平成17年2月定例会 第12回岩手県議会定例会会議録

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〇27番(田村正彦君) 政和会の田村正彦です。
 私は、知事の三位一体改革に対する取り組み方、そして私のライフワークでもある、厳しい環境に置かれているとはいえ本県の基幹産業の一つである農林業に関する諸課題、この2点に絞って、私の思いも述べながら質問をしてまいるつもりですので、知事の忌憚のない御答弁をお願いするものであります。
 その前に、知事としての所感をお伺いしたいわけですが、これは去る1日の川村議員の質問にもあったわけですが、私も議会に籍を置く者としてどうしても言わざるを得ません。去る1月21日に国においては通常国会が召集されました。その国会冒頭における1月24日午後の民主党岡田代表による代表質問、知事はごらんになりましたか。お忙しい方なので多分ごらんになっていないでしょうが、事の経緯については報道等で承知だと思います。私はたまたま見る機会があり、その場面を見ておりました。小泉首相の答弁が終わり、岡田代表が再質問に立たれ、我々がこの県議会本会議で知事に対し再質問する場面と同様の状況が続くものと思っておりました。しかし、結果は全く違いました。国政の運営に当たって最大の責任を担っているはずの総理大臣が、会派を代表し、野党とはいえ国民の負託を受け質問している質問者に対し一切答弁しない。私は、議会軽視、そして国民に対する説明責任の放棄とも言うべき総理大臣のあの姿勢、態度を見て唖然とすると同時に、あのような総理大臣を持つ我々国民の不幸を痛切に感じました。知事は、県政を担う責任者として県民はもちろんのこと、議会に対しても常に説明責任が求められている立場であろうと思いますが、その知事の立場で小泉総理のあのような行動に対しどのような所感をお持ちなのか、改めてお伺いいたします。
 次に、国による三位一体改革についてお伺いいたします。
 今回の全国知事会会長選挙、知事、本当に御苦労さまでございました。お疲れさまでした。結果は、まことに残念ながら志ならずだったわけでありますが、小泉首相が打ち出した三位一体改革を地方再生の一大チャンスととらえ、地方自治体として地方に住む者の立場で、国・政府に対し物申す姿勢は、私ども岩手県民はもちろんのこと全国的な共感を呼び、そのことが、今回の会長選挙に敗れたりとはいえ、多数の知事の皆さんの支持を得られたものと私は思っております。ぜひ初志貫徹で、より一層の活動を期待するものであります。
 そもそも今回の三位一体改革において、国に対しての知事会を初めとする地方6団体の地方自治への危機意識、そして怒りが大きなうねりとなった要因の一つに、三位一体改革に伴う国の平成16年度予算編成に当たっての地方交付税の大幅削減、財源移譲が余りにも都市部に偏ったことが指摘されます。理解を得られない一部の人から見れば異常とも思える知事の一連の活動の原動力、そしてそれを支えるものは何なのか、まずお伺いいたします。
 最近マスコミ報道等で県民の声として、知事会活動よりも県内にあって諸施策の実現に当たるべきとの意見が紹介されているのは、皆様御承知のとおりだと思います。それも一つの考えであると理解できるのでありますが、県民の皆さんにはぜひ理解していただきたいのは、今我々が日々の営みをしながら懸命に暮らしているこの地方経済、自治体財政はどうでしょうか。惨たんたる状況ではないでしょうか。
 産業振興にしろ、福祉政策にしろ、後に質問しようと思っておりますが、農業政策にしろ、県民生活に関するすべての施策をその地方独自の方法で財源手当てをし、展開しようとしても、明治維新以来敗戦によって多少は変化があったにしても、今日まで営々と続いている中央集権体制、国が主で地方が従の関係、いわゆる補助金行政、ここにメスを入れない限り我々が住む地方の独自性、産業振興策を初めとする各種施策の効率的な展開は望めないことは歴史的に証明されております。このような現状を踏まえ、知事会はもちろんのこと、我々県議会を含む地方6団体の一連の行動には強く賛意を表するとともに、今後の活動強化を期待するものであります。
 このたびの国の三位一体改革に伴う平成17年度予算編成に当たって、知事は演述の中で、地方側の自由度や裁量をふやすという観点からは極めて不十分なものであったと述べておりますが、知事会を初め地方6団体の一連の活動を今の時点でどう総括し、今後にどう生かそうとしているのかお伺いいたします。
 次に、県内産業別名目生産額比較では年々その比率が落ちてきているとはいえ、本県にとっては過疎化が進む中、地域社会の形成維持、伝統、文化、芸術の継承の面からも第1次産業の振興は、産業振興という視点以外にも重要な県政課題の一つであると私は見ており、その振興策について順次質問してまいります。
 本定例会冒頭、平成17年度予算編成方針あるいは今後の県政運営に当たっての知事演述がありました。その中で、重点的に取り組む施策として四つの施策を挙げられ、その中で人づくり、産業振興、豊かな暮らし、三つの施策の中で第1次産業が取り上げられております。本県産農林水産物の輸出の促進という新たな取り組みが図られている以外は、抜本的な第1次産業の振興策は見えてこなかったというのが私の印象であります。
 そこでお伺いいたしますが、演述で述べられております、将来とも十分発展が見込まれる有望な産業分野や業種に集中的に支援、投資をするとされております。知事の頭の中に、第1次産業は、その有望な産業であるという認識があられるのかどうかお伺いいたします。
 同時に、さきに述べましたが、農林水産物の輸出の促進については今国会の予算委員会質疑においても、その可能性について活発な議論が交わされておりますが、本県においては県内産農林水産物輸出について、どのようなプロセスで取り組もうとしているのか、また、国の施策との整合性はどう図られるのか、あわせてお伺いいたします。
 次に、農業にかかわる諸課題、今後の米政策等の見通しについてお伺いいたします。
 御承知のとおり、米の生産過剰、原因は反当たり収量の大幅な増加あるいは消費の大幅な減少が主な要因なわけですが、昭和45年から米の生産調整が始まり、以来35年を経て今日に至っております。その間、国による幾多の生産調整対策が打ち出され、実に13期にわたり現在まで10の施策が実施されてまいりました。新たな政策が出されるたびに末端の自治体、農協そして生産者は混乱の繰り返しで今日を迎えております。どういう制度にすれば財務省を納得させられるのか。そういう視点のみでの机上の制度改正がなされた結果、複雑怪奇な制度となり、私も米の生産者の一人ですが、自分の生産した米が一体幾らで売れているのか理解ができない、そういうのが現実であります。そのことが県も含めた各自治体、農協への過重な事務的、財政的負担を強いていることとなっております。
 このような中、平成14年12月、国による米政策改革大綱が示され、それを受け県において本県独自の施策として生産調整田、いわゆる米を作付していない水田でどう所得を得るかという観点から県水田農業改革大綱が定められました。その中で県内集落ごとに集落ビジョンの策定を促進してきたところであり、その画期的な施策に対し昨年の当定例会において大いに評価いたしたところでありますが、一昨年以来県内各地で進められてきた集落ビジョン策定の状況とその策定の過程でどのような課題が出され、その課題に対し県ではどう取り組もうとしているのか、まずお伺いいたします。
 集落ビジョンづくりの基本は、集落営農の核となる農業経営基盤強化促進法に基づく認定農業者あるいは担い手農家の確保と育成にあるわけです。本県における認定農業者数の推移とその確保策、また、その数に地域的な偏在性があるとするなら、その対応策をどうお考えになっているのか。
 また、当然のごとく認定農業者、担い手農家だけでの営農では、地域としての活性化あるいは集落としての連携、きずなが損なわれるおそれがあり、そのことに対する不安、不信が一方であることも事実であり、それに対してどうこたえていくかも重要な課題であると思われます。当然その対応策は集落みずからがビジョン策定過程で考えるべきことだとは思います。県としてどのように指導していこうとしているのか、あわせてお伺いいたします。
 認定農業者、担い手農家への農地集積、作業集約がさきに述べたとおり集落営農の基本だと思われますが、多くの集落で大きな、そして根本的な問題に直面しております。それは、高齢化あるいはほかに収入の場があって、所有している農地を貸したくても借りる人がいないということです。確かに集落には認定農業者なり担い手農家はいます。いてもそのような状況であり、極端な話、無料でも借りてもらえない例も現実には見受けられます。理由はそれぞれあるわけですが最大の理由は何か。遠隔地ということもありますが、主たる理由は、面的なことはもちろんのこと、周辺の農道、水路等の生活基盤が整備されておらず、借りたとしても集積効果が上がらず逆に経費がかさむということであります。
 今回の集落ビジョン策定過程で、生産基盤の整備なくしては農地集積も規模拡大もあり得ず、そのことが集落ビジョンづくりの妨げになっているという声が基盤整備のおくれている地域においては上がっております。確かに県財政の厳しいのは承知しておりますが、国による米政策改革大綱に取り組もうと必死にわずかな可能性を求めて頑張っている農家のためにも、遅きに失した感はありますが、生産基盤の整備に最優先で取り組むべきと思うわけでありますが、県のお考え方をお伺いいたします。
 また、これはさきに述べました三位一体改革に伴う補助金廃止問題とも直接かかわる問題だと思いますが、基盤整備事業は御承知のとおり国の補助金を導入して実施されているわけです。当然補助対象となり得るための基準があるわけで、例えば水田を整備しようとするとその採択基準として、工事面積のうち30アール以上の圃場が3分の2以上なければだめだとか、担い手に面積の何%以上集積しなければならないとか、さまざまな補助要件が付されており、そのことが整備のおくれを生んでいる面も多分にあることも事実であります。その地域、地域に合った基盤整備ができないという、まさに補助金行政の弊害が如実にあらわれており、地方6団体の要望する補助金の一般財源化要求は、このような弊害の解消を目指したものと理解するものであります。国においてはこのような補助金は、いわゆる与党族議員の力で死守する方向のようですが、県においてはこの種の事業実施に当たっては、地域特性を認めた上での裁量権の拡大を強く国に求めていくべきと思うわけですが、御見解があればお聞かせいただきたい。
 次に、国の米政策改革大綱に基づく米の生産調整対策は、平成18年度までは現状のまま続くものと想定されております。19年度以降の生産調整対策に大きな影響を与えると同時に、平成22年度までの農政のもととなる新たな食料・農業・農村基本計画案が国により先ごろ示され報道もされております。その内容を見ますと、消費者の視点に立った観点とか、担い手農家への所得確保対策、農地制度等現行の計画を大幅に見直したものとなっているようです。実行段階での細部の成案づくりは今後検討されるものとは思われますが、県においてはある程度の内容は把握されているものと思われます。そこで、このたび策定された新たな食料・農業・農村基本計画の目的とするところは何なのか。そのことが本県農業にどのような影響を及ぼすと考えておられるのかお伺いいたします。
 同時に、ことし2月当初、想像するに、さきに述べた新たな基本計画にリンクしたものと思われますが、全農地の7%、約34万ヘクタールに達する耕作放棄地の強制貸し出し、あるいは農地の貸付信託制度、あるいは一部認められている株式会社による農地の借り入れの全面解禁等大幅な農地法の改正案が今国会に提出されるという報道があったわけですが、本県における耕作放棄地の実態はどうなのか。報道のような農地法の改正がなされた場合、県としてどのような対応をとっていくのかお伺いいたします。
 次に、米の流通価格の動向についてお伺いいたします。
 さきに述べましたが、国の米政策改革大綱により、米の価格はほぼ完全に市場原理にゆだねられたと言っても過言ではありません。それとともに我々生産者は、売れない米はつくれない事態に追い込まれております。どういうことかと申しますと、例えば、昨年――平成16年度に生産した米が販売在庫として残った場合、その在庫分は翌々年の県の生産割り当て数量の算定に影響する。このことは当然生産調整面積の増加に直接結びつくものであり、生産者にとってはまさに厳しいものであります。それゆえに県産米の完全販売が求められ、完全に販売するために価格を引き下げる。まさにブラックホールに落ち込んだ状況だと認識いたしております。平年作だった平成16年度産米の農協仮払金額は60キログラム当たり1万2、000円がせいぜいです。1ヘクタール作付している生産者で、冷害で大被害を受けた昨年に比べて18万円以上の減収でした。各種補助金導入のため政策的に面積の集積に努めた認定農業者、担い手農家ほどその痛手が大きいものがあります。市場原理ですと一言で片づけていいものか、心の底からじくじたる思いをいたしております。一義的には生産者団体である農協団体の努力に期待する以外はないわけですが、産業としての米を考えた場合、県としてどのような対応、努力ができるのかお伺いすると同時に、平成16年度岩手県産米の販売価格の現在までの推移、そして、さきに述べた、生産者にとって一番気になる販売状況の推移をお伺いいたします。
 去る1月25日のある専門誌に、私の目に奇異に感じられた記事が載っておりました。内容は農林水産省の発言として、これは全農の黒豚輸入に関しての発言のようですが、農協は組合員よりも組織の利益を優先する体質があり考え直すべきだという発言でした。何をか言わんでして、確かにそういう傾向はあるかもしれませんが、我々組合員の言葉ならいざ知らず、農水省の言葉とはあきれ返って言葉も出ないというのが心境でございます。摘発は免れたとはいえ、その姿勢に多くの国民から疑念を持たれたハンナンにかかわる輸入牛肉偽装事件への対応、そしてBSE対策に翻弄されながらも、知恵と財政負担の結果、安全・安心の国産牛肉という消費者の評価を受けている生産から店頭までのトレーサビリティ制度の確立、そのような畜産関係者の懸命の努力を逆なでするようなアメリカ産牛肉の輸入再開にかかわる国、農水省の動き、一連の米政策における国、農水省の対応、今さら農協を批判するなどとんでもなく、それはそのままみずからのことと反省していただきたいと私は思っております。
 そこで、批判の対象となった農協、とりわけ農協金融についてお伺いいたします。
 御承知のとおり農業協同組合、農協も時代の趨勢とともにその役割、経営形態も大きく変化してきております。金融は農協のよきにつけあしきにつけ命運を担っていると言っても過言ではありません。一方、先ほど来申し上げておりますが、地域農業を支えている、また、これからも支えていくであろう認定農業者、担い手農家の経営を支えているのが公庫を含めた農協金融であり、その金融事情が大きく変化し農協経営を圧迫し、それがひいては地域農業の衰退につながりかねないと私は強い危惧を持っております。根本的にはバブル崩壊以来の現在までの国の金融政策と直接かかわることであり、避けて通れない面も確かにあるわけですが、最大の問題は担保評価の基準の見直しであり、聞くところによると課税標準額をその基準とすべしという指導もやがて想定されるということであり、もしそれが実行されたとするとどうなるのか。例えば、私の住む地域においては、水田10アールの課税標準額はせいぜい高くて10万円、その水田に80万円から100万円の担保設定がされているのが現実です。担保基準が課税標準額に見直しされたとすると、現在の担保価格が10分の1に下がるということであり、一挙に莫大な不良債権が発生するということであります。農協経営はもとより、地域農業、経済の崩壊につながりかねない重大な問題だと私は考えるわけですが、農協金融に対する国の指導の経緯と今後の見通しについてお伺いいたします。
 最後に、本県の森林・林業の状況、そして振興策についてお伺いいたします。
 御承知のとおり我が国は気象条件にも恵まれ、広葉樹、針葉樹、その樹種は多様であり、世界でも有数な森林国であります。戦後の国土復興のため国策として、また、県においても重要施策の一つとして植林、造林政策が行われてまいりました。その結実である人工林が伐期を迎え、あるいは迎えようといたしております。時代の趨勢とともに森林に対する見方も変化し、従来の産業としての林業から、地球温暖化、環境対策としての森林の重要性が世界的にも認められるようになり、1997年に京都において締結された京都議定書が先ごろ発効されたことにより、森林の保護、育成の意義は大きく高まったものと思われます。環境首都いわてを標榜する本県にとって森林の保護育成は、今後の県政にとっての一つの大きな課題であろうと認識いたすものであります。このような森林・林業を取り巻く環境の中にあって、国、県、市町村有林、そして森林面積の半数以上を占める民有林の経営状況、そして育成、保全状況はどうでしょうか。
 未来の岩手を支える子供たち、これから生まれてくる人たちの生活環境を考えるとき、とてもじゃないが次世代に引き継げる状態ではないのが現実であります。その現実の一端を申し上げますが、戦後の造林政策により植林されたカラマツ、杉、アカマツ等岩手を代表する樹種が立派に成長し伐期を迎えつつあります。集成材加工の技術革新による需要増によって、カラマツについては価格の面では相変わらず安いながらも引き合いがあり動きも活発と聞いておりますが、県木でもある岩手を代表するアカマツはほとんど引き合いがなく、伐期を迎えて販売したくても売れない、売れたとしても後の植林経費に遠く及ばない価格、杉にしても同様のことが言えます。その結果として、県外所有者の森林を主として手入れがされず、結局のところ立木のまま朽ち果てるか風雪によって倒木になるかという惨たんたる状況、また、伐採後造林補助金を導入して植林しても、今日の財政状況の中、従来の森林育成に係る補助金削減により、最も大事な植林から10年ぐらいの育成期間に投資ができず、せっかく貴重な税、補助金をつぎ込んで植林してもその効果があらわれない。今の状況は極端な言い方でありますが、このような状況と私は考えます。
 知事は、我が県の森林・林業についてどういう認識をお持ちになり、また、県では県独自の森林税導入に向け検討委員会を設け鋭意検討中ということですが、本来この種の税は森林の恩恵を最も受けているであろう都市部で負担すべきものであり、その意味からも国によって創設、徴収され、それを地方に裁量権を付与して配分するのがベストだと私は考えます。どうしても県独自の森林税の導入にこだわるのであれば、その使い道あるいはその効果も具体的に示す必要があると思うわけであります。後に述べますが林業公社、県有林特別会計、森林組合の経営等本県の森林行政すべてに影響することでもあり、また、させなければならないという立場から、拙速ではなく十分な時間をかけ県民に対し周知を図った上での導入が必要と考えるわけですが、知事のお考えをお伺いします。
 最後に、林業政策に対する提言を申し上げます。
 包括外部監査においても指摘されておるとおり、林業公社等含め我が県の林業行政については厳しい県民の批判をいただいております。私はこの課題の解決策の一つは、4万5、000人余りの森林所有者で設立され、現在県下に25組合ある森林組合の利活用にあると思います。県内の森林を造成、維持管理する団体として、その広域合併化が進められておると聞いておりますが、その状況をお示しいただきたい。
 そして、また、森林組合の組合長あるいは幹部職員の声として、流域ごとの現在の合併ではその効果が期待できず、この際、県下1組合にすべしとの声もあり、私も同様の意見を持っております。県では、こういう現場の声をどうとらえているのか、さきに述べました民間、公社の問題とあわせて、知事の御答弁をいただきたいと思っております。
 最後に、林業環境整備、これはこれからの県の一番大事なものと私は認識しております。そういう観点からも、知事の森林に関する総括的な御意見をお聞きし、演壇からの質問を終わります。
 答弁によっては、再質問をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 田村正彦議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、先日の小泉総理の、そして岡田代表の一連のやりとりについてのお尋ねでございます。
 私は、一般論として、議会制民主主義におきましては、議会とそれから執行機関、これは両者、車の両輪として国政や地方行政を牽引する、そういう役割を担っているわけでありますので、それぞれお互いの立場を尊重し合いながら、真摯な態度で議論を深めていくことが求められていると考えるわけでございます。特にも、国会の場におきましては、質問する側とそれから答弁する側の双方が、やはり誠実に質疑に臨んで充実した論戦を展開し、さらに、十分に論議を尽くして国民の負託にこたえていくことが大切であると考えております。
 三位一体改革についてのこの原動力、これは何なのか、こういうお尋ねでございますが、私が、これまで地方自治に携わってまいりましたその中で、一貫して強くその必要性を感じ続けておりますのは、生活者あるいは県民から遠く離れた中央で、全国画一化された尺度で一方的に物事が決められる、そういうことではなくて、より生活者、県民に近いところ、すなわち、地方の現場で生活者が真に求めているものを実現していくという、いわば生活者や地域から始まる新しい仕組み、すなわち、生活者主権、地域主権型の社会をつくるということでございます。この必要性を強く感じるわけでございまして、このことが、我が国を救う道であると思いますし、また、この議会の方でも、そうした考え方でこれまで行動してこられたわけでございます。こうした議会や執行部の考え方というのは、これは県民の皆さん方にも広く御支持、御理解をいただいていると考えておりまして、こうしたことを支えとして、三位一体改革の推進に今後も全力で取り組んでいく考えでございます。
 平成17年度政府予算の中での三位一体改革の内容についてでございますが、これは再三申し上げておりますが、我々地方の側から見ました考え方と大きくかけ離れておりまして、地方の裁量や責任を拡大して、自主的、自立的な行財政運営を進めるという、この地方分権推進の観点からは極めて不十分なものであると、このようにも思います。
 また、一方で、都道府県や市町村が大同団結をして一つの成案を取りまとめることができたこと、また、国と地方が同じテーブルに着いて協議する場が初めて設置をされた、こうしたことにつきましては、今後の改革の前進に向け意義があったものと受けとめております。
 今後は、特に平成19年度以降の第2期改革ということになりますが、今後は、その第2期改革の道筋をつけていかなければならないと考えておりまして、このため、地方6団体の結束をさらに強固にしていくと。それから、積極的な広報活動を展開しまして、国民世論に訴えて、その支持や理解をいただくことが不可欠でございまして、その上で継続設置をされた国と地方の協議の場を通じて、真の改革の実現を強く国に迫っていきたいと考えております。
 次に、一次産業に対する知事の認識についてのお尋ねでございますが、直近の産業連関データ、これは平成10年ということになりますが、この産業連関データから見ますと、県内の産業別の経済規模を見た場合に、第一次産業の食料素材としての生産額は約3、800億円、これは県内生産額の約4.6%でございますけれども、しかし、食品製造業や飲食業を含めた県内の食料産業全体では実に約1兆5、000億円、これは県内生産額の約19%相当でございまして、そこまでの市場規模となっております。
 また、県内の就業構造を見ますと、第一次産業の就業者数は約14万人ということで、県内就業者数の約18%でございますが、食料産業と木材産業をあわせた就業者数は約24万人と、これは県内就業者数の約30%の規模となっておりまして、農林水産業は、関連産業と連携することで高い経済波及効果と数多くの雇用をもたらす産業であると、この岩手が経済的な自立を目指す上で、なくてはならない産業であるととらえております。
 本県の農林水産業でございますが、これは高齢者のわざや女性の潜在的なパワーなど、本県の持つさまざまな資源を高度に活用することによりまして、最も岩手らしさや地域力の発揮できる有望な産業でございます。さらには、建設業など異業種からの進出を受け入れることで、新しい産業が創出される場にもなり得る、このようにも考えているところでございます。
 こうしたことから、県では、一次産業を支える力強い担い手の確保・育成を最重点に進めますとともに、本県のすぐれた素材を食品産業などの二次産業、さらには観光産業などの三次産業と組み合わせまして、そして農業経営に一層の厚みを持たせ、地域の経済を力強く牽引する産業として振興していきたい、このように考えております。
 最後に、森林・林業についての認識で幾つかお尋ねをいただいております。
 まず、本県の森林は県土の約8割を占めているわけでございまして、県土の保全や水資源の涵養など、公益的機能を発揮してございます。近年では、二酸化炭素の吸収や、生物多様性の保全などの機能にも期待が高まっております。しかしながら、木材価格の長期低迷などによりまして採算性が悪化をしている。それから、森林所有者が高齢化して、世代交代などによりまして所有者の林業経営に対する意欲が減退をしております。また、不在村所有者が増加しているということもございまして、現実には、県内を見ますと、手入れの行き届かない森林が増加をして、森林のさまざまな機能を維持することが困難な状況となってきております。
 こうした中で、本県の豊かな森林のさまざまにわたる働きを将来にわたって維持・増進していくためには、何といいましても、林業生産活動の活性化を図るとともに、環境を基軸とする新たな視点に立って、県民の参画を得ながら森林環境保全に努めることが必要と考えております。
 こうした認識に立ちまして、林業生産活動の活性化と今申し上げましたが、そのことにつきましては、少子・高齢化が一層進む中で、林業の担い手をどのように確保・育成していくべきか、こういう点につきまして、今、検討を担当部にさせているところでございまして、また、森林の持つさまざまな機能を将来にわたり、より生かしていくための方策につきまして、昨年の2月にいわて森づくり検討委員会を設置いたしまして、その中で幅広く今御審議をいただいているところでございます。この検討委員会は、今月でございますが、この3月には検討委員会を開催して、そこから最終報告をいただくこととなってございまして、その報告も踏まえて具体的な方策を検討して、森林環境保全に向けた取り組みを進めていきたいと考えているわけでございます。
 今申し上げましたいわて森づくり検討委員会でございますが、昨年の9月に中間報告をしているわけでございます。そこでは2点の提言がございまして、森林を県民の公共的な財産としてとらえて、県民全体で森林の整備・保全を行う必要があるということ、それから、安定的な財源を確保するための新しい税制度の導入を図ること、この二つの提言をいただいております。現在、この検討委員会で新しい税制度の仕組みについて継続して、なお検討が行われているわけでございますが、今後の対応として、県では、今申し上げました、今月報告いただく予定の最終報告を踏まえて、新たな税制度の必要性と、それから具体的なその使途――使い道、それから制度の詳細について、県民の皆様から幅広く意見を聞きながらさらに検討を継続していきたい、このように考えております。
 仮に、こうした新たに税制度を導入することとした場合でございますが、その場合には、何よりも県民理解が不可欠なことは、ただいま議員の方からお話があったとおりのことでございまして、そうした場合には、今後、地域説明会やパブリックコメント、それから県政番組などのさまざまな広報手段がございますので、そういったものを駆使いたしまして、森林整備の必要性について十分な県民理解と、そして県内での機運の醸成に努めてまいりたいと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁をさせますので、御了承をお願い申し上げます。
   〔農林水産部長今泉敏朗君登壇〕
〇農林水産部長(今泉敏朗君) まず、第一次産業の振興についてのお尋ねでございますが、近年、主としてアジアへ日本の果実や野菜が輸出され始めており、質の高さや健康志向を強調していくことで、日本の農林水産物も海外において十分競争していけるという判断から、農林水産省は、昨年4月、大臣官房に輸出促進室を設置し、国産農林水産物食品の輸出を促進するさまざまな支援を始めております。こうした国の支援策を活用しながら、県といたしましては、昨年、中国、台湾からバイヤーを招聘し、岩手の農産物にどのような興味を持つか、どこに関心を持つかというような調査を行っておりますし、こういった取り組みはことしも引き続き行うこととしております。
 さらに、本年4月に設置予定の大連経済事務所を拠点として、中国の商習慣の調査や需要・価格情報の収集、分析等を行い、輸出有望品目の見きわめを行うとともに、信頼の置ける海外の輸入業者の確保等に取り組んでまいることとしております。
 こうした取り組みを通しまして、意欲的な生産者等が取り組む試験輸出を支援するとともに、輸出ニーズに対応した産地づくりを進め、県産農林水産物の輸出を促進してまいりたいと考えております。
 次に、今後の米政策の見通しについてでございます。
 新たな米政策への移行に当たっては、農業者みずからが集落の将来の水田農業の姿を描き、主体的に実践していただくことが重要でありますことから、集落ビジョンの策定を進めていただき、現在、県内の約9割以上の集落が参加して、1、568のビジョンが策定されたところであります。
 ビジョン策定の過程では、兼業農家だけの集落でどう担い手を確保するか、米以外の作物でどう収益を確保するかなど、それぞれの集落の状況を反映したさまざまな課題が明らかになっております。また、ビジョン実践の取り組みに濃淡があることも、全体の課題であると認識いたしております。
 県といたしましては、こうした課題に対応するため、引き続き集落に入り、集落営農の体制づくりを支援するとともに、園芸作物等の産地づくりに対する助成、集落型経営体支援センターによる法人化のための経営管理指導など、集落の取り組みの熟度に応じた支援をきめ細かく行ってまいります。
 次に、認定農業者数の推移と確保策についてでありますが、本県の認定農業者数は、平成12年度に5、552経営体であったものが、平成14年度では6、436経営体、平成16年8月現在で7、505経営体と、着実に増加しております。地域的に見た場合、水田面積の多い花巻市、北上市、雫石町、さらに、園芸や畜産の産地化が進んでいる遠野市、江刺市、一戸町、西根町で多く、沿岸部と東磐井地区では少ない状況にあります。
 こうした地域におきましては、地域特性を生かした作目の産地化を進めますとともに、地域に住む生産者がそれぞれの役割を担いながら、集落が一体となって行う集落営農の取り組みを進め、熟度に応じて農業法人へと誘導し、地域農業を担う認定農業者となるよう支援してまいります。
 次に、地域営農活性化や集落のきずなを確保するための県の指導についてでありますが、食料の安定的な確保という観点からは、効率的かつ安定的な農業経営を目指す認定農業者の育成は必要であると考えておりますが、一方で、地域の話し合いを通じて、専業農家、兼業農家などがそれぞれの役割分担のもとに、地域が一体となって行う集落営農を展開していくことも必要であると考えております。こうした取り組みを岩手型の農業振興策として、今後、積極的に進めてまいります。
 次に、生産基盤整備の優先についてでございますが、集落水田農業ビジョンに基づき、各集落が農地利用集積等を図っていく上で、圃場整備事業は極めて重要な役割を担っていると認識しております。そのため、平成16年度から、圃場整備を農業農村整備事業の最重点事業と位置づけ、厳しい財政状況にはありますが、平成17年度予算におきましても、対前年比109%を確保するなど、集落ビジョンの実現の支援に向けて事業推進に努めてまいります。
 圃場整備における地域の自主性、裁量性の拡大についてでございますが、圃場整備事業において、区画形状や担い手への農地の利用集積率等が事業採択上の要件とされていることにつきましては、議員御指摘のとおりであります。しかし、これまで地方の側からの提言活動の結果、農道の幅員や水路の構造等につきましては、いわゆるローカルスタンダードの導入が可能となるなど、地域の実情を踏まえた事業計画が樹立できるようになってきております。
 今後も、地域が自己決定、自己責任の原則のもとに、創意工夫を図りながら、実情に即した整備により一層取り組むことができるよう、自主性、裁量性の拡大を引き続き国へ働きかけてまいります。
 次に、新たな食料・農業・農村基本計画についてでございます。
 この基本計画の目的とするところ、及びそれが本県農業へ及ぼす影響についてでございますが、先般公表されました基本計画の原案におきましては、国際競争力の高い農業の構築等に向け、担い手に対する施策の重点化や新たな経営安定対策の創設、地域資源の保全管理システムの導入など、喫緊に取り組むべき課題に対応した施策の方向性が示されたところであります。
 本県におきましては、兼業農家や専業農家などの多様な農業者がそれぞれの役割分担のもとに、地域が一体となって行う集落営農を展開していく岩手型の農業振興に取り組んでいるところであり、こうした本県の取り組みに照らした場合、新たな経営安定対策の創設は、集落営農を進めていく上で有効な対策ととらえておりますが、今後示される具体的な施策が、その対象を必要以上に担い手に重点化していったり、全国画一的な基準を設定することとなれば本県の実情と乖離し、本県の農業振興を図る上でやはり支障を来すことが懸念されるところであります。このため、県といたしまして、施策の具体化に当たり、本県の実情が十分反映されるよう、国に対して引き続き積極的に提案してまいりたいと考えております。
 次に、耕作放棄地の実態と県の対応についてでございます。
 2000年の農林業センサスによりますと、土地持ち非農家の耕作放棄地を含めた本県における耕作放棄地面積は1万1、275ヘクタールとなっており、1995年の6、643ヘクタールと比較して、4、632ヘクタール増加してございます。本県における耕作放棄地増加の主な要因は、高齢化、労働力不足、農地の受け手がいないことなどによるものであります。
 こうした現状を踏まえまして、農地法改正へどのように対応していくかということでございますが、耕作放棄地対策としては、まず、集落水田農業ビジョンの策定や実践活動を通じて、明確化された担い手にこうした農地が集積されるよう支援してまいりたいと考えておりますが、それが困難な地域にあっては、農地のリース方式による一般企業などの農業参入を図ることも、有効な手段であると考えております。
 このように、地域の実情に応じたきめ細かな対応が可能になるものと考えており、そのような取り組みを進めてまいりたいと考えております。
 次に、米の流通価格の動向についてでございます。
 16年産米の価格は、初上場された9月は、60キログラム当たり1万5、000円台で、高値であった15年産米の指標価格よりも約5、000円安でスタートし、現在では1万4、000円台で、平年作であった14年産米を下回る結果となってございます。
 また、16年産の販売状況についてでございますが、この2月における販売量は約1万3、800トンで、14年産米並みに回復してきていると、そういった状況にございます。
 新たな米政策のもとでは、これまで以上に需要に応じた米づくりが求められていることから、特別栽培米やもち米などの特色ある米づくりの推進は言うまでもなく、マーケットの変化に対応した販売力の強化ということを農業団体と一緒になって考え、それに取り組んでいくということが、産業としての米を考えた場合、県の対応としてやはり求められているだろうと考えております。
 いずれ、面積の集積に努めた認定農業者、担い手が痛手をこうむることのない販売戦略の確立に向けて、積極的に取り組んでまいります。
 次に、農協金融に対する国の指導の経緯と今後の見通しについてでございます。
 農協金融は、地域農業の振興上不可欠なものでございます。また、地域の身近な金融機関として公共性も有していることから、仮に農協が破綻した場合は、地域経済や産業の振興に多大な影響を及ぼすことが懸念されます。このため、近年の金融危機等の厳しい情勢のもとで、農協につきましても一般金融機関と同様の基準を適用し、農協の自己責任の原則に基づき、経営の透明性、健全性等を確保する必要があるとの考え方のもと、平成11年12月、農林水産省は、農協系統金融機関に対する系統金融検査マニュアルを整備、公表したところであり、現在、このマニュアルを踏まえ農協系統内部の監査が行われているとともに、農協法に基づく県の常例検査が行われております。
 なお、融資に係る不動産担保評価につきましても、このマニュアルを踏まえ、農協みずからが制定した資産査定要領に基づきまして、直近の公示価格や売買事例価格等を基準として、客観的、合理的な評価を行うこととなっているところであり、現時点では、この基準を見直す予定はないと承知しております。
 次に、森林・林業の状況と振興策について、まず、県事業の民間委託についてでございますが、県有林事業や治山事業などの公共事業で実施している造林や除間伐など森林整備作業につきましては、これからは限られた予算の中で、より効果的な事業実施が必要となってきますことから、議員御提言のように、その実施に当たりましては、一層、競争性を高めていくことが求められると考えております。
 一方、これまで、そうした森林整備作業を担ってきた事業体も、高齢化が進んでいることなどが課題となってきつつあります。このため、森林整備作業に係る林業技術の特殊性を考慮しつつ、効率的かつ質のよい森林整備を進めるための実施方法を、それを担う事業体のあり方も含めて考えてまいりたいと思っております。
 次に、森林組合合併の取り組みについてでございます。
 経営体力の強化という観点から、森林組合系統の自助努力による広域合併を促進するため、県が平成11年度に策定した森林組合合併基本構想の実現を目指し、森林組合系統におきましては、平成15年度に森林組合系統の改革実行計画を策定し、現在、この計画に基づき、県内5流域において広域的な業務連携や合併基本構想の実現に向けた本格的な議論が行われており、県森林組合連合会では、本年9月をめどに各流域ごとの意見を集約すると伺っております。この議論におきましては、1県1組合での合併の検討といった声があることは承知しておりますが、まずもって、森林組合系統で真剣に議論をいただき、その結果を踏まえて、合併のあり方を総合的に検討すべきであると考えております。
 いずれ、森林組合合併は、これからの県全体の森林の管理のあり方とも深くかかわってくる問題でもありまして、組合系統内部での活発な議論をこれからも促していきたいと考えております。
〇27番(田村正彦君) 再質問をさせていただきます。
 農協金融についてですが、今、部長の答弁では、当面という言葉をお使いになったと記憶していますが、農協金融の担保評価については見直す予定はないというお話がありました。いつもそうなんですが、予定はない予定がないと言いながらも、ある日突然にこれが変わってくる。これが今までの農政のずっと歴史的な経緯なんですね。
 私は本当に危惧をしているんですが、果たして農協の金融というものを一般の金融と同一の基準で考えていいものかどうか。あくまでも農家の出資によって、みずからの判断で経営者を選んで協働の精神で事業を行っている団体であると。確かに経営責任というのは当然あるわけで、そこには一定の基準、規制というのは当然あってしかるべきなんですが、それが金融庁の言うところの、一般的な金融業務と均一な物の考え方でこれを進められる危険性というんですか、それが先ほども演壇から申し上げましたとおり、担い手農家とか認定農業者、まさにこれによって地域営農で頑張っている実態があるわけですから、ここのところを――県にこれを言ったってしようがないことなんですけれども、そういう物の見方というのも一方ではあってもいいのではないのかなと。国に対しても、こういう地域にあっては、そういう考え方も訴えていくべきではないのかと、私は痛切に感じておるわけなんですが、そういうふうな考えについてどういう御見解があるのか、まず1点お伺いします。
 そして、また、森林の造林、維持、育成に関してでございますけれども、御承知のとおり、森林の植林なり間伐なり、その維持管理している団体というものが県下にはたくさんあるんですね。公的団体とすればまさに今話題になっている林業公社だとか、あるいは林業特別会計だとか、緑資源機構だとか、いろんな公的なそういった団体がございます。その下にぶら下がっているのが天下りのいろんな団体があるわけで、そのほかにも私的に森林組合あるいは民間の業者もあるわけなんですね。それが同じような仕事を皆それぞれやっている。そこに非常にむだがあるのではないのか。その結果が、こういった林業公社のこの赤字、そしてまた特別会計の大幅な赤字、一つの要因としてそういうふうに生んでいるのではないのかと私は考えるんです。
 ぜひこの際考えていただきたいのは、やはり植林にしても、育成、維持管理にしても、間伐にしても、やっぱり作業なりそういったものは、森林組合でもいいでしょうし民間でもいいでしょう。やっぱり入札でこれをやるとか、あるいは業務委託でやるとか、きちっとしたコスト削減政策をとらない限り、これは未来永劫、赤字はふえていくものだと、私はそう思うのですけれども、この点、そういうお考えがあるのかどうかお伺いしたいと思います。
 そして、知事の答弁に、第1次産業はなくてはならない産業であるという御答弁を、心強い答弁をいただいたわけなんですが、その意気込みとは反比例というんですかね、意気込みとはちょっと違って、確かに知事、各地に出かけてトラクターとか田植え機械に乗って張り切って地域の農家の人を激励いただいているのは非常にありがたいことなのですが、その激励、知事の姿勢とは裏腹に予算的な面ではどんどん、財政事情もあるのでそうなるのですが、ただ、それに予算的な面で削減があるというのは確かにわかるのですが、そこに何というんですかね、この時期はこれに重点を置くのだ、この時期はこのことに重点を置くのだ、そういったものが見えてこないのですね。私が先ほど演壇で申し上げましたとおり、例えば今の米改革が今国で米改革大綱に基づいて、これからの米づくりについて強力な施策を出してきている。それを受けて県でも大綱をつくった、集落ビジョンも作成させた。では、こういった時期に一体何が一番投資として重要なのか。私は先ほど演壇で述べましたとおり、そういったこの米改革大綱を完成させるためには、どうしても働きやすい基盤の整備というのは、私は一番必要だと思うのです。そうでなければ認定農業者に集約しようにも、担い手農家に任せるにも、だれも受け手がありませんから、その時期、時期で何が重要で、何に投資すべきか。こういったものがなかなかその予算書の中から見えてこないのが私の予算書を見た感想なんですね。そういうめり張りというのですか、これはすべての政策にも当てはまるのですけれども、めり張りをもっとより県民にわかるような形で出していくべきではないのか。その効果があらわれたら次のまた事業、こういうめり張りをつけるべきだと思うのですが、その点に対してどうお考えになっているのかお尋ねいたします。
〇知事(増田寛也君) 今の最後の点ですね、予算との関係等もございましたが、その点について私の方からお答え申し上げたいと思うのですが、1次産業、特にも今お話しございました農業については、集落営農ビジョンをせっかくつくりましたので、これをそれぞれの地域で定着をさせて、強い担い手、そして経営体づくり、これに向けて今全力を挙げていくべきではないか。そのほか輸出体制の確立等もありますけれども、やはり何といってもこういった各集落ごとの強い形態づくりに向けての施策を集中的に行っていくべきだろう。これで1次産業全体の大いなる底上げを図りたいと思っております。そこで、今、議員お話しございましたとおり、その点にもっともっと施策を集中させるべきということで、これはよくこれからも具体的な事業を取捨選択したり、政策を選択する際によく頭に入れてめり張りをつけるということでやっていきたいと思います。
 それから、その中で今、議員の方から基盤整備、この際、思い切った基盤整備というお話があって、これも私も同感するところありまして、特にこの基盤整備、今回は来年度予算の中で農業基盤整備につきまして予算を大きく投入したつもりでございますけれども、まだ全体として不十分なところがありますのと、それから今御質問の中でも触れておられましたが、もっと中での柔軟な使い方によっても予算の生きた使い方ができていくのではないか。いろいろ現地へ行ってお話をお聞きしましても、もう少し大型の農業機械が入るための農道の拡幅ですとか、水路の構造を変えるといったような、本当にちょっとしたところで大きくやはり予算が生きてくるという話を聞いておりますので、これが今お話しございましたとおりの三位一体改革などの実現によって可能になるところもありますので、思い切ったそういう予算の集中投下と同時に、あわせて制度改正、ローカル・スタンダード等を導入できるようになれば、そのあたりについての要望にもこたえられることになりますので、あわせて基盤整備に向けての体制整備、それからやりやすさ等についても今後大いにまた国の方にも訴えながら努力をしていきたい、このように考えております。
〇農林水産部長(今泉敏朗君) 2点お尋ねでございます。
 まず、一つは農協金融のあり方の話でございます。恐らく農協金融が始まったあたり、非常にローカルでかつクローズドされていた時代においては、議員からお話しのあったような本当にそういったいい関係というものが、地域においても組合との関係においても私は保たれていたと思うのですが、ただ、やはり経済というのはどうしてもクローズドの状態でとどまらずに、どんどんやっぱり世界経済の中に組み込まれていってしまうという面は、これはもう避けられないわけでございます。そういった意味でやはり農協金融といえども一般金融と同じようなところで仕切っていかざるを得ないのだというのは、これは一つルールとして私はやむを得ないのかなとは思っております。ただ、そういった中にあっても、農協金融はやっぱり本来の使命を私は忘れるべきではないだろうと思っております。やはり地域に根差して組合員のためにどう価値を生み出していくかという、そういった基本を大事にしていく、そういった基本に立って経営というものを行っていけば、私は議員がお考えになっているような農協金融のあり方というものは、きちっと地域において具現化されていくのではないだろうかとは思っております。
 それから、森林組合を初めとする関係団体の問題でございますが、私も確かに団体が多過ぎるとは思っております。今さまざまなところに行っていろいろな方とインタビューしながら、いろいろ問題点は伺っております。議員が御指摘になったようなところも確かに私の耳に入ってきておりまして、そういったものを踏まえて、今後、岩手の山というものをどう守っていく、どう管理していくのだというもっと大きなところから、そういった関係団体のあり方も含め、全部をゼロベースで考えていかなくてはいけない。今、もうそういう時期に来ているのだろうと思っております。大変な困難は伴うとは覚悟してございますが、何とかこの問題にやはり正面から向かっていきたいとは今思っているところでございます。
〇議長(藤原良信君) 次に、小原宣良君。
   〔48番小原宣良君登壇〕(拍手)

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