平成25年12月定例会 第13回岩手県議会定例会 会議録

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〇14番(後藤完君) 希望・みらいフォーラムの後藤完でございます。
 本定例会におきまして一般質問の機会を与えていただきましたこと、議員の皆様に感謝を申し上げるものであります。そして、さきの局地的な集中豪雨により被害を受けられました地域の皆様にお見舞いを申し上げるとともに、早い時期の復旧、復興を願うものであります。
 さて、先般、財務省の発表によりますと、国債と借入金、政府短期証券を合計した国の借金が、本年9月末で1、011兆円と発表されたところでありますが、国民1人当たりにしますと、約794万円になるというものであります。今、財政再建が政府の最重要課題となっているところであり、2020年の東京オリンピック招致が決定となったことにより、そのインフラ整備に多大な経費が投入されることになります。今後の東日本大震災の復興財源、あるいは技術者、建設資材の確保や地方自治体への交付金等にマイナスの影響が出るのではないかと憂慮しているところでもあります。
 それでは、さきの質問の皆さんと重複する項目もございますけれども、通告順に質問させていただきます。
 まず、農業振興についてお尋ねします。
 優良農地の確保と有効活用についてお伺いします。
 さきの農林水産省の平成8年の地方分権としての機関委任事務を廃止する方向性で示されました中間報告の中では、農地保全のための対応の課題が3点あったところでございます。
 第1に、機関委任事務を前提に成り立っている農地制度、農業振興地域の整備に関する法律を、優良農地を確保する観点からどのように改革すべきかということであります。
 第2には、外資による大規模な複合的商業施設の立地計画が明らかとなり、農地を確保する観点から、どのように対応すべきかということであります。
 第3点目は、財政赤字の削減を図る財政構造改革法による財政再建が求められている中での景気対策として、規制緩和によって民間需要を引き出すために、住宅建設促進のための農地転用の規制緩和が政治的に強く求められており、その対応をどうすべきかというところにあったものであります。まさに新しい農業基本法のあり方に関しての検討に取り組むことが求められたものでありました。
 農業者が居住し、農地を対象に農業という産業を展開している地域には多くの非農業者が居住し、農業以外の産業の雇用の場も立地している、そのトータルの存在を農村として捉えたときに、農村の振興とはどのようなものとして考えるのか、計画的な土地利用に誘導することや、非農業者を含めた地域住民の定住を図るために必要な施設の計画的な整備をどのようにすべきかという課題が提起されてきたところであります。
 このことから、優良な農地を確保するために農業の振興は重要な課題としたところでありますが、農業が所得の上がらない産業となってきている現状では、農地転用もさることながら、農地の耕作放棄地化によって農地の減少が続いていくだろうという考え方から、農業の収益性の確保とともに農村における職と所得を確保することが前提であり、これを通じて農村部における定住を促進していくことが、農業の活性化と、結果として優良農地を確保することとなるものと考えられていたところであります。その意味で、農業政策だけでなくあらゆる政策を総動員して農村の振興を図ることが重要であります。農地制度もそのような観点からの見直しが必要ではないかと問われていたところでもあります。
 地方分権の推進と調和した農地制度のあり方や、大規模な複合的商業施設の立地計画への対応、景気対策としての農地転用緩和の要請への対応が望まれるところであり、農業振興と農地制度のあり方に関して検討していくべきものと考えるものであります。
 そして、平成9年に策定されました21世紀を切りひらく緊急経済対策に盛り込まれました農地転用の円滑化としては、農業振興地域等で原則転用不許可となっている農地であっても、集落に接続するなどの要件を備えるもののほか、農村活性化土地利用構想等を活用する場合には転用を許可するとされております。農地転用をしたい者が円滑に転用できるよう、農地転用や農用地区域の除外について、透明化、簡素化、迅速化の措置を講ずるとともに、これをマニュアル化し、円滑な農地転用を図るとされており、農地転用の許可権限につきましては、4ヘクタール以下のものは都道府県知事に早急に移管するものであったと聞いております。
 また、農地転用の円滑化のための迅速化、簡素化、透明化は、制度そのものを改正するというよりも運用上の改善を行う問題であるので、農地転用に必要な手続をわかりやすく説明するマニュアルで現場に周知すること、農用地区域から除外する際に義務づけられていた市町村と都道府県との事前協議を廃止すること、申請を受けてからの処理期間を従来の8週間以内から6週間以内に短縮することとされたものでした。
 本県においも、食料生産基地として、農地保全の観点から優良農地の確保は当然のこととは思いますが、さきの東日本大震災津波による被災農地や、放射性物質で汚染された農地につきまして除塩や除染対策を実施され、復旧に取り組んでいるところでもあります。しかしながら、汚染されました農用地においては、復旧は必ずしも万全とはいまだ言えず、農家経営を圧迫しており、早急な対応が望まれるところでもあります。また、内陸部においても、放射性セシウムの汚染が著しい地域では、当分利用できない農地が多々見受けられるところであります。面積の大小にかかわらず一時転用の対象とならないのか、他産業との有効活用に配慮が必要ではないかと思うものであります。
 折しも、全国知事会、全国市長会並びに全国町村会では、農業、農村の活性化のために優良農地をどのように守り、有効に活用していくのかなどの判断は地方自治体の責任において行うべきという立場から、農地転用に関する事務、権限を初めとする農地制度について、地方への権限移譲、地方への関与の見直し等を求めております。
 また、地方分権改革の推進を目的として、地方分権改革の推進に関する施策についての調査及び審議に資するため、平成25年4月5日に開催されました地方分権有識者会議では農地・農村部会が設置され、これまでに農地転用に係る事務、権限の移譲関係、農地転用等に係る規制緩和関係について検討が行われております。
 今般、平成25年3月31日付で農林水産省農村振興局長より、各地方農政局長、各都道府県知事あてに、支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについてという通知が来ているところであります。このことは、改正農地法等の処理基準、運用通知、事務処理要領の定めによるほか、その適切かつ円滑な運用について特段の配慮をされたいという趣旨のものであります。この通知の内容はどのように捉えておられますか。優良農地を確保する上で、この通知への対応についてどのようにお考えなのか御見解をいただきたいと思います。
 縦割り行政という言葉は余り申し上げたくはないのでありますけれども、国においても各省庁の横断的な対応、県においても各部局の迅速な情報の共有と共通の対応が必要と思われますが、今後の優良農地の確保と農村地域の活性化を図るため、農地の有効活用について県としての基本的な考えをお尋ねいたします。
 次に、県産米の今後の対応についてお伺いします。
 食糧管理法から食糧法への制度の変遷を見て久しいところでありますが、日本は米についての関税化の特例措置を選択したところであります。実施期間中は関税相当量を設定しないこと、輸入割当制度と国家貿易制度を維持することなどとしておりまして、このような米に関する関税化の特例措置を初めとするウルグアイ・ラウンド農業の合意は、米のミニマムアクセス輸入や麦の関税化を実施するものであったことから、食糧管理法が水際において輸入調整を実施するものでありました。そして、生産、流通を強力に規制する制度であったこと、すなわち稲作農家に政府への米の売り渡し義務をかけ、集荷、販売を行う業者に厳格な参入規制をかけるなどを内容とするものであったものであります。この後、生産者の創意工夫が発揮されないこと、消費者ニーズに対応し切れないこと、流通ルートが消費者の購買行動、流通実態の変化に対応し切れないこと等の問題が認識されていたところであります。
 このため、将来、関税化を選択する場合に阻害要因となるおそれのある食糧管理法について、これを廃止し、新たに主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律という食糧法が制定されたところでもあります。この食糧法は、それまで運用として行っておりました生産調整を法律上の措置として位置づけ、生産者の出荷義務を前提に米を集荷、販売する業者を登録制の対象とすることにより、生産地から消費地まで計画的な流通を確保するための計画流通制度を創設することと、備蓄とミニマムアクセス制度の運営に限定することを内容としていたものでありました。
 この間、食料生産基地としての本県においては、いろいろな対策を通し、取り組んできたところではありますが、米の消費拡大が進まない状況下にあって、本来のブランドの確立のため何が必要なのか、改めて検証する必要があると思います。そして、先般、国内においては、優良国産米に輸入米や加工米をブレンドし、平然と販売している業者もありました。消費者の心を逆なでする行為が発覚しているところであります。食味ランキング特Aを獲得している本県産米も、このようなブラックボックスによって被害に遭っている可能性もあります。関係団体との調整を今後どのように進め、体制を整備されていかれるのかお伺いします。
 あわせて、米の生産調整の廃止等見直しについてであります。
 政府は、産業競争力会議の農業分科会において、生産調整や経営所得安定対策について見直す方向で検討を始めたことは御案内のとおりであります。米の生産調整の見直しは米価の下落を招き、農家の収入減に直結しかねないものであります。政府は農業の競争力強化というものを全面に打ち出してはおりますが、農業への支援策を含め、農業強化策の全体像はいまだに示されていないところであります。最終的には米の生産性が上がり、輸出ができる競争力を持つと言われているようでありますけれども、安い外国産米と競争できる要素は一つもないところであります。規模拡大ができない農家が増加するだけで、今、農業者の不安を大きく駆り立てている状況でもあります。当然のことながら、保護から競争に転換した場合、将来、米が関税撤廃の対象となることは必然的であり、農業者は価格保証のないまま生産を強いられることになり、大変な時代を迎えることになります。
 そして、今般の米の生産調整の廃止の検討は、政府・与党におかれては、環太平洋パートナーシップ協定交渉が妥結して安い農産物が多く輸入される事態に備え、国内農業の中核である米農家の競争力を高めるのが狙いとされているところでありますが、今回の方針転換はTPP絡みで抜き打ち的に出されたものであり、農業者の生産環境に十分配慮したものではなくて、農家の自立を促すと言えば聞こえはいいものの、小規模農家の切り捨てにほかならないものであります。
 経営所得安定対策の見直しの際に、地域政策と位置づける新交付金―日本型直接支払いを創設し、小規模農家の農地維持を支えるというものでありますけれども、農林水産省は地方自治体にも費用を負担させるという考え方であります。たとえ交付税での措置とするとしながらも、政策の見えない財政負担に自治体は警戒感を強めているところでもあります。
 1970年から実施されました減反政策が廃止されますと、約50年ぶりの農政の大転換でもあります。小規模農家が農業から撤退することになると思われますが、今後の救済措置等、十分な対応が望まれます。どのような対応と指導をお考えか、方向性をお聞きいたします。
 米は日本農業の基幹作物であります。生産性の向上を図るための農業振興策の再整備がさらに必要であり、今後の需給バランスを重視していかなければならないと思います。本県では、米の生産調整の見直しが実施されることとなった場合、この見直しについてどのように捉え、今後どのように対応されていかれるのか、基本的な方針をお伺いします。
 次に、集落営農の推進についてお伺いします。
 政権交代によって政策が二転三転するのはいつも農政部門であり、安定した政策展開に期待しているものでありますが、農業は投下資本の回収にはそれ相当の時間がかかるものであります。政策が安定しないと投資が控えられ、農業構造の再編にブレーキがかかるものでもあります。将来を担う青年層のマインドにも悪影響を及ぼし、せっかくの政策効果を帳消しにしてしまうことになります。その点では、戸別所得補償制度の継続が望まれるものでありますが、それ以上に求められますのは現在の米価水準の維持と思われます。持ち越し在庫の影響もあり、米の所得補償交付金が交付されても米価は低迷を続けてきた経過にあります。もちろん、米価変動補填交付金がありましたので、標準的な生産費は補償されてまいりましたけれども、米価の下落は財政支出の増大となってはね返ってくるものであります。
 戸別所得補償は補助金の地代化をもたらすという懸念はあります。政策の狙いどおり大規模農家ほど受け取る交付金の総額は大きくなり、資本蓄積の促進を通じて構造再編にプラスに向いているという見方もあります。従前の政権が残した遺産が集落営農であり、急増しておりますのは御案内のとおりであります。作業受託から始めて徐々に農地貸借への移行を図り、人・農地プランの目的は農業を含めた地域の将来像を描くことにあり、じっくり話し合える農村形成に努めることが重要とされてきたところであります。
 そこでお伺いいたしますが、本県における集落営農の法人化の目標とその取り組み状況をお示しいただきたいと思います。また、本県農業の発展のためには今後とも集落営農の取り組みは欠かせないと考えますが、米の生産調整の見直しの動きがある中で、集落営農組織をどのように育成しようとしておられるのか、あわせて伺います。
 次に、環太平洋パートナーシップ協定への基本的な考え方についてお聞きいたします。
 政府が交渉参加を表明いたしましたTPPは、原則関税撤廃や大幅な規制緩和など極端な自由化を掲げ、年内合意を目指して交渉を重ねているところではありますが、新規交渉参加国はこれまでの合意事項を一方的に飲まされるなど、不利な条件を突きつけられることはまず間違いのない見通しでもあります。しかも、政府・与党は、昨年12月の衆議院議員総選挙の公約でTPP交渉参加の判断基準として6項目を挙げたところであります。聖域なき関税撤廃を前提にする限り交渉参加に反対する、国民皆保険制度を守る、自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れられない、食の安全・安心の基準を守る、国の主権を損なうようなISD条項は合意しない、政府調達・金融サービス等は我が国の特性を踏まえるとしていたところであります。ところが、政権に復帰するや否や、聖域なき関税撤廃はしないだけが公約のように、6項目を守れるとの担保は一切ないままに、3月に交渉参加を表明したところであります。
 また、7月の参議院議員選挙においては、関税撤廃の対象外とする聖域を、米、麦、牛肉、乳製品、砂糖を初めとした重要5品目に実質的に限定したところでもあります。しかも、交渉に参加し、重要5品目を守るのも難しいとわかると、今度は5品目を関税区分の細目586品に分け、5品目を守るを、586品目のうち関税撤廃により影響が大きいものを守るにすりかえているところであります。しかも、政府・与党は、守秘義務を結んでいるからと言って、交渉の内容を国民に知らせようとしていないのであります。まさに農産物に関する公約も守れない危険性が高まっている状況でもあります。
 政府は、TPP政府対策本部を設置し、首席交渉官と政府・与党との調整をするとはしておりますけれども、農産物など重要品目の例外扱いが確保される保証はなく、地域経済や医療、食の安全など国民の暮らしにも深刻な影響が懸念されるところであります。そして、このような品目の関税化をなくすとすれば、輸入が増大することは御案内のとおりであります。関税維持を目指す品目は、輸入状況や農林水産業者への影響などに考慮しながら慎重に対応すべきではないでしょうか。聖域なき関税撤廃は絶対認めてはいけないところであり、全ての品目を交渉のテーブルにのせないと参加を認めないとするTPP交渉への参加はリスクが大き過ぎると考えられますが、本協定による本県への影響額の数値1、438億円を含めて、知事はどのように捉えておられるのか、基本的な見解をお伺いします。
 次に、震災復興予算の執行についてお伺いします。
 復興庁の集計によりますと、2012年度予算の東日本大震災復旧・復興関係経費約9兆7、000億円のうち、35%に当たる約3兆4、000億円が未執行となったと言われております。復興計画をめぐる国と各自治体との調整や事業への地域住民の合意形成に時間がかかっていることに加え、建設資材や作業員の労務賃金が高騰し、入札不調が多発していることから、事業が進んでいないことが要因とされております。また、発災直後の混乱した状況の中で、復興費の不足だけは絶対に避けようとした配慮があり、多目に見積もった点もあったともされております。特にも防潮堤のかさ上げの完成がおくれている状況にあります。
 本県においては、壊滅的な被害を受けた防潮堤について総延長66.6キロメートルを整備すると予定されておりますが、まちづくり計画や関係機関との調整に時間を要し、3月末時点で整備が終了したのは27%にとどまっている状況と聞いております。あわせて、防潮堤の事業予定地には、相続が未処理のままの土地や共有地が多く存在しているため取得に時間を要し、さらなる事業のおくれが懸念されているところでもあります。
 本県においても、復旧、復興に係る予算の繰越明許や、さらに1年延長して執行する手続を行うことにより1、939億円を繰り越しておりますけれども、このうち公共工事に係る入札不調の状況をどのように認識し、資材単価や労務費の実勢単価との乖離にどのように対応されていかれるのか、また、繰り越した予算の執行をどのように行おうとしているのかお伺いします。
 次に、社会福祉施設整備に係る入札不調への対応についてお伺いします。
 平成24年8月に子ども・子育て関連3法が成立し、質の高い幼児期の学校教育、保育の総合的な提供、保育の質の向上と量の確保、地域の子供、子育て支援の充実を目指すこととされたところであり、引き続き、今後も待機児童の解消や、子供、子育て支援の充実のため施設整備を行う必要があります。
 また、こうした通常の施設整備に加え、東日本大震災津波で被災いたしました社会福祉施設の復旧が進められているところでありますが、作業員、技術者の不足や人件費の上昇、建築資材の高騰等により入札不調が生じております。整備の遅延や設計の見直しによる経費のかかり増しが生じるなど、計画どおりに進めることが難しい状況にあると聞いております。このような建築費の影響による社会福祉施設整備の入札不調の現在の状況についてお示しいただきたいと思います。
 また、近年の建築費高騰に見合った補助基準とするなど、今後の入札不調を防止するとともに、新たな負担が生じないように配慮すべきと考えますが、国への要請を含め、県の対応をお伺いいたします。
 次に、生活保護費の減額に対する対策についてお伺いします。
 政府は、生活保護のうち、食費など日常生活にかかる費用を賄う生活扶助の基準額を2013年度から3年間かけ約670億円減額するとしていたところであります。2013年8月1日から基準額が改正され、新たな額での支給が始まったところであり、2013年度の国の予算で1.5%減額となっております。下げ幅は過去最大とされ、受給者の反発もあり、行政不服審査法に基づき審査請求を申し立てるとされており、集団訴訟を起こす考えと聞いております。
 生活保護費の受給者は、2013年8月現在、全国で約215万人、159万世帯とされております。減額は受給世帯の96%に及ぶとされております。特にも子育て中などの家族の多い世帯に影響があるとされ、経済的に苦しい家庭に給食費や学用品代を補助する就学援助制度が2011年度で全国の子供約156万人が対象であり、2014年度以降、対象から外れる子供が多く出るおそれがあるとされております。
 ちなみに本県においては、2013年8月時点で生活保護受給者は1万4、437人とされておりますが、県内において2013年8月に生活扶助基準額が減額となった者は何名ぐらいとなるのか、額にしてどの程度の減額となったのか、可能な限りのお答えを願います。
 あわせて、生活扶助の基準額は、就学援助などの他の公的制度を適用する際の目安ともなることから、厚生労働省は生活保護を受けていない低所得者一般に影響が及ばないよう対策を講ずると聞いております。どのような国の手法がとられるのか、現時点でわかる範囲での内容でお伺いいたします。
 最後に、ある方がこう言われました。歴史というものは国の将来を指導するものである。歴史は再び繰り返す、歴史を知ればすなわちその人の精神も確かになる。まさに歴史から学べであります。
 今般の国政選挙においても政策や理念に差がないにもかかわらず野党合意ができなかったこと、指導者たちのふがいなさによる国民の政治不信、メディアが生き残りをかけ、現権力を勝利させるために懸命な努力をしたこと等々が結果としてあらわれたものと感じているところであります。このような状況下においては、まずは大震災の復旧、復興、集中豪雨被害の早期復旧に全力で取り組むことが、地域を地域で守ることにつながるものであります。
 知事におかれましては、さらに県政推進に御尽力をいただきますよう御要望を申し上げ、私の質問を終わります。ありがとうございます。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 後藤完議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、農地の有効活用の基本的な考え方についてでありますが、農地は、農業生産にとってなくてはならない資源であるとともに、国土の保全や水源の涵養、良好な景観の形成など多面的な機能を有する資源でありますことから、その機能が十分に発揮されるよう適切に管理し、有効に活用することが重要であります。
 このため、県では、岩手県農業振興地域整備基本方針に基づいて、市町村や農業委員会等と連携しながら、担い手への農地利用集積や耕作放棄地の再生利用を推進するとともに、生産性の高い農業を展開するための生産基盤の整備を進めるなど、優良農地の確保と保全に取り組んでおります。
 一方、公益性の高い施設や被災地での再生可能エネルギー発電施設など、市町村が農村地域の活性化や東日本大震災津波からの復興に必要とする施設を整備しようとする場合には、各部署が連携しながら、農地法や東日本大震災復興特別区域法に基づく事業計画の作成や国との調整などを支援しております。
 今後とも、市町村と連携して、地域の需要に応じた土地資源の活用にも配慮しながら、農業生産の基盤である優良農地の確保に取り組み、農業、農村の活性化を図っていく考えであります。
 次に、米の生産調整が廃止される場合の対応についてでありますが、国は、農業の競争力の強化を図ることとして、米政策について、5年後をめどに生産数量目標の配分をやめ、生産者みずからの経営判断、販売戦略に基づく需要に応じた生産を推進することとしておりますが、現時点では、新たな仕組みや施策展開に伴う支援策などについて具体的には示されておりません。
 経営環境の大きな変化が見込まれるにもかかわらず十分な説明がないことから、作目転換等の選択肢が少なく経営の転換が難しい小規模農家も、規模拡大や生産機械、施設への投資に意欲的な担い手も、米価下落や販売競争激化への懸念など、将来を見通せず不安を抱いている状況と認識しております。
 このため、県としては、詳細な情報の速やかな収集に努めるとともに、農業者や農業団体と連携しながら、生産性向上や販売力強化等の検討を急ぐほか、国に対しては、生産コスト低減技術の開発や経営安定対策の充実など、農業者が展望を持って生産活動に取り組むことができる支援策を講じるように求めていく考えであります。
 次に、環太平洋パートナーシップ協定に対する基本的な考え方についてでありますが、TPP協定は、本県の基幹産業である農林水産業のみならず、投資、医療、労働、政府調達など、国民生活や経済活動の幅広い分野に大きな影響を及ぼすことが懸念されています。
 交渉内容の詳細については公表されていないものの、TPP協定により本県農林水産物が受ける影響額を一定の条件のもとに試算しますと、生産減少額は1、015億円と県内の農林水産物の生産額の約3割に相当しており、これを岩手県産業連関表によって他の産業に与える影響額まで推計しますと1、438億円となっています。
 また、農林水産業は地域に密着した産業でありますことから、地域経済のみならず地域社会にも大きな影響を及ぼすおそれがあると考えております。
 このため、交渉を行う政府は、拙速に走ることなく、十分な情報開示と説明を行い、国民的議論を尽くした上で慎重に判断し、地方の経済活動や国民生活に影響が生じると見込まれる場合には、交渉からの撤退も含め、断固たる姿勢で臨んでもらいたいと考えております。
 県としては、政府に対し、これまでも機会あるごとに本県の考えを要請してまいりましたが、今後とも、あらゆる機会を捉えて要請をしてまいります。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔農林水産部長東大野潤一君登壇〕
〇農林水産部長(東大野潤一君) まず、営農継続型太陽光発電施設等に係る国からの通知についてでありますが、この通知は、近年、営農活動を行っている農地の上部空間を活用し、太陽光発電などを行う施設、いわゆる営農継続型太陽光発電施設等の農地転用許可制度上の取り扱いを関係機関、団体に周知したものです。
 通知の内容は、該当する施設の支柱部分は一時転用許可の対象となりますが、転用期間は3年以内であること、支柱が簡易な構造で容易に撤去できること、施設の設置及び撤去に必要な資力及び信用があることなどの許可条件を満たす必要があるほか、毎年、農作物の生産状況を報告し、地域の平均的な単収に比べ2割以上低下した場合や著しい品質低下を招いた場合は、発電施設を撤去することになるなどの許可条件を付すこととされております。
 県では、この通知に該当する施設の設置に係る許可条件や運用等につきまして、各市町村の農業委員会に周知するとともに、引き続き、該当する施設の農地転用許可制度上の取り扱いが適切に行われるよう指導しており、今後とも、優良農地が適正かつ有効に利用されるよう取り組んでまいります。
 次に、県産米の今後の対応についてでありますが、これまで県は、全農岩手県本部、県農協中央会等の関係機関、団体と、いわて純情米需要拡大推進協議会を組織し、高品質、良食味米の産地づくりや県内外で知名度の向上と販売促進のための取り組みを展開しております。
 このような取り組みもあり、本県の平成24年産米は、県南ひとめぼれが食味ランキングで18回目の特Aを獲得し、また、一等米比率も全国1位となったほか、系統販売における米卸との契約率も100%に達するなど、品質面、販売面とも高い評価を得ているものと認識しております。
 今後も、関係機関、団体と連携し、安全性や品質にすぐれる県産米の特徴を県内外へ情報発信するなど、県産米のブランド確立に努めるとともに、米卸業者等関係者との信頼関係を一層強化しながら、安定的な取引の確保につなげていく考えです。
 次に、経営所得安定対策の見直しへの対応と指導についてでありますが、本県の農業、農村は、多くの農家が中山間地域で生産活動に携わり、経営規模1ヘクタール未満の小規模農家が約7割を占め、また、農業が地域社会そのものを支えているという実態を考えますと、小規模農家も参画した地域農業、コミュニティの維持発展により、農業、農村の活性化を図っていくことが重要であると考えております。
 このため、県といたしましては、経営所得安定対策の見直しや日本型直接支払制度につきまして、引き続き、国に速やかな情報提供を求め、国の制度見直しに対応した本県での関連施策の展開の検討と具体化を急ぐこととしたいと考えておりますが、今後とも、農業、農村が将来にわたり持続的に発展できるよう、地域農業マスタープランを基本に据えながら、意欲ある農業者への農地集積による経営体質の強化や小規模農家も含めた産地づくりなどに取り組んでいく考えです。
 次に、集落営農の推進についてでありますが、県では、いわて県民計画第2期アクションプランで法人化された集落営農組織数につきまして、計画基準年である平成22年の60組織から、今年度末までに72組織とする目標を設定し、法人化に取り組む組織の発展段階に応じたリーダーの育成や経営ビジョンの作成、実践の支援などに取り組んでおり、本年10月末までに87組織が法人化されております。
 また、国が見直すこととしております経営安定対策や米政策の新たな仕組みの詳細や具体的な支援策などは示されておりませんが、農業従事者の減少、高齢化が進む中、小規模農家も参画した集落営農組織を地域農業の担い手として育成していくことが重要と考えております。
 集落営農組織は、地域農業マスタープランにおいて中心経営体としての役割を果たしていくことが期待されておりますことから、県といたしましては、プランに基づいて展開される集落内の農地の利用調整や作物ごとの団地化による効率的な生産の促進、園芸品目の導入、6次産業化などの実践を通じて、集落営農組織を育成していきたいと考えております。
   〔県土整備部長佐藤悟君登壇〕
〇県土整備部長(佐藤悟君) 震災復興予算の執行についてでありますが、県営建設工事の入札不調の割合は、各年度の10月末で、平成23年度5%、24年度10%、25年度19%と増加してきております。
 入札不調の原因といたしましては、復旧工事に伴う工事量の増加による労働者や技術者の不足、建設資材調達への不安など、さまざまな理由によるものと認識しております。
 設計労務単価につきましては、公共工事労務費調査の結果を踏まえて本年4月に改定したところであり、昨年度と比較し23.3%の上昇となっております。
 建設資材の価格につきましては、特に沿岸部の生コンクリートや石材などが震災前と比較して上昇しておりますが、毎月、実勢価格の動向を把握し、随時、設計単価に反映しているところであります。
 また、契約後の価格変動に対しましては、工事請負契約締結後における単価適用年月の変更や急激な価格上昇に伴う単価改定、いわゆるインフレ条項の適用、遠隔地からの資材調達に要する輸送費の計上などの対応を行っているところであり、今後とも、国や関係機関と連携し、復旧、復興工事が円滑に進むよう必要な対策を講じていきます。
 繰り越した予算の執行につきましては、被災地の一日も早い復興を実現するため、発注ロットの拡大や入札参加資格要件の緩和など、引き続き入札不調対策に取り組んでいくほか、沿岸各地域に設置した施工確保対策連絡調整会議等を通じて、関係機関との情報共有や各種の調整を行うことなどにより、予算執行の妨げとなっている課題解決に取り組み、職員一丸となって迅速な予算の執行に努めてまいります。
   〔保健福祉部長根子忠美君登壇〕
〇保健福祉部長(根子忠美君) まず、社会福祉施設整備に係る入札不調への対応についてでありますが、平成25年度の社会福祉施設整備に係る入札は、10月末現在48件あり、このうち介護サービス及び老人福祉施設整備で11件、保育所施設整備で3件の計14件が入札不調となっております。
 この14件のうち、介護サービス施設整備1件は対応を調整中でありますが、これを除く13件については、再入札または随意契約に移行し、既に契約済みとなっております。
 入札不調の要因といたしましては、議員御指摘のとおり、作業員などの不足や建設資材の高騰による実勢工事費の増加によるものとうかがっております。このため、施設整備を発注する社会福祉法人等に対して、入札動向や整備費等に関する情報提供を行っているほか、国に対して、発注者の経費負担を軽減するための補助基準額の見直しについて、要望を実施しております。
 東日本大震災津波による復旧、復興事業の本格化に伴い建設工事等が増加していることから、入札不調による整備のおくれや経費負担が増加することのないよう、今後とも、補助基準額の見直しについて国へ要望していきたいと考えております。
 次に、生活保護費の減額に対する対策についてでありますが、生活扶助費が減額となった者の人数及びその額については、本県においては、生活扶助基準の改定前後で比較すると、生活扶助費が支給されている1万3、049人のうち減額のあった者は約80%に当たる1万455人であり、その総額は約2、900万円となっております。
 生活保護を受けていない低所得者への影響についての国の対応状況については、国では、できる限り他の制度への影響が及ばないようにするとの対応方針を示しておりますが、本年度における具体的な国の対応としては、生活保護基準額をもとに決定される要保護者に対する就学援助については、本年度当初に対象となっている世帯は、引き続き国庫補助対象とするとしているほか、生活保護受給世帯は自己負担が無料となっている未熟児養育医療では、保護廃止となった場合であっても、引き続き無料とする取り扱いが可能となっており、生活扶助基準の改定による影響が生じない取り扱いがなされております。
 また、個人住民税の非課税限度額や非課税限度額を参照している国民年金保険料の申請免除などの制度については、本年度は影響がなく、平成26年度以降の税制改正において対応するとしております。
〇14番(後藤完君) それでは、2点ほど再質問させていただきます。
 まず、米の生産調整の見直しに当たりましては、市場原理主義に立っての議論はとても危険であるということがあります。すなわち、規制やメリット措置を廃止すれば、採算の合わないのは小規模農家でありまして、米づくりから撤退していくだろうと考えているところであります。余った農地を大規模農家や企業参入による自由な市場競争での米の生産が実現することになるだろうと考えているところであります。
 その結果、米のコスト削減や競争力が強化されるという単純なシナリオは、農業の活性化をもたらすのではなくて、農業を破壊していくおそれがあるということであります。
 また、価格下落傾向にあるときに減反を廃止するということは、転作が果たしていたセーフティネット効果も失うことを意味することと思います。
 そして、特にも今回の見直し案では、減反廃止を目指して、初めに補助金削減ありきとの報道が先行されております。単なる安上がり農政を行うだけであり、農業の衰退、破壊を招くだけになってしまうものと考えております。
 今、農業者は、揺れる米政策に対して憤りと不安を感じているところでありまして、政策が見えていない状況の中で、次年度の作付計画や種子確保に非常に苦慮しているところであります。
 このような状況のもとで、県、市町村の配分をどのように考えて、営農計画等に対する農業者への理解と協力をどのように求めていかれるのか、改めてお伺いいたします。
 次に、社会福祉施設整備に係る対応でありますが、非常に不落物件が発生しているところであります。単年度事業の執行に当たって、年度内の実施が困難な場合は、次年度、改めて予算措置や認定が必要とされてきております。このときに、今後、資材や労務単価の高騰、消費税の増税により設計単価が増嵩することは御案内のとおりと思われますが、補助基準あるいは負担割合が前年度と同様の取り扱いとなりますと、事業者負担が大幅に増大する可能性が考えられます。民間、行政ともに自己負担の増加を余儀なくされるものであります。
 このことは、福祉関係のみならず、復旧、復興事業について、グループ補助金なども含め、それぞれのセクションにおいても該当してくると思われますが、これら事業を進め、復興を加速化していく上でも、今後、各種経費の増嵩に対応した予算措置をさらに国に強く要望すべきと考えますが、県としての統一した見解をお伺いいたしたい。
〇農林水産部長(東大野潤一君) 米の生産数量目標の市町村への配分についてでございますが、国が、平成26年産米の生産数量目標につきまして、これまでと同様に、需要実績や在庫状況をもとに算出して、11月29日に各都道府県に配分いたしました。
 県におきましても、関係機関、団体の意見も聞きながら、これまでと同様に、米の品質や実需者との結びつきなどに配慮した方式で算定し、各市町村に配分したいと考えております。
 また、今回の米政策の見直しにつきましては、国に速やかな情報提供を求め、可能な限り早期に、農業者、市町村や農業団体に丁寧に説明できるように取り組んでまいります。
〇理事(佐々木和延君) 次年度に再認定される事業費の増嵩、いわゆるかかり増し経費に伴う負担増対策についてでありますが、社会福祉施設整備のほか、グループ補助金などによる商工業施設整備においても、公共事業と同様に、建設資材や労務単価の高騰などにより事業費の増嵩が生じているものと認識しております。
 このため、各省庁が所管する事業の進捗状況を踏まえ、補助制度の柔軟な運用や技術的な対応策を協議し、被災地で必要な施設を確実に整備できるよう、例えば事業実施に必要な補助基準の見直しなど、現場の実情を反映した財源の確保と継続した予算措置について国に強く要望してまいります。
 特に震災当初には想定し得なかった状況については、被災地特有の県、市町村を通じた特別な財政需要と受けとめてございまして、震災復興特別交付税の算定基準に当てはまると考えておりますので、復興庁及び総務省には丁寧に説明し、強力に地方財政措置を国に要望してまいりたいと思っております。
〇議長(千葉伝君) 次に、工藤勝博君。
   〔30番工藤勝博君登壇〕(拍手)

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