平成19年9月定例会 第3回岩手県議会定例会会議録

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〇14番(亀卦川富夫君) 政和・社民クラブの亀卦川でございます。
 質問に先立ち、先般の大雨により被害を受けた方々に心からお見舞い申し上げます。また、復旧に向けた県当局の懸命な取り組みを願うものであります。
 それでは、順次質問いたします。
 初めに、知事の政治姿勢と県政推進の考え方についてお伺いします。
 達増知事が就任され、約半年が過ぎました。この間、我が国の政治情勢は大きく変わりました。すなわち参議院選挙における第一党の交代であります。この情勢変化により、我が国の政治は今後3年間ないし6年間は今日の参議院の情勢が定着した中で進められることになります。したがって、今回の選挙結果、民主党のマニフェストは、国民が注視する重要な政策として、その現実化が問われることになりました。達増知事は政治家として、民主党による県政から国を変えていくとしております。その意味合いで、岩手県政の中で、民主党の掲げた政策、特に地方直結の政策展開は世の注目を集めているものと存じます。
 そこで、以下数点についてお伺いいたします。
 第1点目に、参議院選挙における民主党の公約についてであります。岩手県知事の立場としての受けとめ方をお尋ねします。
 第2点目は、その政策を岩手県政の中でどう具現化するのかについてであります。岩手県として考えられる具体の一つは農政であります。地域間格差の是正に農業改革は大切な視点であります。岩手型とでも言う農業の政策が問われますが、どのように取り組まれますか。民主党が掲げる農家への戸別所得補償と、これまで進めてきた品目横断的経営安定対策との整合性についてはどのように考えられるのでしょうか。また、農業のほかにも今後岩手県政に反映する政策があると存じますが、知事の考えをお示しください。
 第3点目は、このたび新しい地域経営の計画の素案が示されました。今後、県民の意見を踏まえ、成案として策定されるのでありますが、達増知事のマニフェストはどのように盛り込まれてあるのか、お伺いします。
 県総合計画は県政運営の最も基本となるものであります。増田前知事のみんなでつくる夢県土いわてから、達増知事が掲げる希望王国岩手への転換になるのでありますが、社会情勢の変化や、それに伴う各種指標の実態との乖離など、県民にわかりやすく示すことが必要と思いますが、どのように進められるのか、お尋ねいたします。
 第4点目として、増田前知事の総務大臣就任についてお伺いいたします。岩手ゆかりの大臣誕生、特にも地方の衰退を食いとめ、活性化を望む立場からも、その担当の総務大臣就任は歓迎いたします。しかしながら、自民党政権での大臣就任でありますから、民主党の達増知事は県政運営に当たりどのような受けとめ方をし、今後の対応についての考え方はどうか、お尋ねいたします。
 次に、県政運営に当たっての基本的な考え方についてお伺いいたします。
 我が国は、人口減少の中でグローバル化の進展にどう対処するのかが問われております。この時代に、地方自治体は分権型社会にしっかり取り組まねばなりませんが、まず、道州制についてどのような御認識なのか、お尋ねいたします。
 第2に、市町村合併についてお伺いします。合併間もないこともあり、市町村合併の功罪をめぐる議論もありますが、岩手の実情を踏まえ、知事の御認識をお聞かせください。その上で、権限移譲や財政あるいは人的支援などによる今後の市町村合併の進め方をお示しください。また、新しい地域経営計画では四つの広域振興圏での施策展開を示されました。昨年、県南広域振興局が先陣を切って設置された理由に、圏域内の市町村合併が進んだことが挙げられました。これから進める県南以外の広域振興局設置や権限移譲などについて、取り巻く諸情勢をどのように認識されているのか、お伺いします。
 第3に、地方財政についてでありますが、財源確保の手だてとして地方交付税のあり方や地方法人税再配分、また、ふるさと納税などの議論がありますが、知事のお考えと、知事会などでどのような主張をなさるのか、あるいは国に対する要望など、今後の進め方についてお伺いいたします。あわせて、地方自立が求められる中、岩手独自の財源確保や創出についてはどのように考えておられますか、お示しください。
 第4に、産業振興でありますが、土木建設業は地方の重要産業として、その振興には力を向けなければならないと思います。しかし、財政上、公共事業の大幅な拡張は難しい時代でもあると思いますが、知事の御認識と対策はいかがでしょうか。その具体の一つに、建設業界の声は入札制度の改善を求めておりますが、どう対応されますか。
 産業振興については、県産品の輸出などに力を入れるとしております。その目標と、大連など海外事務所の実績と、今後のアンテナショップなどの事業展開の見通しについてお知らせください。また、国内のアンテナショップの活用も図らねばなりません。東京のいわて銀河プラザは着実に実績を上げていると思います。来年10周年を迎えますが、これを機にさらなる充実発展策を講ずるべきと考えます。これまでの実績と今後の展開をお示しください。その一つに、岩手の食産品をその場で食べるイートイン整備がありますが、業務拡張など推進策をお伺いします。
 次に、県南広域振興圏の産業振興についてお伺いします。
 分権時代に向け、地方自立や人口減少の対応として産業振興は極めて大事な政策であります。その目的を重要な視点に、昨年、県南広域振興圏が設定されました。その後、圏域独自の産業振興戦略を策定するなど、多くの施策を推進しております。本年に入り、企業立地の促進などによる地域における産業集積及び活性化に関する法律の施行など、さまざまな動きが顕著になっております。まさに正念場に差しかかり、戦略の具体的な展開を図っているときと認識しております。
 そこで、実績と課題、また今後の進め方についてお尋ねいたします。
 まず、ものづくりについてであります。自動車、半導体、精密機械加工などものづくり成長産業の集積が期待されておりますが、その状況と地元調達率、雇用の現状と今後の対策について伺います。あわせて、宮城県との連携についてお伺いします。トヨタ系列の組み立て工場の宮城県立地が有力になっております。これは、岩手県南、宮城県北がコアとなり、北九州に匹敵する一大自動車産業地域としての可能性が出てきたものと存じますが、今後の取り組み方についてお尋ねいたします。
 産業振興のためには人材育成が重要でありますが、昨年設立された北上川流域ものづくりネットワークのこれまでの成果と今後の見通しはいかがでしょうか。また、物流や情報伝達などのため、いわゆる社会資本の整備が必要ですが、振興局としてどのように取り組んでいるのか、伺います。
 次に、市町村や団体との協働についてであります。産業振興を目的とした組織設立が多いと伺っておりますが、その実態と、官民協働の定着に期待がかかる一方、それぞれの存在意義や役割が十分周知されていないとの指摘もあります。実情と今後の進め方について伺います。
 次に、県南広域圏には先進的産業と並んで伝統的地場産業があります。県南圏域には国が指定する県内四つの伝統的工芸品のうち、南部鉄器、岩谷堂箪笥、秀衡塗の三つがあり、地域経営力アップのための貴重な産業資源でありますが、近年の生活様式の多様化や安価な日常品の普及により売り上げが減少しております。県では、後継者の育成や販路拡大など具体的にどのような取り組みをしているのか、お尋ねします。
 次に、県南圏域の農業については、持続的かつ健全な発展を目指しておりますが、県南広域振興圏が一体となった取り組みによる一段と進化した産地化やブランド化が期待されます。現状と見通しはいかがでしょうか。あわせて、食産業については、南いわて食産業クラスター形成ネットワークを立ち上げ、農業振興と相まって産業としての向上が期待されております。現状と今後の見通しをお示しください。
 次に、平泉の世界遺産登録にかかわっての県の取り組みについてお尋ねいたします。
 去る8月、世界遺産登録に向けての重要な関門になるイコモスの現地調査が終了しました。まず、調査を受けての感想や今後の課題についての御認識をお尋ねいたします。
 また、文化庁は、現地調査で寄せられた助言を踏まえて、精査した追加情報を調査員に提出したとの報道がありましたが、その内容をお知らせください。あわせて、登録までの道筋をお示しください。
 調査の過程では、調査員から、浄土思想に限らず平泉全体の価値を一般の人々にわかりやすく伝えていくことが重要との指摘が何回かあったと聞いております。この指摘を受け、県は、平泉の文化遺産の価値を広く一般の人々に理解していただくため、今後どのような取り組みを進めるのか、お伺いします。また、若年層、特にも本県の小中学生を対象に、世界遺産や平泉の歴史、文化などについてしっかり理解させることが重要と考えておりますが、あわせてお示し願います。
 また、地域の景観も大切な要素であると存じます。景観に関しては、鉄塔や屋外広告物など懸念された問題についての状況はどうでしょうか。私は、この地域の景観については、地域全体の景観が世界遺産とともに歩むまちとしてふさわしいものとなるよう、まちづくりの視点から息の長い取り組み方が重要と考えます。そこで、地域の景観保全や景観形成に関する課題と今後の取り組み方をお示し願います。
 次に、平泉文化遺産の世界遺産登録を契機とした観光振興についてお伺いいたします。
 世界遺産登録は、すぐれて普遍的な価値を有すると認められる遺跡、建造物、自然などを人類共通の財産と位置づけ、これを確実に保護・保全し、次世代へと継承していくことを目的とするものでありますが、一たび世界遺産に登録されたとなれば、その地域は国内外に向け大きなブランド力を持つこととなり、これを地域振興、特にも観光振興の面で有効に活用していくことは、非常に大きな効果を持つものと考えられます。
 そこで、県としては、平泉の文化遺産を、資産の保護・保存とのかかわりの中でどのようにとらえ、どのように活用していこうとしているのか、その基本的な考え方についてお伺いします。また、このことを踏まえて、本県の観光振興に具体的にどのように取り組んでいかれるのか。また、県内経済への波及効果を高めるための方策をあわせてお示し願います。
 次に、岩手競馬の再建計画についてお尋ねいたします。
 本年4月、存廃論議直後の暗い雰囲気を払拭できないままスタートした岩手競馬の発売成績は目標値を上回ることが難しく、6月からは、地方競馬全国協会から提案されたみちのく岩手競馬ルネッサンスプランに基づき運営を行ってきました。お盆前には薄日が差すような状況も見られましたが、馬インフルエンザの影響は、ファン期待の中央競馬との交流レースの中止など厳しい状況に戻った状況下にあります。今後、特別開催など全国的な交流を図り、目標達成に向けた最大限の努力を尽くすべきでありますが、見通しはいかがでしょうか。
 しかし、基本的には岩手競馬の運営は、廃止基準である収支均衡を大前提にする余り明確な再建方針を示せずに、歳入に合わせた歳出のコストカットが現在の経営の軸になっていると思われます。したがって、このままでは売り上げの下落がとまらず、いずれコストカットの限界に達するのではないかと危惧されます。競馬法の改正による地方競馬の今後のあり方、中央競馬会との交流連携などを見据え、徹底した経営分析をもとにした中長期的な自立再生計画策定が必要ではないでしょうか。その意味では、9月27日に、これからの経営の方向性を取りまとめるため、構成団体の事務レベルでのプロジェクトチームを立ち上げたことは評価いたします。知事は、民間委託も内容に入れた発言をされております。私は、民間委託は非常に大切な視点であると確信しておりますが、それゆえにこそ、安易に走るのではなく、まず、これまでの組合経営を一新する競馬専門家による組織確立など抜本的な自立再建をしっかり研究し、戦略を練り、その上で進めることが肝要ではないかと思います。
 そこでお尋ねいたしますが、知事は競馬事業の再建をどうお考えでしょうか。そして、その再建についての明確な手順、方針についてどうお考えでしょうか、御所見をお示しください。
 次に、医療についてお伺いいたします。
 去る5月、突如、県立胆沢病院の産婦人科が医師不足のため廃止という衝撃が走りました。本年1月に開かれた胆江地区県立病院運営協議会においては何ら不安視されることのない状況であり、産婦人科は3人体制で順調に推移し、年間551名の出産を担う岩手県内でもトップクラスの拠点病院でありました。しかし、にわかに医師の都合により2名が欠員。残りの1名体制ではいかんともしがたいとの認識のもと、その1名を北上病院に移す措置が講じられ、胆江地区の医療の中核である県立胆沢病院の産婦人科は廃止という方針が出されました。周産期の妊婦さんはもとより、今後お産予定の方々の不安は募ります。少子化対策の基本を担う機能が著しく低下しておる現状は看過できません。
 そこでお伺いいたします。このたびの県立胆沢病院の産婦人科機能の北上病院への移行については、医師の絶対数が極めて少ない現状からすれば緊急避難的なものとも考えられますが、今後、胆江保健医療圏の中核である胆沢病院の産婦人科機能については、その充実を図ることが、知事の掲げる新しい地域経営の計画における地域医療の確立や、人口減少に対する必要不可欠な施策であると思います。県立胆沢病院の充実について、医師の確保や助産師の活用など中長期的視点も含め、知事の御認識と対応についてお伺いします。
 奥州市では、県立、市立、民間診療施設の役割の明確化と相互の連携のあり方などをまとめた地域医療計画の確立を現在図っております。この観点からお伺いします。
 新しい医療計画が保健福祉部を中心に、平成20年度からの適用を目指し、策定を進めていると伺っております。疾病または事業ごとの医療連携体制について、これまでの検討状況はどうなっておりますか。特色ある医療を展開していくために医療連携体制がこれまで以上に重要になってまいりますが、胆江地域の医療連携の現状認識と胆江保健医療圏確立の方針をお示しください。
 さて、報道によりますと、9月21日、国においては、赤字経営が多い公立病院立て直しのため、公立病院改革ガイドラインの骨子案をまとめ、その上で、都道府県においては、本年度中に策定する地域医療計画を受け、医療機関の統廃合、民間への譲渡など病院再編のモデルプランの策定を進めるとのことでしたが、この情報の内容と、ただいま進めている新しい医療計画策定の関係についてお伺いいたします。
 次に、医師不足対策についてお伺いします。
 我が国の医療は、医師不足により深刻な状況にあります。その歯どめは、まず、医師の数の増加策でありますが、県としていかなる方策を講じるのか、お伺いします。
 幸い、岩手医大は定員数の増加が認められました。課題は、卒業後の岩手県での定着であります。研修医制度が医師偏在の原因の一つでありますから、若手の医師が症例経験を積み、技術習得に適した教育環境が整った病院、マグネットホスピタルと呼ぶそうでありますが、医師に魅力ある整備が岩手の医療システム構築のため大切な視点であると思います。このような機能を保健医療圏域ごとの中核病院が担う医療政策確立は、新しい地域経営の改革において、ともに生きる岩手の実現を強く打ち出されている岩手県として大切な視点での取り組みではないかと思いますが、知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、安心・安全の治安対策についてお伺いいたします。
 県民意識調査において、犯罪への不安が少ない地域社会が強く望まれ、各種犯罪の撲滅は県民の切実な願いであります。岩手県警察は、昨年12月、岩手県警察総合治安対策プログラムを策定し、平成22年までの4年を目途に、緊急かつ重点的に取り組むべき各方面での治安対策をまとめております。次世代に託せる安心して暮らせる地域社会の実現を目指してをスローガンに行動計画を立案しておりますが、県民の一人として県警の積極的な姿勢を高く評価し、同時に心強く思っております。しかしながら、県内において、凶悪な犯罪や交通事故など、本年もなお多く発生しております。このような状況を見るとき、県警が指摘するように、今後、回復に向かうのか、逆にさらなる悪化の道をたどるのか、まさに治安回復の分水嶺に差しかかっている時期との認識のもと、県民も実態の情報を共有しながら日常の生活を営むことが必要であります。
 そこで、治安対策プログラムの進展状況と、どの程度の効果が今後見込めるものと考えておられるのか、お伺いいたします。また、推進上の課題も多々出てきているのではとも思いますが、実情とその対応をお伺いいたします。
 それにいたしましても、全国的に親殺し、子殺しを初め、治安対策以前の社会全体が病んでいる実情をどのように考えたらよいのでしょうか。自殺者が9年連続で3万人を超える現在の世相を、花巻市ゆかりの日本を代表する宗教学者である山折哲雄先生は、新聞紙上、うつの時代の実相と題し、我々の身辺に漂い始めているうつや不安感の背景として2点指摘しております。一つは、これまで長い間当たり前であった人生50年の死生観の時代から、急速に進んだ人生80年代、高齢化人間がまだその人生のモデルを手にしていない、羅針盤を見出しかねているような今日の時代感覚と、もう一つは、異常な殺傷事件を通してかすかに見えてきた不安の背景に、殺意の堆積と拡散という問題を指摘しております。それは、他者への殺意がコントロールを失って外部に放出されるとき、突然凶悪な事件を誘発する。そして、そのエネルギーが内向するとき自殺衝動を加速させるとした上で、格差社会の肥大化、家族の多様化と解体などの要因がその傾向に拍車をかけているのではとただいまの説を論じております。
 社会の現状分析や警鐘はさまざまありますが、取り締まりの現場で日夜治安活動に従事されている警察当局として、岩手の実情と重ねてみての感想をお聞かせいただければと存じます。
 最後に、国立天文台水沢VERA観測所と旧緯度観測所本館活用についてお伺いいたします。この件につきましては、天文学という専門性が高い分野であることから、若干の前置きを申し述べての質問になりますことをお許し願います。
 国立天文台が進めるVERAとは、二つの天体を同時に観測できる、これまでより100倍精度の高い電波望遠鏡を使って星の位置と運動を明らかにし、銀河系の3次元地図作成などのプロジェクトの略称であり、最先端の天文学研究や調査を行うVERA観測所が奥州市水沢区にあります。一方、宇宙航空研究開発機構JAXAでは、月探査を目的としたSELENE計画を推進中であります。その一翼を担い、月をあらゆる方面から調べる月の測地学、これをRISE計画と呼びますが、そのRISE推進室が国立天文台水沢VERA観測所内にあり、日夜、観測、研究を行っております。長年の研究、準備のもと、去る9月14日、種子島宇宙センターから月探査衛星「かぐや」を搭載したH・Aロケットが打ち上げられ、見事成功しました。この「かぐや」には、従来できなかった14の観測装置が搭載されております。その中でも、世界初の月の裏側の探査が可能になる中継装置リレー衛星や月面の地図を製作するレザー高度計、地球に対する月の動きを観測する超長基線電波干渉計用電波源を登載する衛星など主要な三つの観測機器は、水沢にある国立天文台の河野宣之博士たちが中心になって開発されたものであります。
 SELENE計画は、今後も第2次、3次と引き続き計画されております。SELENE計画・は、2012年を目途に準備が進められます。その目的は、月面天文台構想、すなわち月に測量機器を設置するものであり、その主要機器である月面天測望遠鏡は、水沢のRISE推進室が担当、その最初のテスト機は、現在、岩手大学工学部と共同研究の調印により進められております。これは、今後、さまざまな部品開発・供給に岩手の地域が大きくかかわる絶好の機会と考えられます。また、SELENE計画・は、月の物質を地球に持ってくる構想と聞いております。
 1969年、人類を乗せて初めて月に着陸したアポロ11号が有名ですが、実際は、月についてはまだまだ不明なことが多いのです。今後、アメリカ、欧州、ロシアなども高度な探査を目指し、中国とインドは本年の秋から来春にかけて探査機を送る計画があります。
 ところで、宇宙における技術はまさに最先端の技術が要求されます。金属加工から通信手段、人間を守る衣食に至るまで、地上では考えられない過酷な条件をクリアしなければなりません。その技術こそ人類の未来を開くものでありますが、宇宙技術の応用は、既に食品や繊維など身近なものに使われております。宇宙ビジネスは、ロケットなどに象徴される重厚長大なものに限るものではなく、生活に関するあらゆる分野にまたがります。宇宙通信技術一つをとってみましても、車載ナビシステムなどの高度化も考えられます。宇宙技術の応用は、多岐にわたる経済活動の基礎になる要素があり、実用化が期待されます。
 また、観測機器の開発、製作というものづくりのみではなく、デザインやアニメなどソフト分野にも波及するものであります。例えば、JAXAのPR用アニメには、筑波大学芸術学部が協力しております。つまり、岩手も産学官の取り組み方次第で、宇宙ビジネスとでも言う分野に参画する絶好のチャンスととらえることができます。
 御紹介が長くなりましたが、岩手の地域力として大きな存在になるとの思いで申し上げました。
 先日、素案が示された岩手県の新しい地域経営の計画に盛り込まれた岩手ソフトパワー戦略は、グローバル化が進展する中で、地域が持つさまざまな価値を積極的に国内外に発信し、定着させていくことで地域力の向上を図るものと理解しておりますが、国立天文台VERA観測所こそは、この戦略を展開する上でふさわしい拠点であると存じます。県は、今後、地域経営を進めていく上で、観測所について基本的にどのような位置づけで認識されておられるのか伺います。
 そして、同観測所は、産業振興のみならず、学術的な役割や教育の土壌など、本県の地域力向上のため幅広い分野で重要な役割を果たしていくものと考えます。観測所との連携共同を通じて人づくりやビジネス展開などを図り、岩手を宇宙関連施設や技術拠点としてグローバルな戦略を展開するなど、そのあり方や協力を積極的に考え、推進することは、岩手の自立の可能性を広げるものとして、今後、地域経営を進める上で必要な視点であると考えますが、いかがでしょうか、知事の御所見をお伺いいたします。
 さて、国立天文台水沢VERA観測所はかつて緯度観測所として知られ、世界の中央局として存在するばかりではなく、多くの世界的な天文学者を輩出してまいりました。初代所長の木村博士はZ項の発見で有名であり、第1回文化勲章受章者であります。大正年代建築の旧緯度観測所本館は、一時取り壊しの運命にありましたが、建物としての価値や天文学を推進してきた歴史的な意義を惜しんだ市民らが昨年保存運動を展開し、本年4月、国立天文台より奥州市が譲り受け、現地に当時の姿を再現し、活用することになりました。来年4月、奥州宇宙遊学館の名称のもと開館を目指しており、現在、順調に工事が進んでおります。歴史的な建造物それ自体の価値はもちろんですが、天文などを先導してきた貴重な歴史的遺産をもとにして、学習、展示観覧、調査研究、文化醸成などの多種多様な方面を見据えた活用が図られます。かつて宮澤賢治が緯度観測所を訪れ、その雰囲気に触れ、さまざまな作品に昇華させた経緯もあり、科学から文学まで、旧緯度観測所奥州宇宙遊学館は、岩手にとってもその活用形態は多面的であり、観光的にも拡大的要素を多分に含んでおります。
 コア施設としての奥州宇宙遊学館は、国立天文台水沢の敷地内にある関係からも世界的なネットワーク拠点になり得るものと考えますが、知事として今後の施策展開のお考えをお伺いいたします。また、教育上の観点からも、教育長から具体のお話などがあればお伺いいたします。
 以上、登壇しての質問を終わりますが、なお答弁次第では再質問させていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇議長(渡辺幸貫君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 亀卦川富夫議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、参議院議員選挙における民主党の公約についての岩手県知事としての受けとめ方についてでありますが、民主党は、所得、雇用、教育、医療、介護、そして地方と中央との格差など、日本じゅうでさまざまな格差が拡大していることを踏まえ、国民生活や地方を立て直すための政策をマニフェストとして掲げたと承知しております。特に、年金改革や子育て支援、そして中小農家も活躍できる農業政策等が速やかに実現されるのであれば、本県においても希望を持って県内で仕事や生活にいそしむことができる環境が整い、人口流出にも歯どめがかかるという効果も期待されると考えるところであります。また、国政レベルにおいて具現化されていくことによって、県政においても呼応しながら、すべての県民が希望を持てるような政策を展開していけると考えているところであります。
 次に、岩手型の農業政策及び民主党が掲げる戸別所得補償と品目横断的経営安定対策との整合性についてでありますが、本県農業は、地域経済や社会を支える重要な基盤であり、将来にわたって農業・農村を活力あるものとしていくためには、基幹となる担い手と小規模・兼業農家が共存する結いの精神に支えられた岩手型の集落営農を推進していくことが重要と考えております。このため、国の品目横断的経営安定対策等を活用し、集落営農組織を育成するとともに、小規模・兼業農家や高齢者による園芸作目の導入、農産加工部門への進出などの取り組みを積極的に支援しているところであります。
 私は、民主党が提案している戸別所得補償制度は、本県が目指す岩手型の集落営農の実現に極めて有効なものと考えており、今後、国会の場において十分な議論が尽くされ、小規模・兼業農家も希望を持って農業に取り組むことができるよう、新たな制度として実現することを期待しているところであります。
 次に、農業以外の岩手県政に反映する政策についてでありますが、民主党がマニフェストに掲げている雇用の確保や格差の是正、さらには医師確保など、地方が抱える最重要課題については、その解決に向け早急に取り組む必要があると考えており、これらについても具現化に向け国政レベルでの議論が深められるものと考えられますが、本県では、現在、策定を進めている新しい地域経営の計画において、県民の所得と雇用、安心な暮らしを守るを重点目標として掲げ、県民所得の向上や雇用環境の改善、地域医療の確保などに重点的、優先的に取り組むこととしているところでございます。
 次に、新しい地域経営の計画とマニフェストとの関係についてでありますが、選挙における政策実現に向けた有権者との約束というマニフェストの性格を踏まえ、今般の新しい地域経営の計画については、私がマニフェストに掲げた基本的な考え方や施策を織り込んで策定したところでございます。
 まず、本県が現在直面している危機を希望に変えていくため、私がマニフェストで掲げました新地域主義戦略とソフトパワー戦略の2大戦略を総論部分で位置づけるとともに、各論に当たる政策編では、人づくりや産業の育成など、マニフェストで掲げた政策の6本の柱で施策の体系を構築したところでございます。また、優先的、重点的に推進する31の政策項目の施策においては、可能な限りマニフェストを織り込むとともに、マニフェストに掲げられていないさまざまな課題についても取り込んだ上で、総合的な見地から策定したものでございます。
 次に、社会経済情勢の変化や指標の乖離等の示し方についてでありますが、グローバル化の進展など社会経済情勢の変化により、総合計画策定時に推計した人口や県民所得などは現状と乖離が生じていると認識しております。今般公表した新しい地域経営の計画においては、拡大する人口の社会減や回復がおくれている県民所得などを直面する危機と認識した上で、今後4年間に重点的、優先的に取り組む31の政策項目を定めたところであり、この政策項目ごとに、目指す姿やそれをあらわす指標、目指す姿を実現するための主な取り組み内容や官民の役割分担などをわかりやすく盛り込んでいるところでございます。また、この計画については、パブリックコメントの実施に加え、旧地方振興局単位の説明会の開催、各種協議会や団体の会合の場を活用した説明など、さまざまな機会をとらえてその周知を図っているところでございます。
 次に、増田寛也前岩手県知事の総務大臣就任についてでありますが、地方行財政に精通した増田前知事が総務大臣に就任されたことは、地方にとって心強く感じているところであります。したがって、今後、地方経済の活性化や中央と地方の地域間格差の是正など、多くの課題解決のために手腕を発揮いただくよう、地方から大きく期待されていると認識しております。
 先般、私は、増田大臣にお会いし、地方交付税が年々減少しているため予算編成に苦慮している点やIGRの指令システム問題などを説明するとともに、地域間格差を是正するため、地方交付税のあるべき機能を正しく発揮するよう、交付税総額の増額や法定率の引き上げ、地方税中心の歳入構造づくりのため、地方消費税の清算基準の見直しや地方法人二税の分割基準の見直しなど、具体的な要望を行ったところであります。今後においても、効果的な地方政策を講じていただけるよう要望していく考えであります。
 次に、道州制の認識についてでありますが、道州制については、国での議論を契機として、全国知事会や経団連を初めとする多くの団体、機関において議論されておりますが、道州制の導入により国民生活が具体的にどのように変わるのかが示されないまま、首長、議員の選出方法や条例制定権など、制度や組織のあり方についての議論が先行していると感じております。
 私は、そういった制度の議論にとらわれることなく、県民の暮らしや仕事をよりよくするために必要な事項や、例えば東北地方であれば広域的な自動車産業の集積といった道州制のメリットとされている広域的な産業政策などについて、関係する県や経済界などとも連携をしながら、行うべきことを着実に進めていく必要があると考えております。また、そうしたことも含めて、道州制におけるメリット、デメリットについて幅広く県民の皆様と情報を共有していきたいと考えております。
 次に、市町村合併についてでありますが、市町村合併にはよい合併と悪い合併があると考えております。よい合併とは、住民が低いコストでよりよい行政サービスを得られ、同時に地域全体が活性化して未来に向かって力強く進んでいけるようになる合併であり、県内の合併市町は、現在、よい合併実現のため、権限移譲などについて積極的な取り組みを行っているものと認識しております。
 現在、岩手県市町村合併推進審議会において、合併の効果や、課題とその対応策について議論されておりますことから、それらの情報を合併していない市町村に対しても提供するとともに、合併協議会に対する人的支援や市町村総合補助金などによる支援を通じて、県としてよい合併を推進してまいりたいと思います。
 次に、広域振興局を取り巻く諸情勢についてでありますが、市町村合併については、市町村合併推進審議会に対し、合併協議会設置についての勧告のあり方などを諮問したところであり、市町村でも議論が活発化してきているものと認識しております。
 県事務の権限移譲については、これまで延べ7、000件に達するなど着実に進められてきており、今後、岩手県分権推進会議で策定を予定している権限移譲推進計画に基づき、さらなる移譲を推進していく考えであります。
 産業振興の面では、昨年度、県北・沿岸圏域における産業振興の基本方向を策定し、市町村、民間事業者等と連携し、具体的な取り組みを進めてきているところであり、さきにお示しした新しい地域経営の計画においても、今後さらに確実な成果をもたらすよう、広域振興圏ごとの産業振興施策を展開してまいります。このような取り組みを積み重ねながら、広域振興局の早期の設置に向けた環境の整備に努めてまいります。
 次に、地方財政についてでありますが、近年、交付税の削減や都市部の税収の増加などにより、地域間の財政力格差が大きく拡大していることから、地方税の偏在是正や地方交付税の総額の確保と財源調整機能の充実強化が緊急の課題であり、具体的な制度改正を早急に実施するよう、全国知事会のみならず、同じ課題を持つ市町村や他県とも連携しながら、国に対して具体的かつ強力な働きかけを繰り返してまいりたいと思います。先月、総務大臣に面会した折にも、頑張る地方応援プログラムによる交付税の別枠加算、臨時財政対策債の財源不足団体のみへの配分、地方消費税、地方法人二税の帰属基準の見直し、法人税を国へ、消費税を地方へといった税源交換などの具体的な制度改正についての意見を申し入れてきたところであります。
 また、財源の確保・創出策については、まず、県内経済を活性化することが最重要課題と考えておりますが、あわせて、資産活用の工夫や受益者負担のあり方の検討などにも鋭意取り組んでまいりたいと思います。
 次に、建設業の振興についての認識と対策についてでありますが、建設業は、地域経済や雇用の安定に大きな影響を持つ重要な産業であり、県民の暮らしや産業活動を支える社会資本の整備、維持管理や災害時における緊急対応の直接の担い手として欠かすことのできない役割を果たしています。しかし、公共事業の減少や民間景気動向等を背景とした建設投資の縮小などにより県内建設業は極めて厳しい経営状況にあるものと考えており、建設業対策は重点的に取り組むべき課題と認識しております。
 県としては、技術と経営にすぐれた企業が成長できる環境の整備に努めるとともに、公共事業に過度に依存しない健全な経営体へと転換が図られるよう、技術力や経営基盤の強化、新分野、新事業への進出など経営革新に向けた建設企業の取り組みを積極的に支援してまいりたいと思います。
 次に、入札制度についてでありますが、去る7月1日から指名競争入札の原則廃止、電子入札の全面導入を柱とする新たな入札制度を導入したところであり、当面は、この制度の定着と円滑な運用を図っていくことが重要と考えております。この改正に当たっても、地域要件の設定など、県内建設業に配慮する仕組みとしているところでありますが、今後とも、県内産業の育成に意を用いつつ、公正性、透明性、競争性の高い入札を行ってまいりたいと思います。
 次に、県産品の輸出目標についてでありますが、中国を初めとする東アジア地域において、本県の農水産物や加工食品についての関心が高まっていることから、この販路拡大に力を入れ、工業製品も含め、東アジア地域への輸出額については、2005年対比で2010年には50%増の600億円を目標として取り組んでいるところであります。
 また、海外事務所の実績については、大連経済事務所、シンガポール事務所では、県内企業へのビジネス展開の支援や県産品の販路開拓支援、ソウル事務所では、観光客の誘致促進や旅行商品の造成促進など、それぞれに本県の認知度向上と経済交流の拡大に努めてきたところでございます。
 なお、本年5月に私が大連市を訪問した際、大連市側からアンテナショップ開設について提案されましたことから、担当部局によるアンテナショップ開設を検討するチームを創設することとしたところでありまして、現在、大連市側の協力を得ながら、アンテナショップの開設に向けて検討を進めております。
 次に、岩手競馬の再建計画についてでありますが、昨年11月に策定した新計画に基づき、新たな赤字を発生させないという厳しい条件のもと、現実的な売り上げ見通しに対応したコスト管理を徹底することで、まずは収支均衡を確保することが必要と考えております。
 他方、厳しさを増す岩手競馬の経営環境を踏まえると、持続可能な岩手競馬のあり方としてどのような事業運営が望ましいのか、中長期的な視点に立った抜本的な改革について検討していくことも必要と考えております。このため、これまで組合議会や構成団体議会等であった提案や意見などを参考としながら、プロジェクトチームで考えられる改革の選択肢の検討とその論点整理を進めることとしたところでございます。このプロジェクトチームの検討結果を踏まえて、専門家の意見も聞きながら、構成団体間でしっかりと議論し、中長期的な視点に立った岩手競馬の抜本的な改革のための戦略を明らかにし、それに基づき、将来にわたって持続可能な岩手競馬が構築できるよう全力で取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、県立胆沢病院の産婦人科機能の充実についてでありますが、県民の安心・安全な暮らしを確保していくためには地域医療の充実が重要であることから、新しい地域経営の計画において、政策の6本の柱の中で、医師の絶対数の確保とともに、限られた医療資源の有効活用を図るため、医療機関の役割分担と連携を進めていくことを掲げているところであります。
 このたびの産婦人科機能の拠点化は、産婦人科医師が激減している中で、全県的な視点で県立病院の産婦人科機能と医師の配置を見直したものであり、現時点では緊急避難的なやむを得ない対応でございます。中長期的には、十分な医師数が確保される場合は、身近なところで出産や手術ができる体制が望ましいのですけれども、その体制については、地域における医療資源の状況を踏まえ、さまざまな御意見を伺いながら検討していく必要があると考えております。産婦人科機能を充実させるためには、関係大学への要請などにより、必要な医師確保に最大限努力するとともに、助産師の活用も重要な視点であり、医師、助産師、妊産婦の間での共通理解が得られた上で、助産師外来や院内助産システムなどの実施についても検討してまいりたいと思います。
 次に、医師の本県への定着に関しまして、医師にとっては、医学、医療の進歩に対応し、質の高い医療が提供できるよう診療能力を高めることが重要でありますことから、医師の地域定着には、こうしたキャリア形成にこたえる医療環境の整備が重要と考えます。このため、本県では二次保健医療圏の中核病院を中心に14の臨床研修病院が推進組織を構築し、一体となって、初期臨床研修の質の向上や、その後の専門医養成につながる魅力あるプログラムづくりなど環境整備に努めてきたところであります。今後は、こうした取り組みをさらに進めるとともに、医師の専門性や総合力の確保、向上など、キャリア形成にこたえるよう、医師を育てる大学の教育機能や、拠点病院のがん、救急といった医療機能の充実など、医師にとって魅力ある医療環境の整備に一層努めてまいりたいと思います。
 次に、国立天文台水沢VERA観測所の位置づけについてでありますが、水沢VERA観測所は、これまで天文学、測地学の国際的学術研究拠点として輝かしい研究成果を上げると同時に、最近では、施設の特別公開や、地元のNPOや宇宙少年団と共催し、普及啓発事業を実施するなど地域との連携を精力的に進めていると認識しております。さらに、このたびの月探査衛星「かぐや」の打ち上げによる観測は、水沢観測所が、月探査の分野においても新たな研究や技術の拠点として国際的にも注目されるものと期待しており、今後、本県有数の知の拠点として、学術や産業分野などで地域との連携や産学官連携がますます重要性を増していくものと考えております。
 次に、水沢観測所との連携、共同についてでありますが、現在、水沢観測所と岩手大学工学部との共同研究により、次期SELENE計画で用いられる月面天測望遠鏡の試作が進められており、これが完成し、実用化されれば、岩手の宇宙開発分野における最先端の研究や技術の成果として、その後の応用技術の展開などにより、本県産業分野への波及も期待されるところであります。また、県としては、INSなどに代表される産学官ネットワークと連携しながら、新たな研究者や県内企業の発掘、育成を推進し、連携の拡大を支援していくとともに、本県科学技術分野の象徴的な研究施設として、旧緯度観測所とともに、学術研究のみならず科学教育の場としても積極的に活用してまいりたいと思います。
 次に、旧緯度観測所を活用した今後の施策展開についてでありますが、旧緯度観測所については、初代所長木村博士の測地座標Z項の発見や、宮澤賢治が銀河鉄道の夜を初めとする数々の名著の構想をはぐくまれた貴重な学術的、歴史的な遺産であり、多面的な活用が期待されると思います。県としては、奥州宇宙遊学館を、青少年への科学技術の普及啓発や科学教育の重要拠点としての活用のほか、歴史的建造物としての価値に加えて、宮澤賢治ゆかりの建物として観光面への活用が期待されることから、観光や教育旅行の資源として、地元奥州市や岩手県観光協会とも連携を図りながら、PRに努めてまいりたいと思います。
 その他のお尋ねにつきましては企画理事及び関係部長から答弁させますので、御了承をお願いいたします。
   〔企画理事酒井俊巳君登壇〕
〇企画理事(酒井俊巳君) 県南広域振興圏の産業振興及び平泉世界遺産に関するお尋ねでございます。
 まず、ものづくり成長産業の集積の現状と地元調達率、雇用の現状と今後の対策についてでございますが、本県がものづくり成長産業の集積に向けた取り組みを強化いたしました平成16年度以降の状況を見ますと、県南広域振興圏におきましては26社、自動車関連では10社でございますが、新規立地し、また、自動車関連では地場企業等における新規取引が36件成立していることなどから、着実に地元調達率は向上しているものと認識いたしております。
 雇用状況については、平成18年度の管内平均有効求人倍率が0.96と大きく改善しているところでありますが、今年度、県南広域のものづくり主要企業を対象とした調査では、170社の回答がございましたが、ここ3年間、平成17年度から平成19年度でございますが、新たに正社員を採用した企業が83%に及ぶ中で、企業においてはむしろ人材不足に危機感を抱いているという結果が示されたところでございます。こうした状況を踏まえまして、今後の人材対策としては、県内外に在住する学生や、本県へのU・Iターン希望者等に対して、県内企業についての理解、興味を深め、そして就職に結びつけるという取り組みが重要だと考えております。したがいまして、北上川流域ものづくりネットワークの事業や、全国第1号認定となりました企業立地促進法に基づく人材育成に関する補助事業等を活用いたしまして、例えば県内ものづくり企業のすぐれた技術や製品の紹介を行いながら、あわせて県内企業と、県内外の学生やU・Iターン希望者との交流の場、機会を設けるなど、新たな取り組みも進めてまいりたいと考えております。
 次に、北上川流域ものづくりネットワークのこれまでの成果と今後の見通しについてでありますが、平成18年5月に設立した本ネットワークでは、小中学生を対象として、企業会員の経営者を講師とした出前授業や、工場を活用した体験授業等を実施しておりまして、今年度は、来年2月までの予定を含め、現時点で約40件となっております。昨年度は8件でございました。また、工業高校生に対しては、企業会員の技術者を講師に、技能検定を受検する生徒を対象とした実技講習を開催しておりますが、いまだ合格発表がされてないものもございますけれども、既に昨年度の合格者を大幅に上回っている状況にあります。平成17年度は5名でございましたが、昨年度は56人、今年度は現時点で127人という数字になっております。本ネットワークは、今年度から経済産業省と文部科学省が共同で実施している国の新規事業立案のモデルになったものでございまして、全国的に高く評価されているものと自負しておりますが、今後とも、本県の経済的自立を支えるものづくり産業の基盤となる人材の育成を図るため、より一層の事業の充実に努めてまいりたいと思っております。
 次に、物流や情報伝達などを支援する社会資本整備についてですが、まず、物流を支援する道路整備については、安全確実な輸送がより低コストで行えるような道路整備を進めるという観点が重要と考えてございます。このため、国が整備しております東北横断自動車道釜石秋田線の遠野-東和間、あるいは国道4号の拡幅、現在進行中の各地区でのバイパス等の整備促進に一層努めてまいります。また、内陸部の工業団地と重要港湾を結ぶ道路の国道283号あるいは397号等の整備も着実に進めてまいりたいと考えております。
 また、情報通信インフラの整備につきましては、昨年度、県南広域振興局が管内のものづくり企業を対象に実施した調査におきましては、151社の回答中、半数近い企業が、回線速度や通信コスト等において不満という回答がございました。県としても、情報通信環境の充実は企業活動にとって大変重要であるという認識に立ちまして、関係市町と連携しながら、また立地企業の意向を踏まえながら、情報通信環境の充実に向け、情報通信事業者等への働きかけなどを強めてまいりたいと考えております。
 次に、産業振興を目的とした組織、ネットワークの設立についてでありますが、県南広域振興局では、設置以来、北上川流域ものづくりネットワークを初め、これまで七つの組織を立ち上げてございます。これらの組織の目的は、県、市町あるいは産業支援機関、大学、そしてより多くの民間事業者等の多様な主体の参画と協働、連携によって、圏域の産業振興を進めるための基盤として構築したものでありますが、設立以来、会員数が増加しているという状況にございまして、着実に存在、役割は周知されているものと認識しておりますが、今後とも、組織の活発な事業展開を通じまして、一層の周知、参画が図られるものと考えております。
 次に、伝統的地場産業の振興についてでありますが、まず、後継者の育成につきましては、県内外の学生等若い世代を対象に、公募によるインターンシップ事業を今年度実施いたしました。定員4人に対しまして8人の申し込みがあるという状況で、盛況でございました。また、各伝統的工芸品の垣根を越えた若手職人グループによる新商品開発の取り組みを支援いたしているところでございます。
 また、販路拡大に関しましては、平泉の世界遺産登録が本県の伝統的工芸品の知名度を上げ、販路拡大につながる絶好のチャンスであるという認識のもとに、関係事業者等からなる、仮称でございますが、いわての漆文化展企画委員会及びワーキンググループを既に立ち上げておりまして、登録後の関連イベントの検討を進めているところでございます。
 それから、販路の海外展開につきましては、今般、大連経済事務所の紹介によりまして、中国国内企業と奥州市内の南部鉄器事業者の間で輸出商談が進められております。こうした取り組みについても積極的に支援してまいりたいと考えております。
 次に、農業及び食産業振興についてでありますが、農畜産物の産地化、ブランド化につきましては、国内外の競争が一層厳しさを増す中で、消費者から強い支持を得て産地化、ブランド化を進めるためには、農畜産物1品1品のブランド化に取り組むこと以上に、地域ぐるみでのブランド化を目指すことが望ましいと考えております。こうした中で、県南広域振興局では、先般、南いわて食産業クラスター形成ネットワークを設立いたしましたが、今後、このネットワークの活動、事業を通じまして、地域の農畜産物も含めて、地域一丸となって相乗効果を生み出しながらブランド化を実現してまいりたいと考えております。
 なお、食産業振興のこれまでの成果といたしましては、イトーヨーカ堂との連携による一関もち弁当の全国発売などがございます。また、先月から食産業プロデューサーを県内民間から参事という形で任用いたしまして、推進体制を強化したところでございまして、このプロデューサーを使って、今後、ネットワークの取り組みを加速化していきたいと考えております。
 最後に、平泉の文化遺産を観光振興などに活用していくに当たっての基本的な考え方でございますが、遺産の活用に当たっては、まずもって、遺産の価値を損なわしめることなく適切な活用を図っていくことが何よりも重要であると考えております。こうした点を踏まえながら、現在、県南広域振興局が事務局を務めてございます岩手県世界遺産保存活用推進協議会活用検討部会において、遺産を活用した地域振興策に係る行動計画の策定を取り進めているところでございます。この計画は、昨年度、局で策定いたしました平泉観光活用アクションプランをベースにいたしまして、これにまちづくりや地場産業の振興等の視点を加えまして、11月をめどに策定いたしたいと考えております。
   〔商工労働観光部長阿部健君登壇〕
〇商工労働観光部長(阿部健君) まず、いわて銀河プラザの実績と今後の展開についてでありますが、平成10年10月に開設いたしましたいわて銀河プラザは、毎年、販売額、購買客を伸ばしておりまして、設置当初、70万円程度と見込んでいた1日の売り上げが130万円を超え、平成18年度の売上額は4億9、000万円に達するなど、順調に県産品の販路拡大に寄与しますとともに、首都圏での情報発信拠点としての役割も十分に果たしているものと考えております。また、来店者の約7割がリピーターであることから、今後におきましては、岩手の新鮮な食品の提供、イベントの充実、商品の入れかえの活発化を図るとともに、出品事業者の皆様に対しまして消費者ニーズの情報還元を充実させるなど、首都圏におけるアンテナショップとしての機能をさらに強化していきたいと考えております。
 なお、いわて銀河プラザにイートインを整備することにつきましては、消防法の関係でスプリンクラー等の消防設備の整備が必要になるなど、現状では困難なことから、イベントコーナーにおけます岩手の食の実演販売等を充実させ、首都圏の消費者に広くPRするとともに、来年の10周年を契機に、より親しまれ、愛される店舗づくりを行ってまいる考えであります。
 次に、自動車関連産業における宮城県との連携についてでありますが、現在、東北地域におきましては、とうほく自動車産業集積連携会議を組織いたしまして、世界への高機能部品、高度部材の供給拠点となることを目指し、愛知県での技術展示商談会を通じた取引拡大支援など、さまざまな取り組みを展開しているところであります。
 また、新たな自動車組み立て工場の立地となれば、今後における大手有力部品メーカーの進出や地場企業の新規参入、取引拡大がより一層見込まれるなど、自動車関連産業の一大集積地域形成に大きな弾みがつくものと考えております。
 このような中におきまして、本県としても、宮城県との連携につきましては、企業間連携はもとより、産学間の連携をもさらに活発化させながら、技術力の向上、取引の拡大、研究開発支援を推し進め、東北の自動車関連産業の拠点化を加速させていきたいと考えております。
 次に、平泉の世界文化遺産登録にかかわる本県の観光振興施策についてでありますが、平泉文化遺産の世界遺産登録は、本県の観光戦略上、最も重要なテーマであり、平泉地域を国際文化都市として岩手の観光ブランドとするとともに、その効果を全県下に波及させることが必要と考えております。こうしたことから、本年5月に、県内の行政や経済団体などを構成員とするいわて世界遺産観光推進会議を立ち上げ、さまざまな取り組みを行っているところでありますが、具体的には、旅行商品の造成につきましては、旅行会社と協議を進めながら、平泉と県内各地を組み合わせた広域的なモデルコースをつくっているほか、情報発信につきましては、この9月に首都圏等の旅行会社に対し、平泉、岩手の積極的なセールス活動を展開したほか、いわて世界遺産情報局のホームページの立ち上げ、また受け入れ態勢につきましては、地域限定通訳案内士の養成や、いわて観光おもてなしマイスターの認定等を通じた人材育成などに取り組んでいるところであります。今後、これらの取り組みをさらに強化しながら、平泉の世界遺産登録の効果を全県に波及させるよう努めてまいりたいと考えております。
   〔県土整備部長西畑雅司君登壇〕
〇県土整備部長(西畑雅司君) 屋外広告物についてでございますが、世界遺産登録予定地域内の違反広告物については、平成15年度に調査を開始し、これまでに498個を確認しており、県はこれらの広告物の設置者に対し、直接または文書による是正の指導を行っています。その結果、現在、406個、81.5%の是正を完了しており、残る92個につきましても、平成20年度末までの是正完了を目指し、指導を強化してまいります。今後とも各種方策による周知啓発等に努めながら、景観を阻害する違反広告物の発生の防止にも取り組んでまいります。
 次に、地域の景観保全や景観形成に関する課題と今後の取り組み方でございますが、世界遺産にふさわしい景観の保全と形成を図るためには、そこに暮らす地域の方々の理解と協力が不可欠であり、そのための合意形成に努めることが、これからの重要な課題だと考えております。平泉周辺地域におきましては、平成17年以降、対象地域である平泉町、奥州市、一関市が独自の条例や計画を策定し、世界遺産登録を目指して主体的に取り組みを推進しています。それぞれの自治体では、条例等の策定に当たっては、地域の景観のあるべき姿を住民等とともに考える機会を設けるなど、地域住民の理解をもとにした協働による継続的なまちづくり活動となることを目指して取り組んでおります。県は、これらの取り組みが円滑に促進されるよう、住民等への景観形成に係る啓発事業等を実施するとともに、技術的な助言や広域の調整を担いながら、これからも世界遺産にふさわしい景観形成の実現のため支援してまいりたいと考えております。
   〔農林水産部長高前田寿幸君登壇〕
〇農林水産部長(高前田寿幸君) 岩手競馬の今後の見通しについてでございますが、今年度の2回のコスト削減により1日当たりの開催経費が圧縮されたことから、当初、採算割れが見込まれ、開催を予定していなかった11月以降の月曜日の開催や特別開催も採算が確保できる見通しとなりました。このため、11月の月曜日の追加開催のほか、3月下旬に特別競馬を5日間開催することとしているところでございます。また、これに加えまして、馬インフルエンザの沈静化により、9月18日から全国的な交流レースが開催可能となりましたことから、9月30日には、地方競馬所属の有力馬が参加するオーロカップを開催したほか、10月8日には、中央競馬からの有力馬、人気騎手が参加する南部杯、11月5日には、全国の女性騎手が競うレディースジョッキーシリーズ、さらに11月12日には、民間企業がスポンサーとなり、他の地方競馬からも有力馬の参加が見込まれるオッズパークグランプリなどを開催する予定でございまして、これら開催日数の増加や全国的な交流レースの開催により売り上げ拡大を図り、収支均衡に向けて最善の努力を尽くしてまいりたいと考えております。
   〔保健福祉部長赤羽卓朗君登壇〕
〇保健福祉部長(赤羽卓朗君) 医療連携体制の検討状況についてでございますが、岩手県医療審議会計画部会において検討を行っておりますほか、外部の専門家によりますがんや救急医療などの疾病、事業ごとの検討組織を設置するなどいたしまして、検討を進めているところでございます。
 胆江圏域の関係でございますけれども、胆江圏域におきましては、県立胆沢病院を中心に大腿骨頸部骨折等に係る連携体制づくりなど、関係者の協力により医療連携体制構築の取り組みが進められてきているものと認識しております。今後、胆江保健医療圏を初め九つの保健医療圏におきまして、保健所が中心となり、保健、医療、介護等関係者による医療連携体制構築の協議の場を設置するなど、具体的な取り組みを進めていくこととしております。
 なお、こうした保健医療圏内の連携の取り組みに加えまして、高度・特殊医療、周産期医療、救急医療などにつきましては、保健医療圏域をまたいだ医療機能連携も不可欠でございまして、そうした面からの検討も進めてまいりたいと考えております。
 次に、公立病院改革ガイドラインの概要についてでございますが、公立病院改革につきまして、国においては、経営の効率化、再編・ネットワーク化、経営形態の見直しといった視点で改革を推進することとし、年内にガイドラインを示す予定として公立病院改革懇談会を開催し、検討中と伺っております。国は、ガイドラインによる公立病院の再編・ネットワーク化と医療計画との整合性を図ることを求めてきているところでございまして、ガイドラインの詳細につきましては今後明らかになってまいりますことから、そこに示される方向を勘案しながら、新しい医療計画におきまして医療連携体制のあり方を検討してまいりたいと考えております。
 次に、医師不足に歯どめをかけるための医師数の増加策についてでございますが、県では、医師確保対策アクションプランに基づきまして、医師養成のための奨学金制度、高校生を対象とした医学部進学セミナーの開催、臨床研修体制の充実などにより、医学部進学者数の増、卒業生の地元定着などに取り組んできておりますほか、医師確保対策室によります即戦力医師の確保などの取り組みを進めてきたところでございます。今後は、こうした取り組みをさらに進めるとともに、岩手医科大学医学部の定員増に対応した奨学金制度の充実を図るほか、国に対しては、地域の実情を踏まえた実効性のある医師確保策を講ずるよう、引き続き求めてまいりたいと考えております。
   〔教育長相澤徹君登壇〕
〇教育長(相澤徹君) まず、平泉の世界遺産登録の関連でございますけれども、イコモスの現地調査を受けての感想、今後の課題、追加情報等についてであります。イコモスの現地調査につきましては、県といたしましては、調査員の方に一定の理解をしていただけたものと認識しております。また、それを調査員からイコモス本部に対して十分に伝えていただけるものと期待をしております。今後におきましては、イコモス本部の審議に向けて十分に対応していかなければならないと考えており、その一環として、現地調査の際に調査員に提示した資料に、質問のあった数項目を加えて、9月中旬に調査員あてに追加情報として提出したところであります。今後のスケジュールといたしましては、調査員の評価レポートをもとにイコモス本部において検討が行われ、来年の5月ごろにはユネスコの世界遺産委員会に対する勧告がなされる見込みであり、その勧告をもとに、7月にはカナダで開催される委員会において登録の可否が審議される予定となっております。
 次に、平泉の価値の普及啓発についてであります。平泉の価値を一般の方々に広く理解してもらうためには、これまで実施してきたシンポジウムや巡回展の開催などによる普及啓発事業の内容を拡充するとともに、平泉を訪れた方々に対して、映像や展示などを十分に活用しながら、平泉の普遍的な価値をしっかりと伝えていくための総合的なガイダンス機能の拡充を検討していきたいと考えております。また、これまで小・中学生に対しては、わかりやすいガイドブックを作成し、県内の小学校5・6年生全員に配付するなどの取り組みを行ってきたところであります。今後は、県内のすべての小中学校の授業において重点的に平泉の文化遺産の価値を取り上げること、さらには、平泉を現地で学ぶことについて、平成20年度のそれぞれの市町村の教育委員会の方針の柱としていただくように県教育委員会として要請を行ってまいりたいと考えています。また、高等学校等の県立学校におきましても同様の取り組みを行うよう、県立学校長会議等において取り上げてまいりたいと考えております。
 次に、景観でございますけれども、鉄塔を含む景観の問題につきましては、地域の方々の生活と世界遺産の価値との調和を図るという景観問題の本質を踏まえて、イコモスの現地調査におきましては、当面は植栽等によって景観の保全に努めることを説明し、また、将来的には、必要がある場合には、移設、埋設等の方法についても検討していく、こういう趣旨の説明を調査員の方に行ったところでありまして、理解を得られたものと考えております。
 次に、国立天文台の旧緯度観測所の奥州宇宙遊学館の利用についてでありますが、この遊学館でのさまざまな体験活動は、子供たちが豊かな想像力や観察力を身につけるとともに、いわゆる理科離れを防ぐ意味でも有意義であると考えております。Z項を発見した初代所長の木村栄博士を初め、岩手の偉大な先人や研究内容について学ぶことは、子供たちに故郷岩手への自信と誇りを与えるものと考えております。
 このような観点から、県教育委員会としても、まずもって奥州市の枠組みを超え、全県的な視点で県内の小・中・高等学校の理科の教員や青少年教育に取り組んでいる社会教育関係者に対して遊学館の存在を十分に伝えていくことが大切と考えております。具体的には、遊学館を会場にした各種研修会の開催を進めてまいります。また、それをベースにして、こういった先生方のリーダーシップのもとで、遊学館における県内の子供たちの体験活動が活発に行われるように取り組んでまいりたいと考えております。
   〔警察本部長三枝守君登壇〕
〇警察本部長(三枝守君) 岩手県警察総合治安対策プログラムの推進状況についてお答えいたします。
 本プログラムの現在の推進状況でございますが、岩手県警察総合治安対策プログラムというのは7本の柱からでき上がっておりまして、そのうちの一つの柱である安全・安心まちづくりの推進につきましては、地図による犯罪情報提供システム、いわゆる安全・安心マップの運用を開始した。また、もう一つの柱であります少年非行防止対策推進につきましては、スクールサポーター制度の導入、少年の再犯防止対策の推進等の施策を推進しており、このように、残りの各柱ごとに定められた施策を推進しているところでございます。その結果、刑法犯の認知件数は、8月末現在で前年に比べ8.7%の減少、少年の再犯者率は24.3%と、過去5年間で最も少なくなっているなど、一定の成果があらわれ始めていると考えております。他方で、侵入盗、自転車盗などの無施錠被害率が依然として高いこと、交通事故死者数が増加し、昨年を大きく上回るおそれがあることなど、引き続きこれらに対する施策を積極的に推進する必要があると考えております。
 本プログラムは、平成22年までに、刑法犯の発生を治安がよかったと実感される昭和50年代初頭の8、000件台の水準まで抑止すること、また、年間交通死亡者数を83人以下にすることなどを目標として推進することとしており、毎年、各施策の検証と問題点の抽出及び施策の見直しを行うことで本プログラムの着実な推進を図ってまいりたいと考えております。
 続きまして、全国的な社会情勢と岩手県の実情を重ねてみての感想というお尋ねでございまして、私はそれほど高尚な知識もございませんので感じたままを申し上げますが、核家族化の進展に伴って、個人の価値観の変化やライフスタイルの多様化が進み、首都圏等では地域コミュニティが希薄化していると言われていると思います。ただ、本県では、そういう意味で、地域がお互いに助け合うという結いの精神に根差した地域住民の連携がまだまだ残っているといいますか、強いと感じております。
 ただ、そうは言いましても、本県におきまして、昨年、ことしと凶悪な殺人事件が相次いで発生したほか、高校生による実母殺害事件や親子無理心中といった社会を震撼させる事件も発生しておりますし、また、自殺統計によると、県内の自殺者がここ数年、毎年500人にも上り、その動機として、健康や経済生活あるいは家庭問題といったものが上位を占めているという実態にもございます。こうした事件や自殺の背景にはさまざまな事情が複合的に絡み合っている場合が多いものですから、それに伴って、その背景とか原因を分析して申し上げるというのは甚だ困難ではないかと考えております。
 いずれにいたしましても、県警察といたしましては、このような現状を踏まえ、関係機関・団体を初め、地域の皆様と協働による総合的な治安対策を引き続き推進し、安全で安心して暮らせる地域社会の実現に努めてまいる所存でございます。
 以上でございます。
〇14番(亀卦川富夫君) 一定の御答弁、本当にありがとうございました。
 何点か再質問させていただきます。
 まず一つは、市町村合併についてでありますが、知事は、よい合併、悪い合併というような判断ですが、この辺の判断基準、これはいろいろ見方があると思いますが、この点、もう少し、よい市町村合併、悪い合併、岩手の場合どうなんだろうと、この辺をお答え願いたいと思います。
 四つの圏域、新しい地域経営計画ではしっかりしたものにしていく、こういうことでありますが、質問でも申し上げましたとおり、県南広域圏が先陣を切ってスタートしたというのは、市町村合併が相当進んだ地域なるがゆえに広域圏の確立ということで進めたと、このように私は認識しております。そこで、これからあと三つの圏域をしっかりしたものにしていくために、市町村合併ということをどういうふうにとらえて進めるのか。よい合併、悪い合併というような表現を使ってどうなのかわかりませんが、この辺のお考えをまずお聞きしたいと思います。
 それから、地方自立のための財源確保と宮城県との連携の中で、宮城県の村井知事が、企業立地奨励金に充てることを目的として、法人事業税の地方課税―みやぎ発展税というものを今、設置しようと図っているようでありますが、これは達増知事としてはどのように受けとめておられるのか、この辺の受けとめ方についてお尋ねしたいと思います。
 それから、岩手競馬でありますが、本年度中一生懸命やるという部分は部長からお示し願ったわけで、これは成果を期待するだけでありますが、いずれ基本的に岩手競馬の経営体をどういうふうに持っていくか。民営化といいますか、民間委託もその一つでありますが、私は、そういう重要なものを検討するため、事務レベルのプロジェクトチームをつくったわけですが、御答弁にもありましたが、さまざまな方面からいろいろ建設的な意見、そういった検討に値するものが出てくるのだろうと思います。こういったものをぜひ最大限発揮できるような、組織横断的な取り組み方、これを、このプロジェクトチーム、ぜひ知事としては厳命してしっかりやるように、まさに危機を希望に変える、こういうことで取り組んでいただきたいと思いますが、その辺の決意をお聞きしておきたいと思います。
 それから、平泉の歴史、文化を伝えていくといいますか、小・中学生等の理解を求めるということでありますが、私は、平泉の大切さということのみでなくて、平泉の文化が花咲いた歴史といいますか、過程の中で、例えば坂上田村麻呂とアテルイの確執といいますか、戦いから始まった中央と蝦夷との葛藤といいますか、あるいは前九年合戦、後三年合戦など、長い骨肉の争いなどもあったわけであります。そういったものを、藤原の初代清衡が仏教でこの地を浄化したい、戦いの犠牲になった魂を安らぎの浄土に導きたい、こういう発願から中尊寺ができたと思います。そういう意味で、長い歴史の中で、それらが繰り広げられた奥六郡、平泉から七時雨山、これは沼宮内北部ですか、そういったところに至る北上川沿川といいますか、そういうふうな、岩手県、こういったものの地域というものをそういった観点からしっかりこれは取り上げていく必要があるのではないか。平泉の中尊寺あるいは毛越寺、こういった仏教文化は、蝦夷の地に安倍、清原氏がはぐくんだ信仰の上にあった、こういうふうにも言えると思います。これらの遺産を今後どのように、平泉のみではなくて、岩手のこういった文化遺産、どのような位置づけをしてやっていくのかお伺いしたい、このように思います。
 それから、医師不足でございますが、これには、研修医の確保が今大切な、制度上どうしても大切な視点だろうと思います。
 そこで、岩手の医療の中核をなす岩手医大における定員数、これは認められてやっていくわけですが、研修医の充足が岩手医大の場合、現状不足しているのではないか。不足というのは、定員に足りない、かなり低い員数というふうに私は認識しておりますが、県当局としては、この辺どういうふうに把握して、大学のことですから大学というのみでなく、岩手の医療の中核でありますから、県としても十分この辺を認識されて対策等を講ずるべきだろう、こういうふうに思います。この辺についての御見解をお示しください。
〇知事(達増拓也君) お答え申し上げます。
 まず、よい合併と悪い合併についてでありますけれども、よい合併は、先ほど、住民が低いコストでよりよい行政サービスを得られ、同時に地域全体が活性化して未来に向かって力強く進んでいけるようになる合併と申し上げました。悪い合併はその逆でありまして、コスト削減がなされず、行政サービスも悪化し、地域の中で繁栄できないところも出てくるといったような、結果として住民が合併しなければよかったと不満を持つような合併であります。こうした合併は、今現在、岩手県市町村合併推進審議会において合併の効果等について議論をいただくところでありますけれども、基本的には、よい合併が今、岩手県内で進んでいるのではないかというふうに思っております。なお、この点については、審議会の議論もまって検討してまいりたいと思います。
 みやぎ発展税と宮城県の企業立地奨励金についてでありますけれども、まだ宮城県においてもさまざまな議論が行われている段階と承知しておりまして、宮城県における議論の推移を見守りたいと考えておりますが、なお岩手県においては、昨年度制定した特定区域における産業の活性化に関する条例において、既に地方税の減免、大型補助などを内容とした総合的な優遇制度を準備したところであり、その内容は全国でもトップクラスのものと認識しております。
 岩手競馬の再建計画に関連し、プロジェクトチームのあり方についてでありますが、今般、構成団体が設立したプロジェクトチームは、各構成団体の競馬担当はもとより、財務担当や、県であれば市町村行財政担当も加えた総合的、機動的な検討組織として設置しております。平成19年度中にプロジェクトチームとしての改革の方向性を取りまとめることとしておりますが、状況の変化等があれば、その状況に応じて弾力的に作業を進めていくことも想定しておりまして、持続可能な岩手競馬が構築できるよう最善を尽くしてまいりたいと考えております。
 岩手医科大学における研修医の確保についてでありますが、岩手医科大学附属病院の臨床研修医については定員に比べて採用数が少ない状況にありますが、岩手医科大学の卒業者が他の医療機関で2年間の初期臨床研修を終えた後、社会人大学院や後期研修として岩手医科大学に戻る例は、東北各県の大学医学部と比較しても多数に上っております。また、岩手医科大学は、文部科学省が推進する地域医療等社会ニーズに対応した質の高い医療人養成推進プログラムにおいて、平成17年度から僻地を含む地域医療を担う医療人養成をテーマとしたプログラムを実施しており、こうした取り組みは、今後、岩手県の地域医療を担う人材を確保する上で効果が期待されるものと考えております。
 県としては、これまでも、岩手医科大学を含めた県内14の臨床研修病院が一体となって進めている臨床研修医の確保に向けた取り組みを支援してきたところでありまして、今後もこうした取り組みとともに、岩手医大生を含めた医学生に対し、県内の臨床研修病院の特徴的な取り組みを積極的にPRして、より多くの臨床研修医の確保につなげてまいりたいと思います。
 平泉の歴史、文化とその周りの地域との関係については教育長から答弁させたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
〇教育長(相澤徹君) 平泉の歴史、文化についてお答え申し上げたいと思います。
 御指摘がありましたとおり、平泉文化は、かつての蝦夷文化がベースにありまして、その後、安倍氏、清原氏による仏教信仰がその上につながってきた、こういうことであります。そういうことでありますので、県内に点在している平安時代の仏像あるいは金ケ崎町の鳥海柵跡など、安倍氏に関連する遺跡などについて認識を深めていくことが大切と考えています。
 したがいまして、こういう史跡等につきまして、平泉との関連を明確にしていく作業をこれから進めてまいりたいと考えております。そういう史跡の価値や意義を明確にしていく中で、県民の皆さんが、平泉の文化をより広い歴史的な視野を持って理解できる、そういうふうなベースをつくってまいりたいと考えております。また、そういう取り組みの中で、多くの方々に史跡を訪れていただく、そういう取り組みについても行ってまいりたい、このように考えております。
〇14番(亀卦川富夫君) 1点お伺いして終わりたいと思いますが、市町村合併についてであります。
 市町村合併につきましては、市町村合併して間もないということでありますので、なかなか評価がしにくい部分もあろうかと思います。よければいいんですが、どうしても先ほどの半面の部分というのがいろいろやっぱり論じられるところだろうと思います。その辺を丁寧にすくい上げて、しっかり県としても支援できるところはして、本当によかった市町村合併ということに持っていっていただきたい、一つはそう思います。
 それから、私が気になるのは、四つの圏域、非常に私は、これはいいことだと思うんです、政策として。ただ、その前提に、四つの圏域、先に出発した県南広域圏の場合は、市町村合併が進んだ地域ということで、権限移譲ですとか、そういうものがやりやすいだろう、こういうことから枠組みとしてできた、こういうふうに私は理解しております。そういう進め方について、これから四つの圏域をしっかりしたものにしていくために、どうしても市町村合併というのは今後大切なことではないか、こういう観点をどのようにとらえておられるのかお聞きしたい、こういうことで質問した次第でございます。
 よろしくお願いします。
〇知事(達増拓也君) 市町村合併は、住民が自分たちの力で、住民自治として、そして、団体自治を通じて自己実現を達成していくに当たって、非常に有力な手段と考えております。したがいまして、よい合併、悪い合併という言い方をしましたけれども、合併するならよい合併をすべきであり、悪い合併はすべきでないといいますか、合併議論がなされるときに、えてして合併に反対する方々は、悪い合併を殊さらに取り出して、合併はおよそ全部悪いものだというような決めつけをすることがままあるがゆえに議論がややこしくなっているのではないかということから、よい合併、悪い合併という整理の仕方をして、住民のために住民が決断して合併を選択していくのであれば、県としてはその合併がよい合併になっていくよう全力で支援したいというふうに考えております。
 なお、広域圏の形成については、それはそれで、広域を新しい地域振興のフロンティアとしてその地域の住民で活用していこうという発想でありますので、その際に活力あるよい合併が進んでいることは非常に有力な材料になるとは思いますけれども、ほかにもいろいろな地域振興の手段、地域振興のためのステップはあり得ると思っております。
 以上でございます。
〇議長(渡辺幸貫君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後5時59分 散会

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