平成27年6月定例会 第20回岩手県議会定例会会議録

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〇15番(岩渕誠君) 希望・みらいフォーラムの岩渕誠です。今任期最後の定例会におきまして登壇の機会を与えていただきました全ての皆様に感謝し、質問いたします。
最初に、達増県政の成果と課題について伺います。
達増知事は、8年前の統一地方選挙において、危機を希望に変えるをキャッチフレーズに選挙戦を展開し、知事選としては過去2番目に多い45万票余りを獲得し、初当選を果たしました。また、東日本大震災津波からの復旧・復興が大きなテーマだった4年前には、絶望のふちにある県民と痛みを共有しつつ、被災者一人一人と、ふるさとの再生、そして次代を見据えた復興をなし遂げる決意を、岩手には希望があると表現し、県の復興計画をマニフェストに掲げて、圧倒的多数の支持を得て再選を果たされました。
振り返れば、1期目は、前任者の在任中に倍増し、過去最大になった県債残高に象徴される県の財政問題、先送りされる間に問題が複雑かつ膨大となった地域医療や競馬組合の存廃問題、さらには不正経理問題など、増田県政下での負の遺産の処理に精力を注がなければならなかった印象を強く持っています。
そして2期目は、東日本大震災津波という記憶にも記録にも遠い未来に残るであろう大災害への対応に明け暮れた日々であったと承知しています。
達増知事は、極めて困難な時期の岩手県政のかじ取りを務めてきたところですが、1期目では、先ほど指摘した諸問題について、先送りや批判を恐れることなく正面から取り組み、成果につなげたものも少なくないと感じております。
地域医療の問題を初めとし、県も、県民も、私も、時に痛みを感じ傷つきもしましたが、それを乗り越え、県出身者を中心とする医師の育成確保や、県立病院の経営改善、高度先端医療への投資の拡大はもちろん、地域住民が地域の病院を理解し守るための活動が次々と生まれてきたことなどは、まさに危機を希望に変える動きと評価したいと思います。
無論、こうした動きについては、県民からの意見や岩手県議会での真摯な議論の結果でもあり、たとえ意見が異なったとしても、良識と見識に基づく論戦は、民主主義と地方自治には欠かすことのできない原点であることを知らしめているものと感じているところです。
一方、2期目の県政運営の最大のテーマであった東日本大震災からの復旧・復興についてはいまだ道半ばであり、多くの課題を抱えているものと受けとめています。
確かに、岩手県は、医療、福祉の分野を初め他県に先んじ、あるいは制度を拡充させ、被災者支援に取り組んでいるものが多いのも事実であります。例えば、県が仮設診療所を整備し、これを民間医療機関に無償で貸与した施設は、医科、歯科合わせて33カ所と宮城県の3倍以上、また、被災した民間医療機関の移転新築に対する補助制度も宮城県より2年早く制度化し、その補助率についても、宮城県の3分の2に対して岩手県は4分の3と負担軽減につなげています。また、被災者の医療費窓口負担等の免除についても、国や宮城県は被災後1年半から2年で全額免除を終了したのに対し、岩手県では市町村に対する特例的な財政支援の形でいまだに全額免除が続いています。
被災3県で、唯一、市町村と連携して住宅再建に対する助成制度を打ち出したほか、国からの震災復興特別交付税についても、国の反対を押し切って県の留保分を最小限にとどめ被災市町村に配分したことにより、これを原資として各自治体独自の住宅再建支援事業に上乗せ補助が実現したことなど、県独自の事業が進められています。一見地味な仕事に映るかもしれませんが、被災者、被災自治体に寄り添い、暮らしと自治を支えるものとして大いに評価されるべきものと考えているところです。
しかしながら、余りにも広範囲で甚大な被害の前に依然として立ちすくみ、生活再建に踏み出せない被災者がいることも事実であります。本格復興期を迎え関連事業費はピークとなっていますが、一日も早く応急仮設住宅を出て暮らしを再建する、若者を中心とした安定的な雇用を創出する、高齢者を中心とした体と心の健康をどう守るか、子供たちの成長のためよりよい環境をいかにつくるか、そして、三陸を初めとする岩手の資源をどう生かしていくのか、震災の経験をどう今後に生かすのか、被災者一人一人の復興と、三陸にとどまらない岩手全体の新しい創造など、復興計画に盛り込まれた計画達成のため乗り越えなくてはならない課題は残っており、方向性を変えることではなく、計画の着実な前進こそ求められている時期だと考えています。
そこで達増知事に伺いますが、これまでの指摘を踏まえ、達増県政の8年間を総括し、何ができて、何が課題として残っているのか、達増知事がまいてきた希望の種は今どこまで成長しているのか、また、課題解決に当たっての基本的な姿勢と具体的な取り組みをお示しください。
東日本大震災津波からの復興について、喫緊の課題等について引き続きお聞きします。
国は、多くの被災者や被災自治体の願いを無視し、復興予算の地方負担について、一部負担の方針を閣議決定しました。被害が深刻であればある地域ほど負担が求められる結果となっており、沿岸と内陸を結ぶ復興支援道路や水産基盤整備等で、被災3県で最も大きい90億円の負担となったことは極めて残念であります。
竹下復興大臣は記者会見で、全て与えられるより、一部のリスクを負うことで人間は本気になる、さらに必死のギアをもう一段上げていただきたいと、殊さらに被災地の自立を強調したそうでありますが、復興に対して本気ではない被災者、被災地はどこにいるのでしょうか。もう既に背負い切れないほどのリスクを背負わざるを得ないのではないでしょうか。復興を進めるギアは国にはないのでしょうか。
負担増となった事業のうち、効果促進事業については、そもそも国の査定が厳しく、復興庁が査定庁とやゆされる一因となったものです。例えば陸前高田市の浸水地域に計画されている復興祈念公園も、もともとは犠牲者に寄り添い、復興にかける地元のシンボルにしたいと基幹事業として地元から要望の出ていたものでしたが、設置そのものについて復興庁の抵抗に遭ったものです。
私は当時、陸前高田市議会の幹部が上京して、この件で復興庁のトップに面会したものの、願いを受け入れてもらえず断られたと憤慨していたのをきのうのことのように記憶しております。地方自治の観点から復興に必要だったものは、地方の自由な裁量による事業の決定と、それを担保する十分かつ自由度の高い財源の措置を国の責任で行うことだったと思っていますが、これまでの経緯と今回の決定は残念でなりません。厳しい財政環境の中で、いかに復興事業を進めていくのか、まさに正念場でありますが、県としてこの問題にどう取り組んでいくのか決意をお聞きします。
さて、達増知事は、9月6日に投開票される岩手県知事選挙に3選を目指して出馬されます。未曾有の危機にあって、他県の1歩も2歩も前を行く、あるいは国に先駆けて行ってきた被災者に対する数々の支援策を実行してきた達増知事には、ぜひとも復興を成し遂げ、その先の岩手をつくる先頭に引き続き立っていただきたいと思います。
3期目出馬に当たって、知事は、希望が持てる暮らし、希望が持てる仕事、希望が持てる地域を実現するとして八つの分野で希望郷いわてを実現するマニフェストを発表しました。このうち、具体的な新規事業として、JR山田線の復旧と三陸鉄道への移管に合わせた(仮称)三陸防災復興博の開催、希望郷いわて国体、全国障害者スポーツ大会希望郷いわて大会での拡張国体作戦などが掲げられています。これらはどういう狙いなのかお考えを御説明ください。
〔副議長退席、議長着席〕
また、知事は、復興と三陸地域の振興に続くマニフェストとして、若者・女性支援と、生きにくさの解消を掲げています。生きにくさの解消という言葉は従来のマニフェストにはなかなか掲げられなかったものですが、どのような哲学に基づいて、何をなそうとしているのかお示しください。
さらに、行政評価の指標として幸福度を取り入れるとしています。これは岩手にとって新しい物差しとして施策の展開が期待されますが、この幸福度についてもお考えをお聞かせください。
こうした生きにくさの解消は生きやすさにつながるものと受けとめますが、現在、県が進めている子供の医療費助成制度の拡充も重要な観点です。来年度に始まる未就学児や妊産婦の窓口負担の現物支給に加え、来月からは対象年齢も入院に限り小学校卒業まで拡大されることになっていますが、この際、通院負担も小学校卒業までとするなど、さらなる子供の医療費助成の拡充もしっかりと進めるべきと考えますが、知事の見解を伺います。
あわせて、被災者から評価の高い医療費窓口負担等の全額免除について、来年以降の取り扱いをどうするおつもりかお答えください。
また、マニフェストには引き続きILC建設実現も盛り込まれました。先週開かれた有識者会議の中間まとめによれば、ILCはCERNのLHCの実験結果を踏まえて判断するよう提言しており、政府判断は2017年から2018年ごろの見通しとなりました。国際的な費用負担の問題と建設そのものの意義について、国民理解の醸成が依然として課題となっています。有識者会議の中間まとめを踏まえ、ILC建設に向けた現在の状況についてどう分析しているのかあわせて伺います。
〔15番岩渕誠君質問席に移動〕
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 岩渕誠議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、達増県政2期8年についてでありますが、平成19年に知事に就任して以来、県民一人一人が希望を持つことができ、希望があふれる岩手の実現を目指して県政執行に当たってまいりましたが、平成23年3月に発災した東日本大震災津波以降は、その思いに加えて、復興を願う被災者の皆様の思いに応えることを常に念頭に置いて県政の推進に努めてまいりました。その結果、求人不足の解消や一人当たり県民所得の4年連続の向上など、本県が直面する重要課題についても着実に成果が出ているところであります。また、このような成果に加え、平泉の世界遺産登録に次ぐ橋野鉄鉱山・高炉跡の新たな登録に期待が高まる中、来年10月には希望郷いわて国体、希望郷いわて大会の開催を控え、さらに2019年にはラグビーワールドカップが開催されるなど、復興を後押しし、県民に希望を与える取り組みも進みつつあるところです。
復興はいまだ道半ばでありますが、安全の確保、暮らしの再建、なりわいの再生をより一層進め、喫緊の課題である人口減少問題を克服するために今年度策定いたしますふるさと振興総合戦略を実行に移していくことで希望郷いわての実現に着実に近づいていくものと考えております。復興を成し遂げ、ふるさと振興を成功させ、希望郷いわてを実現するため、具体的には、若者、女性の活躍支援や生きにくさの解消、地域医療の充実、地域資源を生かした産業の発展、ILC建設の実現などの施策にオール岩手で取り組んでいきたいと思います。
次に、復興予算の地方負担についてでありますが、国において地方負担拡大の考え方が示されて以降、市町村や他県などとも連携して要望を重ねるなど、被災地の実情を強く訴え、できる限り自治体の負担拡大が少なくなるよう取り組んでまいりました。そのような中、国が決定した平成28年度以降5年間の復興財源フレームにおいては、本県が国費対象額として見込んでいたほぼ全額が措置され、また、市町村からの声を踏まえ要望してきた復興交付金効果促進事業については、一括配分の上限の引き上げなどの運用の改善が図られたところであります。
一方で、市町村からの期待も大きかった復興支援道路などについては、事業費の一定割合の地方負担が決定されたところであります。しかし、このことによって復興をおくらせることはできませんので、その具体的な対応については、県債の活用も含め来年度の予算編成の中で検討してまいります。今後も、市町村と連携しながら、被災地の実情をしっかりと説明し、被災地の復興に必要な予算が確保されるように国に働きかけるなど、一日も早い復興に向けて全力で復興に邁進してまいります。
次に、マニフェストにおける新規事業の狙いについてでありますが、拡張国体作戦では、来年の希望郷いわて国体、希望郷いわて大会と同時に、2巡目国体開催ならではのさまざまな新機軸の取り組みやイベントを岩手全体で展開することにより県民総参加的な盛り上がりをより確かなものにしようとするものであります。さらに、この取り組みは、東京オリンピック・パラリンピックが地方が主役となるようにするためのモデルとなることを目指すものでもあります。
また、三陸防災復興博(仮称)については、JR山田線の復旧、三陸鉄道への移管に合わせ、沿岸各地においてイベントを大規模に開催することにより、防災意識を高め、東日本大震災津波の風化を防ぎ、復興に対する全国の関心を改めて高めるとともに、御礼のメッセージを発信しようとするものであります。さらには、この取り組みは、観光や震災学習などを通じて、交流人口の拡大や地域振興にも資するものとしたいと考えています。
次に、生きにくさの解消についてでありますが、私は、働きにくさ、結婚しにくさ、子供の産みにくさ、子育てしにくさ、家庭の持ちにくさなどを一言であらわす言葉として生きにくさと呼んでいますが、こうした生きにくさが全国的な人口減少問題の背景にあると考えています。岩手県総合計画の名称を改めていわて県民計画と名づけた際も、県民一人一人に着目して県政を展開すべきと考え、また、東日本大震災津波復興計画の策定に当たっても、被災者一人一人の復興を念頭に取り組んでまいりましたが、復興とふるさと振興が県政の主要テーマとなる今、ますます人に着目することを重視し、生きにくさの解消ということをマニフェストに掲げたものであります。一人一人が抱える生きにくさを丁寧に解消していくことによって、希望が持てる暮らし、希望が持てる仕事、希望が持てる地域を実現することができると考えています。
次に、幸福度についてでありますが、これまで、一人一人が希望を持ち、ひいては岩手全体に希望があふれる希望郷いわての実現に向けて、いわて県民計画に掲げるさまざまな施策を推進してまいりました。復興とともにふるさと振興が県政における主要なテーマとなる今日、県民の幸福度をはかり、それを高めていくことが復興とふるさと振興を成功させるために重要と考えています。また、幸福度の内容につきましては、岩手県は、宮沢賢治の世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ないなど、幸福に関しては独特な歴史、文化もあり、今後、岩手ならではの幸福度を研究し、県民の皆さんの意見も伺いながら取り組みの具体化を進めていきたいと考えています。
次に、医療費助成制度の拡充についてでありますが、県では、人口減少対策としての総合的な子育て支援施策の一環として、市町村等と協議の上、未就学児及び妊産婦を対象とした窓口負担の現物給付とあわせて、助成対象を小学校卒業の入院まで拡大することとしました。実施時期は、対象拡大が本年8月、現物給付が来年8月からとしており、これに向けた取り組みを着実に実行しているところであります。
また、人口減少対策としての総合的な子育て支援施策については、今般策定する人口ビジョンやふるさと振興総合戦略において重要なテーマでありますので、多くの皆さんの御意見も伺いながら検討を進めてまいりたいと思います。
一方、乳幼児や子供の医療費助成は、本来、自治体の財政力の差異によらず、全国どこの地域においても同等な水準で行われるべきでありますので、先般実施した県の政府予算提言・要望において、国において全国一律の制度を創設するよう要望しているところでもあります。また、全国知事会からも同様の提言を行っておりまして、今後とも、国に対する働きかけにも積極的に参加してまいりたいと思います。
次に、医療費窓口負担等の全額免除についてでありますが、県では、多くの被災者がいまだ応急仮設住宅等で不自由な生活を余儀なくされ、健康面や経済面の不安を抱えており、引き続き医療や介護サービス等を受ける機会の確保に努める必要がありますことから、県内統一した免除措置を講じるための財政支援を本年12月まで継続しているところであります。平成28年1月以降の対応につきましては、被災地の生活環境や被災者の受療状況等を総合的に勘案しつつ、継続も視野に、市町村の意向を確認しながら判断してまいりたいと思います。
次に、ILCの建設実現についてですが、国のILCに関する有識者会議では、昨年度からこれまでの議論を取りまとめる形で、国際的な経費負担の見通しを立てること、2017年末までのLHCの実験結果を見きわめること、国民や科学コミュニティの理解を深めることを主な内容とする3項目について提言することとされました。また、超党派の国会議員で構成される議員連盟では、ILCなど先端科学分野の国際協力を推進する日米の議員連盟設立に動き出していますほか、ILCを国家戦略の観点から検討を行うことなどについて、政府への要求として決議したところであります。このほか、世界中の研究者は、4月に開催された東京シンポジウムにおいてILCの早期実現を求めるILC東京宣言を採択しています。このように、ILCの実現に向けて、それぞれの立場では着実に検討が進められている状況にあり、県としては、引き続き、有識者会議や国会議員連盟、研究者の動向等を注視しながら、関係機関と連携した国への要望活動や、地元としての受け入れ環境の整備、広域的な地域づくり等の準備をしっかりと進めてまいります。
〇15番(岩渕誠君) 幸福度という物差しについては、かつてこの議場にもおりました同僚議員でありました高橋博之氏がブータンの例を取り上げて知事と論戦をしたことを思い出しております。新しい物差しとすれば、非常に抽象的な部分もありますけれども時代に即しているのかなという思いもありまして、ぜひ進めていただきたいと思います。まさに知事は草の根の知恵と力を総結集という形でずっと政治姿勢を保ってまいりましたので、これは一人一人と寄り添うことの最大の具現化だと思いますので、ぜひ進めていただきたいと思います。
それから、継続も視野にという答弁がありました。医療費窓口負担等の全額免除についてでありますが、これは平成27年度まで国のほうで特別調整交付金が追加交付されておりまして、その部分ともかかわりがあるかと思いますが、知事の答弁を聞く限り、これは、市町村がやるということであれば県も継続を考えたい、継続するという答弁と受けとめたいと思います。
通院負担につきましては、これは、既に各市町村の状況を見ますと、県の基準と同じなのは滝沢市、小学校1年生までの通院は紫波町、小学校3年生までというのが北上市と矢巾町とかなり限られておりますので、ほかはみんな相当やっていますので、ぜひその拡充をしていただきたい。これは年間3億円程度の費用負担とお聞きしておりますので、ぜひ現状に鑑みてやっていただければと思います。
それでは、ここからちょっと時間を割きまして、農業問題についてお聞きしてまいりたいと思います。
まず最初に、TPPについてお聞きいたします。
アメリカ議会は、先週、大統領貿易促進権限法案、いわゆるTPAを賛成多数で可決いたしました。TPAはTPPの交渉妥結に不可欠と言われる大統領権限でありまして、先日、大統領署名で成立をいたしたということであります。この法案の動向を注視していた関係各国も、いわゆる政治案件と言われる国内調整を進める構えで、交渉妥結へと一気に動き出している状況であります。安倍総理も会見等で、アメリカとともにリーダーシップを発揮して早期妥結を目指していきたいと述べるなど、非常に前のめりと言いますか、今月中のTPPの交渉合意に向けた動きを加速する考えを示しております。大変な正念場を迎えていると私は思っております。
TPPについてはさまざま議論をしてきたところでありますけれども、今後さらに農業分野での譲歩などを重ねれば、我が国の農業はもとより、国の形を大きく変えかねないものだと私は認識しております。そして最大の問題は、この重大なTPPの交渉の内容がいまだ秘密の中で進められようとしている点であります。主権者たる多くの国民はもとより、国民の代表たる国会議員までもがほとんどその内容について知らないままだと。そしてそういう中で締結への道を突っ走るやり方というのは、かつて例を見たことがない、我が国の主権不在そのものであると断ぜざるを得ません。今こそ県は政府に対して強く情報開示を迫り、ISD条項などに代表される、主権国家の存在を揺るがす極めて問題の多い内容、そして、我が国の農業にはかり知れない打撃を与える可能性について徹底的な国民的議論を行う必要があると思いますが、達増知事のTPPに対する認識と現在の交渉状況について見解をお示しいただきたい。
〇知事(達増拓也君) 今般、アメリカ議会において、TPP交渉妥結の前提となるTPA法案が可決、成立しました。今月中に日米間の事務レベル協議が再開され、TPP閣僚会合も開催されるというような報道もあります。今後、TPP交渉合意を急ぐ動きが見込まれるということもありますが、関係各国の主張の相違点に改めて各国世論の関心が集まるということも予想されます。
TPP協定は、関税の撤廃などによる農林水産物の輸入拡大につながり、本県の基幹産業である農林水産業の生産額の減少など、農業の生産活動や農村社会等に重大な影響を与えることが懸念されます。このため、現在の段階では、特に、国は国民に対する十分な情報開示と説明を行って国民的議論を尽くすべきと考えます。そして、交渉に当たっては、地域経済や国民生活に影響が生じると見込まれる場合、交渉からの撤退も含めて断固たる姿勢で臨む必要があると考えております。
〇15番(岩渕誠君) TPPの今後のスケジュールはかなり政治的な情勢が絡んでくると言われております。それは来年のアメリカ大統領選挙でありまして、年を越しますとアメリカは大変なことになりますから、年内に決着したいという思惑が強いと言われております。最短でいきますと、今月中に合意をして、これは各国の署名が早ければ恐らく11月になると。恐らくその舞台は11月18日からのAPECになるのではないかと言われております。そして、その後に国会審議ということになりますと、本当にどたばたの中で物事が進んでしまう。どさくさに紛れて可決されてしまう、こういうことでは大変問題があろうかと思います。
そもそもTPPについては、農林水産物の重要5品目について関税撤廃対象から除外または再協議の対象とするように政府に求めた国会決議がありまして、その遵守というのは当然でありますけれども、米国産のお米の輸入枠を拡大するという話がもう既に出てきている。これは国会決議を骨抜きにしているという状況だと言わざるを得ないと私は思っております。
最終決着は、国会がどう判断するかということになります。TPPが岩手の将来に与える現状に鑑みて、私は、県を挙げて国会議員に対して反対を迫るべきだと考えますけれども、今後どのような働きかけを県選出の国会議員に行っていくおつもりなのかお考えをお聞かせいただきたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 県では、TPP協定への参加について、衆参両院農林水産委員会における決議も踏まえて、交渉からの撤退も含めて慎重に判断するように、これまでも政権与党や県選出の国会議員、関係省庁に対し要請してきたところでありまして、先般、6月の政府への予算提言・要望においても改めて要請を行ったところであります。
今後とも、情報収集に一層力を入れ、北海道東北地方知事会や全国知事会などとも連携しながら強力に働きかけていきたいと思います。
〇15番(岩渕誠君) この問題は、まさにオール岩手で、TPPが今のまま通ったら、そして国会の決議が骨抜きにされて通ったら、誰も農業なんか希望の産業として捉えることはできません。漁業もそうだと思います。林業もそうだと思います。ぜひここは体を張ってTPPの問題には当たっていただきたいと思います。
次に、遊休農地の課税強化について伺います。
これはきのうも議論になりましたけれども、これを出した政府の規制改革会議は、担い手の農地集約対策として遊休農地への課税強化をするということを提言しておりまして、問題なのは、答申で、担い手への集積が進まない理由として挙げているのが農地の出し手不足だと。その背景として、転用期待が遊休農地の発生を助長し、農地の流動化を阻害していると指摘していますが、これは、全く現状をわかっていない、全くお話にならないと言わざるを得ません。どこをどう見ればこんな分析が相当優秀な規制会議のメンバーから出てくるのか、全く不思議でなりません。遊休農地になりやすいのは、当たり前ですけれども転用が期待される農地よりも中山間地の条件不利地であることは明白でありまして、高齢化と後継者不足がこれに拍車をかけているというのが周知の事実であります。どんなに集積協力金があったとしても、岩手のような条件不利地では頼まれても受けられない土地が多いのに、米価下落が続く現状では、集積はおろか、現状を維持することさえ難しいことは、ここにおいでの皆さんであれば、誰もその現場を見て理解している話だと思います。
この規制改革会議の提案の根底には、成績が上がらない農地中間管理機構―農地集積バンクのてこ入れという側面があるわけでありますけれども、どうして国の農政の失敗のツケを善良な農民が払わなければならないのかと私は怒りを持っております。そもそも一般農地よりも資産価値の低い遊休農地に対して課税強化するというのは、税の公平性の観点からも極めて問題があるものと思いますし、さらに言えば、農地所有者の財産権に対する不当な侵害になりかねないと私は思っております。県では、こうした指摘を踏まえて、遊休農地の課税強化についてどのような考えをお持ちなのかお示しいただきたいと思います。
〇農林水産部長(小原敏文君) 本県におきましては、耕作放棄地の約8割が中山間地域にあり、小区画や分散、排水不良などの条件不利地が多いと受けとめております。仮に、課税が強化され、遊休農地の農地中間管理機構への貸し出しが進んだとしても、借り手が見つからなければ機構から所有者に返還されることとなり、農地の集積、集約化にはつながらないと捉えております。
県としましては、遊休農地を含めて、農地の集積、集約化を円滑に進めることは重要と認識しておりますが、その手段として遊休農地への課税を強化することにつきましては、地域の実情等を十分に考慮しながら検討が進められるべきものと考えております。
〇15番(岩渕誠君) この提言の中でもう一つ私が問題だと思っているのは、今の集積の状況について、規制改革会議は、かなりのインセンティブがあるのに進まないのは不思議でならないと言っているんです。インセンティブというのは何かというと集積協力金のことです。要は、金があるんだから、それを利用して出し手がいないのはおかしいと言っているわけです。ところが、現状から見ると、お金があるからそこに農地を出しましょうという農家というのはほとんどいないわけです。金銭的なインセンティブよりも、農村においてはやはり信用というものが大変重要になっているわけであります。
二つ例を紹介しますと、ことしの冬に仙台に農業関係に新規参入をしようとする大手の会社がありました。宮城県の県北と岩手県の県南で2、000ヘクタールのモチ米を作付したいと。かなり高い値段でこの土地を貸してくれとかつくってくれということをやったんですけれども、これはほとんど誰もそれに応じる人はいませんでした。これは、やはり長期的な見通しがないままで、誰かわからない人に貸せないということがあるわけであります。
一方で、担い手が病気になって農地を返されるというケースが毎年、実はあります。そのときにどうしているかというと、周辺の農業者が、では、分担をして農地を守ってあげましょうと。いわゆる地域のきずなとか、そういった部分でなっているのでありまして、金銭的に幾ら金を積まれてもどうなるものではないというのが現状だと思っています。
私は、そういう部分で根本的な議論の方向性自体が間違っていると思いますから、それは早く現状を伝えて、正しい方向に現場から話を上げていくべきだと思っているんですが、県としてはどのように受けとめますか。
〇農林水産部長(小原敏文君) 農地中間管理事業でございますが、本県の場合におきましても、やはり出し手が少ないといったような状況がございます。これは全国的な状況でございます。やはり出し手が少ない理由としましては、先ほど議員からもお話がありましたけれども、まず制度に対する不安が拭い切れないと。あとは、10年の貸付期間が長いというもの、また逆に、今度は10年後に返されても困るといったような意見もございます。やっぱり元気なうちはまず自分で営農したいという方が本県におきましては多いと思ってございます。
また、一方で、借り受ける側としましては、米価が下落している中で、この将来展望が見えづらいという意見、さらには、借りるとしても、圃場の基盤整備がおくれているような形ではなかなか集約が難しいと。こういったような、出し手側、受け手側それぞれの課題について、県として、しっかり国のほうに伝えていきたいと考えてございます。
〇15番(岩渕誠君) かく言う私も農家の跡取りのせがれでございますので、中山間地での米づくりにはいささかかかわりを持っております。
今、元気なうちはという話がありましたけれども、私の年代まで差がありますと、悩みは何かというと、親が病気になるか、機械が壊れると、これはどうしようかという話になるわけであります。よそに農業を頼むといっても、頼める農地ならいいんです。でも、中山間地の非常に条件不利地だったらば、もうこれ以上できないと。だったら、結局荒らすしかないというような状況で、では、どうしたらいいんだというのが、我々ぐらいの世代になってくると、農家のせがれと言われる人たちは大体思うことであります。
農業者に対する一定の所得補償を法制化して農業で食える仕組みを構築するというのはもちろんなんですけれども、中山間地帯に合った基盤整備、つまり担い手に受けてもらえる田んぼにするために、低負担、最小限の圃場整備をすることのほうが、遊休農地をこれ以上ふやさずに多面的機能を維持する有力な方策だと私は思っておりますが、県の考えをお示しいただきたいと思います。
〇農林水産部長(小原敏文君) 本県農地の約8割を占めます中山間地域でございますが、農業生産はもとより、多面的機能の維持、発揮においても重要な地域でございます。しかしながら、生産基盤整備の立ちおくれや、高齢化、過疎化の進行に伴いまして、担い手の確保や農地の利用集積が喫緊の課題となってございます。
このため、県では、一関市の山口地区や奥州市の上小田代ぶどう沢地区などにおいて、急勾配、農地分散など中山間地域特有の地形条件や地域ニーズを勘案しまして、大区画にこだわらない基盤整備を進め、農地の利用集積に応じた促進費などとあわせまして農家負担の軽減を図っております。さらに、農地中間管理機構とも連携したきめ細かな整備などにも取り組むこととしておりまして、引き続き、地域のニーズ、実態を踏まえた圃場の整備を進めてまいります。
〇15番(岩渕誠君) 部長、そうはおっしゃいますけれども、実は一つ問題があるんです。中山間地に合ったような土地改良を進める上でも、実は今、何がネックになっているかというと、これは中間管理機構とどういう関係であるかということが問題になっているわけであります。はっきり言うと、国のほうは、土地改良をするのに、成績の上がらないこの中間管理機構にちゃんと土地を出してくださいと。そうだったらばやりましょうという発想になっているわけであります。そうすると、土地改良区に入っているところはいいかもしれないけれども、そこからちょっと外れたところとか、あるいは土地改良区の中でも、ちょっとやるのは大変だというところは、非常に無理をしないと工事ができないという状況でありまして、まさにそのことで今年度の県の予算の事業実施の部分での影響が出てきているわけであります。この部分をきちんと精査しないと、どんなに県が予算を持って中山間地の土地改良をやろうと思っても、結局、事業ができないという話になりますので、その辺をきちんとやらなければいけないと私は思っているんですが、いかがですか。
〇農林水産部長(小原敏文君) 国がことしから制度化しました農地耕作条件改善事業は、まさしく議員からお話がありましたとおり、農地中間管理事業と一体となった、それを前提とした事業でございます。あわせまして、国が平成24年度緊急経済対策事業において創設しました農業基盤整備促進事業といったようなものもございます。
ただ、いずれにせよ、やはり予算の枠が厳しいということがございまして、要望しても、その予算の内示がなかなか得られないということがございます。その集約を進める上では、必要な基盤整備がまずあって、その上での集積、集約ということが大切と思っておりますので、今の議員の御指摘も踏まえまして、実態に合ったきめ細かな圃場整備が可能となるよう、国に対しても働きかけてまいりたいと思っております。
〇15番(岩渕誠君) 続いて、米問題について伺います。
昨年の米価は過去最低の水準となりました。結局のところ、最終的な取引価格はどうなり、岩手県の米の生産額にどの程度影響を及ぼしたのかお示しいただきたいと思います。
また、ことしの米価水準についても大変心配しております。これまでのところ、県産米の販売状況はどうなっているでしょうか。また、国が進めている飼料用米への転換は、県内において今年度どうなっているのかお示しください。
〇農林水産部長(小原敏文君) 国が公表しております平成26年産米の27年5月までの平均相対取引価格でございますが、県産ひとめぼれが60キログラム当たり1万1、741円で、相対取引価格が公表されております18年産以降では最低の水準となっております。この価格で推移した場合、下落による影響額は約122億円の減少と見込まれております。
県産米の販売状況ですが、国の公表データによりますと、平成27年5月末の契約比率は83%、販売比率は49%で、契約比率で見ますと東北平均を上回っておりますが、販売比率は東北平均並みとなっております。
また、本県におきます平成27年産の飼料用米の作付面積でございますが、国の政策に呼応し、需給動向を見ながら、これまで以上に生産拡大を進めておりまして、国の調査によりますと、5月15日現在で、平成26年産の1.8倍の約3、600ヘクタールとなっております。
〇15番(岩渕誠君) 県産米の販売状況は岩手は83%だったと。全国に比べると大体5%ぐらい落ちています。この中身を見るともっと深刻でありまして、あきたこまち、いわてっこといういわゆる中食系の米は契約は100%なんです。ところが、ひとめぼれの契約は78%まで落ち込んでいる。やはりここ15年間ぐらいで岩手の米の環境は大きく変わったと思います。15年ほど前までは県南のひとめぼれが先に売れて、それで県北の米を売るのはどうしようかというのが県の最大の課題だった。ところが、ここに来て、県北の、あるいは県中央部の米から売れている。売れ残るのはひとめぼれだと。全く反対になっている。これをどうするかということが最大の米政策だと私は思っておりますが、そういう意味においては、オリジナル品種の岩手118号については大変期待されていると思います。
この岩手118号は、コシヒカリを超える食味で、具体的には、これまで販売上の弱点とされていた粘りややわらかさについて相当の優位性を持ったうまい米ということで、農家を回りますと、ぜひ栽培してみたいという声が続出しております。今年度から現地での実証試験に入りましたけれども、これまでの胆江地区のほかに一関市内でも試験栽培が始まったことについては感謝申し上げたいと思います。良質な種もみ確保と適地の選定も含めた栽培技術の確立などに全力で取り組んでいただきたいと思いますが、これまでの県や岩手の農業者に蓄積されたノウハウとか熱意をもってすれば、必ずや乗り越えられるものと御期待申し上げたいと思います。
一方で懸念しておりますのは販売戦略であります。県民性を反映してなのか、宣伝下手というのはあらゆるところで聞く話でありますけれども、この岩手118号でそういうことは許されない。必ずこの米で評価も価格もトップを目指してほしいのですが、現段階での販売戦略はどうなっているのかお示しください。また、市場投入初年度―これは再来年ということでありますけれども―の栽培面積目標と栽培農家の選定基準についても明らかにされたいと思います。
〇農林水産部長(小原敏文君) 平成29年からの市場供給を予定しております岩手118号は、本年2月に策定した生産販売戦略において、全国上位の相対取引価格を目指し、百貨店や高級料理店など高価格帯マーケットにターゲットを絞り込み、イメージを高めるネーミングやパッケージデザインの作成、話題性を高めるプロモーションの展開などに取り組むこととしております。
このため、知事を本部長とし、県内外の消費者や米卸業者、有識者等で構成しますいわてオリジナル品種ブランド化戦略実践本部を6月に設立したところであり、本年度内に、具体的なプロモーション方法を内容とするブランド化戦略を策定し、実践することとしております。
また、市場供給初年度であります平成29年度の栽培面積目標は100ヘクタールとし、栽培については、全国最高水準の品質と食味を確保できる農家に限定することとしており、詳細な選定基準を平成28年度中に設定し、生産者等に提示する予定としております。
〇15番(岩渕誠君) これは、相当圧倒的な差を持った差別化をしていかないとだめだと思います。県は、そういうときによく食味ランキングを持ち出すんですが、確かに特Aを取得した回数は、魚沼コシヒカリの21回に次いで多い20回でありますけれども、これで価格が上がったということはなかなか聞いたことがない。これは新しい物差しというものが必要だと私は思っております。
今お聞きしますと、初年度は100ヘクタールということであります。市場投入初年度は量的には限定的だということを逆手にとって、食味と栽培方法にこだわっていかないと、評価も価格もついてこないと考えます。例えば1袋ごとに食味計による検査を実施し、一定の基準をクリアしたものを出荷する、栽培管理は圃場1枚ごとに行うなどは必要になってくるものと思います。
また、現在、岩手の米販売はいわゆる6大卸に対する営業活動が中心ですけれども、さらに消費者に近いところや米の専門店、料理店などに対する働きかけを強めることは徹底してやっていただきたいと思います。
さらに、このPR戦略なんですが、これは最も問題であります。先日まで県内で放送されていたコマーシャルは、このコマーシャルそのもののクオリティというのは、元テレビマンの私からすると、大変高いと思ったんですが、残念ながら、メーンにうたわれているのが業務用米のものだったんです。なぜ業務用米をメーンに販売している品種を県内向けに放映しなければならないのか、全く理解に苦しみました。きっとこれは売れ残りを嫌ったという内部の事情があったのだと思いますが、こういう戦略の仕方では全くだめです。
かつて、首都圏向けには小ロット、例えば1合とか2合とか、最高でも1キロ袋での販売や、ペットボトルあるいは真空パックの容器での販売も提言したことがありますけれども、他産地がやり始めてから、相当遅くなってから岩手が追随するというのが続いております。
私は、こういった姿勢を変えて、新しい米販売の物差しをつくっていくということが必要になると思いますが、どのように取り組んでいくのでしょうか、お答えいただきたい。
〇農林水産部長(小原敏文君) いわてオリジナル品種ブランド化戦略実践本部会議におきまして、流通面では、販売店等が産地の企画や味をイメージできるようなネーミングや消費者等へのアピールポイントの明確化が重要である。また、消費面では、米にこだわる消費者の興味関心を引く手法や、岩手ならではの御飯の食べ方の提案がポイントなどの意見をいただいているところでございます。
今後も、米流通やマーケティングの専門家、米穀専門店、料理研究家などさまざまな方々からの意見をいただきながら、他産地との違いを明確にしたブランド化戦略とし、これらの方々のネットワークも活用しながら、百貨店、高級料理店などへの販路開拓を進めていきたいと考えてございます。
〇15番(岩渕誠君) もっと生産現場に近いところでの議論をしないと、流通の川下のところの議論をやっても、これはごまかせないと思います。やっぱりいいものをつくって、最高の技術で最高のものをやるというのが大前提ですから、これをきちんとしないと、いかに川下のことをやっても、私は難しいと思っています。
実は、そういうことをきちんとやっているところというのは県内にあるんです。例えば、県みずから推奨していますプレミアムブランド米というものを私の地元でやっています。これは、2ミリメートルでふるいをかけて、慣行栽培の4分の1で農薬使用する。GAPもきちんとやるということで、これはかなり技術的に厳しいものなんですけれども、食味と粒の大きさにこだわったということで、安全・安心にもこだわったということで、今や首都圏のレストラングループでの契約にこぎつけて、さらに契約拡大をしてほしいという要望が出ております。これは県も御存じだと思います。
それから、32歳の若き担い手がおりまして―これは米の食味コンテストというのを全国でやっています。岩手はやめましたけれども、これをやっているところに果敢に挑戦して、見事上位に入賞した米を自分のところのブランド―須藤家秘伝米というんですが、こういうオリジナルブランドとして商品開発して販路の拡大をしているわけであります。
今、成功しているこの二つの事例は、どちらも品種的にはひとめぼれなんです。このひとめぼれを新品種に置きかえるだけで非常に理想的な販売戦略につなげられると思うんですが、こうした成功事例の実践者と早くから連携することも大切だと思っているんですが、県の見解を伺います。
〇農林水産部長(小原敏文君) 最近の主食用米の新品種はいずれも食味などのレベルが高くなっておりまして、今後さらに激化が予想されます産地間競争の中で、ブランドをしっかりと確立することが重要であると考えております。したがいまして、先ほど議員から御紹介いただいたような、生産者みずからが生産にこだわり、積極的に情報を発信し、販路を拡大する取り組みは、岩手118号のブランド化を推進する上でも大いに参考となる取り組みと考えております。
今後、このような意欲ある生産者の活動などを大いに参考にさせていただき、岩手118号の知名度や評価向上の取り組みに役立てていきたいと考えております。
〇15番(岩渕誠君) いずれ、川下のことはいろんな知恵をかりなければいけないですけれども、生産現場はどういうものをつくって供給するのか、ここのきちんとしたルールづくりをやらないと、これは圧倒的な差につながりませんから、例えば食味計を同じものを買って、83とか、84とか、85とか、そういうレベルをクリアしないと、これは出してはだめだというぐらいのことをやらないと、成功することはないと私は思います。ぜひこだわっていただきたいと思います。
次に畜産、特にも牛を取り巻く環境についてお伺いしたいと思います。
先月の県内子牛市場も依然として高値で推移しておりました。県南市場では、去勢で平均70万円、雌でも平均60万円ということで、大変な高水準が続いております。繁殖農家はかつてない高取引に沸いておりますけれども、一方で、肥育農家の経営は日増しに深刻化しております。かなり危機的状況であります。
この高騰している要因の一つは、大きな要因は飼養頭数の減少であります。資料によれば、ここ4年間で5万2、500頭から4万6、900頭と5、600頭も減少しておりますし、農家数も6、790戸から5、230戸へと1、500戸以上減少しております。激減であります。そして、実はことしはさらにこれに拍車をかけるのではないかと私は懸念しております。
今、畜産農家から相談を受けている大半は畦畔草の扱いであります。御承知のとおり、福島第一原発事故の影響で草地の除染が進められてきましたが、最後に残ったのは畦畔草の汚染レベルの話であります。これまでは代替牧草が農家に届けられてきましたけれども、畦畔草の汚染レベルが低くなってきたことから、現在検査が進められています。検査をクリアすれば、畦畔草も牛に食べさせることができるようになるのですが、実はそのタイミングで牛をやめようという人たちが大変多くなっております。検査に合格すれば代替牧草の支給は終わるのですが、その分、自分で草を刈って、乾燥させて、集めて保管するという作業が出てくるのですが、これはもうできないということなのであります。
先月、県南広域振興局の皆さんと議論をしましたが、いや、それは4年前に戻るだけですから余り変わりないですと言うのですが、4年たったら随分変わりますよ。まず体力が変わりますからね。4年がもたらした歳月というのは、原発事故の影響が確実にあるということを理解していただきたい。
県内の繁殖農家の3分の2は1頭から4頭しか飼わない小規模農家で占められていますから、この規模になると、恐らく畦畔草で間に合っているところが多いのですけれども、このタイミングで飼養頭数の減少に拍車がかかるのではないかと私は心配しております。規制解除はいいことですし、これからも代替牧草を支給するというのは大変難しいのですが、頭数維持の観点から、何らかの対策は必要だと思います。意欲のある担い手が頭数をふやすための環境整備、それから、キャトルセンターの機能充実等が求められていると思いますけれども、県の見解をお示しください。
〇農林水産部長(小原敏文君) 本県では肉用牛繁殖経営体は小規模層が多くございます。しかしながら、傾向としては、飼養頭数が1頭から9頭の小規模層は減少してございます。一方で、20頭規模以上の階層では増加傾向にあります。こうしたことから、規模拡大を志向する意欲ある担い手に対しましては、引き続き、補助事業の導入によります畜舎、堆肥舎の整備や、優良繁殖雌牛の導入を集中的に支援しますとともに、小規模農家に対しましては、既存のキャトルセンターと公共牧場との一体的活用を促進することなどによりまして、個別経営体の経営維持と規模拡大を支援してまいります。
また、農業団体によります繁殖素牛及び肥育素牛の安定供給体制の整備に加えまして、新たなキャトルセンターの整備に当たりましては、分娩、哺育施設等の機能充実を図ることとしております。
〇15番(岩渕誠君) いずれ、仮にその飼養戸数が減ったとしても、頭数を維持していかないと、全体として、これはもう行き詰るところまで来ていますから、喫緊の課題としてしっかりやっていただきたいと思います。
今、最も深刻なのはやっぱり肥育農家なんです。素牛価格が上がっている、その割に販売価格は頭打ちだということなんです。非常に深刻でありまして、1頭出荷するごとに、僕は20万円をこの牛につけて売っているようなものだ、それぐらい赤字になっているんだと。本当にそういう人たちが少なくありません。
例えば、いわて生まれ・いわて育ちの牛づくり促進事業予算というものがありますけれども、これは繁殖と肥育が一緒になっていますが、肥育部分に重点配分するような思い切った予算措置をしなければだめだと私は思いますし、やはり頭数維持、できれば頭数をふやす方向の取り組みが必要であります。
そこで提案なんですけれども、震災前に県は積極的に水田放牧というのをやっておりました。これは、原発事故が起こったためにほぼ姿を消していたんですけれども、水田放牧は草地の除染が完了した、中山間地の農地の維持と飼養管理の負担の軽減に非常につながるということ、中山間地の農家にとって最大の重労働というのは草刈りなんですが、その分を牛がはんでくれるということを考えれば、もう一度、この水田放牧を政策の柱に持ってくるぐらいのことをしないと頭数維持できないと私は思いますが、いかがですか。
〇農林水産部長(小原敏文君) 水田を活用した放牧は、飼養管理の省力化や粗飼料確保の点から有効でありまして、本県では、震災前の平成22年度には、県南地域を中心に170ヘクタール、835頭まで増加してきておりました。しかしながら、放射性物質の影響によります牧草の利用自粛により放牧を断念せざるを得ない地域が多かったことから、平成25年度は、38ヘクタール、287頭まで減少したところであります。現在は、除染作業も完了し、牧草地の再利用が可能となっております。
こうしたことから、今年度は、国の新たな補助事業を活用し、水田等の放牧地に設置する簡易牧柵などの資材や、放牧する肉用繁殖雌牛の導入を支援しますとともに、県単独で周年放牧を活用した増頭を図る取り組みに対して支援するなど、水田放牧を今後積極的に推進してまいります。
〇15番(岩渕誠君) これに当たっては、1度やめたという農家もあるんですが、実は物が残っているんです。ソーラー電牧器のものが残っているんです。ところが、使われなくなったためにそのまま置いている人がいるんですが、中には、東京電力にきちんとその分を請求したいという人たちもいます。この分については、なかなか全農の協議会などで議論になったことがなくて、個別にやっているのが現状です。私も何件か東京電力の担当者と立ち合っていろいろ交渉したこともありますが、必ずしもその可能性がないわけではないですから、それはきちんと把握して、ぜひ、再開に向けた手はずを整えていただきたいと思います。
次に、防災対策を伺いますが、きょうは火山の問題と治水に絞って伺います。
まず、火山防災でありますけれども、先日、火山噴火予知連絡会で県内の活火山についての状況が明らかになりました。秋田駒ヶ岳、岩手山、栗駒山の三つの常時観測火山についてはおおむね平穏ということでありましたけれども、どうも、ここ最近、日本列島の火山が活発化しているということでありまして、この火山活動の変化をリアルタイムで観測する、把握する体制が求められているんですけれども、栗駒山―現地では須川岳と言いますが、ここに関しては非常に体制が脆弱であります。3月末に初めて関係3県で防災協議会が開催されましたが、常時観測火山という名前にふさわしい体制を検討したと伺っております。火口部への観測カメラの設置などを行うとお聞きしておりますけれども、今後のスケジュールなど、栗駒山―須川岳の観測体制と防災体制の構築に向けた考え方をお示しください。
〇総務部長(風早正毅君) 栗駒山の観測体制につきましては、昨年の御嶽山の噴火災害を踏まえた全国的な体制強化の一環として、気象庁では、栗駒山に、既存の四つの観測施設に加え、新たに火口付近に熱映像監視カメラ、火口監視カメラ、傾斜計、広帯域地震計の四つの観測施設を本年度中に設置する予定であり、現在、設置場所などについて関係機関との調整を行っていると聞いております。
今回の観測施設は、火口付近の熱噴気の状態変化、火山ガスや熱水の流動等による山体の変化を常時監視するものであり、これまでにも増して精緻な火山活動の分析につながるものと期待しております。
防災体制につきましては、本県では、地域防災計画に火山災害対策編を設け、その中で、国、県、市町村、関係機関が連携した防災体制を構築してきたところでありますが、栗駒山は秋田、宮城両県にもまたがる活火山であることから、本年3月、本県が主体となり、秋田、宮城両県と共同で栗駒山火山防災協議会を設置し、3県や関係市町村、関係機関が連携して警戒避難体制を構築していくことを確認いたしました。
今後は、昨日国会で成立しました活動火山対策特別措置法の一部改正や、改正法で策定することが予定されています国の基本指針を踏まえ、噴火シナリオやハザードマップの作成等に向けた具体的な協議を進めてまいります。
〇15番(岩渕誠君) よろしくお願いしたいと思います。
次に、治水についてお伺いいたします。
私の住む一関地方は水害の常襲地帯ということで、今も一番の防災上の課題となっております。幾度となくこの議会でも取り上げてまいりましたけれども、一関遊水地の整備が進むにつれて、北上川本流に注ぐ中小河川の対策というのが非常に急務になっていると思います。遊水地の下流でいえば金流川、上流部でいえば鈴沢川、矢の尻川がそれに当たりますけれども、これについては、県当局の取り組みにより前進しているものと受けとめております。
金流川については、合流部の小沼地区と川ノ口地内というところの家屋移転を含めた対策が示され、鈴沢川、矢の尻川については、強制排水施設の整備に向けた調査が今年度も継続されるとお聞きしております。いずれも住民の要望に沿う形なのですが、国との交渉が残っております。この進展が気になるところでありますが、現在の進捗状況についてお聞きいたします。
〇県土整備部長(蓮見有敏君) 県が管理している金流川や、平泉町が管理している鈴沢川、矢の尻川においては、国が整備を進めている一関遊水地や北上川狭隘地区における河川改修事業の進捗を踏まえて、北上川の水位上昇や内水による家屋等への影響について、昨年度から調査を実施しているところです。
金流川につきましては、昨年度までに測量と対策工法等の検討を行い、本年の3月と5月に地域の方々へ説明を行ったところであり、輪中堤や家屋の移転も含めた対策案については、おおむね御理解をいただいております。今年度は、事業の実施に必要な両磐圏域河川整備計画の策定に着手することとしております。
鈴沢川と矢の尻川につきましては、昨年度までに内水対策の調査を実施したところであり、今年度は詳細設計を進め、国や平泉町と調整しながら、必要な対策に取り組んでまいります。
〇15番(岩渕誠君) これは、下流部、上流部が進まないと遊水地の本体工事も進められないと思いますので、ぜひスピード感を持って取り組んでいただきたいと思います。
次に、教育にかかわる問題について2点お聞きいたします。
最初に、被災した子供たちの心と体の健康についてですが、沿岸の学校を訪れますと、先生方からは、まず第1に体力が低下しているという指摘が相次いでおります。全国体力・運動能力、運動習慣等調査というのがあるのだそうでありますが、これは、震災前と震災後の体力合計点の平均値は、岩手県内においては残念ながら低下傾向にあります。特に中学校2年生女子の宮古教育事務所管内の平均は、震災前の平成21年度には全国平均を上回っていたものが、昨年は全国平均にまで低下するという結果になっております。何とか運動環境を整えてあげたいという思いがある一方で、生活再建できる環境にはない被災地を思えば非常に複雑な思いに駆られます。県教育委員会としても、さまざまな基金を活用するなどしてこれまでも諸対策を講じてきたところと思いますけれども、体力向上の取り組み等についてお示しいただきたいと思います。
〇教育長(高橋嘉行君) 沿岸部の小中学校におきましては、災害復旧の途上にある学校や応急仮設住宅団地の設置等によりましてグラウンドの使用に制約を受けている学校が多くあることなどから、児童生徒の体力が被災前の水準に回復していない状況にございます。
このため、運動環境に制約のある学校に対して、限られた状況の中でもできる運動プログラムの提供や指導主事による学校訪問指導などを行い、各学校が効果的な取り組みを推進することができるよう指導、支援してきておりまして、また、いわての学び希望基金を活用した大会参加への支援や、日常の活動における内陸部等へのバス移動に対しての支援にも取り組んできたところでございます。本年度からは、新たに、本県児童生徒の運動習慣の定着のため、学校、家庭、地域の連携のもとに、1日に60分は主体的に体を動かす希望郷いわて元気・体力アップ60運動に取り組んでおります。体力は、子供たちが生きる力を育む上で基礎的かつ極めて大切な資質でございますし、特に沿岸部の学校におきましては、制約のある環境にあること等を踏まえまして、今後におきましても児童生徒の体力の維持向上の取り組みを進めていきたいと考えております。
〇15番(岩渕誠君) 体の健康をしっかりと守っていただきたいと思いますが、心配なのは心の状態でもあります。今も一人一人の子供と多くの教員の皆さんやスクールカウンセラーの方々が、そして地域とか家庭の皆さんが必死に子供を支えていることと思います。敬意を表したいと思います。他県で行われているのは、首都圏からそのときに来てカウンセラーがカウンセリングをするという方式なのだそうでありますが、岩手は地元で生活をしながら子供を見ていただいているということなので、子供と同じ雰囲気に触れながら活動しているということが子供たちの心の奥底にあるものの理解につながっていると感じております。
データを見ると、問題行動というのは他県に比べればないんですが、ただ、やっぱり相談件数がふえているということで、スクールカウンセラーとかスクールソーシャルワーカーというのは非常に大事だと思っているんですが、実は、この事業費の来年度以降の先行きが不透明だとお聞きしております。これらの事業は、通常3分の1が国庫補助なんですが、震災特別措置として10分の10の国庫補助ということであって、その継続が求められていると思います。やっぱり予算があって、人を配置してきっちり子供の心を守るということが必要だと思いますけれども、来年度以降、この予算、事業の継続に向けて県としてどのような働きかけを行っているのかお示しいただきたいと思います。
〇教育長(高橋嘉行君) ただいま議員御案内のとおり、巡回型カウンセラーは、本県独自の方式といたしまして、県外から応援に駆けつけていただいているカウンセラー自身が被災地に居住しながら児童生徒、保護者、教職員の心のサポートを行っており、その精力的な活動は高い評価をいただいております。
本事業を含めて、幼児、児童生徒の心のサポートに対する予算につきましては、その全額を国庫負担としている現在の枠組みと必要な予算の確保を昨年度来さまざまな機会を捉えて要望してきております。先月、文部科学省を訪問いたしまして来年度予算の要望をした際には、担当課長から、大規模津波災害という特殊性に鑑み、児童生徒へのサポートは長期にわたり必要と考えており、来年度以降も継続して支援できるよう、その予算確保に努める旨の前向きな発言をいただいたところでございます。今後におきましても、本県の実情をしっかりと伝えながら、あわせて要望を継続するということで関係予算の確保に努めていきたいと考えております。
〇15番(岩渕誠君) 私は、先ほど復興予算にかかわる地方一部負担の問題も取り上げたんですが、詳細を見てみると、やはり今のような事業とかが今後どうなるんだというのが全くわからない部分が多いわけであります。特にもソフト部門といいますか、そういった事業をどうするのか。しかもこれは5年、10年というのは必要なわけでありますけれども、ここについて、やっぱり見通しがきくような予算措置がある程度示されないと本当の復興にはつながらないと思いますので、これは関係当局挙げて予算確保に当たっていただきたいと思います。
教育問題の最後に、高校再編について伺います。
今後の県立高校に関する地域検討会議等が各地で開催されております。私も地元の会議に出席いたしましたけれども、地域産業と学科のかかわりについてとか人材育成に関する議論、それから、小規模校の存続に対する要望というのが非常に多かった。高校に対する地域の期待が改めて示された格好だと思います。
県教育委員会として、この地域検討会議の意見を受けて、どのような課題を論点として今後議論していくつもりなのかお示しいただきたいと思います。とりわけ参加者から懸念が強いのは、小規模校のあり方であります。取りまとめられた高校教育の基本的方向では、これまでの方針を改めて、小規模校に対する一定の評価というのはなされていますけれども、この会議等の意見を受けて、改めて現段階での見解をお示しいただきたいと思います。
〇教育長(高橋嘉行君) 5月20日の胆江ブロックでの今後の県立高校に関する地域検討会議や意見交換会を皮切りに、県内9ブロックで地域の皆様方から意見を伺ったところでございます。主な意見といたしましては、小規模校の存続や、それに関連して各高校の魅力づくりが必要といった意見や、1学級定員への意見等が出されたところでございます。
今後の議論に当たりましては、小規模校における教育の質の保証に向けた地域との連携、協力のあり方に加え、各ブロックにおける学校、学科の配置等を主な論点として議論を進めていく考えでございます。
また、本年4月に改訂した今後の高等学校教育の基本的方向では、各高校の学校規模については、1学年の学級数を原則的には4から6学級程度を基本としつつ、将来見込まれる生徒数に加え、地理的な諸条件や人口減少社会への対応、地域の実情等を考慮し、教育の機会の保障の観点からも慎重に検討することといたしております。
第1回目の地域検討会議、意見交換会におきましては、小規模校の存続について多くの意見をいただきましたが、一方で、小規模校にはさまざまな課題もあることから、課題解決に向けた方策についても各地域での意見交換をさらに進め、小規模校のあり方を引き続き議論していきたいと考えております。
〇15番(岩渕誠君) 小規模校のよさについては再認識し、その課題をぜひクリアするような方向で議論を進めていただきたいと思います。
次に、県産品の海外展開についてお尋ねします。
今月、食をテーマにイタリア・ミラノで開かれている万国博覧会に県は出展をいたすとお聞きしております。私も出展すべしと申し上げておりましたので、関係者の努力によって実現したことにつきましては心から敬意を表したいと思います。
食材として、県内各地の酒蔵から日本酒、それから県産ひとめぼれ、県産高級和牛が出されると聞いていますし、食卓を彩る秀衡塗や浄法寺塗、南部鉄器、それからリンドウも会場を彩ると聞いております。それから、日本館には岩手の木材が使われるとお聞きしておりますし、我が一関からは祝い餅つき振る舞い隊が餅つきパフォーマンスでおもてなしを行うことになっております。大変期待を寄せておりますが、大切なのは、こうしたイベントからどれほど海外展開できるかということであります。もちろんたった1度のイベントに成果を求めるのは酷ではありますけれども、きっかけはつくっていただきたいと思います。
このほか、先月は台湾で、それから、初めて雲南省での南アジア博にも県は出展をしたと伺っております。こうした海外での県産品の販売実績と今後の戦略についてお聞かせいただきたいと思います。
〇企画理事(齋藤淳夫君君) まず、平成26年度の県産品の販売実績でございます。
東アジア及びアメリカ合衆国の7カ国で11事業のフェア、商談会を開きまして、約2、400万円の販売、成約実績を上げております。こうしたフェア、商談会を通じまして、特に東アジアでは、現地消費者や販売事業者等の県産品に対する評価も大変高まってきております。輸出面におきましても、農林水産物や日本酒、南部鉄器などが着実な伸びを見せております。また、御案内のありました雲南省における南アジア博覧会におきましても大変な引き合いがありまして、出展者は大きな手応えをつかんだと聞いております。このような指標、動向を踏まえますと、東アジアにつきましては、人口の増加と経済成長により購買力の高まる有望な市場と捉えております。引き続き、重点地域として関係機関と連携した取り組みを進めてまいります。
また、7月24日から27日まで本県が出展するミラノ国際博覧会は、全世界に本県の魅力やすぐれた県産品の情報発信をする絶好の機会と認識しております。県といたしましては、販路開拓の前提となる本県への認知と理解を高めるとともに、日本酒などのすぐれた品質や特徴的な商品力を持つ代表的な県産品をPRしまして、県産品全体への関心につなげ、欧州市場への事業者の販路開拓を支援していく考えであり、今後とも積極的に県産品の海外展開を進めてまいります。
〇15番(岩渕誠君) 最後に、世界遺産について取り上げます。
釜石市の橋野高炉跡を含む明治日本の産業革命遺産がいよいよ世界遺産に登録される見込みであります。いろいろこの間、韓国との論争もありましたけれども、やはりその価値を多くの人に知ってもらうということは大事なわけでありますけれども、この橋野高炉跡についての歴史的背景とその価値について、県民理解が十分であるでしょうかと私は心配しております。この橋野高炉跡が世界遺産になるということを踏まえて、理解をどう県として広めていくおつもりなのかお示しいただきたいと思います。
それから、その副次的な産物としては、やはり観光面への期待があると思います。21世紀の最大の産業は観光産業だと言われております。世界遺産効果はスポット的だという指摘があるとはいえ、やはり地域固有の宝として、これを軸にした物語を再構築しなければならないと思っております。平泉は、平泉世界遺産の日に平和の祈りが開催されて、この世界遺産を活用した新しい取り組みが始まったなと思っているんですが、今後の観光振興にとって、平泉とか橋野高炉跡など世界遺産の価値はやっぱり岩手県にとって最上級のものだと思いますけれども、改めて県内の世界遺産を観光政策の中でどう位置づけていくのかお尋ねいたします。
〇教育長(高橋嘉行君) 橋野鉄鉱山・高炉跡の理解の促進につきましては、関係自治体で構成している世界遺産登録推進協議会において、パンフレットやホームページの作成などによりまして、橋野高炉跡を含む明治日本の産業革命遺産全体の価値や位置づけについて普及啓発に取り組んでいるところでございます。
また、県教育委員会では、小学校社会科副読本の中で橋野高炉跡に関する内容を取り入れているほか、県立博物館においても、来年3月に大島高任に関するテーマ展の開催を予定するなど、当該遺跡の理解を深める取り組みを進めることといたしております。
日本の近代製鉄の発祥地である橋野高炉跡の持つ普遍的な価値を今後なお一層高めていくためには、まずもって県民の皆様の理解と関心の高まりが重要と考えておりますので、世界遺産登録という大きな節目を絶好の機会といたしまして、釜石市とも十分に連携しながら、適切な保存管理とあわせ、その理解醸成などに向けた取り組みを強化してまいりたいと考えております。
世界遺産登録が決定した後におきましては、資産価値の情報発信を行うことを目的とした登録記念シンポジウムの開催や、学校教育における出前授業を世界遺産平泉とも連動させることなども検討いたしまして、具体的な活動に取り組んでいきたいと考えております。
〇商工労働観光部長(菅原和弘君) 本県が世界に誇る普遍的な価値である世界遺産を有することは、国内外からの集客力を得るとともに、これを核として県内各地の魅力ある観光資源を組み合わせて売り込むことによって、何度も本県を訪れるファンの拡大につながることから、世界遺産は、本県の観光政策上、極めて重要な観光資源であると認識しております。
さらに、このたび橋野鉄鉱山・高炉跡の世界遺産への登録が実現することになれば、極めて重要な観光資源である世界遺産を二つも有する、全国的にも数少ない県となることから、この優位性を生かした政策を展開し、誘客の拡大を図ることが肝要と考えております。
このため、世界遺産平泉では、魅力ある町並みの整備やおもてなしの向上に向けた取り組みを進めるとともに、平泉を起点とし、沿岸を初め県内全域へ観光客を回遊させる旅行商品造成の促進に取り組んできたところです。また、沿岸被災地で初となる世界遺産登録を目指す橋野鉄鉱山・高炉跡では、歴史、文化学習と震災学習とを組み合わせた教育旅行などの需要が飛躍的に高まることが期待されますことから、釜石市を初め沿岸地域と連携し、受け入れ態勢の整備に取り組んでおります。
今後も、平泉の世界遺産登録5周年記念や橋野鉄鉱山・高炉跡の世界遺産登録に向けた取り組みとも連動し、市町村、関係機関と連携し、地域の魅力向上や受け入れ態勢の充実、情報発信の強化を進めてまいります。
また、海外からの誘客の拡大も視野に、観光庁から認定を受けた……
〇議長(千葉伝君) 執行部に申し上げます。申し合わせの時間を超過いたしております。答弁は簡潔明瞭に行うようお願いします。
〇商工労働観光部長(菅原和弘君) (続) 平泉を拠点の一つとする東北広域の観光周遊ルートの構築に向けた取り組みなどにより、東北各県とも連携して世界遺産を中心とした広域周遊の促進を図ってまいります。
〇議長(千葉伝君) 以上をもって岩渕誠君の一般質問を終わります。
日程第2 議案第26号広内地区海岸災害復旧ほか工事の請負契約の締結に関し議決を求めることについてから日程第7 報告第12号岩手県信用保証協会が行う保証債務に係る求償権の放棄等の承認に関する報告についてまで
〇議長(千葉伝君) 次に、日程第2、議案第26号から日程第7、報告第12号までを一括議題といたします。
提出者の説明を求めます。風早総務部長。
〔総務部長風早正毅君登壇〕
〇総務部長(風早正毅君) ただいま議題とされました各案件について御説明申し上げます。
議案第26号から議案第30号までの5件は、災害復旧工事等に係る請負契約の締結に関し議決を求めようとするものであります。
報告第12号は、岩手県信用保証協会が行う保証債務に係る求償権の放棄等の承認について報告するものであります。
以上でありますので、よろしく御審議の上、原案に御賛成くださいますようお願い申し上げます。
日程第8 議案第31号人事委員会の委員の選任に関し同意を求めることについて
〇議長(千葉伝君) 次に、日程第8、議案第31号人事委員会の委員の選任に関し同意を求めることについてを議題といたします。
提出者の説明を求めます。千葉副知事。
〔副知事千葉茂樹君登壇〕
〇副知事(千葉茂樹君) ただいま議題とされました人事案件について御説明いたします。
議案第31号は、人事委員会の委員であります伊藤方子氏の任期が本日7月2日で満了となりますので、その後任として、田中忍氏を新たに選任するため議会の同意を求めようとするものであります。
人事委員会の委員は、地方公務員法第9条の2第2項の規定により、人格が高潔で、地方自治の本旨及び民主的で能率的な事務の処理に理解があり、かつ、人事行政に関し識見を有する者から選任することとされており、田中忍氏は、民間企業における人事労務に関する経験を有しておられるほか、金融機関の監査役を務めるなど、さまざまな経験を通じて人事行政に関してすぐれた識見を有する方と存じております。
よろしく御審議の上、原案に御同意くださいますようよろしくお願いいたします。
〇議長(千葉伝君) お諮りいたします。ただいま議題となっております案件は、人事案件でありますので、会議規則第34条第3項の規定及び先例により、議事の順序を省略し、直ちに採決いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇議長(千葉伝君) 御異議なしと認めます。よって、これより、議案第31号人事委員会の委員の選任に関し同意を求めることについてを採決いたします。
ただいま議題となっております議案第31号人事委員会の委員の選任に関し同意を求めることについては、これに同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
〇議長(千葉伝君) 起立全員であります。よって、議案第31号人事委員会の委員の選任に関し同意を求めることについては、これに同意することに決定いたしました。
〇議長(千葉伝君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
本日はこれをもって散会いたします。
午後6時22分 散 会

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