平成22年6月定例会 第16回岩手県議会定例会 会議録

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〇10番(木村幸弘君) 社民党の木村幸弘でございます。
 本定例会におきまして、私にとっては任期最後の一般質問の機会となります。先輩、同僚議員各位の御協力に感謝を申し上げ、また、県当局におかれましては、県民の安全・安心の暮らしを確保するために実りある御論議をお願いし、山積する諸課題解決に向けた積極的な御答弁をよろしくお願い申し上げます。
 それでは、通告に従いまして順次質問を行います。
 私はまず、達増知事の今任期最後の年度に当たり、この4年間の県政運営と政策推進について、任期としては最終年度でありますが、一方では、いわて県民計画に基づく希望郷いわて元年としてのスタートの年でもあります。
 そこで、まず知事は、この4年間の任期を全うする中で、県勢発展や県民生活向上など、県民への具体的な形、成果として、何を集大成とし、施策の到達点に位置づけをしているのでしょうか、その点についてお示しをいただきたいと思います。
 そして、4年間のマニフェストに掲げてきた政策課題の達成度についてどう分析され、評価をされているのでしょうか。そのことを踏まえて、県民に対して、県民自身が達増県政の4年間に対し客観性を持って評価することのできる判断材料をわかりやすい形で示す必要があると思いますが、いかにお考えでしょうか。
 特に県の政策評価の面から、達成度や県民満足度が低位にある産業・雇用、環境、医療・福祉等の課題について、いわて県民計画への継続的課題として取り組むに際しても課題を明確にしておかなければならないと思いますが、お伺いをいたします。
 次に、希望郷いわて元年と位置づけられた取り組みの中から、岩手の未来をつくる七つの政策の柱として、個別具体の課題について質問いたしたいと思います。
 人材・文化芸術の宝庫いわての実現という観点からは、岩手の教育や人材育成に資する本県の姿勢にかかわる課題として、高校授業料無償化の実施に伴う運用面での対応についてお伺いいたします。
 本年4月1日施行されました公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律の実施は、御案内のとおり、昨年、政権交代が実現したところによる目玉政策の一つとして施行されたものでありますが、いわゆる同法の第1章総則、目的、第1条の高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与することという趣旨と、第2章公立高等学校に係る授業料の不徴収、第3条第1項の、ただし、授業料を徴収しないことが経費に係る生徒間の負担の公平の観点から相当でないと認められる特別の事由がある場合は、この限りでないとすることを踏まえ、本県においては、県立学校授業料等条例の一部を改正する条例が3月24日成立したことにより、第3条の納付義務者に係る第3項在学期間の通算36月を超える者の適用について、3月31日付の教育長名による各県立高等学校長あての、いわゆる授業料納付義務者の特定化を行うための通達が発せられ、その調査が行われております。
 前歴に基づき、無償化の対象外として調査対象とされた当事者あるいは保護者など関係者にとっては、いかに運用上において同制度が県の裁量、判断にゆだねられているとはいえ、まさに寝耳に水の思いではなかったかと察するものであります。
 そこで、制度の運用にかかわる問題点について教育長にお伺いします。
 まず、授業料納付の対象者が151人に上っており、その内訳を見ると、全日制15人、定時制11人、通信制70人、専攻科55人となっており、専攻科を除く対象者については、さまざまな事情を抱え、あるいは働きながら学んでいると思われる方々が半数以上になっております。これは、条例の運用に際して、同法第3条第1項に規定する公平の観点から相当でないと認められる特別の事由についての検討が十分ではなかったのではないかと考えられますが、教育的配慮を含めてどのような検討を行われたのかお伺いします。
 また、全国の動きという点についていえば、4月28日から5月20日にかけて日本教職員組合の調査報告書によりますと、在籍する生徒は原則不徴収としている地方公共団体が、東北地区では山形県、福島県、宮城県を含め14団体に上り、最も多い対応となっています。ただし、高校既卒者が再入学する場合は徴収するとしたのがそのうちの3団体あります。次に多いのが、修業年限を超えて在籍する場合や、高校既卒者が再入学する場合徴収することもあるとした団体が13団体となっていて、病気や留学等のやむを得ない事情について配慮がなされているところが多いが、内容や判断、方法は各県で異なるとのことでした。
 そしてこの中では、制度導入時は全員不徴収とする団体は6団体、まだ具体的に徴収していない、もしくは詳細が不明とされる団体が6団体、そして残る1団体は、全国の対応から突出する形で既に徴収を行っています。それが我が岩手県1県のみとなっています。他には、現在検討中が9団体とのことでした。
 県では、こうした全国の動向についてどのように把握をされているのでしょうか。直近の動向について承知されていればその内容をお示しください。
 さらに、国においてはこのような事態について掌握をされているのか、また、その判断について、現時点で何らかの対応について指導があるのかどうかお伺いいたします。
 次に、共に生きるいわての実現の観点からは、地域医療対策の観点で、今年度事業として取り組まれることとなりました中核病院診療応援事業についてお伺いします。
 この事業の目的については、新年度予算審議の際におおよその考え方について伺いましたが、盛岡医療圏以外の勤務医不足という県内医師偏在による対策として、市町村が地元医師会の協力のもとに開業医等の派遣を行う場合に事業費として支援をするというものでありますが、具体的に本制度の活用状況はどのようになっているのかお伺いします。
 また、具体事例として動き出しているとすれば、その内容についてお示しをいただきたいと思います。
 次に、このたび6月1日をもって開所となった県南地域周産期母子医療センターについてお伺いします。
 2月議会でその見通しについて伺ったところでしたが、特に今回の事例は、本県では初めてのケースとして、産科医不足という厳しい現実の中で、岩手中部病院と北上済生会病院が互いの機能を補完し合うという体制であり、岩手中部医療圏は、とりわけ病院従事医師数が対10万人人口比率で県内9医療圏中最下位という実態にあり、当該地域の皆さんも高い期待を寄せております。
 しかし、現実には診療体制に余裕はなく、難しい患者の受け入れに十分な対応は厳しいとの北村院長の報道に対するコメントもあります。現実に体制や機能を今後充実していくためにどのような対策を取り組んでいるのかという点と、認定されることによってどのような利点が生じるのかお伺いいたします。
 安心して、心豊かに暮らせるいわての実現の観点からは、防災対策についてお伺いします。
 やがて来ると言われる宮城県沖地震などの大規模災害、本県においては先般のチリ地震津波という地球規模での災害の発生に、沿岸漁業関係者に甚大な被害をもたらしました。幸いに人的被害はなかったものの、改めて自然災害の脅威について、丸2年が経過した岩手・宮城内陸地震の被害とともに痛感をするものであります。
 こうした中、災害被害を最小限にとどめるための取り組みとして、災害対策の概念に自助、共助、公助という役割のあり方が問われ始めております。現在、県議会においても、みずからの身を守る意識醸成を図ることや、住民同士が助け合うための活動のかなめとして、その組織化が各自治体主導で進められている自主防災組織の取り組みなどによる自助、共助のあり方に視点を置いた(仮称)防災条例の検討が進められています。
 そこで、こうした自主防災組織の県内における状況はどのようになっているのかお伺いします。
 また、組織づくりを促進することから取り組まれているわけですが、あわせて実践的な先進事例としての活動などの例について紹介をいただき、その上で、自主防災組織に特に期待される役割とは何なのか、また、今後の課題についてはどのようにとらえられているのかお伺いいたします。
 例えば、組織の形態や規模の問題はどうでしょうか。隣近所の顔が見える身近な行政区単位や町内会を基本とするところもあれば、学区等の中規模的な単位の組織もあろうかと思いますが、適正規模の考え方や自主防災組織間の相互連携、特にも情報伝達のあり方などは防災対策上、最も重要な課題と言えますが、こうした課題解決への取り組みをどのように検討されているのかお伺いします。
 次に、放射性物質搬送事故に係る危機管理のあり方についてお伺いします。
 このことは、昨年の11月5日夜に発生した八幡平市平笠の東北自動車道上り線で、六ヶ所の再処理工場の廃液である放射性物質を含む液体積載車両が後続車に追突された事故に関することであります。当時のマスコミ報道からの情報や、県総合防災室にもその状況について聞き取りをさせていただきましたが、そうした中で問題点として特に重要視されるのが、本県関係者に何も情報が伝わっていなかったことであります。
 真っ先に事故発生にあって駆けつける警察と消防機関は、今回のケースにおいて車両が大破するような大事故でなかった点や、積載放射性物質が日本原燃や原子力安全・保安院の事故後の情報によって低レベルのもので、たとえ漏れても人体や環境に影響はないと確認されたものの、万が一の事態を考えたときに、何も知らずに事故処理等のために警察や消防隊員が被曝をすることも想定されることや、事故現場周辺の沿線住民等への初動の危機管理対策による被害を最小限に食いとめる対応にも支障を来すおそれがあったことなどから、今回の事故は、まさに確かな情報や状況がわからないために処理や対策に手間取り、3時間以上に及ぶ高速道路閉鎖など、関係機関との連携や情報収集に追われた点で危機管理のあり方が問われる教訓として、この種の事故等への対策について万全を期す必要があると思います。
 また、原燃の排出責任者としての対応については、保安上の理由を盾に情報開示の対応が極めて消極的であると言わざるを得ず、大変大きな問題であると思います。
 知事は昨年11月9日の記者会見で、低いレベルの放射性廃棄物の場合でも、正確かつ迅速に情報伝達を原燃側に求めるとしていましたが、そうした経過も含めて、移送ルート上の関係する自治体は本県だけではなく、日本原燃や経済産業省、国土交通省などの対応を含めて、関係行政機関、警察、消防との緊密な連携を図るための安全対策としての情報の把握と管理体制及び危機管理マニュアルを確立すべきであると思いますが、お伺いいたします。
 食と緑の創造県いわての実現の観点から、県産米の消費拡大と水田の有効活用の一環で取り組まれ、近年、その商品に対する人気や価値が高まっている中で、今後の米粉の利用促進策についてお伺いいたします。
 県の資料によれば、米粉活用の現状を見ますと、産地や実需者等と連携し、米粉の生産や加工品の需要拡大に向けて積極的に取り組んでいるとのことですが、米粉の生産量について、農政事務所調べのデータでは、平成17年の全国の生産量約10万1、332トンに対して本県は467トン、0.5%、新規需要米を含んだ平成21年は全国で8万3、762トンに対して674トン、0.8%と低率に推移している一方で、新潟県では平成21年現在、2万6、739トン、31.9%と高いシェアとなっています。
   〔副議長退席、議長着席〕
 また、米粉の需要拡大について、いわてのお米活用プロジェクトによる新商品開発や米粉パン製造技術研修会が昨年度で7回開催され、121名が受講したと聞いております。さらに、全県一斉米粉パン学校給食の日の実施などを通じて消費の喚起を促す取り組みが進められています。
 そこで一つは、米粉そのものの生産について、先ほどの生産量の推移から見て、5年間に207トン、全国の生産量に対して0.3ポイントの増にとどまっていることについて、新潟との生産量の違いを含めて本県の課題をどのようにとらえているのでしょうか。
 米粉生産への政策的支援のあり方や、また、米粉製粉、加工施設の本県の実態として、製粉を他県へ依存している割合はどうなのか。加工と新商品開発も、パンにとどまらず、これまで米粉を活用した商品は今日の製粉技術の向上によって飛躍的に広がっていると言われていますが、今後どのような取り組みを推進していくのか、6次産業化への展開はどう考えているのかお伺いいたします。
 環境王国いわての実現の観点からは、総務省の緑の分権改革推進事業の採択を受け、今年度の委託事業として地域クリーンエネルギー資源調査事業が実施されることになっているわけですが、この緑の分権改革の考え方として、地域の自給力と創富力を高める地域主権型社会への転換を実現するため、社会システムの構築を目指し、その事業として再生可能なエネルギー資源の賦存量の調査と先行実証調査を行うこととなっております。
 そこで、県及び5市町で行われる委託事業について、その具体的事業内容と期待される成果についてお伺いします。
 また、12月末にまとめる予定の5市町の結果とあわせ、県では年度末に総務省に委託調査結果を報告する予定となっていますが、県としては、これらの事業からどのような政策展開を図ろうとしているのでしょうか。
 例えば奥州市の米エタノール製造への取り組みは、この間、継続的に行われてきましたが、県は予算特別委員会の質疑の中で、大規模プラントは考えず、地産地消型の活用を目指しているとしていましたが、今回の事業を経て、どの程度の具体的な製造体制の確立と販売への道筋を明確に示すことができるのでしょうか。
 あるいは花巻市では、太陽光エネルギーの活用等を中心とした導入促進への展開を期待しているわけですが、その場合の太陽光発電システム導入への財政的支援、補助制度の充実強化などの施策や、また、グリーン・ニューディール政策の一環としての考え方に連動するとすれば、雇用機会の創出といった形あるものへの現実的な成果にどう結びつけていくのかということについてもお伺いいたします。
 さらに言えば、緑の分権改革の目指す地域の自給力と創富力による地域主権型社会の実現とは、クリーンエネルギーの賦存量のみならず、地域の持つ公益的機能と言われる豊かな自然によってもたらされる価値、そこに生活を営む人の力によって生み出される保全能力や文化的価値などといったものが創富力と言われるものであるとすれば、地域資源を生かし、潜在的価値を地域の振興につなげる取り組みを具体的に支援していくことが重要であると思いますが、お伺いいたします。
 次に、廃棄物適正処理監視の取り組みについてですが、今年度の予算として、産業廃棄物の適正処理の啓発やパトロールの実施により不法投棄の未然防止に取り組むことや、産業廃棄物適正処理指導員、いわゆる産廃Gメンの11名の配置による監視指導の実施、スカイパトロール等の実施推進費として3、300万円が計上されました。そのうち、Gメンの人件費として2、200万円、スカイパトロール2回分等として711万円となっていますが、県では2006年から岩手大学地域連携推進センターと人工衛星だいちのデータを活用した産廃監視のための共同研究を進めて、2008年9月には、宇宙航空研究開発機構─JAXA及び岩手大学地域連携推進センター共同主催による、だいちデータ地域実利用プロジェクト成果発表シンポジウムが開催され、私も拝聴してきましたけれども、その中で産業廃棄物処分場のモニタリングの研究成果が発表され、2008年3月からの試験運用にあっては種々の成果を上げているとの報告でありました。
 そこで、この事業は、現在どのような活用が具体的にされているのかお伺いいたします。
 産業創造県いわての実現の観点からは、まず、生活福祉・就労支援協議会の取り組みについてですが、予算特別委員会審査の際には、県組織を3月25日に設立を予定し、県内10カ所の設置を考えているとのことでありました。この協議会の趣旨については、長期失業者に対しきめ細やかなセーフティネットを充実することとして、生活困窮者や生活保護受給者等就労支援事業等について対応する機関であると承知しています。2009年度の県内の被生活保護世帯は75年以降で最多となり、月平均9、240世帯、また、各月の被保護世帯数は2008年7月から21カ月連続で増加しているとの県の調査結果が示されています。
 また、ケースワーカーによる相談、援助体制にも社会福祉法の配置基準を上回る負担が指摘されております。さらには、こうした事態の中で危惧されるのは自殺問題への発展なども想定され、県南広域振興局では勤労者の自殺率増加への予防対策に力を入れようとしています。
 そこで現在、生活福祉・就労支援協議会の実際の取り組みはどのように行われているのでしょうか。県及び各地域に設置された状況とあわせて具体的内容についてお伺いいたします。
 次に、ものづくり産業の集積についてでありますが、いわて県民計画アクションプランでは、国際競争力の高いものづくり産業の振興を政策項目に掲げ、自動車、半導体関連産業に続く柱として医療機器関連産業の創出を目指すとしています。また、本年度の県南広域振興局業務方針においても、成長分野として期待される医薬品、医療機器関連産業等の川上、川下企業間マッチングの取り組みを掲げ、6月4日に開催された北上川流域地域産業活性化協議会では参入支援などの計画が確認されたところです。
 そこで、こうした医薬品、医療機器関連産業における本県の状況と、今後、具体的にどのような展開を図ろうとしているのかお伺いいたします。
 最後に、いわてを支える基盤の実現の観点では、県土整備部として、救急医療を支える救急搬送ルートの道路改善の取り組みが示されておりますが、いただいております平成22年度県土整備行政の概要から幾つかの点についてお伺いいたします。
 救急搬送における支障箇所とされた県関係171項目について、今後の取り組みとして、維持修繕系事業の77項目66カ所は今年度末までにすべてを改善する予定としていますが、改良系事業では、94項目63カ所のうち10工区で事業実施との説明でありますが、工区と項目、箇所数との関係でいえばどのくらいの改良が図られる見通しなのかお伺いいたします。
 また、県以外の道路管理者との連絡会議への参画を要請するとのことですが、その対応はどのようになっているのでしょうか。
 そして、救急搬送ルート追加調査に関してですが、既存のルートに基づく道路環境の改善の取り組みとあわせて、二次医療圏における基幹病院とのアクセスにかかわる課題として、県立中部病院の花巻市側から北上市側に抜ける市道整備に対する取り組みが、特に北上市側において進展の気配が見えない状況にあります。県の政策的な県立病院統合という背景のもとによって両市の中間地点である現在地に移設されたことを踏まえますと、県として、救急搬送に伴うルートの確保の観点から、両市間の整備促進を図るための調整と具体の支援の役割を果たすべきではないかと考えますが、お伺いいたします。
 以上で私の一般質問を終わりますが、答弁によっては再質問をさせていただきます。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 木村幸弘議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、任期における施策の到達点についてでありますが、県民所得の低迷や厳しい雇用情勢、深刻さを増す地域医療など、岩手が直面している緊急かつ重大な課題に注力しつつ、これからの希望あふれる岩手を実現していくため、県民全体が一体となって行動していく上での羅針盤として、いわて県民計画を策定し、希望郷いわての実現に向け取り組んでいく内容を明らかにしたところであります。
 任期4年目の今年度は、アクションプランへの政策推進目標であります雇用環境、県民所得、地域医療、そして人口という喫緊の課題への取り組みを強化するとともに、ゆたかさ、つながり、ひとをはぐくむための基盤づくりに重点的に取り組むこととしており、この目標の達成に向けて全力を挙げているところであります。
 次に、政策課題の達成度についてでありますが、希望王国マニフェストは、いわば知事選挙における政権公約に当たるものであり、その評価は、選挙において県民、有権者に判断いただくものと考えております。
 他方、マニフェストに掲げた戦略や政策は、知事就任後、県として策定したいわて希望創造プランやいわて県民計画のアクションプランにおいて、ものづくり産業の集積促進等による地域経済の活性化や雇用の場の確保、創出、県民総参加型の地域医療体制づくりなど、具体の政策として織り込み、重点的に推進してきたところであります。
 このうち、いわて県民計画のアクションプランについては、七つの政策に盛り込んだ42の政策項目において97の目指す姿指標を掲げ、政策評価によって、その目標数値の進捗を管理する中で、プランの着実な推進を図ることとしております。
 政策評価については、社会経済情勢の変化、県民意識調査における県民満足度や県民ニーズ度なども加えた県民視点に立った総合的な評価を行い、政策評価レポートとして公表しているところでありまして、その中で、政策項目ごとに達成度や課題、今後の方向等を明らかにしているところであります。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承をお願いいたします。
   〔保健福祉部長千葉茂樹君登壇〕
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) まず、中核病院診療応援事業の活用状況についてでありますが、この新規事業につきましては、保健医療圏別の人口10万人対医師数が、県内で唯一全国平均を上回っております盛岡を除きます8保健医療圏において活用されることを期待しております。先般開催いたしました市町村との会議などにおきまして、本事業の積極的な活用について働きかけを行っているところでございます。
 現在、県では、本事業の実施要領等を制定し、各市町村あて通知したところでありますが、あわせて、本事業の実施についての意向調査を行いましたところ、複数の市や町から問い合わせも来ているところでございます。
 今後、本事業等を通じまして、地域の中核病院における勤務医の勤務環境を改善するため、市町村、地元医師会と県が連携して診療応援体制の構築を推進していきたいと考えております。
 次に、県南地域周産期母子医療センターの体制や機能を充実していくための取り組み等についてでありますが、既に、県南圏域のうち岩手中部地域におきましては、センターを中心とした周産期関係保健、医療機関での合同症例検討会が開催されており、今後、このような検討会の継続開催などを通じて、当該関係機関の連携強化を図っていくほか、当部と医療局の要請を踏まえ、関係大学におきましては、診療体制の強化に向けた協議が進められておりまして、センターの一翼を担います県立中部病院に7月から産科医1名の増員が図られるものと承知しております。
 また、認定に伴う利点についてでありますが、当該センターの機能強化により、現在、本来のハイリスク分娩に加え、中リスク分娩にも対応しております岩手医大の総合周産期母子医療センターの負担軽減が期待されますとともに、平成22年度の国庫補助制度の拡充に伴い、地域周産期母子医療センターへのNICU運営費補助が創設されたことに伴いまして、県南地域周産期母子医療センターの運営面での充実強化も図られるところでございます。
   〔総務部長菅野洋樹君登壇〕
〇総務部長(菅野洋樹君) 自主防災組織の状況についてでありますが、平成22年4月1日現在の速報値では、組織数で1、729組織、前年度比で188組織の増、組織率で73.6%、前年度比で同じく3.8%の増となっております。
 次に、その役割と課題についてでありますが、県内の自主防災組織内の実践的な活動といたしましては、地域住民が地域の危険な場所や防災設備、避難場所などを地図上に盛り込んだ防災マップの作成、また、自主防災組織内で安否確認を行った上で、市の対策本部に安否情報を伝達する訓練の実施、こういったものがございます。
 自主防災組織に対する期待といたしましては、地域の助け合いによる被害の軽減でありまして、地域住民による初期消火、避難誘導及び救護等の自主的な防災活動が重要でございます。
 組織率の向上に加えまして、組織の活動の活性化が課題でございますので、県といたしましては、自主防災組織のリーダー育成研修会や市町村が行う防災ワークショップの企画支援などを通じまして、市町村みずから自主防災組織の育成強化が図られるよう支援しているところでございます。
 自主防災組織の形態といたしましては、町内会や自治会などの地域コミュニティが主体となって活動を行うことが望ましいところでございますが、地域によっては、広域的に連携しなければ活動が困難な地域もございます。このため、地域の実情に応じた自主防災組織の構築を図る必要があろうと思っております。
 また、防災関係機関や隣接する地域の自主防災組織と協力しながら活動することにより、大きな力が発揮されますので、市町村における自主防災組織連絡協議会の設置を促進しているところでございます。
 いずれにいたしましても、地域の実情に応じた自主防災組織の設置、育成が図られますよう、市町村ともよく相談しながら、新たな支援策を検討しているところでございます。
   〔環境生活部長松川求君登壇〕
〇環境生活部長(松川求君) 放射性物質に係る危機管理のあり方についてでありますが、放射性物質の輸送については、原子炉等規制法等に運搬に関する確認や事故の際の届け出など安全規制に関する事項が定められておりますほか、重大な事故が発生した場合の原子力災害対策マニュアルが定められております。
 御指摘の昨年11月の交通事故につきましては、輸送中の放射性物質は危険性が極めて低く、原子炉等規制法に基づく都道府県公安委員会への事前届け出は不要なものであり、また、放射性物質の漏出はなく同法による事故の届け出も不要なものでありましたが、現場において正確な情報が関係機関に伝わらず、事故後の通行どめの解除がおくれることになったものであります。
 このため、搬送を依頼した日本原燃株式会社に対し、県から申し入れを行い、同社との間で、原子炉等規制法による届け出が不要な場合であっても、事故発生時には、同社から迅速に連絡する旨の取り扱いを定めております。
 今後、この取り扱いの適正な運用を図り、こうした事態が繰り返されることのないよう対応してまいります。
 次に、地域クリーンエネルギー資源調査事業についてでありますが、県及び5市町で行う委託事業の具体的な内容と成果につきましては、県では、再生可能エネルギーの導入に当たっての適地条件、経済条件等の調査や初期投資額の低減策などについて、5市町のうち、花巻市は、太陽光発電など再生可能エネルギーの導入適地等について、釜石市は、大規模太陽光発電の導入適地などについて、奥州市は、多収穫米の生産や米のエタノール化と燃料への活用等について、山田町は、小水力発電の導入可能性について、軽米町は、鶏ふん等を利用した発電や熱利用の可能性について、それぞれ調査を行い、再生可能エネルギーの利用可能性等を明らかにし、県及び5市町の調査結果報告書として取りまとめることにいたしております。
 また、調査結果報告書をもとに、全県的な普及を図っていくため、再生可能エネルギーの導入手引書を作成することといたしております。
 次に、次年度以降の政策展開についてでありますが、再生可能エネルギーの導入には、高い費用を要することが導入を阻んでいる原因の一つでありますことから、今回の県の調査では、施設の共同設置やリース方式、ファンド方式による設置など、設置費用の軽減策についても示すことといたしております。
 本年度の調査結果をもとに作成する再生可能エネルギーの導入手引書に、こうした設置費用の軽減策などを盛り込み、市町村と連携して、地域レベルでの再生可能エネルギー導入に向けたプランづくりを支援するなど再生可能エネルギーの導入促進を図り、関連産業の雇用の拡大や地域の活性化につなげてまいりたいと存じております。
 なお、奥州市の調査については、多収穫米の生産からエタノールの製造、燃料への活用等、一連の事業可能性について、採算性を含め調査していくこととしており、具体的な製造体制の確立や販売への道筋については、今年度の調査結果を踏まえ、事業可能性を確認した上で、実用化に向けた検討を行っていくことになると考えております。
 次に、廃棄物適正処理監視の取り組みについてでありますが、人工衛星だいちのデータを活用した産業廃棄物に関する監視手法につきましては、県と岩手大学地域連携推進センターにより、平成18年度から3年間にわたる共同研究を行い、監視手法として有用であることを確認しております。
 昨年度、この事業は環境省に引き継がれ、環境省においては、本システムの全国的な展開を図っていくため、本県のほか13自治体の参加を得て、廃棄物処理施設を定期的に監視することや地形の変化を確認すること等、導入可能性調査を行っております。
 その結果、参加自治体においてもその有効性が認められたことから、本年度は、インターネットにより配信された衛星画像を活用し、廃棄物不適正処理の未然防止や早期発見につなげるモデル事業を実施すると聞いております。
 県では、昨年度に引き続き環境省の事業に参加し、衛星画像の配信を受け、廃棄物適正処理の監視に役立てていくことといたしております。
   〔農林水産部長小田島智弥君登壇〕
〇農林水産部長(小田島智弥君) 米粉の活用策についてでありますが、米粉の生産について、新潟県は、和菓子やせんべいなどの米菓等に使用する米粉の生産の歴史が古く、小麦粉代替の米粉に係る取り組みについても先進県となっております。
 一方、本県では、小麦粉代替の米粉の約75%が他県への委託製粉となっており、品質の高い米粉の製粉施設の整備促進が必要と考えております。
 また、米粉の利用拡大に向け、原料となる米粉の安価で安定的な供給や米粉製品の加工技術の開発、普及、米粉商品の需要の確保などが課題となっております。
 こうしたことから、県では、国の補助事業の活用による製粉施設の導入支援や米粉用米の生産を促すための安価な米粉用米の生産拡大と産地、実需者間の連携支援、さらには、産学官の連携による加工技術の開発や学校給食会と連携した米粉パン普及拡大などに取り組んできているところであります。
 今後は、米粉パンに加え、米粉めんや米粉スイーツなどの新商品の開発支援や米粉フェアの開催などによる米粉商品のPRなどにより、需要拡大を進めるほか、米粉パン製造技術研修会などを通じた生産者への製造、加工技術の普及や販路拡大等のマーケティング支援により、生産者による米粉製品の6次産業化も促進してまいります。
   〔政策地域部長加藤主税君登壇〕
〇政策地域部長(加藤主税君) 緑の分権改革に絡めた地域振興に関する質問についてでございますが、いわて県民計画では、県民、企業、NPO、市町村など、地域を構成するあらゆる主体が、ともに支え合い、地域資源を最大限に活用しながら、地域の個性や特色を生かした取り組みを展開していくこととしておりまして、この考え方は、緑の分権改革の理念にも通じるところがあると認識しております。
 豊かな自然や環境、農林水産物、文化、歴史などの地域資源を掘り起こし、磨きをかけ、地域の振興につなげていくことは、地域の自立、ひいては地域主権の確立にも資することから、新たにスタートいたしました4広域振興局体制のもと、地域における意見やニーズをしっかり吸い上げた上で、情報提供、人材育成の取り組みのほか、地域振興推進費などを活用し、必要な支援を行ってまいりたいと考えております。
   〔商工労働観光部長齋藤淳夫君登壇〕
〇商工労働観光部長(齋藤淳夫君) まず、生活福祉・就労支援協議会についてでありますが、同協議会の県協議会は岩手労働局が、県内10カ所の地域協議会はハローワークが、それぞれ中心になって、3月に設立されております。
 協議会の設置を契機に、福祉と雇用の連携が一層強化されまして、生活保護受給者への就労支援については、ハローワークと県や市の福祉の窓口とが相互に協力し、これまで以上に、生活保護受給者の状況に応じたきめ細かな支援が可能となったところでございます。
 また、自殺防止対策につきましても、ハローワークにおきまして、昨年末から保健所職員による心の健康相談を実施しましたが、6月にはハローワークが、集中啓発期間を設け、心の健康に関するリーフレットを配布するなど、相互が連携して相談、普及啓発するなどの成果があらわれております。
 さらに、ワンストップ・サービス・デーについて、昨年末に初めて実施したところでございますが、各地域に協議会が設置されたことにより、情報共有が進み、関係機関の連携が円滑化されました。これまで、宮古、奥州及び盛岡の3地域で実施し、合計93人、延べ203件の相談があったところでございます。この中では、宮古で多重債務問題対応のため、弁護士などの協力が得られたとも聞いております。
 次に、ものづくり産業の集積についてでありますが、平成20年における本県の医薬品の生産額は約1、500億円でございます。そのほとんどを誘致企業が占めております。これらの誘致企業においては、さらなる増産の動きもあることから、県としては、強く支援してまいることとしております。
 一方、医療機器の生産額は約30億円にとどまっておりますが、薬事法の改正などにより、地元企業も大手からの受注生産に積極的に取り組んでいることから、生産額は前年度と比較し30%増と大幅に伸びております。
 医療機器関連産業は、景気の動向に左右されにくく、今後の確実な成長が見込まれる産業であるとともに、基盤となる技術が自動車、半導体関連産業と共通する部分が多く、県内企業の参入が十分に可能であることから、自動車、半導体に次ぐ第3の柱として位置づけ、この3月に医療機器関連産業創出戦略を策定したところであります。
 この戦略に基づき、県内企業の試作開発を促進する新たな補助金制度を創設したほか、薬事法における製造業の許可取得の支援や展示会などによる新規参入、マッチングを推進するとともに、生体材料として期待されているコバルト合金の早期事業化を進め、産業の集積を図っていきたいと考えております。
   〔県土整備部長平井節生君登壇〕
〇県土整備部長(平井節生君) 救急搬送ルートの確保についてでございますが、昨年度、県内各消防本部から聞き取り調査を行い、急カーブ、急勾配など改良系94項目、63カ所、路面の段差など維持修繕系77項目、66カ所を救急搬送における走行支援箇所として選定したところでございます。
 このうち改良系につきましては、現在、国道397号分限城‐赤金間、国道342号花泉バイパス等10工区において整備を進めており、これらの完成により、14項目、9カ所の解消が図られる見込みでございます。
 次に、連絡会議についてでございますが、本年5月までに、消防本部と広域振興局土木部等で構成される連絡会議を県内13カ所に設置したところでございます。
 国、市町村など他の道路管理者につきましては、発足時に働きかけをしたものの、まだ多くの参画をいただいてございませんが、今後、消防サイドから支障箇所の指摘があった場合等、必要に応じて再度参画を要請していく考えでございます。
 次に、県立中部病院へアクセスする市道整備についてでございますが、花巻市におきましては、都市計画道路山の神飯豊線及び山の神藤沢町線につきまして、平成19年度から事業化し、平成23年度の完成を目標に整備中でございます。
 また、北上市におきましては、同路線に接続する市道飯豊北線につきまして、今年度から社会資本整備総合交付金事業により、早期の完成を目指して整備を始めたところでございます。
 これらの路線は、県立中部病院へのアクセス道路として重要であると認識しており、早期の整備促進が図られますよう、花巻、北上両市と連携してまいりたいと考えてございます。
   〔教育長法貴敬君登壇〕
〇教育長(法貴敬君) 高校授業料の不徴収にかかわる制度の運用の検討についてでありますが、関係法案の動向とあわせて、具体的な国の制度設計がどのようになるかを注視しつつ、教育委員会として多面的な検討を行ってきたところであります。
 議員御案内のように、特別の事由がある場合は授業料を徴収できるということが示され、なおかつ、その判断については各地方公共団体にゆだねられたことから、国の制度を参考に、また、私立学校との均衡などを考慮し、個人の事情による再入学や通常の年限を超える場合の授業料を徴収することが適当と判断したところであります。
 次に、全国の動向などについてでありますが、本年5月時点における全国の状況については、6月定例会に関係条例を提案する見込みの都道府県を含めて申し上げますと、既卒者や留年生から授業料を徴収することとしているのが本県を含み24都県、いずれの生徒からも不徴収としているのが22道府県、未定としているところが1県と把握しております。
 また、このような事情については国においても把握していると聞いておりますが、授業料の徴収対象者については、法により地方公共団体の判断にゆだねられていることから、国から地方公共団体に対して指導する予定はないと聞いております。
〇10番(木村幸弘君) それでは、再質問させていただきますが、私は、高校無償化の問題にかかわって、1点に絞りながら質問させていただきたいと思います。
 今、教育長から御答弁をいただきましたが、いわゆる教育的な配慮というところの答弁が、具体的には何も今の答えの中からは示されなかったのではないかと。いわゆる基本的なこの法律の第3条にかかわる取り扱いから、非常に機械的といいますか事務的な判断に基づいて、今回の徴収対象者が選定されたと聞くわけであります。
 そうした中で、この法そのものについては、私どもも、この法の趣旨に基づく意味というものを非常に歓迎をし、そして、社会的にさまざまな観点で教育の機会というものを、ある意味では失いかねない、そうした立場にある方々も含めてしっかりと全体で支えていくんだというのが、この法の理念の中に位置づけられていたと理解をし、そうした中で本県における条例もかけられてきたわけであります。
 その意味では、県当局は、実に忠実に、ある意味ではこの法の考え方に基づいた条例が定められたし、我々議会の側も、一方では、そうした理念的な思いの中で、歓迎をする意味において、具体の細かい、そうした課題が発生することの想定をしなかったという点では、不十分な議論を経ながら今日に至っているという点を踏まえなければならないだろうとは思います。
 しかし、そうした中で、実際に今回、この運用が行われてきたという実態の中で、申し上げましたとおり、151名の方々が徴収の対象になってしまったこと、そして、しかもその経過の中では、前歴という形の中で、過去にさかのぼって、現在在籍をする生徒さんのそうした実態まで調べながら、対象としていった手続、こうしたことの対応について、やはり非常に問題が今大きくなってきているのではないかと思っております。
 そこで、まず、知事にお伺いしたいのですけれども、今回、県教委がこうした運用を行ったこと、そして、今、御答弁いただいたように、全国の自治体における取り扱い方が基本的に地方公共団体にゆだねるというこの法の中で進められてきたことによって、実質的に、今の在籍する生徒は不徴収だと定めた自治体、それから徴収をすべきという判断をした自治体ということで、こうした事態が発生したこと。結果として、本県を例にとれば、他の都道府県の中で、例えば同じような境遇や条件にある学生さんが、第3条の取り扱い方によっては、この法の本来の目的である経済的な負担の軽減、あるいは教育の機会均等というこの目的に反して、差別や不均一化が拡大してしまっていると言わざるを得ないという点が、大きな問題であると思います。
 さらに言えば、こうした差別化の実態をこのまま放置するということは、例えば憲法第14条の法のもとの平等として果たしてどうなのか、あるいは第24条の教育を受ける権利としてはどうなのかということにも当然つながってまいりますし、教育基本法でも、教育の機会均等を掲げた第4条の理念、考え方、こうしたものにも外れてしまう、そういう扱いになってしまうのではないかというふうにも思われるわけであります。
 知事は、この高校授業料の無償化政策、まさに民主党の目玉事業として導入された制度でありますけれども、先ほど御指摘を申し上げたような事態が現実に生じている、こうした状況を踏まえれば、高校生であればだれもが無償化の恩恵に浴せると思っていたはずのものが、結果として本法や、あるいは条例の定めの取り扱い、運用によって、学ぶ権利に対する機会がさまざまな事情から困難な環境にある立場の方々に対して、本県では全国との関係で差別化が助長されるという極めて皮肉な事態になっているというふうに指摘せざるを得ないわけであります。
 民主党籍を有する知事は、この法律の趣旨や、あるいは目的というものを考えたときに、このような事態になっているということについてどのようにお考えかお伺いいたしたいと思います。
 そして加えて、本条例が制定される検討過程、あるいは運用に関する内部的な協議が進められた段階で、知事は政策判断に対してどのように関与されてきたのかについてもお伺いしたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 条例については、議会に提出する前に、私も了承した上で議会に提出をさせていただいているところであります。
 そして、高校授業料無償化について、法律上、授業料を徴収することができる場合、特段の事由について地方公共団体の判断にゆだねられているために、地方公共団体によってまちまちとなっているという状況はそのとおりだと思います。
 高等学校等の費用を社会全体で負担していくというこの法の趣旨にかんがみまして、全国でまちまちとなっている課題については、これは法施行後3年を経過した場合、必要があるときは所要の見直しを行うという規定もありますので、国に提言をしていきたいと考えます。
〇議長(佐々木一榮君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
〇10番(木村幸弘君) 関与にかかわる部分ですが、決裁を行ったということでの関与はそのとおりでしょう。知事の執行権として当然そのような手続は行われたと思いますが、そうした中で、実際にこの条例を制定する方向を議論していく過程の中で、先ほど教育長にも答弁をいただきましたけれども、教育的配慮と言われる観点が、今回の2月定例会に条例を提出する過程、その前段の中の協議として十分行われたのだろうかということもやはり考える必要があるんじゃないかというふうに思うわけであります。
 当局─教育委員会のほうから、今回のいわゆるこの条例等を制定するに当たっての検討経緯はどうなっているんだということで、ペーパーでその状況をいただきましたけれども、まずは議会、いわゆる国会でこれらの法律がまだ審議中である状況がありました。そうした背景の中で、条文が大筋出ていること、それから、この資料を見ますと、県サイドでは年度内成立の可能性が高いだろうという見込みのもとにこの条例の検討を行い、そして2月定例会への提案という段取りを組んできた経過が見えるわけでありますけれども、ただ、そうした中で、2月3日の時点でそうした検討が行われておりますけれども、国会ではさまざまなこの取り扱いをめぐる議論がその後も行われているわけであります。ぎりぎりの段階までこの特別な事由というところの考え方、ここに対するやりとりが行われているわけであります。
 特別な事由のところで、鈴木副大臣が─3月25日の段階です─、想定される事例としては、特別な学校を創設して在学する生徒、これを本県に置きかえると専攻科というふうな位置づけが考えられます。それからもう一つは、高校既卒者が再入学する場合ということで、結局、既に高校を卒業したけれども、また再度入学してくるようなケースがあった場合だと、これが特別な事由の具体的想定事例として鈴木副大臣がお答えになっている部分です。
 それから5月31日、この法が施行されてから以降のことでありますが、日本教職員組合と文科省との意見交換が5月21日に行われておりまして、その際に文科省は、この法令作成時に想定したのは、同じ学校に入学してから全日36カ月超、定時制、通信制48カ月超、在籍した後のことなので、前歴を調べる必要は感じられないということをお答えしています。本県の場合には、そうした考え方がもう先行する形で前歴調査まで行って対象者を抽出し、そして4月から徴収の対象にしていくというふうな動きをつくってきた点について、やはり国等の考え方を含めて考えていっても、こうした問題がやはりいろいろと今回の対応については大きな課題になっているというふうに指摘せざるを得ないわけであります。
 そこで、教育委員会が、先ほど中平議員の質問の中でも、病気あるいは留年あるいは不登校の取り扱いについての質問に対してお答えしているわけでありますけれども、結果的にあいまいになっている教育的配慮という考え方のところ、ここが実は各地方自治体、地方公共団体の判断の分かれどころになっていてこういう状況をつくり出しているんだと思うんです、ばらばらな対応。この教育的配慮というところで大きくその県教委や都道府県の考え方、運用の考え方、この違いによってばらばらな状態をつくり出しているということだとすれば、そうしたことを踏まえて、私は、先ほど病気については弾力的に見直しをしたいとか、そういった御答弁が出されているわけでありますけれども、根本的に法の趣旨に基づいて考えていけば、ここは運用の面から、まず今の県教委がとっている対応、これは見直し、改めるべきではないのかということを強く申し上げたいわけでありますけれども、そうした見直しの検討をどのように考えているのか、改めて御答弁をいただきたいと思います。
〇教育長(法貴敬君) 先ほど病休の場合はという話をしたんですけれども、休学の取り扱いが、例えば1カ月単位でしか休学がとれない、そのために病休であっても1カ月休まないという形で休学届が出されないというふうな運用がなされていますので、なかなか出しづらいということで、その病休の場合の休学の出し方を少し運用面でやるということで、休学、留学という取り扱いを制度的な運用ができるかどうかという、条例で定める留学と休学の範囲内でどういうことができるかという検討をしたいということでございます。
 先ほどから前歴の証明書がどうのこうのという御質問があるんですけれども、特に通信制の高校にあっては、編入学、転入学が非常に頻繁に行われております。普通の全日制の場合は連携してうまくいくんですけれども、通信制だとどこの学校からどこに入ってきたかなかなかわからない場合もありますので、そういう意味で少し前歴を確認しなければなかなか難しい、運用ができるかなということで前歴証明書をとったということでございます。
 特に、151人の中で専攻科が50名、それから通信制が70名、通信制は最大15年かかって卒業してまいりますので、なかなか卒業履歴というのを把握するのも非常に難しい関係にありますので、そういうところでやはりきちんとした確認をとりたいという現場の御意見もあって通信制について前歴証明書をとらせていただいたということで、決してぎりぎりと授業料を徴収したいという意味でやっているわけでもございませんし、留年の場合も、36月を超える場合というふうに言っていますけれども、36月かかって、ぜひ3年で修学年限を終わってほしいという強い思いから、それを超える留年についてはなるたけ留年生を出さないという強い思いの中でそういう制度設計をさせていただいたところでございます。
〇10番(木村幸弘君) 今の教育長の答弁、だったら、例えば最大15年ですか、通信制、それから今、教育長の思いとして、教育的配慮の思いがちょっとこもった答弁なのかもしれませんが、留年の3年を超えてという部分に対してもっと頑張れよという意味を含めてやろうとするのであれば、むしろ今回、4月から施行されたこの制度に対しては、こういう制度が始まったということの趣旨は当然伝えるべきだろうというふうには思います。しかし一方で、これまで既に在籍をして、そういった境遇、環境の中で頑張ってきている方々、対象者に対して、結局は前歴を調べて、そしてそれを調べた結果に基づいて徴収をするというふうなことが実際に運用として行われているわけですから、そういった点では、やはり教育的配慮という観点からいえば極めて、むしろ事務的な措置のほうに重きが置かれて、そういう思いがきちんと示されないのではないかというふうに思われて仕方ないわけであります。
 いずれこの運用面について、本当に今の実態に即して、しかも最初に申し上げたとおり、この運用が行われる、今の岩手県の運用が行われる結果によって、あるいは岩手県だけではなくて、先ほど答弁があった他の22県のお話もあったんですけれども、こういう状況の中で、本来の法の趣旨に全く相反するようなそれぞれの自治体の動き方がこのように行われることについては、知事は3年を経過した後の法施行の改正も当然関係機関にその時点ではお伝えしなければならないという答弁をもらっていますけれども、しかし、現実にはもはやその差別化を3年間も逆に言えば放置しておくのかと。今度は法律上、果たしてそれが当事者にとって不利益をこうむったということで訴えられたときにどういう問題になるのかということも考えていく必要があると思うんです。
 そういった面での法の不備、あるいは条例における運用面においての本県の対応、全国的な事例を含めて、やはり今の状況の中で差別助長を拡大させないという観点から運用の見直しをまず進めるべきと思いますが、再度お答えをいただいて終わります。
〇教育長(法貴敬君) 制度的に全国ばらばらで、なおかつ岩手県だけが特殊で制度的に変な運用をしているというものがもし課題としてあらわれるものならば、それは順次制度的に直していきたいというふうに考えております。
〇議長(佐々木一榮君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後5時3分 散 会

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