平成28年2月定例会 第4回岩手県議会定例会会議録

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〇35番(中平均君) 創成いわての中平均です。
5年8カ月ぶりとなる本会議場での一般質問であり、また、初めての代表質問でもあります。この機会を与えていただきました会派の皆様並びに先輩、同僚議員初め多くの皆様に感謝を申し上げ、以下質問をいたします。
東日本大震災津波からの復旧、復興について質問いたします。
東日本大震災津波から間もなく5年を迎えようとしています。改めて、犠牲になられた皆様に、謹んで哀悼の意を表しますとともに、被害に遭われた皆様に、心からお見舞いを申し上げます。
岩手県では、平成28年を本格復興完遂年としています。現在、漁港、防潮堤、復興道路等、被災した社会資本の整備を進め、進捗率は昨年12月31日の段階で、全752カ所中89%で着工済み、39%が完成済みとなっています。また、災害公営住宅の建設も急ピッチで進め、平成28年度末に5、075戸が完成し、平成28年度には新たに1、741戸が入居可能となる予定です。
この復旧、復興のスピードを知事はどのように認識しているのでしょうか。行政としては最善を尽くしていたとしても、被災した人たちからしてみれば遅いと感じています。その時々で最適な施策を行ってきたとはいえ、平成28年1月末現在で、応急仮設住宅等に2万1、464人いるというのは違和感を覚えますが、知事が本格復興完遂年とした理念及び意気込みについてお示しください。
次に、復興事業完了後の三陸地域のビジョンについて伺います。
復旧、復興の工事が進み、各種社会資本の整備が進んできています。例えば三陸沿岸の復興道路の工事が進められ、沿岸地域においても、順次開通が見込まれています。八戸市から仙台市までの沿岸部を縦断する物流の大動脈、災害時における地域の孤立化の防止、交流人口の拡大など、防災対策、地域振興に大いに期待される一方で、いわゆるストロー効果による人口の減少や経済規模の縮小も懸念されるところです。
今から将来に向けたビジョンを策定し、具体的に施策を展開していかなければなりませんが、アクションプランを初め県の各種プランには、これら社会資本整備が完了した後の被災地の将来に向けてのビジョンや施策が見受けられません。積極的に取り組んでいかなければならない問題であり、完成してからでは後手に回ると考えます。
被災したインフラの復旧が進み、完成した後の被災地である三陸地域のなりわいをどのようにしていくのか、基幹産業である農林水産業の高年齢化が進み、人口減少による地域の生産力、購買力は低下してきています。県北と県央、県南の格差問題、人口流出、高齢化の進行、経済規模の縮小は大震災以前からの地域の問題であり、県北・沿岸の振興が県政の重要課題でありましたが、大震災津波以降、より直近の課題として深刻度が増しています。世間では、被災地の抱える多くの問題を解決していくことが人口減少社会のロールモデルとも言われていますが、結果として、成功例となるか失敗例となるかが問われており、当然、成功例としていかなければなりません。
復興完遂とは、社会資本の復興は時間とともに完遂いたしますが、地域振興には終わりがないとも言えます。被災地である三陸地域のインフラ整備完了後のビジョンについて、知事の考えと今後の施策について伺います。
次に、国道281号の整備について伺います。
県の復興支援道路でもある国道281号ですが、久慈市の案内トンネル等工事中でありますが、久慈市、葛巻町境の最大の難所である平庭峠のトンネルは、整備される方向にはいまだありません。他の県央と沿岸をつなぐ路線である宮古―盛岡間の国道106号、東北横断自動車道釜石秋田線は、復興道路として着々と整備が進んでいます。
県は、なぜ国道281号を復興道路にしなかったのでしょうか。また、県北・沿岸地域の振興のために平庭トンネルを整備していくべきですが、知事はどのように認識しているのかをお伺いいたします。
次に、幸福に関する指標について質問いたします。
知事は、岩手ならではの豊かさに着目し、これまでの政策評価に、新たな視点として、幸福に関する指標を導入していくための研究、試行にも取り組んでいくとしています。
岩手ならではの豊かさとは何か。私が思いつくままに取り上げますと、自然であり景観、住環境、温かみのある人々、新鮮な食材。逆に岩手が豊かではないもの、給与水準であり、人口10万人当たりの医師数、大学等への進学率等、例示できるものはたくさんあります。また、これらの点は県内においても同様のことが言え、県北・沿岸地域が他地域より豊かはでないところでもあります。しかし、このように例示したものは、幸福という視点とは異なるのではないかという気もしています。正直、定義は難しい。また、主観によって入れかわり、表裏一体のものになりやすいものかとも考えます。ともすれば、時のトップが都合のよいように扱うのではないかという懸念もあります。
以上の点からも、政策評価の項目として盛り込む難しさを感じます。何より、新しい評価項目は多くの人に理解され、初めて一般的になることからも、幸福に関する指標について、どのような考えで導入し、どのように把握し、そしてどう活用していくのか、知事の見解をお伺いいたします。
次に、1月の暴風雪、波浪による農林水産関係被害等について質問いたします。
まず、早期復旧に向けた取り組みについて伺います。
先月1月18日から20日にかけての暴風雪、波浪災害についての被害額が公表され、2月15日現在で総額70億円余であり、調査中のものもあることから、さらに増額となることが懸念されます。被害を受けられた皆様には、心からお見舞いを申し上げます。
5年前の大震災からの復旧、復興をしてきた農地や農業、林業関係施設、漁船や養殖施設等の生産基盤の復旧については、復興実施計画に掲げる目標にほぼ達成し、漁港施設については、ほとんどの漁港で常時陸揚げが可能になるなど、被災地の農林水産業の復旧、復興が進んできていたところに、沿岸地域を中心にパイプハウスの倒壊、森林の倒木、ワカメやホタテなどの養殖施設等の損壊、漁港施設の破損といった大きな被害が生じています。大震災で失った養殖施設を再建し、収穫を目前としていたところの災害であり、非常にやりきれないものを感じます。知事も2月18日の記者会見において、激甚災害指定など、制度的な負担軽減措置などの工夫をできるところがあればしなければならないと発言されました。
前を向いて取り組んでいる被害を受けた方々に、早期復旧に向けた取り組みを発信していかなければなりません。県の今後の取り組みについて伺います。
続いて、今後の災害時対応について伺います。
今回は、被害額の集計、公表等について、時間がかかり過ぎてはいなかったかと受けてとめています。1月18日からの災害の被害額が2月17日に公表されました。被害状況の取りまとめに時間がかかったとのことでしたが、中間集計の公表もなく、大震災から5年間、なりわいの復旧、社会資本の復旧を行ってきた地域に起きた暴風雪等の被害であり、少しでも早く被害状況を取りまとめ、対策を発表することが、被害を受けた方を勇気づけるのではないでしょうか。そういった意味においては、大震災津波の早期の情報発信が必要であったとの教訓が生かされていないと感じます。
今後の災害時の対応について、どのように取り組んでいくのかお伺いします。
地域医療について質問いたします。
昨年の決算特別委員会でも伺いましたが、地域医療体制をどのように構築していくのでしょうか。県民誰もが安心して医療を受けられる体制の構築を急がなければなりません。医師不足の問題、地域偏在の解消を図り、診療科を充実させていくことが求められています。
県においても、医師確保とともに医師の負担軽減、女性医師の復帰支援、いわゆるコンビニ受診の減少に取り組み、限られる医療資源を枯渇させない対策を行ってきました。しかし、地域医療の現実はいまだ厳しいと言わざるを得ません。人口の社会減、自然減をどんなに減らす計画を立てても、生活の基礎となる医療の分野に不安を抱えていては実現は困難です。
決算特別委員会では、県内どの地域においても、安心して出産できる環境づくりに努めていくとの答弁。医師確保についても、奨学金等による養成医師により、将来的に医師不足解消に向かっていくとしていますが、平成40年ごろを見込んでおり、この先10年、引き続き医師確保に努めていくとの答弁であり、どちらも努力していくとのことで、確実な答えとは言えませんでした。
医師偏在によって、医療体制に不安を抱えざるを得ない地域に対して、医療環境を整え地域に安心感を持てるために、不断の努力を重ねていく必要があります。
地域医療を取り巻く現実の厳しさを克服していくための施策はアクションプラン等に記載されてはいますが、確実に不安を払拭していくための知事の意気込みをお伺いいたします。
産業振興について質問いたします。
最初に、県北地域の漁業振興について伺います。
沿岸地域の基幹産業であり、東日本大震災津波によって壊滅的な被害を受けた漁業、養殖業に関しては、漁港、漁船等の生産基盤の復旧、整備が進んだことにより、平成26年度の県内水揚げ量は震災前の約8割まで回復し、また、平成27年度のアワビ漁では、過去10年間で3番目に高い水揚げ金額を記録するなど、この5年間、漁業者ほか関係者のたゆみない努力によって着実に復興が進んできたところです。
県では、これまでも、サケ、アワビの増産に力を入れてきましたが、特に養殖適地の少ない県北部では、今後さらなる生産の回復に向け、サケ、アワビはもとより、新たな漁業対象種の生産拡大が望まれています。
久慈市においては、湾口防波堤の建設が進み、新しい静穏域が拡大してきています。これらの海域を有効に活用した生産拡大に取り組むことにより、地域漁業の振興が図られると考えますが、知事の考えについて伺います。
次に、漁業担い手対策について伺います。
平成25年に国が実施した第13次漁業センサスの結果によると、県内の漁業就業者数は、前回平成20年に比べて9、948人から6、289人と37%減少、また、個人経営体の77%は後継者がいないとされています。今後、漁業者に限らず、地域の人口減少が進むと予測される中、漁業、養殖業の生産回復とさらなる振興を図っていくためには、地域漁業の将来を担う漁業者の確保、育成を進めることの重要性が増しています。
漁業の担い手対策は農業に比べ手薄の感がありますが、県では、今後どのように漁業の担い手の確保、育成を進めていくのかお伺いします。
続いて、中山間地域の活性化について伺います。
本県の中山間地域において、活発な活動をしているリーダーも少しずつ高齢化が進み、10年後にどうなるか、高齢化が著しく後継者が少ない地域もあり、取り組みに対しては支援を継続していく必要があります。
中山間地域の活性化と言えば、グリーンツーリズム等の都市との交流事業、加工食品づくりなどが定番ですが、地域事情が異なる中で、画一的な取り組みや先行モデルの焼き直しとなり、結果として埋没してしまわない、地域独自のストーリーづくりに連動させる必要があります。
中山間に焦点を当てた支援策は少ないと感じていますが、平成28年度予算案にいわて農山漁村コミュニティ活性化支援事業が計上され、地域リーダーや組織など人材の育成と活動支援、住民のアイデアを生かした活性化への取り組み支援等を行うと伺っていますが、今後、中山間地域の活性化に向けて、どのように取り組んでいくのかをお伺いいたします。
次に、観光におけるICTの利活用について伺います。
地域経済の波及効果の高い観光業の振興は必須であり、受け入れ態勢の充実を図る方策の一つとして、ICTの活用が挙げられます。花巻空港への国際チャーター便就航による台湾からの旅行客の受け入れ態勢など、海外からの旅行客の拡大への対応、昨年の北陸新幹線、ことし3月の北海道新幹線開通により、激しさを増す国内観光地間競争への対応が求められています。そして、県民自身が県内各地を訪ね、よさやすばらしさを再認識し、交流を増大させていくことが何より必要と考えます。そのためのツールの一つとして、スマートフォン用観光アプリケーションの開発や導入支援を進めることが必要です。
県は、平成27年度の事業で、多言語対応のモバイル用観光アプリ整備やモバイルサイトへのGPSナビ機能充実などの施策を行い、この多言語対応は東北初ということであり、他地域と比較して進んでいると評価します。ただ、この分野は技術進化のスピードが速いことから、引き続き、県内外、海外観光客の利便の向上を図るための取り組みが必要となります。
観光におけるICTの利活用について考えをお伺いいたします。
続きまして、食産業の販売戦略について伺います。
先日、東京ビックサイトを会場に開催されたスーパーマーケット・トレードショーを3年ぶりに視察してきました。このイベントは、3日間の開催期間に予定来場者数10万人、参加者約1、600社、出展ブースが約3、000弱と桁外れの規模で開催され、食品にかかわる流通マーケット関係者や特産品の商談を狙う地方自治体も多数参加しています。新幹線開通を控えた北海道の圧倒的な存在感や、ユニークな展示で注目を集める他県に比べ、本県展示ブースも頑張っているところではありますが、よりアピール度を増さなければならないと感じたところです。
食産業は、被災地の復興の鍵を握る基幹産業の一つであり、雇用と経済に重要な位置を占めているだけに、販売数を上げていくことが雇用や地域食材利用をふやし、地域経済を底上げしていくことになります。そのためにも、産学官に加え、金融機関のノウハウや資金を導入した取り組みが必要になります。
展示会や商談会は、販売促進を図る上で重要な取り組みであり、県主催の商談会では、平成26年度ベースでおおむね商談成約率は7割を超え、成約数は把握できるものだけでも2億円を超えていますが、出展する事業者からの現場の声を踏まえ、支援施策の継続、拡充が必要と考えます。
県においては、食産業の販売戦略をどのように設計し、推進していくのでしょうか。販売プロモーションの部分で、事業者に対する経費バックアップやノウハウ支援、販売促進をより強力に進める必要があると考えますが、知事の所見をお伺いいたします。
続きまして、岩手県中小企業振興基本計画について伺います。
本県の中小企業は、企業数で県内企業全体の99.8%、常用雇用者数で県内全体の84.9%を占めており、事業活動や地域の雇用を通じて、県民の暮らしや地域づくりを支える重要な存在です。県では、中小企業振興条例に基づき、今般、岩手県中小企業振興基本計画案を策定したところであり、今議会に承認議案が提案されています。
この基本計画案においては、本県の中小企業の現状分析を行い、現状を踏まえた認識を示した上で、企業の魅力向上、働きやすい環境の整備、県内外の消費者による商品等の利用の促進を目指す姿として掲げており、これらの取り組みが好循環を生み出すことにより、持続可能で活力ある地域経済の振興を図ることとされています。
この目指す姿を実現するために、基本計画案には各種振興施策が盛り込まれています。この計画の策定に当たって、中小企業者など現場からの声をよく聞きながら策定することが重要と考えますが、そうした声をこの基本計画にどのように反映させているのでしょうか、また、計画策定後の実施状況の検証や今後の計画内容の見直しについても、どのように考えているのかをお伺いいたします。
続きまして、人材育成について。
最初に、新たな県立高等学校再編計画案について伺います。
2月18日の教育委員会委員長演述において、少人数学級を中学校2年生へ拡充するとのことでした。厳しい予算状況の中においても、教育の充実は未来への投資という教育委員長の言葉もありました。
地理的要件、人口減少、経済規模等の現実を直視するとき、子供たちが、経済的に厳しいから、しょせん田舎だからといった消極的な理由で将来を選択するのではなくて、自分自身の将来に向けて積極的な選択ができる環境をつくっていくことこそが私たちの責任であると考えます。そのためにも次世代を担う子供たちに教育の機会を確保していかなければなりません。高校再編についても、生徒のための再編でなければならず、予算や地域の都合であってはならないと考えます。
そういった中において、今回示されている再編案は一部地域に対して非常に厳しいものになっています。人口減少の原因の一つに出生率の低下があり、これから地方創生として取り組んでいくというときに、まさに出ばなをくじく様相となっています。これから努力をする時間がある地域とない地域に分かれてしまっている現状です。
久慈工業高校は、就職希望者、進学希望者ともに100%の進路決定率を誇り、中学生に対する進路希望等に関するアンケートでは、久慈ブロックの工業に関する学科の希望が11.3%を占めるなど、ものづくり技術者を目指す生徒の重要な進路になっています。
このような状況を踏まえ、知事として、高校再編計画案に寄せられた各地域からの意見に対し、その成案に向けてどのように対応すべきと認識しているか伺います。
次に、奨学金制度についてお伺いいたします。
まず、奨学金を活用した大学生等の地元定着の促進について伺います。
知事演述において、若者の地元定着を促す手段の一つとして、地元産業界と連携し、奨学金を活用した取り組みの具体化等についても検討を進めるとしています。このことについては、昨年の決算特別委員会の総括質疑において、返還義務のない給付型の奨学金をふやしていくべきとの質問をしたところ、知事から、地方創生の枠組みの中で新たな奨学金制度を検討していること、地元に残って働く人や世界的に活躍する人材育成のための奨学金制度を県としても検討したいとの答弁があり、検討事項になったと認識しており、評価いたしますが、物足りなさも感じます。
その理由はスピード感にあります。県内高校卒業生の多くが進学、就職で県外に出ますが、県内に戻ってくる人数をふやしていかなければ、平成32年に人口の社会減をゼロにするという県の目標達成は難しいと言えます。
また、少子化の要因の一つに子供の教育費用の問題があることから見ても、給付型奨学金の充実は人口減少に歯どめをかける有効な取り組みの一つでもあります。実際、山口、徳島、鳥取、鹿児島といった各県においては事業に既に着手しています。1年のおくれが、人材の流出や高校生の進路選択に大きな影響を及ぼすと考えます。スピード感と強いメッセージを発信するためにも、本来、平成28年度に事業化され、予算として計上されるべきものと考えていました。
以上のことを踏まえ、早期の事業化、予算化が必要と考えますが、必要性の認識と具体的な検討内容を伺います。
また、地元定着を促す人口減少対策という趣旨のみではなく、若者が未来を選択することができるための施策として、地元定着型の条件を必要としない給付型奨学金をふやすべきではないでしょうか。子供の貧困化が問題になっている今、卒業後に奨学金の返済に苦慮している学生が多いことも指摘されています。学びたい子供たちが、経済的理由により将来の選択肢を断念することのないためにも、改めて、大学のみならず各種専門学校等を含めた給付型の奨学金を創設していくことを提案しますが、知事の考えをお伺いいたします。
以上で質問を終わらせていただきますが、答弁によっては再質問をさせていただきますと言えない代表質問でございますので、最後に一言、私の思い、また会派の思いを申し上げます。
地方創生が言われ、県でもふるさと振興総合戦略を初め各種プランを策定し、4年後には人口の社会減ゼロを目標に掲げています。人口減少に取り組む国からのメニュー施策のみを実行するのではなくて、岩手独自の施策を行い、未来につながる地域を次の世代につないでいくために、これからもさまざまな指摘、意見、提案を行ってまいります。知事初め執行部におかれましてはなお一層の御努力を期待し、代表質問を終わらせていただきます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 中平均議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、本格復興完遂年についてでありますが、これまで、東日本大震災津波からの一日も早い復興の実現のため、県政史上かつてない規模の事業に全力で取り組んでまいりました。復興道路は新規事業化された全ての区間で工事着手され、災害公営住宅の約8割が着工、被災事業所については一部再開を含めて約8割が再開するなど、安全の確保、暮らしの再建、なりわいの再生についてそれぞれ着実に進んでいるところであります。一方で、被災された多くの方々がいまだ応急仮設住宅等での不自由な生活を余儀なくされている状態であり、復興はいまだ道半ばであると認識しております。
そのような中、第2期の本格復興期間の最終年度である平成28年度に、実施計画に掲げた事業を確実になし遂げるという意志を込めて、本年を本格復興完遂年と位置づけたところであります。
復興の進捗は地域や被災者によってさまざまではありますが、これまで以上に、より多くの方々の参画をいただきながら、オール岩手の力と、全国また海外に広がるさまざまなつながりの力を合わせ、一日も早い復興を目指して全力で取り組んでまいります。
次に、復興事業完了後の三陸地域のビジョンについてでありますが、三陸地域の産業や暮らし、歴史、文化や地理的条件など、三陸らしい地域資源や特性を最大限に生かしながら、新たな産業の育成などによって、次の世代が希望を持ち、世界に誇れる新しい三陸地域の創造を目指す必要があると考えております。
その実現に向けては、復興事業による交通ネットワークの整備や新たなまちづくりの進展などの環境の変化を踏まえて、長期的な観点から、オール三陸としての地域振興をデザインし、地域一丸となって取り組むことが重要であります。
このため、本年度、三陸地域の市町村長を初め地域の関係者や有識者等の意見をお聞きしながら、将来を展望し、持続的な発展を図っていくための復興、振興方策に関する調査を行うとともに、復興後を見据えた地域の総合的な振興を担う新しい推進体制の整備に向けて検討を進めているところであります。
今後、復興道路の整備や宮古-釜石間の山田線の再開等によって三陸地域が文字通り一つにつながり、さらにラグビーワールドカップ2019の開催が予定されるなど、県全体が盛り上がり、国内外からの多くの来訪者が期待されます。こうした機会なども的確に捉えて、復興を通じて育まれたさまざまなつながりの力を大切にしながら、観光等の産業振興や三陸ブランドの強化などによって、三陸地域が将来の岩手全体の発展を牽引できるように取り組んでまいります。
次に、国道281号の整備についてでありますが、復興道路については、既に事業を行っていた高規格幹線道路、地域高規格道路を県の復興計画に位置づけたものであります。国道281号は、沿岸地域と内陸地域を結ぶ物流や産業振興を支える重要な幹線道路であり、復興道路と一体となって機能する復興支援道路に位置づけて、久慈市案内地区など交通隘路の解消を図っております。
国道281号の整備は県北・沿岸振興において重要な課題でありますが、平庭峠については、長大なトンネルを含む大規模な事業が見込まれますことから、今後の交通量の推移や公共事業予算の動向を見きわめながら、整備のあり方を総合的に判断してまいります。
次に、幸福に関する指標についてでありますが、希望郷いわての実現をより確かなものとするためには、経済的、物質的な豊かさにとどまらず、岩手ならではの生き方や地域の多様な豊かさを重視していくことが大切と考えているところであり、今般、新たな視点として幸福に関する指標を試行的に導入することとしたものであります。
幸福をあらわす指標については、アンケート調査による主観的指標や、幸福に関連する統計データを用いた客観的指標の設定などによる把握が考えられますが、県民意識調査を活用した予備調査結果の分析をもとにして、今後、有識者による研究会を設置して、幸福に影響を持つ構成要素や把握手法などについて検討を行っていくこととしております。
また、その活用についてでありますが、例えば、幸福に関する主観的指標と関連する客観的指標の分析を行って施策の見直しにつなげることや、県民みんなでどのような地域を目指すのかを考える上での一つの材料とすることなどが考えられます。
今後、広く県民の皆さんや有識者の御意見を伺いながら岩手ならではの指標づくりを行って、次期総合計画での本格導入に向けて検討を進めてまいります。
次に、本年1月の暴風雪等による農林水産関係被害についてでありますが、本県では、防波堤の倒壊など漁港施設を中心に18市町村で被害が発生し、2月23日現在の被害額は約64億円となっております。
県では、1月30日に、森山農林水産大臣に対して早期復旧に向けた国の支援を要請いたしました。特に被害の大きい漁港施設については、現在、復旧工事に向けた詳細な調査を進めておりまして、早期の工事着手に取り組んでいくこととしております。
また、パイプハウス等の農業施設や養殖施設等については、共済等の迅速な支払いを要請しますほか、産地の生産力強化に向けた施設の整備など、必要な対策に取り組んでまいります。
次に、今後の災害時対応についてでありますが、大きな災害が発生した場合、関係者がその被害の状況について情報を共有し、災害復旧に当たる必要がありますので、これまでも、災害対策本部などが設置されたときや被害額が相当程度に大きくなったときには、随時、被害状況を公表してまいりました。
今回の災害による被害では、漁港施設や養殖施設の損壊、損傷など波浪に伴う被害がその大部分を占め、発災以降もしけが続き、調査等に時間を要しましたことから、集計資料の公表が2月17日となったものであります。
今後とも、大きな災害が発生した際には、可能な限り正確な被害状況を迅速に把握するとともに、必要に応じて適時適切に情報を発信してまいります。
次に、地域医療についてですが、県民誰もが安心して医療を受けられる体制の構築のためには、まずは医師の絶対数の確保が必要でありますことから、これまで、即戦力医師の招聘や奨学金による医師の養成などに取り組んでまいりました。この4月には、沿岸・県北地域を含めた公的医療機関に13名の養成医師を配置しますほか、今後も、順次、養成医師の地域への配置と育成を進めて、本県の医師不足を着実に解消してまいります。
今後は、これらの取り組みに加えて、限られた医療資源の中で、ICTを活用して遠隔地の専門医の助言を受けることができる医療連携を進めるなど、効率的かつ質の高い医療を適切に受けることができる医療提供体制の構築に向けて全力で取り組んでまいります。
次に、県北地域の漁業振興についてでありますが、県北地域は、岩礁域の多い海岸線や遠浅の地形を持つ地域特性がありますことから、これまで、アワビ、ウニ等のいそ根資源の増殖やヒラメ等の種苗放流など、栽培漁業を中心に漁業の振興を図ってまいりました。一方、養殖業に当たりましては、生産に適した海域が少ないことから、普代村でのワカメ、昆布などの養殖にとどまっていましたが、近年、野田村の外洋に面した海域で高品質のホタテガイ養殖の取り組みも進められております。
県では、県北地域の養殖業の振興に向けて、県水産技術センターで開発しましたマガキのシングルシード種苗の大量生産技術に基づく養殖試験を、震災後、久慈湾等で実施しておりまして、1年間で出荷が可能な大きさとなるなど、良好な生育結果が得られております。
今後、湾口防波堤の整備によって静穏な海域が拡大しますので、県では、シングルシード種苗を用いたマガキの養殖に向けた取り組みを支援しますとともに、外洋に面した海域での養殖技術が確立されているホタテガイの養殖地域の拡大を促進するなど、県北地域の漁業振興に取り組んでまいります。
次に、漁業担い手対策についてでありますが、漁業就業者の減少と高齢化が進んで、担い手の確保、育成が重要な課題でありますことから、県ではこれまで、漁業協同組合の戦略、戦術となる地域再生営漁計画の策定と、これに基づく新規就業者の確保や漁業経営体の規模拡大、共同生産体制づくりなどの取り組みを支援してまいりました。
また、地域再生営漁計画の着実な実行を通じて、漁業担い手の確保、育成の取り組みを強力に進めるため、今年度中に新たな漁業担い手育成ビジョンを策定することとしております。このビジョンに基づいて市町村協議会の設置を促進し、地域ごとの新規就業者を確保する受け皿づくりや熟練漁業者等による技術指導、住居のあっせんなどの取り組みを支援してまいります。あわせて、地域漁業のリーダーを育成するために、漁業者等を対象とした販売力向上等に向けたワークショップや、漁協女性部を対象とした起業化等に向けたスキルアップセミナーを開催するなど、関係機関、団体と連携しながら、総合的な担い手の確保、育成対策に取り組んでまいります。
次に、中山間地域の活性化についてでありますが、本県の中山間地域は県土の約8割を占め、農林水産業の生産活動はもとより、県土の保全や自然環境の維持などの多面的機能を有し、多様な生産者が参画して、地域の産業やコミュニティーを維持、発展していくことが重要であります。
このため、県では、農業を核とした中山間地域活性化の推進方向を示すいわて農業農村活性化推進ビジョンを今般策定いたしまして、今後は、このビジョンを踏まえて、活力ある地域づくりを牽引する人材の育成や組織づくり、若者、女性のアイデアや高齢者の経験、技術を生かした6次産業化など、集落の方々が主役となり、創意工夫を凝らした活性化の取り組みを、平成28年度当初予算に盛り込みましたいわて農山漁村コミュニティ活性化支援事業などを活用して、市町村等と連携を図りながら支援してまいります。
次に、観光におけるICTの利活用についてでありますが、観光客の利便性を高めて県内全域への周遊を促進するために、ICTの進展等を踏まえながら、その利活用を図ることが重要であります。
具体的には、近年のモバイル端末による観光情報の利用ニーズの高まりに対応するため、今年度、多言語観光アプリの導入やポータルサイトへのGPS機能の付加などソフト面での充実を図るとともに、宿泊施設等への無料公衆無線LANの整備支援を進めてきたところであります。
今後におきましても、観光客のニーズを的確に捉えながら、ICT環境のソフト、ハード両面での整備を推進するとともに、国や東北各県とも連携しまして、広域周遊観光におけるICTの利活用も進めて、観光客の利便性の向上と誘客の拡大を図ってまいります。
次に、食産業の販売戦略についてでありますが、本県の食産業の振興においては、卸小売業や飲食業などとの企業間取引による販売先の確保が重要であります。そのため、県では、専門家や関係機関によるセミナーや個別指導の実施、県外の大手量販店と連携したいわてフェアの開催など、商品づくりから販売促進まで一貫した事業者支援に取り組んでおります。
また、特にバイヤーとのマッチングの強化が必要でありますので、金融機関や各産業支援機関などと共同で、毎年、県内外で商談会を開催し、その出展経費の助成や商談のスキルアップのサポートなどを展開しております。
今後とも、より一層の高付加価値化、ブランド化を進めて、さらなる販売拡大につながるように事業者の取り組みを支援してまいります。
次に、岩手県中小企業振興基本計画についてでありますが、この計画の策定に当たりましては、中小企業者及び関係団体で構成する中小企業振興基本計画検討委員会を設けるなどしまして、検討を進めてまいりました。
その過程においては、例えば、中小企業が持続的に事業展開していくための指針となる目指す姿、また、若者の県内就職の促進等を図る人材の確保、育成、そして、後継者不足に対応した円滑な事業承継などに関する施策につきまして意見が出されて、基本計画に反映させたところであります。
また、施策の達成度をはかる指標を設定して、実施状況を毎年度取りまとめて公表するとしております。さらに、計画策定後も外部委員の御意見を伺うなどして柔軟に見直しを行うこととしておりまして、より効果的な中小企業振興施策の展開に努めてまいります。
次に、新たな県立高等学校再編計画案についてでありますが、再編計画案の公表後、教育委員会においては、地域検討会議や県民説明会などを通じて意見を伺ってきており、一部の地域からは、統合を直ちに決定するのではなく、地域での努力の時間が欲しいといったような意見等があったことは承知しております。
教育委員会では、年度内を目途に新たな再編計画の策定に向けた作業を進めていますが、こうしたさまざまな御意見や地方創生に向けた市町村の動きなども踏まえつつ、総合的な検討を進めることが重要であると考えております。
次に、奨学金を活用した学生の地元定着についてでありますが、人口の社会減に歯どめをかけて人手不足に対応していくために、若者の県内就職やU・Iターン促進等の取り組みを強化していくこととしております。
奨学金を活用した取り組みは、大学生等の有能な産業人材の本県への就職促進を図る上で有効な手段の一つと認識しておりまして、本県産業の発展にも寄与する取り組みとしたいと考えております。
したがいまして、事業化に当たっては、先行事例も参考としつつ、産業界の御意見も踏まえた実効性ある制度とすることが重要と考え、今後、いわてで働こう推進協議会の構成員など県内産業界や関係団体と連携しながら、検討を加速してまいりたいと考えております。
次に、給付型の奨学金についてでありますが、旧日本育英会が実施していた奨学金事業は、特殊法人の整理合理化によって高校生を対象とする事業が都道府県に移管された一方、専門学校等を含む高等教育については国が担うものとされたところであります。
県といたしましては、高等教育の機会均等を図る上で学生への経済的な支援は極めて重要でありますことから、給付型奨学金の創設など国が行う奨学金制度の拡充を要望してきておりまして、国の新年度予算案では無利子貸与人員の増員等の見直しが盛り込まれたところであります。
今後におきましても、意欲と能力のある学生が安心して進学し、そして学業に専念することができるように、大学生等の奨学金の制度の充実に向けて必要な提言、要望を行ってまいります。
〇議長(田村誠君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
本日はこれをもって散会いたします。
午後4時30分 散 会

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