平成17年2月定例会 第12回岩手県議会定例会会議録

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〇14番(飯澤匡君) 政和会の飯澤匡でございます。
 今定例会において会派を代表し、知事に質問する機会をいただきましたことを大変光栄なことと存じ、先輩、同僚議員の皆様方に心から感謝を申し上げます。
 先般の全国知事会選挙において増田知事のスピーチを防災テレビで拝見し、真の地方分権実現にかける意気込みをひしひしと感じることができました。結果として所期の目的を達成することはできずとも、地域から変える日本などで共感認識を持つ同志知事たちと今まで起こしてきた活動や成果が基礎となり、地域主権・生活者主権の考え方に立脚した地方分権推進活動が十二分に評価されたと考えております。増田知事には知事会の中にあって、今後とも改革派の旗頭としての活動に、さらなる大いなる期待を持っておりますので、存分に持てる力を発揮していただきたいと存じます。
 昨年の税源移譲をめぐる知事会の一連の動きは、国と地方の間にパラダイムシフトを起こさせる、正確には起こしかけるまでに至った衝撃的な動きでありました。その基礎となったのは、私は増田知事の提唱した現場主義・分権を具現化した政策、すなわち全国初の試みであった県の権限、人、財源を一括して移す市町村への事務移譲であったと思います。平成14年4月に実施したこの岩手モデルと称された事務移譲により、職員のコスト意識の高揚や事業の迅速化、効率化が目に見える形で顕著にあらわれ、大きな成果を出しております。地方分権の推進をみずからの実践によって切り開く知事の姿勢に改めて高く評価するものであります。
 我々の経済社会は、情報社会の進展などによりボーダレス化し、そしてまた、グローバリゼーションの波の中で、いかに付加価値をつけることにより営みを継続できるか、そのはざまに生きております。それに加え環境問題等に対応した社会的責任も負わねばなりません。県という行政とてその例外ではありません。道州制をにらんだ広域行政への対応、もう一方では市町村への権限移譲、加えて市町村合併等による自治の自己完結性の高まりにより、県行政の形は、より柔軟性と弾力性が求められていると思われます。しかし、県民が経済活動を高めていくことや伝統文化を継承する観点において、岩手県という営業戦略上の切り札を絶えずラインアップしておかねばならない命題も背負っておるのであります。私はむしろこの点、つまり変化の早い時代だからこそ、今、長期的なビジョンを明らかにした岩手らしさの追求に対して、より多くの行政の注力を傾ける必要があると思います。長期的なビジョンと申しますのは、現在進めている誇れるいわて40の政策は、平成22年をゴールとしながらも大方知事のマニフェストがベースとなっており、マニフェストは有権者との約束の期限が決められておるからであります。目指す夢県土いわての創造には、そのゴールを目指していかねばなりません。目指すゴールは遠くとも常に明かりをともしておかねばならないと思います。
 幸運にも増田知事は演述において、あくまで岩手らしさにこだわり、とことん岩手らしさを追求すると強い意志を述べられました。絶えず県の牽引役である知事には県民に対し夢県土のビジョンを強く語っていただくことを望みたいと思います。
 そこで、お伺いいたしますが、広域行政需要が高まれば高まるほど、逆にこれからの県の姿を明確にし、県のアイデンティティーを高めていかねばならないと考えます。そこで、知事は岩手県のあるべき姿、独自性を高めるために政策の上でどのように反映しようとするのかお聞きします。
 また、県は今般、より一層の選択と集中により、平成17年度は特に重点的に取り組む政策を予算措置したとしております。限られた財源を有効活用する上で、県のみならず北東北あるいは東北6県を視野に入れたグランドデザインを明確にした上で、道路、河川、空港、港湾整備などの公共事業、環境など広域化による機能分担や連携などを考慮し、道州制なども視野に入れた投資の選択と集中を図っていく観点も必要ではないのかと考えますがいかがでしょうか、御所見をお伺いいたします。
 次に、今後の地方財政計画と県財政運営についてお伺いいたします。
 平成17年度の国の地方財政計画では地方税の伸びを前年度比3.1%増と見込む一方、地方税を臨時財政対策債とあわせた実質的な地方交付税総額が4.5%減とされ、引き続き厳しい財政環境にありますが、国の三位一体改革は平成17年度の地財計画にどのように反映されたのでしょうかお尋ねいたします。
 また、この地財対策が、本県財政、いわゆる平成17年度当初予算の編成にどのように反映されたのか、また、地方に激震が走った平成16年度の地財対策の影響が17年度にも影響を与えているのではないかと推察いたしますが、それを踏まえて今後において県財政をどのように運営していくのかお尋ねいたします。
 あわせて、平成18年度が目標のプライマリーバランスの均衡が達成可能な状況にあるのかどうかお伺いいたします。
 今後、県の財政運営を安定な形で進めていくためには、三位一体の改革に加え地財計画のあり方が問われるものと考えます。本県では、平成15年度から18年度までの間を行財政構造改革プログラムの実施期間と定め、中期財政見通しを策定し持続可能な行財政構造を構築すべく、プライマリーバランスの均衡達成など各種の目標を掲げて改革に取り組んでおりますが、平成16年度の地財対策のような国の一方的な措置では、計画的に進めていくことは極めて困難であります。地方財政計画の策定については、国は長期的な見通しや一定のルール化、地方交付税改革についての方向性などを地方に示すべきものと考えます。改革派知事として国に働きかけていく必要があると考えますが、知事の所見をお伺いいたします。
 次に、合併問題に関してお伺いいたします。
 特例債などの優遇措置が付与されている現合併法の期限が迫ってまいりました。県内の各地でもさまざまな動きがあるところであります。合併はとかく行政の効率化に代表されるように広域的な側面が注目されておりますが、グローバリゼーションの進展とローカリゼーションが同居するように、広域化に対して狭域化による住民自治の拡充や協同の自治参加の観点がより重要と考えます。いわゆる地域自治組織を地域内分権の拠点と位置づけ、合併で総じて規模が大きくなる新市の住民自治の弱体化を防ぎ、住民組織やコミュニティー活動を活発化する新たな自治の可能性を探ることが重要な点と心得ます。共有、協議、決定の場が自治組織であり、すなわちこれが新しい地方自治への挑戦であるととらえる学者もおります。合併の成否はこの自治組織の機能いかんにかかわると思います。私は、県がこのような自治組織のモデルをいち早く示し、円滑な住民自治運営に資すべきと考えております。県の自治組織の基本的な考えと姿勢をお示し願います。
 また、知事は住民により近い市町村が地方自治の核であるべきと強調されております。住民サービス提供側となる市町村の財政基盤の強化は大きな課題ですが、県は今後どのような指導をなされるのでしょうか。また、合併を選択しなかった市町村への財政支援はどのようになされるのでしょうか。早い時期でのガイドラインの明示が必要と考えますが、いかがでしょうかお尋ねいたします。
 次に、雇用と産業育成に関してお伺いいたします。
 ピーター・ドラッカーの著書、ネクスト・ソサエティの中で、ネクスト・ソサエティ(異質の次の社会)は知識が中核の資源となり、知識労働者が中核の働き手となる知識社会であることを指摘しております。すなわち知識労働者の職業が多岐、複雑化した社会が、コンピューター技術者や臨床検査技師などのテクノロジスト(技術技能者)を大量に必要とし、20世紀には製造業の肉体労働者が社会の中核を占めていたが、これからはテクノロジストが社会の中核を占めるとの近未来の考察であります。アメリカが既にその道をたどってきたことや、我が国でもいまだ完全失業率が5%台の高どまりで推移している中、サービス産業など成長力の高い分野を雇用の受け皿として期待している現況を見てみると、その方向性はあながち否定できないものと考えます。
 一方、若年労働者の急減は、既に製造業に外国人が参入するなど、雇用形態に大きな変化をもたらしており、自動車産業とてその例外ではありません。到来しつつある知識社会の波と若年雇用者の急減を認識しつつ施策に反映させることは、10年、20年先の雇用対策の根幹をなす重要な問題と考えますが、本県の将来の雇用をどのように考えておられるのか、知事の御見解をまずお伺いいたします。
 食料供給基地を標榜している本県にとって第1次産業の担い手の育成は喫緊の課題であります。知識社会が到来し、テクノロジストを要求する社会であるならば、逆にテクノロジストの範疇をサービス産業にとどめることなく、知識社会を1次産業へ誘導する策を積極的に取り入れるアプローチも必要と考えますがいかがでしょうか。
 本県では、幸いにして、世界との競争に勝てる農林水産業を確立したい、消費者の期待にこたえ、付加価値を高めたいという志の高い生産者が台頭しております。担い手の育成は単なる生産就労者という位置づけから、さらに多角的な見地で担い手の育成をすべきものと考えますが、御見解を伺います。
 また、1次産業、特に農業においては国土保全の観点から持続可能な産業に育成するためには、兼業型の生産者の支援策もあわせて重要と考えますが、どのように具体策を講じるのかもお尋ねいたします。
 産学官連携についてお伺いいたします。
 本県における産学官連携活動は他地域に比べ数歩先んじておることは、これまでの関係者の御努力によるものと敬意を表したいと思います。このたび県立大学を退任なさる西澤学長は、本県の産学官連携発展のかぎは、地域連携研究センターをいかに活用させるかにかかっておると指摘されております。国立大学は研究・教育の個性と競争力を向上させることを目的として2004年度から独立法人化がなされ、大学の裁量権がふえるなどの反面、主な財源となる運営交付金は、6年ごとの第三者評価を受けて傾斜配分されることとなり、社会のために何ができるかをアピールする努力が一層必要となりました。そこで、県はこのような背景の変化を含め、地域連携推進センターの充実にどのような方策をとろうとするのかお尋ねいたします。
 また、産学官の連携を今後どのように図っていくのかについてもお尋ねいたします。
 知事が新しい岩手を切り開くキーワードとして政策の中心に置いている環境・情報の諸施策について、平成17年度予算案に盛り込まれた施策内容にも触れながらお伺いいたします。
 環境問題の解決とは、次の世代に豊かな地球の環境素材を残すという自然環境の再生と地域社会の再生が同時に含まれていると言われております。事実、環境問題に熱心なヨーロッパの幾つかの地方都市は持続可能な都市を合い言葉に地域再生を進めており、本県がこれを手本としながら情報の発信をすることは大きな価値があるものと考えます。しかも、環境首都を標榜し、スローライフを目標基調とする本県には、他県をリードする要素は多分に潜在していると考えます。2月16日、京都議定書が発効され、対90年比6%減という日本の温室効果ガス排出削減目標が国際的に義務づけられました。我が国の排出量は90年水準を超えており、現状よりも14%も減らさなければなりません。本県の地球温暖化対策は、平成11年に策定した岩手県環境基本計画の中で、地球温暖化対策への地域からの貢献の考えのもと、二酸化炭素8%の削減の目標を設定しました。
   〔副議長退席、議長着席〕
 今までの取り組みの中で本県の特性を生かした取り組みとして、木質バイオマスの利用は、関係者の努力により全国的にも先進しており、さらにこの部門の強化を目指していただきたいと思います。現実には2001年の排出量は基準年に比べて3.3%増と増加基調のままで計画どおりには進んでおらず、抜本的な対策が必要であります。運輸部門では輸送の効率化が課題とされていますが、問題解決のためには、その背景にあるジャスト・イン・タイム輸送に象徴される過剰な流通業等のサービス競争など、顧客が求めるニーズ以上のものを提供する非合理性を改める社会全体の構造改革を先に進めなければなりません。環境先進国のドイツのように劇的に生活スタイルを合理的に変化させることは、なかなか困難でありますが、省エネの追求や排出目標にかわる行動目標を設定することなど、社会全体で合理的な生活規範を持つ意識を植えつけることや、社会の回復性、弾力性を増す側面に注目した具体的施策展開が今後重要と考えます。また、運輸部門などには大胆なインセンティブを有した施策をモデル的に展開することも一案と考えます。県では地球温暖化対策地域推進計画を策定し鋭意取り組んでおりますが、今後の取り組み方について知事にお伺いいたします。
 次に、情報施策についてお伺いいたします。
 岩手県を、だれでも、どこでも、情報の受発信のできる情報先進県にする。知事が掲げたマニフェスト七つの重点施策の一つであります。県ではイーハトーブ情報の森構想の理念に基づき、平成13年には岩手県高度情報化戦略を策定し、情報施策の展開をしてまいりました。現在まで情報インフラの整備に関して中心的役割を担っているのが、いわて情報ハイウェイであると思います。県はこのいわて情報ハイウェイを利活用したさまざまな地域情報化を具体的に模索してきましたが、現実には国庫補助事業で構築した前提から、使用の範囲が行政分野の利用が中心になっております。電子県庁の構築も含めた行政分野の情報化も重要ですが、私は、知事の唱える、県民のだれもが、いつでもこのITによる情報化社会の恩恵を受けることができる環境の整備を図ることが急務と考えます。加えて今日の情報技術の急速な進展により、県民が情報化社会の恩恵を受け生活する上で、ブロードバンドの普及やモバイル環境の整備に対する県民の要求が顕著に高まっております。知事がマニフェストの中でインターネット人口普及率を平成18年度までに70%以上にするとともに、ブロードバンドの世帯普及率を40%以上にすることを県民に示しておることから、いわて情報ハイウェイを中心に整備した情報整備を第一段階とするならば、ブロードバンドの確実な普及を目標にした第二段階の整備構想が必要と考えます。
 島根県では民間通信業者の設備投資によって構築された情報通信環境が県内全市町村に整備され、また、発展のシナリオ、いわゆるアクションプランが策定され順次そのレベルを上げていくシナリオがつくられております。注目すべき点は、全市町村カバーという前提が整った次の段階で、採算性の悪い条件不利地域におけるプロバイダーの設備投資を誘導するため、県と市町村が連携してプロバイダーに補助金を交付する県独自の財政支援制度を創設した点にあります。私はこの際、段階的な進捗過程を県民に知らしめるため、知事のイニシアチブを持って本県においてもアクションプランの策定が必要と考えます。また、地上波デジタル化に伴い、テレビの難視聴問題が拡大する懸念がありますが、その解決策の一つとして加入者系光ファイバー――FTTHを用いたテレビ再送信という技術が確立されております。これなどを含めた一体的なブロードバンド整備も検討の余地が必要と考えますがいかがでしょうか。今後の具体的な方向をお示し願います。
 また、平成17年度予算案に、いわて情報ハイウェイの効率化を図るため、システムの見直しの予算が計上されております。コンテンツの充実も含めどのような見直しをなさろうとしているのかお尋ねいたします。
 阪神大震災から10年を迎え神戸市で開かれた国連防災世界会議in神戸において、兵庫宣言が採択されましたが、宣言では、インド洋大津波で犠牲者が20万人を超えたことなどを受け、災害による被害軽減を重要課題とし、早期警戒網の整備のほか、各国民の災害に対する知識の向上などによる防災文化の確立の必要性を示し、全世界に災害への事前取り組み――減災――を強く訴えました。防災とはまた別の観点で、災害は防げないとしても、被害を減らさなければという減災という考え方が今日浸透してきました。新しい概念、使われ方であり、防災対策における減災効果、減災目標というとらえ方もなされております。国では、東海地震、東南海・南海地震について被害予測を発表しており、地震防災戦略を策定する予定とも聞いており、今後、その具体的対策を明らかにしていく必要があると考えております。県は災害への備えを重点事項としておりますが、このような減災の考え方を今後どのように施策に反映し、取り組んでいくのか御所見をお伺いいたします。
 岩手・宮城県沿岸に設置されている潮位計については、これをネットワーク化し、避難対策に活用することが必要と考えております。先般知事にも参加をいただいた岩手・宮城の県境議員連盟の会議でも両県から最優先課題として位置づけられましたが、今後どのように取り組むのかお尋ねいたします。
 関連して北上川下流部の治水対策についてお伺いいたします。
 平成14年の台風6号災害において被害が甚大であった北上川及び支流の砂鉄川など抜本的な災害復旧が進行中でありますが、今般の災害で被害は受けなかったものの、対策が急がれる北上川黄海築堤工事は一部事業が中断しており、住民の不安がいまだにぬぐい切れません。県境の治水対策は警戒情報の重要な発信源という観点から優先度が高いものと認識いたしますが、今後の事業完成に向けてのタイムスケジュールをお示し願います。
 最後に、岩手県競馬組合改革実行計画についてお伺いいたします。
 経済の落ち込みと呼応して全国の地方競馬の経営が苦戦をしております。地方競馬の優等生とまで言われた岩手競馬も平成16年度末では累積赤字が144億円余を抱えて危機的な経営状況にあります。岩手県競馬組合は昭和39年の設立以来、健全な娯楽の提供、地方財政への寄与、馬事思想の普及、そして地域経済への貢献等を目的として事業を展開し、今まで構成団体である県、水沢市、盛岡市に今日まであわせて407億円の財政貢献をしてまいりました。しかしながら、平成3年をピークに経営は悪化していきました。その原因は長期的には戦略にあり、短期的には盛岡競馬場の移転にあったと専門家は分析をしております。競馬組合はJRAを手本に、全国を東北地方に置きかえ、場外馬券発売所網を広げる方策をとりました。いわゆる大型滞留型のテレトラックの開設ラッシュであります。建設費の増大は借入金によりましたが、当時の右肩上がりの売り上げでそれをカバーできると考えました。ところがバブルの崩壊後、平成3年から売り上げは急激に落ち続け損失が累積していきました。これに追い打ちをかけたのが盛岡競馬場オーロパークであります。バブル時代の計画とはいえ建設費が236億円から410億円に膨らんでおります。このような過大な設備投資が累積損失の大きな要因であります。結果として競馬組合が現在の状況に陥ったのは無論構成団体が構成する競馬組合の見通しの甘さや、その後に軌道修正できなかった組織の硬直化によるものであることが明らかにされましたが、それらの事業を承認してきた県議会からも議員を選出している競馬議会や、オーロパーク建設費増額を認めた議会もその責任を免れることはできないと思います。
 さて、本年1月1日の新競馬法施行をにらんでの岩手競馬改革実行計画を支援するための50億円の融資に係る補正予算案はさきの12月定例会で否決されましたが、今定例会において競馬組合は実行計画案を改訂し、27億円の融資案が提案されております。12月定例会において我が政和会は、我が国の競馬情勢を見ながら、岩手競馬の地域資源としての価値、廃止となった場合の社会的影響を大局的見地から判断し、賛成の立場をとりました。今回の改訂計画は岩手競馬再建に向けて待ったなしの計画と認識いたすものですが、増田知事の再建にかける決意を改めてお聞きしたいと存じます。
 結びに申し上げます。知事は過去の成功体験にとらわれない新しい発想に基づく非連続の改革に失敗を恐れない勇気を持って取り組む覚悟を示されております。行政のみならず、社会全体が新しい時代へ向かう過渡期と思われる今、議会も地方行政が二元性で成立しているという認識を深め、建設的な取り組みが求められていると思います。互いにその意識を深めながら、果敢に実行に移すことが、望まれる県政の妙諦と私は思う次第であります。
 これで私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 飯澤匡議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、岩手のあるべき姿、独自性を高めるための政策ということについてのお尋ねでございます。
 本県は、豊かな自然に恵まれている、ゆったりとした時間や空間の中で、従来の経済の尺度でとらえられない地域資源を数多く有しておりまして、また、そこに住む人々には結いの精神が根づいているという、人間生活を送る上で非常に価値の高い地域である、このように考えております。
 私は、こうした岩手の地で、地域資源を有効に生かした取り組みを進め、岩手らしさにこだわり、その岩手らしさをとことん追求をし、岩手ならではの地域づくりを進めていくことこそ、県民の皆様が真の豊かさを心から実感できる地域社会の創造につながるもの、このように考えているところでございます。
 そこで、今後県は、地方分権改革や市町村合併を推進して、市町村の規模・能力の一層の拡大を図って市町村が自立できるように支援をしていくとともに、真の分権社会にふさわしい自立した広域自治体として、特に次の3点、すなわち、岩手ならではの国際競争力を有するたくましい産業の振興や、グローバルな視点を持ちながらあすの岩手をつくりしっかりと支えていく人づくり、さらには、この美しい岩手のかけがえのない環境の保全とさらなる創造などの広域的な課題に重点的に取り組んでいきたい、このように考えております。
 次に、道州制も視野に入れた投資の選択と集中でございますが、現在、国、地方を通じて、厳しい財政状況にございますし、また、急速な経済のグローバル化に対応して国際競争力を高めていくためには、一つの自治体がすべての機能や施設をそろえるというフルセット主義から脱却して、広域で社会資本などの機能分担や連携を進めていく必要がございます。
 昨年9月に公表した北東北のグランドデザインの中間報告におきましては、北東北の3県がそれぞれ有しております地域資源を最大限に活用できるよう、相互にそれらを利用し合ったり、機能分担を図っていくこと、このようにしております。
 次回の北海道・北東北知事サミットでの最終報告に向け、現在、3県の地域資源や社会資本の広域的な活用の調査を進めているところでございますが、その調査結果を踏まえて、グランドデザインの最終報告において、その具体的な有効活用方策や機能分担などについて示していきたいと考えております。
 次に、地方財政計画と今後の県財政運営でございます。
 昨年11月26日の三位一体改革に関する政府・与党間の合意を踏まえて策定された平成17年度の地方財政対策ですが、これは、国庫補助負担金の改革に応じた税源移譲額に平成16年度の改革分を加えました約1兆7、000億円余が所得譲与税及び税源移譲予定特例交付金として、それぞれ地財計画に盛り込まれているわけでございます。また、地方税、そして地方交付税、そして臨時財政対策債を合わせた一般財源総額は、平成16年度比で0.1%の増、こういう数字でございます。
 しかしながら、そもそも平成16年度の地方財政計画は、その規模の抑制が前倒しで行われておりまして、地方交付税と臨時財政対策債とを合わせて実に12%の減と大幅に削減されたものでございまして、地方の財源確保におけるマイナスの影響は、当然に来年度、平成17年度にも及んでいるものでございます。
 また、一般財源の内訳を見ますと、地方税の伸びを3.1%とする一方で、地方交付税と臨時財政対策債を合わせた実質的な交付税総額を4.5%の減としてございますが、景気回復速度の遅い地域にとりましては、国の想定どおりの税収の伸びを確保することは非常に厳しく、財源確保が厳しい中での当初予算の編成を余儀なくされたところでございます。本県もその中に入っているわけでございます。
 このため、今後の財政運営に当たりましては、地方の実情を踏まえた真の三位一体改革が可能となるように、引き続き国に求めていくとともに、本県の財政構造について、県税などの収入の範囲内での適正規模の財政支出となるように、その転換を図っていくことが不可欠でございます。そういう意味で、さらなる行財政構造改革に取り組んでいく考えでございます。
 なお、プライマリーバランスの均衡については、県債発行額の抑制や平準化借換債の発行見込み額等を踏まえますと、平成18年度において達成できるもの、このように見込んでおります。
 また、政府・与党合意では、平成17年度以降、地財計画の計画と決算の乖離を是正して、その上で、中期地方財政ビジョンを策定することを明らかにしているところでございますが、このビジョンの策定に当たりましては、地方の声が確実に反映されることが何よりも肝要でございますので、地方との十分な協議が行われるよう国に対して強く求めてまいります。
 また、地方交付税を初めとする地方財政制度の見直しにつきまして、あらゆる機会をとらえて、国に対し要望・提言を行っていく考えでございます。
 次に、地域自治組織に係る県の基本的な考えでございますが、分権型社会においては、地域における自己決定と自己責任の原則のもとで、それぞれの地域において住民自治を充実していく必要がある、このように考えております。このため、住民の選択によりまして昨年設けられた地域自治組織制度などを活用して、地域にふさわしい特色ある住民自治のあり方をみずから築いていくこともその方策の一つである、このように考えております。
 次に、市町村の財政基盤強化の指導についてでございますが、この市町村の財政基盤を強化するためには、市町村合併などによる広域行政の推進や三位一体改革の実現による税財政基盤の充実などによりまして、市町村の自主性、自立性を強化することが重要である、このように考えております。特に、真の意味での三位一体改革の実現ということが重要だと思います。
 県では、今後は、市町村が自主的・自立的な行財政運営が行えるように、税源の涵養を促進するとともに、抜本的な構造改革を進めるように、財政健全化のための助言をしてまいる考えでございます。
 一方で、国に対しては、あらゆる機会を通じまして、地方交付税制度の堅持など地方財政基盤の強化について提言をしていく考えでございます。
 次に、いわゆる合併を選択しなかった市町村への財政支援とガイドラインの明示ということでございますが、合併を希望しても単独を余儀なくされる市町村に対しては、合併新法に基づき県が策定する予定の自主的な市町村の合併の推進に関する構想というものがございますが、この構想の策定とあわせて支援策を検討したい、このように考えているところでございます。
 なお、現時点におきましては、そうした市町村への財政支援については、考えていないところでございます。
 次に、知識社会の到来と、そして若年雇用者急減への対応についてでございます。
 今、議員の方からP・F・ドラッカーの著書の内容について御紹介がございました。このドラッカーは、その著書の中で、急激な社会の変化の中にあって、その大きな流れを知り、基本に従い、大きな流れそのものを機会とすべき、このように説いているわけでございますが、まさに若年人口の減少や雇用形態の変化は、本県におきましても例外ではございませんで、その動きはさらに加速していくもの、このようにとらえております。
 私は、このような将来にわたる課題を乗り越えていくためには、地域を支える人づくりや、地域に根差して国際競争力を有する産業の育成を県政運営に当たっての基本的な考えとしたところでございます。とりわけ、本県産業の活力を維持・発展させていくためには、しっかりとした技術や技能に裏づけられた雇用され得る能力を持った多くの若者をこの岩手の地で育てていくことが急務であると考えております。将来を見据えたしっかりとしたビジョンを持ちまして、人づくりを進めていくことが、本県の競争力のある産業を支えるとともに、地域に内在している資源や潜在能力を見出し、開花させ、これが雇用にも確実に結びついていくもの、このように考えているところでございます。
 次に、この知識社会に対応した1次産業の担い手育成についてでございますが、これからの生産者は、質の高い農林水産物を安定的に生産する高度な技術と知識に加えて、こうした技術などに裏づけられた斬新かつ柔軟な発想によって、いわゆる素材生産だけではなくて、加工・流通も含めて、高付加価値型の経営を展開できる高い能力が求められているものと考えております。
 このような能力を兼ね備えた担い手を育成していくためには、さまざまな見地からの対応が当然必要になるわけでございますが、本県としては、まず、生産者から経営者への意識改革を促すことが重要である、このように考えたわけでございまして、昨年度から、岩手大学などと連携していわて農業者トップスクールを開設したところでございます。
 さらに、新たな生産・加工技術や市場性の高い加工品開発などをみずからの創意と工夫で行うことを促進するとともに、こうして開発された新技術や新製品の権利を保護するために、昨年11月に、農業研究センターの中にいわて農林水産知的財産相談センターを設置したところでございます。
 今後も、こうした取り組みを着実に進めて、この地域に根差して、すぐれた技術と高い経営能力を発揮する担い手を育成してまいる考えでございます。
 次に、兼業型の生産者の支援策についてでございますが、これからは、兼業農家も含めて、地域に住む生産者が、それぞれの経営志向に応じて役割を担いながら、農業生産や農産物の加工、そして産直販売などの付加価値を高める活動に従事するなど、この集落が一体となって営農に取り組んでいくことが、本県農業の維持・発展のために不可欠でございまして、そのことが、ひいては国土保全にもつながるもの、このように考えております。
 このようなことから、兼業農家も取り込んだ集落水田農業ビジョンの策定やその実践活動を支援するとともに、集落営農の一員としての役割を担うことを通じて、兼業農家にも新たな経営安定対策のメリットが受けられるように、今、国に働きかけをしているところでございます。
 次に、地域連携研究センターの充実のための方策についてでございますが、同センターにつきましては、平成17年度からの県立大学の法人化にあわせて大学に移管して、産学官連携の拠点機能を一層強化することとしてございます。
 県では、コーディネーターの増員や将来さまざまな分野で活用が期待されるテラヘルツの応用研究などへの支援を行うなど、移管後も、センターと密接な連携を図りながら、センターの産学官連携・研究開発機能の充実に向けた取り組みを積極的に支援してまいります。
 次に、今後の産学官連携の進め方についてでございます。
 本県では、岩手ネットワークシステム――INSと称されておりますが――に代表される先進的な産学官連携の基盤を生かして、岩手大学におきましては、地方大学ではトップクラスの共同研究数を誇るほか、県立大学も含めて、大学発ベンチャーが9件設立されるなど着実な成果を上げてきた、このように認識しているところでございます。
 今後は、この事業化率を一層向上させるために、新たに金融機関との連携のもとで、共同で目ききによる評価と資金支援システムを構築するとともに、研究成果を事業化につなげるプロモート機能の強化などを通じまして、産学官連携を一層推進していく考えでございます。
 次に、環境・人・情報の諸施策についてお答え申し上げます。
 まず、環境に関する諸施策についてでございますが、地球温暖化や廃棄物の増加といった課題を解決していくためには、産業構造におきましても、それから日常生活におきましても、自然、生産、消費のつながりを再認識して、環境への負荷の少ないライフスタイルの定着とバイオマスエネルギーの利活用など地域資源の循環利用、さらには、環境に配慮した新技術の開発などの施策の転換によりまして、持続可能な社会を構築していくことが必要である、このように考えております。
 運輸部門などのモデル的な施策につきましては、現在、国において環境負荷を低減させる物流体系の構築を含む今後の物流対策のあり方について検討を進めておりますので、岩手県としても、こうした国の動向を見きわめながら、今後の対応を考えてまいります。
 さらに、地球温暖化対策の取り組みについてでございますが、二酸化炭素の排出量の2010年までの8%削減の達成に向けて、新たに岩手県地球温暖化対策地域推進計画というものを策定いたしまして――これは5月末までに策定の予定でございますが――本県の地域特性を踏まえた削減対策を講ずるとともに、普及啓発の拠点として新たに指定いたしました岩手県地球温暖化防止活動推進センターを中心として、NPOなどとの連携のもとに、きめ細かな温暖化対策を推進してまいります。
 次に、いわて情報ハイウェイについてでございますが、行政機関相互の通信のほか、医療情報システムや教育情報システムなどの基盤として今運用しているところでございまして、医療画像通信を使った遠隔医療の支援や学校へのインターネット環境の提供などを通じて、県民サービスの向上に寄与しているところでございます。
 しかし、この現在のいわて情報ハイウェイですが、通信量がほぼ限界に達しました。今後予定されております電子カルテの導入や電子申請の受け付け、さらには、医療画像高精細化などの需要に対応するためには、回線容量の拡大が課題となってきておりますので、今回、接続方法を抜本的に見直しいたしまして、回線容量を毎秒100メガビットに拡張することとしてございます。
 次に、ブロードバンド整備についてでございます。
 このブロードバンド整備ですが、県内には、採算上の理由から、通信事業者みずからの基盤整備によるサービス提供が困難な地域が現実に存在しております。このため、県といたしましては、こうした町村に対し整備費用の一部を補助することによりまして、平成17年度までにADSLサービスが全市町村の中心部で利用可能となることを、当面の目標として取り組んでいるところでございます。
 一方、光ファイバーの通信網によるブロードバンドは、より安定した大容量・高速通信が可能になりますので、放送伝送への活用によりまして、テレビ難視聴地域の解消のための選択肢の一つとなるもの、このように認識しております。一方で、今後コスト面などの検証を進めていく必要があるとされているところでございます。
 放送視聴エリアの確保、そしてブロードバンドサービスの提供とも、これは民間主導を原則とするものでございますが、県としても、昨今の情報通信技術の著しい進歩による放送と通信の融合の動向などを見きわめながら、地域の放送事業者、通信事業者と連携を図りながら、放送伝送も含めた地域の総合的な情報化を推進してまいりたい、このように考えているところでございます。
 次に、減災の考え方に立った取り組みについてでございますが、地震、津波など自然災害に対して、災害リスクに応じて可能な対策を講じ被害を軽減していく必要がございまして、平成17年度は、こうしたいわゆる減災の観点に立ちまして、災害への備えに重点的に取り組むこととしております。
 特に、本県防災対策の喫緊の課題でございます宮城県沖地震・津波対策につきましては、シミュレーションや被害想定を行って、津波到達時間、浸水地域、人的被害、建物被害などの状況が具体的に明らかになりましたので、これらの対策として、自主防災組織の育成と活性化、防災マップの作成、津波防災の学習教材の開発、観光客や釣り客などの意識啓発、耐震化対策、防災情報通信体制の整備などに取り組むこととしております。
 県内それぞれの地域が災害リスクに応じ、自助・共助・公助、それぞれをレベルアップし災害に備えていくことが減災につながることとなりますので、今後ともそうした観点を施策に反映させてまいりたい、このように考えております。
 次に、潮位計のネットワーク化の取り組みについてでございますが、このシステムは、岩手県津波避難対策検討委員会の提言を受けまして、県内に設置されている潮位計・波高計のネットワーク化によりまして、津波情報をリアルタイムかつ広域的に共有して、避難を迅速に行う効果を期待するものでございます。
 今年度は、ネットワーク化による情報の活用方策、整備の方向性などの調査を行ったところでございますが、潮位計などの設置市町村によって、この型式や情報の処理方法などに相違がございまして、ネットワーク化をするには、なお関係市町村と検討・調整していく必要がある、このように考えているところでございます。
 また、潮位計等のネットワーク化は、宮城県など隣県と一体となったシステムとして構築することで、より効果が期待できますので、今後、国、関係機関等への提言も含め検討してまいりたい、このように考えております。
 次に、北上川の黄海築堤工事についてでございます。
 岩手河川国道事務所では、昭和63年にこの北上川黄海築堤工事に着手し、これまで用地補償を順次進めて、平成10年に工事に着手してございまして、現在まで、計画延長が1、030メートルの工事でございますが、このうち540メートルの区間が概成しているところでございます。
 しかし、残りの事業区間内に用地問題が解決していない箇所がございまして、これまで、県としても国と連携して誠意をもって交渉を行ってまいりましたが、いまだ解決の見通しが立たない状況にございます。そのため、現在、国におきまして、用地取得に向けた法定手続を進めているところでございまして、この問題を解決した後に残り区間の工事を進める、このように伺っているところでございます。
 最後に、競馬組合再建にかける決意についてでございます。
 岩手競馬は、現在、平成16年度末の累積損失額が144億円に達すると見込まれるなど、危機的な経営状況にあるところでございます。このような状況は、客層の変化、社会状況の変化と経済環境の変化などによる発売金額の減少に加えまして、ただいまの議員御指摘のとおり、盛岡競馬場・オーロパークの建設、場外馬券場設置に伴います借入金返済・施設賃借料など、いわば経営体力を超えた過去の設備投資が直接の要因でもございます。
 競馬組合は、このような反省に立って、競馬組合改革改訂実行計画をこのたび策定いたしまして、この岩手競馬の経営再建のため、コストの削減、営業の拡大、組織の効率化を図ることとしてございます。特にも、改訂実行計画実現に不可欠なこの営業の拡大につきましては、これまでの場外馬券場など、ハード整備を中心とした多額の設備投資を伴う商圏拡大・発売強化は限界でございますので、これを転換いたしまして、民間の発売手段の活用・既存設備を活用した民間委託など、ソフト活用による商圏の拡大、売り上げの拡大とコスト削減に転換することとしてございます。
 岩手競馬を取り巻く環境には依然として厳しいものがございますが、民間活力も活用しながら、断固として改訂実行計画を実現して、岩手競馬を再生していくことが、競馬組合構成団体の長として、また競馬組合管理者としての最大の務めであると認識しているところでございます。
〇議長(藤原良信君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時15分 散 会

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