平成19年9月定例会 第3回岩手県議会定例会会議録

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〇33番(工藤勝子君) 自由民主クラブの工藤勝子でございます。
 本定例会におきまして登壇の機会を与えてくださいましたことに感謝を申し上げ、通告に従い、順次質問してまいりますので、よろしくお願いいたします。
 初めに、台風9号とその後の大雨によって被害を受けられました皆様方に心からお見舞いを申し上げます。特にも実りの秋を迎え、収穫期を迎えようとしていたやさきの災害であり、私も農業者の一人として非常に胸が詰まる思いでございます。国や県による災害復旧に全力を挙げて対策をとってくださいますようお願いをいたします。
 達増知事が県民の大きな支持と期待を受けて誕生し、6カ月が経過いたしました。就任のごあいさつの中で、ならし運転をしている余裕はない、がんがん飛ばしていくと語られ、県政の現状を危機ととらえ、危機を希望へと変えるために、まさに全力で飛ばしてこられたものと思います。現実として、厳しい財政難の中で、限界集落とまで言われる過疎化や人口減少、少子・高齢化、所得・人口・雇用の格差、防災、医師不足など課題山積のスタートとなり、国政とは違う地方の現実を身をもって確認されたのではないでしょうか。知事に、就任6カ月の思いをお伺いいたします。
 三位一体改革による地方交付税の削減、借金返済額の増大による財政危機や、今回の台風、大雨による災害復旧、医師確保問題などの切実な県民の声を、長年にわたる国会議員としての経験や人脈を生かし、岩手のトップリーダーとしてどのように国政に働きかけていくのか、知事のお考えをお伺いいたします。
 次に、広域振興局の体制についてお伺いいたします。
 知事は、6月定例県議会において、各地域の特性を最大限に発揮する上で、4広域振興圏の早期確立が必要と強調されました。また、新しい地域経営の計画にも、新地域主義戦略としてこのことが打ち出されております。これに伴い、現在の地方振興局をすべて広域振興局として再編されるのでしょうか。県南広域振興局は、6地方振興局を再編し、4総合支局、2行政センターとして昨年スタートいたしました。広域振興局を第2の県庁と位置づけ、権限と財源をもって、地域課題と県民サービスの向上に当たるという広域振興局体制のモデルとしての位置づけでありました。県南広域振興局の再編の成果と、県民が望んでいる振興局のあり方をどう検証しながら見直していく考えなのか、お伺いいたします。また、県南広域振興局に対する権限や財源、人材の配置によって県民サービスが向上し、事業成果が県民に見えることによって、次の広域振興局の再編が現実のものになると思いますが、いかがでしょうか、あわせてお伺いいたします。
 現在の県南広域振興局は、総合支局、行政センターと中2階の体制であり、私は非効率的な体制ではないかと思います。効率的な業務推進を考えれば、総合支局を廃止し、本局以外はすべて行政センターとする体制が望ましいと思います。市町村の合併が進み、力をつけた自立性の高い自治体から見れば、振興局不要論も出てくるわけです。したがって、振興局の組織体制も画一的ではなく、市町村、地域の実情に応じた特徴ある行政センターとして配置すべきではないでしょうか。知事が、地域コミュニティ、現場主義、草の根地域活動を重視されるのであれば、地域が求める行政センターとしての広域振興局の機能と市町村機能が連携調和することで、地域の活性化に結びつくと思いますが、知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、市町村との連携についてお伺いいたします。
 知事は、市町村と県は対等なパートナーとして一緒に悩み、地域の振興策を考えていきたいと、35市町村に足を運び、首長さんの要望を受けられました。そこで出された広い県土の共通課題、地域の個別課題の解決に向けて、パートナーである市町村との連携をどのように進めようとされているのか、お伺いいたします。
 地方6団体に設置された新地方分権構想検討委員会が、平成18年11月にまとめた分権社会のビジョンの前文に、地方分権改革は、だれもが住みなれた地域で生き生きと暮らし続けていける社会を目指している。人々により近い自治体にできる限りの権限と財源を集め、人々の知恵と工夫と参加によって、地域に最もふさわしい公共サービスが多様な姿で展開されるように、新しい国の形をつくり直す必要があるとあります。このことを踏まえ、知事は、国から県への地方分権はどうあるべきとお考えなのか、お伺いいたします。
 また、県は、今年度、31市町村に対し、83法令、977項目、延べ3、488事務、平成12年からの累計で1、195項目、7、131事務を移譲されておりますが、市町村からは、余り実態のない事務委任であるとか、仕事がふえただけとの批判もある中で、県から市町村への分権のあり方、役割分担をどのように再構築し、市町村の民間力、地域力を最大限に発揮できる仕組みづくりを進めようとしているのか、お伺いいたします。
 次に、県総合計画の見直しについてお伺いいたします。
 2010年度までの県総合計画は、増田前知事が掲げた夢県土いわて、自立、参画、創造を理念に据え、2万5、000人を超える県民が参加して策定されました。県財政も9、800億円という恵まれた時代でもあり、県民は、21世紀への夢と希望が広まった時代でもありました。
 今回は、知事の希望王国マニフェストを反映し、危機を希望に変える新しい地域経営の計画の素案が出されましたが、県南地域での説明会が当初1カ所から5カ所に変更されました。もっと県民の声をとのマスコミの報道に呼応された形ですが、余りにも計画性のない対応ではなかったでしょうか。今回の計画は、岩手の厳しい産業情勢や雇用問題がある中で、県民、企業、NPOなど県民総参加でつくり上げる地域経営による県政振興策であり、指定会場に集まれではなく、県から積極的に企業や団体に出向くなり、資料を送付するなりの努力をすることによって県政への理解が深まり、協働の精神が生まれると考えます。各会場での県民からの提言や意見を、今後どのように計画に反映していくのかということとあわせて、知事の御所見をお伺いいたします。
 夢県土いわてと希望王国、どちらにしても、県総合計画の後期4年間は県民の所得が少しでも向上し、雇用の拡大や人口減少に歯どめがかかり、安全・安心の医療の確立、食料自給率の向上などに成果が生まれ、豊かさが実感できる県政に導いていくことが重要ではないでしょうか。その意味で、新しい地域経営の計画と、県南広域振興局の産業振興戦略は、レイアウトの仕方は違っても内容的に大きな違いはなく、県南の市町村によっては、同じような計画の立て続けの作成に疑問を持っているのではないでしょうか。両者の整合性と新しい地域経営の計画に新たに盛り込まれた内容は何があるのでしょうか、お伺いいたします。
 次に、農業振興についてお伺いいたします。
 農林水産業は常に自然との戦いであります。今回の災害にしても、広い県土で毎年のように農林水産業の災害が発生し、価格の低迷とともに農林水産業を営む人たちを苦しめております。米づくりだけでは生きられないという声や、集落営農は厳しいとの声が、豊かな実りの秋を迎えた里に広まっております。
 こうした中、今年度から、品目横断的経営安定対策により、県内326の集落営農組織がスタートいたしましたが、経理の一元化や法人化などの課題が山積しております。各地域に120名の集落コーディネーターが配置されておりますが、この方々を活用した今後の指導強化と、担い手への営農活動支援をどのように考えているのか、お伺いいたします。
 また、県央や県南地域に比べ、県北・沿岸地域は、面積要件に届かず、担い手もいないことから集落営農への加入が少ないため、新しい経営安定対策に乗れない零細農家に対する支援策も必要と考えますが、どのようにお考えでしょうか。加えて、今、集落の中でほとんどが兼業農家になっております。私は、専業農業を営む人たちだけが担い手と認めるのでなく、休日農業中心の兼業農家でも、生産活動をし、農地の保全をしている青年は準担い手と位置づけ、例えば地域環境保全協力者などとして認定し、地域の環境を守るべきと思いますが、あわせて御所見をお伺いいたします。
 今、耕作放棄地の面積が拡大し、問題となっております。高齢化によって、また米価の下落によって、今後も耕作放棄地はふえるものと予想されますが、農地・水・環境保全向上対策によって、これに歯どめがかかるのか、見通しをお伺いいたします。
 また、この事業には、1階の共同活動への支援と、2階の営農活動への支援があり、消費者が求める安全・安心の減化学肥料、減農薬栽培への支援もありますが、この事業対象とならず、個別に無化学肥料、無農薬栽培に積極的に取り組んでいる生産者に対して、減反面積の緩和などの支援策が必要と考えますが、御所見をお伺いいたします。
 畜産業においては、トウモロコシによるエタノール生産の増加や、原油価格の上昇による海上運賃の値上げ等を背景とした穀物の国際価格高騰を受けて畜産飼料価格が上昇し、畜産経営を圧迫し始めております。配合飼料価格安定制度からの補てんはありますが、一時的な激変緩和対策ではないでしょうか。このまま飼料価格の高騰が続けば、国産畜産物の安定供給や、食の安全・安心をも脅かしてしまうわけで、養鶏、養豚、酪農、肉牛など、畜産振興県として今から消費者や流通関係者への理解が得られるような新たな対策のお考えがあるのか、お伺いいたします。また、生産性向上によるコストの低減にも限界がありますので、自給飼料の増産のための良質な草地の改良事業など、生産条件整備の取り組みが急務と思われますが、あわせて御所見をお伺いいたします。
 農林水産業においては、担い手の育成が県内各地域の大きな課題となっております。食料供給基地岩手の確立を標榜するとするならば、今、地域農業を担う人材を育成していくことが最も重要と思います。そのためには、高い農業技術と経験を踏まえて、農家や営農集落を指導できる農業普及員を育成確保し、各農業改良普及センターに専門ごとに配置することが重要であります。さらに、行財政改革として一律に農業普及員を削減するのではなく、新しい人材の採用も進めるべきと考えますが、いかがでしょうか。また、農業改良普及センターは、昨年度、九つの普及センター、五つの普及サブセンターに再編されましたが、今後、4広域振興局体制となれば、さらに再編することになるのでしょうか、あわせてお伺いいたします。
 普及員は、常に現場に足を運び、農家の悩みを聞き、地域農業を支える地域リーダーを発掘、育成し、さらに食の安全・安心への指導、青色申告の指導など、農家とともに生きてきたと言っても過言ではありません。一方で、普及センター組織が再編されるたびに農家から距離が遠くなっていると感じているのは農業者だけでしょうか。農政の大転換期の今、各普及センターとNPO法人いわてアグリサポートネットや集落コーディネーター、さらには経験豊かな農業者が、地域の担い手の指導、育成に当たるなど、まさに人的資源、マンパワーをフルに活用した指導体制の強化が重要だと考えますが、御所見をお伺いいたします。
 私は先般、自然保護議員連盟による三陸町のシカ対策に関する現地調査に参加してまいりました。県下のシカによる農林業被害は、平成18年度で約4、000万円にもなっている現状にあり、今や三陸町だけでなく遠野にも住み着き、県北でまで目撃情報が寄せられていること。三陸町では里ジカの密度が増加し、被害が広がっており、5年間で5、000頭を捕獲しても適正頭数にならない現状を伺いました。今年度からの第3次シカ保護管理計画の概要がまとまっているようですが、生息域の拡大を抑える対策と農林業被害対策をどのように進めようとしているのか、お伺いいたします。
 次に、地域医療の今後のあり方についてお伺いいたします。
 地方における医師不足、医師の地域偏在は喫緊の重要課題であります。新しい地域経営の計画でも4本柱の一つに医療問題を挙げ、医師確保や子育て環境の整備に重点化して取り組むことが明記されています。昨年、保健福祉部と医療局の組織横断で医師確保対策室が設置され、300名の医師との面談による訪問活動、医師データベースの整備や本県勤務の意向調査などにより、9名の医師が確保されたことは評価いたします。しかしながら、医師数の増加には至っていないのが現状であります。特にも、循環器科、産婦人科、小児科、整形外科など、県民が安心して暮らせる医師の確保を望む声が強く、知事もこのことを危機ととらえてマニフェストに掲げておられます。県民は、知事を先頭に、さらに積極的な医師確保対策に乗り出してほしいと願っておりますが、知事は、今後どのような行動と対策をお考えなのか、御所見をお伺いいたします。一部の県立病院において、医療機能の分担と連携を推進するため、病院施設の一部をオープンベッドとして地域の開業医などに開放し、共同利用している事例があります。一方、県立病院においては、医師が不足しているため、日勤からそのまま夜勤に入り、翌日も引き続き勤務するという過重労働の実態が指摘されております。開業医が県立病院のオープンベッドを利用するかわりに、月1度程度の夜勤の応援ができれば、県立病院における医師の過重労働緩和にもつながると思います。県立病院の勤務医も個人病院の開業医も、ひとしく地域医療を守る使命を担っております。夜間の救急対応において、病院と地域の開業医の連携がさらに図られるよう、医療局と保健福祉部が今まで以上に連携を強化して取り組むべきと考えますが、県の考え方をお示しください。
 産婦人科医の不足は全国的な問題で、最近は助産院による出産もふえている状況にあります。厚生労働省の資料によると、全国で助産院での出生数が多い都府県は、東京都で約1、700人、神奈川県で約1、500人と大都市部に集中している一方、少ない県は、秋田県で3人、鳥取県で5人、岩手県は13人と少ないほうの県に入ります。
 遠野市では12月に全国で初の公立単独助産院を開設する運びとなりました。助産院の開設には医療法で嘱託医設置が義務づけられていますが、遠野市助産院では盛岡赤十字病院と嘱託医契約を締結し、盛岡、花巻、北上、釜石、大船渡などの7医療機関とモバイル遠隔健診を行うこととしています。この結果、5年間も産婦人科不在で苦労した妊産婦や市民にとって明るい光が見えることとなりました。助産院として当面出産は扱わないわけですが、モバイル遠隔健診によって7医療機関の10人の産科医が、パソコンや携帯電話を使った電子カルテにより、胎児の心拍や健康状態を把握することができ、直接電話での相談もできるものです。また、助産師が医師と連携して、患者さんに的確な出産・入院時期などを助言し、緊急の場合は、24時間、助産師が救急対応できるシステムになっております。助産院におけるこのような新たな遠隔健診のシステムを、県内の産婦人科不在の地域において今後導入していくべきと思いますが、県のお考えをお伺いいたします。また、県立病院を地域に開かれた医療機関として活用促進するためにも、今後、市町村において公立の助産院が開設された場合、県立病院の一角を助産院施設として提供するような活用ができないものか、お伺いいたします。
 次に、子育て支援による地域社会づくりについてお伺いいたします。
 急速な少子化に伴う人口減少は、地方のみの問題ではなく、国においても喫緊の課題であります。岩手の産業、経済、福祉全般を支える人口の減少の流れに歯どめをかけ、知事が主張される未来に希望を持てる社会を実現するためには、社会を支える人づくりが不可欠であります。子供は国の宝、地域の宝としてとらえ、財政支援とともに環境を整備していくことが最も重要ではないでしょうか。少子化対策は、一つの政策を講ずればすぐに効果が出るものではなく、子育て世代のニーズを踏まえながら、行政だけでなく、家庭、企業、商店、学校など地域社会全体で理解を深めていくことが大切であると思います。
 県においても、平成17年3月にいわて子どもプランを岩手県行動計画として策定しております。その基本的な視点として、家庭や子育てを社会全体で支えていく地域社会づくり、安心して子供を産み育てられる環境づくり、子供が健やかに育っていける環境づくりを挙げています。これを受けて、県の新しい取り組みとして、いわて子育て応援i・ファミリー・サービス事業が、この11月18日の家族の日からスタートすると伺っております。事業の内容は、店舗や企業、行政が一体となって子育て家庭を応援するために、子供連れで買い物や遊びに出かけた子育て家庭に、協賛店、企業から商品の割引や特典のサービスが提供されるものとなっています。
 一方、今、地方の中心商店街は大型店に押されて疲弊しておりますが、効果的な活性化策を見出せないでいます。i・ファミリー・サービス事業は子育て支援を目的とした事業ですが、視点を変えれば、地域の商店街の活性化にも結びつくものと考えます。まちづくりの観点からも、このような事業の活用をお願いしたいと思います。ここでは事業の進め方についてお伺いいたします。
 商工会でも各種スタンプなどのサービスを行っているのですが、さらに子育て家庭への割引や特典となると二重の経費負担となりますが、負担増の部分を県や市町村が補助金等で支援していくのでしょうか、お伺いいたします。また、事業自体はスタートしていないわけですが、協賛していただける店舗、企業の件数の見通し及び目標値としての設定はどのぐらいになるのでしょうか、あわせてお伺いいたします。
 次に、文化芸術振興基本条例についてお伺いいたします。
 国が2001年に文化芸術振興基本法を制定以来、15都道府県において文化・芸術振興に係る条例が制定され、本県でも、現在、制定に向けた作業が行われております。県内には、長い歴史の中から生まれた郷土芸能を初め貴重な民族文化や芸術が数多く存在するとともに、地域固有の文化として伝承活動が行われてきました。今回の条例の制定によって県民の意識が高まり、後継者不足の課題が少しでも解消されることや、将来を見据えた文化・芸術振興策のビジョンが作成されるものと期待しております。
 知事は、第1回県文化芸術振興懇話会のあいさつにおいて、文化、芸術は、地域振興や産業振興、所得向上を目的にしてはいけないものと発言しておられます。しかし、地域の郷土芸能活動は地域振興そのものであり、活性化に向けた起爆剤でもあります。心を一つにしての活動は、郷土芸能に自信と誇りを持って一生懸命郷土芸能を踊っている子供たちの中に、踊りを続けたいという気持ちから地元に就職する例もあり、地域振興や産業振興にも大きく結びついているものと思っております。知事の文化、芸術に対する認識は、岩手ソフトパワー戦略にある文化的魅力や道義的信頼を高めることだけで、文化芸術振興基本条例の必要性から少しかけ離れているのではないかと思いますが、改めて知事の基本的な考え方をお伺いいたします。
 また、この基本条例によって、文化、芸術の担い手が育成されるためには、市町村や地域との連携協働による伝統芸術の保存や、希望王国に向けた新しい文化、芸術を創造する取り組みが求められると思いますが、これらに対する県の財政支援をどのようにお考えか、お伺いいたします。
 次に、社会資本整備についてお伺いいたします。
 一般国道340号立丸峠5.9キロメートルは、標高が高いため地形や自然条件が厳しく、幅員が狭い上に急勾配、急カーブが多く、交通の難所となっており、県トラック協会では通行しない道路としていると聞いております。しかしながら、この道路は、三陸沿岸地方と遠野、花巻空港、東北新幹線、東北自動車道を擁する花北・胆江地方を最短距離で結び、産業、経済、文化、人的交流の発展を図る上で貴重なアクセス道であります。今年度、立丸峠に結びつく土渕バイパス改良工事が新規で採択されましたことには深く感謝を申し上げます。一点の明るい光が見えるような採択でありました。私がこの課題を一般質問で取り上げて5回目となりますが、それだけ大きな地域課題であることを御理解いただいた上で、改めて立丸峠のトンネル化の見通しについてお伺いいたします。
 今年3月、一般国道283号仙人峠道路及び上郷道路が開通いたしました。開通半年後の通行量は、平日で18%増、休日で27%増と伺っております。道ができれば物流や人の交流が活発になり、地域活性化にもつながります。そこで、花巻市東和から遠野間における国土交通省直轄の高速道路の進捗状況と今後の計画についてお伺いいたします。
 最後に、地方においては、国道とは名ばかりで、未整備のままの国道が今も数多くあります。一方、大都市においては、道路はこれ以上要らないと、道路特定財源を一般財源化しようとする動きが高まってきております。しかしながら、地方においては、社会資本インフラの整備は重要であります。道路特定財源を安易に道路整備以外の目的に流用することなく、地方の道路整備に全額充当すべきと考えますが、この点について知事の御所見をお伺いいたします。
 以上で私の一般質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。答弁によっては再質問をさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 工藤勝子議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、県政に対する認識についてでありますが、私は、知事就任直後から、県内市町村長の皆さんとの個別の意見交換や各広域振興圏を単位として実施している岩手フロンティア懇談会など、さまざまな場面で県民の皆様の声を広くお聞きする機会を設けてまいりました。
 そうした機会を通じて感じますのは、本県の大きな課題である雇用や医師不足の問題などについては、これは、国政に携わっておりましたときにも認識はしていましたものの、こうして地方自治の現場に立ち、現実を見たとき、その問題の大きさをじかに感じ、思っていた以上に深刻な危機であると改めて認識したところでございます。
 私は、こうした現実を真摯に受けとめ、さまざまな角度から検証しながら、あらゆる手段を使って、危機を希望に変えていくための取り組みを推進する必要があるとの思いを強くしております。
 そのために、先般、総務大臣や厚生労働大臣との意見交換を行ったように、国へ協力要請すべきものはあらゆる機会をとらえて行いつつ、北海道・北東北知事サミットにおける決議などのように、同じような状況にある県等と手を携えながら、本県や地方の現状や意見について、言うべきことは、その時期を逃さずしっかりと国に対して働きかけてまいりたいと思います。
 次に、県南広域振興局におけるこれまでの成果と見直しについてでありますが、まず、成果については、局独自の経営戦略会議や地域協働委員制度などによる広域行政の戦略的な組織運営が一体的かつ効率的になされていること、管内9市町への目標を大きく上回る1、739事務の権限移譲を実現するなど、市町村優先の行政システムの確立に向けた県南局一体での取り組みが進められていること、地域特性に着目した産業振興戦略等の迅速な策定と地域の多様な主体との協働連携に基づく北上川流域ものづくりネットワークなど、七つの広域的なネットワーク等による積極的な地域経営が進められていること、廃棄物処理や社会福祉にかかわる事務などの面で、本庁から37の業務が移譲されたことによる業務の完結性が向上したこと、などが挙げられると思います。
 一方で、課題といたしましては、管理運営面での円滑化、効率化、本局と総合支局等との役割分担の明確化、管内市町とのコミュニケーションの一層の充実、広域局としてあるべき今後の組織、人事、予算等の諸制度の検討などが指摘されると思います。
 こうした成果と課題をしっかりと検証し、県南広域振興局の機能の一層の充実強化に向けた改善に取り組んでまいるとともに、他の圏域における広域振興局の設置に向けた検討の中で生かしてまいりたいと思います。
 次に、広域振興局本局と行政センター体制についてでありますが、平成18年度にスタートした県南広域振興局本局、総合支局、行政センターという体制については、合併等に伴う市町の業務体制の効率化の進展などを踏まえながら、県からの権限移譲を段階的に進めることによって、市や町の行財政基盤の強化が図られるまでの間の過渡的なものであり、最終的には、議員御指摘のとおり、広域振興局本局と行政センターから成る体制を目指しているところであります。
 なお、行政センターの配置については、本局との関係において、どのような機能、役割を担うべきかということのみならず、地域振興に当たって考慮すべき地域の事情や特性を踏まえつつ、市町村との適切な役割分担のもとで、いかに実効ある連携を図ることができるかなどの視点にも立って検討していくべきものと認識しております。
 次に、市町村との連携についてでありますが、私は、本県独自の地域資源や魅力を生かした地域づくりを進めていくためには、市町村、県民、企業、NPOなど、地域社会の構成主体の総力を結集する、地域経営という考え方に立った取り組みが必要と認識しております。
 こうしたことから、このたび公表した新しい地域経営の計画においては、政策項目や重点施策ごとに目指す姿を実現するための取り組みについて、それぞれの果たすべき役割分担を整理したところであります。
 今後、この役割分担のもとで多様な構成主体が相互に連携しながら取り組んでいくこととなりますが、とりわけ基礎自治体としての市町村の役割は重要であり、それを将来とも十分果たし得るよう行財政基盤を強化する必要があることから、市町村合併や権限移譲を推進しつつ、さらなる連携の強化を図ってまいりたいと思います。
 次に、国から県への地方分権のあり方についてでありますが、工藤議員が引用された分権型社会のビジョンは、分権改革が目指す社会の姿を提示するとともに、必要な改革の原則と方策を示したものであります。
 私は、この報告等を踏まえ、さらなる地方分権改革を進展させ、地方が主役の国づくりを実現するためには、国と地方の役割分担を徹底して見直し、国によるさまざまな過剰関与を廃止するとともに、地方が担うこととなった事務と責任に見合う税財源の確保のため、消費税や法人二税の見直しを含む地方税財政全般の抜本的改革を実施し、さらには、条例による法令の上書き権などを含めた条例制定権を拡大するといった自治行政権、自治財政権、自治立法権の強化確立が必要であると認識しております。
 次に、県から市町村への地方分権のあり方についてでありますが、市町村は、住民に最も身近な基礎自治体として、教育や福祉、まちづくりなどの行政サービスをきめ細かく総合的に提供する役割を担っていくべきものと考えます。
 一方、県は、市町村を補完する広域的自治体として、産業振興、社会基盤整備、さらには、専門的または高度に政策的な行政サービスなどを担っていくべきものと考えます。
 このような考え方に沿って、県としては、市町村への権限移譲の推進など、その行財政基盤の強化に向けた支援を行うことにより、市町村優先の行政システムの構築を目指しているところであります。
 したがって、そのようなシステムを構築する中で、住民の方々やNPOなどが、さまざまな行政サービスの担い手として広く参画することにより、地域や民間の力が最大限発揮され、真に豊かな地域社会が形成されるような取り組みが進められるよう、県としても可能な限り支援をしていきたいと考えております。
 次に、新しい地域経営の計画への県民意見の反映についてでありますが、新しい地域経営の計画については、素案の公表後、直ちに多くの県民の方々に御説明する機会を設けたいと考えていたところでありまして、まずもって広域振興圏ごとの説明会を開催することとし、日程が整ったところから順次実施しているところであります。
 また、すべての市町村との意見交換を行うこととしているほか、要請に応じ、各種協議会・団体の会合の場や地域における集会の場などに出向いて説明するなど、積極的にその周知を図り、御意見や御提言をいただきたいと考えております。
 さらに、現在実施しているパブリックコメントの終了後には、こうした場においてちょうだいしたさまざまな御意見や御提言について、計画案への反映について十分検討させていただくとともに、その反映状況を公表することにより、この計画への理解を一層深めていただけるものと考えております。
 次に、今後の医師確保対策についてでありますが、国は、地域医療の厳しい状況を踏まえ、昨年8月に新医師確保総合対策、ことし5月には緊急医師確保対策を打ち出していますが、現在の危機的な状況の打開には、さらなる対策が必要であると考えます。
 このため、先月行われた厚生労働大臣と全国知事会との意見交換会では、本県の厳しい実情を伝えるとともに、8月の北海道・北東北知事サミットの決議に基づき、国において、実効性のある医師確保対策に早急に取り組むよう強く要請したところであります。
 今後も、あらゆる機会を得て、国に対して抜本的対策を講ずるよう引き続き強く求めていくほか、県としても、岩手医科大学医学部の定員増への対応のほか、医師確保対策アクションプランに基づく取り組みや医師確保対策室による医師の招聘などを着実に推進し、本県の地域医療に必要な人材を確保してまいりたいと思います。
 次に、文化芸術振興基本条例についてでありますが、文化芸術は、私たちに楽しさや感動、精神的な安らぎや生きる喜びをもたらして人生を豊かにするものであり、それ自体に固有の価値と意義があると考えます。
 他方、文化芸術活動が活発化することにより、地域振興、ひいては産業振興、観光や企業誘致などにも大きな効果を及ぼすことも事実と考えます。
 こうした考えに基づき、私は、さまざまな危機に直面する岩手を希望に満ちた岩手にするために、文化芸術の振興を図ることが極めて重要と考えているところであります。
 このため、文化芸術の振興の基本理念を明文化するとともに、文化芸術の振興を総合的・効果的に進めるための基本方策を定め、県民に向けて振興を宣言することを目的とし、条例を制定する考えでございます。
 次に、道路特定財源についてでありますが、本県においては、東北横断自動車道釜石秋田線を初めとする道路整備がおくれており、県民一人一人が確かな希望を抱く県土づくりを推進するためには、真に必要な道路整備を着実に進めていくことが重要であります。
 地方の道路整備は、軽油引取税などの道路特定財源のほか、相当の一般財源を充当して道路整備を進めていることから、道路を計画的に整備するには、その財源を拡充する必要があると認識しております。
 このため、地方にとって真に必要な道路整備を着実に進めるためには、道路特定財源については、道路整備のための財源として確保し、地方公共団体への配分割合を高めることなどにより、地方公共団体における道路整備財源の拡充を図る必要があると考えているところでございます。
 その他のお尋ねにつきましては、企画理事及び関係部局長から答弁させますので、御了承をお願いいたします。
   〔企画理事酒井俊巳君登壇〕
〇企画理事(酒井俊巳君) 新しい地域経営の計画と県南広域振興圏産業振興戦略の整合性と新たに盛り込まれた内容についてというお尋ねでございます。
 産業振興戦略は、広域振興局の設置目的でございます産業振興による地域経済の自立に向けた取り組みを平成18年度から速やかに開始するため、昨年12月に策定したものであり、その内容は、県南広域振興圏における各産業別に目指す姿と施策の方向性について示したものでございます。
 一方、この9月に素案を策定・公表いたしました新しい地域経営の計画の地域編─県南振興圏計画でございますが、御指摘のとおり、産業振興分野に関する部分は産業振興戦略の内容、各産業ごとに目指す姿あるいは施策の方向性を包含し、整合性を持って七つの重点施策としてまとめておりますけれども、各重点施策別に、より具体的な取り組み内容、県、市町村、関係団体、民間事業者等における役割分担、産業振興戦略に盛り込んだ大目標値を達成するための細分化した目標値などを新たに盛り込んでいるところでございます。
 また、この計画は産業振興分野のみならず、新たに安全で安心して暮らせる住みよい地域社会の形成を目指した高齢者・障害者福祉や防災対策、まちづくりの推進などに関する重点施策を加えた上でお示ししているものでございます。
   〔農林水産部長高前田寿幸君登壇〕
〇農林水産部長(高前田寿幸君) まず、品目横断的経営安定対策による集落営農組織の育成についてでございますが、本対策に加入した集落営農組織が効率的、安定的な経営を実現するためには、経理に精通した人材の育成や法人化、さらには経営の高度化や多角化に向けた支援が重要であると考えております。
 このようなことから、県では、組織ごとの課題と目標を把握するため、本年7月から、全組織を対象にアンケート調査を実施し、現在その取りまとめを行っているところであり、この結果を踏まえまして、11月をめどに、今後の経営の展開方法等を明らかにした集落カルテを作成することといたしております。
 今後におきましては、JAが配置した集落コーディネーターや普及員が、この集落カルテに即して経理の一元化や法人化の指導を行うとともに、特に、経営上の課題となっております税制面につきましては、県税理士会等との連携による税理士のネットワークを構築し、これを活用したきめ細やかな支援を行っていくこととしております。
 次に、零細農家の支援についてでございますが、本県の農業・農村の振興を図るためには、核となる担い手の育成はもとより、小規模・兼業農家も含めた集落ぐるみの取り組みが重要であると考えております。このため、県といたしましては、小規模農家等につきましても、集落営農組織の設立等により品目横断的経営安定対策への加入を促進するとともに、産地づくり交付金等を活用し、園芸作物の導入等による所得向上に向けた取り組みを支援しているところであります。
 また、農地や農業用水等の良好な保全を図るためには、地域が一体となって取り組むことが重要でありますことから、今年度から始まりました農地・水・環境保全向上対策を活用し、専業農家はもとより、議員御指摘の大多数を占める兼業農家、さらには地域住民などの多様な主体が参画する地域ぐるみの活動を支援し、農業の生産基盤や農村環境の良好な保全等を図ってまいりたいと考えております。
 次に、農地・水・環境保全向上対策についてでありますが、本対策は、農地、農業用水等の良好な保全と質的向上を図るため、本県におきましても、本年度から水田地帯を中心に約4万2、000ヘクタールを対象に実施しているところでございます。
 この対策の実施地区におきましては、毎年、耕作放棄地の発生状況を把握するための点検活動が義務づけられているほか、管理が不十分な農地が確認された場合には、草刈りや害虫駆除を適正に行い、耕作可能な状態に保全管理することが要件となっておりますことから、本対策の実施により、耕作放棄地の拡大が抑制されるものと期待いたしているところでございます。
 次に、無化学肥料、無農薬栽培に積極的に取り組んでいる生産者に対する支援についてでございますが、農薬や化学肥料を使用しない米の栽培につきましては、一般の栽培に比べ収量が低いことから、現行の生産調整の仕組みでは、市町村が生産数量目標の配分の際の基準となる反収を低く設定できることとされておりまして、結果として、こうした栽培に取り組む生産者の減反面積が緩和されることとなっておりますことから、まずもって、こうした特例措置の積極的な活用を促進してまいりたいと考えております。
 また、県といたしましても、市町村への生産数量目標の配分に当たっては、このような農薬や化学肥料を使用しない栽培等の取り組みが拡大されるような配分方式の導入を検討するとともに、産地づくり交付金を活用して、有機JAS認証に要する経費を助成している地域の取り組み事例の周知などにより、安全・安心なこだわりのある米づくりを促進してまいりたいと考えております。
 次に、畜産振興についてでございますが、飼料価格の高騰など、最近の急激な生産コストの上昇は、生産者の努力だけで吸収することが困難な状況になっておりますことから、農林水産省は本年5月、生産者や消費者、加工・流通関係者で構成する協議会を設置し、最近の畜産をめぐる情勢や生産者の生産性向上の取り組み等について、理解の醸成に努めているところであります。
 また、県といたしましても、ホームページやイベント等を活用し関係者への情報発信等に取り組んでいるところでありますが、今後とも、あらゆる機会をとらえて、消費者や流通・加工関係者等の理解の醸成に努めてまいりたいと考えております。
 また、本県の畜産振興を図るためには、豊富な草資源を最大限に活用した自給飼料の増産が重要な課題となっておりますので、今後とも、国の補助事業等を活用し、生産基盤の計画的な整備を進めてまいりたいと考えております。
 次に、農業普及員の育成・確保等についてでございますが、地域農業の担い手の育成と経営の高度化を図るためには、農業普及員のさらなる指導力向上と普及指導体制の整備が必要であると考えております。このため、県といたしましては、農業普及員の発展段階に応じた専門研修や現場活動を通じた研さんにより、多様な農業者のニーズにこたえられる農業普及員の育成・確保に努めるとともに、地域の重点課題に即応したチーム編成や普及センター間の連携による高度専門技術の指導等に取り組んできたところでございまして、今後とも、新たな人材の確保を含め、必要な体制の整備に努めてまいりたいと考えております。
 また、今後の普及センターのあり方につきましては、まずは、昨年4月に再編いたしました現在の体制、これを地域にしっかりと定着させ、その上でその成果や課題を検証しながら、より効率的な普及指導体制について検討してまいりたいと考えております。
 次に、マンパワーの活用による指導体制の強化についてでございますが、県内におきましては、市町村、JA、普及センター等、地域の関係者が連携を強化し、産地づくりを効率的に推進する総合支援体制を整備している八幡平市や遠野市の事例や、地域のベテラン農家を指南役として育成し、新規栽培者等へきめ細やかな技術指導を実施している事例など、地域の関係者と普及センターとが密接に連携した体制整備が徐々に進展し、担い手の育成や産地づくりなどの成果が上がってきているところでございます。
 今後におきましても、普及センターが中心となって、市町村、JAはもとより、普及員OB等で構成するNPO法人や集落コーディネーター、さらには先進農家など、地域のすぐれた人材を結集した指導体制を構築し、地域のニーズにこたえられる柔軟性と機動性に富んだ、岩手ならではの農業改良普及事業を展開してまいりたいと考えております。
   〔環境生活部長菊池秀一君登壇〕
〇環境生活部長(菊池秀一君) シカ対策についてでありますが、シカ個体群の適正な管理と農林業被害の低減などを目的として、第3次のシカ保護管理計画の策定を現在進めておりますが、生息域が県央部や県北部にも拡大していることが課題となっております。
 このため、こうした地域を新たに計画の対象地域に加えまして、五葉山地域と一体として生息域拡大の抑制対策に取り組むこととしております。その中で新たな取り組みといたしましては、狩猟の期間を前後ともに半月ずつ延長いたしまして、11月15日から2月末日までとすること。捕獲の頭数は、法令上、1日1人当たり1頭に制限されておりますが、五葉山地域は2頭、それ以外の地域は3頭に緩和すること。また、今年度の捕獲目標数を近年では最も多い1、350頭に設定するなど、猟友会等の協力を得ながら個体数調整に取り組んでいく考えでございます。
 農林業被害対策につきましては、補助事業によるシカの侵入防止のための防護網の設置や造林木への忌避剤の散布など、基本的な対策を引き続き実施していきますとともに、新たに、シカ被害が甚大な大船渡地域では、地域の関係者が一体となった休耕地や山際の刈り払い、わなによる効率的な捕獲、シカが好まない農作物の栽培など、被害に強い集落環境づくりに成果を上げておりますので、こうした事例の普及にも努めていく考えでございます。
   〔保健福祉部長赤羽卓朗君登壇〕
〇保健福祉部長(赤羽卓朗君) 県立病院と地域開業医との連携についてでございますが、軽症の方を含む多くの救急患者が、地域の二次救急医療の中核を担っております県立病院の時間外の救急外来を訪れているということが、ほかにも多くの要因があるわけでございますが、勤務医の業務過重の要因の一つと指摘されているところでございます。
 こうした状況の改善に向けまして、市町村が主体となって取り組む初期救急医療体制について、新たに一関市や奥州市が、各地区の医師会との連携によりまして、平日の夜間における小児等の初期救急医療体制を整備し、これによりまして県立病院の救急患者の減少傾向が見られるなど、勤務医の負担軽減に一定の効果があらわれ始めていると伺っております。
 県としては、こうした地域の取り組みを促してまいりたいと考えておりますし、今年度、地区医師会、市町村及び県立病院の連携のもと、地域の開業医の参加・協力を得て、夜間に小児科の初期救急患者の診療を行う新たな地域医療連携の取り組みを進めることとしており、このような取り組みを通じまして、また医療局ともさらに相談させていただきながら、病院勤務医と地域の開業医が連携して地域医療を担う体制の充実に努めてまいりたいと考えております。
 次に、産婦人科不在地域における遠隔健診システムについてでございますが、遠野市における遠隔健診は、平成20年度までの経済産業省の地域医療情報連携システムの標準化及び実証事業として、機器の貸与を受け、産婦人科医会の支援を受けながら実施しているものでございまして、産婦人科医不在地域における安全・安心なお産に一定の効果があるものと伺っております。
 また、本年5月に開催いたしました岩手県周産期医療協議会におきましても、モバイル遠隔健診など、情報技術を活用して医療機能の地域連携を図ることは、周産期医療確保の観点からも必要であるといった意見が出されているところでございます。
 現在、この事業につきましては、実証事業の期間中でもございますことから、事業の効果や課題を把握し、関係者の御意見も伺いながら、今後の具体的な対応について検討してまいりたいと考えております。
 次に、子育て支援による地域社会づくりについてでございますが、いわて子育て応援i・ファミリー・サービス事業は、店舗や企業、行政が一体となって子育て家庭を応援しようという地域の機運の醸成を図り、子育て家庭が地域社会から支えられていることを実感できる社会づくりを進めようとすることを目的といたしまして、今年度から実施するものでございます。店舗や企業の自主的な取り組みをお願いするものでありますことから、協賛店に対する補助金等の支援は考えていないところでございます。
 協賛店には、割引・特典型のにこにこ店と子供連れ家族に配慮したほのぼの店がありまして、取り組み内容は各協賛店にお決めいただくことになっておりますが、現在実施しているスタンプやポイントなどと連動した取り組みも可能と考えております。
 また、協賛店にとりましても、子育てを応援するという社会貢献を行う企業・店舗としてイメージアップにつながり、子育て家庭のみならず、多くの県民から支持を受けることが期待されるのではないかと考えております。
 協賛店の件数の見通しにつきましては、11月の事業スタートということもございまして、今年度の目標値は県内推定店舗数の1%である200店としておりますが、できるだけ多くの店舗・企業の協賛をいただけるよう、商工団体等の協力をいただきながら働きかけを行ってまいりたいと考えております。
 なお、来年度以降の取り組み目標等につきましては、今年度の取り組みによって見えてくる課題も踏まえて検討してまいりたいと考えております。
   〔医療局長法貴敬君登壇〕
〇医療局長(法貴敬君) 県立病院の施設の一部を他の施設として活用することについてでありますが、限られた医療資源の中で地域医療を確保していくためには、地域における医療機関のさらなる連携と分担を図る必要があり、例えば遠野市が目指している公立助産院の開設も医療分担の一方策であると考えられるところであります。そのような施設の開設場所として、県立病院の施設を活用することについては、市町村が設置する施設の機能が十分に果たされるのか、あるいは県立病院との連携を図る上で必要な機能は何なのかなどの観点から、個別の事例ごとに具体的に協議を進めてまいりたいと考えています。
   〔地域振興部長藤尾善一君登壇〕
〇地域振興部長(藤尾善一君) 文化芸術振興に対する財政支援についてでありますが、文化芸術振興のためには、地域に根差した伝統文化の保存・継承や、新たな文化芸術の創造などについて、何よりも県民の自主的かつ主体的な活動として行われることが肝要であります。このような考え方に基づき、条例の制定により、地域文化の再認識や発信とともに、活動の担い手となる人材の育成や市町村と連携した仕組みづくりなどの基盤整備を進めていく考えであります。こうした文化芸術振興施策を総合的、効果的に進めるためには、民間団体による文化活動の支援とともに、県等の財政支援も必要であると考えているところであります。したがいまして、県として、必要な財政上の措置を講ずる旨、現在お示ししている条例骨子案のように、条例に規定してまいりたいと存じております。なお、支援の具体策につきましては、文化芸術振興懇話会の意見等を踏まえ、今後検討することといたしております。
   〔県土整備部長西畑雅司君登壇〕
〇県土整備部長(西畑雅司君) 国道340号立丸峠のトンネル化についてでございますが、これまでの調査により、地形が急峻であることから、複数のトンネルを含む大規模な事業になると見込まれるため、交通量の推移や地域開発の動向、県財政の見通しも踏まえ、県全体の道路整備計画の中で、整備計画のあり方も含めて検討してまいりたいと考えております。当面の対策といたしましては、急カーブや見通しの悪い箇所などの交通隘路箇所の解消を図るため、平成18年度から33カ所の局部的な改良に取り組んでおり、今年度は用地、補償及び待避所の設置やカーブの緩和のための工事を進めております。
 次に、東北横断自動車道釜石秋田線遠野-東和間の進捗状況でございますが、宮守-東和間の進捗率は、平成19年3月末で約24%でありました。今年度は工事が本格化しておりまして、ほぼ全区間でトンネルや橋梁などの工事が進められており、今年度末の進捗率は約33%となる見込みでございます。遠野-宮守間につきましては、ことし9月までに用地測量調査を終え、10月以降、地権者の皆様に対しまして説明会を開催する予定としておりまして、その後に、用地取得事務を受託しております県が、地権者の皆様の御理解を得て、早期に用地取得ができるように努力してまいりたいと考えております。
 今後の見通しでございますが、宮守-東和間は平成20年代半ば、遠野-宮守間は平成20年代後半の供用開始を目指していると伺っております。県といたしましては、用地取得事務に引き続き積極的に取り組むとともに、1年でも早い完成を国に強く働きかけてまいります。
〇33番(工藤勝子君) 再質問させていただきたいと思います。御答弁、大変ありがとうございました。
 広域振興局体制についてお伺いしたいと思っております。県南広域振興局は、まさに他の3広域振興局の体制に入る前にモデルとしてスタートしたはずでございます。県のいろいろな評価は高いようでありますけれども、果たして、モデルとなっていると各自治体、県民は思っているのかということでございます。そういうことで、ここがやはりモデル的な体制と、そしてその成果が見えなければ、次の3広域振興局に結びつかない、私はそのように思っているわけで、ここの体制を今後しっかりと、それぞれの市町村が、県南広域振興局の産業戦略を含めて、外れている地域、例えば遠野はものづくりからも、例えば西和賀もそういうところから外れている地域でもあり、みんなここを一まとめにして評価されているわけですけれども、そういうまだ日が当たっていない地域の自治体も含めて、やはりこういう体制がすばらしいと評価をいただくような体制にしなければ、平成22年度の広域振興局体制につながらないのではないかと、私はそう思っております。知事の答弁の中で、広域振興局、行政センターがいいというような御答弁でございましたけれども、では、県南広域振興局の総合支局、行政センター、こういう体制は知事はどう思っていらっしゃるのか。ここを平成22年度までの間に改めて組織再編をするお考えなのか、重ねてお伺いしたいと思います。
 それから、地域経営計画の中でお伺いしたいと思っております。
 きのうの佐々木博議員の質問の中でもお話がありましたが、人口の点でございます。この地域経営計画の中で人口の転出に歯どめをかける、そこを重点目標とするということが掲げられてあります。今の経済情勢から見れば、非常に厳しいところではないかと思っているわけです。県内の人口動向を見れば、少子化の進行による自然動態の減少という形、それから、転出・転入による社会動態の人口減少というような形であります。やはり人口減少というのは岩手県にとって非常に重要な問題で、産業を支える人口、つまり福祉も含めて労働力人口の減少につながっていくのだろうと思っておりまして、この点において、高校を出た子供たちが、1月~3月にかけてどっと都会のほうに出ていってしまう状況、景気もなかなか回復しない状況の中で、非常に難しい問題の糸口をどう見つけていくのかというようなことです。平成17年の国勢調査から、さっき出ました平成19年7月の調査で約3万人が減少になっている状況です。そういう中で、3万人と言えば、遠野市の人口がそっくりそのままなくなったような状況でありまして、今後、知事としてこの分を重点目標と掲げたとするならば、どういうところに対策をとって政策的な力を入れていくのかということを知事にお伺いしたいと思います。
 それから、いわて子育て支援i・ファミリー・サービス事業でございますけれども、これは、保健福祉部の子育ての関係で御答弁をいただきました。しかし、この中で、商店、企業、こういうところからも協賛していただかなければならない事業なわけでありまして、そういうところから見れば、もっと子育て支援というものを幅広くとらえて、結局、組織横断で取り組むべきではないかと思うわけです。特にも、まちに人が入るという―旧と言いましょうか、今、中心市街地はシャッターのまちになりまして、なかなか活性策を見出せないでいる中で、こういう協賛店に参加したことによって、子供を連れたお母さんたちがまちに入ることは、少しでも中心市街地の活性化に結びつく一つの手段と考えるならば、これは横断的で、やはり商工労働観光部、そういうところとも一緒に連携をとるべきではないかと私は思います。そういう中において、今後、知事はリーダーシップをとって、いろいろな人口動態も含め、こういう子育ても含め、部局内でどのような、縦割りではない横断的な取り組みをしていくのか、お伺いしたいと思います。
〇知事(達増拓也君) お答えを申し上げます。
 まず最初に、県南広域振興圏のあり方についてでありますが、他の広域振興圏のモデルになるようにという御指摘は、本当にそのとおりだと思います。そして、県南広域圏の中で遠野、西和賀といったところが、その発展から取り残されているのではないかというような声もあるということは傾聴に値する指摘でありまして、やはりそうした広域の中の周辺や、他の県や他の広域と接しているような周辺の部分にもきちんと恩恵が行き渡るようでなければ、広域圏としての成功にはならないと私も考えます。そして、本局また行政センター等の現状については、やはりその役割分担の明確化の問題、管内市町とのコミュニケーションの問題、そして、管理運営面での円滑さや効率の問題等課題はあると思っておりまして、そうした課題を解決しながら、他の広域圏のモデルたり得る広域圏の実現に努めてまいりたいと思います。
 2番目に、人口の問題であります。人口転出が、国勢調査からことし7月までの間で3万人の減少ということの御指摘がありました。私が特に問題と感じておりますのは、人口の社会減の加速であります。ここ五、六年で年間2、000人程度の社会減が、一番新しいデータでは6、000人にまで社会減がふえました。3倍増という形でありまして、さらにさかのぼりますと、年間数百人しか社会減がなかったことも、大昔のことではなく最近あったわけでありまして、この辺がここ五、六年で大きく減少が加速していることは、やはりここ五、六年の県の経済情勢というものが大きく影響していると思います。したがいまして、こうした地方の経済情勢を改善させていくことで、社会減に歯どめをかけることができると思っております。きのう開かれた政府の経済財政諮問会議でも、地方の経済力の強化ということが非常に大きなテーマとして取り上げられたと聞いておりまして、総務大臣、また経済財政担当大臣、そして福田総理大臣みずからも、地方の経済力強化が最大の課題であるという趣旨のことを発言していたと思いますので、国としても、この五、六年の地方経済の傾向を反転させるような積極的な取り組みをしようとしているようでありますので、岩手県においても、県民経済の再生ということに意を用いつつ、この人口減少に歯どめをかけていくことが基本になるのではないかと考えております。
 3番目、子育て支援であります。これは本当に県組織全体として取り組んでいかなければならないと思います。部局横断的であるべきという指摘は、全くそのとおりでございまして、機会あるごとにそうしたことを私からも県各部局―これは御指摘がありましたまちづくり中心市街地活性化関係は特に大事なところであると思います。今回、子育て支援の企業、会社、商店認定制度によりまして、そうした商工分野へのアプローチ、道が開かれましたので、さらに進めていくように努めてまいりたいと思います。
 以上でございます。
〇33番(工藤勝子君) ありがとうございました。
 1点だけ、また再質問させていただきます。
 広域振興局体制ですけれども、結局、県南広域振興局も唐突に出てきたことだったと私は思っております。また、県北・沿岸振興もそうなんですよね。だれも考えないうちにばっと出てきてやったんです。ですから、やはり今後、残りの3広域振興局を再編するならば、早くみんなで、私たち議会も、岩手県が活性化されることをだれもが望んでいるわけでありますので、行政だけで考える案ではなくて、議会とも一体となってつくり上げるような、広域振興局体制をつくり上げるにはやはり早目に県側が素案を出して、こういう形ではどうですか、いや、議会はこうではどうのこうのと、そういう議論を交わしながら平成22年度に向けるべきだと思いますが、もう一度、知事のこの考え方をお聞きして、終わります。
〇知事(達増拓也君) お答えをいたします。
 御指摘のとおり、この広域振興圏のあり方については、特に県民総参加の形で進めていかなければ成功はおぼつかないと思っております。県民を代表する県議会の御理解を得ながら進めていかなければならないのはもちろんでありまして、早目早目に報告や説明、また提案等もきちんとしてまいりたいと思います。
〇議長(渡辺幸貫君) 次に、大宮惇幸君。
   〔27番大宮惇幸君登壇〕(拍手)

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