平成25年2月定例会 第9回岩手県議会定例会会議録

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〇21番(小野共君) 民主党の小野共でございます。
 本日の一般質問の機会を与えていただきました先輩議員、同僚議員の皆様に心から感謝いたします。
 この3月で震災から3年目に入ります。年明けのマスコミ報道によりますと、被災地の住民が特に行政に望む施策として期待するのは、雇用対策、仕事の確保、住宅支援ということであります。雇用と仕事に関する限り、直近の沿岸被災地の有効求人倍率は1.34と1倍を超えております。求人数が求職者数を上回っている状況で、県内の有効求人倍率が1倍を超えたのは20年ぶりということであります。
 しかし、沿岸被災地におきましては、この数字が示すはずの活気のようなものをほとんど感じることはできません。震災前、県内で3万4、000人ほどで推移していた求職者の数は、震災後の被災地の壊滅的とも言える人口減少にもかかわらず、依然として3万人ほどいらっしゃいます。一部の業界の求人数が増加しただけで、雇用需給のミスマッチにより求人数の増加が被災地の失業の解消につながっていないというのが現状です。
 住民が望む優先順位の高い住宅支援に関しましては、まず支援の前に、根本的に土地の造成がおくれており、公営住宅も含め住宅の再建がうまく進んでおりません。
 被災地の住宅支援がおくれている理由は大きく三つあり、一つは、そもそも被災市町村において土地利用計画を確定させるための地権者交渉に時間がかかっていること、二つ目は、建設業者の不足、三つ目が、住民の住宅建設または取得資金の不足です。
 一つ目の土地利用計画のおくれ、二つ目の建設業者等の不足は、時間をかければいずれ解決します。しかし、三つ目の住宅建設資金の不足は、時間をかければ解決できるという筋の問題ではありません。時間がたち、地権者の合意を得て土地利用計画が確定し、建設業者の繁忙が一段落すれば、遅かれ早かれ災害公営住宅は完成します。しかし、個人の住宅建設資金の不足は、時間がたっても解決できるというものではなく、時間がたてばたつほど、迷っている被災者は、持ち家による再建を諦め、公営住宅や賃貸住宅を選び、結果として被災者全体の持ち家比率が下がることになります。
 現行の制度では、行政による住宅支援は、生活再建支援法による加算金、満額で200万円、県の被災者住宅再建支援事業の100万円の合計300万円です。
 本年1月末現在の我が県の生活再建支援金の加算金の支給率は24.9%であり、これは福島県、宮城県の被災3県の中で最も低い数字であります。周知のとおり、この数字は、罹災し、生活再建支援金の基礎支援金をもらった方のうち、どのくらいが住宅再建のための加算支援金をもらったかを示す数字であります。つまり、罹災した方々のうち、どのくらいが住宅の再建をしたかを示す数字であります。岩手県では、基礎支援金をもらった方々の2割程度しか自力での住宅の再建ができていないという状況です。
 福島県も宮城県も、基礎支援金をもらった方々のうち5割ほどの方々が加算支援金をもらっており、数字が示すとおり、岩手被災地での個人住宅の着工はおくれております。
 住宅再建支援金について仮設住宅に住んでいらっしゃる方と話をすると、お金を持っている方に支援するのではなく、お金のない方へ支援してほしいと言われることが多々あります。例えば、1、000万円の家を買うことができる人は、行政からの支援金300万円のほかに自己資金を700万円持っているか、あるいは700万円を銀行から借りることができる方々です。家を買うことができる人は、このように十分な自己資金を持っているか、銀行のローンの審査に通るだけの抵当資産を持っている方々です。しかし、自己資金も抵当資産もない方は、300万円の行政の支援だけでは家は取得できず、融資も受けられません。本来このような十分な自己資金のない方々にこそ、より手厚い補助をすべきではないのかというのがその主張です。
 確かに、さきの津波により家屋に被害が出たことは、基本的には行政の責任ではありません。しかし、その復旧には、行政がそれ相応の義務を負うべきです。そして、その復旧において、行政が住民に負う義務の度合いは常に一律であるべきではなく、その被害の状況によって当然にふえるべきものであると考えるのです。
 質問いたします。国の平成24年度補正予算において、住宅再建支援策として1、047億円が震災復興特別交付税として予算化されるようであります。県の2月補正予算案においても計上されるようでありますが、今回の措置も含めて、県として、今後どのように被災者の持ち家再建を図っていくお考えかお伺いいたします。また、県の住宅復興の基本方針においては、持ち家での再建を9、000戸から9、500戸としているところでありますが、現状で本当にこの目標を達成できる見込みなのかお伺いいたします。
 2点目、新政権は、金融緩和と大規模な財政出動により国内の景気と財政を立て直すという方針です。通常国会に提案された今回の補正予算は13兆円を超え、5兆円を超える建設国債を発行し、新年度でも5兆円を超える公共事業を予算化する方針です。今の建設業界には、何兆円もの工事を短期間でさばく体力はないと発言している建設業界の関係者もいるようです。
 しかし、財政の立て直しと景気の回復が同時にできるなら、これは当然歓迎すべきです。ただ、被災県である我が県の率直な心配は、今後の全国的な公共事業の実施により、建設業者と関連業者、資材がさらに不足し、我が県の復旧、復興がおくれることになりはしないかということであります。これに関し、県の率直な考えと対応があれば聞かせてください。
 3点目、公共工事における簡易宿泊施設の不足についてお伺いいたします。復旧工事が本格化しております。沿岸被災地では、地元の宿泊施設の収容能力を上回る数の作業員が建設工事に従事し、作業員宿舎が不足しております。今後、復興JV制度が活用され、さらに被災地以外からの作業員の数が増加し、宿泊施設不足がより深刻化することが容易に想像できます。建設会社の中には自前で宿泊施設を建設する業者もありますが、資金力の弱い中堅、中小業者が同じことをするのはほぼ不可能です。特に、我が県沿岸におきましては、震災直後、仮設住宅の用地さえも見つけることが難しかった状況です。宿泊施設の不足の問題は、建設業者の資金の問題だけでなく、そもそも宿泊施設の用地があるのかという問題も含んでおります。
 現行の公共工事では、作業員がホテルなど宿泊施設に泊まった場合、発注者側がその実費を負担します。しかし、周知のとおり、沿岸被災地のホテルはいつも、どこもいっぱいで、泊まることは難しい状況です。作業員の宿舎の不足が復旧、復興工事のスピードをおくらせる大きな要因となってきております。現状に対し計画どおりに工事を進める発注者として、県は、この問題に対しどのように対処するのか聞かせてください。
 4点目、知事にお伺いいたします。来年度、平成25年度は、県の復興計画上、基盤復興期間の最終年度です。平成23年、24年、そして新年度の25年の3年間は、多重防災型のまちづくり、三陸復興道路の整備、災害公営住宅等の整備、被災地医療確保対策、水産業経営基盤の復旧、中小企業の再生等、復興の土台となる事業を完成させ、第2期の本格復興期間につながる期間であるというのが現在の期間の位置づけです。
 震災から3年目に入ろうとしており、さまざまな立場の方が、岩手被災地の復興のスピードと手続に関し、さまざまな評価をしております。この2年間の県の復旧、復興事業の総括と復興のスピードについて、知事はどのような認識であるのか聞かせてください。
 次に、産業再生特区の課題についてお伺いいたします。
 我が県におきましては、昨年2月に保健・医療・福祉特区が創設され、続いて翌月3月には、産業再生推進計画に基づき産業再生特区が創設されました。この産業再生特区で県が指定した産業は、水産、農業、セメント、鉄鋼、電子機械製造、医薬品、情報など、多種にわたり広く設定されており、対象となる事業者は、県から指定を受けることで税制の優遇や規制の特例などの措置が受けられます。
 この制度のうち新規立地促進税制は、沿岸12市町村に立地すると法人税が実質5年間免除される制度であります。特別償却または税額控除は、平成27年度末までにグループ補助金などで新規に取得した設備について特別償却または税額の控除を受けられる制度で、さらに、これらの指定を受けた場合、事業税、不動産取得税、固定資産税などの減免が受けられるというかなり有利な優遇制度です。
 この産業再生特区から1年がたとうとしております。これまでに特区の事業者指定は、平成25年2月20日現在で、沿岸全市町村において指定され、内陸も含めると延べ138事業者が指定を受けていると聞いており、一定の成果はあらわれていると考えます。しかしながら、沿岸自治体、事業者、税理士などの話を総合すると、一部の市町村においては、県民への周知不足、この課題が見えてきます。制度の優遇措置を知らないまま決算を終え、平成24年度の優遇措置を受けられなかった事業者もいると伺っております。
 質問いたします。県は、制度の県民への周知をどのように行ったのでしょうか、そして、今後どのように対応していくのでしょうか。
 2点目、関連して、新規立地促進税制の効果についてお聞きいたします。周知のとおり、これは特区の優遇税制の一つで、沿岸12市町村に新規に立地された事業者に対し、法人税が5年間免除されるという特区制度です。しかし、そもそも新規に立地した法人の多くは、事業開始当初は設備投資等、経費がかさみ赤字になりがちです。必然的に法人税の納税額が少なく、法人税の減免は立地の促進にはつながりにくいという意見が当初からありました。加えて、この優遇税制を受けるためには、被災地に新規で工場を立地する必要があります。つまり通常の工場進出では優遇制度の対象にはなりません。
 この税制を利用して新規に立地した企業は、現在、大槌の1社だけです。この税制の効果とこの制度が立地事業者の推進に結びつかない理由をどう分析しているのか聞かせてください。
 次に、山田線の復旧の見通しについてお聞きいたします。
 一昨年、さきの震災でJR山田線は宮古-釜石間55.4キロのうち21.7キロが浸水し、13駅中4駅が破壊され、鉄路の1割が破壊されました。震災以後、関係自治体とJR、国とで4回の復興調整会議と随時の公共交通確保会議を開催しておりますが、再建のめどは立っておりません。
 昨年6月のJR山田線公共交通確保会議でJRがBRTによる仮の復旧案を提案しましたが、翌月7月の2回目の会議において、関係4首長がBRT案を拒否しました。これに対しJR側は、今後BRTによる仮復旧をJR側から再び提案することはないとし、現時点ではBRTによる山田線復旧の可能性もなくなっております。
 そもそもJR側からの山田線のBRT案は、釜石-宮古間55.4キロのうち、バス専用道を鵜住居-大槌間などの10キロとし、残りの45キロは一般道路をバスが走るというものです。宮古市内では、ほとんどが一般道を走ることになります。
 震災前は、山田線宮古-釜石間は列車が1日10往復し、その所要時間は最短で1時間でした。震災以降、バスは宮古-釜石間を1日に11往復しておりますが、所要時間は最短でも2時間程度かかっております。一般道を走るバスの所要時間は鉄路の2倍ほどとなっております。
 運賃については、JR側が提案したBRT案では鉄道と同程度に設定されておりますが、BRTが釜石-宮古間の8割を一般道で走るため、今申し上げたように、特に朝夕のラッシュ時には、鉄路の大きなメリットである速達性はもとより、定時性もほとんど期待できないということが容易に想像できます。JR側はBRTの提案理由を定時性や安全性を考慮したとしておりますが、説得力があるようには思えません。
 しかし、山田線の1日1キロ当たりの利用者数は、震災前377人で、JR東日本在来線67線中65番目と、山田線の利用者は少ないほうから3番目というのが現実です。鉄路復旧をJRに対しより説得力を持つものにするために、JR線の利活用方法を同時に提案していかなくてはいけないのは明らかです。
 釜石から宮古までの山田線関係自治体は、駅舎など基本的に山田線の鉄路復旧を前提にまちづくりを進めております。JR大船渡線は、この3月2日にBRTにより運行を始める予定です。三鉄の南リアス線と北リアス線は、来年4月の全線開通が予定されております。八戸線も昨年3月、既に全線運行しております。全く運行のめどが立っていないのは、県内の縦貫路線では山田線だけです。
 知事にお伺いいたします。現時点でJR山田線の復旧はあくまでもBRTではなく鉄路でいくお考えかお聞きいたします。重ねてお聞きいたします。現時点での復旧の見込みと課題を聞かせてください。
 2点目、岩手沿岸には、交通網として国道45号、JR、南北リアス線があり、これに三陸沿岸道路の高規格道路が完成すれば、岩手沿岸に3本の太い道ができることになります。それぞれの道の役割と重要性を県がどのように認識しているのかということは、これから国を巻き込みながらJRと交渉する上で重要なポイントであるのは言うまでもありません。これらの点をどう考えているのか、知事の見解を聞かせてください。
 次に、応援職員を含めた被災市町村職員に対する心のケアの取り組みについてお伺いします。
 先月1月3日の夜、大槌町役場に派遣されていた兵庫県宝塚市の男性職員が、宮古市の仮設住宅で自殺しているのが発見されました。昨年7月には、陸前高田市に派遣された盛岡市の職員が自殺しております。そして、震災直後の3月には、大槌町の40代の職員が自殺しております。
 宝塚市からの派遣職員は、昨年10月1日から来月3月末までの半年の予定で派遣されていたもので、大槌町では都市整備課に勤務しており、仕事は区画整理に伴う住民との用地交渉という、まさに最前線での仕事をしておりました。
 震災直後の6月定例会の一般質問で、私は、沿岸自治体の現場の職員は頑張っていると発言しました。被災地では、家族を失った職員が、同じく家族を失った住民のサービスに当たっていると発言しました。罹災した住民のストレスと緊張は、被災地において、実際に罹災しなかった全ての住民に波及し、そのストレスと緊張は2年たった今でも些細なことで爆発します。泣きやすく、怒りやすく、感情の起伏が激しくなってきております。自分で自分の感情のバランスをコントロールできなくなっております。被災地は、2年たった今でも独特の緊張感に包まれております。
 大槌町では、今年度、平成24年度は最大で101人の応援職員を要請しておりました。しかし、実際に町に派遣されたのは81人です。現在、大槌町では210人体制で役場を運営しておりますが、この210人で不足の人員分をカバーしなくてはいけないのが現状です。当然、職員一人一人の負担がふえております。
 岩手被災自治体からは366人の職員の派遣を要望しておりますが、321人しか確保できておりません。どう考えても被災地の職員の数が足りません。これが間接的に職員の自殺という結果につながり、仕事のミスにつながります。
 質問いたします。平成25年度、新年度は大槌町では85人の応援を全国に要請しておりますが、例えば宝塚市は、被災地への職員の派遣を当面見合わせる方針です。被災地での派遣職員を含めた職員の待遇が変わらない限り、再び派遣職員及び職員の不幸が起こりかねないと派遣元の自治体が考えるのは当然です。
 大槌町では、職員に緊急ストレス調査をし、派遣職員の家族の旅費負担をし、心の健康に関する実施計画を策定する方針です。全国の自治体から安心して職員を派遣してもらうため、職員の心のケアに関する早急な対応が必要です。派遣職員を含め、被災市町村の職員の心の健康を維持するため、県としてこれからどのような取り組みをしていくのか聞かせてください。
 次に、海洋エネルギー開発の実験海域についてお伺いいたします。
 昨年5月に開催された政府の総合海洋政策本部の会議の中で、本部長である当時の野田総理は、四方を海に囲まれた海洋国家である我が国にとって、海洋資源の開発利用を進めていくことは大きな課題であると述べました。さらに、洋上風力発電を初めとした海洋再生可能エネルギー利用促進に向け今後の取り組みを一層強化していくと発言し、今後の政府の方針として、海洋再生可能エネルギーの導入を飛躍的にふやす戦略を打ち出しております。
 裏づけするように、環境省では、2030年までに洋上風力、地熱、バイオマス、波力、潮力による再生可能エネルギーの総発電量を2010年度の発電量の6倍まで拡大し、特に風力発電については、陸上、海上を合わせた全電源に占める発電量の割合を10%まで押し上げるという目標を昨年掲げております。
 そもそも我が国の再生可能エネルギーの開発は、太陽光発電や陸上風力発電、バイオマスなど、陸上施設による発電が中心でありました。しかし、さきの大震災で、地球温暖化対策の切り札とされてきた原子力への不安が高まり、エネルギー関係者の注目は、新たに海洋エネルギーに集まっております。島国である我が国は、陸上の発電施設整備に物理的な限界があり、むしろ領海と排他的経済水域の面積が世界第6位である我が国海洋域に、大きなエネルギー開発の可能性があると述べている政府関係者もおります。
 そもそも海洋エネルギーを電気に変換する方式は多様に存在し、まだ確立していない新しい技術が多数使われることになります。それらの技術を確立していくためには、水槽試験等の予備的な試験を経た後に、実海域に発電装置を設置した本格的な試験を実施しなければならないことになります。
 今後、政府は、平成24年度中にこの実証試験場の公募条件を示し、平成25年度、新年度に全国から1カ所以上、この実証海域を選定する方針です。我が県では、沿岸三陸沖に国際海洋エネルギー研究拠点の形成を復興計画に盛り込んでおります。そして、県では、この海洋エネルギー実証試験場の三陸への誘致をにらみ、平成24年度、今年度で1億1、200万円の予算をとり、昨年5月にかけて、東京大学、海洋産業研究会など4団体で組織する調査グループに既に風力や波力の調査を委託しております。そして、この報告書は今年度末までに完成する予定です。
 現在のところ、我が県を含め、青森、静岡、長崎、佐賀など複数の県が実証試験場海域の誘致に積極的に準備をしております。沿岸北部では、いわて沿岸北部海洋再生可能エネルギー研究会が立ち上がり、継続的に洋上風力を中心とした海洋エネルギー開発の勉強会を開催しております。新年度には、洋野町沖の洋上風力発電施設建設に向けた調査事業が計画されております。
 先月1月30日には、釜石で世界最先端の海洋エネルギー研究所、英国スコットランドのヨーロッパ海洋エネルギーセンター、EMECの代表の講演会を開催しております。ヨーロッパ海洋エネルギーセンターは、英国の実証試験場のあるスコットランド、オークニー諸島にあり、この講演会の中で、EMECのニール・カーモード代表は、釜石には実証試験海域のための有力な資源があると述べ、本県の取り組みに協力する考えを示しております。
 カーモード代表の次に講演した東京大学生産技術研究所の黒崎特任教授は、試験場の適地は釜石に絞られてきたと現状を報告しております。当然、ILC計画と連動させ、三陸沖に関連産業と観光産業の進出、そして、何よりも岩手の未来をつくる子供たちの教育に大きな波及効果が期待できます。
 質問いたします。まず、海洋実証試験場の三陸への誘致に対する知事の考えを聞かせてください。
 2点目、ヨーロッパ海洋エネルギーセンターのニール・カーモード代表は、海洋実証試験場海域の選定のため、地元住民の合意を得ながら計画を進めることが重要だとおっしゃっております。選定に向け、地元の漁業者との調整を含め、今後の課題と県の取り組みを聞かせてください。重ねてお伺いいたします。実証試験海域としての三陸の優位性はどのようなものがあるのか聞かせてください。重ねてお伺いいたします。実証試験海域としての三陸の優位性はどのようなものがあるのか聞かせてください。
 以上で壇上からの質問を終わります。答弁によっては再質問いたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 小野共議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、復旧、復興事業の総括と復興のスピードについてでありますが、この2年間は、第1期実施計画が目指す基盤復興に向け、復興計画に掲げる三つの原則に基づいて具体的な取り組みを推進してまいりました。
 その結果、安全の確保については、災害廃棄物の処理が本年1月末現在で3割程度まで進み、復興交付金を活用した面的整備事業については、防災まちづくり事業計画地区の約9割が事業に着手しております。
 暮らしの再建については、災害公営住宅5、600戸の整備予定のうち約4割の事業に着手し、今年度末には、その一部が完成の見込みとなっております。
 なりわいの再生については、県内13産地魚市場の全てが再開し、その水揚げ量も約6割まで回復するとともに、被災事業所も、一部再開を含め、約8割が事業を再開しているところであります。
 このように、この2年間で基盤復興に向けた事業が具体化し、進展してきている一方で、いまだ応急仮設住宅で不自由な生活を余儀なくされて、復興を実感できない多くの被災者がいらっしゃるということから、復興まちづくりを加速する必要があると痛感しております。
 このため、まちづくりや海岸等の大規模工事の本格化に伴い、被災地で課題となっている専門的な技術者や労働者の確保、建設発生土の土量調整などに対応するため、引き続き復興事業を担う人材の確保に取り組むとともに、新たに沿岸各地域の復旧、復興工事の円滑な施工確保のための対策を検討、調整する場を設置し、復興まちづくりを加速してまいります。
 次に、JR山田線の復旧の見通しについてでありますが、JR山田線に関して沿線市町村は鉄道の早期復旧を求めており、県としても、JR線と三陸鉄道がつながることによってさまざまな相乗効果を発揮することができることから、鉄道の早期復旧が必要と考えております。
 JR東日本は、津波からの安全の確保、まちづくりとの整合性、費用負担等が課題との認識を示していますが、これまでの協議の結果、これらの課題についてはおおむね解決の見通しが立ってきているものの、費用負担など一部に未解決の課題があることから、現在のところ、JR東日本からは復旧の方針や今後の見通しは明らかにされていないところであります。
 このようなことから、先日、JR山田線沿線首長会議において、残された課題の早期解決に向け、引き続き強力に取り組んでいくこと、昨年11月の第4回復興調整会議でJR東日本から要請のあった鉄道復旧後の地元の利用促進に最大限取り組んでいくこと、特にも鉄道駅を中心としたまちづくりの推進や利用促進のための検討組織を設置することが合意されました。
 県としても、JR山田線の鉄道での復旧方針が早期に決定されるよう、市町村と連携しながら、これらの取り組みを進めていきたいと思います。
 次に、沿岸の交通基盤の役割と重要性についてでありますが、三陸沿岸道路は、高速移動が可能であり、交流の拡大や物流を促進する観点から、復興にとって非常に重要な役割を担う道路であると考えております。また、東日本大震災津波に見られるような非常時には、救援物資などを運ぶことが可能な災害に強い道路ネットワークの構築につながるものであります。また、国道45号は路線バスが多く走る主要な幹線道路であり、沿線住民の日常生活に欠かすことができない道路であります。
 一方、JR線や南北リアス線といった鉄道は、自動車を運転することができない通学生や通院者などにとって、路線バスにはない速達性や定時性を有した安全な移動手段として欠かすことができない社会的基盤であり、また、新幹線とつながっていることにより、全国から観光の誘客をできる地域振興の基盤でもあります。沿岸地域が真の復興をなし遂げるためには、これらの交通手段がそれぞれの役割を十分に果たしながら有機的に連携することが必要であり、三陸沿岸道路の早期整備やJR線の早期復旧がぜひとも必要であります。
 次に、海洋実証試験場の誘致についてでありますが、県では、復興計画の三陸創造プロジェクトといわて県民計画の海の産業創造いわて構想において、海洋エネルギーに関する国際的研究拠点の形成や洋上風力などの海洋資源開発に係る調査、研究に取り組むこととしています。これは、岩手の強みや岩手らしさを生かす新たな発想に立ち、これからの三陸を創造していくものであり、海洋エネルギー実証試験場の誘致は、技術開発など知の拠点を形成するにとどまらず、人口の定着、拡大や新産業の創出など、その波及効果は大きく、重要な取り組みと認識しております。
 このため、国の公募に備え、既に本県三陸沿岸の詳細なエネルギー調査や海外調査、さらには沿岸地域でのシンポジウムの開催など準備を進めているところであり、これらの結果も踏まえながら、市町村、漁業協同組合、商工団体等の関係者と連携して、日本版EMECの誘致に積極的に努めてまいります。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁をさせますので、御了承をお願いします。
   〔理事高前田寿幸君登壇〕
〇理事(高前田寿幸君) まず、被災者の持ち家再建についてでございますが、暮らしの再建を図るためには、被災者の住宅再建に対する支援策を充実することが必要でありますことから、県では、今年度から、復興基金を活用して住宅再建に際して最大100万円を市町村と共同で補助する事業を創設するとともに、バリアフリー化や県産材を活用する場合の補助、さらには住宅ローンの利子補給などを実施しているところでございます。
 今般、国におきましては、本県等の要望を踏まえ、平成24年度補正予算の緊急経済対策として、大震災津波による被災地域の住宅再建に資する施策を通じて住民の定着を促し、復興まちづくりを推進するため震災復興特別交付税を増額交付することとし、本県の配分額としては215億円が見込まれているところでございます。これを受けまして、県では、本県への配分見込み額の全額を対象市町村に配分することとし、2月補正予算案に計上する予定としているところでございまして、今後、被災市町村がこの財源を有効に活用して住宅再建支援の充実強化を図ることにより、住民の定着と復興まちづくりが加速されるものと考えております。
 また、平成23年10月に県が策定いたしました岩手県住宅復興の基本方針におきまして、持ち家住宅の想定供給戸数を約9、000戸から9、500戸としてございますが、現時点の被災者生活再建支援金の加算支援金の支給実績から、既に約2、500戸が建設、購入されていること、また、高台移転の防災集団移転促進事業については、これまで大臣同意されたものだけで約2、700戸分の宅地供給が見込まれること、これらに加えて、新たに事業認可されるものや民間による宅地供給も見込まれており、県といたしましては、今後とも基本方針に掲げる目標への到達に向けて鋭意取り組んでまいります。
 次に、産業再生特区についてでございます。
 まず、産業再生特区の周知についてでございますが、産業再生特区における税制特例の積極的な活用を促進するため、昨年4月から、県内15会場、県外2会場で事業者向け説明会を開催するとともに、市町村や関係団体等との連携による出前説明会を24会場で開催したところでございます。また、昨年6月には、市町村及び関係団体に対し特区制度の周知を要請するとともに、いわてグラフやホームページなどの県の各種広報媒体を活用するほか、市町村、商工会等の広報誌への掲載などにより、特例内容の積極的な周知に努めてきたところであり、こうしたことから産業再生特区の指定事業者数は増加しているところでございます。
 今後、被災事業所の事業再開や業績の回復などにより、さらに指定事業者数が増加することが期待されますことから、被災地域のなりわいの再生に資するよう、今後とも、市町村、関係団体等と連携して、引き続き、事業者に対し特例制度の積極的な周知に努め、優遇措置の活用を促進してまいります。
 次に、新規立地促進税制の効果についてでございますが、新規立地促進税制は、被災地域への民間企業の投資を促し、雇用の維持、確保や地域経済の活性化を図ることを目的としてございます。
 この制度は、被災地域に新たに法人を設立し、工場を新設した企業を対象に、所得金額を再投資等準備金として積み立て、その積立金を損金の額に算入することで、法人税を5年間、実質無税とする特例でございますが、再投資等準備金として積み立てる期間が5年と短いこと、優遇措置の指定を受ける事業年度において一定額以上の設備投資を行うこと、被災雇用者等を5人以上雇用し、かつ給与等の支給総額が1、000万円以上であること、6年目以降には積み立てた再投資等準備金を取り崩し、再度設備投資をしなければならないことなど、さまざまな要件の全てを満たす必要がございますことから、この特例を活用できる事業者が限られております。このため、新規立地促進税制が被災地の企業立地の促進に向けた効果的なインセンティブとなるよう、これまでも特例の要件緩和や適用期間の延長について国に要望してきており、今後とも、引き続き、この要望が実現できるよう国へ強く働きかけてまいります。
   〔県土整備部長若林治男君登壇〕
〇県土整備部長(若林治男君) まず、国の経済対策によります本県の復旧、復興への影響についてでありますが、全国的に工事量が増加することが想定されます。今後、どのような影響があるか、これを注視していく必要があると考えております。
 本県におきます復旧、復興工事が滞ることがないよう、本庁や沿岸各地域に設置いたします施工確保対策連絡調整会議の場を活用しながら、関係機関や業界団体と情報共有や連携を図りまして、労働者の確保や資材の調達などへの対策に努めてまいります。
 次に、公共工事におきます宿泊施設の不足についてでありますが、被災地では、現在、既存の宿泊施設がグループ補助金や修繕費補助金などを活用して営業再開に向け工事を進めており、また、一部地域では新たな宿泊施設が建設され、営業を開始しているものの、いまだに震災前に比べて宿泊施設や収容人数が少ない状況と承知しております。
 県ではこれまで、国に対し、作業員宿舎を建設する際の補助等を要望してきたところであります。これを受けまして、国土交通省では、必要な場合には宿舎建設に係る費用を工事費に計上する方針が昨夜示されたところであります。国から、近々、具体的な運用基準が示される見込みでありまして、改めて、それぞれの地域におきます宿泊施設の状況や業界団体などの意見を踏まえながら、必要な地域での作業員宿舎の確保に向け取り組んでまいります。
   〔政策地域部長中村一郎君登壇〕
〇政策地域部長(中村一郎君) 被災市町村の職員に対する心のケアについてでありますが、被災市町村においては、これまでも、医療関係機関等の支援を受けながら、派遣職員を含めた職員に対するストレスチェックや専門家による面談等の取り組みを行ってまいりました。また、これらの取り組みに加え、派遣職員の定期的な帰省を促すことなどにより、心身のリフレッシュに努めてきました。職員の心のケアは被災市町村において実施していくことが原則でありますが、県といたしましても、被災市町村のみに任せることなく、県と被災市町村による被災市町村人財確保連絡会議において心のケアに関する情報提供を行っているほか、派遣職員との面談を行い、業務環境や生活環境の改善への支援などに取り組んでまいりました。今後もこれらの取り組みを継続するとともに、地方公務員災害補償基金等が行う支援事業のさらなる活用を促すほか、帰省旅費の充実など心のケアのための財源確保について国に要望を行うなど、派遣職員を含めた被災市町村職員の健康管理の取り組みを支援してまいります。
   〔商工労働観光部長橋本良隆君登壇〕
〇商工労働観光部長(橋本良隆君) 海洋実証試験場の選定に向けた課題と県の取り組み等についてでありますが、県では、国への申請に向け、現在、東京大学等への委託により、三陸沿岸における洋上風力、波力等の実測調査や海域利用状況等の社会的要因調査などに取り組んでおります。
 その中で、漁業者の理解醸成や地域の受け入れ環境の整備、漁場、航路、自然公園などの社会的な制約に係る関係者との調整などが課題として挙げられているところであります。このため、引き続き漁業者等への説明を重ねながら、地域におけるシンポジウムや意見交換会の開催を初め関係省庁との協議を行うなど、課題解決に着実に取り組んでいく考えであります。
 また、三陸の優位性については、同委託調査では、沖合における風力や波力エネルギーが豊富なことや、北部の遠浅な海底、中南部の深い海など多用な発電システム開発に対応できること、リアス式海岸ならではの静穏な入り江は機器の組み立てや整備に向いていることに加えて、港湾等関連インフラの整備や造船、海洋土木等の関連企業が存在することとされており、県といたしましても、この強みを生かしていきたいと考えております。
〇21番(小野共君) 何点か再質問をさせていただきます。JR山田線と再生可能エネルギーについて、そして職員の心のケアについて、3点ほど質問させていただきたいと思います。
 JR山田線についてですが、今までの何回かの復興調整会議と公共交通確保会議での議論を見ておりますと、自治体側とJR側との議論が硬直している理由は大きく二つありまして、線路のかさ上げの問題、そしてもう一つは復旧後の利活用の問題─JR東日本の在来線67線中65番目というこの利活用の問題、この二つが大きな障害になっているのだろうと思っております。このJRとの交渉が進まないという問題につきまして、私は、県の姿勢がちょっと見えてこないような気がいたしております。県にもう少し積極的な役割を果たしていただきたいと思うわけでございます。去年の復興調整会議の中では、先ほど知事の答弁にもありましたとおり、かさ上げの費用は国の復興交付金で自治体に措置するという方向で検討に入っていたはずでございます。果たして、これがどうなっているのか。これをもう少し国のほうと詰めていただきまして、自治体との調整に県が入っていただきたい。
 その利活用に関しましても、先週ですか、沿線首長の会議があったようでございますけれども、これもやはり利活用の問題でございました。自治体単体で利活用の問題を話をするというのではなく、広域で利活用の問題を討議、検討していただきたい。それを、やはり県のほうでもう少し積極的な役割をしていただきたいと思うわけでございます。これにつきまして当局の見解を聞かせていただきます。
 再生可能エネルギーについてでございますが、新年度の実験海域の応募に向けまして、今、応募の準備をしているところだろうと思うわけでございますけれども、この応募と並行して海洋発電の具体的な関連企業を果たしてどの程度まで詰めているのか。これは、応募の準備と並行して、実証試験場ができた場合に、進出してくる企業とある程度詰めておかなければいけないというのが当然なのだろうと思います。これは、いろいろあるでしょうから、きっちりと準備をやっていただきたいと思います。
 実証試験場の設置によりまして、今申し上げました国内外の開発関係企業の参入、集積や研究者、技術者を中心とする交流人口の増加、あるいは地元雇用の創出などが当然期待されているところでございますが、日本版EMECという─先ほどから話がありますオークニー諸島では、平成16年ですか、設置されておるようでございますが、果たしてどの程度の投資が行われ、また、新たな雇用創出というのはどれほどだったのか、現時点で構いませんので、それを聞かせていただきたいと思います。
 3点目、職員の心のケアについてでございますが、職員の心の健康を維持するに当たりましては、一人一人の職員の負担を少なくするということが当然必要なことなのだろうと思います。そのために職員数をしっかりと確保することが重要であります。本年度は応援職員の要望数を充足するに至らない状況でありましたけれども、それでは、来年度の被災市町村に対する応援職員の確保の見通しと今後の県の取り組みを聞かせてください。
〇政策地域部長(中村一郎君) まず、JR山田線の復旧についてのお尋ねでございました。県としては、これまでもJR山田線の早期復旧に向けまして、国や沿線市町村との協議を積極的に行ってまいりました。昨年12月からは、毎月1回、実務レベルで具体的な協議も進めてきたところでございます。議員のほうからお話がありました、いわゆるかかり増し経費の負担の部分につきましても、まちづくりの事業と一体的にできる部分については復興交付金等を活用できないかということで、これについては復旧庁ともかなり詰めて、今、議論をさせていただいております。いずれ、これにつきましては、来月上旬にも次回の復興調整会議が開催される予定でございますが、何とか前進するような形にもっていくべく、引き続き全力を挙げて協議を進めてまいりたいと考えております。
 また、もう一点、JRの利用促進のお話がございました。これについては、先ほど知事のほうからも申し上げましたとおり、沿線の首長会議におきまして検討の組織を立ち上げるということで合意をいたしましたので、できるだけ早期にこの組織は立ち上げを行い、検討を開始したいと思います。
 また、これにつきましては、その一環として、来年度、いわゆる復旧後の利用促進を行うための調査、分析も行うことにしてございます。また、鉄道駅と他の公共交通機関との有機的連携でありますとか、地元の住民が日常的に鉄道を使っていただけるような利用促進策を具体的に沿線市町村と一緒に県のほうでも考えていきたいと考えてございます。
 もう一点、被災市町村への派遣職員の確保についてでございます。来年度の要請数は、市町村のほうから455名ということで要請をいただいてございますが、現時点、今年度の派遣決定数321名と比較いたしますと、134名の増加という状況になってございます。
 県におきましては、これまで、内陸市町村への派遣の要請、また、総務省を通じた全国市町村等への要請、各都道府県等への直接訪問による要請活動を行ってまいりましたが、これ以外にも県による任期つき職員の採用、派遣など、派遣職員の確保に取り組んでまいったところでございます。しかしながら、各自治体とも、行財政改革の推進により職員数が抑制傾向にあることや、専門技術職の要請が増加していることなどから、現時点では要請数の約8割に当たる360名程度の確保にとどまってございます。これについては、今後、内陸部市町村のローテーションによります派遣でありますとか、復興庁の支援による国職員のOBの方、また民間企業職員、さらには青年海外協力隊経験者の受け入れについて調整を行うなど、引き続き必要数の確保に努めてまいります。
 また、震災の記憶の風化も懸念されますことから、各都道府県や全国の市長会、町村会などの関係機関への直接の要請も強化するとともに、被災市町村の現状や派遣職員の勤務状況につきましても情報発信をしてまいりたいと考えております。
〇商工労働観光部長(橋本良隆君) EMECにおける投資と雇用創出についてのお尋ねでございますが、関係者からの聞き取りによりますと、施設整備費につきましては、2004年、2009年の2度にわたって行われておりまして、日本円に換算いたしまして50億円程度となっており、開発企業による投資は1社当たり年間1億円程度であり、現在、13社の開発企業が参加していると承知しております。
 また、地元の雇用創出につきましては、研究開発者、技術者など約250名程度と伺っているところでございます。
〇21番(小野共君) 終わります。
〇議長(佐々木博君) 次に、樋下正信君。
   〔45番樋下正信君登壇〕(拍手)

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