平成25年2月定例会 第9回岩手県議会定例会会議録

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〇知事(達増拓也君) 本日、ここに第9回県議会定例会が開会されるに当たり、今後の県政運営について、私の所信の一端を申し上げます。
 冒頭、改めて、東日本大震災津波で犠牲になられた方々の御冥福をお祈りし、この演述をささげさせていただきたいと思います。
 犠牲になられた皆様のふるさとへの思いをしっかりと引き継いでいかなければならないという思いは、日を重ねるほどに深まります。
 あれから2年がたとうとしています。今なお応急仮設住宅等での不自由な暮らしを余儀なくされている方々を初め、被災された皆様に対し、心からお見舞いを申し上げます。復興の主役として、皆様に希望と力が湧いてくるように努めてまいります。
 一方で、自分も、自分たちも、岩手の復興に参画するのだと、全国及び海外から多大な御支援や励ましをいただいております。岩手県民を代表して厚く御礼を申し上げます。
 昨年は、震災からの復興を軌道に乗せる復興元年として、基盤復興の取り組みを本格化させました。
 まずは、安全の確保に最優先で取り組み、災害廃棄物の処理、海岸保全施設の復旧、整備や復興道路の整備、三陸鉄道の復旧に力を注ぎました。
 そして、暮らしの再建については、災害公営住宅の建設、被災地の医療提供施設、社会福祉施設や学校施設の復旧、整備を進めました。
 また、なりわいの再生については、県内13カ所の魚市場全てが業務を再開し、漁船や養殖施設の復旧、整備が進み、被災事業所が着実に再開されてきました。観光についても、いわてデスティネーションキャンペーンを中心に取り組み、岩手の観光復興に向けた確かな足がかりをつかみました。
 はかり知れないほどの御支援、励ましに対する恩返しのためにも、復興を通じて、日本のあるべき姿を岩手において実現し、日本の再生に貢献することができればと思います。
 市町村としっかり連携し、発災前から地域が抱えていた課題や岩手の未来を見据えた課題にも取り組み、県民誰もが笑顔になれるよう、岩手のあるべき未来に追いつく復興を全力で推進してまいります。
 平成25年度は、基盤復興を目指す第1期復興実施計画の最終年度であり、本年を復興加速年と位置づけ、復興を加速させます。具体的には、復興道路などの災害に強く信頼性の高い道路ネットワークの構築、多重防災型まちづくりの前提となる津波防災施設の整備を進めます。
 また、震災の記憶を風化させることのないよう、追悼と鎮魂の象徴的な場となる震災復興祈念公園を、陸前高田市に、国と一体となって整備してまいります。
 加えて、これまでも被災者一人一人に寄り添い、ソーシャルインクルージョンの観点に立って生活支援の取り組みを進めてきましたが、引き続き、誰もが社会の中でつながりを持ちながら、一人一人が希望を持って着実に歩んでいくことができる復興を推進します。
 被災者の暮らしの再建に向け、応急仮設住宅から恒久的な住宅への住みかえを進めるため、持ち家住宅の再建を支援するとともに、安全で良質な災害公営住宅の整備を進め、県が整備する災害公営住宅約2、800戸については、平成26年度までの完成を目指します。
 被災者の恒久的な住宅への住みかえによって被災者の生活が徐々に改善していく一方、今なお多くの方々が応急仮設住宅での生活を余儀なくされていることから、被災者相談支援センターの相談機能の充実を図るなど、市町村やNPO等と連携、協働しながら、被災者一人一人の状況に応じたきめ細かな支援を行います。
 また、高齢者が住みなれた地域で安心して暮らせるよう、被災地における新たなまちづくりと連動して、市町村が主体となった地域包括ケアシステムの構築を支援します。
 被災地においては、産業の再生を本格的な雇用につなげ、仕事と収入を確保することが急務であることから、漁業関連施設の整備と水産加工業の高度化、被災した中小企業、商店街の事業再生、産業再生特区の活用、起業支援の充実を図ります。
 被災者の意識として、生活の回復を感じる方の割合が半数を超えました。しかし、いまだ十分な実感を持てない方も多いことから、被災者が将来の見通しを持ちながら一人一人の復興に取り組むことができるよう、被災者が身近に感じられるまちづくりや産業再生の取り組みを加速し、復旧、復興の道筋と全体像をわかりやすく示すことにも意を用いてまいります。
 東日本大震災に伴う原発事故による放射線影響対策については、子供の健康と食の安全・安心を重視する観点から、県内全域における監視体制の整備、放射線量の低減、県産食材と学校給食の検査体制の強化などに取り組んでまいりました。
 今後も、市町村が実施する除染や放射性物質汚染廃棄物の処理の支援、健康に関する正しい知識の普及に向けた取り組みを進め、また、産地の再生に向けて、牧草地の除染、シイタケのほだ場の環境整備などの取り組みを進めます。
 特に、風評被害対策が喫緊の課題であり、安全・安心な県産品の魅力と元気な岩手のイメージを消費者に直接届ける攻めの姿勢の情報発信を行い、消費者の岩手への信頼を高め、新たな、また継続的な岩手の顧客となっていただくように努めてまいります。
 政府の月例経済報告によれば、我が国の経済情勢は、一部に下げどまりの兆しが見られるものの、海外経済の減速等を背景として弱い動きとなっており、今後も、海外景気の下振れやデフレの影響にも注意が必要な状況となっています。
 このような経済情勢に加えて、人口減少や貧困、格差などの問題もあり、日本全体には将来への不安が漂っています。
 一方、岩手においては、復興という揺るぎない目的を共有して、人や社会のあるべき姿を実現すべく強力に取り組みを推進しているところであり、このような岩手での取り組みが、日本全体の課題解決にもつながっていくと考えます。
 こうした視点に立ちながら、復興実施計画といわて県民計画アクションプランに基づく取り組みを着実に推進するとともに、新たな発想のもと、世界に誇る新しい地域の創造を目指す取り組みについて具体化を図ってまいります。
 すなわち、平成25年度においては、基盤復興の推進を基本としながら、岩手の未来を見据え、中長期的な視点に立って、先駆的、分野横断的に取り組む復興計画の三陸創造プロジェクトと、いわて県民計画の岩手の未来を切り拓く六つの構想を力強く推進してまいります。
 具体的には、岩手の強みや岩手らしさを生かす新たな発想に立ち、海洋エネルギーに関する国際的研究拠点の構築を目指す取り組みの推進、三陸の海の資源を活用した新産業の創出、日本ジオパーク認定に向けた三陸ジオパーク構想の推進、新たな産業分野であるデジタルコンテンツの振興などに本格的に取り組みます。
 また、東北全体の復興と日本再生の象徴となるプロジェクトである国際リニアコライダーについては、この夏にも候補地一本化の動きがあることから、関係機関と連携しながら、北上山地が最適であることをアピールし、建設地として選定されるよう東北が一丸となった誘致活動に取り組みます。
 復興を加速させるためには、専門的な人材の確保や確実で自由度の高い財源措置、事業用地を円滑に確保するための手続の抜本的な簡素化など、課題解決のための思い切った施策が必要です。
 これまでも本県を初め地方からの要望、提言が国を動かし、財源確保対策や繰越手続の簡素化などの一定の措置が講じられてきました。
 復興の現場においては、地方自治体がその判断と責任のもと、地域の主体性を発揮し、復興を迅速かつ着実に進めていく一方で、国には、対症療法的な措置ではなく、日本全体の将来を見据えた国家プロジェクトとして復興に取り組み、その中で地方がより自由に使える財源措置や、行政手続を抜本的に簡素化する大震災復興特例とも言える施策を講じることが望まれます。
 また、強い地方経済に支えられた強い日本経済が復興の大きな力になることから、地域の実情を踏まえた効果的な経済対策を、復興施策と一体的に切れ目なく実施することが必要です。
 このような地方と国、それぞれの主体的な取り組みが進められることで、東日本大震災からの復興と日本の再生が実現するものと考えます。
 これらの施策の実施については、これまでも国に対し、要望、提言を行ってきたところですが、引き続き、的確に機会を捉えて訴えてまいります。
 国の平成25年度予算案においては、地方交付税などの地方一般財源総額は確保されたものの、地方と十分協議をしないまま、地方公務員給与の減額を前提に地方交付税が削減されており、このことは地方の行財政改革への理解が不十分な、地方自治の根幹にかかわる大きな問題と捉えています。
 他方、復旧、復興予算の総枠が見直され、その財源は確保されましたが、本県財政は、社会保障関係経費の自然増や、過去の経済対策等に伴い発行した県債の償還が数年内にはピークに達すること、また、財政調整基金などの残高が大幅に減少することなどから、これまでにも増して厳しい局面を迎えることが見込まれます。
 こうした情勢のもと、平成25年度の当初予算は、限られた財源の中で全ての事務事業を精査した上で、基盤復興を加速させ、本格復興につなげるための施策を着実に実施する、いわて復興加速予算として編成しました。
 また、今般の国の緊急経済対策についても、復興の推進と地域経済、産業の活性化の観点から適切に対応してまいります。
 復興まちづくりに向けた事業が本格化する中、技術職員等の不足は明らかであり、執行体制の一層の拡充、専門的知識を有する人材の確保に取り組む必要があります。
 そのため、任期つき職員や再任用職員を活用した人材確保に全力を挙げて取り組むとともに、総務省の派遣スキーム等に基づく職員派遣要請を継続し、将来負担を伴わない方策による人的資源の確保を図り、復旧、復興事業や関連する埋蔵文化財調査等に対応するための体制を強化するほか、職員が安心して業務に取り組めるよう環境整備やケアに努めます。
 また、自治体間連携による人的支援をいただく中で、派遣職員と県職員が復興に向けて協働していくことにより、これまで庁内になかったさまざまな視点からの取り組みや知見が業務に生かされてきています。これを県の施策の進化や組織の体質強化につなげ、今までI援隊運動として取り組んできたことをさらに発展させてまいります。
 平成25年度における具体的な施策についてでありますが、復興計画の三つの原則と、いわて県民計画の七つの政策に基づいた施策を軌を一にして推進してまいります。
 以下、主な施策の内容について御説明いたします。
 初めに、復興計画の三つの原則のうち、安全の確保であります。
 安全の確保の前提となる災害廃棄物の処理については、平成26年3月末の処理期限に向け、可能な限り復興資材などに再生利用を図りながら、県内や広域での処理を着実に推進します。
 災害に強い安全なまちづくりに向け、多重防災型まちづくりの前提となる防潮堤などの津波防災施設の復旧、整備について、平成27年度までの完成を目指すとともに、水門や陸閘の遠隔操作化を推進します。
 大震災津波の経験を経て、県民の防災意識はかつてないほど高まっておりますが、こうした震災体験を風化させず、今後の行動につなげていくため、地域に根差した防災文化を醸成し、継承していく人材の育成に取り組みます。
 さらに、災害時に有効に機能する防災体制の充実強化を図るため、広域的かつ実践的な総合防災訓練の実施や、災害時に迅速かつ的確に対応できる要員の育成を行うとともに、広域防災拠点の早期整備を推進します。
 被災地の良好な治安の確保に向けては、警察官の緊急増員を継続するとともに、被災した警察施設の復旧、整備に取り組みます。
 道路ネットワークの構築については、復興道路の早期全線完成に向けて、引き続き、国や関係機関と一丸となって取り組むとともに、復興支援道路や復興関連道路の整備についても一体的に推進します。
 港湾機能の回復については、平成25年度中の復旧を目指すとともに、取扱貨物量の回復に向けた取り組みを進めます。
 鉄道については、本年4月に三陸鉄道盛-吉浜間が開通予定であり、平成26年4月の全線開通に向けて本格復旧を着実に進めるほか、JR線についても、早期復旧に向けた必要な調整や国等への働きかけを行ってまいります。
 また、被災地のまちづくりに伴う通信、放送基盤等の構築に向けて、超高速ブロードバンド、携帯電話、地上デジタルテレビ放送等の情報通信利用環境の整備を促進します。
 国民の原子力発電に対する問題意識の深まりや再生可能エネルギー導入に対する意識の高まりを踏まえ、災害にも対応できる自立・分散型のエネルギー供給体制の構築が求められています。
 このため、本県に豊富に賦存する再生可能エネルギー資源を最大限活用すべく、地域のエネルギー供給体制の整備に取り組むとともに、引き続き、防災拠点や住宅、事業所等への再生可能エネルギー設備の導入や、メガソーラー、風力発電等の大規模発電施設の立地を促進するほか、海洋再生エネルギーの利活用についても検討を進めます。
 また、県としても、再生可能エネルギーの導入に率先して取り組み、一戸町高森高原地区の大規模風力発電所建設に向けた環境影響評価に着手するほか、北上市に平成26年度の運転開始を目指して大規模太陽光発電所を建設します。
 次に、暮らしの再建であります。
 被災者の生活再建については、被災者の生活の安定や住宅再建を進めるため、災害公営住宅の整備や住宅再建に対する資金面等の支援のほか、さまざまなニーズに対応する相談体制を充実します。
 また、災害公営住宅の整備や被災地のまちづくりに合わせた、きめ細かい交通システムの再構築に向けた調査、実証運行の取り組みを進めます。
 雇用の維持、創出に向けては、産業振興施策と一体となった雇用対策や、基金を活用した雇用創出により、安心して働ける雇用機会の拡充と安定的な雇用の創出に努めるとともに、企業と求職者とのマッチングを支援し、就業の促進に取り組みます。
 被災地における医療提供体制の整備については、仮設診療所の運営や医療機関の診療機能の回復支援、新たなまちづくりと連動した医療施設の移転新築への支援、遠隔医療体制の整備に引き続き取り組むほか、被災した県立病院や地域の公的医療機関の再建を進めます。
 被災者の心のケアについては、岩手県こころのケアセンター等を拠点として、被災者に対する継続した心のケアをきめ細かく実施します。
 心にダメージを受けた子供たちに対しては、学校への臨床心理士の派遣、関係機関と連携した重層的な支援体制の構築のほか、沿岸3地域で実施している子どものこころのケアに加えて、心のケアを中長期にわたって担う全県的な拠点である、いわてこどもケアセンターを新たに設置し、対策を充実します。
 教育の復興については、本県の復興、発展を支える人材の育成を図るいわての復興教育について、市町村教育委員会と連携しながら、各学校の取り組みを支援し、児童生徒用の副読本の作成や地域と連携した防災教育に取り組むとともに、学校施設の復旧、整備を計画的に進めます。
 次に、なりわいの再生であります。
 地域に根差した水産業を再生するため、引き続き、漁船や養殖施設、水産業共同利用施設、漁港、漁場施設などの復旧、整備を進めるとともに、漁業者みずからが地域の漁業の将来像を描く地域再生営漁計画に基づき、経営規模の拡大や担い手の確保、漁場利用の効率化を促進するほか、サケ、アワビなどの種苗生産体制の再構築に取り組みます。
 農業については、被災地域の早期の営農再開に向けて、引き続き、農地等の復旧、整備を進めるとともに、生産施設等の整備に対する支援や、沿岸部の地域特性を生かした生産性、収益性の高い園芸産地づくりを進めます。
 林業については、木材加工施設や木質バイオマス利用施設の整備への支援などにより、震災の影響により停滞した木材流通の円滑化を図るとともに、公共施設や復興住宅などへの県産材利用を促進します。
 被災した中小企業や商店街の再建と事業再生を支援するため、融資、助成制度と経営支援体制の充実に取り組むほか、新たなまちづくりと連動した商店街の再構築と活性化に向けた取り組みを支援します。
 沿岸地域経済の復興には、水産業の復興とともに水産加工業が域内で高い収益を生む産業として再生することが必要です。そのため、水産加工業の商品力の向上と販路開拓、取引拡大を総合的に支援します。
 観光振興については、昨年のいわてデスティネーションキャンペーンで発揮された官民共同の取り組みをさらに推し進め、本年4月から9月にかけて大型観光キャンペーンを実施し、誘客の拡大を図るとともに、NHK朝の連続テレビ小説あまちゃん放映の好機を生かし、県北・沿岸地域への誘客を促進します。
 また、沿岸地域の本格的な観光復興を推進するため、震災学習を中心とした教育旅行の誘致を沿岸観光の新たな柱とし、受け入れ態勢の整備や効果的な情報発信、誘客に取り組みます。
 国際観光の振興については、東アジア圏を重点地域とした誘客活動の展開や、台湾を中心としたプログラムチャーター便の運航拡大により旅行需要の回復を図ります。
 次に、いわて県民計画の七つの政策であります。
 第1は、産業創造県いわての実現であります。
 県内経済の牽引役であるものづくり産業の振興については、地場企業強化と企業誘致の両面から総合的に取り組み、自動車、半導体関連産業の集積促進や医療機器関連産業の創出を進めます。
 特に、自動車関連産業については、コンパクト車の開発、生産の中核拠点となるよう、サプライチェーンの構築支援や研究開発促進、人材育成に取り組みます。
 県産品の海外市場への展開については、これまでの成果をさらに発展させ、中国を初めとするアジア市場への販路拡大などを集中的に支援します。
 第2は、食と緑の創造県いわての実現であります。
 農業については、各地域で作成を進めている将来の地域農業のあり方や担い手を明確化した地域農業マスタープランの実現に向け、認定農業者等の経営の高度化や園芸、畜産の産地拡大に必要な施設等の整備を支援します。
 また、園芸産地みずからが市場ニーズを把握し生産、販売に反映させる産地マネジメントの仕組みづくりの支援や、森林資源を活用した施設園芸モデルの確立、普及を進めます。
 さらに、県が所有する全国和牛能力共進会で優秀な成績をおさめた種雄牛の交配を促進し、より高品質ないわて牛の生産拡大に取り組みます。
 野生鳥獣による農作物被害対策については、捕獲対策の強化と、被害防止技術の向上や担い手の確保、育成に取り組み、地域ぐるみの被害防止体制の確立を図ります。
 林業については、森林施業の集約化を進める担い手の育成や、松くい虫対策の強化などにより森林の整備、保全を図ります。
 水産業については、漁獲から流通、加工まで一貫した高度な衛生・品質管理技術によるサプライチェーンの構築を目指す地域の取り組みを支援します。
 また、県産農林水産物の高付加価値化と販路の拡大のため、生産者等が行う商品開発、販売など6次産業化のステップアップの取り組みを支援するほか、米国や東アジア地域において、いわてブランドをアピールし、輸出の回復、拡大を図ります。
 さらに、農山漁村に賦存する再生可能エネルギー資源の利活用を図るため、農業水利施設を活用した小水力発電設備をモデル的に導入するほか、木質バイオマスエネルギーの新規需要開拓等に取り組みます。
 第3は、共に生きるいわての実現であります。
 県民誰もが、地域社会の中で、安心して、保健、医療、福祉のサービスが受けられる体制を確立するため、新たに策定する保健医療計画の着実な推進を図ります。
 医師の確保と県内への定着促進については、奨学金制度による計画的な医師養成や、勤務医の勤務環境の改善、医師の地域偏在、診療科偏在の改善に取り組むほか、被災地における保健医療や介護を担う人材の確保、育成に取り組みます。
 また、質の高い医療が受けられる体制の整備に向けて、周産期医療体制の充実や、災害医療、救急医療に携わる人材の育成、ドクターヘリの円滑な運航の確保と県境を越えた広域的な運航体制の構築などに取り組みます。
 県民の健康づくりについては、健康いわて21プランが最終年度を迎えることから、これまでの取り組みの評価を踏まえて次期計画の策定に取り組みます。
 安心して子供を産み育てられる環境を整備するため、保育所の整備や、障がい児療育の拠点となる県立療育センターの設計、超重症児の受け入れ準備などを進めます。
 災害時要援護者の避難支援対策については、避難所等で福祉、介護分野の応急支援などを担う災害派遣福祉チームの早期設置に取り組むとともに、市町村の避難支援計画策定等の取り組みを支援します。
 自殺防止対策については、アクションプランに基づく相談支援体制の整備や人材育成、普及啓発等の取り組みを、市町村、関係団体などと連携しながら総合的に推進します。
 第4は、安心して、心豊かに暮らせるいわての実現であります。
 県民の安全・安心な生活を守るため、県民の防犯意識の高揚や犯罪被害者等を支える社会づくりなどに取り組むほか、高齢者と子供の交通安全対策を重点的に推進するため、高齢者への普及啓発と信号機の設置等による通学路の交通安全対策を進めます。
 青少年の健全育成については、心豊かで意欲に満ちた人材育成を図るため、いわて希望塾を開催するほか、さまざまな困難を抱える青少年一人一人の状況に応じた支援を継続的に提供できる体制の構築に取り組みます。
 また、男女が対等なパートナーシップのもとに個性と能力を発揮できる男女共同参画社会の実現に向けて、市町村、関係団体などと連携しながら、意識啓発やDV防止対策に取り組みます。
 第5は、人材・文化芸術の宝庫いわての実現であります。
 岩手の未来を担う子供たちの育成のために、いわて型コミュニティ・スクールや教育振興運動と連携しながら、学校と家庭、地域との協働による目標達成型の学校経営を充実させるとともに、私立学校の特色ある教育活動を支援します。
 また、教員の授業力強化や家庭学習の充実などの学力向上対策、いわてキャリア教育指針に基づくキャリア教育の実践などにより、知、徳、体を備え、自立した社会人となるために必要な総合力を育む教育を推進します。
 さらに、特別支援教育の充実に向けて、特別支援学校と小中学校の児童生徒の交流、共同学習などの取り組みを進めます。
 いじめなどの問題行動や不登校などの学校不適応への対応については、教育相談体制の充実を図り、学校、教育委員会と家庭、地域が連携した体制づくりを行います。
 世界遺産登録の推進については、平泉の文化遺産の追加登録や、北海道、北東北を中心とした縄文遺跡群などの登録に向けた取り組みを着実に推進します。
 文化交流については、震災復興を契機としたルーブル美術館や海外の一流アーティストとの交流を継続して進めます。
 平成28年の国民体育大会開催に向けて、新たに国体・障がい者スポーツ大会局を設置し、県民、企業、団体等との協働を基本とした復興のシンボルとなるような希望郷いわて国体の開催を目指して、全国障害者スポーツ大会と一体的に準備を進めてまいります。
 選手の育成、強化については、重点競技を絞りながら効果的な強化に取り組むとともに、スポーツ健康科学サポート体制の充実を図ります。
 第6は、環境王国いわての実現であります。
 産業廃棄物最終処分場であるいわてクリーンセンターの利用終了時期が平成33年ごろに到来すると見込まれることから、次期最終処分場の確保、整備に向けて、用地の選定作業に取り組みます。
 加えて、青森、岩手県境の不法投棄産業廃棄物については、平成29年度までに汚染された土壌、地下水の浄化を実施し、原状回復を目指すとともに、引き続き、排出事業者等に対する徹底した責任追及を進めます。
 第7は、いわてを支える基盤の実現であります。
 本県のものづくり産業等を支援するため、内陸地域におけるスマートインターチェンジや、自動車関連産業の物流を支援する道路などの整備を進めます。
 あわせて、安全な道路環境を確保するため、通学路における歩道の設置など交通安全施設の整備を推進します。
 また、交流人口の拡大に向けて、いわて花巻空港の国内線の路線拡充や国際チャーター便の誘致、拡大に向けた取り組みを進めます。
 社会資本の適切な維持管理については、緊急的にトンネルの総点検を実施し、早期に維持管理計画を策定するとともに、その他の施設についても、引き続き、予防保全型の維持管理を推進し、施設の長寿命化と安全性、信頼性の確保を図ります。
 また、いわて県民計画の七つの政策の取り組みに加え、広域振興圏ごとに明確な顔を持った地域づくりを進めるため、広域振興事業等による特色ある取り組みを推進します。特に、県北圏域については、企業や市町村と連携しながら、交流人口の拡大や食産業などの産業振興に力を入れてまいります。
 東日本大震災津波により、人命を初め、多くのかけがえのないものが失われました。
 しかし、復興の過程において、被災者の皆さんを初め、県民全体が立ち上がり、かつてないような地元の底力を発揮し、日本のみならず世界に広がるさまざまなつながりの力と相まって、震災以前には見られなかったような自立と共生の取り組みが県内のそこかしこで行われています。
 未曽有の被害を受けたふるさとの姿を目の当たりにし、ふるさとに戻って復興に取り組む人たちがいます。津波到達点に桜を植えて津波の悲劇を後世に伝える活動など、地域の知恵と行動力を結集した新しい取り組みを展開する人たちがいます。
 さらに、大好きな歌でみんなを励まし、歌手としてデビューを果たした大槌町の臼澤みさきさんを初め、ふるさとの復興に役立ちたいとの真摯な思いを持って、みずからの道を切り開く多くの若者たちがいます。
 そして、このような岩手の姿に共鳴し、ボランティアの皆さんや企業、大学など、さまざまな主体が、全国、そして世界から思いを寄せ、復興を支えてくださっています。
 このような、今、岩手で行われている取り組みは、人と人との共生、人と自然との共生という理念のもと、戦乱により荒廃したふるさとの復興をなし遂げた平泉の精神に相通じるものではないでしょうか。
 東日本大震災津波以降に私たちが持つようになった、今までできなかったことができるようになる力と、今までやろうとしなかったことをやろうとする志を合わせれば、平泉のような復興を必ずやなし遂げ、黄金に光り輝く希望郷いわてを後の世に残すことができるはずです。
 復興に取り組む人、復興に思いを寄せる人、一人一人が復興の主役であり、一人一人がつながって強いネットワークとなり、一丸となって復興を加速させようではありませんか。
 本年が、岩手の復興を加速させる1年となるよう、ここにおられる議員の皆様並びに県民の皆様の深い御理解とさらなる御協力を心からお願い申し上げ、私の所信表明といたします。
 ありがとうございました。(拍手)
教育委員会委員長の演述
〇議長(佐々木博君) この際、教育委員会委員長から発言を求められておりますので、発言を許します。八重樫教育委員会委員長。
   〔教育委員会委員長八重樫勝君登壇〕
〇教育委員会委員長(八重樫勝君) 第9回県議会定例会が開会されるに当たりまして、平成25年度の教育行政推進の基本的な考え方と施策の大要について申し上げます。
 あの日から間もなく2年が経過しようとしております。改めて、東日本大震災津波の犠牲者の方々に対し、哀悼の意を表しますとともに、被害を受けられた皆様に心からお見舞いを申し上げます。
 また、本県の子供たちに国内外の皆様方からいただきました数多くの御支援や励ましに対し、心から感謝申し上げます。
 教育現場においては、復興教育の取り組みの広がりや学校施設の復旧工事など、復興に向けた歩みが進んでおりますが、仮設校舎での授業や校庭が十分に使えないなど、いまだに教育活動が制限されている学校も多くあり、一刻も早い学びやの正常化が求められております。
 このため、県教育委員会といたしましては、いわての復興教育の推進や幼児、児童生徒への心のサポート、児童生徒の安全で安心な教育環境の確保など、学びの場の復興に向けて引き続き全力で取り組むとともに、知、徳、体を備え調和のとれた人間形成に向けて、いわて県民計画及び岩手の教育振興をもとに、中長期的展望に立ち、時代のニーズに的確に対応し、社会教育、生涯学習、文化芸術、スポーツの振興を図ってまいります。
 また、いじめの問題への対応を初め、命を大切にする教育の充実や地域連携型の防災教育の推進など、直面する学校教育の課題に積極的に取り組んでまいります。
 なお、体罰による指導は、児童生徒の人権を侵害する決して許されない行為であるとの認識に立ち、その根絶、未然防止に向けて引き続き取り組み、子供たちが安心して学校生活が送れるよう全力で取り組んでまいります。
 以下、教育施策の重点事項について申し述べます。
 まず、震災からの教育の復興について申し上げます。
 第1に、きめ細かな学校教育の実践と教育環境の整備、充実の取り組みであります。
 いわての復興教育の推進につきましては、児童生徒用の副読本を作成するなど、教材の充実を図るほか、市町村教育委員会と連携しながら、各校の学校経営の基本方針に復興教育を位置づけるなど、全県で取り組みを進めるとともに、地域と連携した防災教育を推進することにより、学校防災体制を確立してまいります。
 また、児童生徒が自然災害に対し、みずからの命を守り抜くため主体的に行動する力を育成するなど、震災の記憶を風化させず、震災を踏まえた教育を展開することにより、郷土を愛し、岩手の復興、発展を支える人材を育成してまいります。
 幼児、児童生徒の心のサポートにつきましては、子供たちの心と体の健康状態を経年で把握、分析したこころのファイルを活用するとともに、臨床心理士の派遣や専門家で構成する県内大学チームによる支援を進め、被災により心にダメージを受けた子供たちに対し、中長期にわたりきめ細かに支援してまいります。
 児童生徒にとって安全で安心な教育環境を確保するため、被災地における学校施設につきましては、高田高等学校の復旧整備に計画的に取り組むとともに、市町村立学校施設の早期復旧整備への支援、県立学校施設の耐震化などに着実に取り組んでまいります。
 学校における放射線対策につきましては、学校給食を実施する県立学校において食材の放射性物質濃度の測定を実施するとともに、市町村などからの測定依頼に応じるなど、引き続き学校給食食材に対する安全・安心の確保に努めるほか、県立学校の放射線の空間線量率の定期的な測定、公表に取り組んでまいります。
 被災児童生徒の支援につきましては、いわての学び希望基金を活用し、親を亡くした児童生徒に対する奨学金の給付や、生活基盤を失った高校生の教科書購入などに要する経費の給付に取り組んでまいります。
 また、心のサポートや学習支援などに対応するため、引き続き加配教職員を配置するほか、放課後や週末における学習支援などを行う居場所づくりを推進してまいります。
 第2に、文化芸術環境の整備や伝統文化等の保存と継承の取り組みであります。
 被災地における文化芸術活動の再興につきましては、文化芸術施設の機能回復を支援し、すぐれた文化芸術鑑賞の機会を確保するとともに、いわての学び希望基金を活用し、被災した児童生徒に対し文化活動の大会参加を支援してまいります。
 また、全国からの支援をいただきながら、被災地における復興関連開発事業に伴う埋蔵文化財調査を推進するとともに、被災地から救出した文化財などの修復や適切な保存、管理について、積極的に支援してまいります。
 第3に、社会教育、生涯学習環境の整備の取り組みでありますが、市町村の社会教育施設の復旧、再開を支援するとともに、学びを通じた被災地の地域コミュニティ再生支援事業を活用し、市町村の社会教育事業の推進を支援してまいります。
 また、教育振興運動推進方針に復興教育を位置づけ、学校教育との連携による運動の充実を図ってまいります。
 第4に、スポーツ・レクリエーション環境の整備の取り組みでありますが、被災市町村やスポーツ団体の推進体制の整備を支援するとともに、校庭が十分に使えない学校に対し、限られた環境でも実施できる運動プログラムや活動の場を提供するなどの支援を行ってまいります。
 また、いわての学び希望基金を活用し、被災した生徒に対し運動部の大会参加を支援してまいります。
 次に、いわて県民計画第2期アクションプランの着実な推進の取り組みについて申し上げます。
 第1に、学校教育の充実の取り組みでありますが、平成25年度から、全ての学校において新学習指導要領が適用されることから、改訂の趣旨を踏まえた学習活動の充実に取り組んでまいります。
 まず、家庭、地域との協働による学校経営の推進についてでありますが、各学校において作成する学校経営計画について、設定した目標や取り組みを自己評価するとともに、その結果と改善方策について、保護者や学校評議員、地域住民などの学校関係者が、教育活動の観察や意見交換を通じて評価を行い、その評価結果を広く公表することにより、目標達成型の学校経営を学校、家庭、地域との協働により推進してまいります。
 また、各小中学校では、地域の実情に応じながら、いわて型コミュニティ・スクールの取り組みの充実を図っていくとともに、教育振興運動と連携した取り組みを進めてまいります。
 次に、児童生徒の学力向上についてでありますが、教員相互の授業参観や指導主事による学校訪問などにより、教員の授業力の向上を図るとともに、明確な学習課題の提示や児童生徒の定着状況を把握するなど、わかる授業への改善に取り組んでまいります。
 また、特色ある教育課程の編成により充実した教育活動を展開するとともに、数学や英語においては、各校の実態に応じた目標設定や小・中・高等学校での指導の連続性の確保などによる授業改善に取り組んでまいります。
 少人数学級の推進につきましては、児童生徒一人一人に目の届く環境を整え、基礎学力の向上を図るために、小学校1、2年生及び中学校1年生に加え、小学校3年生への35人以下学級の導入を進めてまいります。
 中学校における学校生活サポートにつきましては、学習定着上の課題や生徒指導上の諸課題に対応するため、引き続き、経験豊かな非常勤講師などを配置してまいります。
 次に、キャリア教育についてでありますが、各学校において作成するキャリア教育全体計画をもとに、子供の発達段階に応じ、学校教育活動全体で計画的、組織的に取り組むことにより、児童生徒が、将来、社会人、職業人として自立できるための能力を育成してまいります。
 また、産業界と協働して岩手の求める人材育成を進めるとともに、生徒一人一人の多様な進路希望の達成を支援してまいります。
 次に、豊かな心を育む教育についてでありますが、各学校において、道徳教育推進教師などを中心とした推進体制を確立するとともに、小・中・高それぞれの校種に応じた道徳資料集の活用などにより、道徳教育を推進してまいります。
 また、学校不適応の未然防止、早期発見、早期対応のためにスクールカウンセラーを配置するとともに、学校心理士の資格を有する教員を養成するなど、教育相談体制の充実を図ってまいります。
 さらに、いじめの根絶に向け、さまざまな機関の専門家が参画する会議の設置や、研究実践地域の指定、教員研修の充実など、児童生徒が安全で安心な学校生活を送ることができるよう、関係機関と連携した取り組みを推進してまいります。
 次に、健やかな体を育む教育の推進についてでありますが、小学校体育実技アシスタントの派遣や指導主事の学校訪問などにより体育授業の充実を図るほか、地域のスポーツ指導者の派遣により、中学校、高校の部活動の活性化を図ってまいります。
 健康教育につきましては、教員の資質向上や指導力の向上に努めるほか、児童生徒の肥満傾向や運動習慣、体力低下の改善などに向け、家庭、地域とともに生活習慣の改善や食育の充実を図ってまいります。
 次に、特別支援教育の充実についてでありますが、次期いわて特別支援教育推進プランを策定し、共に学び、共に育つ教育の実現に向けた取り組みを推進してまいります。
 また、地域の幼稚園や保育所を継続的に訪問し、指導方法に関する相談や支援を行うとともに、特別な支援を必要とする児童生徒への個別の教育支援計画の作成を推進してまいります。
 さらに、特別支援教育ボランティアの養成、活用に取り組むなど、県民と協働した支援体制づくりを進めるとともに、公的機関における現場実習の受け入れの促進や、企業との連携協議会の設置など、特別支援学校卒業生の就職支援を強化してまいります。
 第2に、社会教育の充実と生涯を通じた学びの環境づくりについて申し上げます。
 教育振興運動の取り組みを通じ、学校、家庭、地域住民等の連携協力による社会教育の充実と生涯学習の環境づくりを推進してまいります。
 家庭教育の充実につきましては、保護者と地域とを結び、地域全体で子育てを支援する体制づくりに取り組むとともに、学習情報の提供や相談体制の充実を図ってまいります。
 読書活動の推進につきましては、第2次岩手県子どもの読書活動推進計画の成果と課題を検証し、次期計画を作成するとともに、学校教育と連携した読書活動に取り組んでまいります。
 第3に、文化芸術の振興について申し上げます。
 世界遺産登録の推進につきましては、平泉の文化遺産の適切な保存管理と普及啓発を促進しつつ、追加登録に向け取り組んでまいります。
 また、北海道、北東北を中心とした縄文遺跡群及び九州・山口の近代化産業遺産群については、関係自治体と連携し、世界遺産登録に向けて共同で取り組んでまいります。
 さらに、地域の特色ある文化芸術をテーマとした住民参加型のまちづくりや新進、若手芸術家を支援するとともに、文化芸術情報を発信してまいります。
 第4に、豊かなスポーツライフの振興について申し上げます。
 競技力向上のための取り組みにつきましては、3年後に迫った希望郷いわて国体の開催に向け、指導者の資質の向上を図るとともに、一貫指導体制を充実させてまいります。
 また、選手強化については、入賞の可能性のある競技、種別を重点的に強化するなど、より効率的な取り組みを進めてまいります。
 さらに、トップアスリートの輩出を目指すいわてスーパーキッズ発掘・育成事業を推進し、ジュニア層のレベル向上に計画的に取り組んでまいります。
 スポーツ健康科学サポート体制の充実につきましては、専門的スタッフの配置などにより、国体選手などが計画的、継続的なトレーニングを行う環境整備を推進するとともに、県全体の競技スポーツの強化や県民の健康づくりに取り組んでまいります。
 生涯スポーツの振興につきましては、総合型地域スポーツクラブの創設、育成支援など、県民の生涯スポーツへの取り組みを推進してまいります。
 以上、基本的な考え方と施策の大要について申し上げましたが、学校現場においては、震災によるさまざまな困難を克服しながら、新たな動きが起きております。
 いわての復興教育の取り組みを全県下で進めておりますが、沿岸被災地の学校においては、地元の語り部が伝えてきた津波の教訓を広める宮古北高等学校の活動や、生徒が村の復興まちづくり計画へ参画し、都市公園の設計アイデアを発信する野田村立野田中学校の活動など、地域の将来につながる取り組みが展開されております。
 一方、内陸の学校においても、ボランティア活動や被災地との交流の実施など、各学校で特色ある取り組みが展開されており、子供たちが前向きに頑張る印象的な姿を各地で見ることができます。
 文化、スポーツの分野においても、全国高等学校総合文化祭での北上翔南高等学校鬼剣舞部の最優秀賞受賞を初め、インターハイ自転車競技ケイリンでの紫波総合高等学校、藤根俊貴君の優勝など、子供たちが県民に数々の明るい話題を提供してくれています。
 また、岩手日報の被災地からのメッセージで、当時、釜石市立唐丹小学校5年の尾形忠広君が次のように述べています。家は流されて、学校もめちゃくちゃになってしまったけれど、またたくさんワカメや魚、貝がとれる以前の唐丹町に戻ってほしい。自分も大きくなったら漁師になりたい。
 町を破壊し、大切なものを奪った海を決して恨むことなく、漁師を目指す尾形君の優しさやたくましさ、けなげさに心が揺さぶられるのであります。
 このように、困難な中にあっても、未来を担う子供たちの活躍により、元気と勇気が県民に伝えられ、子供たちのたくましさや可能性を実感させられる事例は枚挙にいとまがありません。
 このたびの震災によって、はかり知れない多くの大切なものを失いましたが、人の持つ温かさやつながり、社会全体のきずなの強さが明らかになるなど、希望は決して失われておりません。
 ここに改めて教育の持つ力と可能性に思いをいたし、今後、より一層、学校、保護者、地域、行政が一体となって、岩手の教育の復興と発展に全力を尽くしてまいりますので、議員の皆様並びに県民の皆様の御理解と御協力を心からお願い申し上げます。
 ありがとうございました。(拍手)
   日程第4 議案第1号平成25年度岩手県一般会計予算から日程第51 報告第3号岩手県信用保証協会が行う保証債務に係る求償権の放棄等の承認に関する報告についてまで
〇議長(佐々木博君) 次に、日程第4、議案第1号から日程第51、報告第3号までを一括議題といたします。
 提出者の説明を求めます。加藤総務部長。
   〔総務部長加藤主税君登壇〕
〇総務部長(加藤主税君) 本日提案しました各案件について説明申し上げます。
 議案第1号は、平成25年度岩手県一般会計予算であります。
 この平成25年度当初予算は、県の復興計画における基盤復興期間3カ年の最終年度として、国や市町村と連携を密にし、復興の取り組みを加速させていくための予算として編成したものであり、希望郷いわてを実現するため、岩手の将来を見据えた中長期的な取り組みにも配慮したほか、国のいわゆる15カ月予算に対応した、平成24年度2月補正予算と一体的な予算として、県内経済の活性化を図ろうとするものであります。
 以下、予算の概要について説明申し上げます。
 第1条は、歳入歳出予算の総額を、それぞれ1兆1、517億200万円余とするものであります。これを前年度当初予算と比較しますと3.0%の増となっております。
 次に、歳入の主なものについて説明申し上げます。
 第1款県税につきましては1、100億900万円を計上しており、前年度に比較して90億8、900万円の増となっております。
 第5款地方交付税につきましては2、932億3、700万円余を計上しておりますが、これは、国家公務員の給与削減と同様の措置を地方公務員においても実施することを前提とされたことなど、国の地方財政対策の内容等を総合的に勘案した推計によるものであり、前年度に比較して201億8、100万円余の減となっております。
 第9款国庫支出金につきましては、漁港災害復旧事業などの災害復旧事業の増などにより2、129億8、400万円余を計上しており、前年度と比較して7億4、600万円余の増となっております。
 第12款繰入金につきましては1、186億6、100万円余を計上しておりますが、これは、震災からの復旧、復興や、社会経済情勢の変化に対応する事業の財源とするため、国からの交付金で造成した各種基金などから繰り入れするものであり、前年度と比較して270億1、800万円余の増となっております。
 第14款諸収入につきましては2、777億1、500万円余を計上しており、前年度と比較して281億9、900万円余の増となっております。
 第15款県債につきましては822億5、000万円余を計上しており、前年度と比較して116億2、800万円余の減となっております。
 次に、歳出の主なものについて説明申し上げます。
 第2款総務費につきましては274億2、600万円余を計上しておりますが、その主なものは、消防救急無線デジタル化整備事業費1億1、800万円余、地域経営推進費5億2、000万円、三陸鉄道運営支援事業費11億2、300万円余等であります。
 第3款民生費につきましては911億3、200万円余を計上しておりますが、その主なものは、生活福祉資金貸付事業推進費補助11億1、000万円余、地域支え合い体制づくり事業費9億6、100万円余、子育て支援対策臨時特例事業費7億500万円余等であります。
 第4款衛生費につきましては1、865億1、800万円余を計上しておりますが、その主なものは、防災拠点等再生可能エネルギー導入事業費40億6、800万円余、災害廃棄物緊急処理支援事業費1、286億3、600万円余、県立病院再建支援事業費補助14億9、900万円余等であります。
 第6款農林水産業費につきましては780億6、000万円余を計上しておりますが、その主なものは、放射性物質被害畜産総合対策事業費81億400万円余、原木しいたけ経営緊急支援事業費10億6、400万円余、さけ、ます増殖費7億600万円余等であります。
 第7款商工費につきましては1、310億1、600万円余を計上しておりますが、その主なものは、革新的医療機器創出・開発促進事業費3億2、300万円余、中小企業東日本大震災復興資金貸付金685億5、400万円余、中小企業被災資産復旧事業費補助9億4、800万円余等であります。
 第8款土木費につきましては1、160億1、000万円余を計上しておりますが、その主なものは、道路環境改善事業費103億9、800万円余、地域連携道路整備事業費137億9、600万円余、災害公営住宅整備事業費173億1、300万円余等であります。
 第10款教育費につきましては1、457億1、100万円余を計上しておりますが、その主なものは、児童生徒健全育成推進費3億7、700万円余、公立大学法人岩手県立大学運営費交付金39億円余、私立学校運営費補助47億9、900万円余等であります。
 第11款災害復旧費につきましては1、376億2、300万円余を計上しておりますが、その主なものは、漁港災害復旧事業費541億700万円余、河川等災害復旧事業費309億900万円余、港湾災害復旧事業費117億1、500万円余等であります。
 第12款公債費につきましては1、273億2、400万円余を計上しております。
 第13款諸支出金につきましては579億6、900万円余を計上しておりますが、その主なものは、公営企業負担金203億9、100万円余、地方消費税交付金128億8、900万円余等であります。
 第2条債務負担行為は、消防救急無線デジタル化整備事業ほか45件について、債務を負担しようとするものであります。
 第3条地方債は、道路橋りょう維持事業ほか52件について、限度額、起債の方法、利率及び償還の方法を定めようとするものであります。
 第4条一時借入金及び第5条歳出予算の流用は、それぞれ所要の措置を講じようとするものであります。
 議案第2号から議案第12号までは、平成25年度岩手県母子寡婦福祉資金特別会計予算ほか10件の特別会計予算でありますが、これらは、それぞれの事業計画に基づき、その所要額を計上したものであります。
 議案第13号から議案第15号までは、平成25年度岩手県立病院等事業会計予算ほか2件の公営企業会計予算でありますが、これらは、それぞれの事業計画に基づき、収益的収支及び資本的収支の所要額を計上したものであります。
 議案第16号から議案第20号までの5件は、建設事業等に要する経費の一部を受益市町村に負担させることに関し、それぞれ議決を求めようとするものであります。
 議案第21号から議案第41号までの21件は条例議案でありますが、これは、岩手県新型インフルエンザ等対策本部条例など2件を新たに制定するとともに、特別職の職員の給与並びに旅費及び費用弁償に関する条例など19件の条例の一部をそれぞれ改正しようとするものであります。
 議案第42号及び議案第43号は、権利の放棄に関し議決を求めようとするものであります。
 議案第44号は、包括外部監査契約の締結に関し議決を求めようとするものであります。
 議案第45号は、中部圏域広域的水道整備計画を定めることに関し同意を求めようとするものであります。
 報告第1号は、職員による自動車事故に係る損害賠償事件に関する専決処分について、報告第2号は、道路の管理に関する事故に係る損害賠償事件に関する専決処分について、報告第3号は、岩手県信用保証協会が行う保証債務に係る求償権の放棄等の承認について、それぞれ報告するものであります。
 以上でありますので、よろしく御審議の上、原案に御賛成くださいますようお願い申し上げます。
   日程第52 発議案第1号岩手県議会基本条例の一部を改正する条例から日程第56、発議案第5号政務活動費の交付に関する条例まで
〇議長(佐々木博君) 次に、日程第52、発議案第1号から日程第56、発議案第5号までを一括議題といたします。
 お諮りいたします。ただいま議題となっております各案件は、各交渉団体会派の賛同を得た委員会提案でありますので、会議規則第34条第2項及び第3項の規定並びに先例により、議事の順序を省略し、直ちに採決いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇議長(佐々木博君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 これより、発議案第1号から発議案第5号までを一括して採決いたします。
 各案件は、原案のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
〇議長(佐々木博君) 起立全員であります。よって、発議案第1号から発議案第5号までは、原案のとおり可決されました。
〇議長(佐々木博君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後2時16分 散 会
第9回岩手県議会定例会会議録(第2号)

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