも含め、沿岸被災地域における観光客誘致のための取り組みの現状と今後の展開についてお伺いいたします。
次に、人口減少対策についてお尋ねいたします。
本年2月26日に総務省が発表した平成27年国勢調査の人口速報集計では、昨年10月1日時点の総人口は約1億2、711万人で、平成22年の前回調査に比べ約94万7、300人の減、減少率で0.7%となり、本格的な人口減少社会に入り、本県でも、昨年12月の速報結果では、前回調査から5万333人の減、3.8%の大幅な人口減少となり、特に、甚大な震災被害を受けた沿岸12市町村では2万2、761人の減、減少率8.3%で、減少数、率ともに戦後最大となりました。
県では、昨年度、岩手への新たな人の流れを生み出し、2040年には100万人程度の人口を確保することを展望し、平成31年度までの岩手県ふるさと振興総合戦略を策定し、岩手で働く、岩手で育てる、岩手で暮らすの三つの柱に基づいた取り組みを始めていますが、本格的な人口減少社会に向けた取り組みを効果的に進めていくためには、県と市町村が地域課題を共有し、目指す姿や施策の方向性を一致させることが重要であります。
平成27年度末までに市町村の総合戦略も策定済みと伺っておりますが、各市町村における総合戦略は、県の総合戦略の目指す姿や目標と整合が図られたものとなっているのでしょうか。また、今後の施策の推進に向け、県と市町村の連携をどのように図っていくのか、知事にお伺いいたします。
県の総合戦略では、平成32年の人口の社会減をゼロとすることを目標に掲げ、取り組みを行うこととしております。県の総合戦略では、本県の18歳から20歳台前半の若者の県外転出が人口の社会減の大きな要因となっていると指摘しており、私も、社会減対策には、まず、本県で学び育った学卒者の県内就職と定着に向けた対策が重要であり、雇用条件や雇用環境の整備、教育関係者との連携、マッチング支援、就職後のフォロー等の幅広い取り組みが求められていると考えております。
県では、近年の高校、大学の新規学卒者の県内就職率と就職後の定着率の動向をどのように把握されているのでしょうか。また、本年2月9日に設置されたいわてで働こう推進協議会を含め、新規学卒者の県内就職及び定着を促進するため、今後、どのような取り組みを進めていくのかお伺いいたします。
次に、第1次産業の振興についてお伺いいたします。
本県の第1次産業は、平成27年11月の公表資料によると就業者数の構成比は12.3%を占め、全国的にも高い割合となっていますが、県内総生産から見た構成比は3.4%にとどまっております。第1次産業は、食料・木材供給基地を目指す本県の基幹産業であると同時に、県民が豊かな生活を営むためのはかり知れない恩恵をもたらしてまいりましたが、担い手の不足や価格の低迷、生産資材の価格高騰など厳しい状況が続いております。
農業を取り巻く環境は、人口減少等による国内需要の縮小や、国による米の生産数量目標の配分が平成30年産から廃止されるなど、大きな転換期を迎えております。県土の約8割を占める中山間地域では、農業を通じてコミュニティーの維持など農村地域の社会そのものを支えてきましたが、その多くは人口減少や高齢化が進み、過疎化が進行しており、農業生産力の向上とともに、雇用創出、移住、定住の促進に向けた取り組みが求められております。
県では、本年2月に、農業を核として、地域住民が生き生きと暮らし、移住、定住志向者にも魅力的な中山間地域の実現に向け、10年後を見据えたいわて農業農村活性化推進ビジョンを策定しておりますが、このビジョンにおける中核となる戦略や新たな取り組みのポイントについてお示し願います。
〔副議長退席、議長着席〕
次に、林業の振興についてお伺いいたします。
岩手県の森林面積は県土の総面積の7割以上を占め、人工林が本格的な利用期を迎えております。また、震災後は、合板工場の内陸への再建、木質バイオマスによる発電や熱利用施設の整備、復興住宅の建設等により、県産材の需要構造も変化してきております。
本年3月、県では、震災からの森林、林業関係分野の復興を進めるとともに、本県の森林資源を将来にわたり安定的に確保し、循環利用を進めるため岩手県森林資源循環利用推進ビジョンを策定しましたが、現在の県産木材の需給の動向と課題をどのように捉え、今後の利用拡大に取り組んでいくのかお伺いいたします。
直交集成材─CLTについてお伺いいたします。CLTは、欧米ではマンションや商業施設の壁や床に用いられるなど普及が進んでおり、既にヨーロッパでは木造中高層ビルも建ち始めていると聞いております。CLT材料の製造規格については、平成26年から直交集成板の日本農林規格が施行、平成28年4月には建築基準法に基づく告示が公布、施行され、今後は、建築確認による建築が可能となると聞いております。
今後、公共施設への活用等による新たな需要の創出も期待されますが、県内におけるCLTの普及に向けた課題と今後の取り組みについてお示し願います。
次に、水産業の振興についてお伺いいたします。
本県の漁業就業者は、昭和50年代の約2万人から減少の一途をたどり、平成27年は約6、300人、昭和50年代当時のおおよそ3割まで就業者が減少しています。また、高齢化も進行し、60歳以上の就業者の構成比が半数以上を占めており、震災の影響も大きく、生産力の低下とともに集落のコミュニティーの存続も危ぶまれております。
県では、ことし3月に漁業担い手育成ビジョンを策定し、長期的な視点で、漁業の担い手確保、育成に取り組むこととしています。しかし、県の漁業の満足度に関するアンケート調査による分析では、将来への希望、収入水準、経営拡大志向に関して改善が必要とされており、早急な対策を講じなければ、流通や水産加工など本県の水産業全体にも大きな影響を及ぼしかねない状況にあると思われます。漁業の担い手の確保、定着に向け抜本的な対策を講じるべきと思いますが、今後どのような取り組みを行っていくのか、知事にお伺いいたします。
本県の豊富な地域原材料を用いた水産加工品の競争力を高め、地域ブランドとして育成していくことは、水産業に携わる者の意欲の向上につながるとともに、水産業全体の生産拡大や所得向上につながるものと認識しております。
本県の水産物は、アワビ、ウニ、カキ、ホタテなど首都圏や海外からも高く評価されており、今後、漁業生産の維持、増大とあわせ一層のブランド化や高付加価値化を進め、さらには、海外展開など水産業全体の発展を念頭に置いた振興施策の推進が必要と思います。
本県で水産業を志す若者や新規就業者が希望を持って意欲的に取り組むことができるよう、漁業と流通、加工業を含めた本県の水産業全般にわたる振興ビジョンが必要と思いますが、知事の御見解をお伺いいたします。
次に、地域の医療と福祉についてお伺いいたします。
震災により被災した大槌、山田、高田の県立3病院は、沿岸地域の保健医療圏域の医療を支える重要な拠点であり、いずれも仮設での診療を余儀なくされておりましたが、本年5月に大槌病院が開院し、残る山田病院は本年秋に、高田病院は来年度の再建と予定されております。
県立高田病院は、震災前から、気仙地域の在宅医療や、医療と福祉の連携に積極的に取り組むなど、医療はもとより住民の健康サポートにも大きな役割を果たしております。地域では医療体制が充実した新病院の早期再建を待ち望んでおりますが、今後の再建の見通しについてお伺いいたします。
また、震災から5年以上が経過し、復興支援のために全国から招聘した医師も減少傾向にあると聞いていますが、新病院の再開に向け、医師及び看護師の配置見通しはどうなっているのか、あわせてお伺いいたします。
県では、地域の医療と介護の連携を促進するため、地域医療再生基金を活用して、医療や介護等の機関や施設を結ぶ情報ネットワークの整備を支援しています。ICT導入による医療、介護等の情報ネットワークの構築は、沿岸地域では既に導入されている地区もありますが、気仙圏域でも、医療や介護等の機関、施設の相互連携を図り、本年度中に圏域内のネットワークを構築する予定と聞いています。
2025年を目途とされる地域包括ケアシステムの構築も進めていく必要があり、こうした情報ネットワークの導入を図ることは、医療と福祉の連携に少なからず効果が期待されると思います。気仙圏域の情報ネットワークの構築、運用の見通しはどうなっているのかお示し願います。
また、この情報ネットワークが機能することにより、地域包括ケアシステムの構築に向けても一歩前進することになると思いますが、同地域では、医師や介護人材の確保など、まだまだ多くの課題が残っていると考えております。地域包括ケアシステムは、それぞれの地域特性に応じた構築が求められますが、県では、気仙地域の課題をどう捉え、どのように支援していかれる考えなのかお伺いいたします。
沿岸地域の復興道路等の整備と地域振興についてお伺いいたします。
現在、災害に強い交通ネットワークを構築すべく、復興道路として三陸沿岸道路の整備、復興支援道路として宮古盛岡横断道路、東北横断自動車道釜石秋田線の整備が急ピッチで進められております。復興道路が整備されると、仙台−宮古間が約2時間短縮され約3時間に、宮古−八戸間は約1時間短縮され約2時間で結ばれ、物流の効率化や水産物等の品質向上など産業経済の復興に寄与するほか、沿岸地域の観光など、三陸沿岸地域の生活に大きな変化をもたらすものと期待しております。
県では、本年3月に沿岸13市町村の三陸地域の交通ネットワーク整備等の公共インフラの整備による今後の環境変化や、産業、コミュニティー等の現状分析をもとに三陸復興・振興方策調査報告書を発表しています。高規格道路としての高速性、機能性にすぐれた復興道路等の整備が完了する時期はいつになるのか、また、沿岸地域がどのように変化するのかを具体的に県民に示して、事業の再建、企業の立地、観光、その他の振興施策につなげていくことは大変重要であります。
平成29年度からの第3期復興実施計画において、復興道路等の完成による環境変化とともに、完成を見据えた県の産業や観光等の地域振興策を具体的に示していくことが必要と考えますが、知事のお考えをお伺いいたします。
次に、内陸部と沿岸部を結ぶ主要幹線道路の整備についてお尋ねいたします。
沿岸部の最南端に位置する気仙地域は、北上山地を横断する国道107号、343号、397号により県南内陸部との人的、経済的交流が図られており、これまでも復興に向けた人的支援や資材搬送などにも大きな役割を果たしてきております。しかし、これらの道路は山間部を縫う曲折したルートであり、見通しが悪く、豪雨による土砂崩れ等による通行どめも多発しております。また、長距離バスや大型トラックの通行など、各方面から安全対策を求められている状況にあります。高速性、安全性の両面から見ても、復興を支える主要幹線道路として脆弱さを感じざるを得ません。
これらの主要幹線道路は、今後、三陸地域へのゲートウエーとしての役割が期待される高田松原津波復興祈念公園や三陸ジオパークの景勝地と、内陸部に位置する平泉の世界文化遺産などを結ぶルートとしても大きな意味を持つものと考えております。
地域間の人と物の交流を促進し、産業を育成させ、復興と地方創生を果たしていく上でも、内陸部と沿岸部の圏域を結ぶ、安全性と高速性の高い主要幹線道路の整備を急ぐ必要があると考えますが、県の御所見をお伺いいたします。
最後に、津波復興祈念公園についてお尋ねいたします。
被災3県に津波復興祈念公園の整備が予定されており、本県では陸前高田市に整備するとしております。
国営の追悼祈念施設のほか、新たな道の駅として、県の震災津波伝承施設や市の物販施設を一体として建設されるとされております。
これらの震災津波伝承施設の整備に向けた取り組み状況、今後の課題とスケジュールについてお尋ねいたします。
さらに、そこに来る避難道路の確保について十分な検討がなされたものか、あわせてお伺いいたします。
以上で質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 佐々木茂光議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、本格復興完遂に向けた決意についてでありますが、これまで、東日本大震災津波からの一日も早い復興の実現のため、県政史上かつてない規模の事業に全力で取り組んでまいりました。
復興計画で掲げた三つの原則のうち、安全の確保については、復興道路が新規事業化された全ての区間で着手、約4割が供用されていますほか、土地区画整理事業等、市町村の面整備事業では、大規模な土地のかさ上げなど区画の造成に時間を要している箇所もありますが、宅地供給予定の全ての区画で着工しており、平成28年度末で5割を超える宅地の供給見込みとなっています。
暮らしの再建については、災害公営住宅の約8割が着工、約6割が完成して恒久住宅への移行が進んでいますほか、市町村立小中学校について、平成28年度末で約9割の完成見込みとなっております。
なりわいの再生については、一部再開を含め約8割の被災事業所で事業が再開されましたほか、大船渡市でまち開きが開催されるなど、商店街や商業機能の再生が本格化しています。
国においても、3月に決定した復興の基本方針の中で、平成28年度にかけ、多くの恒久住宅が完成の時期を迎える。さらに、産業、なりわいの再生も着実に進展しており、復興は新たなステージを迎えつつあるとしているところであります。
一方、被災された多くの方々が、応急仮設住宅等での不自由な生活を余儀なくされており、心と体のケアやコミュニティー支援がますます重要になっています。
復興の進捗は、地域や被災者によってさまざまではありますが、これまで以上に、より多くの方々の参画をいただきながら、オール岩手の力、そして、さまざまなつながりの力を合わせて、復興実施計画に掲げた事業をなし遂げるという強い意思を持って、一日も早い復興を目指し全力で取り組んでまいります。
次に、東日本大震災津波の風化防止対策についてでありますが、東日本大震災復興の架け橋を冠名として開催される希望郷いわて国体、希望郷いわて大会は、全国からお越しになる皆様に、復興に取り組む岩手の姿をごらんいただき、全国からいただいた御支援への感謝を伝える絶好の機会であります。
希望郷いわて国体、希望郷いわて大会開催期間中には、希望の郷からありがとうをテーマとした開会式での歓迎の演技、被災地等の児童生徒で結成された復興支援感謝団による声援、アイーナや各競技会場等での希望郷いわて復興写真館の実施、本県の復興の状況を取りまとめた冊子、いわて復興の歩みの各都道府県選手団への配布など、全国からの御支援に対する感謝をお伝えするとともに、継続した御支援への御理解をいただけるよう情報発信を行うこととしております。
希望郷いわて国体、希望郷いわて大会以外にも、県外での復興フォーラムの開催や、震災5周年を契機とした国の各種復興イベントでの情報発信などを行って、復興状況をしっかり伝えてまいります。
次に、内陸避難者向けの災害公営住宅についてでありますが、内陸に避難をしている被災者の皆さんについては、できるだけもとの居住市町村に戻っていただくことが本来の姿であると考えておりますが、就業や就学などの都合で、やむを得ず内陸にとどまることを望んでいる方も多数いらっしゃいます。
このことから、沿岸の市町村の意見を踏まえて、自力での住宅確保が困難な方に入居要件を限定して、内陸への災害公営住宅の整備を進めていこうとするものであります。
今後の調整についてでありますが、さきの調査で未回答であった方などへの追加調査を進めました結果、入居希望世帯が343世帯から443世帯へと増加したことも踏まえまして、建設が想定される市と、建設の主体、時期、場所、戸数等の協議を行っているところであります。
今後は、対象になる方が沿岸部の住宅や宅地への申し込みをしていないことなどを沿岸の市町村に確認した上で、国と整備に向けた協議を進めていくこととしておりまして、引き続き沿岸の市町村等の理解を得ながら、被災者の方々に寄り添う支援に取り組んでまいります。
次に、総合戦略の推進に向けた市町村との連携についてでありますが、県内の各市町村では、平成27年度中に人口ビジョンと地方版総合戦略を策定して、雇用の創出や人材育成など喫緊の課題の解決に向けて取り組んでいるところです。
県の総合戦略の策定においては、県・市町村人口問題連絡会議や広域振興局ごとに開催した説明会などを通じて、市町村と意見交換を重ねて、共通認識を図ったほか、市町村の戦略策定に当たっても、広域振興局職員が有識者会議委員となるなど、十分に連携しながら戦略を策定しました。
県と各市町村の総合戦略の整合性については、県の人口ビジョンにおける2040年の人口見通しが103万9、000人であるのに対して、市町村の人口見通しの合計値が105万7、000人余と、おおむね同様の見通しとなっています。
また、各市町村の総合戦略は、それぞれの地域特性や課題を踏まえた独自の目標設定となっていますが、岩手で働く、岩手で育てる、岩手で暮らすなど戦略の根幹部分においては、軌を一にしているものと考えています。
ふるさと振興を進めていく上では、住民により身近な地域づくりを担う市町村との連携が不可欠でありますので、具体的な施策の推進に当たっても、幅広く意見交換を行って、移住、定住の促進や若者の結婚、出産の希望をかなえ、安心して子育てできる環境の整備など、県と市町村の総合戦略に掲げる施策が相乗的、効果的に発揮されるよう連携して取り組んでまいります。
次に、漁業の担い手確保対策についてでありますが、県では、漁業担い手の確保、育成の取り組みを力強く進めるため、平成28年3月に、新たに岩手県漁業担い手育成ビジョンを策定して、地域漁業を担う多様な担い手の育成と漁業就業希望者の受け入れ体制の整備を施策の展開方向として位置づけました。
担い手の育成に向けては、中核的漁業経営体育成のための経営力向上研修の実施、震災以降の漁業生産活動を担う共同生産方式の導入、拡大、漁協青年部、女性部による漁村ビジネス創出のための起業化研修の実施などに取り組みます。
また、受け入れ体制の整備については、地域の実情に即した漁業担い手対策の推進母体となる市町村協議会の設立、熟練漁業者等による技術習得研修の実施、生活基盤の安定化のための住居あっせんなどに取り組みます。
今後、このビジョンの基本理念であります、ひとが創る地域漁業、ひとを創る地域漁業の実現に向けて、関係機関、団体と連携しながら、漁業の担い手確保、育成対策を総合的に推進してまいります。
次に、水産業の振興ビジョンについてでありますが、本県の水産業は、世界有数の漁場である三陸の海を生かしながら、サケ、アワビ、ワカメを初め魅力あふれる水産物が生産され、主要品目の生産量は全国の上位に位置するなど、全国有数の水産県としての地位を確立しています。
近年、担い手の減少や高齢化の進行、魚価の低迷による所得の減少など、さまざまな課題が生じていますが、本県の水産業は、沿岸地域の経済を支える基幹産業であり、将来にわたって持続的に発展していくことが重要であります。
このため、生産者が豊かさを実感し生産活動にいそしむことができる力強い水産業と、生き生きと暮らすことができる豊かで活力ある漁村、これをつくり上げていくことを目指して、その実現に向けて、サケの資源回復や養殖業の経営規模の拡大等による漁業生産の向上、衛生品質管理の徹底や商品開発、販路開拓の強化等による水産加工業の振興、水産物の陸揚げ作業等の効率化に向けた浮き桟橋等の生産基盤の整備、これらに取り組んで、将来にわたって意欲と希望を持てる水産業を力強く推進してまいります。
次に、復興道路の整備と地域振興についてでありますが、復興道路等の整備により時間距離の短縮など交通環境が大きく向上しますので、水産物の販路拡大や物流の活性化、沿岸周遊の利便性が高まることによる観光客の増加などが期待されます。
このため、県では、地域の環境変化や現状の分析などを行い、新たな三陸地域を築いていくための行政や民間が主体となって取り組むべきアイデアや事例を九つのプロジェクトに整理した三陸復興・振興方策調査報告書を取りまとめました。
また、ことしの4月には、公益財団法人さんりく基金が、県と連携して、観光地域づくりのかじ取り役となります三陸DMOセンターを設置して、観光マーケティング戦略の策定等に取り組んでいます。
今年度策定する第3期復興実施計画においては、道路ネットワークの整備のほかに、県内港湾における定期航路の新設、ラグビーワールドカップ2019の開催などの新たな動きも踏まえて、三陸復興・振興方策調査報告書なども参考にしながら、具体的な地域振興策を検討してまいりたいと思います。
その他のお尋ねにつきましては関係部局長から答弁をさせますので、御了承をお願いします。
〔復興局長木村卓也君登壇〕
〇復興局長(木村卓也君) まず、住宅再建への支援についてでありますが、持ち家による住宅再建は、復興に弾みをつけるものであることから、県では、これまで、国に対し、繰り返し被災者生活再建支援金の増額を要望してきたところでありますが、依然として、国は慎重な姿勢を示しているところであります。
県では、現在、市町村と共同で復興基金を財源に最大100万円を補助する被災者住宅再建支援事業を実施しておりますが、県独自でのさらなる支援の拡充につきましては、復興基金の状況等、厳しい財政状況を勘案いたしますと、現時点では極めて難しいものと考えております。
国は、資材高騰等の物価上昇等に対し、災害公営住宅の建設費を含む公共事業費やグループ補助金の額については引き上げており、被災者の住宅再建支援についても同様に扱うべきと考えられることから、国に対しまして、被災者生活再建支援制度の支援金の増額など、引き続き強く要望してまいります。
次に、震災津波伝承施設の整備についてでありますが、これまで、施設における展示の基本的な考え方や方向性等について、有識者で構成する委員会などを通じて検討するとともに、パブリックコメント等により県民の方々の意見を伺いながら、展示等基本計画として取りまとめ、本年6月23日に公表したところであります。
この基本計画では、展示のテーマを、いのちを守り、海と大地と共に生きる、二度と東日本大震災津波の悲しみを繰り返さないためにとし、東日本大震災津波の事実と教訓の伝承や復興に立ち上がる姿と感謝の意を国内外に発信することなどを施設の整備方針として掲げております。
今後は、この基本計画に基づき、国や陸前高田市などの関係機関と連携しながら、具体的な展示の内容やレイアウト、管理運営体制等について詳細な検討を行うこととしております。
開館時期を含めました整備スケジュールは関係機関と調整中でありますが、県では、伝承施設が入る国で新たに整備する道の駅について、平成31年度に開催予定のラグビーワールドカップに向けて早期に整備するよう国に要望しており、伝承施設もこれと同時に開館できるよう準備を進めていきたいと考えております。
〔商工労働観光部長菊池哲君登壇〕
〇商工労働観光部長(菊池哲君) まず、復興まちづくりの推進に応じた本設再開への支援についてでありますが、被災事業者復興状況調査によりますと、本設移行に向けた課題として、まちづくりの進捗、用地確保、資金の確保などが挙げられております。
まちづくり、用地の面では、各市町村において、まちなか再生計画などに基づき、復興まちづくりと商店街の整備を進めておりまして、大規模なかさ上げ工事を行ってきた陸前高田市の中心市街地におきましても各種施設の着工が可能となってくるなど、土地区画整理事業等の進捗に合わせ、沿岸各地で商店街の整備に向けた動きが出始めている状況にございます。
資金面では、引き続きグループ補助金や県単補助金、無利子融資制度などにより支援することとしておりまして、特に、グループ補助金につきましては、これから本設移行が本格化してまいります地区がありますことから、国に対しまして継続を強く要望しているところでございます。
県といたしましては、今後も、市町村や商工団体などと連携しながら、商店街、共同店舗の整備や本格再開後の安定経営を見据えた個別店舗の事業計画策定などを積極的に支援してまいりまして、事業者一人一人の円滑な本設移行と魅力ある商店街づくりが図られるよう取り組んでまいります。
次に、沿岸被災地への観光客誘致のための取り組みについてでございますが、沿岸地域におきましては、世界文化遺産橋野鉄鉱山を初め、三陸復興国立公園、みちのく潮風トレイル、三陸ジオパーク、さらには復興のシンボルともなっております三陸鉄道や、豊かな食と農山漁村の暮らしなど多彩な観光資源を有しておりまして、これらと震災、防災学習などを組み合わせました復興ツーリズムを中心に、議員御指摘の民泊活用も含め誘客拡大を図ることが重要と考えております。
このため、県では、旅行相談などに一元的に対応する機能を持った、いわゆるプラットフォームの設置や内陸から沿岸へ向かうバスツアーの運行支援などを初め、魅力ある観光地づくりの支援など受け入れ態勢の充実を図るとともに、県外において、教育旅行等誘致説明会の開催など各種プロモーションを展開しているところでございます。
加えて、新幹線開業やフェリー定期就航など北海道とのネットワークの広がりや復興道路等の交通インフラの充実を生かしながら、教育旅行、企業研修旅行等の誘致拡大の取り組みを今後一層強化していく予定であります。
さらには、ラグビーワールドカップの開催や花巻空港への国際定期便就航誘致も見据え、多言語対応の震災学習プログラムの開発や海外旅行会社の招請事業などによりまして、外国人観光客の沿岸への誘致拡大も図っていく考えでございます。
次に、新規学卒者の県内就職率と就職後の定着率の動向についてでありますが、岩手労働局によりますと、平成28年3月卒業の高校生、大学生の県内就職率は、ともに前年度を上回っておりまして、震災後は増加傾向にあります。
一方、就職後の定着率を見る指標の一つといたしまして、就職3年目までの離職率の状況を見ますと、高卒者、大卒者とも四十二、三%台と依然として高どまりの状況にございます。ただし、その過半を占めております1年目の離職率につきましては、ここ数年は2割弱となり低下傾向にございますことから、改善が進んでいくことに期待しているところでございます。
次に、県内就職や定着促進の取り組みについてでございますが、県では、岩手労働局やふるさといわて定住財団と連携し、県内外で就職ガイダンスなどを開催するとともに、各広域振興局等に就業支援員を配置し、高校との連携を強化してきているほか、就職後のフォローアップセミナーなどによりまして、職場定着を支援しているところでございます。
また、今年度におきましては、新たに普通高校に対象を広げ、インターンシップなどをモデル的に実施し、地元企業についての一層の理解促進を図っていくこととしております。
さらに、いわてで働こう推進協議会におきましては、産業、経済界、金融団体、教育機関などを構成員といたしまして、オール岩手の体制で、若者や女性等の県内就業の促進に取り組むこととしております。今月は、岩手で働く機運醸成を図るための推進大会を開催したところでございまして、今後におきましても、さまざまな取り組みを協議会が一体となって展開していくこととしております。
〔農林水産部長紺野由夫君登壇〕
〇農林水産部長(紺野由夫君) まず、いわて農業農村活性化推進ビジョンについてでありますが、本県の中山間地域は県土の8割を占め、農林水産業の生産活動はもとより、県土の保全や自然環境の維持などの多面的機能を有しており、多様な生産者が参画して地域の産業やコミュニティーが維持され発展していくことが重要でありますことから、県では、農業を核とした中山間地域活性化の推進方向を示すいわて農業農村活性化推進ビジョンを本年2月に策定いたしました。
ビジョンにおきましては、リーダーや組織など“ひと”の活躍、地域の伝統や豊かな自然を活かした魅力ある農業・農村づくりや、都市農村交流人口の拡大と移住・定住の促進を地域活性化のポイントとして掲げたところでございます。
今年度は、ビジョンを踏まえた新たな取り組みとして、平成28年度新規事業のいわて農山漁村コミュニティ活性化支援事業などを活用し、現地機関に設置いたしました県支援チームが、市町村と連携しながら、集落ビジョンの作成や、集落ぐるみで行う創意工夫を凝らした活性化の取り組みを支援してまいります。
次に、県産木材の利用拡大の取り組みについてでありますが、本県の素材需要量は、被災した木材加工施設の復旧や再建、木質バイオマス利用の拡大等により、平成24年以降4年連続で増加しております。
県産材の供給については、こうした木材需要の拡大等を背景として、高性能林業機械の導入など素材供給力の強化が進んでおり、素材生産量も4年連続で増加しております。
一方、人口減少社会の到来に伴い、今後の我が国の住宅着工戸数は減少していくことが予測されておりまして、将来に向け新たな木材需要の創出が求められております。
このため、県では、率先して公共施設等への木材利用を進めながら、ラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピック関連施設等への県産材供給や、住宅以外の中高層建築物、商業施設等への県産材の利用拡大を図ってまいります。
次に、CLT(直交集成材)の普及に向けた課題と取り組みについてでありますが、CLTの普及は、本県の主要樹種である杉、アカマツ、カラマツなどの新たな需要を生み出す可能性があり、本県の林業振興にとって大変意義のあるものと認識しております。
しかしながら、CLTは海外で開発された新しい技術であり、国内で広く普及させるためには、国産材による製造技術や建築物への活用技術の確立等が課題となっております。
このため、国では、平成26年11月にCLTの普及に向けたロードマップを作成し、強度データの収集や施工ノウハウの蓄積に努め、本年4月から、CLTを用いた建物の建築手続の簡素化が図られたところでございます。
県におきましても、平成26年度に一般社団法人日本CLT協会に加入し、先進事例の情報収集に努めてきたほか、林業技術センターでは、県内企業への技術指導や全国唯一のアカマツを用いたCLT製造技術の開発研究を進めておりまして、引き続き、県内におけるCLTの普及が図られますよう、製造技術や建築物への活用技術の確立に向けて取り組んでまいります。
〔医療局長八重樫幸治君登壇〕
〇医療局長(八重樫幸治君) 県立高田病院の再建についてでありますが、新病院は、再建方針どおり、平成29年度の開院に向けて、本年4月に病院設計業務を終え、現在、工事入札の手続を進めているところであり、順調に進めば本年10月には建築工事に着手できる見込みであります。
次に、医師及び看護師の配置見通しについてでありますが、医師については、現在、招聘による応援医師1名を含む常勤医師5名のほか、関係大学や基幹病院などからの診療応援により、入院病棟を含む診療体制を確保しており、新病院においては、現在の体制を基本としつつ、さらなる医師確保に向けて、引き続き関係大学への医師派遣要請や即戦力医師の招聘に取り組んでいくこととしています。
また、看護師については、現在の仮設病院における看護体制を継続することとしており、必要な看護師を確保しているところであります。
〔保健福祉部長佐々木信君登壇〕
〇保健福祉部長(佐々木信君) 地域包括ケアシステムの構築についてでありますが、気仙地域では、東日本大震災津波により多くの医療機関や介護事業所等が被災しましたが、県内外からの支援を受けながら着実に事業が再開されており、訪問介護や訪問診療の人口10万人当たり利用者数の伸びは、県内平均を大きく上回る状況となっています。
しかしながら、依然として医師や介護人材が不足しており、限られた人的資源の中で高齢者等を支援していくためには、医療と介護の一層の連携が求められております。
このため、気仙地域においては、昨年度、医療、介護サービスの連携強化に資する情報ネットワーク未来かなえネットを整備し、本年4月から27施設の間で運用を開始したところであり、住民登録数は本年6月1日現在で4、192人となるなど順調に増加し、今年度中の登録者数1万人を目標に、圏域内のネットワークの構築に取り組んでいると聞いております。
県では、未来かなえネットの機能充実に対し助成するとともに、医師会に委託して在宅医療人材育成研修を新たに気仙地域でも実施するなど、市町村による地域包括ケアシステム構築を支援してまいります。
〔県土整備部長及川隆君登壇〕
〇県土整備部長(及川隆君) まず、内陸部と沿岸部を結ぶ主要幹線道路の整備についてでありますが、国道107号、343号及び397号といった気仙地区と内陸部を結ぶ横軸の道路は、幹線道路ネットワークを形成し、被災地域の早期復興を支援するとともに、安全・安心な生活や産業振興を支える上で重要な路線であると認識しています。
県では、これらの道路を復興実施計画において復興支援道路に位置づけ、国道107号の奥州市梁川・口内工区、343号の一関市渋民工区、397号の住田町高屋敷工区などで交通隘路の解消に向けて整備を進めているところであります。今後も、これら主要幹線道路における交通隘路の解消や防災対策、橋梁耐震化等に重点的に取り組み、交流、連携や物流の基盤となる道路として整備推進に努めてまいります。
次に、公園来訪者の安全確保についてでありますが、高田松原津波復興祈念公園の基本計画において、津波のおそれがある場合には、高田地区のかさ上げ市街地や今泉地区の高台市街地に徒歩で避難することを基本としています。安全かつ速やかに避難ができるよう、市民ワークショップ等の意見も参考としながら、明確な避難経路や案内誘導のあり方について検討を進めているところであります。
引き続き、国や陸前高田市と連携しながら、安全な避難計画を策定してまいります。
〇23番(佐々木茂光君) それでは、何点か再質問をさせていただきたいと思います。
まず最初に、今までは、震災から、復興元年、復興加速年、本格復興推進年、本格復興邁進年、そして平成28年度は本格復興完遂年と、年度年度のそれぞれの大きな目標を掲げてこれまで復興が進んでまいりました。
私は、決して復興が進んでいないということを申し上げるわけではないのですが、やはりおくれがそのまま次の年次に乗ったままここまで来ているのではないかと。その都度、さきに述べたように、それまでの取り組みを検証すべきところ、おくれているところをどのようにして早く進めるか、そういうところの検証、取り組みがない中で、この本格復興完遂年という言葉が今回上がってきたことに対して、知事の、もっと強い完遂に向けた取り組みの方法、取り組み方を伺います。オール岩手でまず完遂に向けて取り組むのだということは毎年言われていることなのです。
私が今ここで知事に改めて─既にきょうも陸前高田市から、まだ仮設住宅にいる方々も来ておりますけれども、住宅再建がまたおくれてしまっている。それは、それぞれの現場現場の事業によっておくれが生じるところもあるのですけれども、ただ、そうしたものをそのまま、ああ、ことしもおくれてしまいましたねという取り組みが、私は、知事のそういった姿勢の中にうかがえるものですから、あえて、この完遂という言葉を選んだからには、まさに完遂に向けての取り組みを、強いものをメッセージとして発していただきたいということで、今、知事にまず質問したいと思っております。
次は、内陸部の災害公営住宅の建設についてですが、市町村の首長からのいろいろな意見の聞き取りもあったとも聞いております。避難先として盛岡に来た、北上に来たと。私は、原則は、地域に帰るというのが、それをやはり強く促すのが県の役割ではないかと思います。私はあえて地元に残ったわけだし、そうやって、地元に残った方々は仮設住宅にいます。今、盛岡に来ている人、北上に来ている人、それぞれの事情があってこちらのほうに避難したわけですが、その方々は、みなし仮設にいる方々もいるかと思いますけれども、地元にはもう災害公営住宅もできております。造成も進んでおります。ここに来たのであれば、あえて地元に帰っていただくという働きかけも、これは県の役割の中にあるのではないかと思います。その辺について再度お尋ねしたいと思います。
それから、風化防止です。これは、先ほど知事からもあった、希望郷いわて国体とか、そういったところでさらなる情報発信をしていくということは承知しております。完遂という言葉を、事業の中で、その年度年度のメッセージを添えて今まで使用しているのですが、ここに来て、完遂という言葉を掲げたということは、ある意味、周りから見れば、ああ、もうそこまで岩手県の復興は来たのだなという感覚を受けるのも、これは大きな言葉の影響があったのではないかと思っています。急にここに来て風化が、8割はもう忘れられてきているという現状にある中で、あえて知事がそういう言葉をここに掲げたというのも、これは一つ大きな、風化にエンジンをかけたというか、風化に拍車をかけたという言葉になりますか、そういったように感じるところもあるわけですが、知事の御所見を伺うところであります。
それから、先ほどの、徒歩というのは歩くということですか。歩いて逃げるということですか。陸前高田市のあの状況の中から皆さんが避難したとき、多くの方々は車で逃げられました。そういうふうに考えて、あそこが、祈念公園として整備されたときに、そこの松原の地にはまた多くの方々が訪れると思います。避難路をどのように確保してやるか、来る人たちに、安全が目でわかるような施設づくりが大事ではないかと思います。そういった面で、あそこは国道45号があって、古川沼があって、さらに松原周辺のほうでその施設が運営されていくわけですけれども、ここに来たならば、この道でまず逃げられるというものを現場に示すべきだと思うのです。みんなそこで右往左往して逃げかねてしまって、波にのまれて亡くなったのです。要するに市内の高台に逃げるための道路が、車がすれ違えないような道路状況の中での避難行動だったためにそういう状況に置かれたのです。これは一番わかりやすいことだと思うのです。ということは、ここに集った人たちがいかにして逃げられるかということを、まず目に見える形で示しておくのが一番の避難の行動であるかと思うのです。
徒歩なんて、歩ける人もあれば、歩けない人だって中にはいるということです。だからこそ、誰が見てもわかるような逃げ道をきちっと確保してやるのが、我々、水をかぶった者としての、地域としての防災に対するかかわりではないかと思いますが、その辺の御所見もお伺いしたいと思います。
もう一点、介護職、医療職といった方々が、先ほど、未来かなえネットのお話もされたのですけれども、いろいろ連携をとりながらも、それでも職員が足りないということを、県内だけの呼びかけでなく、まさに全国に、そういった方々を招き入れるような、県のもっと世の中に対するアピールというものを強く望む、そういった取り組みにも力を入れていかないと、ここだけでは処理できないのではないかと思います。
例えば、東京にも東京事務所があったり、福岡にもそういった事務所があったりします。そういったところにでもお願いをして、その周辺の、例えば介護職、看護師、お医者さん、広く医療にかかわる人たちに呼びかけるような、もっと目に見えるような宣伝も必要ではないかと思いますが、その辺はいかがでしょうか、お願いいたします。
〇知事(達増拓也君) 本格復興完遂年の意味は、前の議会でも答弁させていただきましたけれども、県の復興計画の中で、最初の3年が基盤復興期間、その次の3年が本格復興期間。この本格復興期間の計画にある復興事業を終わらせるのだという意味で本格復興完遂年と名づけているわけでありますけれども、国において、最初の5年間で復興期間が一段落し、その後は復興・創生期間という中、ともすれば、最初の5年で復興が終わって、あとは地方創生だというのような理解が、全国でそういう誤解が広がるおそれがあったところ、岩手としては、昨年度の本格復興邁進年、そしてことしは本格復興完遂年ということで、復興の本格復興期間は、今がその真っ最中であるということを強く全国にPRする効果はあったのではないかと考えております。
他方、風化防止という関係からは、国においては、復興庁を中心に、この6月を東北復興月間と位置づけ、ことしの3月11日から、東北復興月間にかけて、国と被災県、また市町村も連携した風化防止対策を、東京での大きなイベントも含め展開しているところであり、風化防止対策は、今、さまざま進んでいるところと認識しております。
それから、内陸避難者向けの災害公営住宅についてでありますけれども、これは、できるだけもとの居住市町村に戻っていただくことが本来の姿であるというのが県の考え方でありますので、この点、沿岸の市町村と連携を密にして、沿岸の市町村の意見も踏まえて、入居要件も限定して対応しているところでございます。
〇県土整備部長(及川隆君) 公園における避難計画についてでありますが、平成27年8月に公表した公園の基本計画におきましては、基本は徒歩で逃げるということでございます。それは、公園区域のどこにいても、今泉地区の高台、高田地区の高台に一定の時間で逃げられる、津波到達時間と避難時間を考慮した上で避難が可能だということで、案内看板とかサイン、案内標識等をしっかり明示すること、それでもって誘導していこうというような考えでございます。
一方で、先ほどお話がございましたように、車での避難ということもある程度想定されるわけでございまして、車によって渋滞や交通事故等のおそれがあるということではありますけれども、基本は徒歩としつつも、今後、必要に応じて策定していく避難計画の中で、車についても検討してまいりたいと考えてございます。
〇保健福祉部長(佐々木信君) 医療職や介護職の人材の確保、特に県外からの確保等についての御質問であります。
医師につきましては、医師招聘の専担組織であります医師支援推進室におきまして、岩手に行ってみたいとか、興味があるとか、全国の医師に係る情報がありましたならば、全国に出向きまして、その医師と面談し、あるいは実際に本県の医療機関に来ていただいて、その医師招聘に努めているところであります。また、医学系雑誌に医師募集の広告を出したりということでPR活動にも力を入れております。
また、看護につきましては、首都圏におけるPR活動を行っておりますし、看護系の就職情報サイト等にも本県の情報を掲載し、本県への看護職の誘致に取り組んでおります。
介護につきましては、例えば、新たに沿岸地域に介護の方が来るといった場合の引っ越し費用ですとか家賃の一部を支援する制度も設けておりまして、そういったことの周知等に努めながら、県内外から、被災地に対する医療人材、介護人材の確保に努めてまいりたいと考えております。
〇23番(佐々木茂光君) 今、県土整備部長のほうから徒歩─県もその施設にかかわっていくわけなんですが、これだけの被害を受けて、結局、徒歩で逃げるのが原則ですよというのは、そういう目線になりますかね。例えば、松原のその施設から川を渡って、それから高台に逃げるということは、この間の津波ですら、大きな波をかぶったのは30分後です。それも、スムーズにいけばいいですけれども、直前になって避難行動に出る人もいるなどということを考えると、結局、波にのまれてしまう。
そもそも、もしかすると、次に来るのはあの堤防を越えないかもしれない。しかし、越えないと思っていた堤防を、実はこの間、越えられてしまった。そういうはざまの中で多くの人たちの犠牲を生んだということを考えるのであれば、やはり原則は徒歩ですよというのは、まして、そこに人を集めるような施設をつくるに当たっては、ちょっとおろそかな管理のあり方ではないかと思うのですが、改めて、その辺についての考え方をもう一度お願いしたいと思います。
それから、内陸部につくられるであろう災害公営住宅の件なのですが、原則は、あなた、帰らなければだめなのだよというのが本来の姿でないかと。どうしても帰られないと、その中でも残ると思います。それらの方々をどうしようかというのだったらわかるのですが、わかりました、そうですか、まだ行くつもりがないんですねというあんばいで内陸部のほうにその方を置くというのは、行政としても少し働きかけが足りないのではないかと感じます。もし、内陸に残すのであれば、公営住宅の役割とすれば、それぞれの市町村の住宅に入ってもらうとか、そこをあえて公営住宅にして入居していただくとか、そういう選択の方法があるべきではないかと思います。
また、あえて戸建ての住宅を建てるのであれば、県の薦めている県産材を使った岩手型の住宅を戸建てで用意するとか、そういう取り組みにしていくべきと思います。
それから、看護師の件については、これは恐らくどこでも足りない状況の中で、そういう情報発信というものを強く進めていかないと、沿岸部のほうの方々も、いろいろ施設があるのだけれども、一つ休ませながらこっちの施設をやるという、限られたマンパワーの中でやっているものだから、せっかく施設をつくって受け入れができるのだけれども、なかなかそこまで回り切れないでいるというようなこと、根本的には人が足りないということですから、これは、地域でももちろんそういう取り組みをしているのですが、県も、そういったところに先になって力を入れていただきたいという要望にしておきたいと思います。
それから、本格復興完遂年と名を上げた以上は、その旗を一生懸命振ってもらわなければ、それは、風化でどんどん遠のいていくと思うのです。まだまだ周りの方々から、全国の方々からも、支援も受けていかなければならないし、もちろん、国からも、もううちのほうは終わるのだよという取り組みではなく─知事、まさに現場に行ったらわかりますよ。このごろ、知事は現場に恐らく出向いていないのでないかと思うのです。沿岸部の人たちは、内陸で知事は別な旗を振っているんじゃないかという話をされています。完遂だという、復興ありきの中で、まさに岩手の沿岸部の復興なくして岩手の発展はないと一番最初におっしゃっているのに全然現場から遠のいている。答えは現場にあると知事は1年目から言っているはずです。現場の様子をしっかり見て、それをきちっとプラカードに上げてやるのが、まさに県民党である知事の役割だと思うのです。ましてや、完遂という言葉を上げている以上は、それを先頭になって持って歩かなければならないのではないかと思うのです。現場の方々はみんなそういうふうに言っております。
きょう来ている方々も、全然さっぱりおくれていると。おくれているといったって、何でおくれているんだと、そういうこともない。おくれればおくれっ放しじゃないかと言うのです。そういったところから早く解放させるためにも、知事には、しっかり現場のほうに出向いていただいて、現場のその実情、実態というものをつかんでから、まさに答えは現場にあるんです。そういった思いでやっていただきたいと思います。
先ほどの見解について答弁をお願いしたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 復興のおくれの要因につきましては、それぞれの市町村のまちづくりと県の津波防災施設の整備との兼ね合いの調整の結果でありますとか、実際工事に入ってみて、地盤の中に当初想定されていかなったような要因があったでありますとか、また、資材高騰のためにさまざま計画を変更しなければならないですとか、それぞれに理由がございますし、基本的にその理由を明らかにしながらおくれに対応しているところではありますけれども、特に、一日も早い復興を心待ちにしている被災者イコール復興者の皆さんに御理解いただくことが大事だと思いますので、県としても、そこはさらに努力していきたいと思います。
また、私も、今年度も沿岸のほうには行っているのですけれども、沿岸、現場のほうから、まだまだ足りない、だめじゃないかという強い思いがあるということはしっかり受けとめて、復興にさらに努めていかなければならないと改めて思いましたので、議員のお言葉についてはありがたく胸に刻ませていただきます。
〇県土整備部長(及川隆君) 復興祈念公園の中での避難計画ということでございまして、先ほど申しましたように、原則は徒歩だということで基本計画では定めており、公表しているというようなことでございますけれども、有識者委員会とか市民とのワークショップなどもございますので、今後計画を練り上げていく段階の中で、国や陸前高田市とも協議しながら、市民の御意見をいただきながら、避難計画については検討していくということになります。
〇議長(田村誠君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
本日はこれをもって散会いたします。
午後4時50分 散 会

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