平成17年2月定例会 第12回岩手県議会定例会会議録

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〇知事(増田寛也君) 本日、ここに第12回県議会定例会が開催されるに当たり、今後の県政運営について、私の所信の一端を申し上げます。
 昨年12月26日にスマトラ沖で発生した地震に伴うインド洋津波は、インドネシアやスリランカなどアジア・アフリカの広範な地域を襲い、死者、行方不明者あわせて約30万人に上るなど、未曾有の被害をもたらしました。我が国におきましても、相次ぐ台風の襲来や昨年10月に発生した新潟県中越地震などによって多くの被害が発生しており、被災された方々に対し心からお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復興を願っております。
 昨年12月に県が公表した岩手県地震・津波シミュレーション及び被害想定調査結果によりますと、三陸沖または宮城県沖を震源とする大規模な地震が発生した場合、県内の広い範囲で地震動や津波による大きな被害が予測されております。私は、自然災害に対する備えに万全を期するため、常日ごろから最悪の事態を想定し、その対応策をしっかりと講じていく覚悟であります。
 イラクにおいては、自衛隊の人道復興支援活動が行われておりますが、岩手駐屯地からも昨年8月から12月まで、医療、給水、学校の復旧などに従事するため部隊が派遣され、過酷な状況の中で立派にその任務を果たし、全員無事に帰国されたことに対し改めて敬意を表するところであります。
 イラク情勢に関する国連の報告書では、復興への最大の障害は治安の悪化であるとされておりますので、早期にイラクの治安が回復され、復興に向かって確実に歩み始めることを強く願っております。
 さて、我が国の景気の動向は、このところ回復が緩やかになっているとされておりますが、地域別に見ますと、景気が力強く回復している地域がある一方で、やや弱含んでいる地域もあり、その回復のテンポはさまざまな状況にあります。県内では、自動車生産体制の増強が見込まれるなど、一部に明るい材料があるものの、依然として厳しい状況が続いており、産業経済基盤の強化に向けた一層の取り組みを進めていかなければなりません。
 平成17年度政府予算案における三位一体改革に関しては、地方団体の財政運営に必要な地方交付税などの一般財源の総額は確保されましたが、その中身を見ると国の財政再建に軸足が置かれ、地方側の自由度や裁量を増すという地方分権推進の観点からは極めて不十分なものでありました。今後、真の三位一体改革の実現に向けて、県と市町村とが一致団結し、協力し合って、県民の皆様の幅広い御支持をいただきながら、政府に対し強く働きかけてまいります。
 これからの地方自治を考える場合、まず、住民の方々一人一人が自分たちの住む地域がこれからどうあるのが最も望ましいかを真剣に考えていただき、その上で、お互いに意見を出し合い、協力しながら、ともに手を携え進んでいくということが何よりも大切であります。そして、地域の方々の取り組みだけでは解決が難しい課題に対しては、住民に最も身近な基礎自治体である市町村がこうした活動を積極的に支援していくことが望ましいと考えております。
 市町村がこれからこのような役割を十分果たしていくためには、その行財政基盤の充実強化を進める必要があります。このため、市町村がみずからの判断と責任によりこうした役割を果たすことができるよう、私は、国に対して地方分権の推進を強く求めていくとともに、県においても、権限、財源、人材の一層の移譲を進めてまいります。
 市町村の役割や機能が強化されることに伴い、市町村との連絡調整や市町村の補完という県のこれまでのような役割は徐々に縮小し、県は、今後、地域を支える人づくりやたくましい産業の振興、若者を中心とした雇用対策、かけがえのない環境の保全といった広域的な取り組みにその重点を移していく必要があります。
 さらに、現在、国の第28次地方制度調査会において、地方自治の一層の推進を図る観点から道州制のあり方が調査審議されており、今後、その議論は、より活発になるものと見込まれます。
 私は、現在の都道府県の枠組みを超えた広域自治体の役割を考える場合、経済のグローバル化の進展に対応できるよう、国際競争力を持ち、経済的に結束し、自立していくことを目指すという視点からの検討が特に大切であると考えております。このため、北東北3県が現在進めている連携の取り組みをさらに強化していくとともに、宮城県を初め東北全体に輪を広げ、その成果を具体的にお示ししながら、これからの望ましい地方自治のあり方について県民の皆様と一層議論を深めてまいります。
 私は、間もなく3期目の任期の後半を迎えますが、この任期を自立を進める4年間として位置づけ、県民一人一人が自立した個人として主体的に活動し、また、それぞれの地域が個性を持って、生き生きと光り輝き、それが県全体の活力となり、すべての県民がみずからの地域や暮らしに誇りを持てるような地域社会をつくるために全力で取り組んでまいりました。
 この取り組みを進める中で、特に重要なことは、地域に内在している資源や潜在力を見出し、開花させることと考えております。そのためには、まず、地域に住む方々が、その地域の自然や歴史・風土、文化などをよく見直し、資源となり得るものや潜在力といった地域の宝を発見することが必要であります。そして、さまざまな角度からその利活用策を考え、さらには、付加価値を高める技術などを地域内に培っていくことが大事であります。これを地域の産業や観光、文化の振興などにうまく生かしていけば、地域の活性化や経済的な自立を図っていくことが可能となり、心の豊かさやゆとりを真に実感できる、新しい岩手ならではの地域社会の創造につながっていくものと確信しております。私は、この岩手の地で、あくまでも岩手らしさにこだわり、とことん岩手らしさを追求してまいります。
 私たちは、現在、少子・高齢化などによる労働人口の減少や人口の地域偏在、地域活力の低下、社会保障面での負担の増加、さらには、経済のグローバル化などによる産業構造の大きな変化などに直面しておりますが、今後、その動きはさらに加速していくものと見込まれます。そこで、今こそ地域を支える人づくりや、地域に根差し、国際競争力を有するたくましい産業の育成に全力を注ぎ、地域の活力を高めることによって、将来にわたるこうした課題を乗り越えていかなければなりません。
 私は、地域に内在している資源や潜在能力を見出し、開花させていくことを実際に担っていくのはその地域に住んでいる方々でありますので、こうした地域を支える人づくりを一層進めることが自立への第一歩であると考えております。
 人づくりは、将来を見据えたしっかりとしたビジョンを持って、十分時間をかけながら取り組んでいくことが大事でありますが、この取り組みの成果は、将来必ずやその地域に還元され、自立に確実に結びついていくものと考えております。私は、地域づくりの基本は人づくりであるということを深く心に刻み、地域を支える人づくりに積極的に取り組んでまいります。
 新渡戸稲造博士は、みずからの教育理念として、野の花が黄色に、紫色に、白色に、おのずからその色に咲き出でて自然の野辺を飾るように、教え子がその個性と境遇とに応じてそれぞれ独自の道を行き、人世の花野を彩らんと述べております。岩手に住む人々が、みずからの夢を持ち、みずからの個性を伸ばし、その夢を実現してみずからの色の花を咲かせることができるようになれば、岩手はますます魅力のある豊かな花野となることができましょう。
 これからの人づくりでとりわけ重要なのは、あすの岩手を担う青少年への全人教育と、産業を支える人材育成であります。
 学校教育に関しては、豊かな人格形成、豊かな学力の向上、健康な体づくりなど、心身ともにバランスのとれた教育の充実が大切であります。県内児童生徒の学習定着度状況調査結果によれば、小・中学校における学習の基礎・基本の定着度は決して満足できる状況にはなく、また、大学等への進学率は全国でも下位にあることなどから、児童生徒の学力の向上が大きな課題となっております。そこで私は、児童生徒の学力の現状をしっかりと把握した上で、児童生徒一人一人の個性や能力を伸ばすことができるよう、学校教育の一層の充実に取り組んでまいります。
 また、本県においても若者の早期離職の割合が高く、離職後、長期間にわたって、就職する意志はあっても就職できなかったり、みずから就職しない若者も多く見られるところであります。私は、こうした状況に強い危機感を持ち、また、極めて大きな社会的損失であると認識しております。このため、若者が希望する職業につき、その能力を遺憾なく発揮できるよう、高等学校から青年期にかけては、社会人としての心構えや勤労観、職業観を醸成していくとともに、その就職支援に全力を挙げて取り組んでまいります。
 産業を支える人材育成に関しては、特に、ものづくり産業分野において団塊の世代の定年退職の時期を目前に控え、この世代が持つ高度な技術と知恵の継承や、熟練した技能・技術者の確保などが課題となっております。このため、実践的な技能・技術者や高度なIT技術者の育成など、ものづくり産業を支える人材の育成に全力を挙げて取り組んでまいります。
 農林水産業分野においては、後継者不足や就業者の高齢化による産業の衰退や活力の低下が課題となっており、新規就業者の確保や経営感覚にすぐれた担い手の育成に全力で取り組んでまいります。
 これから岩手が経済的に自立していくために今最も重要なことは、世界と十分に太刀打ちできるたくましい産業を振興することであります。このため、将来とも十分発展が見込まれる有望な産業分野や業種などをしっかり見きわめ、これに集中的に支援・投資し、国際競争力を有する産業・業種に育てていくことが何よりも有効であります。
 ものづくりの分野においては、北日本で唯一自動車の組み立て工場が立地しているという強みを生かして、この岩手を、自動車関連産業の育成を通じ、世界でも有数のものづくり基盤技術が集積し、それを担う人材を輩出する地域となるよう全力で取り組んでまいります。
 新しい産業の創出については、産学官の連携をさらに強めながら、県内の大学や企業などに蓄積された技術や知識を事業化、商品化し、企業化していくことが大切であります。このため、岩手が強みを持つ研究分野への重点投資や、研究成果を事業化につなげるプロモート機能の強化を図るほか、金融機関との共同による目ききシステムの構築など、金融機関との連携についても積極的に取り組んでまいります。
 農林水産業の分野においては、トレーサビリティーシステムの拡充により、岩手の食に対する安全・安心の揺るぎない信頼を確保していくとともに、地域特性を生かした生産を一層進め、全国の消費者から支持を得られるような岩手ならではの個性豊かな農林水産物の素材の発掘・生産や、新商品の開発、新たな販路の開拓などに取り組み、全国に誇れる県産農林水産物の一層のブランド化に努めてまいります。
 観光の振興については、NHK大河ドラマ義経の放映や平泉の文化遺産の世界遺産登録を目指した地域の盛り上がりを絶好の機会ととらえ、国内はもとより、海外からの観光客の積極的な誘致を進めてまいります。平泉を初め、岩手が誇る自然や歴史、文化、祭り、芸能、食などのさまざまな魅力を国内外に広く情報発信するとともに、新しい旅行商品の開発や外国人観光客の受け入れ態勢の整備などに積極的に努めてまいります。
 海外との経済交流については、近年、中国や韓国、シンガポールなど東アジアを中心とした取り組みを進めてまいりましたが、着実にその成果が上がってきていることから、本年4月には、中国大連市に新たな活動拠点を設置して、最新の中国の経済・産業情報の収集に努め、県内企業の対中ビジネスを支援するとともに、新たに中国東北地区からの観光客の誘致に努めてまいります。
 また、高品質で安全・安心な県産農林水産物の輸出の促進に積極的に取り組んでまいります。
 私は、自立した地域社会の実現に向けて、平成17年度においては、災害への万全な備え、地域を支える人づくり、地域に根差し、世界に飛躍する産業の振興、豊かな暮らしの確保の四つの分野に特に重点的に取り組むとともに、行財政構造改革を着実に推進してまいります。
 平成17年度の国の地方財政計画においては、地方税の伸びを前年度比3.1%増と見込む一方、地方交付税と臨時財政対策債とをあわせた実質的な地方交付税総額が4.5%減とされたところであり、引き続き厳しい財政環境にあります。平成17年度予算案の歳入歳出規模は、4年連続マイナスとなる総額7、671億6、000万円余となっておりますが、県税収入の確保や未利用県有地の処分、適正な受益者負担の設定を行うなど、自主財源の確保に努め、また、政策評価や事務事業評価、公共事業評価を一層徹底し、優先度の高い事業の厳選や事業内容の見直しなどを行い、限られた財源の重点的かつ効果的な活用に努めたところでございます。
 重点的に取り組む施策の第1は、災害への万全な備えであります。
 防災体制の強化については、宮城県沖地震津波を想定した災害対応プログラムの作成や図上訓練を実施し、緊急時の体制強化を図るとともに、通信衛星を利用した無線設備をデジタル化し、災害時の通信手段の確保に万全を期してまいります。
 また、地域の防災への意識の向上を図るためフォーラムを開催するとともに、自主防災組織の設立を促進するなど、地域での防災機能の強化に努めてまいります。
 津波への備えについては、水門や防潮堤、避難路などの整備を着実に進め、地域の方々の安全確保に努めるとともに、観光客や釣り客向けのパンフレットやポスターを作成・配布し、早期避難に対する意識啓発や避難路の周知を図ってまいります。
 また、小・中学生を対象とした津波防災学習教育教材を開発し、津波に関する防災教育を実施してまいります。
 地震への備えについては、大規模な地震が発生した場合、古い木造住宅の倒壊や損壊が予想されておりますので、多くの方々に住宅の耐震診断を積極的に受けていただくよう、市町村と共同して、その診断経費の一部を助成してまいります。
 また、緊急物資などを輸送する経路を確保するため、災害に強い道路ネットワークの構築を初め、地震時に被害を受けやすい橋梁の落下防止や耐震補強工事などを進めてまいります。
 さらに、緊急避難場所として学校が多く利用されていることから、県立学校施設の耐震化を引き続き進めてまいります。
 台風や集中豪雨などに対する備えについては、都市部や人口密集地を抱える流域において治水対策を着実に進めていくとともに、河川水位や雨量などの情報を的確に提供してまいります。
 また、県内には土砂災害危険箇所などが数多くあることから、それぞれの地域の実情に応じて、地域の皆様の御理解をいただき、住居移転など、より有効な対策の検討を進めてまいります。
 第2は、地域を支える人づくりについてであります。
 学力の向上については、教員一人一人がよくわかる授業を行えるよう、各地域の教育事務所が中心となり、管内の実態に即した教員の研修を推進してまいります。特に、中学校における英語の学力向上については、英語検定を活用した英語力の把握などを行うモデル校をすべての教育事務所管内で指定し、その取り組みを拡充してまいります。
 また、高等学校における進学指導については、生徒が希望どおり進学できるような学力を習得させるため、学校ごとに特色を生かした進学目標を設け、指導を行ってまいります。
 多人数の学級を有する学校に引き続きすこやかサポート非常勤講師を配置し、少人数指導体制を一層充実させるとともに、少人数指導と少人数学級それぞれの成果と課題を踏まえて、これからの本県の少人数教育のあり方を検討してまいります。
 不登校などの学校不適応の諸問題については、教員のカウンセリング能力を向上させ、子供たちの悩みに早期に対応するとともに、スクールカウンセラー、学校適応相談員、心の教室相談員などを配置して解決を図ってまいります。
 さまざまな障害を持つ児童生徒への教育については、一人一人のニーズに応じて、学校、家庭、地域が一体となって支援する体制の整備を進めるなど、その充実を図ってまいります。
 さらに、生徒の多様な進路希望に対応できるよう、総合学科高校や総合的な専門高校など新しいタイプの学校づくりを推進するとともに、県立高等学校を望ましい学校規模に整備してまいります。
 県立大学については、地方独立行政法人制度のもと、より効率的な学校運営に努めるとともに、教育の質の向上と研究活動を通じて地域に貢献してまいります。
 高度な産業人材の育成については、生産管理技術などを習得するため、先進企業に社員を派遣する企業への支援や、経営者、中堅管理者、若年技術者を対象とした実践的なものづくり研修の実施、情報家電や自動車などに不可欠な組み込み系ソフトウエアの開発技術者の養成などに積極的に取り組んでまいります。
 農林水産業分野における人材の育成については、農業においては、効率的かつ安定的な経営体の育成を目指して認定農業者を育てるとともに、兼業農家も構成員として参加できる集落営農に取り組むなど、多様な担い手を育成してまいります。
 また、就農希望者に対する実践研修の実施や支援体制の強化など、総合的な就農支援を行ってまいります。
 林業においては、効率的な素材生産や流通体制整備の促進などの支援を通じて、自立できる林業経営体を育成してまいります。
 水産業においては、養殖漁場の集積、経営規模の拡大や加工・流通・販売などへの支援を通じて、自立した担い手を育成してまいります。
 また、若者が働く意欲を持ち、職業能力を高めながら、希望する仕事につくことができるように、カウンセリングから職業能力の開発、就職支援までの一貫したサービスを提供するジョブカフェいわての機能を一層強化してまいります。
 さらに、高等学校での就職支援については、就職希望者の多い高等学校に求人開拓や進路相談等を行う就職支援相談員を継続配置するなど、一層の取り組みを進めてまいります。
 第3は、地域に根差し、世界に飛躍する産業の振興についてであります。
 自動車関連産業については、県内中小企業の自動車関連産業への参入を促進するため、自動車の生産管理に精通したコーディネーターによる生産工程の改善指導を行うとともに、企業や大学が有する技術を県外の自動車関連企業に売り込む技術展示会などを開催いたします。
 また、技術アドバイザーを設置し、自動車部品の製造技術などの目ききを行い、各企業がそれぞれの強みを生かしながら、共同受注できるよう、その取り組みを支援してまいります。
 新たな産業の創造については、大学などの研究シーズを生かし、産学官連携による事業化を図ろうとする有望な研究に対し、公募型による資金面での援助を行うとともに、金融機関とも連携した支援体制を整え、産学官共同での新技術の開発や新分野での産業の育成に取り組んでまいります。特に、将来、さまざまな分野で広く活用が見込まれる酸化亜鉛やテラヘルツ波などを利用した技術の戦略的な研究開発を支援してまいります。
 農林水産業については、本県のすぐれた地域特産物や、高品質で安全・安心な食材の商品化、高付加価値化を実現するため、消費者のニーズにマッチする商品開発や、外食産業などの新たな流通チャネルの開拓などの支援を行ってまいります。
 また、消費者のニーズに対応した野菜の契約取引産地を形成するため、生産者の意識啓発や先進的生産技術の実証・普及を進めてまいります。
 観光については、旅行エージェントなどとタイアップし、NHK大河ドラマ義経の撮影ロケ地などを活用した旅行商品の開発や関連イベントを開催するとともに、本県が全国に誇る郷土芸能を県内外に広く情報発信してまいります。
 また、花巻空港の滑走路の2、500メートル化を契機に国際チャーター便の運航が一層活発になるよう支援を行い、海外からの誘客に努めてまいります。
 海外との経済交流については、県内企業の中国市場における販路開拓を支援するため、中国大連市での商談会の開催や、韓国、シンガポールなど東アジア3都市において岩手ビジネスフェアを開催するなど、県内企業と海外企業との取引の促進を図ってまいります。
 また、中国や韓国へのリンゴなどの試験輸出に対する支援を行うなど、県産農林水産物の本格的な輸出に向けた産地づくりと販路の拡大に取り組んでまいります。
 第4は、豊かな暮らしの確保についてであります。
 高齢者への支援については、介護老人福祉施設の整備を計画的に進めるほか、高齢者が身近なところで介護サービスが受けられるよう、民家などの改修による介護ステーションの設置や高齢者共同住宅のモデル介護支援ハウスの整備を一層進めるとともに、配食等の生活支援サービスを行うNPOや事業者を支援してまいります。
 また、喫緊の課題である医師確保については、医師が本県に定着していただくためのアクションプランを早急に取りまとめ、大学や医師会など関係機関と密接な連携を図りながら、医師の確保に努めてまいります。
 食育の推進については、望ましい食習慣の定着を図るため、食育推進計画を策定するとともに、学校や地域における食に関する体験学習などにより、食育の普及啓発に取り組んでまいります。
 地球温暖化防止については、本県の地域特性に応じた地球温暖化対策地域推進計画を策定し、県民、事業者、民間団体、行政が連携した取り組みを積極的に推進してまいります。
 バイオマス資源の利活用については、家畜排せつ物や製材残材など、県内に豊富にあるバイオマス資源を有効に利活用する循環型サイクルの形成に向けて、エネルギーの創出や利活用技術の開発による産業化に向けた取り組みを進めるとともに、いわて型ペレットストーブの普及を支援してまいります。
 青森県境の産業廃棄物不法投棄事案については、万全な汚染拡散防止対策を講じながら、人の健康や生活環境に被害を及ぼすおそれのある特別管理産業廃棄物などの撤去を進めるとともに、排出事業者などの責任を徹底追及してまいります。
 行財政構造改革については、平成15年10月に行財政構造改革プログラムを策定し、これまでさまざまな取り組みを進めてまいりました。しかし、プログラム策定後、地方交付税等の大幅な削減が行われるなど、地方財政をめぐる情勢は、一段と厳しくなってきていることから、職員体制のさらなるスリム化や、指定管理者制度を活用した行政サービスの一層の向上を図るなど、その取り組みをさらに進めてまいります。
 県出資等法人改革については、外部の専門家の御意見をいただきながら、整理合理化を着実に進めるとともに、各法人みずからが中期経営計画を策定し、それに基づく法人運営を行い、さらにその状況をしっかりと自己評価して、経営の健全化と自立が図られるよう、指導してまいります。
 広域生活圏の見直しについては、地方分権改革の進展や人口減少、経済のグローバル化などの状況を踏まえ、幅広い地域資源を結集・連携して産業を振興し、戦略的に地域をデザインするという観点から、現在、その見直しを進めております。
 また、地方振興局の再編については、県と市町村、本庁と地方振興局の望ましい役割分担について検討を行い、その上で、県が担う事務のうち、地域で担当することがふさわしいものについては、できるだけ地域で完結できるよう、地方振興局に、権限、財源、人員の委譲を進め、名実ともに、地域経営の戦略拠点として、その機能が十分に発揮できるようにしたいと考えております。
 この広域生活圏の見直しと地方振興局の再編案については、平成17年度のできるだけ早い時期にこれを公表し、県民の皆様から広く御意見をいただきながら、平成18年4月を目途に実施してまいりたいと考えております。
 さかのぼること約900年前、奥州藤原氏は、平泉の地に黄金文化の華を開かせました。
 初代清衡公は、中尊寺建立供養願文の中で、自主自立の思想の大切さを述べており、そして、決して都の模倣ではない、中尊寺金色堂を建立することで、新しい文化の創造の意義を説いております。
 この金色堂に代表される平泉の黄金文化は、海を越えてはるかヨーロッパにも伝わり、マルコポーロの東方見聞録に記された黄金の国ジパングは、ここ平泉の地を指していると今に伝えられております。その後、藤原氏の庇護がなくなると、中尊寺金色堂は徐々にその輝きを失っていき、ついには、螺鈿がはがれ落ち、堂そのものも崩壊しそうな危機的な状況に至りました。
 今から約半世紀前、このような状況に直面した地元に人々は、この世界に誇れる文化遺産を守るため、ほうはいとして立ち上がり、その燃えたぎる熱意はとうとう国を動かし、全面的な解体修理にこぎつける大きな原動力となりました。そして、再び、金色堂は、往時の輝きを取り戻すことができました。
 今、私たちは、かつてのこのような地域の人々の熱い情熱に改めて思いをいたし、先人が築き、守り伝えてきた、この平泉の文化遺産の世界遺産登録をなし遂げることによって、私たちがこの上なく愛してやまない、この岩手に対する一層の自信と誇りを、ともに分かち合おうではありませんか。
 私は、この岩手を、世界に誇れる文化の薫り高い黄金の郷(くに)、すなわち、現代のジパングとして、再び大きな華を開かせたいと強く願っております。
 議員の皆様、そして県民の皆様には、どうか夢県土いわての実現に向けて、これからの新しい岩手づくりに積極的な御支援をいただきますようお願い申し上げ、私の所信表明を終わります。(拍手)
   日程第4 議案第1号平成17年度岩手県一般会計予算から日程第77 報告第3号県行政に関する基本的な計画の変更に係る報告についてまで
〇議長(藤原良信君) 次に、日程第4、議案第1号から日程第77、報告第3号までを一括議題といたします。
 提出者の説明を求めます。時澤総務部長。
   〔総務部長時澤忠君登壇〕
〇総務部長(時澤忠君) 本日提案いたしました各案件につきまして御説明いたします。
 議案第1号は、平成17年度岩手県一般会計予算であります。
 この予算の編成に当たりましては、極めて厳しい財政環境下において、国の予算編成方針や地方財政計画等に留意するとともに、中期財政見通しのもと、政策評価結果等に基づき、事業のより一層の選択と集中により、歳入に見合った歳出規模となるよう歳出の抑制に努めたほか、持続可能な行財政構造の構築に向け、自主財源の確保や県債発行額の抑制など、将来にもわたる財政運営の健全化に努めたところであります。
 また、予算の内容につきましては、40の政策を中心として、県民一人一人が、みずからの地域や暮らしに誇りを持てるような自立した地域社会の形成を目指し、特に、重点的に取り組むべき緊急課題と重点施策について、最優先で措置したところであります。
 以下、その概要について御説明いたします。
 第1条は、歳入歳出予算の総額を、それぞれ7、671億6、500万4、000円と定めるものであります。これを前年度当初予算と比較しますと1.6%の減となっております。
 次に、歳入の主なものについて御説明いたします。
 第1款県税につきましては、1、082億300万円を計上しており、前年度当初予算と比較いたしますと7億5、100万円余の減となっております。
 第5款地方交付税につきましては、2、368億3、300万円余を計上しており、前年度に比較して12億5、000万円余の増となっております。
 第9款国庫支出金につきましては、1、171億6、700万円余を計上しており、前年度に比較して110億4、200万円余の減となっております。
 第12款繰入金は、187億4、100万円余を計上しておりますが、これは、自治振興基金、財政調整基金、県債管理基金等からの繰り入れを行うものであり、前年度に比較して63億8、600万円余の増となっております。
 第15款県債につきましては、1、370億2、300万円余を計上しておりますが、前年度に比較して116億6、300万円余の減となっております。
 次に、歳出の主なものについて御説明いたします。
 第2款総務費につきましては、425億6、600万円余を計上しておりますが、その主なものは、盛岡駅西口複合施設整備事業費128億8、000万円余、市町村総合補助金18億2、300万円余等であります。
 第3款民生費につきましては、526億6、200万円余を計上しておりますが、その主なものは、重度心身障害者医療助成費12億5、900万円余、介護給付費等負担金88億9、100万円余、国民健康保険事業安定化推進費82億5、600万円余等であります。
 第6款農林水産業費につきましては、844億8、700万円余を計上しておりますが、その主なものは、ほ場整備事業費70億200万円余、治山事業費26億1、500万円余、広域漁港整備事業費21億3、000万円余等であります。
 第8款土木費につきましては、904億8、000万円余を計上しておりますが、その主なものは、道路改築事業費83億1、000万円、河川激甚災害対策特別緊急事業費18億6、200万円余、砂防事業費12億5、400万円等であります。
 第10款教育費につきましては、1、651億7、000万円余を計上しておりますが、その主なものは、すこやかサポート推進事業費4億8、000万円余、公立大学法人岩手県立大学運営費交付金46億5、500万円余、私立学校運営費補助48億3、200万円余等であります。
 第12款公債費につきましては、1、509億700万円余を計上しております。
 第13款諸支出金につきましては、566億700万円余を計上しておりますが、その主な内容は、公営企業負担金188億1、100万円余、地方消費税交付金132億9、400万円等であります。
 第2条債務負担行為は、岩手県火災共済協同組合が行う火災共済契約の履行に関する損失補償ほか50件について、債務を負担しようとするものであります。
 第3条地方債は、盛岡駅西口複合施設整備事業ほか42件について、限度額、起債の方法、利率及び償還の方法を定めようとするものであります。
 第4条一時借入金及び第5条歳出予算の流用は、それぞれ所要の措置を講じようとするものであります。
 議案第2号から議案第12号までは、平成17年度岩手県母子寡婦福祉資金特別会計予算ほか10件の特別会計予算でありますが、これらは、それぞれの事業計画等に基づき、その所要額を計上したものであります。
 議案第13号から議案第15号までは、平成17年度岩手県立病院等事業会計予算ほか2件の公営企業会計予算でありますが、これらは、それぞれの事業計画に基づき、収益的収支及び資本的収支の所要額を計上したものであります。
 議案第16号から議案第20号までの5件は、建設事業等に要する経費の一部を受益市町村に負担させることに関し、それぞれ議決を求めようとするものであります。
 議案第21号から議案第60号までの40件は条例議案でありますが、これは、岩手県国民保護協議会条例、結核診査協議会条例等を新たに制定するとともに、改良普及員資格試験条例等を廃止するほか、外部監査契約に基づく監査に関する条例、情報公開条例等の一部を改正しようとするものであります。
 議案第61号から議案第63号までは、宮古市、八幡平市及び遠野市の設置に関し、それぞれ議決を求めようとするものであります。
 議案第64号は、これらの市町村合併に伴い、関係条例を整備しようとするものであります。
 議案第65号は、財産の譲渡に関し議決を求めようとするものであります。
 議案第66号は、権利の放棄に関し議決を求めることについてでありますが、これは、財団法人岩手県勤労者福祉協会運営資金貸付金に係る債権の回収が不可能であるため、当該権利を放棄しようとするものであります。
 議案第67号は、岩手県公会堂の指定管理者を指定することに関し議決を求めようとするものであります。
 議案第68号及び議案69号は、全国自治宝くじ事務協議会等への静岡市の加入及びこれに伴う関係規約の変更協議に関し議決を求めようとするものであります。
 議案第70号は、包括外部監査契約の締結に関し議決を求めようとするものであります。
 議案第71号は、平成16年度岩手県一般会計補正予算でありますが、これは、岩手県競馬組合に対する短期資金の貸し付けに要する経費を補正しようとするものであります。
 報告第1号及び報告第2号は、職員による自動車事故及び道路の管理に関する事故に係る損害賠償事件に関する専決処分について、それぞれ報告するものであります。
 報告第3号は、県行政に関する基本的な計画の変更について報告するものであります。
 以上のとおりでありますので、よろしく御審議の上、原案に御賛成くださいますようお願いをいたします。
〇議長(藤原良信君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後1時48分 散 会

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