平成23年2月定例会 第20回岩手県議会定例会 会議録

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〇23番(熊谷泉君) 自由民主クラブの熊谷泉でございます。
 まずもって、おとといニュージーランドで発生いたしました地震におきまして、盛岡市出身の方を初めとし、多くの日本人が被害に遭われております。一刻も早い御無事が確認されますことをお祈り申し上げます。
 また、昨年12月22日から本年1月2日にかけての暴風、波浪、大雪等による被害を受けられました皆様方にも、心からお見舞いを申し上げます。
 それでは、通告に従い質問をいたします。
 なお、これまでの質問と重複するところがあるかもしれませんが、御了承をお願いいたします。
 まず初めに、財政運営についてお伺いをいたします。
 国の平成23年度予算の一般会計予算規模は92兆4、116億円とし、前年比1、124億円、0.1%の増となっております。これは、財政運営戦略及び中期財政フレームのもとで編成される最初の予算であり、財政健全化に向けた日本政府の姿勢を示すものとして、財政健全化目標達成へ向けた第一歩とするとしております。これについては内外の市場関係者も注視しているところで、平成22年度当初予算における新規国債発行額約44兆円は過去最高の水準であり、平成23年度当初予算における新規国債発行額は、これを上回らないものとしております。しかし、財務省は、2010年末時点で、国の借金が総額で919兆1、511億円に達したと発表しています。2009年に比べ47兆6、407億円増加。今年1月の推計人口で計算すると、国民1人当たり約722万円となります。さらに、2011年度末には997兆円に達すると発表しており、岩手県の県債残高の2011年度末見込み額は約1兆4、600億円程度と見込まれており、岩手県民1人当たり105万円となります。2009年度の財政指標の将来負担率は、全国ワースト3位となっています。この財政状況は県民の大きな不安要因であります。知事は、プライマリーバランス均衡を図るとしていますが、2008年度は77億円、2009年度は317億円、2010年度は276億円、2011年度は骨格予算で22億円と少ないものの、いずれも赤字が続いています。
 そこでお伺いをいたしますが、知事はこれらの赤字の原因をどのようにとらえているのか、また、既に2期目の出馬も表明されておりますが、今時点での財政再建も含めての財政運営の御所見をお伺いいたします。
 次に、平成23年度当初予算についてお伺いをいたします。
 平成23年度当初予算は6、815億9、900万円の骨格予算としておりますが、前年度に比べると減少幅が少なくなっております。その理由として、厳しい経済、雇用情勢を踏まえ、年度当初から早期事業着手が必要なものについて予算計上したとされております。今回の骨格予算で県が特に重要とした事業は何か、お伺いをいたします。
 過去の骨格予算では、平成19年度7.9%減、平成15年度6.5%減となっておりますが、今年度は、当初にこれだけの予算を組むと大幅な補正は今後組めないと考えられます。今後の補正と事業執行のあり方についてお伺いをいたします。
 県税収入が前年度と比較して24億4、900万円、約2.5%増収するとされており、その主なものは法人事業税であります。本県もリーマンショックから立ち直りつつあると考えられますが、この法人税増収にかかわる主な業種は何か、お伺いをいたします。
 次に、農林水産業の課題についてお伺いをいたします。
 まず、環太平洋パートナーシップ協定についてお伺いいたします。
 環太平洋パートナーシップ協定、いわゆるTPPをめぐる議論は、国を開くということに関して、明治初期の開国論になぞらえて、これをすれば明るい未来が開けるという論調の記事なり論説が、全国紙を初め各報道機関で毎日のように取り上げられ、まさに国を二分するような論戦となっております。経済界と農業界の対立ばかりが先鋭化することは問題と言わなければなりません。
 仮にTPP交渉に参加し関税が撤廃された場合、農林水産省による試算では、農林水産物の生産額は4兆5、000億円程度減少するとしていて、食料自給率は40%から13%に低下し、雇用も350万人程度減少するとされています。
 岩手県は、北海道と並び食料供給県として重要な位置を占めており、県における生産額の減少は1、469億円と試算され、実に本県生産額の60%が減少するわけで、その主なる品目は、米で596億円、95%減少、小麦で3億円、100%減少、豚肉で186億円、80%減少、牛肉で120億円、61%減少、鶏肉で310億円、65%減少となり、本県が振興してきた乳牛に至っては214億円、100%減少し、北海道以外は消滅するとされております。このため、12月定例会では、議会でもTPP反対の意見書を全会一致で国へ送ったところであります。
 我が国農政は、一昨年9月の新政権発足を契機に、担い手重視路線から、小規模、兼業農家を含めた多様な担い手重視路線へと大きく転換しております。農業者戸別所得補償もその政策の一つだったわけでありますが、今度は高いレベルのTPPと両立させるための競争力の強化路線にかじを切り、農政の迷走ぶりが農業界の反発を受けるのは当然であります。
 菅首相は、いまだTPP参加への意欲を示しております。TPP参加は、本県農業に多大な影響を与えるものと考えますが、これについての知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、本県産米の販売戦略について何点かお伺いをいたします。
 知事は、大連を初めとし県産米の輸出を試みられましたが、農家が期待したほどの実績が上がっていないのが実情ではないでしょうか。これまでの成果について、知事御自身の評価と今後の課題についてお伺いをいたします。
 また、国は、中国向け輸出について、早期に年間20万トン程度輸出できる体制を整えるとし、精米工場、倉庫が中国側の認定を受けるために必要な調査経費を補助するとしています。県も本格的に米輸出を考えるのであれば、流通経路についてもさらなる検討が必要と考えますが、これについての御所見もあわせてお伺いをいたします。
 次に、岩手県産オリジナル品種の開発についてお伺いをいたします。
 県では、平成2年度の育種開始から、これまでに主食用うるち、もち米、酒米、新規需要米など、計14品種を開発してきました。このうち、現時点で8品種が県の奨励品種となっております。
 平成22年度10月のこれらの奨励品種の作付面積を見ると、県北・沿岸のやませ地帯向けに開発されたかけはしは569ヘクタール、いわてっこは県北地域の作柄安定、産米評価の向上に寄与し、業務用米として需要が増加中で3、478ヘクタール、もち美人は矢巾町、紫波町以南で作付され451ヘクタール、酒米は吟ぎんが、ぎんおとめで合わせて164ヘクタール、飼料用米つぶみのり、つぶゆたかが開発され、耐冷性、耐病性にすぐれる多収品種として普及推進されていますが、これらの作付面積の合計は約5、800ヘクタールであり、水稲面積の10%強となっているのが現状であります。本県の作付はひとめぼれとあきたこまちが主体で、県南のひとめぼれが特Aであっても、価格面で有利に販売されているとは言いがたいのが実情と思います。
 県では、今、財団法人岩手生物工学研究センターで、コシヒカリを超える食味のオリジナル品種を開発中で、都道府県の試験研究機関では2台目と言われる、次世代シーケンサーの導入の成果に大いなる期待が寄せられております。これからどのくらいの期間でこの品種を開発する見込みなのか、お伺いをいたします。
 次に、松くい虫対策についてですが、北上川流域の県央部では、紫波町から盛岡市に北上してまいりました。最先端の監視強化も大切ですが、後背地の被害拡大も急速に広がりを見せており、紫波町内においては北上川東部に被害が集中しており、さらには西部にも広がりつつあります。従来の対策では、被害拡大をとめられないのが明らかであります。
 松くい虫の防除対策として薬剤の空中散布ができないのであれば、被害木の早急な処理が求められます。現状では予算が足りないのか、人材が不足しているのかと思いますが、いわての森林づくり県民税も今後5年間の継続が決まったことから、これらの活用も含め、一層の防除対策の強化が必要と考えられますが、御所見をお伺いいたします。
 次に、定置網の被害対策についてお伺いをいたします。
 昨年12月22日から本年1月2日にかけての暴風、波浪、大雪等による水産、漁港関係被害は総額69億円に及び、そのうち、定置網の被害は約35%に当たる24億円となっております。定置網は、本県水産業の重要な漁業であり、サケの9割以上はこの定置網で漁獲されています。今回の災害での定置網の復旧は、定置網の大部分が漁協経営であることから、融資による対応となっております。昨年のチリ地震津波の被害では、個人の養殖施設が激甚災害に指定され補助により復旧されていることから、定置網も養殖施設と同様の取り扱いが求められています。定置網も激甚災害の対象となるよう国へ働きかけることについて、定置網が行われている他県との連携も含め、お伺いをいたします。
 次に、農業農村整備の振興方向についてお伺いをいたします。
 県議会では、10月に農業農村整備の着実な推進に関する請願を採択し、衆参両院、政府及び国に対し意見書を提出したところであります。
 平成23年度の政府予算案によると、平成22年度に大幅に削減となった農業農村整備関係予算は大きく回復することなく据え置きとなり、平成21年度予算に比べると41.5%と依然厳しい状況にあります。また、本年度創設された農山漁村地域整備交付金の多くが一括交付金化され、現状ではその配分がどうなるかわからない状況にもあります。
 さきに公表された2010年世界農林業センサス結果の概要によると、この10年間で本県の農業就業人口は3割減少し、あわせて高齢化も進行するなど、本県の農業、農村における後継者不足は深刻な問題となっており、今後の農業を支えていくべき担い手の不足が懸念されるところであります。このような状況下、本県の水田はまだまだ整備が十分とは言えず、湿田も多いことから、低コスト営農や転作作物の生産拡大が進みにくい状況となっております。平成23年度からは、農業者戸別所得補償制度の本格実施が予定されていますが、このままではその恩恵を十分に受けられないことが懸念されます。
 昨今、TPPやFTAといった種々協定について議論がなされているところではありますが、参加のいかんを問わず、県としては、体質の強い競争力のある営農を目指すべきと考えます。そのためには、農業農村整備事業が果たす役割は非常に大きいと考えます。
 私の住む地域周辺では、これまで基盤整備によって、圃場はもとより、農道や農業集落排水も整備され、効率的な営農とともに生活環境の改善にもつながっており、整備の効果を身をもって実感しているところであります。
 そこで伺いますが、請願の趣旨を踏まえた本県における今後の農業農村整備の方向性及び国の予算の拡大が見込めない中にあって、県は農業生産基盤の整備をどのように推進していくのか、お伺いをいたします。
 次に、地域医療についてお伺いをいたします。
 1月に矢巾町で岩手医科大学の病院用地造成の起工式が行われました。用地は矢巾キャンパスの北側に18万6、000平方メートルを確保し、2011年度中に造成し、2015年度着工、2018年4月に地上13階、延べ床面積9万1、000平方メートルの新病院を開院する予定で、病院関係の総事業費は約450億円と聞いております。また、これに先立ち、ドクターへリポートと格納庫を整備し、2012年度から運用を開始するとしています。現在、盛岡にある1、168床の一部はメディカルセンターとして残るようでありますが、主体は矢巾町に移転することになります。
 そこで何点かお伺いをいたします。
 一つは、盛岡保健医療圏における患者の動向など、この移転の影響をどのようにとらえているのか、お伺いをいたします。
 二つ目は、公と民の違いはありますが、岩手医大附属病院は、これまでも県の医療の大きな核をなすものであり、岩手県の大きな医療資源であることは言をまたないところであります。従来、県が整備を進めてきた県立の中核病院との連携、あるいは役割分担も含めて今後どのように位置づけていくのか、お伺いをいたします。
 三つ目は医師の確保ですが、本県の人口10万人当たりの病院に勤務する医師数は、平成12年度117.6人から平成20年度114.3人と減少傾向にあり、地域医療を担っている病院に勤務する医師の確保を目標に、平成22年度まで、人口10万人当たりの病院勤務医師数のこれ以上の減少に、歯どめをかけるとしています。
 いわて県民計画の政策編にも、具体的に、臨床研修医受け入れ態勢の充実、勤務医の勤務環境向上支援事業の実施、即戦力となる医師の招聘等による医師確保を図るとともに、市町村と協力し、医学部進学、医学生の就学の支援や地元医科大学、臨床研修病院等と連携した医療人材の育成に取り組み、平成18年度の医師確保数13人から平成20年度の30人、平成22年度は年40人の目標数値を示しております。今でも、岩手医科大学の定員増に対応した奨学金制度の充実など医師確保に当たってきたわけでありますが、岩手医大は、県内唯一の医師養成機関であり供給源でもあります。民の中でも岩手医大は特別な位置にあり、今、求められている県内医師の養成強化に向けて奨学金や研究助成など、さらに連携、支援を強めるべきと考えます。知事に御所見をお伺いいたします。
 次に、看護職員の確保と定着の推進についてですが、これについても、人口10万人当たりの看護師数を、平成20年の1、115.3人から平成22年には1、158.9人と目標を示しており、具体的に看護職員志望者の拡大と養成施設の教育環境改善支援、新卒者の県内就業率向上と離職防止対策や潜在看護職員の再就業支援を挙げております。看護師の能力向上と増強について県立大学の役割も大きいわけで、これに向けた対策と他の看護学校卒業生の県内定着への対応もあわせてお伺いをいたします。
 次に、教育行政についてお伺いをいたします。
 今、医師確保が喫緊の課題となっていますが、さきに議員連盟で矢巾町の岩手医大キャンパスを調査する機会がありました。その際、小川学長より、これまでに数回定員増を行ったが、そのときだけ本県出身者の割合が上がるものの、数年で、もとの10%程度に戻ってしまうとの指摘がありました。当然、医学部に進学するとなると学力、私学の場合は経済力と、進学できる高校生の層も狭くなってくるわけでありますが、県も、従来、医学系など難関コースへ進学する生徒への対策を行ってきたところですので、これらの現状と今後の課題についてお伺いをいたします。
 次に、高校生の離職についてお伺いをいたします。
 地元のある大きな組織の代表の方が、毎年高校卒を採用するが、ここ数年、1年以内にやめてしまうことが続いている。そのため、能力ということよりも、大卒のほうがやめる確率が低いので、そちらのほうを採用しているとのお話をしておりました。
 私も調べたところ、岩手県の高卒の離職率は、1年目、2年目、3年目と低下していき、1年目の離職率も、平成19年3月卒業者は23.6%、平成20年3月卒業者は20.5%、21年3月卒業者は17.7%と低くなりつつありますが、大学卒に比べると高くなっております。本県の高校生の就職内定率は、昨年12月末時点で84.8%と東北でもトップで、全国の77.9%を大きく上回っており、生徒と指導者の努力の結果と敬意を表する次第であります。しかし、せっかく就職しても1年以内に離職するのは、この厳しい経済情勢の中でもったいないことと考えます。社会人になるということの意義と、どんな困難に直面しても強く生きていくたくましさを育てることが大切と教育委員会委員長の演述にもありましたが、教育長にも、これらについての具体的な教育方針についてお伺いをいたします。
 次に、観光施策についてお伺いをいたします。
 1月の県政調査会におきまして、JTBの常務取締役の清水愼一氏のお話を聞く機会がありました。国内における旅行消費額は23.6兆円、生産波及効果51.4兆円、雇用誘発効果430万人、経済波及効果は食品製造業や農林水産業に匹敵すると言われております。ことしは平泉の世界遺産登録、そして平成24年4月から6月のデスティネーションキャンペーンを控えており、岩手の観光にとって重要な年となっております。まず、これらに対する県の取り組み姿勢をお伺いいたします。
 一つ目は、デスティネーションキャンペーンについてですが、昭和55年以来、実に32年ぶりのチャンスです。前回は、詩情ゆたかな岩手路のキャッチコピーでありましたが、このコピーは県民の記憶に残っているものであり、デスティネーションキャンペーンにおけるキャッチコピーは重要であります。今回のキャッチコピーはどんなコンセプトで、だれがどのようなスケジュールで作成されていくのか、お伺いをいたします。
 また、デスティネーションキャンペーンは本番が3カ月であり、その前の盛り上がりが重要であります。キャッチコピーの周知等、県民へのPRも重要と考えます。その取り組みについてもお伺いをいたします。
 以上で私の質問を終わります。御答弁によりましては再質問をさせていただきますので、よろしくお願いをいたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 答弁に先立ちまして、先般のニュージーランドにおける地震で被害を受けた皆様に対し心からお見舞いを申し上げます。特にも、県民の安否確認がいまだなされておらず、御無事であることを切に願っております。また、救助救出活動や情報収集等に当たられている関係者の皆様に対しまして敬意を表するとともに、無事任務を果たされることをお祈り申し上げます。
 熊谷泉議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、財政運営についてでありますが、近年、地方財政は、国税収入の減少を背景として、地方交付税の振りかえである臨時財政対策債が急増しており、本県の県債発行額にも大きな影響を及ぼしております。また、県経済や雇用情勢が極めて厳しい状況の中で、基礎的財政収支という財政規律のみを重視し、税収の範囲内に事業規模を縮小させることは適当ではなく、長期、短期の視点から、県民の生活を守り、さらに岩手を発展させていくため、積極的な事業展開を行っていくことが必要と考え、適切な財源対策を講じつつ、予算の編成を行ってきたところであります。
 その結果として、基礎的財政収支は赤字となっておりますが、県として管理可能な県債は縮減させるとともに主要3基金への積み立てを行うなど、将来に備えた手だてもしっかりと講じてきたところであります。その結果、県民の実質的な将来負担の状況を示す将来負担比率は減少傾向となっているところでありますが、他団体に比べ高い水準にあることは事実でありますので、今後においても、基礎的財政収支や将来負担比率などの財政指標を参考としつつ、将来の負担を過度に増加させないように適切な財政運営を行っていくことが必要と認識しております。
 次に、環太平洋パートナーシップ協定の本県農業への影響についてでありますが、本県農業は、食料の安定供給はもとより、地域経済を支える基幹産業として大きな役割を担うとともに、その生産活動を通じて、国土、自然環境の保全や伝統文化等の保存、継承など多面的な機能を発揮しており、安全・安心で快適な県民生活の実現に向けて今後とも振興していくことが重要であります。
 一方、環太平洋パートナーシップ協定は、センシティブ品目の段階的撤廃の措置はあるものの、関税の撤廃が原則とされており、多国間の市場取引が促進される一方で、農林水産業や食産業など、地域の特性や資源を最大限に生かした産業の振興に大きな影響を与えることが懸念されますことから、この協定への参加については、国において、国民の合意が得られるまで慎重に検討すべきと考えております。
 次に、本県産米の販売戦略についてのお尋ねであります。
 まず、本県産米の輸出に係るこれまでの成果と今後の課題についてでありますが、県では、平成19年度にいわて農林水産物輸出促進協議会を設置し、本格的に農林水産物の輸出に取り組んできており、米を初めとした県産農林水産物の輸出については、私自身も海外に出向き、トップセールスをして販路の開拓に努めてまいりました。これまで、中国への輸出実績はないものの、県産米輸出全体としては、平成19年度の6トンから、本年度2月末時点で約90トンと順調に増加しており、その取り組みは一定の成果が出ているものと考えていますが、今後は、販売のすそ野を広げるため、値ごろ感のある商品についてもさらに取り組みを進める必要があると考えております。
 次に、中国輸出に向けた流通経路についてでありますが、現地米との価格差、販売先の確保などの課題はありますものの、中国は将来的に有望な市場と考えています。今般の国の支援措置は、米を中国に輸出するために必要とされる精米施設や薫蒸施設の指定等に係る調査費用を対象とするものですが、これは、中国政府に対する薫蒸義務の撤廃や要件緩和等の検疫に関する協議が決着するまでの緊急措置と伺っております。
 県としては、こうした中国政府との協議の動向を注視しつつ、県内精米業者や輸出要件を満たす精米施設等を有する大手業者の意向も確認しながら、中国輸出の流通経路の検討を進めていくとともに、これまで培ってきた日系小売店等の海外ネットワークの活用による販路開拓や、輸出実績のある全農全国本部への働きかけなどにより、中国への輸出の実現に向けた取り組みを進めることとしております。
 次に、岩手医科大学との連携強化についてでありますが、岩手医科大学は本県で唯一の医療系総合大学であり、医育機関として、また本県の地域医療を支える中核的かつ高度な機能を有する医療機関として重要な役割を担っています。
 県としては、これまでも岩手医大と緊密な連携を図り、入学定員増に対応した医師奨学金制度の拡充や教育環境の整備のほか、地域医療に関する教育研究の充実、高度医療の取り組み等に対し継続的な支援を行ってきたところであります。今後、岩手医大においては、平成24年度に予定しているドクターヘリの運航により、本県の救命救急体制の中で大きな効果が期待され、また、平成26年度以降においては、いわゆる地域枠奨学生が順次医師となり、県内での中小医療機関等において勤務することによって、県内医師の地域偏在の改善も着実に進むものと見込まれるところであります。
 したがいまして、県としては、本県の高度専門医療や救命救急医療の一層の充実と、地域医療を支える医師の養成、円滑な配置を図るため、今後さらに岩手医大と議論を重ね、より密接な連携を踏まえた取り組みを検討していく必要があると考えております。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁をさせますので、御了承をお願いします。
   〔総務部長菅野洋樹君登壇〕
〇総務部長(菅野洋樹君) 平成23年度当初予算の重要事業についてでありますが、平成23年度当初予算は、骨格予算とはするものの、現下の厳しい経済、雇用情勢を踏まえ、経済対策等、国の状況等を考慮し、緊急性、必要性の高い事業については適切に対処するという方針のもと、予算編成を行ったところでございます。この方針に基づき、あらゆる分野、事業を精査の上、早期に着手する必要がある事業については当初予算に計上するとともに、緊急雇用創出事業臨時特例基金や介護サービス施設等整備臨時特例基金など国の交付金により造成された基金については、経済対策により措置された性格上、早期の事業執行が必要であることから、これらの基金を活用した事業についても当初予算に計上したところでございます。
 これらの中から具体的な例を挙げさせていただきますと、雇用の創出と就業支援による雇用対策のための取り組み、医師確保対策やドクターヘリの導入促進など地域保健医療体制の確立に向けた取り組みなどに要する事業、また、平泉の世界遺産登録の実現後を見据えたいわて平泉年の推進や、その価値の普及に向けた取り組み、さらには平成24年度の実施が予定されておりますいわてデスティネーションキャンペーンに向けた取り組みなどに係る予算を計上したところでございます。
 次に、今後の補正予算等についてでありますが、平成23年度当初予算は、県税等に実質的な交付税を加えた一般財源が約46億円の減収となる一方、義務的経費の増加が見込まれたことから、既存事業を見直すとともに、限られた一般財源や国の経済対策等により積み立てられました基金を効果的に活用し、予算編成を行ったところでございます。今後、6月補正予算におきましては、新規または政策的経費に係る予算編成を行うこととなるところでありますが、その際は、あくまで必要な事業を積み上げつつ、その内容に応じた国庫補助金や県債、さらには経済対策等で積み立てられた基金の活用など財源の確保について検討しながら、予算を編成する必要があるものと考えております。
 次に、法人事業税の税収についてでありますが、各企業の中間決算の状況や大口企業への個別照会等をもとにその額を見込んだところでございます。それによりますと、製造業において、企業収益の回復等により増収が見込まれまして、その主な業種につきましては、機械、電気機械、輸送機械等で増収となる見通しになっております。
   〔農林水産部長小田島智弥君登壇〕
〇農林水産部長(小田島智弥君) まず、県産オリジナル水稲品種の開発についてでありますが、県では、品種開発のスピードを加速させるため、平成22年3月に、財団法人岩手生物工学研究センターに次世代シーケンサーを整備し、現在までに、ひとめぼれなど50系統の水稲について、すべての遺伝子配列の解析を終了したところでございます。今後、平成25年度までに、国の独立行政法人が解析したコシヒカリの遺伝子配列の情報も活用しながら、本県がねらいとする良食味などにかかわるDNAマーカーの開発を進めることとしております。この技術を活用することにより、農業研究センターでは、品種開発期間を大幅に短縮し、平成26年度を目標として、コシヒカリを超えるオリジナル品種の候補を開発することとしております。
 次に、松くい虫対策でありますが、県では、毎年度、松くい虫被害対策実施方針を定め、被害先端地域に設置している防除監視帯では被害木を全量駆除するなど、市町村と連携し、未被害地域への拡大阻止に鋭意取り組んでいるところであります。平成21年度からは、被害木周辺の被害感染が疑わしい衰弱木等の徹底駆除を被害先端地域で実施するなど、防除対策の強化を図ったところであります。実施に当たって人材不足は発生しておりませんが、被害木等の徹底駆除については、平成23年度までの国の経済危機対策予算を活用しており、その後の対策は改めて検討することと考えております。今後とも、市町村と連携しながら粘り強く防除対策を実施し、これ以上の被害北上の阻止に努めてまいります。
 次に、定置網の被害対策についてでありますが、今般の暴風、波浪、大雪等に伴う被害対策として、本県は、1月20日に、国に対し、定置網施設が激甚災害に指定されるよう指定要件の見直しなどを要望したところであります。その際、国からは、激甚災害の指定要件は法律により定められており、定置網を加える方向で見直しするには法改正が必要となることから、直ちに指定することは難しいと回答されております。しかしながら、定置網漁業は本県の重要な漁業であることから、今後、必要に応じて、定置網漁業が行われている他県と連携し、国に要望してまいります。
 次に、農業農村整備の推進方向についてでありますが、農業農村整備事業は、農地や農業水利施設など農業生産基盤の整備とともに、農道や集落排水施設など農村生活環境の整備を通じて、安全・安心な食料の安定生産や、緑豊かで心安らぐ農村生活を支えてまいりました。また、県内では、圃場整備を契機として集落営農組織が設立され、麦、大豆など転作作物の高品質、安定生産や、女性、高齢者の知恵と工夫を生かした6次産業化の取り組みが多くの地域で展開されるなど、農業農村整備事業が地域の活性化にも大きな役割を果たしております。
 今後におきましては、平成23年度から本格実施となる農業者戸別所得補償制度の実効性を高めるためにも、水田の大区画化や農地の利用集積による低コスト生産に加え、暗渠排水等による排水改良を通じた転作作物の収量、品質の向上を促進し、農家経営の体質強化に取り組んでまいります。
 こうした中、農業農村整備事業をめぐる国の予算は依然として厳しい状況にありますが、県内各地からは、全国に比べおくれている水田の整備や、老朽化が著しい農業水利施設の早急な補修、更新を望む声が数多く寄せられております。このため、県としては、従来からの補助金や農山漁村地域整備交付金など国からの予算の確保に努めるとともに、選択と集中や建設コストの縮減などさまざまな工夫を凝らし、地域からの要望にこたえてまいります。
   〔保健福祉部長千葉茂樹君登壇〕
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) まず、岩手医科大学附属病院の移転に伴う影響についてでありますが、附属病院が矢巾町藤沢地区に移転することにより、盛岡保健医療圏内においては、患者の受療行動に対する影響が少なからずあるのではないかと考えているところでございます。しかしながら、現時点で附属病院移転の全体構想の詳細が不明でありますことから、移転に伴う具体的な影響については把握できないところであり、また、現在の所在地であります盛岡市内丸地区には、(仮称)内丸メディカルセンターが整備されると聞いておりまして、このセンターがどのような機能を担うかによって、その影響内容が左右されるものと考えております。
 次に、岩手医科大学附属病院と県立の中核病院との今後の連携、役割分担についてでありますが、岩手医科大学附属病院は、高度な医療を提供する県内唯一の特定機能病院であり、また、同病院には、高度救命救急センターや総合周産期母子医療センターなどが設置されており、多くの医療機能連携体制において全県の中心的役割を担う病院に位置づけられているところでございます。
 今後の附属病院の矢巾移転に伴いまして、新たな病院につきましては、より高度な先進医療機能を備えていくことも想定され、県内の他の医療機関との役割分担なども変わっていく可能性があるものと考えております。したがいまして、県といたしましては、今後、岩手医科大学に全体構想を示していただきながら、来年度から着手いたします平成25年度からの5カ年間の次期保健医療計画の策定過程におきまして、附属病院と県内の中核病院との今後のあり方について検討していく必要があるものと考えているところでございます。
 次に、看護師の確保対策についてでありますが、本県におきましては、平成20年度に策定いたしましたいわて看護職員確保定着アクションプランに基づきまして、看護職員養成施設卒業生の県内定着を初め、看護職員の養成確保、資質向上等に総合的に取り組むこととし、各種事業を実施しているところでございます。その中でも、新卒者の県内定着に効果を上げております看護職員修学資金貸付制度につきましては、その定着をさらに促進するため、この制度で一定期間勤務することにより返済を免除する対象病院につきましては、これまで病床数200床未満としておりましたものを500床未満とする要件緩和を含めました関係条例の一部改正案を今議会に提出いたしますとともに、新規貸付対象者数を約70人から100人とする拡充につきましても、平成23年度当初予算案に盛り込んでいるところでございます。
 また、特にお尋ねの県立大学におきましては、看護学部卒業生の県内への就職、定着を促進するため、病院等医療機関の採用担当者を招いての説明会や、看護学部学生と県立病院看護師との懇談会等の開催に取り組み、さらに、県内の看護職員の資質向上を図るため、看護職員の継続教育や研究等を行う看護実践研究センターを学内に設立したところでありまして、先般、学長と副知事も出席いたしました県立大学と県との意見交換会におきまして、これらの取り組みをさらに強化するための双方の連携について話し合いが行われたところでもございます。
 なお、アクションプランにつきましては、看護関係団体、看護師養成施設等の意見も聞きながら見直しを進めておりまして、今後も県内の看護職員不足を解消するための対策を積極的に進めてまいりたいと考えております。
   〔商工労働観光部長齋藤淳夫君登壇〕
〇商工労働観光部長(齋藤淳夫君) まず、観光施策への取り組み姿勢についてでありますが、本年6月に見込まれる平泉の文化遺産の世界遺産登録と、平成24年の4月から6月まで実施するデスティネーションキャンペーン─以下、DCと申し上げますが─このDCとの相乗効果を生かして、本県への誘客の定着による交流人口の拡大を図ることが重要と考えております。このため、地域のさまざまな資源を生かして観光客にオンリーワンを提供する地域の魅力づくりと、岩手の新しいおもてなしの形の運動の展開、この二つを取り組みの基本方針としております。この方針に基づきまして県民総参加の体制を構築し、地域が主役となり、隣県との連携も図りながら取り組みを進めていくこととしており、まず、県、市町村、民間団体、企業で構成するオール岩手の体制により取り組みを進めるDC推進協議会を昨年11月に設立いたしました。
 次に、各地域が主体となりまして、観光素材の掘り起こしや磨き上げ、受け入れ態勢の整備を進めるよう観光コーディネーターを設置し、各地域に派遣するなどの支援を行っております。また、青森県八戸市や秋田県鹿角市、小坂町との連携による県境を越えた広域エリアでの誘客も進めております。
 今後は、6月の世界遺産登録に引き続き、7月には全国宣伝販売促進会議を開催し、旅行会社へのセールスなどを行い、旅行商品造成の促進にも努め、多くの観光客が本県を訪れるよう積極的に取り組んでまいります。
 次に、DCのキャッチコピーについてでありますが、今月1日に開催いたしましたDC推進協議会総会におきまして、DCのコンセプトを、じっくりと時間をかけていわてを感じていただく旅の訴求と決定したところであります。このコンセプトは、多くのお客様が本県を知って、本県に来て、本県の魅力を時間をかけて楽しみ、リピーターとなっていただくことで、本県への誘客が定着することをねらいとしているものであります。このコンセプトに沿いまして、今月15日から来月6日までの間、県民などを対象にキャッチコピーの公募を行っております。応募のあった作品につきましては、専門家の意見や補作なども取り入れながら選考作業を行い、来月中に開催しますDC推進協議会総会においてキャッチコピーを決定することとしております。
 また、県民へのPRにつきましては、県民一人一人が観光客をおもてなししようとする機運を醸成するため、今月予定している新聞広告によるPRを初めといたしまして、各マスメディアへの広告や県の広報媒体による県民へのPRを展開していくこととしております。
   〔教育長法貴敬君登壇〕
〇教育長(法貴敬君) 医学系に進学する生徒への対策の現状と課題についてでありますが、現在、いわて進学支援ネットワーク事業におきまして、各高校の生徒が学校の垣根を越えて集う合同授業の一つとして、1年生から3年生までを対象に、医師を目指す進路意識をはぐくむための講演や進路目標達成に見合う学力を養成するための講座を行っております。この結果、ここ数年は医学部医学科への入学者数が増加傾向にあり、また、医学科に合格する生徒を輩出する高校の数もふえ、すそ野が広がりつつあります。
 今後の課題といたしましては、医師を含めた進路に対する意識づけを早期から行う取り組みや、医学系など難関大学への進学を実現するための学力をさらに高める取り組みなどが挙げられます。また、生徒の進路意識の向上と、それぞれの進路目標を確実に達成できる学力向上について、今後も取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、高校生の離職対策についてでありますが、本県における高卒者の離職状況は近年減少傾向にあるものの、平成21年3月卒業者のうち17.7%が離職している状況については、大きな課題であると認識しております。このような状況にかんがみ、平成22年3月にいわてキャリア教育指針を策定し、小学校から高等学校まで、発達段階に応じたキャリア教育を進めているところであり、現実の社会やさまざまな職業について学び、将来の目標に向かって努力することや、学習する大切さを理解させることとしております。特に、高等学校においては、生徒一人一人が3年間を通して一つのことに打ち込み、粘り強さを身につけ、インターンシップなどの体験的な学習を通して社会を支える一員としての自覚を持たせるとともに、将来のさまざまな状況に対応できる能力を育成し、卒業後、社会人、職業人として自立できるようにすることが大切であると考えております。
 なお、高校生が卒業後、職場に定着することができるよう、関係機関と連携しながら、引き続き支援してまいりたいと考えております。
〇23番(熊谷泉君) それぞれの質問について御丁寧な答弁をありがとうございました。
 観光施策について再質問をさせていただきます。
 平泉の文化遺産の世界遺産登録やDCに向けた取り組みで、情報発信の強化と国際・国内観光などの観光形態や旅行者のニーズに応じた受け入れ態勢の整備を挙げておりますが、デスティネーションキャンペーンのキャッチコピーにつきましては、先ほどコンセプトが、じっくりと時間をかけて訴求するというもので、そういう新たな視点でなされたようであります。このDCに関しましては、県民総参加の態勢にするというお話がありましたが、やはり一番わかりやすいのは、詩情豊な岩手路という、ああいうキャッチコピーが県民にとって一番印象深いものでありますが、先ほど、キャッチコピーの策定のスケジュールもお話がありました。あともう少しでできるということでありますが、もう少し早い時期にこのキャッチコピーを策定し、もっと県民の盛り上がりがされるべきだったと思いますが、それについて御所見を伺いたいと思います。
 また、いわて花巻空港の機能強化と利便性の向上についてでありますが、平成23年7月供用開始とされております平行誘導路の効果と、それから、チャーター便受け入れ態勢の整備が進められるということでございますが、その状況についてお伺いをいたします。
〇商工労働観光部長(齋藤淳夫君) DCのキャッチコピーについてでありますが、先ほど御答弁申し上げたとおり、キャッチコピーにつきましては、本年7月に本県で開催いたします全国宣伝販売促進会議における全国の旅行会社やマスコミに対するセールス及びこれに続きますプレキャンペーン、こういったものに対する活用を念頭に策定を進めております。先ほど申し上げたとおり、来月中を策定の目途としてきたところでございます。
 現在、キャッチコピーを公募しておりますが、策定したキャッチコピーにつきましては、先ほど御案内ありました昭和55年の本県DCにおける詩情ゆたかな岩手路と同様、DC実施後も、本県観光PRに活用する予定をしてございまして、よりよいものを厳選して、末永く活用できるものにしたいと考えているところでございます。
〇県土整備部長(平井節生君) いわて花巻空港の機能強化と利便性の向上についてでございますが、まず、平行誘導路の効果につきましては、大型機材の就航が可能となるため、渡航範囲の拡大や旅客数の増加などにより、国際交流の活性化や観光などの産業振興が図られるものと考えております。
 次に、チャーター便の受け入れ態勢でございますけれども、ハンドリング業務に係る日本航空の人員体制の縮小に対応し、羽田に拠点を持つ独立系ハンドリング会社の整備士に出張でサポートをいただくことにより、受け入れに支障がないように対応することとしており、今般、冬のチャーター便の受け入れに当たりましても、そのように対処したところでございます。
 また、国内線と国際線を同一時間帯で受け入れ可能とする国際線出発施設につきまして、7月の供用開始に向けて整備を進めているところでございます。
 今後も、平泉の世界遺産登録などを見据え、いわて花巻空港のハード、ソフト両面における受け入れ態勢の整備を進めてまいります。
〇議長(佐々木一榮君) 次に、高橋昌造君。
   〔17番高橋昌造君登壇〕(拍手)

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