平成22年9月定例会 決算特別委員会会議録

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平成22年10月12日(火)
1開会 午前10時3分
1出席委員 別紙出席簿のとおり
1事務局職員
  事務局長    宮   一 夫
  議事調査課
  総括課長    佐 藤   博
  議事管理担当課長 菊 池 達 也
  主任主査    岩 渕 伸 也
  主任主査    藤 原 由喜江
  主査    葛 西   貢
  主査    菅 原 俊 樹
  主査    大 森 健 一
  主査    千 葉 智 貴
1説明員
  知事    達 増 拓 也
  副知事    宮 舘 壽 喜
  副知事    上 野 善 晴
  企画理事    藤 尾 善 一
  会計管理者    古 内 保 之
  秘書広報室長   廣 田   淳
  首席調査監    木 村 卓 也
  秘書課総括課長  杉 村   孝

  総務部長    菅 野 洋 樹
  副部長兼総務室長 小 原 敏 文
  予算調製課
  総括課長    八 矢   拓

  政策地域部長   加 藤 主 税
  副部長兼
  政策推進室長   工 藤 孝 男
  副部長兼
  地域振興室長   佐々木 和 延
  NPO・文化
  国際課総括課長  佐 藤 応 子

  副部長兼
  商工企画室長   高 橋   信

  農林水産企画室
  企画課長    小 岩 一 幸
  林業振興課
  総括課長    堀 江   淳

  県土整備企画室
  企画課長    木 村   稔

  監査委員    伊 藤 孝次郎
  監査委員    工 藤 洋 子
  監査委員事務局長 千 田   永
  監査第一課
  総括課長    奈須川 博 司
  監査第二課
  総括課長    小 原 一 信
〇宮議会事務局長 御承知のとおり、委員長が互選されるまでの間、委員会条例第7条第2項の規定により、年長の委員が委員長の職務を行うこととなっておりますので、年長の委員を御紹介申し上げます。
 出席委員中、菊池勲委員が年長の委員でありますので、御紹介申し上げます。
 菊池勲委員、どうぞ委員長席に御着席を願います。
   〔年長委員菊池勲君委員長席に着く〕
〇菊池勲年長委員 ただいま御紹介されました菊池勲であります。何とぞよろしくお願い申し上げます。
 それでは、ただいまから決算特別委員会を開会し、直ちに本日の会議を開きます。
 これより委員長の互選を行います。委員会条例第7条第2項の規定により、委員長互選の職務を行います。
 お諮りいたします。委員長の互選の方法につきましては、指名推選の方法によりたいと思いますが、これに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇菊池勲年長委員 御異議なしと認めます。よって、互選の方法は指名推選によることに決定いたしました。
お諮りいたします。指名の方法につきましては、当職において指名することにいたしたいと思いますが、これに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇菊池勲年長委員 御異議なしと認めます。よって、当職において指名することに決定いたしました。
 決算特別委員長に三浦陽子さんを指名いたします。
 お諮りいたします。ただいま当職において指名した三浦陽子さんを決算特別委員長の当選人と定めることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇菊池勲年長委員 御異議なしと認めます。よって、ただいま指名いたしました三浦陽子さんが決算特別委員長に当選されました。
 ただいま当選されました三浦陽子さんが委員会室におられますので、本席から当選の告知をいたします。
 三浦委員長、委員長席にお着き願います。
   〔決算特別委員長三浦陽子君委員長席に着く〕
〇三浦陽子委員長 ただいま、委員各位の御推挙によりまして決算特別委員長に御指名いただき、大変光栄に存じているところでございます。
 委員の皆様の特段の御協力によりまして一生懸命責務を全うしたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)
 引き続いて副委員長の互選を行いたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇三浦陽子委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。
 これより副委員長の互選を行います。
 お諮りいたします。副委員長の互選の方法につきましては、指名推選の方法によりたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇三浦陽子委員長 御異議なしと認めます。よって、互選の方法は指名推選によることと決定いたしました。
 お諮りいたします。指名推選の方法につきましては、当職において指名することにいたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇三浦陽子委員長 御異議なしと認めます。よって、当職において指名することに決定いたしました。
 決算特別副委員長に工藤勝博君を指名いたします。
 お諮りいたします。ただいま当職において指名した工藤勝博君を決算特別副委員長の当選人と定めることに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇三浦陽子委員長 御異議なしと認めます。よって、ただいま指名いたしました工藤勝博君が決算特別副委員長に当選されました。
 ただいま当選されました工藤勝博君が委員会室におられますので、本席から当選の告知をいたします。
 工藤副委員長、ごあいさつを願います。
〇工藤勝博副委員長 ただいまは、委員各位の皆様に御推挙いただき、大変光栄に思っております。決算特別副委員長に御指名いただき、ありがとうございます。
 委員長をしっかり補佐し、委員会を円滑に運営できるよう、皆様の御協力をお願い申し上げてごあいさつにかえます。よろしくお願いします。(拍手)
〇三浦陽子委員長 お諮りいたします。当決算特別委員会に付託されました決算15件についての審査の方法でありますが、お手元に配付してあります日程案のとおり、本日から15日まで、18日から21日までの8日間は、会計管理者及び関係部局長の説明を求め、質疑を行うこととし、決算15件に対する意見の取りまとめと採決につきましては、10月21日の県土整備部関係の質疑が終わった後、各会派の意見調整を経た上で行いたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇三浦陽子委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。
 これより議事に入ります。
 認定第1号平成21年度岩手県立病院等事業会計決算から認定第15号平成21年度岩手県港湾整備事業特別会計歳入歳出決算までの15件を一括議題といたします。
 これより、会計管理者に決算の総括説明を求めます。
〇古内会計管理者 それでは、私のほうから平成21年度歳入歳出決算の概要について御説明申し上げます。
 お手元に歳入歳出決算書、歳入歳出決算事項別明細書、実質収支に関する調書など8件の法定書類のほか、決算調製資料を補完するための説明資料といたしまして歳入歳出決算説明書をお配りいたしております。
 まず、決算の概況について、便宜、歳入歳出決算説明書などに基づいて説明させていただきます。
 それでは、恐れ入りますが、歳入歳出決算説明書の1ページをお開き願います。岩手県総合計画に掲げます施策の基本方向に基づいて編成されました平成21年度一般会計歳入歳出当初予算は、いわて希望創造プランを着実に推進するため、岩手を守る逆風立ち向かい予算として6、588億3、728万円が措置され、前年度の当初予算に比べまして4億8、578万円、率で0.1%の増となっております。また、6月補正予算以降におきまして、地域経済の下支え、雇用対策や強い岩手をつくるための体質強化対策等の経済危機対策を中心に902億7、121万円の増額補正が行われたところであります。これに前年度からの繰越額271億8、112万円を加えた結果、予算現額は7、762億8、961万円となり、前年度に比べますと708億7、479万円、率で10.0%の増となったものでございます。
 なお、増額となった要因につきましては、決算の特色のところで改めて御説明申し上げます。
 次に、歳入についてでありますが、恐れ入ります、40ページ、41ページをお開き願います。まず、収入済額は7、482億6、014万円余で、前年度と比べますと647億9、633万円余、9.5%増加し、予算現額に対しまして96.4%、調定額に対しまして98.0%となっております。
 なお、収入未済額は150億1、989万円余で、前年度に比べまして28億4、158万円余増加いたしましたが、この収入未済額の主なものは諸収入でございます。
 次に、歳出についてでございますが、少しページを飛びまして、48ページ、49ページをお開き願います。支出済額は7、351億686万円余で、前年度に比べますと622億2、184万円余、9.2%増加し、予算現額に対します支出済額の割合は94.7%となっております。また、翌年度繰越額は359億6、774万円余で、前年度に比べまして87億8、662万円余増加いたしましたが、この繰越額の主なものは、土木費及び農林水産業費であります。
 なお、不用額は52億1、500万円余で、前年度に比べまして1億3、367万円余減少しております。
 次に、実質収支の状況についてでございますけれども、少しページを戻っていただきまして、38ページ、39ページでございます。第1表一般会計及び特別会計決算状況の表中、一般会計の欄に記載のとおり、一般会計の歳入総額は7、482億6、014万円余、歳出総額は7、351億686万円余であり、歳入歳出差し引き額は131億5、328万円余となったものでございます。また、歳入歳出差し引き額から翌年度へ繰り越すべき財源92億1、861万円余を差し引きました実質収支額は39億3、467万円余の黒字となっております。
 次に、一般会計の決算の特色についてでございますけれども、恐れ入ります、1ページに戻っていただきたいと思います。
 一般会計の決算の特色といたしましては、第1には、決算の規模が前年度を上回ったことでございます。決算規模は、歳入におきましては、国庫支出金、県債、諸収入等の増加によりまして前年度を647億9、634万円、9.5%上回り、歳出におきましては、民生費、総務費、衛生費等の増加によりまして前年度を622億2、184万円、9.2%上回ったものであります。
 第2には、県税収入が減少したことでございます。県税は、景気低迷や税制改正によりまして法人事業税の一部が国税になったことなどにより、法人二税、これは法人県民税、法人事業税でございますが、これらを中心に減少いたしまして、前年度に比べ184億6、180万円、率で14.9%減少いたしております。
 第3には、県債の発行額が大幅に増加したことであります。県債の発行額は、地方の財源不足を補てんするために創設されました臨時財政対策債が増加したことなどによりまして、前年度に比べまして252億6、460万円、27.7%と大幅に増加いたしております。
 なお、平成21年度末の県債残高は1兆4、384億3、020万円となり、前年度末現在高に比べまして282億2、504万円、2.0%増加いたしております。
 第4には、民生費が大幅に増加したことでございます。民生費は、介護サービス施設等整備臨時特例事業費及び介護業務従事者処遇改善等臨時特例事業費の皆増などによりまして、前年度に比べ205億3、028万円、30.0%と大幅に増加いたしました。これによりまして、款別区分で見ますと、民生費は土木費を抜きまして、教育費、公債費に次いで支出額の多い科目となったところでございます。
 第5には、投資的経費が前年度を上回ったことでございます。投資的経費は、災害復旧事業費が減少したものの、補助事業費などの普通建設事業費が増加したことによりまして、前年度に比べ29億9、749万円、2.4%増加いたしまして、平成9年度以来、12年ぶりに前年度を上回る規模となったところであります。
 なお、歳出規模に占める投資的経費の割合につきましては、国の経済対策に係る交付金等を活用するための基金積立金などが大幅に増加いたしたため、前年度に比べ1.2ポイント減少し、17.2%となっております。
 以上、一般会計の特色を申し上げました。
 次に、母子寡婦福祉資金特別会計など11会計の決算について御説明を申し上げます。恐れ入ります、今度は歳入歳出決算書のほうですが、これの20ページをお開き願います。特別会計歳入歳出決算総括表によりまして御説明申し上げます。
 母子寡婦福祉資金特別会計など11会計の歳入合計額は、次の23ページのほうに記載されておりますとおり1、844億7、457万円余であり、収入未済額は19億1、657万円余となりましたが、その主なものは、中小企業振興資金特別会計におけます中小企業高度化資金の償還金などでございます。
 また、歳出合計額は、ちょっとページを飛んでいただきまして、26ページに記載されておりますとおり1、804億3、289万円余であり、実質収支は各会計とも黒字となっております。
 以上で決算の概要説明を終わらせていただきますが、決算内容の詳細につきましては、審査日程に従いまして、それぞれの担当部局長から御説明申し上げることとなっております。
 なお、監査委員から御意見のありました事項につきましては、関係部局において所要の措置を講じているところでございます。
 よろしく御審議くださいますようお願い申し上げまして、以上で説明を終わらせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
〇三浦陽子委員長 ただいまから総括質疑に入るわけでありますが、議会運営委員会の決定に基づき、総括質疑は、各会派及び会派に所属しない議員に質疑時間を配分して行うことになっております。
 質疑時間につきましては、まず、民主党・ゆうあいクラブが55分、次に、自由民主クラブが27分、次に、地域政党いわてが17分、次に、社民党が11分、次に、会派に所属しない議員は、日本共産党斉藤信委員、公明党小野寺好委員、無所属阿部富雄委員の順に、それぞれ7分となっております。各会派は、配分された時間の範囲内で複数の委員が質疑をすることができること、この場合におきましては、会派として続けて行うこととなっておりますので、御了承願います。
 なお、総括質疑は、あす、遅くとも正午までに終了することを目途とすることにしたいと思いますので、御協力をお願いいたします。
 これより総括質疑に入ります。民主党・ゆうあいクラブ五日市王委員。
   〔五日市王委員質問者席に着く〕
〇五日市王委員 民主党・ゆうあいクラブの五日市王でございます。会派を代表いたしまして、平成21年度決算について総括的に質問いたします。
 おかげさまをもちまして、今定例会から、ゆうあいクラブの吉田洋治議員並びに田村誠議員に民主党会派に合流いただき、全国47都道府県議会で唯一、民主党単独で過半数を超す25議席でスタートを切らせていただきました。質問席の周りを見渡しましても同志の皆様に囲まれておりまして、大変力強く感じているところでございますが、民主党・ゆうあいクラブに与えられました総括質疑の時間が55分となり、私1人ではその任にたえかねるところでございますので、中盤は郷右近浩委員、そして大トリは伊藤勢至委員から御質問を申し上げますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、本題に先立ちまして、上野副知事には、ようこそ岩手においでくださいました。心から歓迎を申し上げる次第でございます。
 9月1日の就任でございますので、早速の議会ということで、特にも本県の平成21年度決算の内容について、短期間の中でしっかりと勉強なされたことと存じます。
 上野副知事は、平成21年度は財務省に在職され、東京及び福岡に勤務されていたわけですが、21年度を含めた最近の社会情勢、経済情勢をどのようにとらえているのかまずはお伺いいたします。
 あわせまして、本会議でも質問がございましたが、9月1日の就任以降これまで約1カ月、県内を回られ、県民と親しく接していただいたものと思いますので、その感想と岩手に対する思いをお聞かせ願います。
〇上野副知事 まず、平成21年度を含めました最近の社会経済情勢についてでございますけれども、平成21年度は、世界的な経済情勢の悪化によります景気の低迷、あるいはデフレが持続いたしまして、21、22年度にかけまして、一部に回復の兆しが見られ、企業収益の改善もあったものの、最近の急速な円高に伴いまして、企業の海外移転や雇用環境の回復がおくれるなど、依然として厳しい状況が続いているものと認識いたしております。
 次に、県内を私が回りました感想あるいは岩手に対する思いについてでございますけれども、副知事就任以来、県内各地の災害現場や道路整備などの状況を把握いたしますとともに、企業や農家、漁協などを訪問させていただきまして、直接に意見を伺うよう努めてきているところでございます。
 全国に比べまして厳しい経済、雇用環境の中で、海外への販路開拓や地域の特性を生かした商品開発に懸命に取り組む地元企業などの皆様の姿に接しまして、こういう意欲的な方々を積極的にぜひ応援をしたいと感じたところでございます。
 また、内陸部と沿岸部を結びます道路などの社会資本の整備がまだまだ十分とは言えない状況にございまして、引き続き道路などの社会資本整備に取り組むことが必要と痛感いたしたところでございます。
 本県は、豊富な農林水産資源や豊かな自然環境に恵まれておりまして、忍耐強く勤勉な人材を輩出するなど、非常に発展可能性の高い地域であると認識いたしております。今後も、地域の事情や課題を十分に把握した上で、岩手に愛着を持ちまして、県民一人一人が自分の希望をしっかりと持てる岩手県となれるよう、これまでのネットワークなどを生かしましてトップセールスなどに全力で取り組む所存でございます。
〇五日市王委員 副知事、岩手においでなったのは初めてなんですかね。ちょっとその辺わからないんですが、いずれ岩手に副知事として行くぞと。岩手という話を最初に聞いたときに、岩手以外の第三者の方になるわけですが、正直に、よいことも悪いことも、岩手のイメージというのはどういうふうにお持ちだったのか、そのことを原稿から離れて本音をお聞かせいただければと思います。
〇上野副知事 大変お答えすることは難しい御質問でございますけれども、私がお話を伺ったときの印象というのは、一つは、先ほども申し上げましたように、大変に広大な県土、自然に恵まれている、ポテンシャルの高い県であるということ、それが1点。それから2点目は、過去に非常に優秀な人材、政治家も学者も含めまして提供しているすばらしい県であること、この2点についてまずは思いをいたしました。
〇五日市王委員 わかりました。
 いずれ、国でも総額5兆500億円に上る経済対策補正予算を今、国会で審議いたしております。先ほど副知事がいろいろ岩手のことに思いをはせていらっしゃいますので、ぜひこれまでの御経験をフルに生かして、そして手腕を発揮していただいて岩手のために頑張っていただくことを御期待申し上げるところでございます。
 それでは、次にまいります。
 平成21年度の大きな出来事といえば、戦後、民意の選択による初めての政権交代が実現いたしました。この政権交代により民主党中心の政権が誕生し、国の政策も大きく転換し、それに伴い、地方の政治も大きく転換しようとしております。
 まずは、達増知事はこの歴史的政権交代に県知事として立ち会い、間近でいろいろな場面に接し、また厳しい財政状況の中で平成21年度の行財政運営を取り進められてきたものと思いますが、どのような所感をお持ちなのかお伺いいたします。
〇達増知事 政権交代に対する所感でありますけれども、昨年の政権交代は、この国の政治の改革と進化を期待し、新しい政治を切り開こうとした国民の民意によって実現したものと認識しております。これまで、政治主導、国民主導の政治を目指し、子ども手当や高校授業料の無償化といったセーフティネットの整備、地方交付税の増額等、地方の自由度拡大に向けた取り組みなど、新しい改革に着実に取り組んでいるところであります。
 また、政権が掲げる新しい公共の考え方は、本県においては地域経営という言葉で取り組んできており、いっしょに育む希望郷いわてを基本目標とするいわて県民計画と方向性を同じくいたしますので、意を強くしているところであります。
 今後は、厳しい経済、雇用情勢のもと、国民が安心して暮らせる社会の実現に向け、経済、雇用政策と福祉、社会保障政策を有機的に連携づけて推進していくことを期待しています。
〇五日市王委員 次に、二大政党制が定着しつつある現実において、今後もそう長くないサイクルで政権交代が起きる可能性があると思いますが、そのたびに地方が振り回されないためにも、充実した県政運営を行う必要があります。
 政権政党がどの党であれ、岩手のことは岩手で守ることが必要であり、そのためには強い財政基盤と強力な政策立案能力が求められてまいります。
 民主党政権は改革の一丁目一番地に地域主権を掲げており、その目玉である一括交付金も来年度から順次実施の方向であります。こういった流れを踏まえ、今後の地方のあるべき姿をどのようにとらえているのかお伺いいたします。
〇達増知事 地域主権のあり方についてでありますが、地域主権のもとで、地方政府は、次代を担う人材の育成や地域に根差した産業政策などの主役となり、住民に身近な公共サービスを提供するとともに、中央政府は、年金等の社会保障給付などの分野で国民をしっかりと守るという行政システムの確立が必要と考えます。
 その上で、地方のあるべき姿については、住民の生活に密着したサービスは住民に身近な基礎自治体が主体的、総合的に提供する役割を担い、県は補完性の原則に基づいて、広域的な視点に立った産業振興や基盤整備、市町村の支援など、広域的、専門的なサービスを提供していくべきものと考えます。
 県民が主権者として自立と共生の道を歩んでいくことが地域主権の確立につながると考えております。このため、県としては、いわて県民計画に基づいて、地域社会を構成するあらゆる主体と手を携え、地域経営の考え方を基本にした取り組みを推進し、希望郷いわてを実現してまいりたいと思います。
〇五日市王委員 それでは、決算の中身に入ります。
 平成21年度は達増県政3年目の予算であります。1年目である平成19年度は、一般会計決算並びに流域下水道事業特別会計決算が、2年目である平成20年度は一般会計決算が不認定でありました。これらは、知事の政策や県政運営といった中身に関して認定をしなかったのではなく、いわゆる不正経理問題の返還金等が含まれていたための不認定であり、それらがなければ間違いなく認定されたものであると確信いたしております。
 今回は三度目の正直でございます。平成21年度で知事が最も力を入れて取り組んだ施策についてお伺いいたします。
〇達増知事 平成21年度の重点施策についてでありますが、平成21年度は、雇用や社会経済情勢が極めて厳しい状況にある中で、逆風に吹き飛ばされることなく、県民一人一人の暮らしや仕事の現場をしっかり守っていくとの決意のもと、喫緊の課題である雇用の維持、創出や地域経済の活性化、平成20年に発生した2度の地震被災からの復旧、復興に最重点で取り組むとともに、医療、福祉、教育など、県民生活に身近な分野にも十分配慮しながらいわて希望創造プランの着実な推進に取り組んだところであります。
 また、こうした厳しい状況を乗り越えていくためには、県民、企業、NPOなどの地域社会のあらゆる構成主体の力を結集していくことが必要だとの観点から、県民総参加による地域医療体制づくりや官民一体となった子育て支援、産学官連携による事業化の促進、地域と連携した学校教育の推進や防犯意識の高揚など、県民と一体となったさまざまな取り組みを進めてきたところであります。
 さらに昨年12月には、希望あふれる岩手の実現に向け、県民が一体となって行動していくための羅針盤となるいわて県民計画を多くの県民の参画を得ながら策定したところでありまして、これに基づいて、県はもとより、県民の皆さんや企業、NPO、市町村など、地域社会を担う皆さんの力を結集しながら希望郷いわての実現に向けた取り組みをスタートさせたところであります。
〇五日市王委員 平成21年度決算は、歳出が7、351億686万円で前年比622億2、000万円余の増となっており、過去3年間の達増県政において最も積極的な支出を行ってございます。先般、総務省が公表した全国都道府県の平成21年度決算状況においても歳出総額が前年比6.1%増の50兆2、453億円で、11年ぶりに拡大いたしました。
 この要因は、国のおよそ15兆円に上る経済対策の影響で、本県においても、平成21年度当初6、588億円に加え、6月補正において約453億円、9月補正においても約190億円の大型補正が組まれました。これらにより、本県の投資的経費は1、267億5、000万円余で前年に比べ約30億円増加し、平成9年度以来、実に12年ぶりに前年を上回る結果となりました。
 これらを踏まえ、まずはどのような分野で事業の重点化を図り、事業実施をしてきたのかお伺いいたします。
〇菅野総務部長 平成21年度予算における投資的経費の重点化についてでありますが、平成21年度は、予算措置をいたしました一部が翌年度へ繰り越されるなどによりまして、投資的経費全体の決算で見ますと前年度比約30億円の増にとどまっておりますが、数次にわたる経済対策によりまして、普通建設事業における最終予算額は前年度と比較して約100億円の増となってございます。
 重点化の内容といたしましては、まず公共事業につきましては、先ほど知事からお話を申し上げましたいわゆる地震等に伴う災害復旧、さらに、厳しい経済、雇用情勢に配慮いたしまして、6月補正において約70億円、9月補正において約40億円、2月補正において約20億円を追加いたしまして、災害に強い県土づくりや道路の安全の確保のための整備の事業などにおいて、翌年度以降に計画していたものを前倒しして実施したところでございます。
 また、施設の整備、改修につきましては、国体競技施設の整備、高校体育館耐震化の前倒し、医療施設、社会福祉施設の耐震化など、安全・安心の確保や、今後必要となる整備について優先的に実施したところでございます。
 さらに、地域の雇用創出のため、地元中小企業者の受注機会の増に資するきめ細やかなインフラ整備等を追加実施いたしまして、地域経済の下支えとなるよう配慮したところでございます。
〇五日市王委員 続きまして、いわて希望創造プランに基づく二つの基本戦略である新地域主義戦略、岩手ソフトパワー戦略並びに政策の6本の柱、さらにいわて県民計画の策定後においては希望郷いわて実現に向け各種の事業を展開してきたと思いますが、知事は平成21年度における県行政の成果と課題についてどのようにとらえているのか総括的にお伺いいたします。
〇達増知事 平成21年度の県行政の成果と課題についてでありますが、平成21年度は、いわて希望創造プランに掲げた重点目標を推進するとともに、その成果を踏まえて新たに策定した、いわて県民計画アクションプランに掲げた政策推進目標に注力しながら、これからの10年を見据えて、ゆたかさ、つながり、ひとをはぐくむための基盤づくりに取り組んできたところであります。
 このような取り組みによりまして、雇用環境分野では、低い有効求人倍率など、依然厳しい情勢ではありますが、いわてデジタルエンジニア育成センターを開設するなど、ものづくり人材の育成が進んでいることや、産業振興分野では、食品企業の誘致や既存企業の増設が進むとともに、6次産業化による農林水産物の高付加価値化や、消費者、実需者ニーズに対応した販路の拡大などが図られているところであります。それから、地域医療の分野では、臨床研修を終えた医師の県内定着が高まるとともに、即戦力医師の招聘、確保が図られました。
 一方、現下の社会経済情勢は、一部に景気の緩やかな持ち直しの動きが見られますものの、依然として厳しい状況が続いていますほか、医師の地域偏在や特定診療科の医師不足など、地域医療はなお深刻な状況にございますことから、引き続きいわて県民計画に掲げる政策を着実に推進することとしております。
〇五日市王委員 次に、歳入についてお伺いいたします。
 歳出においては積極型でございましたが、歳入に目を向けてみますと、景気低迷や税制改正などの影響により、県税収入は対前年比、率で14.9%、額で184億6、180万円減の1、057億6、225万円となりました。また、県債の発行額が大幅に増加し、平成21年度末県債残高は一般会計で1兆4、384億円余となり、前年度末に比べ282億円余の増となりました。これによりプライマリーバランスも当然のことながら大幅な赤字となり、来年度以降も厳しい財政状況が続くと予想されます。
 これらに関する認識と、今後の財政運営の方向性についてのお考えをお伺いいたします。
〇菅野総務部長 財政状況の認識と今後の財政運営についてでありますが、先ほど会計管理者からも御説明申し上げましたとおり、県税収入の減少、また、臨時財政対策債の大幅増など、県債に大きく依存せざるを得ない状況に本県の歳入がございます。こういった中で、県債の償還など義務的な経費の支出割合が高い水準にございます。また、主要3基金の残高がピーク時に比べまして非常に低い水準となっている。こういったところを勘案いたしますと、本県財政は極めて厳しい状況に置かれてございます。
 本県財政に大きな影響が及びます国の状況でございますが、国は、財政運営戦略の中期財政フレームの中で、平成23年度から平成25年度まで、地方の一般財源総額については平成22年度の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保するとしているところでございます。これからしますと、将来的には歳入の面ではかなり安定的な運営が見込まれるところでございますが、一方、歳出面に目を向けますと、県債の償還が今後ピークを迎えてくること、国民体育大会の準備等のため相当規模の財政需要がやはり今後見込まれるだろうということから、本県の財政運営はこれまでにも増して厳しい状況に至るのではないかと思っているところでございます。
 こうした中で、安定的な財政運営を行っていくためには、単年度のみならず中期的な財政見通しを踏まえまして、より踏み込んだ歳入確保、歳出削減の実行など、不断の行政改革を進めながら持続可能な財政構造の構築に努めていかなければならない、このように考えているところでございます。
〇五日市王委員 次に、先般公表されました平成23年度当初予算要求・調整基準によりますと、来年度は、知事の任期満了に伴う知事選を控えているため、通例どおり当初予算は骨格予算とし、本格的な肉づけは、新知事のもと6月補正予算で対応するとのことであります。4年に1度のことではございますが、この4月から6月までの間は政治空白が生まれることになります。平時ならよろしいのかもしれませんが、現下の厳しい社会経済状況においては、3カ月とはいえ政治空白は余りつくるべきではないと考えます。
 また、いわて県民計画の着実な推進を切れ間なく行うためにも、本決算議会や今後の議会での議論も踏まえ、平成23年度当初予算にある程度の政策的経費を盛り込むことも必要と考えますが、来年度予算編成に対する基本的な考えをお伺いいたします。
〇菅野総務部長 来年度当初予算につきましては、御指摘のとおり、義務的経費や経常的に要する経費を中心としたいわゆる骨格予算として編成いたしまして、新規または政策的経費については6月の肉づけ予算として考えてございます。
 しかしながら、御指摘ありましたとおり、現下の非常に厳しい経済、雇用情勢を踏まえ、経済対策等、国の状況等を考慮する必要もございます。緊急性、必要性の高い事業につきましては、今年度予算への前倒し、それから来年度当初予算への計上の必要性について検討するなど、それぞれ状況に応じまして適切に対応してまいりたいと考えております。
〇五日市王委員 次に基金の質問もいたしますが、今のともちょっと関連してくると思いますので、昨年及び一昨年の国の経済対策に伴い、緊急雇用創出事業臨時特例基金など16基金が創設され、総額約534億円の積み立てが行われました。その後、各年度の事業に充当され、9月補正後の基金残高は合計で240億円程度と見込まれております。これら基金の活用可能な期間は平成23年度までとされているのが大半でありますし、貴重な財源でもございます。今後の予算編成におけるこれら基金の活用に係る基本的な考え方についてお伺いいたします。
〇菅野総務部長 国の経済対策に伴い創設された基金についてでございますが、御指摘のとおり、基金はそれぞれ活用可能期間がさまざまではございますが、経済対策に伴い創設されたことにかんがみますと、基本的にはその効果ができるだけ早期に発現されるよう活用していくことが基本でございます。したがいまして、この基金の活用につきましては機動的に対応する必要があろうかと思っております。
 また、先ほど申し上げましたとおり、本県の財政運営はなかなか今後も厳しい状況にございますので、県の一般財源の負担を極力抑えながら、これらの基金を有効かつ効果的に活用することによりまして、地域経済の下支え、雇用対策等、県民の仕事と暮らしを守る施策を充実させることができますよう、機動的な予算運営に努めてまいりたいと考えております。
〇五日市王委員 全部で534億円の基金がありました。恐らくこの基金も、いわゆるメニューがある程度示されてきている基金だと思うんです、中身に関して。もし使い切らない場合は国にお返しするんですか、まずそこをお聞きします。
〇菅野総務部長 御指摘のとおり、もし期限内に使用目的に使えなかった場合については当該金額を国に返還することになる、このように制度的にはなってございます。
〇五日市王委員 さまざまメニューも国のほうで用意してくると思うんです。だけれども、やはり先ほどの一括交付金であれ、これからの地域主権というのを見据えれば、これは国の制度だからまだあれなんですが、いずれ地方としても、きちんと地方のことは地方で考えて使えるように、近くなるように、そういった声はぜひとも県からもきちんと国に対して上げていっていただきたいと思うんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
〇菅野総務部長 先ほど申し上げましたとおり、せっかくの基金でございますので、その有効な活用を図ることが最大の眼目でございます。したがいまして、基金の内容によりましての制約等、本県としてこれは何とかしてほしいというものにつきましてはかねてから国のほうに必要な意見、提言を申し上げておりますので、そういった点も含めまして、基金の有効活用が図られるよう今後とも努めてまいりたいと考えております。
〇五日市王委員 次に、達増県政4年間の総括についてお伺いいたします。
 知事もあと約半年で1期目の任期を終えますが、これまで3年半にわたる達増県政の総括を御自身ではどのようにとらえているのかお伺いいたします。
〇達増知事 これまでの県政の総括についてでありますが、知事就任以来、岩手が置かれた現状に常に目を向けながら、何をなすべきかを県民とともに考え、県政運営を行ってまいりました。そうした中、2度にわたる大きな地震災害に見舞われたことから、その復旧、復興対策に全力を挙げて取り組んできたところであります。
 また、平成20年1月には、県民の所得と雇用、安心な暮らしを守る、これを重点目標とするいわて希望創造プランを策定し、その実現に向けた取り組みを進めるとともに、いわて希望創造プラン策定後の環境変化を踏まえて、昨年12月には、希望あふれる岩手の実現に向けて、県民が一体となって行動していくための羅針盤となりますいわて県民計画を多くの県民の参加を得て策定し、これからの岩手の方向性を明らかにしたところであります。
 このような取り組みによりまして、例えば県民所得や雇用環境の分野では、開発拠点の誘致など、景気に左右されにくく将来的に波及効果の高いものづくり産業の集積や、農商工連携などによる食産業の競争力の強化、地域医療の分野では、県民一人一人が地域の医療を支える県民総参加型の地域医療体制づくりに向けた県民運動の展開、また、中国の自治体や民間企業との連携によります上海万博への出展や、啄木と龍馬というソフトパワーを生かした高知県交流など、地域主権の観点に立った取り組みの推進など、一定の成果があったところと考えております。
〇五日市王委員 岩手日報が平成21年11月に調査をした達増県政の評価では、評価できるとやや評価できるのプラス評価が58.4%と、前年調査に比べて18.1%上昇したとの報道がございました。また、県政に求める施策として、産業・雇用対策、地域医療対策の二つの施策が群を抜いており、次いで財政再建、地域格差是正と続いております。さらに平成21年県の施策に関する県民意識調査速報においても、重要度の高い項目として、適切な医療体制、安定した就職環境といった項目が上位を占めております。
 こうした点も踏まえ、平成21年度の知事としての自己評価は何点ととらえているのか、その理由も含めてお伺いいたします。
〇達増知事 平成21年度施策の自己評価についてでありますけれども、県としては、平成21年度主要施策の成果に関する説明書ということで、アクションプラン政策編の達成状況について、岩手の未来をつくる七つの政策の目指す姿を示した92の指標の中で、環境や社会資本など52指標、約6割については達成またはおおむね達成としています。一方で、医療や教育など40指標、約4割についてはややおくれ、またはおくれとなっています。
 平成21年度末時点でのアクションプラン政策編の取り組みは、一部におくれが認められるがおおむね順調に進んでいるという認識でございまして、まずはこの県の評価を尊重したいと思います。
〇五日市王委員 次に、いわて県民計画アクションプランについてお伺いいたします。
 昨年12月に議会の承認を経て策定されましたいわて県民計画は、平成21年度から30年度までの今後10年間の岩手の道しるべを示した長期ビジョンであります。この計画は、政策編、地域編、改革編の3部構成であり、計画期間をマニフェストサイクルに合わせたことが大きな特徴であると認識いたしております。
 昨年12月に開催されました新しい長期計画特別委員会において会派を代表して総括質問をさせていただきましたが、このときは教育に重点を置き質問をいたしました。教育の重要性はお互いの共通認識でありましたが、目的別の決算額だけを見ますと、過去5年間、教育費だけが右肩下がりで、平成17年度決算で1、622億円だったものが21年度では1、448億円余で、5年間で174億円の減となっております。
 この要因についてお伺いいたしますとともに、この状況についてどのような所感をお持ちなのかお伺いいたします。
〇菅野総務部長 決算額における教育費の減でございますが、その大きな要因といたしましては、一つは、やはり児童、生徒数の減少等に伴いまして、平成17年度に比べまして職員数が約1、000人減少しているというのがございまして、これによる影響額が約百数十億円ございます。それから、御案内のとおり、県立高等学校新整備計画に基づく県立学校整備を行ったところでございますが、平成21年度にこれがほぼ終了したことに伴います普通建設事業費の減、この二つが大きい要因でございます。
 ただ、将来の岩手を担う人材の育成につきましては、委員御指摘のとおり、非常に県政上重要な課題でございます。こういった厳しい財政状況にはございますが、事業の選択と集中を図りながら、教育における真に必要な予算についてはしっかりと確保してまいりたいと考えております。
〇五日市王委員 5年間で見ると右肩下がりではございますが、単年度で見ていきますと、予算に占める教育費の割合というのは公債費を除けば一番高い状況にあることは認識いたしておりますので、先ほど御答弁にあったように、この分野は、いつの世も教育は大事でございますので、その辺はきちんと頭に入れて予算編成をしていただきたいと思います。
 それでは、アクションプランの中身に入ります。
 第1期は平成21年度から22年度までの2カ年であり、21年度は県民計画の初年度でもございます。とはいえ、策定時期を考えますと平成21年度は実質3カ月程度の実施状況でございますので、まずは今日までの進捗状況、特にも2年間で重点的に取り組む五つの政策推進目標である雇用、県民所得の向上、地域医療整備、人口減への歯どめ、未来を開く基盤整備に係る施策の実施状況や、これを踏まえた今後の課題等についてどのように認識しているのか総括的にお伺いいたします。
〇加藤政策地域部長 アクションプランの政策推進目標の総括についてでございますが、アクションプランにつきましては、先ほど知事から進捗状況につきましては御答弁申し上げたとおりでございます。
 それぞれの政策推進目標についてでございますが、まず雇用環境につきましては、新事業創出支援や県内企業の経営支援、農林水産業振興など雇用創出効果の高い産業振興施策を推進するとともに、雇用対策基金等を活用した雇用の創出や新卒者等への就職支援などを行ってきたところでございます。そういう状況でございますが、世界的な金融危機の影響を受けた企業業績の悪化等によりまして、雇用情勢は依然として厳しい状況となっております。
 県民所得につきましては、ものづくり産業の集積、地域資源を生かした食産業、観光産業の振興、農林水産物の販路拡大や高付加価値化などを重点的に推進してきたところでございますが、依然として国民所得に対する県民所得の水準の乖離は大きい状況でございます。
 地域医療につきましては、医師や看護師等の地域医療を担う人材の養成、確保などに取り組んでいるところでございます。これによりまして、病院勤務医師数は若干改善していますものの、医師の地域偏在や特定診療科の医師不足など、地域医療体制は深刻な状況にございます。
 人口についてでございますが、医療機器関連産業など、成長が期待できる分野の産業振興や本県への定住、交流促進などに取り組むとともに、安心して子供を産み育てられる環境の整備に取り組んできたところでございます。こうした中、社会減の減少幅は2年連続して縮小傾向にありますものの、大きな人口減少は続いております。
 このように、雇用、県民所得、医療、人口につきましては、引き続き大きな課題であると認識しております。
 岩手の未来を開くゆたかさ、つながり、ひとの基盤形成についてでございますが、岩手県I援隊運動の推進や草の根コミュニティ再生の支援など、呼びかけ、きっかけ、仕掛けづくりに重点的に取り組みまして、ゆたかさ、つながり、ひとをはぐくむ端緒を開くことができたのではないかと認識しております。まだ端緒という段階でございますが、引き続き、県民と一緒に進める計画の観点に立ちまして、こうした取り組みを展開していくことが必要であると考えております。
〇五日市王委員 次に、いわて県民計画では、プランの進行管理と弾力的な見直しを行うことが重要としておりますが、これまでの成果や評価を通じて、例えばこういう点が不足していた、あるいは手薄だったというような部分など、平成23年度に向けて、別のアプローチで取り組むべき施策等があればお示し願います。
〇加藤政策地域部長 平成23年度に向けた施策等についてでございます。アクションプランの取り組みはおおむね着実に進んでいると認められるものでございますが、一部の取り組みにつきましては、ややおくれやおくれが認められるという評価でございます。このような実績測定評価を次の政策の形成につなげるため、それぞれの政策ごとに、現在、課題等の分析を進めまして、次年度の取り組み方向の検討を行っているところでございます。
 また、戦略的な観点から、本県の持つポテンシャルをさらに高め、いわて県民計画に掲げました希望郷いわての実現をより確かなものとするため、政策横断的、先駆的な岩手の未来を切り開く六つの構想の具体化に取り組んでおります。これによりまして、さらに政策の厚みを増していきたいと考えております。
 これらの政策を進めるに当たりましては、国の新成長戦略に掲げますライフ・イノベーションやグリーン・イノベーションなどの戦略分野とも呼応しながら取り組むことによりまして、効果を一層高めていくことが重要と考えております。
〇五日市王委員 次に、五つの政策推進目標のうち、私が特に注視している喫緊の課題、雇用、地域医療、少子化対策の各分野における取り組みについて、順次お伺いをしてまいります。
 最初に、雇用環境についてでありますが、アクションプランでは、平成20年度第4・四半期の求人不足数を平成20年度の平均求人不足数と同程度まで改善するとの目標ですが、この成果について、まずはお伺いいたします。
〇上野副知事 雇用環境についてのお尋ねでございますが、世界同時不況によりまして、平成20年の第4・四半期には求人不足数は2万3、182人にまで増加したことから、平成22年度平均で、求人不足数を平成20年度平均と同程度の1万6、000人まで改善するとした目標を設定したところでございます。
 これまで、総額で約139億円に及ぶ雇用対策基金事業の実施、求職者総合支援センターの設置、中小企業向け融資枠の拡大など、さまざまな施策を講じてきたところでございまして、その結果、直近の本年8月の求人不足数は1万7、918人にまで改善いたしまして、目標とする1万6、000人に近づいておるという状況でございます。
〇五日市王委員 次に、県では、県単独や平成21年2月補正で造成した緊急雇用創出事業及びふるさと雇用再生特別基金事業を活用し、平成21年度の目標である2、740人の常用雇用を創出する取り組みを実施してきたことには敬意を表するものであります。
 この取り組みは、平成21、22年度の2カ年でありますが、平成21年度の成果についてお伺いいたしますと同時に、今年度のこれまでの実績と来年度の取り組みに向けた考え方についてお示し願います。
〇上野副知事 緊急雇用創出事業などについてでございますが、まず、平成21年度の成果につきましては、平成21年度の雇用創出計画におきましては、産業振興施策及び雇用対策基金事業によりまして2、740人の雇用創出を当初計画いたしまして、最終的に5、260人の常用雇用を創出いたしたところでございます。
 このような取り組みの効果などもございまして、有効求人倍率が、平成21年8月の0.32倍を底に、平成22年3月には0.41倍に改善するなど、雇用の下支えにつきまして一定の成果があったものと認識いたしております。
 次に、平成22年度の実績につきましては、平成22年度におきましては4、142人の雇用創出を計画いたしておりまして、達成に向けて引き続き取り組んでいるところでございます。平成22年8月には有効求人倍率が0.46倍と4カ月連続で改善してきている状況にございます。
 最後に、平成23年度の取り組み方針についてでございますが、雇用情勢は回復はしてきておりますものの、円高などの不安要素もございまして、予断を許さない状況であることから、平成23年度も、今般の国の追加経済対策による事業も活用しながら、引き続き雇用創出に全力で取り組んでまいります。
〇五日市王委員 次に、1次産業への雇用創出についてお伺いいたします。
 こちらも、平成21、22年度の事業であります農林水産業及び関連産業への就業促進アクションプランによると、2年間の就業者数目標は6、620人となっております。内訳は、新規参入の促進が2年間で680人、雇用拡大が2年間で5、940人となっており、平成21年度目標では、新規参入が農業200人、林業70人、水産業70人の計340人。雇用拡大では、関係法人における雇用拡大が355人、農業参入企業における拡大が120人、食産業における拡大が865人、林業、木材産業における拡大が10人、県及び関係団体による雇用創出が270人の計1、620人となっておりますが、これらの目標に対する成果と、今年度のこれまでの実績及び来年度の取り組みについてもお示し願います。
〇上野副知事 農林水産業及び関連産業への就業促進アクションプログラムに掲げます目標に対する成果についてのお尋ねでございますが、まず、平成21年度の実績につきましては、第1に、新規参入の促進が農業で179人、林業で77人、水産業で77人、合計は333人でございまして、達成率が98%となっております。
 第2に、雇用の拡大につきましては、関係法人で414人、農業参入企業で80人、食産業で3、375人、林業、木材産業で11人、県及び関係団体で424人、合計は4、304人で、達成率が266%となっておりまして、二つの合計では、目標の1、960人に対しまして4、637人ということで、達成率が237%となっております。
 次に、今年度の実績でございますが、9月末現在で、第1に、新規参入の促進が農業で81人、林業で63人、水産業で36人、合計で180人で、進捗率が53%となっております。
 第2に、雇用の拡大では、関係法人で294人、農業参入企業で23人、食産業で、8月末現在―こちらは8月末現在しか数字がございませんが―1、527人、林業、木材産業で20人、県及び関係団体で404人、合計は2、268人で、進捗率が、基本的に9月末現在でございますが、53%となっております。二つの目標の合計では、目標の4、660人に対しまして2、448人、進捗率が53%となっております。
 次に、来年度の取り組みにつきましては、本県農林水産業は、生産構造の脆弱化が進むなど、担い手の確保、育成が大きな課題となっていることから、新たな人材や企業が円滑に農林水産業に就業できるよう、きめ細かな相談活動のほか、定着化に向けた技術習得支援や機械化などによる省力化支援など、引き続き、担い手の確保、育成対策と雇用対策を一体的に推進してまいります。
〇五日市王委員 農業分野への新規参入、岩手に移住して農業を始めた方など、特にも若い方などのお話を聞くと、例えばいろいろ補助をいただいたりするのに、やっぱり縛りが多いと。例えば農協を通さなきゃいかぬだとか、認定農業者にならなきゃいかぬだとか。これまではそういうやり方をやってきたのかもしれませんが、これまでのやり方でやるのも一つかもしれませんが、そういった若い人たちが自分たち―農業もある意味、個人事業なわけです。自分で売っていって、そうやって頑張ってやろうという人たちもおりますので、そういった人たちへのきめ細かな、先ほども答弁にありましたけれども、そういった相談だとかといったものはぜひ本当にきめ細かくやっていただいて、なるべくお手伝いできるところがあればお手伝いをしてあげられるような体制をぜひとも組んでいただきたいと思います。
 雇用の最後です。
 平成21年度は、5月にJT盛岡工場や、千厩町の千厩テックが年度内の閉鎖を発表するなど、県内の雇用情勢にも大きな打撃がございました。平成21年度の企業閉鎖や撤退などの件数と、その原因及び雇用や県経済に与える影響をどのようにとらえているのかお伺いいたします。
 あわせまして、県内の企業誘致の実績及び雇用状況についてもお伺いいたします。
〇上野副知事 平成21年度の誘致企業の閉鎖、撤退の影響などについてのお尋ねでございますが、県で把握しているところでは、平成21年度の誘致企業撤退の状況につきましては15件、離職者の数は1、730人となってございます。
 その原因といたしましては、平成20年秋以降の世界的な景気低迷の影響によりまして、電気機械器具などの業種を中心に量産部門の海外への移転、国内工場の再編縮小などが急激に進んだことによるものと考えておりまして、県内でも多くの従業員の方々が職を失われるなど、雇用や経済面で多大な影響があったと認識いたしております。
 また、平成21年度の企業誘致の実績は11社、今後の予定も含めた雇用人数は354人となってございます。
〇五日市王委員 次に、地域医療についてお伺いいたします。
 アクションプランでは、病院勤務医師数の減少傾向に歯どめをかけるとともに、救急患者における軽症患者の割合を減らすとの目標ですが、成果についてお伺いいたします。
〇宮舘副知事 地域の保健医療体制の確立に係る病院勤務医師数と、救急患者における軽症患者の割合の目標に対する成果についてでありますが、これらにつきましては、医師確保対策アクションプランに基づくさまざまな取り組みを実施してまいりました。この結果、人口10万人当たりの病院勤務医師数につきましては、平成12年度は117.6人でありましたが、平成18年度は112.3人と減少傾向にありました。最新の調査結果であります平成20年度におきましては114.3人と増加に転じておりまして、一定の歯どめがかかったのではないかと考えております。
 また、県立病院における救急患者のうち、当日帰宅措置とされたいわゆる軽症患者の割合につきましては、平成18年度82.0%から平成20年度80.3%と減少傾向にありました。しかし、平成21年度は、全国的に流行いたしました新型インフルエンザの影響などもありまして81.0%と、平成21年度目標に1.1ポイント達しなかったものの、この新型インフルエンザの影響分を補正する試算を行った場合には、引き続き減少傾向にあるものと考えております。
 このように、一部は改善が見られますが、医師不足を背景といたしました地域医療の現状は、総じて見れば、依然として厳しい状況にあることから、病院勤務医の勤務環境向上や処遇改善など、その定着に向けた取り組みや、地域医療を支える県民運動の取り組みによる適切な受診行動の働きかけをさらに展開してまいりたいと考えております。
〇五日市王委員 先般、国による初めての必要医師数実態調査の結果が公表されました。この調査によると、全国で約1万8、000人の医師が不足しており、これに、求人はしていないが病院側が必要とする数を加えた必要医師数は約2万4、000人であり、医師不足の現状が改めて浮き彫りになりました。
 県では、岩手県立病院等の新しい経営計画に基づき、平成21年度から紫波、大迫、花泉、住田、九戸の五つの地域診療センターを無床化し、運営してまいりましたが、今後の課題等があればお示し願います。
〇宮舘副知事 地域診療センターの課題についてでありますが、委員御指摘のとおり、本県における医師不足は危機的な状況にありますが、地域診療センターにおきましては、住田で本年1月から常勤医師が1名増加しております。また、紫波でも本年4月から常勤医師が1名増加するなど、花泉地域診療センターを除く4センター全体では常勤医師が10名となったところでございます。
 しかしながら、病床休止に伴い夜間、休日の当直応援はなくなったものの、センターの常勤医師で対応できない診療科については、他の県立病院から診療応援を受けておりまして、その件数は依然として相当数に上っており、派遣元病院におきましては、その調整に苦慮していると聞いております。
 このように医師不足は依然として続いておりますので、引き続き、医師の処遇改善や関係大学への派遣要請等により、医師の確保に努めてまいりたいと考えております。
〇五日市王委員 次に、財団法人岩手県長寿社会振興財団では、同財団の基金を活用して、結婚や子育てに夢を持てる意識の啓発を目的に、平成21年度、新たに未婚男女の出会いの場創出事業を実施いたしました。同財団では、この事業の成果について、出会い、交流の場目標実施箇所10カ所に対し実績が13カ所であるため、達成度はAと評価していますが、県として、参加人員や、実際に結婚またはおつき合いまで発展したケースなど、実質的な事業の成果も含めてどう評価しているのかお伺いいたします。
〇宮舘副知事 いわゆる少子化対策についてでございますが、アクションプランに掲げております結婚や子育てに夢を持てる意識の啓発につきましては、昨年度から、市町村や関係団体等と連携しつつ、県長寿社会振興財団に設置しておりますいわて子ども希望基金を活用いたしまして、未婚男女の出会い、交流の場を提供するi・出会い応援事業に取り組んできたところであります。
 昨年度の実施状況は、6団体に助成を行いまして、実施箇所は13カ所、参加人員は、講演会等への参加も含めまして、延べ638人となっております。今年度は、現時点で9団体、16カ所と、もう既に昨年度を上回っている状況にございます。さらに、この取り組みが引き金となって、同様の自主的な出会いの場づくりが県内各地で見られるようになっておりまして、この事業は、県内においては先駆的なものとしてさまざまな効果を生じているものと考えております。
 本事業は、未婚の男女に緩やかな出会い、交流の場を提供することを主な目的としておりまして、結婚や交際に進展したかどうかというようなプライベートな事柄までは、残念ながら把握しておりません。なお、参考までに、昨年度の実施団体の一つからは、10組がその後の交際に結びついたという報告を受けております。
〇五日市王委員 10組の方がそういうことであればよろしいかと思います。引き続きこういう場を提供していただいて、いずれ、結婚しない男女がふえておりますので、ぜひとも、こういう場はどんどん推進していただきますようにお願いいたします。
 次に、県政の最重要課題であります県北・沿岸振興についてお伺いいたします。
 平成21年度の県北・沿岸振興の実績と成果について、どのようにとらえているのか、まずはお伺いいたします。
〇宮舘副知事 県北・沿岸振興の実績と成果についてでありますが、これまで、県北・沿岸振興本部を中心といたしまして、本庁関係部、広域振興局が連携し、産学官連携や企業支援などのコーディネーターの設置、地域との協働による産業ネットワークの構築、企業誘致などによりまして、産業振興の取り組みを進めてきたところであります。ものづくり産業、食産業、観光産業、農林水産業などの分野におきまして、一定の成果が出てきているものと考えております。
 平成21年度の主な成果を具体的に申し上げますと、例えば、企業誘致では株式会社AIGエムなど3社、既存企業の増設は1社、産業化の有望なヤマブドウにつきましては、大手食品企業と連携いたしまして、新たに24アイテムの製品を企画、販売いたしております。また、観光面では、グリーン・ツーリズムに関連する体験型観光や教育旅行については、北山崎におけるサッパ船アドベンチャーズ等体験プログラム受け入れ人数は、対前年度比約2.2倍に増加しております。農林水産物のブランド化では、アカモク、イサダ等の水産加工業者等との連携強化による水産物の付加価値向上の取り組みが拡大しているところでございます。
 また、三陸沿岸の海洋資源を生かした海洋産業の振興のため、いわて三陸海洋産業振興指針を策定いたしまして、県北・沿岸振興を支える新たな取り組み等の地域資源や地理的条件を生かした取り組みを進めてまいります。
〇五日市王委員 県北・沿岸振興本部は増田知事時代の平成18年1月に立ち上げ、平成19年に達増知事が引き継ぎました。達増知事みずから、県北・沿岸の発展なくして県勢の発展なしとの力強い信念のもと、これまで4年と9カ月が経過いたしました。これまでの県北・沿岸振興の総括と、来年度以降、重点的に取り組む課題をどのようにとらえているのかお伺いいたします。
 あわせまして、県北・沿岸振興本部立ち上げ以来、これまで県北・沿岸に投資された予算総額についてお伺いいたします。
〇宮舘副知事 県北・沿岸振興の総括と、来年度以降、重点的に取り組む課題についてでありますが、地域と一体となりまして、県北・沿岸圏域の産業振興に重点的に取り組んでまいりました結果、食産業、ものづくり産業、観光産業、農林水産業などの分野におきまして、さまざまな地域資源を活用した新商品の開発や販路の開拓、農商工連携などの新たな展開、新規立地企業と既存立地企業の生産拡大、農林水産物のブランド化などの成果が着実にあらわれてきているものと認識しております。これからも、市町村や民間企業、関係団体など地域の方々と一体となりまして、これまでの成果をさらに発展させ、雇用の場の確保や所得の向上につなげるなど、地域の自立と活力を生み出す産業経済基盤の構築に向けて全力で取り組んでまいります。
 来年度以降、重点的に取り組む課題といたしましては、食産業の分野においては、農商工、企業間連携によるビジネスモデルの構築、ものづくり産業の分野におきましては、地域ものづくりネットワークの活動を通じました他圏域との技術交流や取引拡大、そして人材育成の推進、また、観光産業の分野におきましては、東北新幹線青森延伸、平泉観光キャンペーンとの連携によります観光客の県北・沿岸圏域への回遊の促進、それから、農林水産業の分野におきましては、ビジネスモデルの普及拡大による新たな産地づくりの加速化、プレミアム短角牛の増頭に向けた取り組みの展開、6次産業化の推進による販売力強化などが挙げられ、これらに一層取り組んでまいります。
 次に、県北・沿岸振興本部立ち上げ以来、これまで投資された予算総額についてでありますが、全県対象事業でありまして、県北・沿岸振興にも強く関連する事業も含んだ数値でございますが、当初予算中、産業振興を目的とする事業費の総額は、平成18年度から平成22年度までの5年間で申し上げますと、約137億円余となっております。平成22年度は40億6、000万円余となっておりまして、このうち、いわて三陸海洋産業振興指針の重点施策に対しましては17億5、000万円余を予算措置しているところでございます。
 また、県北・沿岸圏域における公共事業の普通建設事業費─これは農林水産部と県土整備部所管の事業費でございますが、その当初予算総額を申し上げますと、平成18年度から平成22年度までの5年間の総額で約1、655億円余となっております。平成22年度におきましては、国の公共事業予算が大幅に縮減される中で303億8、000万円余を計上し、人口で申し上げますと全県の25.6%なんですが、予算額では、これまで同様に全県の3割強の事業規模を確保したところでございます。
〇五日市王委員 県北・沿岸振興に関しましては、議会のほうでも県北・沿岸振興議員連盟というものがございまして、その中でも、これまでもイの一番に、たしか、財源の確保であるとか重点配分といった御要望を申し上げていると思います。これまで、県土整備部では、先ほどの人口シェアあるいは面積シェアという形で、これだけ重点的に配分していますよというのはお示しいただいているんですが、相対的に見ますと、その数字というのがこれまで出てこなかったのか、ちょっと私は記憶にないんですが、きょう、初めて出たのかもわかりません。いずれ、こういった数字がなければ、我々も、重点配分しているのかどうなのかということも、実はよくわからないところもありますし、もちろん、個々の事業はきちんとやっていただいているのは認識しておりますが、そういった予算の面では、やはりきちんとした今のような形で出していくべきだと私は考えるんですけれども、その点につきまして一つ。
 それと、今回、副知事が2人制ということになりまして、これまで宮舘副知事が県北・沿岸振興本部長も務められておりました。副知事の仕事が二つに分かれるということは、宮舘副知事は県北・沿岸振興にさらに力を入れていただける余裕ができたということでよろしいんですか、その辺もあわせてお伺いいたします。
〇宮舘副知事 これからの予算配分については、来年度の予算編成が始まるわけでございますので、そういう中でも県北・沿岸振興に重点的に力を入れて取り組んでいくということで、私のほうでもしっかりと取り組んでいきたいと思っております。
 それから、県北・沿岸振興本部についてでございますが、これは、本会議でも一般質問の中で質問が出たわけでございますけれども、本部長は私が引き続き継続して務めさせていただくということになっておりますし、また、一方では上野副知事が産業振興担当ということもございますので、連携しながらしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
〇五日市王委員 2人になったということで、倍の力を出していただけるということで解釈いたしましたので、よろしくお願いいたしたいと思います。
 次に、県境の産廃についてお伺いいたします。
 県境産廃につきましては、特措法により平成15年度から撤去作業が始まり、これまで、全量撤去に向け順調に作業が進んでおりますことに対しまして、関係各位に厚く御礼を申し上げます。
 おかげさまで、特措法最終年である平成24年度まで、残すところ本年度を含めてあと3年となりました。平成21年度からは新たな廃棄物が確認されるなど、これまでの推定総量25万6、800トンから32万4、320トンに修正されましたが、まずは平成21年度の撤去の実績と進捗率及び今後の撤去の見通し、並びに所要額の見通しについてお伺いいたします。
〇宮舘副知事 県境産廃の平成21年度の撤去の実績等についてでありますが、平成21年度における廃棄物の撤去量は、計画が4万8、000トンでございましたけれども、実績は5万1、000トン余となっております。また、本年3月末までの撤去総量は22万7、000トン余となりまして、推計総量32万4、000トン余に対する進捗率は70.2%となっております。
 今後の撤去の見通しについてでありますが、今年度及び平成23年度に各4万8、000トンずつ、最終年度であります平成24年度には残る1、000トン程度を撤去いたしまして、実施計画の期間内に全量を撤去できるものと考えております。
 所要額の見通しについてでありますが、特措法に基づく事業費の平成21年度末までの執行額は約126億円となっておりまして、実施計画で見込みました総事業費220億円余の範囲で対応できるものと考えております。
〇五日市王委員 次に、先般、青森県側において新たな廃棄物が見つかり、これまでの推定量99万9、000トンから約25%増の124万5、000トンにふえ、撤去費用も62億円増の496億円に膨らむとの見通しが示されました。これにより、特措法期限である平成24年度までの全量撤去は困難な状況となり、青森県は国に対し、特措法期限の延長と財政支援を求めていくとのことであります。このことによる本県への影響をどのようにとらえているのかお伺いいたします。
 また、青森県とはこれまでも歩調を合わせ全量撤去へと進んでこられましたが、岩手県としての対応はどうなるのかお伺いいたします。
 あわせまして、本県側における新たな廃棄物の発見の可能性があるのかないのか、お伺いいたします。
〇宮舘副知事 青森県の動向と本県への影響等についてでありますが、青森県と本県とは、全量撤去の共通した方針のもとで取り組みを進めてまいりましたが、廃棄物撤去等の事業につきましては、それぞれの実施計画に基づいて進めているところでありまして、本県側は計画どおりに進捗していることから、本県への直接的な影響はないものと考えております。したがいまして、現時点で特段の対応は考えてはおりませんが、青森県の動向や国の対応を注視していきたいと思っております。
 それから、新たな廃棄物の発見の可能性につきましては、現場全体を10メートル間隔で掘削するトレンチ調査を実施いたしまして、廃棄物の分布を把握するとともに、撤去作業の際、ボーリング調査や土壌ガス調査等によりまして地層の異常や土壌の汚染を確認しているところであります。本年9月末時点では廃棄物の撤去は78.1%まで進んでおりまして、現時点では新たな廃棄物が出土する兆候は見られておりませんので、今後、廃棄物量が大幅に増加する可能性は低いものと考えております。
〇五日市王委員 次に、平成21年度末現在の県の滞納債権は約175億円に上り、このうちのおよそ半分の約96億3、200万円は県境産廃事案による現場再生事業求償金であります。この現場再生事業求償金の平成21年度の回収実績及びこれまでの実績はどうなっているのかお示し願います。
 また、特措法期限以降、つまり平成25年度以降の取り組みはどのように考えているのかお伺いいたします。
〇宮舘副知事 現場再生事業求償金についてでありますが、求償金につきましては、毎年度の代執行費用について、三栄化学工業株式会社等の不法投棄原因者に対して求償しております。平成21年度の回収実績はありませんが、これまでの回収額につきましては、平成16年度の三栄化学工業株式会社の差し押さえ預金等から収納いたしました150万円、平成17年度の縣南衛生株式会社の破産管財人から収納いたしました210万円でありまして、総額では360万円となっております。
 それから、特措法期限以降の取り組みについてでありますが、原因法人であります三栄化学工業株式会社は、現在、清算法人として存続はしておりますが、本社不動産の財産処分が終了すれば、法人から回収できる財産がなくなりますので、同社に対する求償事務も終了せざるを得ないものと考えておりますが、同法人が清算結了するまでの間は、特措法の期限後であっても求償を継続していきたいと考えております。
 また、平成21年度に三栄化学工業株式会社の元役員に対しまして、法人との連帯債務となる約4億7、505万円の納付命令を行ったところでありまして、当該元役員に対する滞納処分を進め、可能な限りの回収に努めてまいることとしております。これら原因者に対する滞納処分につきましては、特措法の期限内に集中して作業を行うこととしておりますが、公売の状況等によりましては、平成25年度以降も継続して費用の回収に努める必要があると考えております。
〇五日市王委員 産廃のほうは、青森県とできることがあれば、ぜひ一緒になって進めていただければと思います。
 次に、IGRについてお伺いいたします。
 IGRいわて銀河鉄道の平成21年度収支は、平成17年から5期連続で黒字を達成いたしました。しかしながら、平成20年3月に上野−札幌間を走行する寝台特急北斗星が1往復分、2便の減となったことにより、年間約7、000万円の減益が続いております。今後も、ことし12月の新幹線新青森延伸などで厳しい経営状況や累積赤字の増加が見込まれることから、これまで国に要望してきた適切な線路使用料の支払いを強く求めていく必要があります。
 国では、昨年12月に整備新幹線の基本方針を示し、新たにJRに対し、並行在来線維持のための支援、協力を求めるなど、並行在来線問題などについて検討が行われておりますが、いまだに線路使用料制度は見直されておりません。この問題に対する最近の動向と今後の見通しについてお伺いいたします。
 あわせて、IGRの今年度収支の見通し及び来年度以降の経営見通しについてもお伺いいたします。
〇加藤政策地域部長 貨物線路使用料問題の最近の動向と今後の見通しについてでございますが、現在、関係省の大臣政務官で構成されます整備新幹線問題調整会議におきまして、整備新幹線の未着工区間の取り扱いとあわせて検討が行われております。
 これまで、本県を初めとした関係自治体やJR各社に対するヒアリングを終了し、その後、有識者に対するヒアリングが行われております。今後も、引き続き、この会議を中心に検討が行われる見込みでございますが、国のほうからは具体の検討スケジュールは示されていない状況でございます。
 県では、8月に知事が、政府予算要望として政府に対する働きかけを行ったほか、北海道及び青森県の知事とともに、政府に対しまして貨物線路使用料制度の見直し等に関する提言を行ってきております。今後とも、本県が求めます適正な貨物線路使用料制度への見直しが早急にかつ具体的に、確実に実現いたしますよう、あらゆる機会を通じまして、政府に対して働きかけを強めてまいりたいと考えております。
 また、IGRの今年度の収支見通し及び来年度以降の経営見通しについてでございますが、少子化によります沿線人口の減少やモータリゼーションの一層の進展によりまして、IGRの経営環境は今後急激に悪化せざるを得ない状況でございます。現時点におけるIGRの見通しでは、今年度は6期ぶりに赤字に転じることが見込まれておりまして、さらに、来年度以降も赤字が続いていくという予測でございます。
 IGRが今後も継続いたしまして、地域住民の方々の貴重な交通手段としての使命を果たしていくためには、引き続き、JR貨物からの適正な線路使用料の確保が必要でございますので、これにしっかりと努めていきますほか、県や沿線市町村等が一体となりました利用促進に取り組んでまいりたいと考えております。
〇五日市王委員 私からは最後の質問になります。市町村要望についてお伺いいたします。
 平成21年度における県内市町村からの要望数はどのぐらいあるのかお伺いいたします。また、その特徴をどのようにとらえているのかお伺いいたします。さらに、達成状況はどうなっているのかお伺いいたします。
〇廣田秘書広報室長 市町村要望についてでありますが、昨年7月から8月にかけまして、県内すべての市町村から、全体で774件の要望を受けたところであります。
 要望の特徴としましては、継続項目としましては、道路整備等の社会資本整備が中心でありますほか、医師確保、企業誘致、テレビ放送のデジタル化への対応等でございました。また、新規項目としましては、乳幼児及び児童に対する医療費助成の拡大、民生委員、児童委員の委員数の配慮、国民体育大会開催に係る施設整備及び大会運営への財政支援等でございました。
 達成状況につきましては、全体774件のうち、約6割の461件が、提言に沿って措置をしたもの、あるいは実現に向け努力しているものであります。残りの4割につきましては、当面は実現できない、あるいは実現が極めて困難となってございます。
〇五日市王委員 6割の達成状況ということでございますけれども、私は、ある意味、市町村の要望をできるだけかなえてあげるということが、いわゆる地域の住民のためになることだと思っておりますので、県だけでやるということではない事業も多数あると思います。協働でできるものは協働でやるとか、国にお願いするものは国にお願いする。これまでもやられているとは思うんですが、なるべくこの達成率を上げていただくように、ぜひ御要望を申し上げまして、私の質問は終わらせていただきます。
〇三浦陽子委員長 次に、郷右近浩委員。
   〔郷右近浩委員質問者席に着く〕
〇郷右近浩委員 民主党・ゆうあいクラブの郷右近浩でございます。五日市王委員の残りの時間を使わせていただきまして、引き続き私のほうから質問させていただきます。
 何分初めての総括質疑でございますので、大変緊張しておりますが、このような機会をいただきましたことに、同僚議員の皆様に感謝を申し上げながら質問させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
 それでは、順次質問してまいります。
 先般、平成21年の県工業統計調査速報が公表されましたが、世界不況の影響等で前年比20.7%減の2兆43億円にとどまり、平成になってから3番目の低水準であったとのことでした。
 速報によると、製造品出荷額等で食料品が自動車や半導体等を上回り、6年ぶりにトップになったとの結果でありましたが、今回の結果は、自動車や半導体などの外需型産業が世界不況の影響で大きく落ち込んだためではあるものの、食料品については3、582億円で、下げ幅は0.4%と非常に小さく、これまでの食産業振興の取り組みが確実に成果となっていることとあわせ、本県の農水産物を含めた食品の評価が安定してきているあらわれと感じております。そしてまた、その基盤を支えているのが、肥沃な我が岩手のこの農地であると考えております。
 そこでお伺いいたしますが、平成21年度決算書の261ページによると、農地費のうち土地改良費は217億1、902万円余となっておりますが、そのうち水田の圃場整備に要した費用はどの程度かお知らせください。また、それによって整備された面積と、これまでの整備率はどの程度となっているのか。あわせて、近年の整備量と主な地域ごとの整備状況はどうなっているのかお伺いいたします。
〇上野副知事 圃場整備の実施状況についてのお尋ねでございますが、まず、平成21年度決算の土地改良費のうち、水田の整備に要しました費用は60億900万円余となっておりまして、約28%を占めてございます。
 次に、それによって整備されました面積は310ヘクタールでございまして、平成21年度までの水田整備率は、20アール区画以上で見まして、県全体で63%となってございます。
 さらに、近年の整備状況につきましては、平成17年度から平成19年度の3カ年について申しますと、年間500ヘクタールを超える整備量でございましたが、全国的な公共事業の縮減などから、平成20年度は約450ヘクタールとなってございまして、平成21年度は、先ほど申し上げましたように310ヘクタールということでございます。
 地域別に平成21年度までの整備率で見ますと、盛岡地域や岩手中部地域―これは花巻市、北上市、遠野市を含みますが、これらの整備率が70%台であるのに対しまして、いわゆる胆江地域―奥州市、金ケ崎町を含みますが―が56%、両磐地域―これは一関市、平泉町、藤沢町を含みますが―が55%と、県南部におきましてかなり低い状況にございます。
〇郷右近浩委員 今、数字を確認の意味でもお聞かせいただいたわけでございますけれども、県の中でも整備率についてもかなりばらつきがある。そして、整備状況というものが年々少しずつ減ってきているのかなと、そこの部分については非常に残念に思いながら、私自身も受けとめておるところでございます。
 そうした中にあって、県勢発展のために、自動車や半導体工業品というような外需型の産業を含めたバランスのとれた産業振興が大切であると私は感じております。本県の安心・安全な地域資源である食料という産業をさらに伸ばしていくことが、両輪兼ね備えた安定した発展には絶対不可欠であると強く感じておりますけれども、県の産業構造に対します知事の御認識をお伺いいたしたいと思います。
〇達増知事 県の産業構造についてでありますが、本県の地域経済を持続的に成長させていくためには、国際競争力が高く、成長の牽引役となるものづくり産業の集積を図るとともに、世界経済の影響を受けにくく、安定的な成長につながる産業の振興を図ることが重要と考えております。
 このため、本県ではこれまで、自動車、半導体関連産業を柱とする連峰型の産業集積の形成に努めてきたところであり、企業の開発部門の誘致とともに地場企業の技術力向上、高度技術人材の育成などにより、県内で開発から製造まで一貫して行うことができる、すそ野が広く足腰の強い産業集積を目指しています。
 これに加えて、我が国における超高齢社会の到来を踏まえて、これまでに蓄積された高度なものづくり技術の強みを生かしながら、連峰型の産業集積の第3の柱として、新たに医療機器関連産業の創出に取り組んでいるところであります。
 また、本県産業がさらに強みを増していくためには、これらと同時に地域の特性や資源を最大限生かした産業を振興していくことが必要でありまして、国内有数の生産力を誇り、生産技術の蓄積も豊富な農林水産業、質の高い農林水産物を活用した食産業、豊かな自然や高品質な県産食材、伝統文化などを生かした観光産業、こうした分野の振興にも積極的に取り組んでいるところであります。
〇郷右近浩委員 今、第1、第2、第3の柱、その中で医療産業というものにというような知事の御答弁もありましたけれども、そうした中でも、やはり芯になるのは岩手の自然、そしてこのすばらしい環境から生まれてくる農林水産物といったものの振興が本当に欠かせないものだと思っておりますので、今、本当に力強いお言葉をいただきましたので、ぜひとも進めていっていただければと思います。
 また、そうした中ででございますけれども、土地区画というか、圃場整備事業といったものが、まだまだこの辺というのはおくれているのではないかと感じております。そうした中で、実施状況と今後の見通しについて、これからさらに伺ってまいりたいと思います。
 私の住んでおります奥州市を例にとりますと、さっき、胆江地域というような表現もございましたけれども、400年ほど前に後藤寿庵によって開かれました胆沢平野の水田は、50年以上前に10アール区画で整備されまして、その後も水不足の常襲地帯でございまして、毎年繰り返される番水の解消に向け、昭和61年から平成19年にかけて、国営及び県営事業により用水路を整備し、農業用水の安定供給が図られてまいりました。
 私は、農業にはまずもって水と農地と人が必要と考えますけれども、これまでの用水路整備と、間もなく完成する胆沢ダムにより、私どもの地域にとっては、当面、水については安心しております。しかしながら、そうしたことでの水路の整備というのは、県内全般を見回しますと、まだ足りないという部分がたくさんあるということも認識しております。ただ、私が常に見ている地域におきましては、あとは農地と人という問題となってまいりますけれども、私の住む地域の周辺では、まだまだ依然として小区画、そして排水不良の水田が多く、農業従事者の減少、高齢化の加速的な進行もあり、農作業をみずから行うことをあきらめ、放棄地が増加している現況をよく見聞きいたします。
 そうした中で、今後の周辺地域農業の行く末に私は不安を抱いておるわけでございますが、知事は、県の農業の現状についてどのようにお考えなのかお伺いいたします。
〇達増知事 本県農業の現状についてでありますが、本県農業は、経済波及効果が大きい、すそ野の広い産業でありまして、内需拡大型経済の振興基盤として大きな役割を担っております。また、その生産活動を通じて、水資源の涵養や快適な農村空間の形成など、多面的な機能を発揮しており、豊かさと潤いのある県民生活の実現に貢献しています。
 しかし、担い手の減少や高齢化等によって生産構造の脆弱化が進み、生産基盤については、水田整備率が東北や全国平均に比べて低位にありますなど、その整備が立ちおくれている状況にあります。
 こうした状況のもと、食と緑の創造県いわてを実現し、安全・安心な食料を将来にわたって安定的に供給するためには、意欲と能力のある担い手を確保、育成し、こうした担い手が大宗を占める農業構造を構築するとともに、計画的かつ効率的な生産基盤の整備など、次代を担う人づくりと、効率的、安定的な農業経営を支える農地の基盤づくりを一体的に推進することが必要と考えています。
〇三浦陽子委員長 郷右近浩委員の質疑の途中でありますが、世話人会の申し合わせにより、この際、昼食のため午後1時まで休憩いたします。
 郷右近浩委員、御了承願います。
   午前11時55分 休 憩
午後1時2分 再開
〇三浦陽子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。
〇郷右近浩委員 それでは、引き続き質問させていただきたいと思います。
 先ほど午前中の部分では知事に県の農業の現状についてのお考えをお伺いいたしたところでございましたが、今そうした中にありまして、私どもの住んでおります胆江地域、胆沢地域のほうでは、現在、北部や南東部を中心に水田の大区画化が進められておりまして、そうした地域の方々の話を聞きますと、パイプラインで用水の管理は簡単だし、区画も大きくなって以前より作業が楽になった、農道も広がり、大型機械で作業ができ、意欲ある農家や集落の営農組織に作業がどんどん委託され、そうした方々が地域の担い手として育っている、全国的にも有名な散居集落であるがゆえに宅地へ通じる生活用の門口は狭く、救急車や消防車など緊急車両は通行できない状態だったが、水田の整備とあわせて農道や市道も整備され、生活環境が大幅に改善されたなどのさまざまな効果が聞かれております。
 さらには、水稲以外にも、麦や大豆、野菜などの作付が可能となり、そこで生産された農作物を利用し、女性や高齢者の経験と工夫でもちや豆腐、漬物などをつくり産直で売り出すなど、地域の活気が出てきているなどの声が聞かれますが、これこそは国の農業者戸別補償制度の畑作物の所得補償交付金によって、整備後の水田を活用した作付誘導により、米余りの現状を解決する道筋になるものと考えます。
 国の概算要求の状況を見ると、平成23年度の農業農村整備事業予算は21年度予算の39%程度と大幅な減額が見込まれます。私は、平成23年度からの戸別所得補償制度の本格実施、そして米に加えて麦、大豆などの畑作物も制度の対象とするよう検討しているときだからこそ、圃場整備を進めて米生産費の低減や水田での畑作物生産を誘導していくことが食料供給基地岩手を確立することにつながると考えますが、今後、県では水田の圃場整備をどのように進めていこうとしているのかお伺いいたします。
〇上野副知事 今後の圃場整備の進め方についてのお尋ねでございますが、本県では、東北や全国平均に比べまして水田整備率が低くございまして、一方、米の生産費は東北で最も高い状況にございまして、さらには、約9割が転作水田に作付されております小麦や大豆は、排水不良による湿害から単収が東北や全国の主産県を大きく下回ってございます。
 県といたしましては、来年度からの本格実施が検討されております戸別所得補償制度の実効性を高め、県内農家の経営安定を図っていくため、今後におきましても、水稲の低コストの生産や転作作物の収量、品質の向上に向け、水田の整備を重点的に進めてまいります。
 なお、事業実施に当たりましては、水田整備がおくれております本県の実情を国などに訴えながら予算確保に努めるとともに、コスト縮減対策を徹底し、限られた予算の有効活用を図ってまいります。
〇郷右近浩委員 ぜひそのようにお願いしたいと思います。
 また、その上で、本年9月現在で平成21年産米は現在約3万トンの在庫があるとも聞いております。県産米の販売促進が必要になってくると考えますが、知事の意気込みでありますとかトップセールスのお考えをお伺いしたいと思います。
〇達増知事 県産米の販売促進とトップセールスについてでありますが、県では、これまで県産米の販売促進や米を用いた新商品の開発、県産米の輸出促進などの需要拡大に関係団体と一体となって取り組んでまいりました。私も就任以来、米卸業者、首都圏の大手スーパー─スーパーでは店頭にも出向いて─小売関係者、また消費者の皆さんに県産米を広くセールスしてきたところであります。
 現在の米の販売環境はこれまでになく厳しいものと認識しておりますが、全国的に高温障害による品質低下が懸念されている中、本県産米は作柄、そして品質ともに良好であると聞いておりまして、今後とも私も先頭に立って、こうした品質の高さを積極的にアピールするなど、県産米の販売促進を図ってまいりたいと思います。
〇郷右近浩委員 本当に品質の面、そしてそれに、先ほど来お話しさせていただいておりますとおり、やはりこの岩手、安心・安全という評価というか、そうした売り物があると思います。そうしたこともあわせて、ぜひともトップに立って頑張っていただきたいと思います。
 また、県政のトップである知事が先頭に立って販売促進のトップセールスをする姿は、本当に生産者に大きな勇気を与えるものと思います。そうした意味でも、国内での米の消費が減少している中で、厳しい現実は承知しておりますけれども、ぜひとも頑張っていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 次に、林業についてお伺いいたします。
 平成21年度は国、県にとって林業政策の大きな転換点でもあったものと感じております。国は、方針において、コンクリート社会から木の社会へのスローガンのもと森林・林業再生プランの策定を進めるとともに、経済対策、緊急雇用対策として、県においても森林整備加速化・林業再生事業が45億円ほどの基金事業で始まり、林業費の決算額は224億5、100万円と、前年比37.4%増の事業費となっております。
 基金事業は、取り崩しながらの3カ年での事業期間となっておりますが、確認の意味を込めて、基金事業の計画についてお伺いいたします。
〇上野副知事 基金事業の計画についてでございますけれども、県では、国の経済危機対策に呼応いたしまして、森林整備加速化・林業再生基金を造成いたしまして、間伐や路網整備といった川上から、木造公共施設の整備支援といった川下まで、幅広い対策を講じているところでございます。
 平成21年度は、補正予算により43億円の基金造成、それから当年度事業実施の予算を措置いたしまして2億2、000万円余の事業を実施したところでございます。
 平成22年度は、平成21年度からの繰越事業を含め25億3、000万円余の事業を実施いたしておりまして、最終年度となります平成23年度は15億4、000万円余の事業を計画いたしております。
 こうした取り組みを通じまして、森林資源を活用いたしました林業、木材産業などの地域産業の活性化を図ってまいります。
〇郷右近浩委員 先ほど私の前に質問いたしておりました五日市委員に対する総務部長の答弁の中で、基金事業の進め方の考え方につきましては効果的にという、まさにそうしたものを大事にしながらという答弁がありました。そのようになるようにぜひとも頑張っていただきたいと思います。
 また、本州一の森林を有する我が県にとりまして、林業の振興は、産業振興、そして雇用振興等に大きく寄与するものと考えます。そのためにも、今回の基金事業終了後も同様の事業を同規模で進めるべきであり、現在策定中の国の森林・林業再生プランの実行計画策定時に森林県岩手として声をぜひとも上げていくべきと考えますが、知事の御所見をお伺いいたします。
〇達増知事 国の森林・林業再生プランに係る所見でありますが、本県の人工林資源は、木材として利用可能な41年生以上が約5割を占めております。今後、本格的な伐採時期を迎えつつございまして、この充実しつつある人工林資源を有効に活用し、本県の林業振興はもとより、地域経済の発展や雇用拡大に結びつける必要があると認識しております。
 森林整備加速化・林業再生事業は、川上から川下までの総合的なメニューの中から地域の実情に応じた事業を選択できるものとなっています。これまで予算化が難しかった松くい虫被害感染源の徹底駆除や間伐材の流通経費支援が実施できるなど、本県の林業、木材産業の振興に有効であると考えております。
 県としては、森林・林業再生プランに盛り込まれている森林施業の集約化を進める経営体の育成や低コスト路網の整備に向けて、地域の実情を踏まえた効果的な制度の創設と必要な予算の確保を積極的に国に提言してまいりたいと思います。
〇郷右近浩委員 また、今回の森林・林業再生プランの目標値というか、この施策の目標としましては10年後の木材自給率50%以上という達成を目指しております。この国のプランを達成するのであれば、路網整備や加工、流通等のコスト削減、そして需要をつくっていかなければならないと考えますが、平成21年度の事業結果を受けての成果、課題をどのようにとらえているかお伺いいたしたいと思います。
〇上野副知事 平成21年度事業の成果、それから課題についてでございますが、いわて県民計画の重要施策として掲げております食料、林業供給基地の確立の実現に向けまして、平成21年度には約1万2、000ヘクタールの間伐を実施いたしましたほか、約70キロメートルの林内路網整備、4台の高性能林業機械の導入などにより、木材生産の低コスト化に必要な基盤整備を着実に進めることができたと考えております。
 今後は、低コスト生産のための基盤整備に加えまして、森林所有者を取りまとめ、効率的な森林施業を実施していく担い手の育成、それから間伐材の需要の掘り起こしや県産材製品の販路開拓など、県産材の需要拡大といったソフト対策の充実が必要と考えているところでございます。
〇郷右近浩委員 ハード事業の部分は大分もう環境を整えてきたということで、これからソフトの部分、大切な部分だと思いますので、ぜひともよろしくお願いしたいと思いますし、また、平成23年度以降、県としての木材振興をやはりさらにしっかりと考えていかなければいけないと思いますが、どのようにお考えかお伺いしたいと思います。
〇上野副知事 平成23年度以降の県としての木材振興についてでございますが、県ではこれまで、安定的な木材の供給や県産材の需要拡大を図るために、第1に、木材需給協議会による合板工場への原木安定供給、第2に、施設整備による県産材加工体制の強化、第3に、商談会の開催などによる建築業界と木材業界とのマッチングの促進などに取り組んできたところでございます。
 平成23年度以降につきましては、このような取り組みに加えまして、公共建築物木材利用促進法の制定を受けました公共施設での木材利用の一層の促進、さらには、間伐材等の石炭混焼発電やCO2排出量取引との組み合わせによる木質バイオマス燃料の利用拡大などによりまして、県産材の活用や需要の拡大に努めまして本県の木材振興を図ってまいります。
〇郷右近浩委員 本当にこれからが逆に言えば実効性を求められるときだと思いますので、ぜひともよろしくお願いしたいと思います。
 私に与えられた時間も少なくなってまいりましたので、早口ですが質問を続けていきたいと思います。
 特養待機者及び施設整備についてお伺いします。
 平成21年3月末現在でまとめられました特別養護老人ホーム入居待機者及び施設整備予定によりますと、待機者全体としましては5、539人、その中でも早期入所が必要な方が1、022人であり、それに対して、第4期及び2月補正による上乗せ整備部分の整備を合わせても914床となっておりましたが、先日、平成22年3月31日現在の取りまとめにおいては早期入所待機者が1、235人と増加し、それに対する平成23年度までの整備予定は988床であり、基金による上乗せや第5期の前倒しを行うことによってやっと間に合うものとなっております。高齢化社会における県内のこの状況、これからの整備に対して知事の御認識をお伺いします。
〇達増知事 特養施設の整備等についてでありますが、介護保険制度においては、3年を1期とする市町村介護保険事業計画の策定に当たり、高齢者人口の推移や地域における介護サービスの需要等を把握しながら向こう3年間の介護サービスの必要量を推計しているところでありまして、各市町村において当該必要量に対応した施設整備を見込んでいるものであります。しかしながら、国においては、これまで施設整備の実質的な抑制指標となる参酌標準を定めていましたことから、特別養護老人ホームの整備に慎重な対応をしている市町村もあるものと承知しております。
 県の第4期介護保険事業支援計画におきましては、各市町村等が見込んだ約660床の施設整備を計上しているところでありますが、この2年間の待機者実態調査では、市町村計画の見込みを超えて早期に入所を必要とする在宅の待機者が増加していますことから、これらの待機者に対応する特別養護老人ホームの施設整備は緊急の課題と認識しているところであります。
〇郷右近浩委員 では、最後にあと1点だけ御質問させていただきたいと思います。
 私は、これからもふえ続けるであろう要入所者に安心感を与えるには、保険給付費に対する国の負担割合を高めてもらい、市町村の負担や保険料をもっと抑えるようにしていかなければならないと考えております。
 現政権においては、福祉の分野を成長が期待できる産業として考えておるとのことでございますので、この機会に、ぜひ国民の生活の現場を踏まえた視点から働きかけていってくださるようお願いしたいと思いますが、このことについての知事の御所見をお伺いいたします。
〇達増知事 国への働きかけについてでありますが、県民が介護に不安を持たず、安心して老後の生活を送ることができるようにするためには、介護保険制度の円滑かつ安定的な運営と適切なサービスの供給を図ることが重要であると考えております。
 このため、施設整備について、昨年度、国からの交付金を原資として創設しました介護サービス施設等整備臨時特例基金の活用を市町村に働きかけてきたところであり、現在、第4期計画での整備増床数に約340床上乗せした整備が見込まれる状況となっておりますが、待機者が多数存在する状況を踏まえて、国に対し、第5期計画期間以降においても基盤整備に対する助成拡充を継続することを要望しているところであります。
 しかしながら、委員御指摘のとおり、地方公共団体の介護保険財政への圧迫や住民の負担増が懸念される状況にありますことから、国に対し、公費負担割合の見直しなど、地方公共団体や被保険者の負担が過大とならないよう支援措置を講ずることについても要望を行ってきたところでありまして、今後においても引き続き要望を行ってまいりたいと思います。
〇郷右近浩委員 それでは、私からの質問は、また部局別審査のときにさまざま担当にお聞きすることにしまして、伊藤勢至委員にかわります。
〇三浦陽子委員長 次に、伊藤勢至委員。
   〔伊藤勢至委員質問者席に着く〕
〇伊藤勢至委員 民主党・ゆうあいクラブの伊藤勢至でございます。
 いわゆる森のトレー問題について何点かお伺いしたいと思います。
 2009年度決算には、森のトレーに係る国への返還金残額と訴訟費用が含まれております。一方で、訴訟の敗訴確定に伴う諸問題は、決算上、訴訟によって回収するとした返還補助金額が未収となることから、今年度決算以降の雑収入がないとの扱いになるものと思われます。この点を踏まえて質問をいたします。
 3点。まず、第1番目、森のトレーの補助金返還の方針や訴訟の状況について、達増知事は増田前知事よりどのような引き継ぎを受けていたのか。また、増田前知事からの引き継ぎ事項の中で、増田前知事はどの程度の優先順位との認識があったと理解をしておられますか。
 2点目、そもそも今訴訟は、増田前知事と林野庁長官の会談の結果、補助金の回収努力をすれば延滞金の免除を前向きに考えるという合意のもとに進められたものと理解しております。事実関係を確認したいのでありますが、そもそも回収努力をすれば云々という話は県からの提案なのか、それとも国からの提案なのか。また、回収努力の中にはさまざまな方法があるものの、訴訟という方法を選択した理由は何か。
 3点目、敗訴確定を受けて、今後は補助金返還をだれが行っていくのかがポイントとなると思いますが、一般質問において、久慈市の対応を見きわめるとの答弁があったところであります。これは具体的にいつまでという期限を区切って行うことになるのか。
 また、増田前知事への政治責任の有無についても久慈市の対応を見きわめてとの答弁があったところでありますが、行政の継続性の観点から現職の皆さんの責任はないとは言えないが、そもそも補助金返還に至った経緯と訴訟に踏み切った判断の二つを踏まえると、どうしても増田前知事など当時の執行部の責任は免れないと思うのでありますが、増田前知事の責任の有無についてどう考えておられますか。敗訴確定について増田前知事に県として詳細を伝え、現在の増田氏の考えを県として把握するべきだと思うのでありますが、いかがでしょうか。
〇達増知事 私からは、前知事からの引き継ぎと、それから前知事の政治責任の有無等についてお答え申し上げます。
 増田前知事からは、平成19年4月27日に所管事務の引き継ぎを受けました。その際、いわて森のトレー事案についても引き継ぎを受け、補助金返還に関しては、返還に至る経過、返還額、延滞金等について、また、訴訟に関しては、訴訟の趣旨、裁判の進捗状況、県の支援状況等について引き継ぎを受けたところであります。
 本事案については懸案事項の一つとされており、前知事もそのように認識されていたものと理解しております。
 前知事の政治責任の有無等についてでありますが、まずはトレー組合がその資産状況等を整理し、久慈市が組合から債権回収を図ることができるかどうかを見きわめる必要があると考えておりますが、訴訟結果を含む本事案のてんまつについては、県として早い時期に増田前知事にお伝えしたいと考えております。
〇上野副知事 私のほうからは、延滞金免除の協議などについて、それから久慈市の対応に係る期限についてお答え申し上げます。
 まず、延滞金免除の協議等についてでございますけれども、補助金返還金の3分の1についてトレー組合からの回収を待たずに国に返還するとともに、トリニティ工業に対する損害賠償請求訴訟を通じまして補助金全額を回収するという方法は、県から林野庁に対して示したものであると承知いたしております。また県は、訴訟での補助金返還金の回収に努めるので、延滞金を免除するよう林野庁に要請したものでございます。
 訴訟によりまして補助金返還金の回収を図ろうとしたのは、本事業が事業中断に至った理由が、トリニティ工業が製造、納入した生産設備が所期の性能を発揮しなかったこと、すなわち同社の債務不履行によるという組合の主張に合理性があり、損害賠償請求訴訟を通じて回収することが妥当と判断したことによるものと承知をいたしております。
 次に、久慈市の対応に係る期限についてでございますが、久慈市の対応の見きわめにつきましては、まず、トレー組合がその資産や債権、債務の状況を整理し、次に久慈市が組合から債権回収を図ることができるかどうか見きわめた上で県として判断することになるので、現時点では明確な期限を申し上げることはできませんが、今後速やかに久慈市やトレー組合などと協議を進めてまいります。
〇伊藤勢至委員 では、あと3点お伺いします。
 当時、担当職員には処分が科されたところでありますが、増田前知事も減給50%4カ月の処分を行いました。当時は訴訟で補助金を回収する前提で、県民負担を新たに発生させないとして行われた処分であり、現在の敗訴を受けた状況とでは前提が異なるものと思います。しかもこの50%の中には、ふれあいランドの問題、畜産公社の問題、あるいは農薬使用の誤記の問題、そして競馬の問題等がございましたので、ただこの一つの問題で50%ではなかったことになるものと思います。
 そこで、新たな処分等を行う考えはあるのかないのかお伺いします。
 次に、県では、処分を行った当時、いわて森のトレー事案検証報告書をまとめていると思いますが、この報告書で指摘をした点が裁判では退けられている点も多いと思いますが、敗訴を受けて、報告書を現在時点のものとしてやり直す必要はないのか伺います。
 さらに、報告書に記載されたポイントのうち、裁判でも決着がついていないものがあります。それは国の責任でございます。林野庁の紹介によるコンサルタントの経営指導が適切だったのかや、当時の林構事業が景気対策の一環として行われた性格が強く、国の補助金使い切りの意識が事業費が膨大になった要因の一つではないかと疑われることなど、国の責任についてでございます。
 確かに県民負担の防止の観点から、補助金の返還を行い、延滞金の免除を行ったことは県の努力であるとは思いますが、国の根本的責任についてはいまだ正面からの議論となっていないと思うのでありますが、国の責任について再度協議を行う努力をすべきだと考えますが、いかがでしょうか。
〇達増知事 検証報告書の見直しについてでありますが、平成16年3月に取りまとめた検証報告書は、事案発生に係る組織体制等の問題点を明確にすることや職員に対する処分をも念頭に置いたものであり、事案発生から会計検査院による指摘後の県の対応までを明らかにしたところであります。
 この報告書の作成以後6年半の間に、報告書にはなかった損害賠償請求訴訟や国への補助金返還といった取り組みがありましたことから、こうした点について県として改めて調査の上、早い時期に議会や県民の皆様に明らかにしたいと考えております。
 国の責任についてでありますが、県は従来から、本事業は国に協議しながら進めてきたものであって、国にも責任の一端があるとしてきたところであります。しかし、平成19年度の国との補助金の残額返還協議においても、国の責任を理由に返還金の一部免除を要請しましたが、補助金適正化法に基づく返還命令であることを根拠に、国からその返還金一部免除は認められなかったところであります。この補助金適正化法の最終的な判断は国において行われますことから、現行制度上、再度国の責任を追及して補助金返還金の一部免除を実現することは困難と考えられます。
 しかしながら、今後、本事案について、訴訟や補助金返還といったこれまでの取り組みを中心に改めて調査を行う中で、国の責任や補助金適正化法上の課題についても整理し、その内容をしっかりと国に伝えていきたいと考えております。
〇宮舘副知事 新たな処分等に対する考え方についてでありますが、まず、回収に至らなかった補助金返還金の額の大きさにつきましては真摯に受けとめなければならないものと認識しておるところであります。
 ただ、当時の処分につきましては、いわて森のトレー生産協同組合が実施いたしました国庫補助事業等に対し、適正な指導監督や当該事業遂行上の必要な検証を行わなかったことによりまして補助金返還に至ったという事実を踏まえ、その適正を欠いた事務執行に対する責任を追及して実施したものであります。
 また、前知事につきましては、職員の事務懈怠を踏まえ、県政の最終責任者の引責措置として給与の減額措置が講じられたものと理解しております。
 訴訟につきましては、勝訴によって返還金を回収し、県民負担を最小限とすることを目的として取り組んできたものでありまして、裁判の結果によって、過去の関係職員に新たな責任を問う性格のものではないのではないかと考えております。
〇伊藤勢至委員 先般、判決が出まして、控訴をしなかったことから確定をしたわけであります。そこで、この判決文の中で、言ってみればこれからマイナスの借金をどう分配するかということの議論になっていくんだと思うのでありますが、判決内容を見まして、関係者のほうに重大な瑕疵があるものだと私は思っております。
 この主な内容の中の②の本契約締結までというところなんですが、1、本件合意の成立を予定しているような事情はうかがえない、2、なお、日産50万個の生産能力とは設備の作動能力と解するのが相当、こういうことが書いてございます。さらに③の中に、本件契約書や本件仕様書等という中で、本件合意の成立をうかがわせるような記載がない、つまりこれは、設計図あるいは仕様書、そういったものが完成品を示していると言えない、こういうことだと思います。例えばいろいろな仕事を発注する際に、このコップを発注するとすれば、上が直径何センチ、下が何センチ、高さが何ぼ、透明か、あるいは非透明か、そういった仕様書あるいは特記仕様書等によって契約をするものだと思いますけれども、ここに書いていますように、本件合意の成立をうかがわせるような記載がない、つまり注文書、発注書にしっかりとしたトレーをつくれという点がない、こういうことだと思います。
 さらにそのおしまいのほうに、争点1の(2)あるいは争点2、判断するまでもない、一刀両断に切り捨てられているのでありまして、これはもう100、ゼロとか200、ゼロとか、うそ八百の800、ゼロぐらいの問題ですよ。つまり、最終的にこういう契約書を交わしたのはだれか、そして、その契約書に判こをついたのがだれか、これが争われた結果だと思います。こうするだろうと思った、多分こうするだろうと思った、そういうものは裁判、判決には一切関係がないのでありまして、今度はこのずさんな契約をだれがやったのか、そういうことが問われるものだと思いますけれども、そういうところをしっかりと明らかにしていかなければ県民は納得をしない。
 これについては、先ほどこれも聞きたいと言ったばかりでありますので、準備ができていたら、あるいはなくてもそれなりに答弁をいただきたいと思います。
〇上野副知事 委員御指摘のように、今回の判決は、組合の意図を適切に盛り込んだ契約書や仕様書が作成されていないことなどから、トリニティ工業との間には組合が主張するようなトレー製品の品質と数量を保証する合意の成立は認められないと、そういうふうにしたものと承知をいたしております。
 契約行為につきましては事業実施主体であるトレー組合の本来の業務でございまして、トレー組合が適切に対処すべきものでございます。これを適切に行わなかったという点で、トレー組合に責任があるものと言わざるを得ません。ただし、県といたしましても、こうした事象を踏まえまして、今後、再発防止策の中で、こうした点についても将来的にはきちんと見ていくような体制を考えていくことが必要ではないかと思っております。
〇伊藤勢至委員 庄内工業がつくったときは立派な完成品ができたと。その完成品を示して、当時の副知事が知事のほうに庁議か何かの場でこのような立派なトレーが木からできるんですと説明したということも仄聞しているところであります。
 そして、このトリニティ工業でありますが、これはトヨタの系列の会社だと思います。生産ライン工程といいますか、そういうものをつくっていく会社。天下の、あるいは世界のトヨタです。相当な弁護団が、しっかりした弁護団がついている。一方、こっちのほうでは、関東自動車もトヨタの関係が来ているので、何かやり過ぎるとちょっとまずい点があるのではないか、もしそういうようなことをお考えになったとすれば、それは間違いだというふうに思います。是は是、非は非、どういうことであれそういうことをやっていかなければならないと思います。
 いずれこれから、罪を憎んで人を憎まずという言葉もありますけれども、時間の経過とともに内容をはっきりさせないで流していくことがないように、あるいは最終的に岩手県が全部かぶりましょうというような大盤振る舞いができる岩手県の財政ではないということを指摘して終わります。
〇三浦陽子委員長 次に、自由民主クラブ工藤勝子委員。
   〔工藤勝子委員質問者席に着く〕
〇工藤勝子委員 自由民主クラブの工藤勝子でございます。
 総括質疑をさせていただきますので、知事初め執行部の皆さんにはどうぞよろしくお願いいたします。
 まず最初に、平成19年度決算並びに平成20年度決算について、特別委員会の審査において2年連続で一般会計歳入歳出決算について認定しないこととなりました。全国においても決算が連続して不認定になる例はまれでありまして、極めて異例と言わざるを得ない状況であります。決算不認定の原因は不適切な事務処理問題でありましたが、知事は、2年連続の決算不認定に対してどのような所感を持たれたのか、また、平成21年度の事務処理に当たり、どのような対策、取り組みを行ったのかお伺いいたします。
〇達増知事 決算不認定に対する所感についてでありますが、平成19年度、20年度の決算が連続して議会において認定されなかったことは、県行政の最高責任者としてこれを重く受けとめるとともに、強く責任を感じているところであります。
 平成21年度の事務処理に当たり行った対策、取り組みについてでありますが、平成21年度の事務処理に当たりましては、不適切な事務処理が二度と行われることがないようコンプライアンスの徹底を図るとともに、さきに策定した再発防止策に基づいて、予算制度や会計制度の見直しを行うなど、適正な事務処理の執行に向けた取り組みを進めてまいりました。
 また、職員に対しては、平成21年1月に制定した岩手県職員憲章の趣旨を踏まえ、県政が県民から負託されているものであるということをしっかりと自覚し、より高い意識を持って職責を果たすよう指示するとともに、県民の皆様の信頼にこたえられる行政を推進していくため私も力を尽くしてきたところであります。
〇工藤勝子委員 県民は知事に対して、指導力に期待をしてきたんだろうと思っております。そういう関係で、平成21年度の決算に向けて、今度こそはという思いがあるんだろうと思いますけれども、その決意をまたお伺いいたします。
〇達増知事 平成21年度の事務処理に当たっては、不適切な事務処理が行われることがないよう徹底しているところでございます。
〇工藤勝子委員 それでは、財政運営の評価についてお伺いいたします。
 平成21年度当初予算を編成した際、県は大変な経済情勢の中、逆風に立ち向かうため、財政調整基金など各種基金を取り崩すなどして、前年度と比べて微増となる予算を編成したとの説明を受けました。その後、当時の麻生政権による大規模な経済危機対策、民主党への政権交代の後、補正予算の一部執行停止を経て、平成21年度の県予算の歳出決算規模は、結果として前年度を622億円余、約9.2%上回ったところであります。
 そこで、平成21年度の財政運営についてどのように評価しているかお伺いいたします。
 また、本県としては近年にない規模の補正予算を数次にわたり編成いたしましたが、逆風に立ち向かい、力強く向かっていくことができたのかあわせてお伺いいたします。
〇達増知事 財政運営の評価についてでありますが、平成21年度当初予算編成時は、アメリカ発の世界経済の落ち込みが日本経済、そして地域経済に波及し、税収の見込みが減少する中、臨時財政対策債の増発や財源対策的な基金を取り崩すなど、厳しい財政運営となることが見込まれたところであります。その後、6月補正予算453億円、9月補正予算193億円、2月補正予算のうち経済対策分265億円を追加計上し、幅広い分野で県民の仕事と暮らしを守る取り組みを行ったところであります。
 このように大規模な補正予算の編成を行いつつも、国の経済対策関係補正予算を効果的に活用することによりまして、補正予算編成に際し、建設事業の財源とする県債を増加させることなく、また、2月補正予算において主要3基金の取り崩しをやめるのみならず、将来に備え、合計52億円の新たな積み立てを行うことができたところであります。
 このように、平成21年度の財政運営の評価としましては、厳しい状況に置かれた県民を守るため、必要な事業を十分に行いつつも、将来負担の過度な増加をさせることなく、また、必要な備えを行うことができたと考えております。
 逆風への対応についてでありますが、委員御指摘のとおり、平成21年度の当初予算は、非常に厳しい状況にさらされる中、逆風に吹き飛ばされることなく、みんなでしっかり手をつないで立ち向かっていくための予算として編成したところであります。
 数次にわたる補正予算の編成によりまして、地域経済の下支え、雇用対策等の緊急的な対策、強い岩手をつくるための体質強化策等の構造転換に向けた対策等を講じたところでありまして、これによって地域経済の下支えや商品開発力・発信力等の向上、安全・安心の確保、公共施設や体育館などの県有施設の耐震化、新型インフルエンザ対策など緊急的な課題への対応、県有施設のきめ細かな維持修繕による施設の長寿命化と県内企業の受注機会の創出などを初めとします必要な事業を行うことができたところであります。
 引き続き経済、雇用の情勢は厳しいところでありますが、こうした施策によりまして、地域医療を守るための県民一体となった取り組みや、さまざまな地域に根差した活動が展開されるなど、いわて県民計画の策定や、平成22年度当初予算における各種の事業と相まって、力強く前に向かって歩み出すことができたものと考えております。
〇工藤勝子委員 それでは、今後の収支見込み等についてでありますが、平成21年度はさまざまな事業を行うことができたとしても、やはり先々のことが非常に心配であります。昨年9月に公表されました今後の収支見込みでは、今後、毎年度700億円規模の収支ギャップが生じるとの見込みでしたが、その年その年にやりくりをするということではなく、将来のために、中長期を見据えて財政運営をすべきと考えます。現時点においても単年度で700億円程度の収支ギャップが生じる見込みなのでしょうか。
 また、主要3基金については、ピーク時の平成8年度末残高が1、560億円程度であったのに対し平成22年度末では250億円程度になる見込みと、2割の水準まで減少している状況であります。収支ギャップに対する基金残高の規模をどのように評価しているのかお伺いいたします。
〇菅野総務部長 今後の収支見込み等についてでございます。
 昨年9月に委員から御指摘ありました岩手県の今後の収支見込みを公表させていただいたところでございますが、これは、当時の諸制度を前提といたしまして、特段の財源対策を行わないとして機械的に粗く試算した結果でございまして、平成23年度以降、毎年度700億円規模の収支ギャップが生じることを明らかにしたところでございます。
 ただその後、委員から御指摘ありましたとおり、平成22年度の国の地方財政対策におきまして、地方が自由に使える財源の大幅な拡充が図られたこと、また、国の財政運営戦略の中期財政フレームにおきまして、平成23年度から平成25年度まで、地方の一般財源総額については平成22年度の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保することとされてございます。このような国の施策によりまして、収支ギャップの規模は相当程度縮減されるものと考えてございますが、ただ、今申し上げましたとおり、歳入を確保できたといたしましても、歳出面に目を転じますと、県債の償還が今後ピークを迎えること、また、先ほども申し上げましたとおり国体等も控えてございますので、やはり、700億円程度の収支ギャップという大きい規模ではないにいたしましても、これまでにも増して厳しい局面を迎えるのではないかと考えているところでございます。
 平成21年度において、当初予算で計上していた財政調整基金等の取り崩しを取りやめまして、さらに将来に備えた積み立ても行わせていただいたところでございますが、活用可能な主要3基金の残高は御指摘のありましたとおり255億円にとどまってございまして、将来の見通しと比較いたしますと到底十分な規模とは言えない状況にあるものと考えております。
〇工藤勝子委員 今後、平成26年または27年ころに公債費がピークになって、ますます財政運営が厳しくなる、まして今度は国体も開催されるというような答弁がございました。その状況があらかじめわかっているということであれば、ピークに備えて基金の積み増しをするというようなことを心がけていかなければならないと思うんですが、その点についてはいかがでしょうか。また、現在、そういう基金の積み増しができるような状況なのでしょうか、お伺いいたします。
〇菅野総務部長 基金の積み増しについてでございますが、委員から御指摘のございましたとおり、今後、公債費が毎年度増加していく状況等を踏まえますと、近い将来、主要3基金の取り崩しを行わざるを得ないような状況も想定されるところでございます。
 将来の財政支出に備えまして、基金の積み増しを行っていく必要性については財政当局といたしましては十分認識してございまして、何とかそういう方向に持っていきたいと思ってはおりますが、当初予算の編成時点におきましては、年間の財政需要額を見据えて、ぎりぎりの財政見通しの中で予算を編成せざるを得ないという状況にもございます。
 したがいまして、現在の状況を考えますと、あらかじめ基金の積み立てを当初予算の中で行いまして、逆に経済対策、雇用対策等をむしろ抑えるという選択肢はなかなかとれないものでございまして、当初予算編成時につきましては、どうしても事業を優先せざるを得ないかと考えてございます。ただ、年度途中以降、例えば交付税等の確保、それから事業実施段階での節減等に取り組みまして、これによって生じる一般財源を何とか倹約いたしまして基金に積み立て、将来に備えることによりまして可能な限り基金残高の確保に努めてまいりたいと思います。
 なお、国体につきましては、議決をいただきまして国体関係の基金を積み立てているところでございまして、これについても何とか財源の許す限り積み立て等を行ってまいりたいと考えております。
〇工藤勝子委員 知事は、希望創造プランから希望郷いわてという新しい長期計画アクションプランを起こされております。
 そこで希望創造プランと同じように雇用対策、県民所得の向上、人口減少問題、そして医療、福祉の向上というところを引き続き掲げられておりますけれども、今のまさに財政規模の中で、例えば知事は、この希望郷いわての姿を一口に言ったらどのようにとらえているのかお聞きいたします。
〇達増知事 県が直面する大事な課題というものを県民がしっかり理解して、それにきちんと取り組んでいくことで中長期的にもたくましい岩手になっていきますし、そういう見通しが立てば県民一人一人が希望を持って前に進んでいくことができる、そういう方向に向けて頑張っていこうという気に満ちている岩手ではないかと思います。
〇工藤勝子委員 ぜひ今後とも財政の確保に御努力をお願いしたいと知事にも改めてお願い申し上げます。
 次に、出資法人の課題と改革についてお尋ねいたします。
 いわて県民計画において、出資法人の整理合理化や出資規模見直しの推進を掲げ、改革推進プランに基づいて出資法人の仕分けを行い、十数年前に比較いたしまして75法人から43法人となり、4割も減となりました。県出資法人として、それぞれの分野において長年にわたり県勢発展と県民サービスの向上を担ってきたことは高く評価したいと思っております。
 しかし、法人は県職員OBの天下りの受け皿となり、財政難とともに県民の厳しい目が向けられております。出資法人と県が徹底して課題を洗い出す独自の運営評価制度を導入し、仕分けと改革を進められ、出資総額も平成16年度に比べて11.4%、23億円余も少ない181億4、000万円まで圧縮されたとあります。
 43法人まで整理統合を推進してきた経緯と考え方についてお伺いいたします。
 また、今後の法人のあるべき姿や、それを踏まえた法人への県の関与のあり方についてお伺いいたします。
〇達増知事 県出資等法人については、社会経済情勢の変化、長引く景気低迷による県財政状況の悪化や包括外部監査において県出資等法人に対する県関与等の見直しが指摘されたこと等を踏まえ、県行財政構造改革の一環として改革に着手されたものであります。そのため、平成15年12月に岩手県出資等法人改革推進プランを策定し、以降、施策推進上の使命を終えた法人や立ち上がりを支援するために出資した法人について、廃止や出資引き揚げなど、法人の整理合理化を計画的に推進してきたところであります。
 こうした取り組みの結果、法人の整理統合には一定のめどがつき、現状において直ちに法人の存廃自体を検討すべき法人はないものと考えております。
 今後も県出資等法人には、最も効率的に質の高いサービスを提供するとともに、その経営が将来にわたって県民の負担を招くことのないように、継続的な改善の取り組みが求められております。
 こうした不断の改革、改善を進めるため、毎年度の運営評価制度を通じて法人の役割と存在意義を検証しているところであり、法人の一層の自立を促す観点から、運営費補助金などの財政的支援や県職員派遣などの人的派遣については毎年度縮小に努めてきているところであります。今後も、県の施策推進における法人の役割の変化などを踏まえ、関与の適正化に努めてまいります。
〇工藤勝子委員 県が公表いたしました運営評価レポートによりますと、常勤、非常勤を含め県出資法人の役員に就任している県職員OBは47人、常勤役員75人の44%に当たる33人が県職員OBとあります。天下りに対する県民の批判もある中で、今後どのように改革を進められるのかお伺いいたします。
 また、県出資法人の中には、自主財源が乏しく、県からの補助金や委託料で運営されている法人も少なくないわけでありますが、財政が逼迫する中で、県民サービスを低下させないための組織体制の見直しなど、どのような対策を図られるのかお伺いいたします。
 また、一部の法人において、県からの補助金や委託料を役員報酬に充てていると新聞報道されたところでもあります。この件についての認識と今後の人件費負担のあり方についてお伺いいたします。
〇菅野総務部長 法人経営者の選任に当たって、やはり出資法人といいながらそれぞれの組織でございますので、最も組織運営に熟達してすぐれた方を経営層にお迎えするということは非常に大事なことだろうと思ってございます。しかしながら、外部からの人材登用、特に最高幹部として代表者の登用につきましては、処遇面での問題、すぐれた人材の発掘、確保等といった問題等もございまして、その実現がごく一部の法人にとどまっているのも現実でございます。私どもといたしましては、引き続き役員への民間人の登用等も含めた適切な人材登用の方法について、各法人に指導、助言等を行ってまいりたいと考えております。
 次に、県出資法人の組織体制の見直し等についてでありますが、法人の運営につきましては、組織体制が簡素効率化に留意の上、適切に整備されているか、より低コスト、短時間で効率的なサービスを提供しているかどうか等につきまして、毎年度、私どもとして運営評価制度により評価を行い、課題について改善を行っているところでございます。
 具体的には、業務内容の変化に伴う内部組織の統廃合や、権限移譲による意思決定の迅速化と組織の活性化を図っているかどうか、異なる業務間の配置転換による職員の資質向上に努めるなど、課題に対応した組織や業務執行体制の見直し、こういったところを指導しているところでございます。
 一方におきまして、法人の自立の観点からも財政的支援の縮小に努めているところでありまして、今後も最少のコストで最適な県民サービスが提供できますよう、運営評価制度の中で法人のマネジメント等について評価、検証を行いながら、随時、簡素効率化について指導監督してまいりたいと考えております。
 最後に、今後の人件費負担のあり方についてでありますが、県から法人への補助金、委託料の支出に当たりましては、県の施策推進における役割を果たす上で真に必要なものかどうか、法人の自助努力は十分かどうか等について検証を行っているところでございます。法人の管理部門の役職員人件費、管理運営費などの経常的な経費に対する運営費補助金については、全体的に削減する方向で取り組みを進めさせていただいているところであります。また、事業費補助や委託料については、県の施策を推進するために実施する事業に必要な経費を積算いたしまして、事業者たる法人に対して支出しているところでございます。事業の管理経費について、法人の判断で所要の経費を支出しているのではないかと考えてございます。
 今後とも、法人事業については、県で責任を持つ部分、また自立する部分を行財政改革の中で見きわめまして、財政的関与等も含めて検証を行いまして見直しを図ってまいりたいと考えております。
〇工藤勝子委員 今後、県の職員OBが法人に行きまして、その法人の中で、やはり次の法人を担っていける人材をしっかりと育てることも非常に大事じゃないかと思うんですが、そういう点についてもう一度お伺いいたしますし、また、大阪府と千葉県を除く45都道府県の農業公社の問題が発覚いたしました。基金のずさんな運用が会計検査院に指摘された件についてでございます。
 経営規模拡大など合理化支援を行う農林水産省の補助金138億円余の農地保有合理化促進事業強化基金が設置され、事業を実施してきたところでありますが、具体的な使用計画を立てていないなどずさんな運用がされており、有効活用されていないとして会計検査院から補助金相当額の68億円余の国庫への返還を求められたところであります。
 これに伴い、本県の農業公社も返還対象になると思いますが、県の認識と今後の見通しについてお伺いいたします。
〇上野副知事 農業公社に係る基金の国庫返還等についてのお尋ねでございますが、会計検査院の農地保有合理化事業強化基金についての検査に基づく処置要求におきましては、具体的な計画がない、あるいは区分経理を行っていない、運用実績が不明である、さらには運用益を目的外の使途に充当といった主な理由が指摘されているところでございます。このうち、具体的な計画がない、あるいは区分経理を行っていないという点につきましては、本県を含むほとんどの農業公社が指摘をされてございます。
 他方で、本県の農業公社におきましては、運用実績が不明あるいは運用益を目的外の使途に充当しているというような指摘には該当しておりませんで、運用実績を明らかにし、運用益を目的どおり農地保有合理化事業に要する経費のみに充当しているところでございます。
 今後、基金が仮に廃止となり代替措置が講じられない場合には、事業の推進に大きな支障を来すことになるものと認識いたしております。
 現在、農林水産省は、基金の廃止及び国庫補助相当額の返還につきまして検討中でございまして、具体的な返還方法や今後のスケジュールを示しておられませんが、県といたしましては、情報収集に努めながら国の対応を注視いたしまして、できるだけ事業の実施に影響が及ばないような方法を国に提案していく考えでございます。
〇菅野総務部長 出資法人のいわゆる人材育成についてでございますが、先ほど申し上げました運営評価制度の中で、法人のマネジメントについて評価、検証を行っているところでございます。やはり幹部職員の最大のマネジメントは、自分の後継といいますか、すぐれた人材を育成することにあるのではないかと考えておりまして、こういった中で、よりよくそういったものが図られるよう、県といたしましても指導、助言を行ってまいりたいと考えております。
〇工藤勝子委員 それでは、次に、森のトレー問題についてお伺いいたします。
 ただいまも伊藤勢至委員のほうから質問されましたので、要点をまとめて質問いたしますので、よろしくお願いいたします。
 全面敗訴となってしまいました。勝訴に向けて全力を挙げると言い続けてきた県でありました。この根拠の甘さというものがあったのではないかと私は思っております。この勝訴に向けて全力を挙げると言った根拠はどこにあったのか、県民にどのような説明をされてきたのかお伺いしたいと思います。
 また、民事訴訟で、一銭の支払いも認められない100対0という判決は一般的なものなのか私もわかりませんので、この機会にお伺いしたいと思っております。
 また、損害賠償を求めた見通しの甘さ、この点についてもお伺いしたいと思っております。
 また、裁判を見守る中で、県は敗訴という危機感を持ってこなかったのかというようなところもお伺いしてみたいと思います。
 また、なぜ和解に向けて県は動かなかったのかというところを聞きたいという県民の声が聞かれました。そういう点について、なぜ、この和解という部分が出てこなかったのか、その点についてお伺いいたします。
〇達増知事 県民への説明についてでありますが、県では、判決後、速やかに判決文を入手し、内容を精査するとともに、組合、久慈市、担当弁護士などとも協議を行い、控訴を断念せざるを得ないという判断に至ったものであります。その後、市及び県が内部協議を行った上で、9月22日、組合、市、県がそれぞれ控訴断念を公表したところであり、県は同日に記者発表を行いました。
 今後、損害賠償請求訴訟や国庫補助金返還といった、平成16年3月の検証以降の取り組みについて十分に調査をし、報告書として取りまとめ、県議会を初めとして県民の皆様に対して説明に努めていきたいと思います。
〇上野副知事 四つお尋ねがあったかと思いますが、順次御説明を申し上げます。
 まず、判決の傾向についてでございますけれども、民事訴訟に係る判決につきましては、個々のケースに応じましてさまざまな判決があり得るものと考えておりますけれども、今回のように、契約における債務履行の有無が争点となったような場合には、100対0という判決もあり得るものとは考えております。
 次に、損害賠償についてでございますけれども、本事案は、被告であるトリニティ工業がトレー組合に対しまして、組合が期待していた性能を有する生産設備を納入しなかったことから、組合は事業中断に追い込まれ、すべての事業が無に帰したとして、その結果こうむった損害額を被告トリニティ工業に請求したものでございます。こうしたトレー組合の主張や請求額の規模については、十分合理性があったものと考えております。
 3番目に、裁判の見通しについてでございますけれども、裁判は、トレー組合とトリニティ工業との間の契約における合意内容や、トリニティ工業に債務不履行があったか否かということに対して、原告と被告が全面的に争ったことなどから、23回に及ぶ弁論準備手続が行われるなど、裁判所が事実関係の整理に時間を要したため長期化いたしたものでございます。6年以上にわたる裁判の過程として、被告の主張に対しては原告がその都度反論、主張をしてきておりまして、県としても原告の勝訴に向けて取り組んできたものでございます。
 最後に、和解についてでございますが、この訴訟におきましては、木製トレー生産設備の製作、納入に係る債務の存在や債務の不履行について、トレー組合とトリニティ工業が全面的に争った中、裁判所からも、原告及び被告に対しまして和解といった話はございませんで、話し合いでの解決に至らなかったものであると承知いたしております。
〇工藤勝子委員 判決が確定したことによりまして、県と久慈市、組合の協議の進め方について、今後いろいろ協議が進められると思いますので、お伺いいたします。
 県民は、責任の所在を明確にしなければ15億円余の県民負担は認められないとする点について、今後の対応と考え方についてお伺いいたします。
 また、私たち一般人から考えれば、国も非常に責任があるではないかと思っております。まさに、自動化ラインは技術開発の途中で補助金を出したことに対する国の責任というものはあるのではないかと思っております。先ほどは、補助金適正化法というような話もされましたけれども、結局、この延滞金免除の条件としたのは、例えば訴訟をして、補助金回収に努めるという条件のもとに延滞金が国から免除されたのではないかと、私はそう勘違いしていました。先ほどの伊藤勢至委員への答弁で、これは、国が努力することによって、そういう免除というような条件を出したということがよくわかりました。もう一度、前の答弁を精査してみたいと思っているところでもあります。
 国庫補助金によって、県はさまざまな事業を推進されてきていると思っておりますし、必要な事業だと私は思っております。しかし、このような問題が生じた原因として、国の関与のあり方、補助金行政のあり方について、知事の御所見をあわせてお伺いいたします。
〇達増知事 補助金行政のあり方についてでありますが、地方がみずからの責任のもとで、自立的、自主的に政策を判断できる仕組みづくりが確立されるように、国の義務づけ、枠づけを見直していくことが重要であると考えます。
 現在、国において、ひもつき補助金の一括交付金化などが検討されておりまして、こうした制度改正や、また地方税財源の充実によって、地方の自由と責任のもとで行政運営を行っていくことが可能となるよう、提言や働きかけを積極的に行ってまいりたいと思います。
〇上野副知事 私のほうには四つお尋ねがあったかと思います。
 まず、県と組合の協議の進め方についてのお尋ねでございますが、今回の裁判結果を踏まえまして、まずは、トレー組合がその資産や債権、債務の状況を整理し、次に久慈市が組合から債権回収を図ることができるかどうか見きわめた上で県として判断していくことになり、そのため、久慈市やトレー組合と必要な協議、調整を行ってまいりたいと考えております。
 次に、県民負担についてでございますけれども、判決では、組合の意図を適切に盛り込んだ契約書や仕様書が作成されていないなど、組合の主張を裏づけるような契約となっていないと判断されたところでございまして、契約行為を適切に行わなかったという点で、トレー組合に責任があると言わざるを得ないと思っております。
 一方で、事業実施に当たりましては、トレー組合に対する適正な指導監督や事業遂行上の必要な検証を十分に行わなかったという点で、県にも責任の一端があったと認識いたしておりまして、この責任につきましては、既に関係職員の処分や三役の給与の減額措置が行われております。
 今回、裁判による補助金回収は実現できなかったものでございますが、まずは、トレー組合がその資産や債権、債務の状況を整理し、その後に、久慈市が組合から債権回収を図ることができるかどうかを見きわめる必要があると考えております。今後、県といたしましては、従来の対策の再徹底を図るほか、今回の判決結果を踏まえ、新たに、第1に、機械施設等導入の際の契約関係書類の確認、指導等の措置、第2に、市町村における事業計画策定段階での実施要件審査の徹底を図るなどの追加防止策を講じまして、二度とこのようなことが起こらないよう万全を期してまいりたいと考えております。
 第3に、補助金支出についてでございますけれども、自動化ラインへの変更につきましては、国は、木製トレーの生産技術自体は既に実用化していて、量産化に適した施設の整備のため生産工程の一部を変更するものとして岩手県から説明を受け、事業計画変更を認めたとの認識を示しておりまして、国としての責任は認めていないところであります。
 最後に、補助金延滞金免除の条件についてでありますが、延滞金の免除につきましては、平成15年11月に前知事と林野庁長官との協議におきまして、林野庁長官から、県が補助金の一部返還及び補助金の回収に最大限の努力をすれば、延滞金の免除について、林野庁としてもできる限りの対応を行うとの考え方が示されたものでございます。この考え方を受けまして、県と久慈市は、3分の1の補助金を、トレー組合からの回収を待たずに先行返還するとともに、補助金回収のための最大限の努力として、トレー組合がトリニティ工業を相手に起こしました損害賠償請求訴訟を支援してまいったところでございます。訴訟支援などこれまでの補助金回収の取り組みが国に認められ、延滞金5億2、600万円余は9月17日付で免除されたところでございます。
〇工藤勝子委員 この件につきましては、県民に丁寧に、わかりやすく、県が責任を持って情報を発信する必要があるのではないかと私は思っておりますので、今後のそういう県民に対する説明に対してお願いを申し上げたいと思っております。
 いわて県民計画アクションプランにおいて、食と緑の創造県いわての実現に向けて、地域農業の核となる認定農業者や経営体育成に取り組んできたと思っております。認定農業者数は平成21年度8、332人、集落型農業経営体数も229経営体となり、集落ビジョンによる農地利用集積も進んでいると思っております。
 そこで、平成22年産米の大幅な下落について質問してまいりたいと思っております。
 農業の所得を向上するために、県は、米の生産コストの削減に向けて技術指導を強化されてきましたが、平成21年度生産コストの削減の成果と課題をお伺いいたします。
〇上野副知事 生産コスト削減の成果等についてのお尋ねでございますが、本県の米生産費は、平成20年産で10アール当たり11万9、700円となっておりまして、全国平均は下回るものの、高単価な資材の使用が多く、経営面積が狭小で機械稼働率が低いなどの理由で、東北では最も高い状況にあることから、県では、すべての農協の参加を得ましてコスト削減行動計画を策定し、その取り組みを進めてきたところでございます。
 平成21年度におきましては、第1に、燐酸、カリ成分を低減した低価格肥料の導入による肥料費の低減や、第2に、直播栽培の導入による労働時間の低減などに重点的に取り組んでおります。
 現在、平成21年産の米生産費調査の結果が公表されていないことから、生産コストの検証はまだできない段階にございますが、第1に、低価格肥料が県内8農協中6農協で新たに導入され、また、第2に、直播栽培は本年の導入面積が73ヘクタール増加するといった成果があらわれております。
 今後に向けましては、本県において高コストの要因となってございます肥料、農薬費や農機具費などの削減が課題でございまして、土壌診断に基づく施肥や病害虫の発生状況に応じた効率的防除の実施、さらには担い手への農地利用集積による規模拡大などの取り組みを進めまして、稲作経営の体質強化を図ってまいります。
〇工藤勝子委員 農家への全農県本部の概算払い金が決まりました。米の在庫増から供給過剰に歯どめがかかりませんで、県南地方A地区ひとめぼれ60キロ当たり8、700円と3、600円安、あきたこまち8、500円と3、500円安、県のいわてっこ、どんぴりゃり、かけはしも8、000円と3、500円安と大幅に減少し、水田農家に与えた衝撃ははかり知れないものがあると思っております。
 豊作の喜びもつかの間、米価の下落、どこに向かって怒りを叫べばよいか、農家の人たちは怒る元気さえも起きない、怒る気にもなれないぐらい非常に厳しい状況だと話をされております。今後、定額交付と価格下落分も補償されるとのことでありますが、いまだ制度の形も定まらず、財源不足の心配もあります。
 そこで、何点か質問いたします。
 まず、平成21年産米までの在庫数量の現状についてお伺いいたします。国の在庫対策、つまり出口対策が示されてこないことをどうとらえているのかもお伺いいたします。
 また、県産米における過剰米を主食用以外に振り向けるよう国に提案すべきと考えますが、県の考え方についてお伺いいたします。
 また、平成21年度、海外への米の売り込み状況の結果と、海外に売り込むための課題についてお伺いいたします。
〇上野副知事 何点かございましたが、順次お答えを申し上げます。
 平成21年産米までの在庫数量についてでございますが、国が公表しております平成22年6月末時点の在庫数量は316万トンとなってございまして、その内訳は、第1に民間在庫が218万トン、第2に政府備蓄米が98万トンとなってございます。7月以降の需要を見込みましても、平成22年秋以降に30万トン以上が持ち越される見通しと考えられます。また、本県の持ち越し在庫は約3万トン程度と見込まれております。
 次に、国の出口対策についてでございますけれども、国におきましては、戸別所得補償モデル対策の導入によりまして、生産数量目標に即した米の生産が進むとともに米の需給の引き締め効果の発揮が期待されるといたしまして、現時点では、価格を維持するための買い入れは行わないとしております。
 一方、平成22年産米につきましては、全国的にはいまだ過剰作付となってございまして、需給ギャップが拡大すると見込まれ、相対取引価格が下落している状況にございます。このため、県といたしましては、モデル対策の加入者が、米価の下落時における本制度のメリットを確実に享受できることはもとより、米の需給調整の実効性が確保されるよう、緊急的な過剰米の処理が必要と考えております。
 次に、出口対策に係る国への提案についてでございますが、県では、米生産農家をめぐる環境は極めて厳しい状況であると認識しておりまして、米の需給調整に係る緊急対策が必要と考えております。このため、既に、国に対しまして、過剰米については非主食用へ仕向ける緊急措置を講ずるよう提案しているところでございますが、これに加えまして、米の備蓄運営について、棚上げ備蓄方式の導入に当たり、政府買い入れを前倒しとし、かつ早期に行うことなどについて提案をしてまいります。
 次に、海外への売り込み状況等についてでございますが、平成21年度、海外への米の売り込み状況と結果につきましては、第1に、米の輸出は平成17年度から取り組んでおりまして、平成21年度は東南アジアの日系小売店を中心に販売促進活動を実施いたしました。第2に、特にシンガポールにおきましては知事みずからがトップセールスを行い、現地流通関係者に向けて県産米をアピールいたしました。第3に、平成21年度における県産米の輸出実績は23トン、前年対比149%でございまして、近年、増加傾向にございます。
 課題として申し上げますと、第1に、日本産米は現地産米と比べまして価格が高く、購買層は現地の邦人や富裕層に限られておりまして、販売先も一部の日系小売店に限定されております。第2に、また、海外におきましては、国内他産地との競争が激しい中、県産米の知名度が十分ではないことなどが課題として挙げられます。こうした課題を踏まえまして、現地の一般の方々にもすそ野を広げ、販路の拡大に取り組むとともに、岩手ならではの特徴を生かしました、例えば高付加価値米の天日干し米を提案するなど、県産米の知名度向上に取り組んでまいります。
〇工藤勝子委員 価格下落分の補てんにつきましては、全国の平均販売価格を基準とした一律の計算方式ではなく、地域ごとの、例えばこちらは東北でもいいんですけれども、細かい価格下落を補てんすべきと思いますが、県として、国にどのようにこの点について働きかけているのかお伺いしたいと思います。
 知事にお伺いいたします。知事は、多分、お米をつくっているわけはありませんので、消費者の一人であると思っております。また、多くの国民、消費者は安全・安心、おいしいお米が安く手に入ることは非常に歓迎しているのではないかと思っております。しかし、米農家の人たち、担い手、集落ビジョンに夢を描いてきた人たちの将来の農業振興を考えるときに、大幅な米価の下落というものは非常に危機的な状況ではないかと思っております。来年度も元気をもって岩手のおいしいお米をつくるために、知事は、農家の人たちと、今後ひざを交えて、まさに生の声を聞く懇談会等を計画しておりますか、計画したいと思いますか、その点をお聞きしたいと思います。
〇達増知事 私も親戚にはお米をつくっている農家がありまして、田植えとか稲刈りとか、機械をいじらせてもらったりしたこともございます。
 今回の価格下落は非常に異常なことでありまして、大きな背景としては、日本全体のデフレに歯どめがかからないという中で、すべての物の値段が下がっていく中で米の値段も大きく下がろうとしている。先ほど、答弁の中で申し上げましたけれども、異常な気象の中でも、岩手はまだ朝夕の涼しさということがある程度、全国他の地域に比べればまだ涼しくなっていたようでありますので、品質はいいと聞いております。まず、少しでもその品質に見合った価格で買っていただけるよう、消費者の側からすれば、やはり安全・安心、そして最近では農家の持続性といったことにも配慮しながら消費活動を行うという意識が高まっていると思います。消費の現場、生産の現場、また日本全体の活力、そういったことを県民みんなで情報交換、意見交換しながら、県政をしっかり進めていくことが重要と考えております。
〇上野副知事 価格下落補てんにつきましてお答えを申し上げます。
 米の戸別所得補償モデル事業におきましては、変動部分の交付単価を全国一律とした国の基本的な考え方は、販売単位を高める取り組みなど、努力に応じて所得の向上が図られることを目的としたものと承知いたしております。
 一方で、農業者の努力では克服できない地理的条件が不利な地域などに対しましては、現在、生産コストのかけ増し分を直接補てんする中山間地域等直接支払制度が措置されているところでございます。
 県といたしましては、こうした国の考え方を踏まえまして、まず、消費者ニーズに即した減農薬、良食味米の生産・販売によるいわて純情米の評価向上の取り組みを一層強化するとともに、独自の販売を志す農家の方々に対する販路開拓の取り組みを支援するなど、県産米の販売単価を高める取り組みを推進し、農家の手取りの確保を図ってまいります。
 また、国のモデル対策の実施状況を注視いたしまして、変動部分の交付単価算定の基礎となる全国平均の販売価格の下落分と、本県産米の販売価格の下落分との間に大きなギャップが出るなど、制度上の問題が生じた場合には、国に対しまして制度の改善を提案してまいります。
〇工藤勝子委員 次に移りたいと思っております。
 これは、毎日新聞に掲載された記事であります。これが私の住んでいる笛吹牧場であります。笛吹牧場はもう牧場を中止しまして、シカ牧場となっております。こういう写真が掲載されて、まさに観光になるのではないかというぐらいシカがおります。それによって、今度はこの鳥獣被害についてお伺いしたいと思っております。
 中山間地における高齢化・過疎化、そして温暖化現象によって、シカ、イノシシ、ハクビシンなどの鳥獣被害が年々拡大していることは、農業振興を進める上で大きな課題でもあります。被害の広がりを受けて、特に被害額の大きいシカについて、県ではどのような対策を講じられるのか、順次お伺いいたします。
 鳥獣による被害の実態についてお伺いいたします。
 五葉山のシカの生息調査は5年に1度実施している中で、現在の生息頭数と、適正管理頭数を2、000頭とする目標における課題についてお伺いいたします。
〇上野副知事 シカの被害の実態について御説明いたします。
 シカによる農林業被害は遠野市、釜石市、大船渡市などで発生いたしておりまして、平成21年度の被害額は1億7、400万円ということで、前年度に比較しまして400万円程度の増となっております。特に飼料作物の被害が大きく、農林業被害の過半を占める9、800万円となってございます。
〇宮舘副知事 五葉山地域におけるニホンジカの適正目標数の課題についてでありますが、五葉山地域のニホンジカについては、第三次シカ保護管理計画におきまして適正生息数を2、000頭としておりますが、平成21年度末の生息数は約4、000頭と推定しているところであります。このことから、適正生息数に近づけていくことが課題となっておりまして、現在、1人1日当たりの捕獲上限数の緩和あるいは休猟区等の見直し、個体数調整に有効な雌ジカの捕獲を推進するなどの取り組みを行っているところであります。
〇工藤勝子委員 続きまして、平成21年度捕獲頭による食肉利用状況について、また、販売状況の把握についてお伺いいたします。加工処理施設の現状はどのようになっているのかもあわせてお伺いいたします。
 また、農林水産省は鳥獣被害緊急対策を打ち出しました。概算要求で5倍とする113億円にふやしました。国も重要課題ととらえていると思っております。そういう中において、電気さく、ワイヤメッシュなどの侵入防止さくや加工処理施設の設置など、地域支援活動を支援する方向であります。
 そこで、県として、加工処理施設の検討はされているのか、あわせてお伺いいたします。
 最後までお聞きいたします。
 狩猟者確保の課題と今後の取り組みについて、高齢化によって猟友会のメンバーが非常に減少している状況であります。また、若者の狩猟に対するニーズは非常に低いと思っております。また、農林水産部と環境生活部の連携と横断的な対策の考えについてもあわせてお伺いいたします。
〇上野副知事 まず、私のほうから御説明を申し上げます。
 最初に食肉利用状況等についてでございますが、捕獲したシカは、単なる廃棄物としての処理にとどまらず捕獲個体の有効利用が可能でございまして、県内では、大船渡市で捕獲した一部を食肉利用いたしております。平成21年度は、市の捕獲頭数は794頭でありますが、そのうちの28頭が処理をされておりまして、カレー、ハンバーグのレトルト食品として地元の道の駅や温泉施設で販売されていると聞いております。
 次に、加工処理施設の現状についてでございますけれども、現在、県内では大船渡市におきまして1カ所設置されております。加工処理施設の整備につきましては、急増しているシカの有害捕獲を促進させるとともに、捕獲されたシカの肉を地域資源として活用する観点からも、有効な手段の一つであると考えております。しかしながら、他方で、シカの肉は一般に食肉利用になじみが薄いことや、安定した捕獲頭数の確保が困難なことなどから、加工処理施設の運営に当たりまして採算面での問題があることや、また、加工処理に対する意識に地域差があることなどを踏まえますと、県としての施設の設置につきましては慎重な検討が必要ではないかと思っております。さらに、食肉等の特産品化による地域ブランドの創出や、捕獲鳥獣を処理する際の運搬による移動距離等も考慮すると、まずは、地域が主体となって施設の設置に向けた検討を行うことが適当であると考えておりまして、県といたしましては、こうした取り組みを希望する地域に対しましては、その検討に参画し、指導、助言を行うなど、適切に対応してまいりたいと考えております。
〇宮舘副知事 狩猟者確保の課題と今後の取り組みについてでありますが、本県における猟友会の会員は、平成16年度は2、779人であったものが、平成21年度には2、089人と減少傾向にあります。また、平成21年度における60歳以上の会員の占める割合も、御指摘のように、60.7%と高齢化が進行しているところでございます。
 狩猟は、農林業などに被害を与える有害な鳥獣の個体数を調整するという重要な役割を果たしておりまして、今後さらに狩猟者の高齢化が進行し、減少した場合、有害鳥獣捕獲や野生鳥獣の生息状況調査等の実施にも支障が出ることが懸念されております。
 県といたしましては、今後とも猟友会と連携しながら、狩猟免許試験予備講習会の実施、あるいは狩猟免許試験の休日の開催など、新規狩猟免許取得者の確保を図っていきたいと考えております。
 それから、農林水産部と環境生活部との連携等についてでございますが、ニホンジカの保護管理につきましては環境生活部、これは自然保護課が事務局となっておりまして、シカ保護管理検討委員会を設置しております。学識経験者、関係団体、市町村はもとより農林水産部の担当課、広域振興局の環境・農林担当部署を加えまして、関係者が連携いたしまして、個体数管理や被害防除対策、生息数調査等の取り組みを実施しているところであります。
 また、市町村が鳥獣被害防止特措法に基づきます市町村被害防止計画―これは現在10市町が策定済みでございますが―を策定する際は、農林水産部と環境生活部が事前に協議し、調整を図っておりまして、今後におきましても、両部の連携を図りながら、地域が主体となった被害防止に向けた取り組みを支援してまいります。
〇工藤勝子委員 このシカ対策について、生息調査は五葉山周辺とだけございますけれども、ぜひ遠野市まで含めていただいて、実態をちゃんと調べていただきたいということを要望しておきたいと思っております。
 次に、平成21年度における医療費が厚生労働省の集計により発表されました。35兆3、000億円となり、前年度より1兆2、000億円、3.5%の増加となっております。これは、公的医療保険と公費から支払われた分を集計したものとありますが、日本全体における高齢化に伴い、70歳以上の医療費が全体の44%を占めることになっております。1人当たりの医療費は27万6、000円、70歳未満は16万8、000円に対して、70歳以上は77万6、000円、後期高齢者制度の対象となる75歳以上では88万2、000円となっております。
 県における医療費と1人当たりの医療費はどのような状況になっているのかお伺いいたします。また、早期発見、早期治療のため健康診断を受診することが非常に大事になってくると思っておりますが、受診状況と、医療費抑制に向けた取り組みや県民に周知を図るための対策についてお伺いいたします。
〇宮舘副知事 医療費の状況についてでありますが、医療費につきましては厚生労働省において集計されておりまして、都道府県ごとの医療費については3年ごとの公表でございます。平成20年度のものはまだ現段階では公表されていないということでございます。したがいまして、直近の数値は平成17年度のものでありまして、本県の医療費は3、631億円、また、1人当たりの医療費につきましては26万2、000円となっておりますが、都道府県ごとの年齢階級別の1人当たりの医療費は公表されていないところでございます。
 それから、医療費抑制に向けた取り組みについてでありますが、平成21年度において市町村が実施いたしましたいわゆるメタボ健診と言われる特定健康診査の受診率、これは速報値でございますけれども、39.5%となっております。また、市町村が実施いたしました主ながん検診の受診率は、胃がん検診が19.4%、大腸がん検診が23.5%、乳がん検診が28.5%という状況でございます。
 医療費の抑制に向けましては、まず、生活習慣病の予防には特定健康診査の受診率の向上を図り、適切な指導を行うことが重要でありまして、受診率の低い市町村の底上げなど、医師会等の協力を得ながら、住民が身近な医療機関でも個別に健診が受けられる体制づくりを進めているところでございます。
 また、がん検診の受診率向上に向けましては、テレビCMの放映や賛同企業等と連携したパンフレットの作成、シンポジウムの開催など、正しい知識の普及や受診勧奨などを行っているところでございます。
 これに加えまして、在院日数の短縮も進める必要がありますが、質が高く効率のよい医療の提供を促進するとともに、脳卒中などの特定疾患につきましては、地域の複数の医療機関等が連携して治療を受け持つ地域連携クリティカルパスの導入を進め、各医療機関における適正な在院日数の運用を図ってまいります。
 さらに、これまでも県民みんなで支える岩手の地域医療推進プロジェクト事業等を活用いたしまして、適正な受診方法などについての県民への普及啓発を図ってまいりましたが、できるだけ通常の診療時間内に受診するように、引き続き周知を図ってまいります。
〇工藤勝子委員 いわて県民計画実施状況の報告によりますと、医師養成、招聘等による医師確保数は31人となりました。目標値の28人に対して増となり、達成度はAという評価になりました。医師確保対策に最優先で取り組み、御努力されておりますことには感謝を申し上げます。
 県民は、医療の高度化や専門化、医療安全を求めている反面、生活圏の中で、一番身近な地域診療センターや地域病院における医師の充実を求めております。医師の地域偏在や、産科、小児科の特定診療科のほかにも、医師の不在によって地域医療は深刻な状況にあります。この点からも、県民計画の評価による達成度Aには県民は実感がないと思います。数値目標の設定のみで評価Aとはいかがなものでしょうか。この達成度Aについての評価の所感についてお伺いいたします。
〇宮舘副知事 医師確保対策に対する評価についてでありますが、この指標として設定しております医師養成、招聘等による医師確保数は、奨学金制度による新規医師免許取得者数や、医師の招聘事業による即戦力の医師の招聘数などの目標数値の合計としているところであります。奨学金制度におきましては、平成21年度は21名が医師免許を取得したところであり、また、医師の招聘事業では、10名の医師を招聘した結果、実績として目標を上回る年31人となったことから、平成21年度事業の実績測定評価の結果といたしまして、達成度をAとしたところでございます。
 しかしながら、県内の病院勤務医の状況は、先日、国の必要医師数調査の結果も公表され、医師不足の実態が改めて浮き彫りとなったように、医師の地域偏在や特定診療科の医師不足など、依然として厳しい状況にありまして、県民の地域医療に対する実感も同様であると認識しております。引き続き、医師確保対策アクションプランに基づく医師確保対策に全力で取り組んでまいります。
〇工藤勝子委員 この達成度Aという評価についてでございますけれども、今後、またこのような評価を公表されるのか、それとも、もう少し目標を高く掲げていくのか、その点についてもお伺いいたします。
〇宮舘副知事 現在、計画に掲げております目標数値については、引き続きフォローしてまいりたいと思いますが、何かほかの測定評価ができるものがあれば、検討していきたいと思います。
〇工藤勝子委員 地域医療を守るため、医師の退職を防ぐための勤務環境改善にも積極的に取り組まれております。県立病院においては、医師の定着支援に関するプロジェクトチームも立ち上げられ、検討を重ねられるとともに、医療クラークの増員は定員100人と、平成21年11月には51人をふやしております。さらに、今年度は8月で26人の増員をされまして、177人となっております。また、院内24時間保育の拡大で女性医師支援などが行われておりますが、医師の定着など、その成果についてお伺いいたします。
〇宮舘副知事 医師の定着についてでありますが、本年9月1日現在の県立病院の常勤医師数は467人となっておりまして、平成21年度末現在の常勤医師数455人に比べますと12人ふえております。減少傾向に一定の歯どめがかかりつつあるものと考えているところでございます。
 これまで、医療クラークの増員や院内24時間保育の拡大、産婦人科医に対する分娩手当の創設などに取り組んでまいりましたが、今年度はさらに諸手当や学会出席旅費などについて重点的に検討を行うこととしておりまして、県立病院でできるだけ長く勤務いただくように、医師の定着支援に向けて一層取り組んでまいります。
〇工藤勝子委員 次に、各地域診療センターにおける医師確保状況と、休床状態となっている空きスペースの活用に向けた市町村と住民との協議の状況と、今後の問題点についてお伺いいたします。
〇宮舘副知事 地域診療センターの常勤医師の状況についてでございますが、紫波地域診療センターでは、ことしの4月から内科医が1名増加いたしまして、現在、常勤医師3名となっております。大迫地域診療センターは常勤医師が2名でございます。住田地域診療センターもこの1月から内科医が1名増加いたしまして、常勤医師が3名となっております。九戸地域診療センターは常勤医師が2名でございます。
 地域診療センターの空きスペース活用に向けた市町村の検討状況と問題点についてでありますが、紫波地域診療センターでは、本年度、紫波町が地域医療対策専門員を配置するなど、地域医療体制の方向性について、引き続き関係機関と協議しているところでございます。
 それから、大迫地域診療センターでは、本年8月に地元有志が社会福祉法人を設立し、空きスペースを活用して特別養護老人ホームを運営するという方向性が示されておりまして、社会福祉法人の設立や特別養護老人ホームの開設に向けて許認可事務を支援していく取り組みをしていく必要があると考えております。
 それから、住田地域診療センターでは、住田町が開催いたします地域医療対策協議会で、空きスペースを活用して、退院後すぐの自宅療養が困難な方などが利用する短期の宿泊施設の設置を目指す方向性が示されているところでございます。ただ、旅館業法や医療法等の法令に照らしながら、この内容を精査していく必要があると考えているところでございます。
 それから、九戸地域診療センターでは、現在、九戸村が、空きスペースをどのような施設として活用していくか検討を行っているところでございます。
 県及び医療局では、地元市町村の検討状況を踏まえまして、許認可や法令の規制、各種補助制度の活用に向けたアドバイスや、施設の活用に係る減免措置を行うなどの支援をしていくこととしております。
〇工藤勝子委員 廃止となりました地域診療センターの空きスペースの活用に向けて、それぞれ住民の人たちが、どうしようかなということで、自分たちの地域の医療を守るために、いろいろな知恵を出しながら、それぞれ特別養護老人ホームとか、いろんな形で頑張っていると思っております。
 ただ、住田町の多田町長さんからお話を聞きましたことに関しまして、旅館業法にかかるというようなことがありまして、これをどのようにしたらいいか、非常に頭の痛いところだということが、私たち自民党の地域要望懇談会で地域を回ったときにそのようなお話がされました。そういう件に関して、県は、どのような御指導といったらいいのでしょうか、助言ができるのか、また、この点についての難しい問題点というのはあるのか、短期療養としての課題というものはどのようにとらえているのかお聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。
〇宮舘副知事 詳しい内容については私もちょっと聞いてはおりませんが、いずれ、この事業内容、どういった事業になるのか、そして、それが旅館業法に抵触するのかしないのか、その辺をよく相談して、指導といいますか、協議をしていきたいと思っているところでございます。
〇工藤勝子委員 どうぞよろしくお願いしたいと思っております。
 知事は、県民が安全に、そして安心して医療を受けられるよう医師を確保するために、昨年は厚生労働大臣を訪問いたしております。医師の地域偏在や診療偏在を解消し、地域医療の再生に向けての提言も行っておりますが、その後、どのような行動やアクションを起こされたのかお伺いいたします。
〇達増知事 ことし8月も、厚生労働省政務三役に、医師の地域偏在などを解消するため、地域医療に関する基本法を新たに制定し、都道府県、医療圏ごとに必要な病院勤務医師数を算出するガイドラインを制定し、臨床研修制度と一体化した運用等で、医師不足地域における医師の病院勤務の義務づけを図ることなどについて政策提言を行ってまいりました。
 また、今後も、医療問題に関するシンポジウムなどの公開の場において、提言に至った経緯や内容について説明し、こうした地域偏在、診療科偏在の解消に向けた抜本改革の必要性について、県内外にも広く同士を募りながら、呼びかけていく必要があると考えております。
 国に対して提言を行った際に、県においても基本法の骨子を考えてほしいと言われておりますので、現在、いろいろな医療関係有識者と意見交換をしながら準備をしているところでありまして、今後、より具体的な提言に向けて取り組んでいきたいと考えております。
〇工藤勝子委員 昨年度だったと思いますけれども、知事は、たしか、民主党に政権が交代すれば医師確保について自信があるようなお話をされて、それがマスコミに報道されたことがございましたが、政権交代から1年、まさに民主党政権で今進められておりますけれども、その自信のほどについてお伺いしたいと思います。
〇達増知事 診療報酬の改定によりまして、勤務医の環境を改善していこうという方向に180度かじが切られたところでありますし、また、全国的に都道府県ごとに医師の不足数について初めて本格的な調査が行われて、先ごろ、その結果が発表されたところでございます。また、地域医療基本法の制定といったことについて、政務三役がそれをきちんと聞き、地方と協議をしてくれているということも今までなかったことではないかと思います。しっかり地方の声を国に届けながら取り組んでいきたいと思っておりますし、国のほうの今の動きをさらに促してまいりたいと思います。
〇工藤勝子委員 大変申しわけありませんけれども、もう一点、後期高齢者医療制度についてお伺いしたいと思っております、質問要旨は出しておりませんけれども。
 後期高齢者医療制度を改革しなければならないんだというような方向も出されております。そういう中において、知事の所感で結構ですので、後期高齢者医療制度というものを今後どのように改善していったらならば医療費が抑制されるのかというお考えがありますか、お伺いしたいと思います。
〇達増知事 戦前から戦中戦後の日本の大変厳しい時代を支えてこられた皆さんが、体や心が弱ってきたというときに、それをきちんと支えることができないというのでは、何のための国か、日本かということになると思います。国民がしっかりとそのことに思いをいたして取り組めば、解決できない問題ではないと思いますので、私もそういったところからいろいろ取り組んでいきたいと思います。
〇工藤勝子委員 政権が交代したわけでありますし、達増知事は民主党の党籍を持っておられます。まさに直通で厚生労働大臣にも会える立場になっていると思っております。ぜひ、岩手の現状を率直に訴えて、医師の偏在を少しでも少なくするというのでしょうか、少しでも岩手県に医師が着任するような方向で、知事としての役割を果たしながら頑張っていただくことに期待をしたいと思っております。
 また、医師確保対策について、市町村との連携というのは非常に大事だろうと思っております。遠野市においても医師確保対策室を設けておりまして、県立病院と一緒になって医師確保対策に向けて一生懸命取り組んでおります。馬をいただいたか、いただかないか、その辺のところは確かではありませんけれども、おいでになっている先生は、家庭菜園、農業を少ししながら、非常に地域の人たちと密接な、お祭りに参加したり、いろいろな行事に参加しながら―この間は子供がのど自慢大会に出て1位をとったりとか、そういう形の中で、地域とのコミュニケーションを図りながら、医師確保そして定着を一生懸命進めているところであります。
 そういう関係で、今後、市町村とまさに県との連携、まして医師会との連携も非常に大事だと思っておりますが、取り組みの成果があったと思いますが、それについてお伺いいたします。
〇達増知事 県では、岩手県医師確保対策アクションプランに基づいてさまざまな施策を実施しているところでありますが、このプランの推進に向けて、市町村や医師会を重要な施策推進のパートナーととらえ、これら関係機関との連携のもと、医師確保の取り組みを進めてきたところであります。
 まず、奨学金制度による医師養成事業において、県と市町村の共同事業として市町村医師養成事業を実施しているところでありまして、平成21年度の貸付数は13名となっており、着実に奨学生による医師の確保を進めてきているところであります。
 また、今年度からは勤務医の勤務環境の向上による医師定着を図るため、市町村が、地元医師会の協力のもと、開業医の派遣による診療応援を行う中核病院診療応援事業など、県と市町村、医師会が連携した取り組みによって、地域の中核となる病院を支援する事業を、県立4病院において実施しているところであります。
 さらに、医師の招聘においては、県が医師に係る無料職業紹介事業を実施し、随時、市町村医療機関の医師募集状況を把握しており、面談した医師のニーズに基づく市町村医療機関の紹介によって市町村医療機関に招聘が実現した例も出ております。また、今般の県立宮古病院循環器科の医師確保の例のように、地元医師会長との緊密な連携による成果もあらわれてきております。
 今後とも、各市町村や医師会などと十分な連携を図りながら、各団体が独自に行う取り組みとも相まって、より効果的な医師確保が行われるよう取り組んでまいります。
〇工藤勝子委員 地方にとりまして、県立病院の存在というのは、自分たちの命を守ってくれるまさに貴重な財産であります。私たちは、この財産をしっかり地域で守っていかなければならないという思いにかられているところであります。そのためにも、地域に住む私たちが医療を考えて、みずからが、また県がよりよい病院づくりというもの、環境づくりというものを進めていかなければならないのではないかと思っております。これは、県だけが考えるのではなくて、私たちが利用する県立病院をまさに財産として考えて、よりよい医療のためにどんな手助けができるかというようなこともともに考えていかなければならない、まさに医療としての地域総合力というものが非常に大事になってくる時代に入ってきたと思っております。
 医療圏ごとに懇談会も行われております。私は、逆に、そういう大きな医療圏ではなくて、それぞれの地域にある、地方にある県立病院と地域住民の人たちとの懇談会、今後の病院の見通しと申しましょうか、収支報告も含めながら、いろいろな形でそういうところとの懇談会をするべきだと。余り大きくなくて、まさに身近なところで、住民の人たちとの懇談会をする必要があると思っております。そういう中におきまして、知事、副知事、執行部におきましては、今後ともそういう部分で一生懸命取り組み、懇談会の開催を要望いたします。
 以上をもちまして総括質疑を終わらせていただきます。誠意ある御答弁をいただきまして、まことにありがとうございました。
〇三浦陽子委員長 この際、世話人会の申し合わせにより、10分間ほど休憩いたします。
   午後2時54分 休 憩
午後3時12分 再開
〇三浦陽子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 次に、地域政党いわて飯澤匡委員。
   〔飯澤匡委員質問者席に着く〕
〇飯澤匡委員 地域政党いわての飯澤匡でございます。
 前者お二方とちょっと重複する部門もあります。少し視点を変えていくかもしれませんが、その点留意して御答弁を願います。
 まず最初に、財政規律の基本的な考え方についてお伺いします。
 平成21年度予算は国の経済対策で積極型予算を組みましたが、今後も歳入は、交付税や臨財債など依存財源がなければ立ち行かない本県の財政状況であると考えます。地方分権が進展し、地方政府という言葉も出てきております。このような場合を想定して財政の健全化は今以上に求められると思いますが、本県の財政規律の基本的な考え方を伺います。
〇達増知事 本県の財政規律の基本的な考え方についてでありますが、まず歳入面では、あらゆる手段による収入の確保、地方税財政制度の改正に向けた働きかけ、そして歳出面では、不断の行財政改革等、歳出削減の取り組みや選択と集中の徹底を行いつつ、地方公共団体の財政の健全化に関する法律に基づく健全化判断比率などの各種指標を参考としながら、県民の将来負担を過度に増加させることのないよう適切な財源対策を行い、予算を編成することが財政規律の基本的な考え方であります。
〇飯澤匡委員 先ほど総務部長から国の今後二、三年の地域財政フレームについて言及がありました。大変財政状況は厳しいんですが、二、三年は安定するということです。地域経営の立場から、経営者の立場として、今後二、三年どのような財政規律のもとに県政運営をなされようとするのか知事に伺います。
〇達増知事 やはり本県の財政規律の基本的な考え方は、歳入面で、あらゆる手段による収入の確保、地方税財政制度の改正に向けた働きかけ、そして歳出面では、不断の行財政改革等、歳出削減の取り組みや選択と集中の徹底を行いつつ、健全化判断比率などの各種指標を参考としながら、県民の将来負担を過度にさせることのないよう適切な財源対策を行い、予算を編成することが財政規律の基本的な考え方であります。
〇飯澤匡委員 地域経営の観点に立ってという聞き方をしたんですが、答弁がないようですので、また後日に回したいと思います。
 国の財政の悪化と人口減社会は決定的に地方に不利に働き、事業の取捨選択だけではなく、目的税を含んだ地方税にも切り込んでいく必要があると考えますが、県民に対して税負担のあり方について知事の所見を伺います。
〇達増知事 税負担のあり方についてでありますが、人口の減少は、消費経済活動の低下につながるおそれがあり、自主財源である県税収入の減少を招く可能性があると考えられます。
 現在、全国の地方自治体において、独自の施策に対応するための法定外目的税等の導入及びその検討が行われているところでありまして、本県においても、これまで、法定外目的税である産業廃棄物税、県民税の超過課税であるいわての森林づくり県民税、また、特定区域における産業の活性化に関する条例に基づく課税免除等、導入可能な税制を検討し、県民の理解を得ながら順次導入をしてきたところであります。
 厳しい財政状況のもとで、地域主権改革を進めるに当たりましては、みずからの創意工夫による、実情に合った住民本位の行政サービスを提供していくことが重要であり、このための費用については受益と負担のあり方を含め幅広く議論を行い、必要に応じて課税自主権の活用も図りながら検討していくことが必要と考えております。
〇飯澤匡委員 一方、先ほど地方政府という言葉を出しましたが、要するに自治意識を醸成するということが今後の課題となると思いますが、納税者の同意という場面を地方自治のシステムに組み入れるべきという考え方、これは片山総務大臣が出しておりますが、それについて知事の所感を伺います。
〇達増知事 代表なくして課税なしというのが民主主義の原理原則だと思いますので、そういった趣旨をしっかり地方においても実現していくことが大事だと思います。
〇飯澤匡委員 次は、森のトレー事案について伺います。
 原告の被告に対する損害賠償請求は全面的に認められないとの判決を受けて、原告─これはトレー組合ですが、久慈市及び県は協議の結果、控訴を断念したとの報告がありました。これによって国への補助金の返還金は裁判で勝ち取るとの方針は事実上変更されたことになりました。よって、国が久慈市を経由しトレー組合に補助した15億円余は県民負担となることが決定いたしました。
 なぜ控訴を期限前に早々と断念したのでしょうか。県は訴訟で返還金を回収するという基本スキームの大転換は、県民に説明責任を果たせるとお思いでしょうか、お伺いいたします。
〇達増知事 なぜ控訴を控訴期限前に早々と断念したのかという御質問でしたけれども、県では今回の判決後、速やかに判決文を入手し、トレー組合、久慈市とともに判決内容を精査し、関係弁護士などの意見も伺いながら十分検討を重ね、最終的に判断したものであります。
 今回の判決では、トレー組合が主張してきたトリニティ工業の債務の存在が否定され、原告側はこれを覆すだけの新たな証拠の提出が困難で、控訴審での勝算が見込めないことから、残念ながら控訴を断念せざるを得なかったものであります。
〇飯澤匡委員 県民に説明責任を果たせると思うかという点について答弁願います。
〇達増知事 先ほど工藤勝子委員に御答弁申し上げましたが、今後、損害賠償請求訴訟や国庫補助金返還といった平成16年3月の検証以降の取り組みについて、十分に調査をして報告書として取りまとめ、県議会を初めとして県民の皆様に対して説明に努めていきたいと思います。
〇飯澤匡委員 平成19年10月の国会において、会計検査院が不当な受給と認定して返還を求めた国の補助金について問題が浮き彫りになり、最も未返済額が多かった林野庁が交付した当該事業もフォーカスされ、結果、林野庁の対応も現実的かつ厳しいものと変化いたしました。
 そこで県は、延滞金が累積していく状況の中で一定の対応が必要と考える段階と判断し、林野庁と協議を実施し、補助金の返還免除を実施することは困難と判断いたしました。県は国に対して、平成20年度―もう既に達増県政になっておりますが―、3年間で分割して返還することを要請し、延滞金の免除の措置の見込みを得ました。平成20年当初予算として計上し、21年と22年は債務負担行為として計上し、議会もそれを議決した経緯がございます。
 3年分割で返還金を処理するという方針が決定した時点で、訴訟で返還金を回収する基本スキームは揺らいだのではないか。この間、庁内でどのような協議がなされたのか示していただきたい。
〇達増知事 まず、分割納付についてでありますが、林野庁から平成19年12月に、岩手県が返還金の残額全額について可及的速やかに返還することを明確にした場合、延滞金の免除は可能と見込まれる旨の提案を受け、平成20年度から3年分割で残額全額を返還いたしましたが、訴訟で返還金を回収するという基本スキームを変えたものではなく、訴訟支援はその後も久慈市と連携を図りながら継続して行ってきたところであります。
 その間の庁内協議についてでありますが、平成19年12月に林野庁から、岩手県が返済金の残額全額について可及的速やかに返還することを明確にした場合、延滞金の免除は可能と見込まれる旨の提案を受け、県では、1、延滞金発生のリスクは解消できるのか、2、国の責任を理由とした補助金返還金の一部免除協議を行うことは可能か、3、分割返還とその間の延滞金の免除も可能かといった点などを内部で検討し、林野庁と繰り返し協議を行ったものであります。
 その結果、林野庁からは、会計検査院からの指摘を踏まえ、補助金適正化法に基づきその全額返還を命令するもので、全額返還が必要である旨の回答があり、返還金の一部免除は認められませんでしたが、延滞金のリスクが完全に解消できること、3年分割による返還とその間の延滞金の免除も可能となったことから、県の総合的な判断として平成20年1月にこの提案を受け入れることとしたものであります。
〇飯澤匡委員 私は、平成19年12月に明らかにこの潮目が変化をしたと。現実的対応とはいえ、県費で返還するという判断が確定した時点で訴訟で県民負担を軽減するというモチベーションは低下したのではなかったのでしょうか。知事は、この点についてどのような思いを持っているでしょうか、お伺いします。
〇達増知事 そういうことはございません。
〇飯澤匡委員 平成19年3月に総務部が検証報告書を作成しております。その報告書によれば国の責任について言及があり、会計検査院の指摘にも疑問が呈されております。
 確かにこのトレー事案は不合理に県の責任のみが強調され、事業の認定や事業の推進段階でも節目節目に補助金の適用を急ぐ国の見えざる圧力がかいま見えます。私は、報告書のとおり、国の責任を追及する姿勢が継続される必要があったのではないかと思いますが、県はどのように考えておりますでしょうか、お伺いします。
〇達増知事 平成16年3月に(飯澤匡委員「あ、失礼」と呼ぶ)総務部がまとめた報告書だと思いますけれども、平成19年度の国との補助金の残額返還協議においても、国にも責任の一端があることを理由に返還の一部免除を要請いたしました。しかし、補助金適正化法に基づく返還命令であることを根拠に国はその責任を認めなかったところであります。
 県といたしましては、今後、本事案について、訴訟や国への補助金返還などを中心に改めて調査を行う中で、国と県との関係や国の責任、そして補助金適正化法上の課題についても整理し、明らかにしてまいりたいと思います。
〇飯澤匡委員 この林構事業にふさわしい補助金の額であったかどうかという点と、林野庁はさらにさかのぼって補助金を申請するなど、私は不手際が国においてもあったと。そして補助金返還の会計検査院の指摘を受けて林野庁は、会計検査院の全額不当になぜ反論しなかったかというようなことも県に言っているわけです。これは明らかに、補助金を支給するが、ところが会検から指摘されたら全く私は知りませんよというような態度については、私は非常に国の責任は重いと思っていますが、この点について知事はどのように考えますか。
〇達増知事 やはり国にも責任の一端があるということで返還の一部免除も要請した経緯もございますので、改めて調査を行う中で国の責任についても整理し、明らかにしていきたいと思います。
〇飯澤匡委員 トレー組合の責任は重大であります。ただし、先ほど申し上げましたように、この林構事業を立てるに不相応な補助金メニュー自体にも私は問題があると。地方主権時代をにらんだこの機に、地方の実態に即した補助金のあり方についても総括すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 続けてお伺いします。
 県民への説明責任を果たすには全庁的な再発防止策の提示などが不可欠であると考えますが、再発防止について組織的にどのように対応するのか、全庁的かつ具体的な方策を示していただきたい。
 全庁的な検証を新たにするという発言が農林水産部長からありました。検証体制をどのように構築し、期限をいつに定めて行うのか示していただきたい。
〇達増知事 まず、補助金行政のあり方についてでありますが、国の補助金については、国が設計した制度の枠に縛られ、地方の創意工夫の余地を狭める、補助要件を満たすべく、地域ニーズから離れた過大な水準で行われる、事業が国、県、市町村、事業主体など複数の主体がかかわり、事務手続が煩雑になるほか、責任の所在があいまいになる、こういった弊害や懸念が指摘されているところでありまして、地方がそれぞれの実情を踏まえて自立的、自主的に判断し、その結果についても地方が責任を持って対応する仕組みに改めていくことが重要と考えます。
 このため、国の義務づけ、枠づけや政策誘導と一体化した財政的関与の縮小、廃止が必要と考えるところでありまして、現在、国においてはひもつき補助金の一括交付金化などが検討されているところでありますが、こうした制度改正や地方税財源の充実によって、地方の自由と責任のもとで行政運営を行っていくことが可能となるよう、県としても提言や働きかけを行っていく考えであります。
 次に、全庁的、具体的方策についてでありますが、本事案を教訓といたしまして、平成15年度中から補助事業の適正な実施のために、1、事業導入に係る事業の必要性、適正規模、社会的ニーズ等の調査、評価の徹底など、事業導入に係る事前評価の徹底、2、審査体制の強化による事業計画の厳密な審査、3、新規開拓分野の事業に係る中間検査の実施、4、事業開始後の事業評価の実施、5、完成検査の充実による検査機能の強化、6、事業完了後の本庁職員等による事後指導の強化、7、補助事業の根拠となる法令等の遵守に係る周知徹底、以上7項目の再発防止策を講じてきたところであります。
 今回の判決結果を踏まえ、これまでの再発防止策を再度徹底しますとともに、新たに、1、機械施設等導入の際の契約関係書類の確認、指導等の措置、2、市町村における事業計画策定段階での実施要件審査の徹底を図るなどの追加防止策を講じてまいります。9月県議会での御議論を踏まえて内容をさらに精査し、できるだけ早い時期に再発防止策に取り組むことといたしたいと思います。
 なお、これらの再発防止策については全庁的に情報共有を図り、農林水産部のみならず、県全体として二度とこのような事案が発生することのないよう取り組んでまいりたいと思います。
 検証体制の構築及び期限についてでありますが、平成16年3月に公表した検証は、事案発生に係る組織体制等の問題点を明確にすることを主眼に、職員に対する処分をも念頭に置いたものでありますことから、事業の所管部局ではない総務部がより中立、公平な立場で事案の発生から会計検査院による指摘後の県の対応までを明らかにしたところであります。今回は、それ以降の損害賠償請求訴訟や国への補助金返還といった事実について、実際にこれらに取り組んだ農林水産部が中心となって調査をし、早い時期に議会及び県民の皆様に明らかにしたいと考えております。
〇飯澤匡委員 次に、トップマネジメントによる県政重要課題の解決策についてお伺いします。
 最初に、農業施策についてお伺いします。
 国においては、農政の大転換が政権交代によって図られ、今後は創設された戸別所得補償制度を軸に農政が展開していくことになりますが、米価の下落と価格補てんを逆手にとったモラルハザードとも言える価格操作により生産者の生産意欲をそぐような現象が既に起きており、農政に対しての信頼が揺らいでいます。
 従事者の減少、高齢化による就業構造の脆弱化の度合いが強まることは必至であり、本県のこの現況を踏まえ、知事は本県農業の展望をどのように描き、政策化していくつもりなのかお伺いいたします。
〇達増知事 まず、本県農業は、地域経済を支える基幹産業として大きな役割を担っているところでありますが、近年、担い手の減少や高齢化の進行、農地の荒廃などさまざまな問題を抱えております。こうした課題を乗り越え、農業が元気を取り戻すことが本県地域経済の活性化につながることであり、そのためには、意欲と能力のある担い手を確保、育成し、このような担い手が中心となった農業構造を構築することが重要と考えております。
 このため、国の戸別所得補償制度も活用しながら県独自の施策も講じ、認定農業者等の経営高度化や経営規模の拡大、新規就農者や農業参入企業などの多様な担い手の確保・育成、担い手を中心に小規模・兼業農家も参画するいわて型集落営農の確立などによって地域農業の牽引役となる担い手を育成し、活力のある農業、農村を構築していくところでございます。
 農業は、長い歴史の中で、生命に欠くことのできない食料を生産する産業として、将来にわたって受け継がれていくべきものであります。特に本県においては、農業は経済波及効果が大きいすそ野の広い産業であり、内需拡大型経済の振興基盤として大きな役割を担っていくことが期待されています。農業者の皆さんとの対話などを通じ、農業の発展に向けた将来ビジョンを示しながら、県民一丸となって岩手の農業のビジョンを実現していくことが知事のトップマネジメントのあるべき姿と認識しております。
 このため、農業生産現場や各種振興大会で、農業者との懇談や交流などを通じて農業者の皆さんの思いを聞き、施策に反映させるとともに、海外や首都圏におけるトップセールスにおいては、丹精込めて生産された農産物の評価が高まるよう販路開拓に努めてきたところであります。
 今後におきましても、地域に暮らす人々が、農業をやってよかった、そして岩手全体がそのような農業を有する岩手に住むことに誇りを持てる希望農業の実現に向け、知事として先頭に立ちながら、県民総力を挙げた農業、農村の振興に努めてまいります。
〇飯澤匡委員 大変練られた答弁で、感心いたしました。
 次の質問に行きます。
 日本が目標としている欧州の農業政策は、共通農業政策CAPにおいては、価格支持政策を基盤としつつも、時代の変化とともに政策の変更もしております。最近の方向性は、環境への貢献評価や国土保全を前提とした経営を維持する耕作地の面的評価が高まっており、その結果、農業用地を投資的資源として容認し、農地の抱え込み現象が起きています。家族経営や小規模農家は収支が合わず、撤退せざるを得ない状況に追い込まれています。
 我が国でも農地法の改正で同様の問題をはらんでいると承知しておりますが、中山間地の農業を健全に維持することは農村コミュニティを守ることであり、重要な農業政策の根幹であると考えますが、欧州の状況もかんがみながら、本県の中山間地農業の振興をどのように図ろうとするのか、知事の考えを伺います。
〇達増知事 中山間地域の農業、農村の振興策についてでありますが、中山間地域は、食料供給はもとより水資源の涵養などの多面的機能を有しており、経済活動や県民生活にとって重要な地域でありますが、近年、過疎化、高齢化が進行し、耕作放棄地の増大や地域コミュニティの衰退などの課題を抱えています。
 こうした課題に対応するためには、それぞれの地域が有している多彩な地域資源や自然環境などを有効に活用し、活性化を図ることが重要であります。
 このため、県としましては、中山間地域等直接支払制度等を活用した農業生産活動の継続や地域コミュニティの維持、また、高標高等の立地条件を生かした地域特産物の生産、加工・直売等による6次産業化、さらにグリーン・ツーリズムによる交流拡大などを支援しているところであります。
 今後とも、こうした支援を通じて地域の主体的な取り組みを促進し、個性豊かな中山間地域の振興を図ってまいります。
〇飯澤匡委員 先ほど、担い手育成の観点について強化をするというような答弁がございました。ところが、年々減少をたどる担い手応援事業予算の状況であります。
 知事は、担い手対策に対する投資効果をどのように考えているのか示していただきたい。
〇達増知事 担い手対策に対する投資効果についてでありますが、いわて希望農業担い手応援事業は、地域の核となる経営体の育成と、県北・沿岸地域の振興を図るため、認定農業者等に対して農業機械や施設等の導入を支援するものであります。
 これまで、生産拡大計画を持った意欲的な認定農業者等を中心に経営の高度化や新品目の導入拡大等に支援してきたところでありまして、この結果、東磐井地域の小菊や八幡平市のリンドウ等、集落営農組織の経営の多角化、さらには県北地域の菌床シイタケ等、特色ある産地づくりが促進されてきたところであります。
 御指摘のとおり、当該事業は、厳しい財政状況の折、年々事業費は減少してきたところでありますが、農業者からの強い要望にこたえるために、平成20年度以降は前年度と同額の予算を措置しております。今後ともこの事業を活用し、経営の多角化や産地育成、さらにはアグリビジネスなどに取り組む意欲ある農業者を支援してまいります。
〇飯澤匡委員 政権交代後、特に農業施策に関して、本県では知事のリーダーシップを問う声が多いと聞いております。それに対して知事はどのような所感を持っていますでしょうか。
 さきのいわて希望農業政策懇談会においても、米の価格下落に対する宮城県や秋田県の知事のアクションと比較した知事のリーダーシップを問う声が日報の論説委員からもありましたけれども、知事はどのような所感を持っていますでしょうか、お伺いします。
〇達増知事 政権交代の最大のメリットの一つは、いろいろな声を聞く態勢になったということだと思います。岩手県におきましては、政権交代以前からさまざまな地域、分野の声を伺う態勢にありますので、いつでも声をお寄せいただければ、既にたくさんいただいているところでありまして、県民一丸となって取り組んでいきたいと思います。
〇飯澤匡委員 県民から声を伺うことはいいんですが、要は県民が望んでいるのは、いち早いタイムリーな施策の展開と、あるべき農業の姿だと私は思っております。
 私は、知事会見の回数と、みずから知事が発した農業問題について調査をいたしました。ここ3年間、9月13日まで129回のうち、みずから農業施策を語ったのは5件だけでございます。果たして県民は、知事に対して農業に意欲があるやなしや、このように思われても仕方がないのではないかと思いますが、この件について知事はどのような所感をお持ちでしょうか。
 今後、トップマネジメントと称するからには、やはり戦略的な農業に対する施策が必要かと思いますが、先ほど指摘したように、秋田、宮城の両県と比べて、施策の展開、そしてタイムリーな展開が少しおくれているのではないかというような指摘がございますが、改めてその点についてお伺いします。
〇達増知事 いろいろ調べていただいてありがとうございました。参考にさせていただきたいと思います。
 それから、岩手は、米、畜産、園芸、また林業関係、それから水産業とのかかわりもあり、非常に広い戦線で大々的に農業施策を展開しておりますので、この部分でここが足りないとか、そういう具体的なことがあればどんどん言ってきていただきたいと思います。県のほうもそういうところを速やかに先手先手を打って対応してはおりますけれども、みんなが力を合わせて進んでいくことが大事だと思いますので、特に岩手のような多様な地域資源を地域ごとにきめ細かに活用していくタイプの県においては、そういった個別具体的な話について詰めた議論をすることが大事だと思いますので、よろしくお願いします。
〇飯澤匡委員 では、新しい副知事にお伺いします。
 農業部門についても産業の振興ということで、トップマネジメントの範疇に入るということで増強されたと承知しておりますが、知事からどのような指示を受け、みずからどのように農業の振興に対して働きかけをするのか、その所感を伺いたいと思います。
〇上野副知事 農業分野における私のトップマネジメントについての役割なり考え方でございますけれども、知事のほうからは、農業を初めとした県内の産業振興に向けてトップマネジメントを発揮するべく、今まで以上にトップマネジメントに力を入れていきたいので、そういった分野について私ができることをきちんとやってほしいと。今まで以上に農業も含めた産業振興を進めていきたいと、こういうお話をいただいたと承知をいたしております。
 私がどういうことをやっていくかということについては、先ほどもちょっと御答弁申し上げましたけれども、岩手県の広大な県土の中に存在するさまざまな農林水産業、農業を中心としたポテンシャル、こうしたものはもう全国の方々が既に認識されていると思います。そうしたことを前提といたしまして、そうした各地域の農産物等の知名度をどういうふうに全国的に上げていくのか、それから、それが単なる一産品にとどまらず、6次産業化という言葉がよく使われますけれども、加工による付加価値がどういうふうに高められるのか、そうした観点から、農林水産業、農林業の振興を通じて岩手県の県勢の浮揚に努めてまいりたい、このように考えております。
〇飯澤匡委員 次に、地域医療の確保と保健福祉との連携についてお伺いします。
 平成21年度の岩手県一般会計補正予算及び平成21年度岩手県立病院等事業会計予算の編成等を求める動議に基づく対応について伺います。
 地域医療の確立のため、動議により増額修正し、実施した事業の具体的成果と総括的な知事の地域医療の確保に対する今後の展望を伺います。
〇達増知事 平成21年2月定例会における動議に基づく対応状況についてでありますが、県においては、動議を踏まえ、平成21年度一般会計予算に地域医療に関する懇談会の運営事業費として598万1、000円を、県立病院等空き病床利用促進支援事業として310万3、000円を計上いたしました。
 これらの事業の具体的成果と今後の展望についてでありますが、地域医療に関する懇談会については、平成21年5月までに、各保健医療圏に地域住民、関係団体、行政の代表者等を構成員とする懇談会を設置するとともに、各圏域3回から4回開催し、地域医療をめぐる現状認識の共有を図り、地域医療を支えるために各主体がそれぞれに、あるいは連携して取り組む内容について意見交換を行い、その成果を提言としてまとめていただいたところであります。
 このような取り組みの結果、今年度に入りまして、各圏域においては、歯科医師会と県立病院が連携した口腔ケア対策の取り組みや、FM放送局とタイアップした市民講座が新たに実施されるなど、提言の具体的な取り組みが着実に進められており、県としては、各圏域にこれらの取り組みの検証等を行う場を設置するとともに、地域振興推進費等を活用した事業の実施などにより、地域住民、関係団体と一体となった取り組みを一層推進してまいります。
 次に、県立病院等空き病床利用促進支援事業についてでありますが、昨年度、本事業を活用し、花泉地域診療センターの民間移管や、一戸病院の空き病棟を活用した有料老人ホーム等の開所に向けた取り組みを行ってきたところであり、今後においても、大迫地域診療センター等において空き病床を活用した介護施設の運営といった動きもありますことから、空き病床の利用促進について引き続き関係者との協議を進めてまいります。
 それから、地域医療の確保に対する所感についてでありますが、県が目指す岩手の地域医療とは、地域に必要な医師が確保されることはもとより、救急医療や高度、専門医療などを担う中核的病院と、初期医療や安定期の医療を担うかかりつけ医などとの役割分担と連携により、地域全体、すなわち二次保健医療圏を単位として、あるいは県全体として切れ目のない良質な医療が提供されており、また、このような医療連携体制が県民にしっかりと理解され、安心して医療を受けられるという姿であります。このような姿の実現に向け、平成28年度以降には、近年拡充している奨学金制度により養成した医師の公立病院等への配置が本格化し、病院勤務医師の充足状況の改善も期待されるところであります。
 しかしながら、当面、医師不足等の厳しい状況が続くと考えられますことから、どのように地域に必要な医療提供体制を確保するかが重要な課題であると考えておりまして、医師会や関係団体の理解と協力のもとに、圏域連携推進プランに基づき、地域連携クリティカルパスの導入を進めるなど医療機関相互の役割分担や連携を促進するとともに、このような体制について地域住民にも理解いただき、協力いただくことが重要であると考えております。
 また、救急医療においては、広大な県土をカバーするドクターヘリの導入や救急搬送のための道路改修を行い、周産期医療においては、ICTを活用した患者情報を共有するシステムの構築を行うことなどにより地域に必要な医療提供体制を確保していくとともに、県のみで解決することが困難な課題については国に対し積極的に政策提言を行いながら、本県にとって望ましい医療提供体制の構築に向けた取り組みを推進してまいりたいと思います。
〇飯澤匡委員 それでは、岩手県立病院等事業の経営形態のあり方懇談会のこれまでの議論を受けて、知事は県立病院の将来像をどのように描いているのか伺います。
〇達増知事 県立病院の将来像についてでありますが、岩手県立病院等事業の経営形態のあり方懇談会は、昨年12月、外部有識者等による専門的見地からの意見をいただくことを目的として設置され、これまでに4回の懇談会を開催してきたところであります。
 これまでの開催におきましては、県立病院等事業の現状について説明し、理解を深めていただくとともに、現在の地方公営企業法の全部適用と地方独立行政法人、指定管理者制度との比較や外部有識者による全国的な視点から見た県立病院等事業の評価などをいただきながら、地域医療における公、民の役割分担や経営形態のあり方などについて意見交換が行われてきたところであります。
 今後さらに開催を重ね、その結果については来年2月ごろをめどに報告書としてまとめていただく予定としておりますが、地域医療をめぐる厳しい状況が続く中において、本県の県立病院は各保健医療圏における中核的な医療機能を担っているなど、県民が安心して暮らすことのできる体制を構築する上で極めて重要なものと考えております。こうした県立病院が担っている医療機能が地域の医療資源と連携し、将来にわたり持続的に提供されることが必要不可欠であると考えておりますので、今後、本懇談会において取りまとめられる意見などを十分踏まえながら検討していきたいと考えております。
〇飯澤匡委員 限られた人的資源を活用するには、医療と保健福祉の連携が不可欠であります。とりわけ市町村の保健福祉行政との連携には県は主導的に働きかけることが必要と考えます。
 県は、振興局を初め、機構改革など、このような市町村福祉行政との連携にどのように対応しようとするのか知事に伺います。
〇達増知事 市町村の保健福祉行政との連携についてでありますが、まず福祉分野では、住民に最も身近な基礎自治体であります市町村の担う役割が大きいことから、地域包括支援センターへの専門職員の配置の充実や、特別養護老人ホームの整備などを求める働きかけを行っております。また、医療分野においては、市町村と共同で医師養成奨学金制度を運営するとともに、遠野市のように県立病院と連携した医師確保の取り組みなど先進的な取り組みも進められていますことから、市町村との連絡会議等の場において、こうした取り組みを紹介することによって各市町村独自の地域医療の確保に向けた取り組みを促すこととしております。
 なお、県の機構改革については、必要に応じてよりよい組織のあり方について検討してまいります。
〇飯澤匡委員 最後にお伺いします。
 私は先ほど来、お二方の答弁の中に、医師の定着については目標値を達成して頑張っているとお伺いしました。確かに量的に確保した努力は大変評価いたしますが、結局その中で岩手県は再配分しているだけです。地元のニーズに合った医師をどの程度配置していくのか、そして保健福祉との連携をどのように密にして地域医療を完結していくのか、その点の本質、要するにアウトプットの部分でしっかりとした政策をしていかないと、私は住民にとって、医師がふえたといっても、きっちりと自分たちの地域医療を確保したという実感はわかない、先ほど来質問がありましたが、私もそのように思います。
 今まで質問した部分についてはまだまだ経過措置でございますから、もう既に、救急病院、他県においては、先進地と言われる病院については、やはり医師のニーズに即したさまざまな対応をなされた中でその体制が構築されて住民の方々も満足をしている。私はやはり、知事が4振興局体制にした、これは会社で言えば社長ですから、しっかりとその体制について進めていっていただきたいと思いますが、二次医療圏との整合性、そしてまた地域医療の確保についてはまだまだ道半ばだと思っています。その完結に向けて、やはり受け皿がどうあるべきかを岩手県はしっかりと県民に示すべきだと考えますが、その点について最後お伺いして私の質問を終わります。
〇達増知事 やはり患者本位、また、患者になる可能性のある県民本位に考えていくことが大事だと思っておりまして、そうした声を地域の中で、そして市町村の中で、また二次医療圏の中で、そして県の中でというふうにまとめながらあるべき医療の姿というものを地域からつくり上げ、発信していくことが重要なんだと思います。
 そういう、住民が一緒になって真剣に医療のことを考えている、住民自身が自分たちの病気やけがに取り組んでいくその同士として、仲間として医師の皆さんと一緒にやっていくんだという姿勢が明確に見えるところにやりがいを追求する、医師の皆さんは、よし、一緒にやろというふうに思っていただけるんじゃないかと思っております。そうした地域医療のあるべき姿を岩手において率先してつくっていきたいと思っております。
〇飯澤匡委員 終わります。ありがとうございました。
〇三浦陽子委員長 次に、及川あつし委員。
   〔及川あつし委員質問者席に着く〕
〇及川あつし委員 残余の時間、よろしくお願い申し上げます。
 まず、いわてNPOセンターの問題についてであります。
 この問題については、盛岡東警察署が2法人からの告訴、また、岩手県からの告発状を受理したということであります。それぞれの告発の経緯と受理内容を当委員会でお示し願いたいと思います。
〇加藤政策地域部長 いわてNPOセンターに係る告訴、告発についてでございますが、県の告発状につきましては6月24日に盛岡東警察署に提出いたしまして、その後、内容確認を経まして9月22日に受理されております。
 告発内容につきましては、両財団が実施しました助成金交付事業におきまして、領収書を偽造するなどの不正な手段によりまして助成金を受領したというものでございまして、刑法上の詐欺罪に該当すると考えているところでございます。
 被告発人は、領収書の偽造に関し、法人の中で意思決定の権限を有すると考えられる関係者でございます。
 岩手県長寿社会振興財団及び岩手県福祉基金、これも財団でございますが、この両財団が実施した助成金の不正受領に係る告訴状につきましても、先ほど申し上げました県の告発状と基本的に同様の内容でございます。
〇及川あつし委員 刑事事件になったということでありますので、その点については注視してまいりたいと思います。これまで当局は包括的な調査を行うということできょうまで経過してきておりますが、今回、盛岡東警察署が受理した案件以外に不正事案はないかどうか、その点について伺いたいと思いますし、行うとしていた包括的な調査は、現段階で終了したのか中途の段階なのか明らかにしていただきたいと存じます。
〇加藤政策地域部長 まず、受理事案以外の不正事案についてでございますが、包括的調査におきましていわてNPOセンターの職員から証言が得られたもののうち、前理事長等によります不正が疑われるものの、県の調査では確証を得るには至らなかった事案につきましては、6月14日時点の調査報告書では公表を差し控えたところでございますが、それら及びその後の調査で判明した事案につきましては、助成金の不正受領に係る告発状とあわせて盛岡東警察署に情報提供しておりまして、相談中でございます。
 その内容につきましては、公表が捜査に支障を来すおそれもあることから、差し控えさせていただきたいと存じます。
 また、包括的な調査についてでございます。
 調査結果を受けまして、法人に対しましては、必要な事項につきまして県のほうから改善命令や指導を行っております。あわせまして、今回、盛岡東警察署が告発状を受理したということでございまして、県としての包括的調査への対応は一区切りとなりますが、引き続き法人によります改善状況を注視するとともに、司法当局の捜査に協力しながら事案の全容解明に努めてまいりたいと考えております。
 調査で把握いたしました結果のうち、これまで公表を見合わせてきた部分につきましては、捜査が終結いたしまして公表に支障がなくなればその内容を明らかにしてまいりたいと考えております。
〇及川あつし委員 疑わしき事案がまだあるという理解をさせていただきました。
 一たんの区切りというような答弁も今あったわけですが、その点についてはまた部局別審査でいろいろ質疑をさせていただきたいと思います。
 調査についてはまだ中途だということでありますが、知事はこれまでの包括的な調査についてどのような所感をお持ちですか、お伺いします。
〇達増知事 いわてNPOセンターの一連の不祥事を踏まえて県の関係部が包括的に調査を行ったわけでありますが、その結果、旧体制においては前理事長の独断によって非民主的な運営が行われ、不正な事務処理や経理処理に対する自浄作用が働かず、情報公開も十分でなかったことが判明したという報告を受けております。
 市民の善意に支えられたNPO制度の趣旨を没却するようなこうした事態に至ったことは非常に残念であり、二度とこのようなことが生じてはならないと考えます。全容の解明が進むことを期待するとともに、再発防止に万全を期してまいりたいと思います。
 このような事案があったものの、新しい公共の理念が注目され、NPOが地域で果たす役割はますます重要になっています。健全な活動を行っている他のNPOには、これからも萎縮することなく、みずからの使命に向けて大いに頑張っていただきたいと考えております。
〇及川あつし委員 今、知事の御答弁があったようにぜひお願いしたいと思いますし、御答弁あった再発防止につきましては、やっぱり真相をきちっと究明していくことが再発防止につながると思いますので、知事の立場からもしっかりとウオッチをしていただきたいと思います。
 次に、今回、議案にもなりましたNPO法人との契約のあり方について伺いたいと思います。
 これまで答弁の中では、NPO法人への委託とか指定管理のあり方について庁内で検討してきているというような話であったわけですが、これまでNPO法人との委託、指定管理についてはどのように検討されてきたのかお示し願います。
 また、本定例会に提案された二つの指定管理者の選定に当たって、どのように反映されたのでしょうか。私どもは反対いたしましたが、少しそこら辺の議論が反映されていないのではないかという思いも含めてお伺いいたします。
〇達増知事 まず、NPO法人との契約のあり方の検討状況についてでありますが、いわてNPOセンターは、身の丈を超えた過度な業務を受注した結果、業務管理が不十分であるなど適正な履行が確保できなかったこと、コンプライアンスの欠如により、不正な事務処理や経理処理に対する自浄作用が働かなかったことなどが今回の不祥事案の大きな要因であると考えられます。また、県としても、NPO法人に対するチェック機能を働かせ、適時適切に指導監督、助言を行う必要性を改めて認識したところであります。
 今回の不祥事を教訓としまして、1、選定の際の公平性や透明性の確保、2、業務の確実な実施を確保するための実施体制の確認、3、法令遵守に対する意識、取り組みの確認、4、業務の適切な執行のための進捗管理、完了確認のあり方、以上の観点から、NPOへの事業委託や指定管理の適正化に関するガイドラインの作成について調製中であります。来年度の事業に係る選定手続に適用できるよう、年内に成案を取りまとめたいと思います。
 そして、今回の指定管理者選定への反映についてでありますが、今回、それぞれの指定管理者の選定に当たりましては、先ほど申し上げた検討中のガイドラインの視点にもある選定の際の公平性や透明性の確保、業務の確実な実施を確保するための実施体制の確認、法令遵守に対する意識、取り組みの確認、これらの観点を十分に考慮しながら厳正な審査を行ったものであります。
〇及川あつし委員 今、御答弁ありましたが、年内にガイドラインを目指すということでありますが、今回、図らずもその議論の途中で指定管理者の選定があったということで、ある部分不十分だったのかなと私たちは考えているところであります。
 そこで伺うわけでありますが、結局、今回、県の公会堂を受託した団体については、反対討論でも申し上げましたが県職員の関係者が半数を占めているということでありまして、こうした点について、競合相手がいる中で、県民からどう見えるのかという視点が必ず大事なんだろうと思っております。
 知事が会長を務めている団体8団体についても8、400万円余の委託がありますが、これが即、悪いと言っているわけではなくて、一定のルールを示さない限り県民から疑念を持たれるんじゃないか、そのためにはルールが必要なんじゃないかという意味でのお話であります。その点についてどのように考えているのか御答弁願います。
〇達増知事 県公会堂の指定管理者の候補者選定に当たりましては、外部委員4名で構成する選定委員会を設置して厳正に評価を行っておりますので、御懸念のようなことはないと考えております。
 それから、ルールづくりということでありますけれども、指定管理者の選定プロセスについて、より透明性を高めるようにどのようなことができるのか検討してまいりたいと思います。
〇及川あつし委員 役員構成の規定等についてもまた今後議論があろうかと思いますので、御検討をお願いしたいと思います。
 知事公用車について伺いたいと思います。
 ことし4月26日に八幡平市で本音で語ろう県議会というのがありました。出席者からこの件について、県議会議員は何をやっているんだというような厳しい指摘がありましたのでお伺いします。
 更新の理由、高額の車種を選定した合理的な理由をお示し願いたいと思います。この公用車については、総理大臣しか乗っていないというような指摘もありましたが、いかがでしょうか。
 また、購入後、この車については時折違う車を利用しているとも聞きましたが、いかがでしょうか。知事のこれまでの説明の発言趣旨もあわせて御説明願いたいと思います。
〇達増知事 私の発言というのは記者会見での発言かと思いますけれども、今般の知事公用車の更新に当たって、知事の職責等を勘案し、知事公用車が高速道路を利用することが多いことなどから、安全性を特に重視する必要があるとともに、県の重要施策の一つである地球温暖化対策を推進するという行政目的を達成する観点から、事務方において更新の必要性及び車種選定について検討を行った、そこの事務方の検討について妥当なものであると判断したという趣旨であります。
〇廣田秘書広報室長 知事公用車の更新の理由等についてでございますけれども、まず、合理的な理由という問い合わせにつきましては、昨年、国の経済対策としまして地域活性化・経済危機対策臨時交付金が創設されたことから、県の重要施策の一つであります地球温暖化対策として県の公用車を低公害車に更新したところであります。
 その更新の一環として既に基準に達しております知事公用車を更新したものでございまして、更新に当たりましての車種選定におきましては、一つは、知事の職責等を勘案し、疲労度の少ない機能的な性能を有するとともに、安全性を重視した車両で、現行車両と同等程度の車両、二つ目は、排気ガス性能が四つ星であり、かつ平成22年度燃費基準プラス25%以上の車両という基準で選定を行いました。その選定基準に適合する唯一の車種としましてレクサスLSハイブリッドを購入したところでございます。
 また、レクサスにつきましては、他県においても知事、議長等の公用車として使用されていると聞いております。
 別の公用車を利用しているというお問い合わせがありましたけれども、公務を行うに当たりましては、通常は知事専用車であるレクサスLSを使用しておりますけれども、災害現場視察等の場合には、共用で使用しております四輪駆動のトヨタプラドを利用しております。
〇及川あつし委員 時間ですから終わります。
〇三浦陽子委員長 次に、社民党久保孝喜委員。
   〔久保孝喜委員質問者席に着く〕
〇久保孝喜委員 社民党の久保孝喜でございます。
 2点について御質問いたします。
 最初に、森のトレーの問題なんですが、既に複数の皆さんから御質問があって一定の論点整理がなされつつあるなという思いもありますが、一部重複いたしますけれども、お許しをいただきたいと思います。
 まず最初に、この事案にかかわっては、お話あったように、平成16年3月における県の検証報告書なるものが出ておりまして、私も読ませていただいて、かなり激烈な国の責任についての言及がございます。その後、3分の1の補助金の返還と裁判の支援というスキームができていったわけでありますが、この決定から、平成20年からの補助金返還に至るまでのスキームの変化というのが私はあるのではないかと思うのですが、しかも検証報告書の中では国の責任についての大きな柱立てをしておりますので、この間に係る国の責任についての協議の経過についてまずは御説明をいただきたいと思います。
〇上野副知事 国の責任に係る交渉経緯についてのお尋ねでございますが、国の責任に係る交渉経緯につきましては、補助金3分の1返還の際に、国にも責任の一端があるといたしまして、林野庁と再三にわたり協議を行ったところでございます。平成15年11月の前知事と林野庁長官との協議におきまして、国はその責任を認めなかったものの、林野庁長官から、県が補助金の一部の返還及び補助金の回収に最大限の努力をすれば、延滞金の免除について、林野庁としてもできる限りの対応を行うとの考えが示されたところでございます。
 県がトレー訴訟に全力で取り組んでいる中、平成19年12月、林野庁から、岩手県が返還金の残額全額について可及的速やかな予算計上により返還することを明確にした場合、延滞金の免除は可能と見込まれる旨の提案がございました。
 この残額返還の提案を受けた林野庁との協議に当たりまして、国にも責任の一端があることを改めて主張いたしまして、協議未了となっていた補助金返還金本体の一部免除について、平成20年1月まで林野庁と繰り返し交渉を行ったところでございます。しかしながら、平成20年1月15日に林野庁から、返還金の一部免除は認めない旨の正式の回答があり、結果として国は責任を認めなかったものと承知いたしております。
〇久保孝喜委員 国との関係において、協議が、ある意味すれ違ってきたということなのだろうと思うんですが、平成19年の9月議会で、この当時、裁判も係属中だったわけですが、知事が、裁判の過程で、国の判断、責任など根拠や考え方も審理の対象となり得るのではないかという認識を示されておりますが、実際の裁判の審理過程あるいは判決内容にかかわって、国の責任に言及された部分はあったのでしょうか。
〇上野副知事 裁判の判決の理由におきましては、そういう国の責任について言及されたくだりはなかったものと承知いたしております。
〇久保孝喜委員 結局、私は、平成16年3月で確定された第1次のスキームと、平成20年以降、3分の2の補助金返還を行ったスキームの間では、大きな姿勢の変化があったのではないかと思うんです。先ほど来のやりとりの中でも明らかになったように、平成20年の段階で、3年間にわたって3分の2を返還していくという、さまざまな折衝の中でのそういうスキームになった際に、国の責任については、事実上、言葉はどういう表現がいいのかわかりませんが、棚上げか、もしくは、私なりに言えば、国の責任を県は封印したというふうにも受け取られる動きだと思うんですが、そういうふうに判断した時期について、いま一度、その根拠も含めてお伝え願いたいと思います。
〇達増知事 県としては、平成19年12月からの残額返還にかかわる林野庁との協議に当たっても、国にも責任の一端があることを改めて主張して、協議未了となっていた補助金返還金本体の一部免除について、林野庁と繰り返し交渉を行ったところであります。これに対して、林野庁からは、平成20年1月15日に、補助金適正化法に基づき全額返還を命令するものであるということで、返還金の一部を免除すべき事由が生じるものではなく、全額返還が必要であるという回答をしてきたわけであります。本事案が会計検査院からの指摘に伴う補助金返還命令であるということで、林野庁からは以上の回答があったということであります。
〇久保孝喜委員 一連の国との折衝の経過も聞きましたし、今の判断時期の問題も聞きましたが、今までの説明のいずれの中にも、平成16年の国の会計検査院の指摘に対する反論、あるいは国の責任について言及した、かなり鋭いといいますか、激烈な、検証報告書とは全く異質のニュアンスしか私には伝わってこないわけなんですが、例えばこの報告書の最後には、国の責任も明らかにしていく必要があるということを明確に書いておりますし、会計検査院の指摘も全く当たらないと全面的に争う姿勢をずっと持っていたわけですよね。そこが、最終的に平成20年からの補助金返還の際にはトーンダウンをして、事実上、国の責任は延滞金の免除というところにすりかわっていったと私は思えてならないんですが、改めて、そういう姿勢、スキームの転換ということがこの時期になされたという理解が正しいのかどうか、その点をお伺いします。
〇達増知事 裁判で補助金返還分を確保するというスキームに変更はないわけでありますし、また、補助金適正化法上、補助金返還命令に係る最終的な判断が国において行われるということについては、これもまた何ら変更があったわけではございませんで、制度上、そうなっているものでございますので、何か、平成19年、20年に変更があったということではございません。
〇久保孝喜委員 国は責任はないと言っていると。県も国の責任をいわば旗をおろしたわけではないという意味も含めて、今回の裁判の結果ということを考えると、知事の言う県民負担の最小化という道筋は極めて難しいのだなと思うわけなんです。
 そこで、県民負担の最小化に向けてできることに何があるのかということを考えても、この間のこの問題にかかわる質疑の中では一向に見えてこない。むしろ、形式的な組合から市への返還、市から県への返還ということを言い立てるだけで、現実には、国に対して返還した金額がさらに最小化される見通しはまだ示されていないと私は思いますし、該当機関との協議はするとは言っていますが、その点でまだまだ県民に対する説明は不十分だと思います。
 そこで、平成16年以降の第2次検証報告についてやるということを知事がおっしゃっていますので、速やかに提示をしたい、国に対しては問題提起を続けたいという発言がございました。私は、先ほどの政権交代の意義で知事がおっしゃった、国においては地方の声を聞く体制ができた、これが政権交代の意義だということを言っているのであれば、なおのこと、国の責任においては、従前の平成16年の段階での責任追及の立場というものを堅持して交渉に当たる必要があるのだろうと思いますし、速やかに提示する検証報告は、当然、来年度の予算編成など全体のことを考えても、12月議会前には当然提示されていいものだと思うんですが、その辺の時期と、県民負担となる金額もこの報告書の中では確定されると考えてよろしいかどうか、その点をお聞きします。
〇達増知事 まず、公務員であります以上、今ある法律は、これを尊重する義務がございますので、まずはそういった制約の中でしっかりやってまいりたいと思いますけれども、また、いわゆる負担ということについては、組合の資産、債権・債務の状況を整理しというところから確定させていかなければならない問題でありますので、今の時点で、それを飛び越えた議論は難しいと思っております。
 一方、報告書については、今議会における決算の審査に合わせ御報告できるように準備を進めたいと考えております。
〇久保孝喜委員 その第2次とも言うべき検証報告書を期待して、また議論を継続したいと思います。
 次に、高校授業料無償化にかかわってお尋ねいたします。
 これは、国の政策によって、高校授業料の無償化策にかかわる条例が昨年度末で決定したということを受けてなされているものですので、改めて、この条例にかかわっては、6月議会でも、議会としてもかなり議論がなされ、そして、今般、規則の見直しということで条例運用の見直しがなされたところでございます。今回の運用見直しと、その見直し以前の無償化対象の生徒さんの実態がどういうふうに変わってきたのか、初めにお聞きしたいと思います。
〇達増知事 高校授業料無償化に係る現状について、まず、制度の運用の見直し前には授業料の徴収対象者が―授業料無償化の対象とならない生徒の実態ということであります―96人で、うち全日制が15人、定時制が11人、通信制が70人という状況でございました。これが、制度の運用の見直しが行われまして、授業料徴収対象者の96人のうち36人が無償化となる見込みであります。授業料徴収対象見込み者は、全日制が12人、定時制が11人、通信制が37人の計60人となります。
 今回の運用の見直しで無償とならない者の理由としては、負傷や疾病によらない留年者及び通信制において入学後の在学期間が既に48カ月を超えている者ということでございます。
〇久保孝喜委員 私は、今回の見直しは一定の評価をするものでございます。しかし、一方で、これは議会の側の反省もあるわけなんですが、高校無償化という大きな道筋、方向に目を奪われて、現実には、その運用の中で、こうした無償化にいわば含まれない生徒さんが生まれるという事態を議会の側も想定できなかったという反省も実はあるわけです。したがって、今回の運用見直しは、そこにかかわって一定の評価はするものなんですが、しかし、考えてみると、条例ができて半年後にこの見直しをしなければならなかったということの意味は極めて重いものがあると思います。
 そこで、6月議会でもいろいろ議論されたわけですが、全国の実例や、あるいは現場実態に必ずしも今回の条例そのものがマッチングしてなかったという反省があるのだろうと思います。特にも、今回、見直しの中でも対象にならなかった方が60人いらっしゃるわけですが、その中で通信制が37人と多いということが言われております。通信制で勉強する課程の中では、実際には、今、条例や規則でうたわれている通信制48カ月という規定と現実には合わないシステムが通信制にはあるということがいよいよ明らかになっているわけなんですが、この点についての見解はどのようにお持ちでしょうか。
〇達増知事 学校教育法で通信制の修業年限は3年以上と定められ、無償となる期間については、法律上、私立学校の通信制の課程に対する就学支援金の支給期間が48カ月ということで、これに準じた取り扱いとしていると承知しております。
〇久保孝喜委員 結局、通信制の生徒さんは、現場の方からお聞きしたところ、例えば平成18年に入学されて平成22年の春に卒業された方の割合というものが出ているんですが、これは杜陵の通信制の場合ですが54%、つまり実態として半分の生徒は4年で卒業できないということがある。法律的にはもちろん制約があるでしょう。しかし、他県の実例を見ると、そうした法律の条文と条例の運用の中で、これを埋め合わせていく努力というのが実はやられているわけなんです。通信制に学ぶ意思を表明して入学された方が、今、公立だけで県内に1、600人ぐらいいる。私立の通信制もございますので、かなり多い生徒さんで、その生徒さんの実態は、結局、全日制やその他の普通の学びのコースからいわば外れたという意味で、非常に困難な状況を抱えている生徒さんが大変多いということです。したがって、現場では、あせらずゆっくり学びの保障をしていくということが考え方の基本にあるということなんですが、今回の条例などを含めて、この通信制のシステムと条例運用がマッチングしていないということです。
 最後に、現場の声をお知らせしたいと思うんです。今、通信制は、流れにうまく乗ることができなかった生徒が集まる学校になってしまっている。したがって、そういう子供たちをすくい取るような制度の運用というのができないものかということを切実に現場の教師なんかは訴えているんですが、そのことを含めて、今後、この現状をどう打開していくかという点で、知事のお考えがあれば、最後にお聞きしたいと思います。
〇達増知事 まず、通信制のあり方、教育のあり方については、関係者と知恵を絞りながら工夫をして、生徒一人一人が希望するような自己実現を達成できるように取り組んでいるところと思っております。
 この高校授業料無償化との関係についてでありますけれども、岩手の教育委員会もいろいろ工夫をしているところだとは思いますけれども、私も、そういったところをきちっとフォローしながら、また、いろいろ御指摘のあったところについて、法律施行後3年で所要の見直しということにもなっておりますので、より現場にマッチするようなことを国に提言してまいりたいと思います。
〇久保孝喜委員 国の変化も望みたいわけですが、県においてもできることはまだあるということを申し上げて、質問を終わります。
〇三浦陽子委員長 お諮りいたします。予定の5時までにはまだ若干時間がございますが、区切りの関係から、続く総括質疑はあす行うこととしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇三浦陽子委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。
 あす以降は毎日午前10時から開会いたしますので、よろしくお願いいたします。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時30分 散 会

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