平成25年2月定例会 第9回岩手県議会定例会会議録

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〇44番(渡辺幸貫君) 民主党の渡辺幸貫であります。質問の機会をいただきましたことに感謝を申し上げます。
 初めに、知事の政治姿勢について伺います。
 昨年末に行われた総選挙に先立ち、急遽、日本未来の党が設立され、嘉田滋賀県知事がその党首となりました。その仲立ちをされたのは達増知事であります。そして、そのことに対する知事のコメントは、仲立ちは民意とのことでした。また、奥様は、立候補表明で、涙ながらに、何度も主人と話し合って決めたと話されていました。つらい決断だったのだろうとうかがい知ることができました。
 また、かつて知事は、よくツイッターを利用されていましたが、政治家としての立場での発言は、ツイッターを通して行っていると発言されたこともあります。知事は、こうした御自身の行動や発言は、私ども県議会を含め、県民からどう評価されているとお考えでしょうか。
 知事とは、県民の同意を得て政治を推し進める立場にあります。全ての県民から信頼を得られるような行動こそが求められます。私は、達増知事は、被災県岩手の知事として、政治色を出し過ぎていると思うのです。
 今回の選挙後、嘉田知事は、知事として専念せよとの県議会からの指摘に応じ、未来の党から身を引かれました。
 県民に対して納得の得られる御説明をいただきたい。
 次に、平成25年度当初予算について伺います。
 平成25年度当初予算は1兆1、500億円余と、過去最大を更新する規模となっている。また、知事は、これをいわて復興加速予算と称し、東日本大震災津波からの復旧、復興に要する経費を最大限に措置したとしています。
 国の内外からの多大な支援をいただいている今、本県は県の総力を挙げて震災からの復興に取り組んでいかなければならない。また、ものづくり産業や農林水産業の振興、保健・医療・福祉サービスの確保など、県政課題が依然として山積する中で、全県的な視野を持って取り組んでいくことも、復興を加速するために重要となっている。
 国では、平成25年度の当初予算を、平成24年度補正予算と一体となった15カ月予算として編成し、経済対策も推し進めていくこととしているわけだが、知事は、こうした状況を踏まえ、平成25年度当初予算を編成するに当たり、どのような方針で臨まれたのかお伺いします。
 また、復旧、復興事業の財源は、おおむね国からの支援で確保されているとはいえ、平成25年度当初予算では、公債費が前年度より48億円の増となるなど、県債償還は高水準で推移している。さらに、国の地方財政対策を見ると、地方一般財源の総額は0.2%増と、前年度と同水準で確保されたものの、地方交付税は、国家公務員と同様の給与削減を実施することを前提として減額となっている。
 このように、本県財政を取り巻く環境は依然として厳しい状況にあるが、知事は、本県財政の健全性の確保について、どのような展望をお持ちかお伺いします。
 関連して、一括交付金制度について伺います。
 国は、1月11日、緊急経済対策を閣議決定したが、当該対策においては、地域自主戦略交付金は平成25年度に廃止し、各省庁の交付金等に移行した上で重要な政策課題に対応するとされたところである。そして、新年度予算もこの方針のもとで編成されている。
 御案内のとおり、この地域自主戦略交付金は、地方の裁量を縛っていた国の補助金、いわゆるひもつき補助金を廃止し、地方が自由に使える一括交付金を創設するとの方針のもとに、民主党政権において、農山漁村地域整備交付金や社会資本整備総合交付金などの投資補助金を一元化して創設されたものであり、平成23年度から導入されたものである。財源は、確保することはもとより、そこに地方の裁量がどれだけあるかが重要である。現政権が進めようとして、地域自主戦略交付金の廃止と各省庁の交付金等への移行という組み戻しは、地方の裁量を狭めるものにならないか懸念している。
 県は、この交付金制度の見直しを、地方分権、地域主権の推進の観点から、どう評価しているのか伺います。
 次に、震災からの復旧、復興の取り組み状況について伺います。
 震災から間もなく丸2年が経過しようとしている。被災者4割健康悪化、住居めどない7割と、共同通信社は、仮設住宅で暮らす100人のアンケートの調査結果を報じている。この間、行政も住民も懸命に取り組んできたが、それでもなお、本県の復旧、復興は遅々として進んでいないとの声が県民の間にあります。知事は、本年をいわて復興加速年と位置づけ、被災地復興に向けた取り組みを大いに加速させるという。私も、震災から3年目となる平成25年度は、本県復興の正念場だと考えます。歩みを早め、つち音を高くし、光明を見せていかなければなりません。
 そこで伺いますが、県は、これまでの取り組みを振り返り、どう自己評価されているのでしょうか。県の復興計画に定めた三つの原則、安全の確保、暮らしの再建、なりわいの再生ごとに、その成果、進捗状況等を示されたい。
 また、本県の復旧、復興にとって、現在、隘路となっているのは何なのか。また、その解決に向けて、どのように取り組んでいく考えなのか伺います。
 次に、地球温暖化と原子力政策について伺いたい。
 原発事故に備えた地域防災計画の策定がおくれているようだ。30キロ圏の市町村は整備に苦慮しており、したがって、再稼動には6割の首長は賛否を示せないそうだ。
 5年半前、世界の温室効果ガスの排出量を2050年までに50%削減するとする目標が提案される中、京都議定書の中で、日本は2012年までに排出量6%の削減に取り組んだが、温室効果ガスの排出削減は、東日本大震災と原発事故ですっかり忘れ去られ、続く第二約束期間の2013年から2020年には参加していない。また、世界各地で起きる高温、大雨被害は次第に大型化しているし、北極海の氷の面積は1978年の観測開始以来、最小になった。もはや、世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比較して2度C未満とするための50%削減目標は、非常に困難になったものと思われる。こうした中、原子力規制委員会は、高い活断層認定基準を設定し、一、二年内の原発再稼動は難しそうな状況となっている。
 他方、固定価格買取制度は電気料金の引き上げにつながっている。政府の昨年6月試算でも、原発ゼロなら家庭の電気料金が月4、000円から1万円上昇し、国内総生産は、企業の海外進出などで最大45兆円押し下げられるとしている。政府の戦略では、再生可能エネルギーによる発電量を2030年時点で10年比3倍にふやすとしているが、達成には民間も含め、巨額の投資が前提であるし、経団連の調査では、電気料金が上がれば、大半の業界団体が国内生産を減少させると回答している。私は、円安の中で原発を稼動させたら、どんなに日本が元気になるかとの思いはあるのだが、円安は一時的かもしれない。本社機能がない工場立地の多い地方は、国外移転されれば深刻な打撃を受けることとなる。
 知事は、政治的スタンスとしては、卒原発を唱えられているのだと思っているが、改めて、原発をどう考えておられるのか伺います。また、稼動停止による電力料金のアップがもたらす県内産業への影響をどう考えているのか伺いたい。
 次に、TPPについて伺います。
 我々岩手県議会は、去る12月定例会本会議において、農林水産業などへの影響を考慮して、全会一致で反対意見書を可決しました。また、安倍首相は、22日の日米首脳会談で、オバマ大統領とTPP交渉参加に当たっては全ての関税撤廃を前提にしないことを確認したと報じられました。これに伴った世論調査でも、賛成が63%に増加している。アジア最大の自由経済国家で貿易立国として不可欠の判断としている。いよいよ議論が具体的に始まる様相を呈してきました。
 例えば内閣府は、参加で2.7兆円実質国民総生産が押し上げられるとし、農林水産省の言う関税ゼロの根拠の数字も、現在8.5兆円の生産額が4.1兆円減り、食料自給率は40%から14%にとの試算は、食品産業も含めての影響は過大だとの批判に対し、内々3.4兆円減で見積もりし直しているとか。経済産業省は、TPPに参加しなければ輸出が8.6兆円、生産額が20.7兆円減るとしている。本社機能がなく、工場立地に頼る岩手のような地方経済にとっては頭の痛い問題である。
 さらに、日米首脳会談の共同声明では、両国の懸案事項として保険も明記され、保険のターゲットは、日本政府が100%出資する日本郵政という。もちろん、自動車、牛肉も譲歩が求められるだろうとしている。私は、TPP参加に対して何か説得力のある論拠やデータが不足している気がする。既に2年以上が経過しているのに、我々国民が判断できる情報がないのはどういうことなのだろう。我が県が事務段階で把握している情報と、それに伴う岩手県の見解をお示しください。
 さらに、TPPは、経済だけでなく、中国を牽制する安全保障の枠組みとの意味合いも強いと聞く。外交官出身の知事のTPPをめぐる現在の状況についての見解を伺いたい。
 また、農業の担い手は既に65歳を超えているとか。農業が後退を余儀なくされたら、食料自給はどうするの議論は、兼業を潰し、主業型や集落営農に重点を置けばいいとの意見がある。しかし、稲作の最大の苦労である畦畔の草刈りはどうするのだろう。土地改良の水路は、担い手農家だけで負担し得まい。多面的機能は失われる。競争原理のもと、保険や信用事業をもぎ取られたら農協は成り立たない。農協の集出荷施設は、そして農産物の販路はどうなる。農業共済も、政府の保険拠出で成り立っていたが、補助は打ち切られるのか。農政がうまくいかないのは、農村を知らな過ぎるからではないのか。農協も郵便局もなかったら、田舎ではどうして暮らしていけばいいのか。農政の立場から、これら農業関係者の心配についてどう考えているのか伺いたい。
 また、台頭する中国は、対内投資や政府調達、知的財産権保護、輸出規制、競争政策など、WTO規制の弱い領域で自国優先の身勝手な政策を推し進めている。中国の国家資本主義を模す新興国もふえるばかりだ。だから、こうした21世紀型の通商問題に取り組み、共通のルールのもとに公正な市場を築く試みがTPPだし、広く生産者のみならず、消費者への恩恵の視点での議論も必要だと、TPP賛成論者は言う。しかし、新設の産業競争力会議のメンバーに竹中平蔵氏の名前もあるが、規制緩和の名のもとに、大資本に有利な格差社会が拡大しないか心配される。中国を中心に、対外販路開拓等に意欲を燃やす県の立場からの見解も聞かせていただきたい。
 次に、教育問題について伺います。
 最近の報道で、スポーツ界のいじめ、体罰が問題となっている。高校のバスケットボール部の生徒の自殺、柔道日本代表監督の体罰、大津市の中学生のいじめ自殺等、ここのところ一気に噴き出してきている。強い立場の人間が、恐怖心をあおって人を従わせる発想が、子供たちの心に及ぼす悪影響は計り知れない。パソコン遠隔操作事件の犯人も、学校でのいじめから閉鎖された性格になったとか。本県でも、現在苦しんでいる生徒がいるかもしれない。
 文部科学省のいじめ調査では、いじめが社会問題になると件数が飛躍的にふえるそうだが、一方で、教育委員会ごとの対応に大きな差があり、都道府県ごとの発生割合に約160倍もの開きが出たそうである。体罰の調査でも同じように大きな地域差があり、文部科学省幹部は、具体例を示すことも必要だとしている。
 そこで伺うが、本県は、どのようにしていじめや体罰の定義をわかりやすく広く教育現場に定着させ、正確な実態を調査していくお考えでしょうか。また、教育委員会が原因究明に及び腰であったり、つまり、学校側に調査を丸投げしたり、大津市の事件のように、訴訟が起こされた場合の法的責任を回避するため、自殺の原因が家庭問題にあるやの虚構をつくり出すとしたら、極めて悪質である。組織防衛優先の対応は、真相解明をおくらせ、遺族にさらに苦痛を与えるものとなる。
 暴力は閉鎖社会に育つ。真相は開かれたところで明らかにされなければならない。この点について、県は、教育委員会にどのように真実を報告させるように指導されるか伺います。
 また、現行の教育委員会制度のもとでは、事務方トップの教育長以外は市民から選ばれるため、専門的知識に乏しく、会議も月1回程度が多く、事務局の方針を追認するだけで、責任の所在が曖昧だとの批判がある。加えて、事務局は教員出身者が多く、身内に甘い体質を持っていると言われている。
 今次総選挙でも教育改革が公約にされ、教育委員会の廃止の主張もあったところである。政府の教育再生実行会議でも議論されると思うが、この際、本県の現時点での教育委員会制度についての反省点や、市町村へのあり方指導をどう考えているかお伺いしたい。
 また、大阪では、来年度から知事や市長が掲げる教育改革のもと、生徒や保護者による教員評価の授業アンケートが始まるという。教員の資質や指導方法に対する社会の目は時代とともに厳しくなっていると思うが、教員の独善的な教育や指導力不足は、いじめや体罰事件と根っこは同じかもしれない。この授業アンケートの必要性をどう感じているのかについてもあわせて伺います。
 次に、公共インフラの老朽化対策について伺います。
 トンネルの崩落事故もあり、今年度の補正予算では、事前防災、つまり公共インフラの老朽化対策がテーマになっている。国土交通省によると、全国の道路橋のうち、2010年時点で建設後50年以上経過した橋は全体の8%、これが2020年には26%、2030年には53%になる見込みという。また、共同通信社が行った全国自治体アンケートでは、今後の維持費用を推計した自治体の約8割が、財源が不足するとしている。こうした状況を踏まえ、国は国土強靭化を進めるため、地方自治体が管理するインフラの点検、補修を支援するための防災・安全交付金5、498億円余りを補正予算に盛り込んだという。
 そこで伺うが、我が県の公共インフラの老朽化の度合いはどれほどであるのか。また、国の動き等に呼応して、急がれる点検、補修対策を実施できる体制にあるのかお伺いします。
 次に、BSE対策に関連しての畜産振興策について伺います。
 厚生労働省は、2月1日から、BSE対策として実施している牛肉の輸入規制を緩和し、輸入可能な米国産牛肉の月齢が20カ月以下から30カ月以下に引き上げられた。この見直しにより、今後の米国産牛肉の輸入増加が確実視されており、国内生産者からは、米国産牛肉が我が国の市場に出回った場合には、国産牛肉の相場に影響を与えかねないとの声が上がっている。また、本県畜産農家は、震災や原発事故による被害から何とか生産力を回復しようと懸命に努力しているところであり、さらなる輸入増加は、生産意欲の低下につながりかねない。牛肉の輸入規制緩和による国産牛肉の相場への影響を考えた場合、畜産農家に対する中長期的な支援が欠かせないと考えますが、この点について県の考えを伺います。
 また、我が国のBSEを早期に根絶し、消費者や生産者の信頼を回復するためには、反すう動物用飼料への動物由来のたんぱく質の混入防止の徹底と、死亡牛BSE検査の継続が必要となります。現在、牛由来の肉骨粉、脊柱の適正処理や、県の死亡牛BSE検査と検査後の処理はレンダリング施設で行われているが、これらが適切に処理されなければ、生産者はもとより、行き場を失った畜産残渣によって屠殺畜機能が麻痺することとなり、消費者の食の安全・安心を脅かすおそれが生じるところとなる。このため、死亡獣畜の適正処理や畜産副産物の有効利用を積極的に推進する必要があると考えるが、県としてレンダリング施設の果たす重要性をどのように捉え、どう指導されていくのか伺います。
 最後に、観光地や博物館等で活躍する観光案内ガイドについて質問します。
 けさの新聞に、大震災の記憶を伝える語り部ガイドの活躍が載っていました。私は、先ごろ委員会調査で熊本県山鹿市を訪れた際、国の文化財の八千代座という芝居小屋を視察しました。ガイドさんはどこにでもいそうな風貌の方だったが、身ぶり手ぶりで見事な案内をいただき、我々一堂、いたく感動しました。また、別の機会に訪れた長崎県対馬のボランティアガイドさんは、朝鮮通信使の果たした役割はもちろんのこと、岩手から来たと言ったら、我が盛岡の黄精飴の伝来にまで話が及びました。奈良の国立博物館のボランティアガイドさんは、中国の古代の歴史、仏像や仏教の話も、和尚さんもここまでの人はなかなかいないのではないかと思わせる方で、経歴を伺うと、一流企業を退職後、趣味を生かして説明するのも楽しい、説明料は無料、ささやかな寄附をしてもらえば施設の維持管理に役立てるとのこと。いずれの方も、帰ると早速、個人的な手紙までいただき恐れ入った。
 岩手でも、この知識ときめ細やかさをぜひにと思う。しかし、残念ながら、さまざまな施設でボランティアガイドさんを余り見かけない。例えば、世界遺産平泉の遺跡の多くは、まだ地中に眠っている。目に見えぬものの魅力を伝えるには、深い知識を身につけた語り部が必要ではないか。そして、旅の魅力とは、こうした人との出会いにこそあるのではないか。
 県は、ボランティアガイドの人材発掘と育成にどのように取り組んでいるのか、また、今後どう取り組んでいくのか伺いたい。私は、市町村任せにせず、県が主体的に取り組んでいくことが必要と思っている。
 さて、国家や社会システムにも耐用年数があり、変革しなければならない。文明というのは、生命体であり、必ず没落と上昇があるのかもしれない。ドイツの評論家ベルネは、政治は帆であり、国民は風であり、国家は船であり、時代は海であるという。
 今こそ、国を挙げて時代を乗り切らねばならないときだとの思いを込めて質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 渡辺幸貫議員の御質問にお答えいたします。
 まず、私の国政に関する行動や発言についてのお尋ねでありますが、我が国政治史上、初の本格的な政権交代の実現を促したことや、その政権交代の迷走に対して警鐘を鳴らし続けたことなどについて、県民の皆様からも一定の評価をいただいているものと認識しており、さきの知事選挙の結果にもそれは示されていると思います。知事が日本全体のあるべき姿について見識を持ち、発信したり行動したりすることについては、県民からの期待もあると考えております。より見識を高め、岩手を含む日本全体のためとなるような発信や行動ができるよう、努めてまいりたいと考えております。
 次に、平成25年度当初予算についてでありますが、平成25年度当初予算は、被災者一人一人が復興の歩みを実感できるよう、いわて復興加速予算として編成を行いました。この予算では、県の復興計画における基盤復興期間3カ年の最終年度として、国や市町村と連携を密にして、復興の取り組みを加速させていくために必要な経費を盛り込んでおり、また、希望郷いわてを実現するため、希望郷創造推進費枠を設けるなど、全県的な視野を持って、岩手の将来を見据えた中長期的な取り組みにも配慮しました。
 一方、国のいわゆる15カ月予算等への対応については、当初予算からの前倒しを含めて、1、146億円の経済対策を計上した24年度2月補正予算を提案することとしており、当初予算と一体的な執行に努め、県内経済の活性化を図っていくこととしております。
 次に、財政の健全性確保についての展望でありますが、本県財政は、復旧、復興に向けて多額の財源が必要なことに加え、社会保障関係経費の自然増や県債償還がピークに達するなど、中長期的に厳しい局面が続くものと見込まれます。これまで、復旧、復興については、国費による力強い支援を基本として要望、提言を重ねた結果、国を動かし、一定の財源確保対策が講じられてきましたが、引き続き、的確に機会を捉え国に訴えてまいります。
 一方、県においては、これまで県債残高の中長期的な抑制に努めるとともに、通常分の財政運営が復旧、復興の支障とならないよう、県債管理基金を積み増すなど、財政健全化にも取り組んできたところであります。引き続き、あらゆる手法による歳入の確保や歳出の徹底した見直しなど不断の行財政改革を行いながら、規律ある財政運営に努めてまいります。
 次に、一括交付金制度の見直しについてでありますが、この制度は、本格的な税財源移譲までの過渡的な措置として導入されたものと認識しており、地方分権推進の観点から一定の評価をしていたところであります。そうした意味において、今回、当該制度が廃止されることは残念でありますが、見直しにより、各省庁の交付金等に移行する中で、メニューの大くくり化や追加、複数の事業の一本化など、地方の裁量に配慮した運用の改善が図られることとされておりますことから、その動向を注視していく必要があると考えております。あわせて、全国知事会等とも連携し、こうした見直しを含めた改革の取り組みを進め、最終的には本格的な地方への税財源移譲が実現されるよう、今後も国に働きかけていきたいと考えております。
 次に、これまでの復旧、復興の取り組みの成果及び進捗状況等についてでありますが、まず、安全の確保については、本県で発生した災害廃棄物の処理は、本年1月末現在で3割程度まで進み、可燃物については処理のめどが立ったところです。また、防災集団移転促進事業などの面的整備事業は、これまでに、復興交付金を活用した防災まちづくり事業計画地区の約9割に事業着手しております。
 暮らしの再建については、県と市町村が整備する災害公営住宅5、600戸のうち約4割の事業に着手し、今年度末には、野田村や大船渡市などで一部の住宅の完成が予定されています。
 なりわいの再生については、県内13の産地魚市場の全てが再開し、水揚げ量も平年の約6割まで回復してきているところであります。また、被災事業者も、企業等の二重債務の解消や中小企業グループ補助等の活用などにより、一部再開も含め約8割の事業所で事業が再開したほか、観光についても、いわてデスティネーションキャンペーンを中心に取り組み、岩手の観光復興に向けた確かな足がかりをつかみました。
 このように、被災から間もなく2年を迎えようとしている中で、復興計画に掲げる安全、暮らし、なりわいの基盤を復興する取り組みが進展している一方で、いまだ応急仮設住宅で不自由な生活を余儀なくされ、復興の進捗を感じられない多くの被災者がいらっしゃることから、復興を加速する必要があると痛感しております。
 次に、復旧、復興において隘路となっているものとそれに対する取り組みについてでありますが、復興を加速させるためには、専門的な人材の確保、確実で自由度の高い財源措置、そして、事業用地を円滑に確保するための手続の抜本的な簡素化、これらが必要であると考えております。
 このため、まず、人材の確保については、任期付職員や再任用職員の採用、総務省の派遣スキーム等に基づく職員派遣要請の継続などに加え、新たに復興庁の支援による民間企業等の人材の受け入れなどにより、復旧、復興事業に対応するための人材の確保に全力で取り組んでまいります。
 次に、財源については、これまでも、本県を初め地方からの要望、提言が国を動かし、財源確保対策や繰越手続の簡素化などの一定の措置が講じられてきたところでありますが、今後とも、復興が実現するまでの間の確実な財源の確保や地域の多様なニーズに対応するための自由度の高い財源措置が必要であり、引き続き国に強く要望してまいります。
 また、事業用地の確保については、これまでの本県等からの要望を踏まえ、国では、所有者不明土地の収用等に係る手続の簡素化を図るための関係省庁による連絡会を設置し対応策を検討しているところでありますが、事業用地を円滑に確保するためには、行政手続を抜本的に簡素化する大震災復興特例とでも言うべき施策を講ずることが必要と考えておりまして、引き続き国に対し強く働きかけてまいります。
 次に、地球温暖化と原子力政策についてでありますが、原発については、これまで、経済効率性にすぐれ、二酸化炭素を排出しない準国産エネルギーとして推進されてきましたが、原発事故を契機に、安全性の確保や重大事故が及ぼす甚大な影響、使用済み核燃料の処理など、さまざまな課題が明らかになりました。
 一方、再生可能エネルギーは、地産地消によるエネルギー自給率の向上はもとより、地球温暖化防止や防災のまちづくり、地域振興など多面的な効果をもたらすものと認識しており、コスト面の課題についても、今後、導入が進むことにより解決することが期待されることから、県としては、引き続き再生可能エネルギーの導入を力強く推進してまいります。
 次に、電力料金のアップがもたらす県内産業への影響についてでありますが、東北電力では、平成25年7月1日から家庭向け電気料金を11.41%、企業向けを17.74%値上げする旨、申請を行ったところであります。この電気料金値上げは、被災した企業の事業活動や雇用に影響が懸念されるものであり、被災地の早期復興や復興を牽引する誘致企業の操業にも影響を及ぼすおそれがあるものと考えております。そのため、値上げに関しては、東北各県との連携も図りながら、被災地の事情を考慮するよう国に働きかけたいと考えております。
 次に、TPP協定についてでありますが、2月23日に行われた日米首脳会談の後に発表された共同声明では、一方的に全ての関税撤廃をあらかじめ約束することを求められるものではないことが確認された一方で、全ての物品が交渉対象とされることを確認するとも明記されており、結果として関税撤廃の例外が認められなくなる可能性があると思います。また、日本側には一定の農産品が、米国側には一定の工業製品がセンシティビティー、いわゆる重要項目とされており、日本側のごく一部の農産品の例外化と引きかえに日本からの輸出増が期待される工業製品が米国側において例外化され、他方で日本側の大部分の農産品の例外化は認められないということになれば、日本側にはメリットがなく、デメリットばかりとなる可能性もあります。
 TPP参加による本県農業への影響について、平成22年に行った農林水産省の試算方法を本県に当てはめますと、約1、400億円、本県農業生産額の約6割に相当する生産額が減少する結果となり、農業生産はもとより、農村そのものにも大きな影響が懸念され、生産者の方々の不安を重く受けとめております。
 国では、物品市場アクセス、政府調達など21の分野について、既に交渉入りしている国々の交渉状況についての情報を公開していますが、我が国については、これから交渉してみないとどうなるかわからないという状況だと思います。報道によれば、米国側は自国の経済再生と雇用拡大を目標として明示し、特に牛肉、自動車、保険の分野への関心を明らかにして関税以外の規制やルールも含め戦略的に対日交渉を進めようとしているのに対し、日本側はTPPによって我が国の経済、社会をどのようにしようとしているのか明確ではない上に、交渉に向けての方針や優先事項も明らかでなく、戦略性が感じられません。こうした状況では、TPP交渉への参加は日本に不利な結果をもたらし、特に農業を初めとする地方の経済、社会に大きな打撃を与え、東日本大震災からの復興の妨げになるおそれも大きいと考えられることから、交渉参加には賛成しかねます。
 県としては、今後、情報収集に一層力を入れるとともに、このまま安易な交渉に臨むことのないよう、全国知事会などとも連携し、機会を捉えて国に要望してまいります。
 次に、中国等への販路開拓等を進める立場からの見解についてでありますが、本県が有望市場と捉える成長著しい中国を初めとした東アジア地域においては、長い歴史やすぐれたわざに培われた南部鉄器等の伝統工芸品や日本酒など、本県の持つ個性や強みを生かしながら販路開拓を行い、一定の成果を得てまいりました。
 県としては、TPPに関する情報収集に努めながら、引き続き本物志向のニーズに応える、本県のブランドを生かした販路開拓等の取り組みを積極的に展開し、中国を初めとした東アジア地域との経済交流を進めてまいります。
 次に、いじめや体罰の実態調査の進め方についてでありますが、実態調査に当たっては、県教育委員会が文部科学省のいじめや体罰の定義に基づいて行っていると承知しており、各学校と十分に連絡調整を行いながら進めるものと考えております。
 次に、調査に当たる教育委員会に対する指導についてでありますが、今回の調査では、学校における体罰の状況を正確に把握することが重要であると考えております。そのため、県教育委員会では、教員から聞き取りを行うだけではなく、児童生徒、保護者に対してアンケートを行うとともに、調査の実施に当たっては、市町村教育長等に対して趣旨を説明し、徹底を図ったと聞いており、県教育委員会において適切に実態把握に努めるものと承知しております。
 次に、教育委員会制度についてでありますが、教育委員会制度のあり方については、議員御指摘の点も含めさまざまな指摘がなされており、今後、国の教育再生実行会議においても検討されることと承知しております。
 県教育委員会は、知事部局とも連携しながら、東日本大震災津波からの学びの場の復旧、復興に全力を挙げているところであり、私との意思疎通も図られていると考えております。また、各市町村教育委員会については、その活性化が図られるよう、県教育委員会において必要な支援が行われているものと承知しております。
 次に、教員評価のための授業アンケートについてでありますが、県内の学校においても授業後に児童生徒にアンケートを行い、授業方法の改善につなげるなどの取り組みが行われていると聞いており、このようなことを通じて教員の授業力の向上が図られることを期待しているところであります。
 次に、公共インフラの老朽化の状況についてでありますが、県が管理する公共土木施設のうち、建設後50年を経過した道路橋梁の割合は、2010年時点で全体の8%と全国値と同数となっていますが、2030年時点では49%と、全国値の53%よりやや低くなることが見込まれています。本県の多くの公共インフラは、主として高度経済成長期以降に整備を進めてきたところであり、全国的な老朽化の進行割合より低い状況にあると認識しております。
 次に、これら施設の点検補修対策の実施体制についてでありますが、県では、公共インフラの老朽化、高齢化対策として、いわて県民計画に社会資本の維持管理と担い手の育成確保を掲げ、公共土木施設の長寿命化対策や予防保全型維持管理によるコストの抑制等も含め、施設の安全性と信頼性の確保に努めてきたところであります。
 国が進める国土強靭化における公共土木施設の総点検と老朽化対策等については、県がこれまで取り組んできた施策と方向性が一致するものであり、県としても、先般の中央自動車道笹子トンネル天井板落下事故を契機とした緊急的なトンネル総点検の実施など、国の動きに呼応した対応を既に進めております。今後とも、国や市町村との連携を深めながら、持続可能な公共インフラの維持管理を目指して戦略的な取り組みを進めてまいります。
 次に、牛肉の輸入規制緩和を踏まえた畜産農家への支援についてでありますが、米国産牛肉の輸入規制月齢が今月1日から20カ月以下から30カ月以下に緩和されました。このことにより、国産の乳用種や交雑種、本県特産の日本短角種の販売価格が輸入制限される以前の水準まで低下することが懸念されます。このため、県としては、低コスト牛舎等の整備、省力管理や規模拡大を図るための外部支援組織の育成強化などにより引き続き生産基盤の強化を推進するとともに、枝肉価格の低下による農家の収益性の悪化に備え、今後、国が充実を図ることとしている各種価格安定対策事業への加入を促進し、畜産農家の経営安定を図ってまいります。
 次に、レンダリング施設に対する指導についてでありますが、レンダリング施設は、死亡家畜や屠殺畜残渣など畜産副産物を適正に処理するとともに、これによりBSEの感染経路を遮断する役割を担うなど、畜産振興上重要な施設と認識しております。
 県としては、これまでも、畜産副産物を適正に処理するため、原料管理や処理工程の改善に係る技術的助言や施設整備など、ソフト、ハード両面から支援を行ってきたところであります。今後とも、レンダリング施設の事業が岩手の畜産を支える産業としてその役割を果たしていけるよう、関係機関、団体等と連携しながら取り組んでいく考えであります。
 次に、ボランティアガイドの人材発掘と育成についてでありますが、観光客の多様なニーズに対応し、本県の歴史、文化、自然などの魅力を解説する観光ボランティアガイドは、本県観光において重要な役割を果たしていると認識しております。現在、県内では39団体707人の観光ボランティアガイドが活動しておりますが、これまで県では、観光ホームページにおける情報発信やボランティアガイド団体の研修事業への支援などに努めてきたところであります。
 平成25年度におきましては、さらに震災語り部ガイドのネットワーク化やスキルアップなどを支援することとしており、今後とも、観光客の満足度を高め、より多くの方々に本県を訪れていただけるよう、質の高いボランティアガイドの人材確保とさらなる資質の向上に取り組んでまいります。
〇議長(佐々木博君) 次に、千葉伝君。
   〔47番千葉伝君登壇〕(拍手)

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