平成25年2月定例会 第9回岩手県議会定例会会議録

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〇27番(飯澤匡君) 地域政党いわての飯澤匡でございます。
 4人目の代表質問の登壇は、平成11年2月定例会以来、14年ぶりとのことであります。このたびの代表質問の機会は、地域政党いわてが昨年の7月に、交渉会派として議会運営委員会で認めていただいたことにあり、ここに、改めて岩手県議会基本条例の趣旨を酌まれ、議会改革に邁進することに意を同じくし、賛同された議員各位に、心から敬意と感謝を申し上げます。
 今回の代表質問は、本県の最大の課題である東日本大震災からの復旧、復興に関して、短、中、長期的な視点に立って課題を指摘し、また、県政重要課題に対して、平成25年当初予算に照らしおのおの提案を踏まえて質問をいたしますので、知事の明快な答弁を期待します。
 最初に、復興に対する県の基本的姿勢に関して伺います。
 東日本大震災は、明治、昭和の津波被害とは比較にならないほど面積、規模とも甚大であり、復興を考える上で、過去の津波被害からの比較で留意しなければならないのは、人口減社会、生産年齢人口の高齢化が急速に進んでいる中で被災したことにあります。このような困難な背景を認識しつつ、生活の再建はもちろんのこと、産業基盤を建て直し、新たなビジネスを創出するのは容易なことではありませんが、石にかじりついてでもなし遂げなければ真の復興はあり得ません。
 昨年の7月に、北上市が、市内に避難している273世帯を対象に行った避難者支援に関するアンケート調査の結果によれば、今後の住まいの予定に関しては全体の51.1%が北上市に定住するという回答、また、故郷へ帰ると回答した割合が65歳以上で高いという結果は、被災地に産業基盤の再生の迅速なる対応が必要なことを示しています。
 被災者により近い自治体は甚大な被害を受け、多くの職員を失った上に、自治体間の財政規模も格差があり、復興に向けたグランドデザインまで描けというのは余りにも酷であり、そうなれば、この役割を担うのはまさしく県であり、その責任は重大であります。
 被災前の財政状況は、人口減による基本財政需要額も年々減少し、なおかつ、政府からのお金の流れも硬直した状態でした。震災はまことに不幸な出来事でしたが、この機会を捉えて、逆転の発想で、県は復興庁と連携しつつ、産業再生と創造を中心にした大胆なグランドデザインを、臆することなく、先導的な取り組みや方法論を取り入れて、本県のみならず、東北地方を活性化させていく高い視点で提案することが不可欠と考えます。
 政権交代がなり、知事は新政権に対して、復興に向かう姿勢は評価しつつも、制度改革の方向性がわからないのでもっと踏み込んでほしいとのコメントをしておりますが、主体的に踏み込むべきは、本県のグランドデザインに基づく提案力であり、情報発信の仕方にも工夫が必要と考えます。被災県が協力をして県境を越えた大きなスケールで仕掛けを考えないと、時間の経過とともに、事業予算規模が縮小する可能性も考えられます。
 県が、先般、政府に要望した東日本大震災津波に関する要望書の中身には、グランドデザインに匹敵するダイナミックかつ系統的なアプローチを見出せないというのが私の所見であります。
 以上の指摘に対する県が担う責任の認識と、これまでの取り組みと課題、今後の広域的行政として取り組む基本的な考え方について伺います。
 また、民主党政権時に国と地方の協議の場が法制化されました。この協議の場をどのように活用するかについても課題と考えますが、その課題認識と、どのように取り組むのかあわせて伺います。
 いわて復興加速予算に対応した組織体制と課題についてお伺いいたします。
 震災対応は、平常時ではない、非常時という意識を組織の中に植え込んだミッションに基づいた課題解決型に強化することが不可欠です。地域政党いわては、再三にわたり非常事体制について指摘してまいりました。今般、県では、復興をさらに加速する体制の整備を最優先とし、岩手の未来を見据えた計画等を推進する組織体制の見直しを図ったとされております。量的補充に対応されたことは一定の評価をいたしますが、問題の本質は、組織を動かすのは人であり、職員のミッションの共有とモチベーションの維持、成果に見合った人事評価が課題と考えます。
 知事は常々オール岩手を強調されておりますが、発災後に定例人事を凍結せず、初動体制のミスという人事上の借金を抱え、また、I援隊運動も県庁内に浸透しているとは思えず、さらに県庁と被災地に派遣された職員の意識はかなりの差を生じているとの現場の声もあり、課題解決のモチベーションを全庁的に高めることについてはむしろ課題は大きくなっていると思料しますが、このたびの組織体制の見直しにオール岩手を唱える知事の意がどのように尽くされたのかお聞かせ願います。
 また、この2年間、発災以前より増して知事と被災地自治体首長とで政策推進におけるコンセンサスがとれているのかと疑問視する指摘があります。被災市町村が行おうとするいろいろな復興事業に関し、県がそれを酌み取って適切な支援を行う必要があると考えますが、この点について、これまでの対応状況と今後について伺います。
 なお、知事御自身がこれまでどのように対応され、今後どのような姿勢で取り組むおつもりか明確にお示し願います。
 質問の第2は、予算調製課を廃し、従前に存在した財政課が復活することについて伺います。
 以前、財政課から予算調製課に改編したときには、全庁的にコスト意識を持たせ、事業効率を高めるという明確な目的がありました。旧財政課時代には権限が集中し過ぎるという問題も有していたかと聞いております。名前を変えるだけで中身を失っては本末転倒となります。
 まず、改編したその目的と狙いについてお聞きします。
 これまで予算調製課は、政策評価並びに財政、予算調製との連動が課題であり、予算編成の透明化、財政効率的な部分を高め、評価と連動するという課題は積み残したままと認識しております。一方、復興のインフラストラクチャーは、被災県全体で2050年までに約570兆円が必要との試算もあり、今後とも増大が予想される復興予算と財政規律が一層求められることが予想されますが、これらの課題にどのように対応するのか伺います。
 短期的な課題で、災害廃棄物の処理について伺います。
 本県で発生した瓦れき525万トンの処理期限は来年度末に迫りますが、まだ全体の70%以上が未処理の状態にあります。瓦れき処理は復興の大前提であることから、平成25年度内の処理完了に向けての具体的取り組み及び工程についてまず示していただきたいと存じます。
 平成25年度内に処理するためには、広域処理が不可欠であります。そのような中、大槌町の本格的受け入れを始めた新潟県の柏崎市や三条市に対して、泉田新潟県知事が、災害廃棄物から放射性物質が漏れ出て健康被害が出れば傷害罪に当たるなどの発言をされたことは、被災県として看過できない問題であると判断します。地域政党いわては、一昨年、陸前高田市の松を京都市の団体が大文字送り火の護摩木として活用することを表明し準備を進めていたものの、あらぬ風評により京都市が使用しないこととしたことに対し、提携している地域政党京都党と協力して、実際に京都市役所に出向いて広域処理の必要性を粘り強く当局と折衝するなど、風評被害を最小限にとどめるための活動をしてきた経緯もあり、この1件が広域処理を支援する全国の自治体に影響を与えないかと憂慮するものであります。今後も広域処理を進めることについての必要性については達増知事も認めていますが、新潟県知事の発言に対し、被災県知事としてどういう対処をなされるのか、また、全国知事会等の場で知事自身が具体的にどのように広域処理に関して要請をされたのかお知らせ願います。
 なお、2月20日付の新潟県の地方紙朝刊でも泉田新潟県知事に対する本県議会の動向が扱われた事案でもありますので、お含みをいただいた上で御答弁願います。
 国際リニアコライダー、いわゆるILCの誘致実現についてお伺いいたします。
 昨年の秋に、国内候補地をことしの7月をめどに研究者から成るILC戦略会議において一本化することが発表されて以来、いよいよ北上高地への誘致実現に向けて現実味を帯びてきました。私自身、実験サイト候補地が地元であること、御指導いただいた故椎名素夫参議院議員が情熱を傾注してこられた大プロジェクトでもあることから、ILC計画については関心を持ち議会内外で活動してまいりましたが、ようやく国もILCサイト誘致に前向きな姿勢を示すなど、実現に向けた足取りが見えてきたことに感慨を覚えるものであります。
 そうした喜びもつかの間、国内候補地の一本化の期限が設定された以上、目的達成のために、県は万全にも万全を期して対応する必要があります。戦いは短期決戦であります。当面、早急に求められるのは、ライバルの九州を分析し、東北サイトの強みを効果的にアピールする戦略の構築、県民全体の機運の醸成、宮城県とのさらなる連携等が想定されます。
 以下、私自身が高エネルギー加速器研究機構─KEKと、大型加速器LHCを有して国際研究所として先発地であるCERNを視察した結果を踏まえながら、誘致実現に向けた提案を申し上げながら質問いたします。
 県は、新年度予算に計上したプロジェクト研究費を利用しILCの関連産業を地元に集積し、経済活性化につなげるため戦略ロードマップをつくり、産学官の連携や国による税制優遇、特区制度の活用など、必要とされる施策を提案するとしておりますが、ロードマップの作成には、ILCを復興の象徴として位置づけていることから、被災地自治体に対して具体的な経済波及効果を明らかにすべきと考えます。被災地自治体の協力は県民運動を高める上で重要なファクターであるだけでなく、復興への産業振興策の指針ともなり得るからであります。
 これまで、ILCによる国際科学研究都市の形成による科学分野の視点がグランドデザインの中核をなしていましたが、CERN周辺の自治体視察を通じて、周辺自治体の役割も見えてきました。CERN周辺の自治体は、規模的にも私たちが住んでいる東磐井地区と大差のない規模でありました。今後、社会資本の整備等ハード的な課題解決は重要ですが、国際研究都市をつくる下地を住民自身が織りなしていくこと─ソフト戦略はもっと重要だということを痛感いたしました。正しい住民への理解には、地元自治体が住民と国際研究施設の間にしっかり入って情報の伝達等の役割を担うことも必要です。加えて、自治体独自で動ける人材の育成も不可欠です。CERNの周辺は豊かな自然に恵まれ、ブドウ畑あり、酪農地帯あり、従前より営まれた農業と農村が顕在しています。岩手県は申すまでもなく農業県であり、食料供給基地としての誇りを持続し、さらにILC実現で農業や林業の付加価値を増す施策も視野に入れるべきと考えます。誘致が実現すれば、東北の豊富な食材は世界から来た科学者を絶対に満足させてくれるでしょうし、その反響が我々の地域の価値をさらに上げるものと確信します。
 KEKはILCの技術を支える機構となり、ハブラボラトリー─中心実験施設の役目を果たし、品質の管理をする役目を担っています。KEK自体がパイロットプラントであり、今後、民間に発注することを前提とし、地域に貢献することをサポートすることを約束しています。東北地方が高い技術を有していることは認識済みであるとの研究者の言葉は、今後のILCの技術を支える産業群の可能性を示唆していることから、県内産業界に対する助走的な準備も必要となります。戦略ロードマップは、今後、県南地区の地域振興にもかかわることから、平泉資産とも連携させた戦略を描くことも必要と考えますが、以上、御提案申し上げた点について御所見を賜ります。
 また、ILCの東北誘致実現には、県庁行政組織は、専門分野の強化だけでなく、全庁的な連絡組織を常設し、迅速かつ適切な対応が必要であり、さらに東京事務所の役割も重要であると考えます。佐賀県の古川知事は、CERN訪問の折、CERNが主催する素粒子力学や宇宙科学のサマースクールに即座に反応し、翌年には教師や学生を派遣したと聞きました。最近、報道される古川知事の政府や関係機関への働きかけも迅速かつ的確であると感じます。提案申し上げた本県の組織的対応と、知事自身の行動にかかわる課題認識と対応についてお伺いいたします。
 自然再生エネルギーの本格的導入に向けた本県の対応について伺います。
 国の動向に呼応して小水力発電や洋上風力発電の事業化が緒についたことに対し、県の姿勢を評価したいと思います。今後の課題は、エネルギー政策基本法に明記されていない地方自治体への権限獲得、すなわち分権、分散型のエネルギーシステムへの転換を進めるための法制度に地方分権を明記し、複雑な手続を簡素化して、主要なエネルギー政策を地方が担えるものとする法整備を国に求めることと並行して、本県の場合、本県がこれまで先進的に取り組んできたものの現在停滞している木質系バイオマスの利活用による事業化を計画的に推進することにあると思います。既に民間事業者が固定価格買取制度の導入を背景にバイオマス発電事業に参入しようとする情報もあり、本県が持続的に森林資源を活用し、エネルギーの地産地消を目指して戦略的な拠点化を図っていくには、関係する法整備を国に求めるとともに、木質バイオマスの利用促進に関して県がマスタープランを作成し、着実な進行管理をすべきと考えますが、現在までの対応状況と今後の見通しについて伺います。
 震災後の林業の振興について伺います。
 福島第一原発の影響はいまだに深刻であり、出荷停止が続いているシイタケ生産者にあっては、実に70%が廃業を考えているとの回答に私自身も大きなショックを受けています。県では、シイタケのほだ木やほだ場などの汚染対応や、新たなほだ木を調達して再生産する道は模索しているものの、そもそも地元の原木を利用できなければ特用林産物の価値がないことを生産者がよく知っているがゆえに、事態は深刻さをきわめています。東京電力からの全額賠償を早期に実現することはもとより、現実的に生業として継続できるかという瀬戸際に立っているのが現状であります。生産者は、山の自然の恵みを生かしたシイタケ生産にいまだに夢を持ち続けており、県は、生産者の意向に沿った支援策を行う必要があると考えます。県では、シイタケ生産者にどのようなスキームを持って対応されるのか、短期、中長期的な対応をお示し願います。
 一方、県産木材の利用も課題であり、震災後もなかなか需要が喚起されず、市況も低調で推移しています。公共建築物への利活用を盛んに促し、県産材の利用拡大の突破口としたいところです。
 国では、林業の再生や地球温暖化防止を目指す公共建築物等木材利用促進法が2010年5月に成立し、同年10月に施行されており、全ての自治体に木材利用方針の作成を求めております。県と市町村が一体となって初めて同法の趣旨が生かされると考えますが、県内市町村の木材利用方針の策定状況と県の今後の県産材の利用拡大方策についてお尋ねいたします。
 地域医療政策についてお尋ねいたします。
 地域の命のとりででもある県立病院が縮小される方向は、誰もが歓迎する問題ではありません。県立病院群における地域病院のダウンサイジング化は勤務医の不足に端を発しているものであり、さらに達増知事の県民の命を守るという発言が象徴するように、中核病院に医師を集中させる流れが一層強まったと私は分析します。しかし、現実は、中核病院ですら中央病院を除いては医師の充足はままならない状態が続いており、地域病院は疲弊の一途をたどっています。
 ここで問題なのは、中核病院から離れた地域に位置する地域病院の機能を補完する県の地域医療政策が練られていないところにあります。また、県の組織自体にも課題があります。医療政策を策定し、実行する保健福祉部と県立病院を運営する医療局との間には医師を確保するという共通の課題解決を推進する組織は存在しますが、真に医療政策の延長上に県立病院の地域病院の存在意義は明確化されていません。すなわち、超高齢化社会に対応した医療や子供たちを守るための救急医療対策はおろそかになったままであり、政策の可否を問われる末端の網が粗いのが現実なのであります。
 さらに、花泉診療センターの民間移管の失政が県民からの信用を失っています。議会からの疑問点にも耳をかさず強引に行った結果、1年余で破綻という結果に終わりました。花泉地域の住民は、ベッドが確保されるという論点1点で突破され、情報開示、行政と住民とのコンセンサスの形成は成立しませんでした。このような拙速な経過から決算不認定という議会の判断になったものと思われます。地域病院がこれから地域の中で成立していくには、行政─県の保健福祉部、市の保健福祉部、県医療局と医療関係者─医師や看護師等と住民との間の信頼が必要であると強く思います。
 以上申し上げた意見を踏まえてお伺いいたします。
 県は、県立病院等事業会計平成23年度決算が不認定になったことをどのように反省し、将来の県立病院経営に生かそうとするのかお示し願います。
 なお、県は、被災した沿岸部の3県立病院と大東病院について再建、改築を計画していますが、再建に当たっては、施設そのもののほかに、診療体制をどう整備するかが非常に重要になってきます。つきましては、これらの病院で勤務する医師の確保について、どのような見通しかお示しいただきたいと思います。また、あわせて、大東病院の改築事業に関し、現在の進捗状況と開院までの見通しをお示しください。
 次に、これまで、医師の招聘策と医療政策の軌を一つにするために、私はこの壇上で2回、部局再編を提案してきましたが、その都度答弁は先送りされ、検討中とのことでしたが、どこまで進捗されているでしょうか、お示し願います。
 現在策定中の次期保健医療計画は、国が新たに柱に据えた在宅診療を軸に検討されていますが、地域医療政策と県立病院との連携は、特にも地域の特性を生かした地域病院の存在意義を明らかにするために必須事項と考えますが、どのように検討されているのかお知らせ願います。
 今議会に上程されている復興加速予算と称した来年度予算は、予算規模は当初予算としては史上最大であります。来年度、大いに復興のつち音が各地で響くことを期待したいと思います。ただし、多額の復興予算規模に押し流されることなく、県も被災地自治体もコスト意識を持ちながら、事業が確実に進行するように管理をしていかなければなりません。地域政党いわては、今議会において、ただいま申し上げました点を踏まえて建設的な提案と議論を展開してまいりたいと思います。
 御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 飯澤匡議員の御質問にお答えいたします。
 まず、復興に対する県の基本姿勢についてでありますが、県では、復興計画において、甚大な被害を受けた三陸地域の復旧、復興はもとより、長期的な視点に立ち、世界に誇る新しい三陸地域の創造を目指す観点から、国際研究交流拠点やさんりくエコタウンの形成など五つの三陸創造プロジェクトを掲げているところであります。このプロジェクトの具体化を進めていくため、国の復興構想会議において、TOHOKU国際科学技術研究特区や再生可能エネルギー導入促進特区を提言したところであります。また、昨年12月の政府要望や本年1月の東北の被災4県による共同要望、さらには、先般の内閣総理大臣による本県被災地訪問の際の要望におきましても、東北全体の復興と日本再生の象徴となる国際リニアコライダーや海洋エネルギー実証試験場、いわゆる日本版EMECの誘致などを要望したところであります。
 平成25年度におきましては、三陸創造プロジェクトの具体化を推進するため、洋野町沖で進める洋上ウインドファームの事業化に向けた取り組みを進めるとともに、日本版EMECや国際リニアコライダーの誘致などに本格的に取り組むこととしております。
 今後においても、三陸の一日も早い復興に向けて、被災地の基礎的自治体である市町村が地域特性や住民の意向を踏まえて復興まちづくりを推進する一方、県はこうした市町村の取り組みを支援するとともに、三陸創造プロジェクトの推進などを通じて、広域的な課題解決や地域連携を推進する役割を積極的に担ってまいります。
 次に、国と地方の協議の場の活用についてでありますが、この協議の場は、国と地方の役割分担や地方自治に影響を及ぼす国の施策に関する重要事項について、関係大臣と全国知事会など地方6団体の代表者が協議を行う場として平成23年6月から開催され、これまでに地域主権改革や社会保障と税の一体改革、復興対策等について協議が行われてまいりました。こうした中、全国知事会においては、昨年7月、本県など被災県の意見も踏まえて、東北全体の復興と日本の再生の観点から、日本再生の第一歩としての震災からの復興や新たな国土構造の構築などを盛り込んだ日本再生12箇条を取りまとめており、その中で国と地方の協議の場の積極的な活用も提言しています。
 これまでも、国に対して、あくまでも被災地の視点に立ち、一日も早い復興を実現するため、国家プロジェクトとして既存の枠組みを超える強力な復興施策を全力で推進するよう国の復興推進委員会等の場で申し上げてきておりますが、今後とも、国と地方の協議の場の構成員である全国知事会との連携も含め、あらゆる機会を捉えて引き続き強く要望してまいります。
 次に、組織体制の見直しについてでありますが、復興の動きを目に見えるようにし、被災者一人一人が復興の歩みを実感できるようにしていくためには、復興計画に基づき事業を推進していくことが重要であり、これらに対応して組織体制を見直すこととしております。
 平成25年度は、復興事業を担う技術職員や用地担当職員を増員するとともに、沿岸広域振興局を中心とした体制の強化に努めます。また、基盤復興の推進を基本としながら、岩手の未来を見据え、国際リニアコライダーの誘致活動推進体制の強化や自動車関連産業の振興のための組織の見直しを行います。引き続き、復興を中心とした県政の諸課題に対し、県民の負託に応えるべく、他県からの派遣職員も含め全庁一体となって取り組む体制の整備に努めるとともに、組織が最大限の成果を挙げられるよう、その運営にも意を用いていきたいと考えております。
 次に、被災地自治体首長とのコンセンサスについてでありますが、迅速な復興を実現するためには、市町村と県の連携を密にしながら、被災者に寄り添い、復興計画に基づく取り組みを一体的に進めることが重要と考えております。こうしたことから、沿岸13市町村長で構成する復興期成同盟会や、県と市町村との意見交換会などの場を通じて復興に向けた議論を重ねるとともに、沿岸及び県北広域振興局、さらには復興局などが市町村長を訪問し、復興事業の進捗状況や直面する課題等の把握に努め、復興交付金事業の導入や復興整備計画の策定などを支援するとともに、県と市町村が共同して被災者の住宅再建や中小企業事業者の再開を支援しているところであります。
 今後においても、県の組織を挙げて被災市町村の実情とニーズの把握に努め、市町村との連携を強化しながら復興を加速してまいります。
 次に、予算調製課の改編についてでありますが、予算規模が拡大し、一層の財政規律が求められている中、本県も他県と同様の査定方式に転換し、適正な財政運営を期していくこととしております。これに合わせ、所掌する業務の広がりに照らして、全国的に使用されている財政課の名称が適当と判断し、変更しようとするものであります。
 次に、予算編成等における課題への対応についてでありますが、本県財政は、復旧、復興に多額の経費を要することに加え、県債償還がピークに達するなど中長期的に厳しい財政状況が続くものと見込まれます。こうした中で、希望郷いわての実現に資する将来を見据えた施策をあわせて推進していくため、県民各層からの意見の把握に努め、政策評価による事業の成果を踏まえながら、全庁的な視野のもとに事務事業を1件ごとに精査するなど、財源の重点的かつ効果的な活用を図ってまいります。また、歳入の一層の確保や有利な財源確保の対策を行うなど、財政の健全化に配慮しながら規律ある財政運営に努めてまいります。
 次に、災害廃棄物処理の具体的な取り組みについてでありますが、課題となっています津波堆積土は、今後、公共工事の加速化を図り、大規模公園や防潮林整備などの資材として積極的な利用を進めてまいります。同じく、土砂を含む不燃系廃棄物についても、県内のセメント工場において再生利用化を図るほか、国や専門家などの協力を得て、可能な限り資材化に努めます。こうした取り組みにより、おおむね処理のめどが立っている可燃系廃棄物とあわせて一日でも早く処理を終えるよう取り組んでまいります。
 次に、災害廃棄物の広域処理についてでありますが、これまで、全国知事会等さまざまな機会を通じてその必要性や本県災害廃棄物の安全性について説明するなど、協力をお願いしてまいりました。全国知事会は広域処理促進の決議や提言を行っており、各都道府県知事にはその必要性について共通理解をいただいているものと認識しております。また、決議等に当たっては、国に対し、災害廃棄物処理の安全性を国の責任で確保するように求めております。
 今回の新潟県知事の発言は、国に一層の安全性の確保を求めているものと理解しており、現時点で特段の対応は予定してございません。
 次に、ILCの誘致についてでありますが、ILCの建設候補地は沿岸部からも近いことから、例えば実験施設等で使用する機器類等の陸揚げや組み立ての拠点となる可能性など、被災地の地域経済や雇用にも大きな効果をもたらすことが期待されます。今後策定する加速器関連産業集積のためのロードマップにおいては、このような効果を可能な限り取り込むとともに、高エネルギー加速器研究機構や東北大学等と産業界との橋渡しを行いながら、ILCの建設段階から地元企業がかかわっていくための方策を検討してまいります。
 また、ILCで行われる実験や活動内容をわかりやすく地域住民に伝えることは、ILCにおける円滑な研究の推進のみならず、外国人研究者等と地域住民がともに安心、快適に暮らしていくために重要と考えられますことから、自治体がいわば通訳になって両者の橋渡しとなることについて、人材育成も含め、今後、検討してまいりたいと考えております。
 ILCの実現による農林業の付加価値の向上については、安全・安心にこだわった本県の農林水産物や、その加工品について外国人研究者等に積極的に情報発信と提供を行うなど、岩手ブランドの世界での知名度の向上を図り、本県農林業の付加価値の向上につなげてまいりたいと思います。
 次に、誘致実現に向けた課題認識等についてでありますが、ILCの誘致のための検討事項は多岐にわたりますことから、県では、平成22年度から、関係部局担当者をメンバーとする連絡調整会議を開催し、課題の共有と解決に向けた検討を行ってまいりましたが、今後は、全庁的なワーキンググループを設置するなど、誘致の状況に応じ適切に対応してまいります。
 誘致に当たっては、本県の北上山地が最適な候補地であることに加え、震災からの復興にILCが大きな役割を果たすということを、政府や国民に理解していただくことが一番の課題と考えております。そのため、今後も誘致推進組織との連携を図り、多様な媒体を活用した情報発信を行うとともに、東京事務所を首都圏における情報収集や要望活動の拠点としながら、関係者の理解を得る活動の強化を図り、北上山地が国内の建設地に選定されるよう、最大限努力してまいります。
 次に、自然再生エネルギーの本格導入についてでありますが、法整備については、これまで、国に対して、自立分散型エネルギー供給体制の構築のための環境整備として、電力系統の広域的な運用や送配電部門の中立性の確保など電力規制改革を要望してきており、引き続き、早期実現に向けた働きかけを行ってまいります。
 また、木質バイオマスのエネルギー利用については、これまで、本県の森林資源の有効活用を促進するとの観点から、木質バイオマス施設の整備を推進しながら、地域の森林資源の状況を踏まえた木質燃料の安定供給ができるよう、木質燃料製造者と需要者との調整を行ってまいりました。一方で、東日本大震災津波発災後においては、再生可能エネルギーに大きな注目が集まり、本県でも複数の木質バイオ発電等の取り組みが進みつつあります。
 このような状況を踏まえれば、本県の森林資源の持続的な活用を視野に入れながら、大口の需要にも対応していく観点で、森林資源の活用のあり方について、森林、林業関係者や需要者等の意識共有を図っていくことが重要であり、今後、これら関係者との意見交換を進めてまいりたいと考えております。
 次に、シイタケ生産者への対応についてでありますが、原木シイタケ産地の再生に向けては、まずは出荷制限の解除に道を開くことが必要であり、盛岡市を先行事例として、生産物やほだ木の放射性物質濃度検査を実施し、12月に、国に報告するとともに、出荷制限等の解除の考え方に示されている汚染要因を取り除くための生産工程管理について、国との協議を行っているほか国でも現地調査を進めています。また、出荷制限の解除後の生産再開を念頭に置き、基準値超過のほだ木の処理やほだ場の落葉層除去、新たな原木の確保に取り組んでおります。
 これらの取り組みに加え、当初予算では、人工ほだ場等のモデル的な整備を支援する事業を盛り込んでおり、生産者が再び意欲を持って生産活動に取り組むことができるよう、できる限りの支援をしていきたいと考えております。
 次に、県産材の利用拡大についてでありますが、県内市町村の木材利用方針の策定状況は、本年2月21日現在24市町村が策定しており、今年度中に全ての市町村で木材利用方針が策定される見込みとなっております。
 県産材の利用拡大については、県では、これまでも率先して取り組んできたところでありますが、来年度は、県立花巻農業高等学校教室棟の木造化などを進めることとしており、市町村のモデル的な木造公共建築物の整備も、国の補助事業を活用して支援することとしております。
 公共建築物は、多くの住民が利用する施設であり、一般建築物への波及効果も期待できますことから、今後とも、市町村と連携し、率先して県産材の利用拡大に取り組んでまいります。
 次に、決算不認定と今後についてでありますが、昨年の12月県議会定例会において、平成23度岩手県立病院等事業会計決算が不認定となったことについては、県としてもこれを重く受けとめるとともに、これまでの県議会からの指摘や意見を十分に踏まえ、地域医療の確保に向けた取り組みにつなげていく必要があると考えております。
 今後におきましては、医師不足等、限られた医療資源の中、二次保健医療圏を基本として、県立病院間はもとより、他の医療機関や介護、福祉等との役割分担と連携をより一層進める必要があり、県立病院等事業の安定経営を確保し、医療の質の向上を図りながら、県民に良質な医療を持続的に提供することができるよう、取り組みを進めてまいります。
 次に、被災した県立病院の再建に係る医師確保についてでありますが、県立病院の常勤医師数は、ここ数年では減少傾向に歯どめがかかりつつあるものの、依然として厳しい状況にあり、特に、被災した県立病院を含めた地域病院の深刻な医師不足は、今後も続くものと予測されます。
 被災した県立病院の再建に当たっては、高齢者を中心とした地域医療を提供するため、入院機能の確保を最優先として検討が進められているところであり、今後の医師確保については、引き続き、関係大学への医師の派遣要請や即戦力医師の招聘に努めるとともに、圏域の基幹病院や地元医師会との連携を図りながら、入院機能の再開に向けて、必要な診療体制の確保に取り組んでまいります。
 次に、大東病院の整備についてでありますが、病院の早期再建に向けて、スピード感を持って進めてほしいとの地元の意向を重く受けとめて、本年3月の実施設計の完了に向けて現在作業が進められているところであり、平成26年4月の入院再開を目途に、来年度増改築工事を実施するなど、取り組みが進められることとなっております。
 次に、医療関係部局の再編についてでありますが、本県の医療政策を保健福祉部と医療局との緊密な連携のもとに推進するため、来年度、医療推進課等を改組し、部内室となる医療政策室を設置することとしているところであり、被災地域における一刻も早い医療提供体制の復旧、復興、医師不足、公的病院としての県立病院のあり方や医療と福祉の連携など、本県医療を取り巻く課題に、より一層、総合的、戦略的に取り組んでいくこととしております。特に、喫緊の課題である医師不足については、保健福祉部と医療局が一体となって取り組んでいくため、同室長については医師支援推進室長を兼務させることとしており、より一層、機動的、効果的に医師の確保を進めます。
 また、各奨学金制度による養成医師の統一的な配置システムが平成28年度から本格稼動することを踏まえ、適切な配置調整を一元的に管理することができる体制、仕組みの構築に向けて、現在、検討しているところであります。
 次に、地域医療政策と県立病院の連携についてでありますが、地域においては、急性期から回復期を経て自宅に戻るまで、患者が一貫した治療方針のもとに切れ目のない医療を受けることができるよう、医療機関相互、医療と介護の連携を促進することが極めて重要であると考えております。このため、次期岩手県保健医療計画には、地域連携クリティカルパスの導入等による医療機関のネットワーク化の取り組みに加え、これら医療機関と薬局、訪問看護ステーション、介護サービス事業所等との一層の連携強化を重点的に進めていく取り組み等を盛り込むこととしております。そうした取り組みを進める上で、地域において日常的な医療を担う県立病院など、いわゆる地域病院においては、初期救急やプライマリーケアなど地域住民に身近な医療を提供しつつ、地域の実情に応じて、患者が退院後も在宅等において安心して療養が継続できるよう、退院時における調整、支援や、在宅療養患者の急変時の受け入れ等の役割を担うことが求められているものと考えております。その実現に向けて、今後、市町村等と連携しながら、地域における取り組みの具体化を支援してまいります。
〇議長(佐々木博君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時34分 散 会
第9回岩手県議会定例会会議録(第3号)

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