平成22年12月定例会 第19回岩手県議会定例会会議録

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〇21番(三浦陽子君) 民主党・ゆうあいクラブの三浦陽子でございます。
 このたび、会派の皆様の御配慮によりまして、任期最後、今期5回目の登壇の機会をいただきましたことに、心より感謝申し上げます。
 昨年の夏の解散総選挙におきまして、私たちはまさに政権交代という歴史的瞬間を迎えることになり、9月定例会の一般質問における私の質問に対し、達増知事は、政権交代の意義と新政権への期待、そして地域政策への協力の意思を述べられ、また、2月定例会での平成22年度当初予算編成の審議に当たり、予算特別委員会総括質疑の中で、達増知事から、希望あふれる岩手の未来に向けて確かな一歩を踏み出すことができる予算を編成できたと考えているという、明るい御答弁をいただきました。
 国の地方財政対策については、小泉改革で疲弊した地方財政に配慮し、地方交付税の復元、増額の要請にこたえたものと知事は高く評価され、また、経済、雇用分野に前年比194億円増、保健福祉、医療分野に前年比127億円増の予算編成が可能になったと、総務部長から御答弁をいただきました。さらに、県債残高を360億円減少させるなど、財政の健全化に向けた取り組みを進める一方、公債費の増加が危惧される中、県債残高の償還が財政運営の大きな課題となることから、県債管理基金の新規積み立てを行い、公債費の増加に備えるなど、本当に大変な財政運営を強いられている中で、改めて御努力に敬意を表するものでございます。
 さて、達増知事におかれましては、県民の声をしっかり反映して立てられたいわて県民計画、希望郷いわての実現に向け、いよいよアクションプランの最終段階に入ってまいりました。そこで、達増県政の評価と今後の岩手の展望を含めた質問を進めてまいりたいと存じます。
 分割方式で行いますが、今回、大型スクリーン設置初となりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 地域経済等の現状認識についてお伺いいたします。
 私は、さきの県議会9月定例会におきまして、決算特別委員長を拝命いたしまして、平成21年度一般会計及び特別会計歳入歳出決算並びに平成21年度企業会計決算の審査に当たらせていただきました。
 平成21年度の岩手県の財政は、国の経済危機対策などによって国庫支出金は前年度を上回るなど、地方交付税と臨時財政対策債の合計額が6年ぶりに前年度を上回ったものの、世界的な景気後退の影響を受けて県税が大幅に減少するなど、依然として厳しい運営を迫られております。また、当年度末の普通会計の県債現在高は、前年度末に比べまして264億円余り増加し、1兆5、072億円を超え過去最高額となっており、経常収支比率や公債費比率も前年度を上回り、県財政の硬直化は一層進行しております。先ほど申し上げましたとおり、今後も本県の財政を取り巻く環境は、極めて危機的な状況と言わざるを得ないのであります。
 達増知事のリーダーシップのもと、このような状況の中で、前知事時代からの諸問題に対応し、行財政改革を進めてこられたことに敬意を表するところであります。
 また、決算特別委員会として、歳入確保や徹底した歳出の見直しなど、安定した財政基盤の構築に努めるとともに、希望郷いわての実現に向けた施策の着実な推進を求めているところであります。来年度は我々議会も知事も改選期を迎え、通例であれば、来年度予算編成に当たっては骨格予算の編成ということになろうかと思いますが、引き続き厳しい経済状況のもと、選択と集中の観点から、より一層の重点化、効率化を図りながら、県政の運営がなされなければならないと考えますが、現在の地域経済や県民の生活を取り巻く状況について、知事はどのように認識しておられるのか、お伺いいたします。
   〔21番三浦陽子君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 三浦陽子議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、地域経済等の現状認識についてでありますが、本県の経済は、消費の低迷やデフレの長期化による各産業の収益力の低下、急速な円高に伴う企業の経営環境の悪化、雇用環境の回復のおくれ等が生じており、一部に緩やかな持ち直しの動きも見られますものの、引き続き厳しい状況が続いているものと認識しております。
 また、県民の生活を取り巻く状況については、医師の地域偏在や特定診療科の医師の不足が依然として続いていますほか、人口減少、少子高齢化の一層の進行に伴い、地域活力や集落機能の低下などが懸念されております。
 こうした地域経済や雇用情勢等、県民生活を取り巻く厳しい状況に対応し、さらに県民が希望に向かって行動していくことができるよう、引き続き、いわて県民計画を着実に推進していくことが必要と考えているところであります。
〇21番(三浦陽子君) それでは、次に地域振興についてお伺いいたします。
 まず、地域間格差について。
 本県の平成20年度県民1人当たりの所得は226万円余、前年度に比べ5.5%減少しており、1人当たり国民所得を100としたときの1人当たりの県民所得水準は82.3となっております。
 日本は、OECD諸国の中でも所得の格差が一番少ない国ではありますが、自民党政権下の行財政改革、地方分権改革によりまして、地域間格差がそれまでの1.67倍に上昇したという統計もあります。地域間格差拡大の要因となっているものに高齢化の進みぐあい、グローバリゼーションの進展による労働集約型産業や第1次産業への打撃、そして先ほど申し上げました小泉改革によって財政基盤の弱い地域での相対的財源不足などが挙げられております。
 岩手県内に目を向けますと、四つの広域振興圏では、それぞれ県央広域振興圏で254万円余、前年度4.7%減、県南広域振興圏は218万円余、8.5%減、沿岸広域振興圏は204万円余、3.0%減、県北広域振興圏は185万円余、4.4%減となっており、いわゆるリーマンショックによる世界的な景気の後退を背景に全圏域で減少しておりますが、地域間格差は縮小しております。
 いわて県民計画においては、オンリーワンの地域づくりとして、それぞれの強みを伸ばし弱みを克服しながら、地域振興を図るとして取り組んできているところであり、県内における地域間格差は解消の方向に向かってはいるものの、全体的な経済効果から見て、この取り組みは成功しつつあると言えるのか、知事の御見解をお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 県では、地域特性を最大限発揮できる枠組みであります4広域振興圏が、明確な顔を持った圏域としてさらに進化していくために、いわて県民計画アクションプラン地域編を策定し、圏域の特性を生かした産業の振興が図られるよう、取り組んでまいりました。
 各広域振興局においては、市町村やNPO、民間団体など、あらゆる主体との連携による地域経営を進める中で、局長の裁量で執行できる予算を効果的に活用することによりまして地域資源の発掘と利活用に努めてきており、農商工連携による食産業の振興や広域的なものづくりネットワークの構築、また、着地型観光の推進など、一定の成果も得られているところであります。
 こうした取り組みもあり、統計上、地域間格差の縮小がうかがえますが、地域経済の低迷が続き、地域間格差はいまだに大きいことから、引き続き市町村や地域の皆さんとの連携のもと、地域経営を一層強化し、産業振興を中心とした取り組みを進めてまいります。
〇21番(三浦陽子君) 先ほど述べたように、本県の1人当たり県民所得はまだまだ低いものと言わざるを得ないと思っております。地域格差をさらに解消し発展していくためにも、創意工夫、県政の効率化が不可欠であります。現在、各市町村の独自の取り組みに対して、バックアップする仕組みとして市町村総合補助金と地域振興推進費があり、平成22年度はそれぞれ市町村総合補助金が4億4、000万円、地域振興推進費が4億円と予算が計上されているところでありますが、別々に運用されている二つの制度を統合し、合計8億4、000万円の事業として、より地域のニーズや実情にマッチし、隣接市町村が共同で取り組めるなど制度の枠を広げ、より効率的な運用が可能なものに発展させることが有益と考えますが、知事の御見解をお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 市町村総合補助金は、市町村の自主的な地域づくりを支援するためのものであり、地域振興推進費は、広域振興局が自立した地域を目指し、現場主義に立脚した完結性の高い広域行政を推進するためのものであります。これらの制度は、各広域振興局が圏域の目指す将来像の実現に向けて、いわて県民計画アクションプラン地域編に掲げる施策を推進するための強力なツールとして、それぞれ重要な機能を果たしているものと認識しております。
 御提案のあった両制度の統合については、4広域振興局体制がスタートして、広域振興局長のリーダーシップのもと、県と市町村との連携、協働の推進や、地域経営に資する予算執行が進む中で制度の趣旨が適切であるかどうか、また、その趣旨をより発揮させる上で仕組みが効果的なものであるかどうか、今後、来年度予算編成に向けて検討を進めていきたいと考えております。
〇21番(三浦陽子君) やはり地域の振興策として非常に有益じゃないかと私も思っているところでございますので、引き続き御検討をいただきたいと思います。
 それでは、農業振興についてお伺いいたします。
 我が国の第1次産業は、食料自給率の確保や産業の振興のみならず、国土の保全や地域コミュニティ、伝統文化の伝承などにも大きく貢献しております。特に農業農村整備事業は、農地の確保や農業水利施設の整備を通じて、県土や自然環境の保全など、農業、農村が有する多面的な機能の維持に寄与しております。ところが、私が土地改良区の方々から現地を見せていただき、農家の皆さんからお話を伺うと、水路が壊れて水が来ないとか、大雨のたびにあふれるとか、田んぼはぬかって農作業が大変だというようなお話を伺いました。
 食料供給基地岩手として、今後も農業を守り育てるためには農業基盤の充実が必要と考えますが、知事の御見解をお願いいたします。
〇知事(達増拓也君) 我が国の食料供給基地としての責務を担っている本県におきまして、農業農村整備事業は、農業生産基盤の整備を通じて、効率的、安定的な農業経営を下支えするとともに、水源の涵養など農業、農村が有する多面的機能を維持、増進していくために、極めて重要な役割を果たしています。しかしながら、全国に比べて大幅におくれています水田の整備や老朽化が著しい農業水利施設の改修等、本県の農業生産基盤は喫緊の課題を抱えております。とりわけ、平成23年度からの本格実施が検討されています戸別所得補償制度の実効性を高めるためには、農業用水を安定的に確保しながら、水田の大区画化や農地の利用集積による低コスト生産とともに、暗渠排水などによる水田の汎用化を通じた転作作物の収量、品質の向上が重要と認識しております。
 こうした中、農業農村整備事業をめぐる国の予算は依然として厳しい状況にあり、県内各地域からも、事業工期のおくれや新規採択の見送りなど、心配する声が上がってきております。こうした声を受けまして、先月18日、国に対し、農業農村整備事業の予算確保に向けた緊急要請を行ったところでありまして、今後においても、農業生産基盤の整備がおくれている本県の実情を国にしっかり訴えながら、必要な予算の確保に努め、農業、農村の基盤づくりを着実に推進してまいります。
〇21番(三浦陽子君) 知事みずから国に声を届けていただけたということは大変心強いと思いますし、農家の方々にとっても本当に励みになると思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、稲作農家支援についてお伺いいたします。
 今年度は記録的な猛暑の影響を受け、農産物への影響が心配されたところであります。幸い、岩手県では、他県に比べ、米の生産量や質が比較的良好でありますが、米余りと米価の下落、後継者問題など、農業を取り巻く状況は厳しい状態が続いております。これらにつきましては、きのうまでの一般質問の中でもいろいろと取り上げられたところでございますが、米はやはり我々日本人の主食のみならず、稲作は弥生時代から連綿と続く日本の文化や里山に代表される日本の国土の基幹を形成する作物であります。
 そこで、米農家の実態を県はどのように把握し、どのように支援していかれようとしているのか、再度お伺いいたします。
〇農林水産部長(小田島智弥君) 稲作農家への支援についてでありますが、本県では、販売農家の約8割が米を生産し、その産出額は全体の約4分の1を占めております。また、耕地面積の約2分の1で米が作付され、美しい田園風景を形成するなど、本県の稲作は、農村地域の経済と景観を支える重要な役割を担っております。しかしながら、その生産構造は小規模経営が多く、他の主産県に比べて生産コストが高くなっており、加えて、近年の資材価格の高騰や米価の下落等により、経営状況は非常に厳しい実態にあるというふうに把握しております。
 こうしたことを踏まえ、県では、来年度から本格実施が予定されている戸別所得補償制度の活用とあわせ、経営規模の拡大や低価格資材の利用による生産コストの低減、食味向上技術の開発と普及、業務用や輸出の促進など、新たな販路の開拓などの施策を積極的に展開し、稲作農家の経営安定を支援してまいります。
〇21番(三浦陽子君) 本当に農家の方々の声は悲痛なものを感じておりますし、販路拡大の御努力も必要だというふうに思っておりますので、おいしいお米をぜひとも、全国、全世界に発信していただきたいと強く願うところでございます。
 それでは次に、社会資本整備につきましてお伺いいたします。
 いわて県民計画においても、地域ごとに社会資本を整備するとされているところでありますが、我が岩手県においては、社会資本は十分に整備されたとは言えるものではなく、地域振興を図る上でも、産業を支える社会資本の整備は重要であります。道路、橋梁、下水道の整備、あるいは老朽化対策についての基本的方針についてお伺いいたします。
〇県土整備部長(平井節生君) 社会資本整備についてでございますが、本県におきましては、県民の利便性の向上を図り、安全で安心な暮らしを守るとともに、地域振興を図る上で、重要な役割を果たしている道路や橋梁、下水道などの社会資本に、整備を必要とする箇所が数多く残っていると認識しております。
 また、本県におきましては、高度経済成長期以降に社会資本の整備が急速に進んだことなどから、今後、社会資本の高齢化への対応が極めて重要になると考えております。このため、社会資本の各分野において、施設の長寿命化対策などを定めた維持管理計画の策定を進め、それに基づく適切な維持管理を推進することにより、将来の維持管理、更新費の増加をできるだけ抑える一方、必要な社会資本整備については、地域の実情を踏まえながら、着実に進めてまいりたいと考えております。
〇21番(三浦陽子君) 本当にこの道路、橋梁、下水道、特にも目につく橋梁の、非常に見た目に大変よろしくないといいましょうか、本当にしっかりと塗装もしていかなければならないようなところが目につくことがあります。せっかく岩手は観光立県を掲げて、今、いろんなところから観光客を誘致しようとしているさなかでございますので、やはり観光産業にとっても非常に橋梁、道路、そういうところの社会資本整備をしっかりとやっていかなければならないというふう思っておりますので、今後につきましても、ぜひとも、しっかりと進めていただきたいというふうに思っておるところでございます。
 それでは、がん対策についてお伺いいたします。
 がん検診受診率の現状についてでございますが、岩手県がん対策推進計画は、平成20年度を初年次とし、24年度を目標年次とする5カ年計画でありますが、本年3月には、岩手県がん対策推進計画の推進に向けた各機関の主な役割と具体的取り組みが策定されたところであります。これは、県のがん対策をより一層推進するため、推進計画の主要分野であるたばこ対策、がん検診対策及びがん医療の均てん化について取り組み方針の具体化による推進計画のバージョンアップを図ろうとするものです。
 計画では、がん患者を含めた県民、医療従事者及び行政が一体となった対策を実施することや、重点的に取り組むべき課題を定めた総合的かつ計画的ながん対策を実施していくことを基本方針としております。その上で、具体的な到達目標を掲げ、がん対策の推進をすることとしているものであります。これらの具体的な到達目標の中でも、喫煙率の減少やがん検診受診率は、がんの予防や早期発見を推進していく上で重要なものと考えますが、現在の進捗状況はどのようになっているか、お伺いいたします。
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) 喫煙率とがん検診受診率の現状についてでありますが、まず、喫煙率についてでありますが、県が平成21年度に実施いたしました県民生活習慣実態調査によりますと、成人喫煙率は21.8%となっており、岩手県がん対策推進計画の平成22年度の目標値であります20%未満には到達していないものの、5年前に実施いたしました前回調査と比較しまして、1.7ポイントの減少となっているところであります。これを男女別に見た場合、男性は38.8%で、目標値である40%未満を達成しているものの、女性は7.4%で、目標値の6%未満にはいまだ到達していない状況にあります。また、未成年の喫煙率につきましては1.6%となっており、目標値のゼロには達成していないものの、大幅に減少している状況にございます。
 次に、がん検診の検診率についてでありますが、平成19年度の国民生活基礎調査によりますと、胃がんで33.5%、肺がんで32.1%、大腸がんで29.1%、子宮ガンで22.3%、乳がんで23.7%となっており、県がん対策推進計画の平成24年度の目標値であります50%には、いまだ開きがある状況でございます。
〇21番(三浦陽子君) そこで、がん検診受診率の向上についてお伺いいたします。
 がんの完治には、早期発見が非常に重要であると言われております。早期発見には、定期的な検診が有効であることは論を待ちません。また、がんの予防には原因因子の排除が重要であります。先ほどお示しいただきましたが、たばこは本人の罹患のリスクを増大させるだけではなく、受動喫煙によるリスクも増大させるものであります。県民一人一人が、がん予防や早期発見の行動をとっていただくことが非常に重要であると考えるものであります。
 そのような中で、岩手町において、全国一の受診率を達成したことは大いに評価すべきところであります。同町では、保健師と地域の保健推進員の研修や訪問活動による住民への積極的啓蒙活動により、地域住民の意識の高揚を図り、がん検診率の向上につなげたものであります。このような岩手町方式をモデルとして、地域の実情に合った検診方法を確立するよう、県の指導を徹底することが必要と思いますが、御所見を伺います。
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) がん検診受診率向上に向けました市町村への助言についてでありますが、市町村のがん検診の受診率が低い要因といたしましては、市町村間で、住民への受診の働きかけなど、取り組みに温度差があることなどが考えられますことから、現在、岩手町など受診率の高い市町村とその他の市町村との取り組みにどのような違いがあるかなどについて、調査、分析を行っているところであります。
 今後、その結果を各市町村に提供し、より受診率の高い市町村の取り組みを参考としながら、当該地域の実情に合った取り組みを行えるよう必要な助言をしていきますとともに、今年度、新たに共同して取り組んでいただきます市町村を対象に、検診実施機関や医療関係団体などの協力を得ながら、受診率を向上させていくための検討会を開催することとしております。
〇21番(三浦陽子君) その取り組みをぜひ進めていただきたいと思います。
 また、特に女性特有のがんに対する啓蒙、啓発活動は大変有意義であり、ことしは岩手県のピンクリボンフェスティバルも大変盛り上がったということでございますが、この女性特有のがんの検診率の向上を目指した取り組みについてお伺いいたします。
 そして、さらに、検診して1次検診で見つかり、2次検診に移行するとき、その検診率を向上させることはさらに早期治療に結びつき、患者の負担軽減と医療費削減につながることから、がん対策のかなめになるものと思いますが、あわせて御所見と意気込みについてお伺いいたします。
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) まず、がん検診受診率向上に向けた県の取り組みについてでありますが、がん検診受診率を向上させるために、県民の方々にがんに関する正しい知識の普及と、検診によるがんの早期発見の重要性を積極的に啓発していくことが重要であると考えているところでございます。このため、がんに関する知識の普及や、がん検診の受診を進めるためのテレビコマーシャルの放映を行っておりますほか、賛同企業や関係団体と連携しながら、銀行や保険代理店などの窓口にがん検診受診勧奨のパンフレットを配架いたしますとともに、今お話のございましたピンクリボンフェスティバルやシンポジウムの開催などを行ったところでございます。
 また、企業や商工団体、報道機関等を訪問し、国が推進しておりますがん検診企業アクションへの参加について要請を行い、当該参加企業等におかれましては、その社員や顧客の方へのがん検診受診の働きかけを実施していただいているところでございます。特に、報道機関に対しましては、県民へのがん検診の呼びかけをあわせて行っていただくよう要請しております。今後におきましても、関係団体や賛同企業と連携しながら、啓発活動を積極的に展開していきたいと考えております。
 次に、2次検診の受診率向上に向けた県の取り組みについてでありますが、がんを早期に発見し、進行がんを減少させ、がんの治癒や患者の生活の質の向上を図るためには、1次検診と、いわゆる2次検診であります精密検査の両方の受診率を向上させることが重要であると考えております。
 市町村におけますがん検診の精密検査受診率は、平成19年度におきまして、大腸がん検診が79.3%、胃がんが84.0%、肺がんが81.6%、乳がんが90.9%、子宮がんが82.7%となっておりまして、健康いわて21プランの平成24年度目標値でございます90%に対しましては、乳がん以外に対してはまだ目標値に到達していない状況にございます。
 このため、県といたしましては、関係団体と連携しながら、リーフレットの配架や、ホームページ等を通じまして啓発活動を展開いたしますとともに、実施主体であります市町村が、精密検査が必要な方への個別勧奨を積極的に行っていただくよう要請しておりまして、2年後の目標達成に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
〇21番(三浦陽子君) ありがとうございます。
 女性特有のがん、いわゆる子宮がんとか乳がんの受診率がなかなか上がらないということもありますし、見つかれば早期に治療ができるという、本当に命にかかわる大事なところだと思っております。若い女性が、今、結構発症しているとも聞いておりますので、ぜひとも早急な取り組みを期待するところでございます。
 そこで、がん対策推進条例についてということでお聞きしたいと思っておりますが、2006年9月に島根県がん対策推進条例が制定されてから現在まで、全国で10県3市1町においてがん対策条例が制定されております。現在、県が中心となって数々の施策を遂行することでがん対策を推進しているところでございますが、先ほどの進捗状況にもあるように、必ずしも順調に推移しているとは言いがたいものであります。これまでの県の御努力には大変敬意を表しておりますけれども、行政の力のみでは、やはり県民の皆さんの行動を喚起することは相当の努力を必要とすると思っております。がん対策条例の制定によりまして、議会、行政、患者団体、医療機関、地域住民、メディアの6者が一体となり、連携した対策の推進が可能となり、地域のニーズにあわせ、地域が一体となったがん対策が推進でき、岩手町のような取り組みを一層加速するものと考えますが、予算確保も含めた知事の御見解をお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 他県の状況を見ますと、その趣旨が、県民とともにがん対策を推進していくというものであることから、10県中9県においては、がん患者団体からの要望等を契機に、議員提案により制定されていると伺っております。また、本年1月に開催された県議会の地域医療等対策特別委員会においても、がん対策推進条例制定に関する意見が交わされたと承知しております。
 県といたしましては、がん対策については、まずは、官民一体となって岩手県がん対策推進計画の着実な推進に努めていくことが重要であると考えておりますが、条例を制定した他県においては、がん対策施策の継続、充実が制度的に保障されるとともに、がん患者や家族の思いや願いが施策に反映しやすくなったという声もあると伺っております。
 今後、がん対策を進めるための条例制定のあり方等について、県議会の場を初めさまざまな議論が交わされていくものと考えておりまして、県としても、がん対策施策の推進に関し、当該条例が果たす機能、役割などについて積極的に意見交換させていただきたいと考えております。
 なお、これまでも、県としてはがん対策に必要な予算の措置を講じてきたところでありますが、今後とも、岩手県がん対策推進計画の着実な推進に努めてまいりたいと思います。
〇21番(三浦陽子君) 大変ありがとうございました。
 そこで、いろいろながんがございますけれども、口腔がんというものがございまして、これは最近増加傾向にあると聞いております。そして、我々の生活に不可欠な飲食、呼吸、会話といった機能を大きく損なうものであります。また、岩手県がん対策推進計画においては、がん患者のQOLの維持、向上についても言及されておりますが、口腔がんは、さきの機能を大きく損なうことから、QOLが著しく低下してしまうものであります。
 現在、岩手県歯科医師会も、口腔がんの早期発見を目指して口腔がん検診に取り組み始めておりますが、歯科医師会の取り組みは全国に先駆けた取り組みであります。県としての口腔がんに対する認識と今後の取り組み方についてお伺いいたします。
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) 口腔がんに対する認識と今後の取り組みについてでありますが、口腔がんにつきましては、議員御指摘のとおり、近年増加傾向にありますが、口腔がんの特徴といたしましては、歯周病や口内炎に症状が類似していることから、発見がおくれがちであることが指摘されているところであります。しかしながら、全国的には市町村による口腔がん検診はほとんど実施されていない状況にあり、総じて、住民はもとより市町村関係者においても、口腔がんに関する知識や検診の必要性に関する認識はいまだ低い状況であるものと考えております。
 このような中、本県におきましては、本年度から県歯科医師会が実施しております歯科の治療にあわせて口腔がん検診を行う取り組みは、今年度上半期におきまして、検診の結果、精密検査が必要とされた患者27名のうち、8名からがんが発見されたところであり、口腔がんの早期発見、早期治療に極めて効果的なものであると考えているところであります。
 県といたしましても、市町村や県歯科医師会などとも連携を行いながら、健康教室や市町村の健康まつりなどでのパネル展示なども通じまして、口腔がん予防に関する正しい知識の普及と定期的な検診の必要性について啓発に努めてまいりたいと考えております。
〇21番(三浦陽子君) ありがとうございます。
 続きまして、小児がんにつきましてお伺いいたします。
 小児がんは全国で約1万5、800人、1万人当たり7.1人の子供たちががんと闘っております。子供では、大人のがんに多い胃がんとか肺がんはほとんどなく、白血病、神経芽腫、脳腫瘍、悪性リンパ腫、肝臓、腎臓、骨の悪性腫瘍などがあります。
 子供は、大人と違ってがんに罹患していても症状がわかりにくく、早期発見、診断が難しく、また、進行が極めて早く、手おくれになることがあり、さらに、がん細胞自体の増殖力が強いなどの特徴があると言われております。また、その治療は、化学療法、薬物療法がよく効き、外科的手術療法、放射線療法の組み合わせで完治するようになってきたと聞いております。特に化学療法、薬物療法、放射線療法が大人に比べ子供に効きやすく、これらの治療により、この20年間で小児がんの治療は目覚しい進歩を見せ、約7割の子供が長期生存できるようになりました。とはいっても、小児がんは子供の病死順位第1位を占めており、年間550人の幼い命が失われております。
 そこで、安心して小児がんの治療に臨むための県の取り組みについてお伺いいたします。また、小児がんの治療中、治療後における支援対策についてもお伺いいたします。
 小児がんの治療には、長い入院生活、家族の二重生活、治療中や治療後の学校問題、進学、就職、また、大人になって結婚、出産など社会復帰に当たっての困難がさまざまあります。中にはニートや引きこもりになってしまう場合もあることから、しっかりとした周囲の理解や相談支援が必要と思いますが、その対策はどのようになっているかお伺いいたします。
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) まず、小児がん治療に係る県の取り組みについてでありますが、県では、児童福祉法に基づく小児慢性特定疾患治療研究事業を実施し、患者に対する医療費の負担軽減などを図っておりまして、平成21年度におきましては、県内で小児がん患者150名が対象となっているところであります。
 小児がんにつきましては、小児がん患者の登録実施よる現状把握や、高度専門的治療が行える医療機関や医療従事者の確保などについて課題があると認識しておりまして、これまで、県としましては、今申し上げました医療費の負担軽減のほか、手術や放射線療法、化学療法を組み合わせたいわゆる集学的治療の確立や相談支援センターの体制整備など、診療機能の強化に向けましたがん診療連携拠点病院への支援などの対策に努めてきたところでございます。
 次に、小児がんの治療中及び治療後における支援対策についてでありますが、議員御指摘の対策については、現在、個々の関係機関が個別に対応しているところでありますけれども、後遺症等に対する長期的な治療機会の確保や、治療費の経済的負担、教育・就職問題などの不安に伴う御家族等の精神的ストレスへの相談対応など、中長期的な視点からの相談支援も含め、課題が指摘されているところでございます。したがいまして、今後、県といたしましては、がん検診受診率向上プロジェクト協定を締結しております生命保険会社が実施しておりますゴールドリボン運動とも連携しながら小児がんの理解促進を図るとともに、学校問題や進学、就職への問題を初めといたしますさまざまな課題への対応につきましては、岩手県難病・疾病団体連絡協議会との意見交換も踏まえながら、庁内の関係部局と連携して、どのような対応が可能か検討してまいりたいと考えております。
 なお、今般、国におきましては、小児がんの施策の検討に向けまして、がん対策推進協議会の中に新たに小児がん専門委員会を設置する方向であると伺っておりますので、今後、その検討動向も注視していく必要があるものと考えております。
〇21番(三浦陽子君) ありがとうございます。
 私も、ちょっと子供の経験上、この問題は県でしっかりと取り組んでいただきたい課題だと常日ごろ考えておりましたので、これを契機にしっかりとこの問題について、支援策について取り組んでいただきたいと思っております。
 次に、先進的がん治療につきましてお伺いいたします。
 千葉県の放射線医学総合研究所において重粒子線がん治療の先進的な医療の現状と研究成果を伺ってきましまたが、日本の先進医療技術のすばらしさに大変驚きました。重粒子線がん治療装置は、炭素やアルゴンなどの重い粒子を巨大な加速器で光に近い速度まで加速し、患部に照射するというもので、抵抗性の強いがん、深部のがんに効果が期待できることや、粒子のエネルギーのピークの部分をがんの患部に合わせることにより、正常組織の障害を少なくすることができるなど、治療時の患者の負担や治療後のQOLの飛躍的改善が期待できるもので、先進医療の承認を受けているものであります。放射線医学総合研究所の装置は、病院等を併設し、野球場ほどの敷地に設置された巨大な装置でありましたが、小型化されたものが兵庫県と群馬県に設置され、東北大学でも導入の計画があると聞いているところでございます。
 岩手県では、県の補助を受けて岩手医科大学の内丸キャンパスに放射線治療施設PET・リニアック先端医療センターを建設中であります。がん治療の均てん化とともに先端的がん治療への取り組みは大変重要であると考えますが、本県における取り組みと将来の展望についてお伺いいたします。
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) 本県におけます先進的がん治療の将来展望についてでありますが、現在、県におきましては、がんの高度医療の均てん化を図るため、議員御指摘の岩手医科大学への支援のほか、釜石保健医療圏へのリニアック等の整備も進めているところであります。また、議員御案内の放射線の一種であります粒子線を利用した最先端医療につきましては、現在、国内に7カ所の粒子線治療施設が設置されているところでございますが、設備のみでもおおむね70億円以上の多額の整備費を要すること、患者の治療費が保険適用外であるために自己負担が300万円前後となること、すべてのがんを治療できるわけではないことなどの課題もあるものと認識しております。
 県といたしましては、国などが行っております先進的ながん治療の研究に十分留意しつつ、その有効性や費用対効果等の評価が定まったものにつきましては、県内医療機関にも適切に普及が進むよう、がん診療体制の整備を推進してまいりたいと考えております。
〇21番(三浦陽子君) ただいまはいろいろとがん対策につきましてお伺いしましたけれども、がん治療のみならず、医療の現場で働く職員の勤務状況は大変厳しいもので、医師や看護師などの不足も相まって過酷なものとなっているのは御承知のとおりでございます。特に本県においては医師、看護師の不足は深刻であり、診療科の閉鎖や病床の休止などの事態を招いております。医療にかかわる職員が誇りを持ち、向上心のある質の高い技術で、職場への愛情を持って地域住民への医療に当たることが、地域医療の発展の基礎をなすものであります。
 そこでお伺いいたします。医療の現場におけるワーク・ライフ・バランスに配慮した勤務時間制度等にかかわる取り組みについて、岩手県出身で、あるいは岩手県で医療を学び他県で働く医療関係者にも再び岩手の医療に参加していただく、あるいは子育てのために一度医療の現場を離れた女性医師、看護師の方々にまた医療の現場に戻っていただくため、ワーク・ライフ・バランスに配慮した勤務時間制度や院内保育園の設置、研修制度の充実、認定看護師等の資格取得支援などの施策を講ずる必要があると考えますが、これまでの取り組みの成果と課題、また、それについての知事の御見解をお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 厳しい環境に置かれています本県の医療現場においては、医師や看護師の不足への対応が喫緊の課題となっており、この確保を進める上で、女性の働きやすい職場環境の整備を推進することが極めて重要と認識しております。
 県では、女性医師就業支援事業を実施し、子育て時におけるベビーシッター等の紹介、職場復帰のための研修の実施、院内保育所における延長保育の支援等の取り組みなどを実施してきたところであり、職場復帰研修では、平成19年からこれまでに7人の女性医師が復職しているところであります。
 看護職員については、県看護協会と連携したUターン対策などに取り組んでいるほか、医療機関における多様な勤務形態の導入を促すための先進事例研修や、特にも平成21年度からは看護師の再就業のための臨床実務研修などに取り組み、4人が職場復帰しているところであります。
 さらに、看護師のキャリア形成を促進し、看護ケアの向上を図るため、がん看護など特定の分野において専門性の高い知識や技術を有する認定看護師の育成支援を本年度から開始しているところであります。今後さらに増加が見込まれる女性医師や、女性が多くを占める看護職員に対するきめ細かな就業支援は、地域医療の確保を図る上でますます重要性を増すものと考えており、医療現場における医師、看護師の具体的ニーズをとらえながら、意欲と希望を持って仕事と家庭の両立ができるような働きやすい職場環境の整備を支援していきたいと思います。
〇21番(三浦陽子君) 県の取り組みは本当に一生懸命やっていらっしゃるということは感じているところでございますが、なかなか思うようにそれが成果につながらない部分も非常につらいところでございます。先ほどのがんの対策の中にもありますが、やはりがん専門の医師、そして看護師、スタッフが大変必要だということから、人材育成として非常にここには力をさらに入れていただきたいと思っております。
 では、難病対策についてお伺いいたします。
 私は、北海道難病センターを調査いたしましたところ、療養生活や医療・福祉制度、年金、住宅改造、福祉機器等に関して、関係機関との連携のもと、対応する相談室、車いすのままシャワー浴ができるような浴室を備えたバリアフリーの宿泊施設などの機能を有するなど、その取り組みは大変進んでいるものでありました。本県にも岩手県難病相談・支援センターがありますが、本県における難病の実態とその対策の取り組み状況、現在の課題をお伺いいたします。
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) 本県におけます難病の実態と取り組み状況、課題についてでありますが、本県におけます特定疾患、いわゆる難病として認定されておられます患者数は、平成22年11月末現在で51疾患、約7、900人となっており、これらの方々は、長期にわたりまして専門的な治療が必要でありますことから医療費の負担が大きく、また、日常生活や就労においてさまざまな不安や悩みを抱えているものと認識しております。このため、県におきましては、これらの方々に対しまして、拠点病院や協力病院などを指定し、医療体制を確保しているほか、医療費に対して助成を行っているところであります。
 また、患者の相談に応じるため、県難病相談・支援センターを委託設置し、各種の相談等に対応しますとともに、拠点病院には難病医療専門員を配置し、医療に関する相談に応じておりますほか、各保健所において、医療相談の実施や家族交流会の開催などにより、在宅療養患者の支援に取り組んでいるところでございます。毎年度、患者団体であります県難病・疾病団体連絡協議会と対策に関して意見交換会を実施しておりますが、同協議会からは、相談・支援センターへの相談件数が、就労相談も含め増加していることや、就労に関し、事業所等において難病患者への理解が進んでいないことなどの課題が提起されているところでございます。
 このため、県といたしましては、現在、同センターの体制の充実について検討を行いますとともに、県内商工団体を訪問し、難病について紹介いたしましたリーフレットをもとに要請を行うなど、職場における難病患者への理解醸成に取り組んでいるところでございます。
〇21番(三浦陽子君) 難病の患者さんたちを十分に支援していくためには、それぞれ専門知識を有する方が連携して当たる必要がありますし、難病相談・支援センターの機能の充実に向けて、管内保健所、関係機関との連携強化が必要と考えております。実際、今、難病相談・支援センターには2名の相談員の方が常駐されていると承知しておりますが、人数的にも非常に不足していると思いますし、これだけの7、900人の患者さんに対する相談とか、あと、御家族に対する対応とか、本当に大変だと、私もちょっと間近で見て感じておりますので、ぜひともこの難病相談・支援センターの機能の充実に向けて、さらに検討をしていただきたいと思っております。
 次に、本年度、本県で新生児の先天性代謝異常にかかわるタンデムマス質量分析器が購入され、年度内の実施を目指していることは、異常の早期発見による障がいの予防や突然死の予防にもつながるものと大いに期待されます。異常の早期発見に向けた検査体制と検査内容の拡充の状況について具体的にお伺いいたします。
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) 新生児先天性代謝異常に係る検査体制についてでありますが、県では、放置しますと知的障がいなどの症状を来たす先天性代謝異常の有無を調べるため、生後5日から7日目の新生児の血液検査を、財団法人岩手県予防医学協会に委託し、実施しております。現在の検査において発見できる疾患はフェニルケトン尿症などの6疾患でありますが、検査内容の一層の充実を図りますため、県ではタンデムマススクリーニング法による検査を新たに導入するとこととし、今年度、関係検査機器を購入して同協会に貸与したところであります。これまで、この方法による検査を実施しております都道府県は2府県のみであり、本県の導入は全国で3番目、東北では初となるものでありますが、この新検査機器の導入によりまして、発見できる疾患の種類が19疾患増加して25疾患となり、新たに有機酸代謝異常や脂肪酸代謝異常の早期発見が可能となるものでございます。現在、新たな検査方法の年度内実施に向けまして準備が進められているところでございますが、実施に当たりましては、今年度作成を進めております岩手型母子健康手帳への関係情報の掲載などを通じまして、検査内容の周知を図ってまいりたいと考えております。
〇21番(三浦陽子君) 東北初ということで、非常に先進的な取り組みが行われるということは、やっぱり岩手は人を大事にする、命を大事にするというスタンスでいるのだなと感じました。ぜひとも、こういう取り組みをしっかりと進めて、皆さんに周知徹底を図っていただきたいと思います。
 次に、岩手県障害者プランについてお伺いいたします。
 現在、国において、障がい者福祉政策は、身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者の支援の制度の谷間のない支援制度のあり方について検討を進めていると理解しております。
 本県においても、国で検討を進められている新しい障がい者支援政策に対応するためにも、最終年度を迎える岩手県障害者プランの的確な評価が必要と考えますが、さきの国における検討の中において、それまで取り上げられることの少なかった発達障がいや高次脳機能障がいが新しい制度の対象に含まれることを明確化する方向での議論が進んでいると聞いております。
 そこで、本県における高次脳機能障がい者への対応についてでありますが、障がいの特性として、本人や家族など周囲の人も気づきにくく、実態把握が困難な状況にあると聞いておりますが、平成16年にいわて高次脳機能障がい者・家族を支える会が、障がい者施設及び救護施設を対象にした調査では、県内の高次脳機能障がい者数は275人から480人、これら施設でも19.9%が高次脳機能障がいを知らないと答えています。この数字が、まさにこの障がいの難しさ、認知度の低さをあらわしていると思っております。同じく、岩手県障害者プランでは、課題として、障がいに対する正しい知識の普及、専門的な支援を受けられる拠点施設の設置、地域における相談支援体制の整備、高次脳機能障がい者の社会参加のための当事者、家族、地域住民の活動促進の4項目が挙げられております。
 私も、この障がいに関する周囲の理解や認知度が低いという側面から、岩手県障害者プランに示された課題の指摘は大変重要と考えております。さらに、記憶障がいや注意・集中力の低下、病識の欠如や低下、系統立った思考の障がい、無気力などの多様な症状の残存により、患者の社会参加の道が著しく狭められていることが多く見られる現状であります。そのため、認知機能の改善を目指すリハビリテーションが非常に重要であり、患者の社会参加及び患者本人の障がいの認識にも大きな役割を果たすものと考えます。また、患者の症状の改善、社会参加の促進のためには、相談支援機能とリハビリテーション施設の十分な連携のもとで、地域社会が一体となった取り組みが必要であると考えるところであります。
 本県の専門的な相談支援の拠点機関であるいわてリハビリテーションセンターと、社会復帰のための訓練を行う療育センターとの連携が不可欠であると考えますが、知事の御見解をお聞かせください。
〇知事(達増拓也君) 高次脳機能障がい者に対する支援については、東北では2番目に国の高次脳機能障害支援普及事業を導入しまして、平成19年度よりいわてリハビリテーションセンターに支援拠点機関を設置し、専門的な相談支援、福祉サービス事業所職員など関係者への専門研修、県民への啓発などの取り組みを進めてきたところであります。
 また、高次脳機能障がい者が社会復帰するために必要な生活訓練や職業訓練については、県立療育センター障がい者支援部がその役割を担っています。
 これまで、両機関においては、療育センターでの訓練を行うために必要な患者情報や支援計画を共有するとともに、当該訓練に関して、いわてリハビリテーションセンターから専門スタッフを派遣し、技術支援を行うなどの連携を図っています。
 高次脳機能障がい者が社会復帰を果たしていく上で、専門的な相談支援の拠点機関でありますいわてリハビリテーションセンターと、訓練機関であります療育センターが密接に連携し、切れ目のない支援を提供することが極めて重要でありますことから、県としては、療育センターの整備検討とあわせ、両機関の連携体制の強化に引き続き取り組んでいきたいと考えております。
〇21番(三浦陽子君) 今、知事の御見解をいただきましたけれども、岩手県障害者プランの計画最終年度として、他の障がい者に比べて非常に認知度や理解が低い高次脳機能障がいにつきまして、もう一度、どのように評価され、そして国の障がい者支援策の見直しを踏まえて、次の計画へどのように反映させていくおつもりなのか、知事の御見解をお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 本年度を最終年次とします現行の岩手県障害者プランにおきましては、今、答弁申し上げました支援拠点機関の設置と、高次脳機能障がいを正しく理解するための啓発に重点的に取り組んできたところであります。この結果、平成21年度実態調査では、福祉サービス関係者の高次脳機能障がいの認知度は92.7%で、平成16年度の調査よりも12.6ポイント上昇しております。取り組みの一定の成果は出ているものと認識しております。しかしながら、高次脳機能障がいは一人一人の症状が多様でありますことから、支援方法の確立が難しい障がいであると承知しており、今後ますます、専門的な相談支援体制の充実と、行政、医療、保健福祉などの各関係機関の連携を強化する必要があると考えております。
 現在、国において検討を進めている障がい者制度改革においては、高次脳機能障がいを障がい者支援サービスの対象として明確に位置づける方向で議論が進んでいますが、本県の障害者プランでは、既に支援対象として明記をしているところであります。
 次期プランにおいても、県内どこの地域でも専門的な相談支援が受けられるように、支援拠点機関を中核とする地域の関係機関との相談支援ネットワークの形成や、各地域における日中活動や就労の場の確保、交流会等を通じた家族会活動の育成支援などについて、より一層取り組みを進めることとしております。
〇21番(三浦陽子君) 知事にも、この高次脳機能障がいの中で苦しんでいらっしゃる皆さんの声が届いてきているなというふうに思っておるところでございますが、なかなか表立って見えない、非常にわかりにくい症状が呈されておりますので、家族の方々にとっても、非常に難しい対応を迫られているというふうに聞いております。やはり社会的な支援策、それが非常に重要になってくるというふうに思っておりますし、交通事故などによっても、脳の損傷があって高次脳機能障がいになってしまって、社会復帰をしてもなかなか働き方に問題があるというふうに思われて、また、おうちの中にこもってしまうような、そういう方々もいらっしゃると聞いております。やはり岩手県民みんなで、この高次脳機能障がいについての認識を持つとともに、そういうリハビリテーションセンター、そして療育センターの機能を一体化することによって、この方々の支援につながるものというふうに思います。きのうも小田島峰雄議員からも、総合リハビリテーションセンターの構想について伺ったところ、これからいろいろと検討に入るという前向きなお話を伺ったと思っておりますけれども、非常に今、リハビリテーション自体も機能不全を起こして、人材もなかなか育たなかったりしておりますようですし、また、県立療育センターにおいても、支援体制、医師が不足したりとか、なかなか人的交流ができるようでいてできていない部分もあるように聞いております。総合相談機能とか、その生活訓練のプログラムをしっかりつくるとか、更生援護施設としての機能を十分発揮するというようなきちっとした柱立てがないと、ただ連携するとか一体化すると言っても、その機能が十分に発揮されないというふうに危惧されるところでございますので、ぜひとも、県といたしましても、総合リハビリテーションの構想をしっかりと持って皆さんの心の支えになっていただき、そして、さらに社会復帰に向けて支援をしていただければというふうに思っておりますが、もう一度、恐れ入りますが知事の御所見をお伺いします。
〇知事(達増拓也君) いわてリハビリテーションセンターの機能、評価、課題についてでありますが、いわてリハビリテーションセンターは、リハビリテーション医療そしてリハビリテーションに関する教育、研修及び地域における活動の支援等を行うことによって、県民の保健医療の充実に寄与するために、平成5年に開設されたものであります。以来、本県におけるリハビリテーション医療の中核施設として専門的な医療を提供しますほか、関係施設等の職員への研修の実施、市町村等における地域リハビリテーションへの支援を行ってきたところでありまして、リハビリテーション医療の質の向上に大きな役割を担っているものと考えております。
 一方で、高齢化の進展に伴い増加をする脳卒中患者への対応等、リハビリテーション医療に対するニーズの多様化というものが岩手の場合ございまして、そのニーズの多様化に的確にこたえて、急性期医療機関や障がい者施設等との連携を推進していくことなどが、今、求められているところでございます。また、これらの課題に対応できるような経営基盤を維持していくことも必要であります。
 こうした課題認識のもとで、県といたしましては、医療関係団体からの提言も踏まえまして、今年度内に総合リハビリテーション体制のあり方について検討を進めるための有識者による懇談会を設置しまして、当面の関係機関の連携強化の方法でありますとか、また、中長期的な視点からの関係施設のあり方など、総合的に議論をいただくこととしているところでありまして、そのような形でこの高次脳機能障がいの対策も含めまして、このリハビリテーション体制のあり方について進めてまいりたいと考えております。
〇21番(三浦陽子君) この高次脳機能障がいのみならず、本当に障がいをお持ちの方々、そしてまた御家族の方々の本当に励みになる御答弁だったというふうに思います。やはり、かなり財政的に厳しい本県の状況の中で、本県以外のところでは、結構、この総合リハビリテーションセンターを持っているところが多いというふうに伺っておりますし、私もかがわ総合リハビリテーションセンターにも行ってまいりましたけれども、大変しっかりとした取り組みをされております。財政的な問題を考えればなかなか難しいと思いますけれども、今からそういう構想を持って基金をつくるとか、何かそういう後ろ盾をしっかりと持って、この構想を実現していただけたらというふうに期待いたしまして、この問題につきましては終わります。
 次に、いわて子どもプランにつきまして最後にお伺いいたします。
 次世代育成支援対策推進法によるいわて子どもプランは、本年度より後期計画に入ったところであります。核家族化が進んでいる現状において、妊娠から出産、育児に当たって家族からの支援が受けにくくなっており、不安や疲労の積み重なりによって、親の心身の健康がなかなか保たれない傾向があります。それらが児童虐待などの原因と指摘されているところでありますが、子育て世代に対するきめ細かな指導やケアが必要と考えるものであります。特に、産後うつなどによる児童虐待や無理心中、自殺など最悪な悲劇をもたらすこともあることから、地域の母子保健活動を担う機関が責任を持って取り組むべきと考えますが、具体的な取り組み状況と今後の重点的な取り組み内容をお伺いいたします。
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) 母子保健活動と児童虐待予防についてでありますが、議員御指摘のとおり、核家族化等の進展に伴いまして、妊娠から出産、育児に至るまでの不安や疲労の積み重ねによりまして、母親が心身の健康を保つことができないことなどが児童虐待の一因ともなっていると言われております。
 こうした状況に対応するため、県では、市町村と連携し、妊娠、出産時においては、妊婦健康診査の公費負担回数を14回に拡大し、妊婦が医療機関を受診、相談できる体制を確保いたしましたほか、出産後は生後4カ月までの乳幼児がいるすべての家庭を訪問する、こんにちは赤ちゃん事業を全市町村で実施するなど、母子の心身の健康支援の充実を図っているところでございます。
 特に、産後うつにつきましては、保健所が中心となって体制の整備に取り組んできたところであり、平成21年度からは、県内の全産科医療機関において、産後うつスクリーニングが実施されております。また、このスクリーニングにおきまして、産後うつのリスクが高いと判断された妊産婦に対しましては、周産期医療情報ネットワークシステム、いわゆるいーはとーぶの活用等によりまして、医療機関と市町村とが情報を共有することで、退院後、速やかに市町村保健師が訪問指導をするなど、関係機関が連携して支援を行う体制の構築を図っているところでございます。しかしながら、現時点でのいーはとーぶへの市町村の加入状況が23市町村にとどまっておりますことから、今後は全市町村の加入促進を図るなど、児童虐待防止に向けました母子保健活動の一層の充実に努めてまいりたいと考えております。
〇21番(三浦陽子君) 私も本当に子育てを楽しんで子供とともに親も成長していく、そして社会に送り出してあげるという、普通にできることが今なかなかできにくくなっているこの社会情勢を見ますと、本当に何とか赤ちゃんを産み育てたその喜びを持って、育児そしてまた、母親だけじゃなくみんなで育てていくという、そういう社会的なバックアップというのも大変必要だというふうに思っております。そのために、保健師さんなどの活用は大変大事だというふうに思っておりますが、なかなか保健師さんも今人手不足といいますか、仕事が非常に過酷で、なかなか外に出られないというような状況も聞いておりますので、その辺の人的配置も各市町村にしっかりと取り組みを進めていただけるように、県のほうからも働きかけをしていただきたいというふうに思っております。
 ここまで、知事そして担当部長に御答弁いただきまして大変ありがとうございました。(拍手)
〇議長(佐々木一榮君) 以上をもって三浦陽子さんの一般質問を終わります。
 次に、岩渕誠君。
   〔5番岩渕誠君登壇〕(拍手)

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