平成17年9月定例会 第15回岩手県議会定例会会議録

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〇41番(渡辺幸貫君) 民主・県民会議の渡辺幸貫でございます。
 まず、小泉首相の圧勝に終わった衆議院選挙。国と地方の長期債務は、2001年の646兆円から今年度末は774兆円なそうだ。財政の危機の中で、2007年度まで増税は見送ると発言している。小泉首相は、構造改革が中途半端なうちは増税しないと考えているのではないか。国際的に見て法人税の引き上げは無理だから、いずれ所得税か消費税を上げるという選択に迫られるだろう。したがって、当面、国と地方の歳出削減を優先すると考えられる。例えば、景気が悪くなったからといって公共事業の積み増しは行わない。また、もう一つの財源である市町村の道路や箱物建設などの地方自治体向けの財政投融資。1人当たりの残高が最も少ない37万2、000円の東京都と最も多い島根県の178万6、000円では5倍の格差があり、社会資本の充実に熱心だった岩手県は122万8、000円と4番目に多い。財投は、道路公団などの特殊法人のほか、都道府県や市町村にも地方債などの形で資金を供給している。病院、上下水道、福祉施設を整備する場合などが対象になってきた。2005年度は、財投全体の34%に当たる5兆9、000億円が地方向けだった。
 一方、小泉首相は、自民党総裁任期の来年9月にはやめると言い、郵政民営化後の小さな政府像については触れない選挙活動に終始した。しかし、公務員制度改革、国と地方の税財政改革、医療と年金、少子・高齢化対策を含めた社会保障制度改革がある。知事は、衆議院選挙の結果をどう受けとめ、岩手県知事として国に何をどのように期待し、県政運営でどのような変化が必要と感じられたのか、お伺いします。
 次に、今度の選挙に大きな影響を与えたと思われる7月に公表された経済財政白書について伺います。
 白書は、小さな政府のメリットを説いている。歳出の削減を進めなければ増税に理解は得られないという配慮も働いているのだろう。国の歳出の4割を国債発行に頼っている現状を考えれば、財政がなお景気の下支えをしているのは疑いない。しかし、小泉政権は、小渕元首相、森前首相らの財政拡張策から転換した。それが企業経営者に経営改革を促した面もあると思う。日本経済は、バブル後遺症とも言える企業の雇用、設備、債務という三つの過剰問題がほぼ解消された。その結果、企業にどれくらいの売り上げがあればもうけが出せるかを示す損益分岐点はバブル後で最低水準まで低下し、売上高が下がっても利益が出せる体質に強化されつつある。家計部門についても、雇用のリストラが一段落し、2003年度以降、失業率が低下し、雇用・所得環境が改善していると指摘した。白書では、公共投資が成長率を高めるかどうかは明確でなく、政府支出全体の拡大は経済成長に悪影響を及ぼすと言えるような報告である。ケインズの公共投資を景気に活用する考えは短期的であったのに、日本では政治的な要請もあって根づき、常態化していた。それが今となっては大きな負担となり、逆効果だったと思う。
 白書で最も重要なことは団塊の世代の大量退職で、家計貯蓄率が現在の8%からわずか5年後の2010年には3%にまで落ち込むという試算です。日本の巨額の財政赤字は高い貯蓄率によって賄われてきたため、問題にならなかった。しかし、国債の消化が海外資本に頼らざるを得なくなる。逆に言えば、国債の格付に一喜一憂し、政策が決定できなくなるのではないかと危惧されております。財務省試算によると、2005年度予算をもとに、2008年度の国債残高は新規発行40兆円を突破し625兆円、2018年度には917兆円にも達するという。さらに先月、総務省の地方公務員の給与のあり方に関する研究会は、地方の地場産業に比べ、公務員の水準は高い。仕事をしようがしまいが年功序列で給与が上がり、厳しさに欠けている。具体策として、現在の級構成の再編成と給与カーブのフラット化のほか、勤務実績をより的確に反映するため、昇給や勤勉手当などの見直しを求めている。
 課題山積の我が岩手の身の丈予算だが、もっと大胆なコスト削減の決断、例えば、事業見直し、学校再編、振興局配置、競馬を初めとする法人改革、官と民の役割分担による人員削減など、どれをとっても一日も早い知事の大きな決断なしにはなし得ない。知事は、本年度当初、国の交付税の動きに惑わされない財政運営できる歳出規模として7、200億円が望ましいとの考えを示した。確かに現実を見据えた成長路線からの決別予算と評価する声もあったが、白書の示すハードルははるかに高いのではないかと思うが、知事のお考えを聞きたい。国民の過半数は、公共事業の大幅削減、若年者は社会保障費すら負担する意思は少ない、すなわち小さな政府を支持する実態を考え、知事の速やかな決断を待ちたいと思うものです。
 次に、平成の大合併に伴い首長選が盛んに取りざたされているが、合併のきっかけの一助となった合併特例債についての所見をお尋ねしたい。
 今回の衆議院選挙においては、都市部の投票率が高まり、都会に住む選挙民の力がより強まるとともに、先送りされる負担増、少子・高齢化と財政再建、それに伴う福祉、年金、医療、子育て対策が浮き彫りになり、合併バブルとも言える特例債での公共施設などのハード整備は財政悪化をもたらすという認識がより深まったと思います。岩手県だけで発行可能額は約2、200億円にも上ると推定されている。返済額の70%は国からの交付税措置だとしても、もとをたどればすべて税金。今後、国、地方の財政支出のツケだけを次世代へ回しかねないとする議論がありますが、特例債で夢物語を描くなら、住民はもちろん、国民全体の合意が不可欠です。こうした状況を思えば、特例債の発行には慎重になってしかるべきと考えますが、いかがでしょうか、知事としての所見をお伺いします。
 次に、県は、昨年より政策等の評価に関する条例を施行し、本年度からは特定課題評価を導入して、よりわかりやすく、詳しく、優先度の高いテーマを取り上げることとし、平成11年度から22年度までの県総合計画の主要な指標の到達度等を検証している。県民意識調査などのほか、社会経済状況を踏まえて総合的評価を行っている。それによれば、到達度が高が70指標で31%、中が62指標で28%、低は90指標で全体の41%を占めている。社会経済状況等の影響の大きいものは難しい状況と報告されている。特に、創造性あふれ、活力がみなぎる産業が展開する社会が厳しいとの評価になっている。低迷する県内経済を反映していると思う。知事のマニフェストに基づく誇れるいわて40の政策でもややおくれているで、選択と集中を強めたはずが、目標達成も今後の任期中では難しいと思われる。8月に行われた総務委員会での議論では、数百ページに及ぶがわかりづらい、マニフェストを県職員が評価するのはおかしい、マニフェストに基づき総合計画を変更すべき等議論があったと報じられている。掲げてきた夢県土いわてなどの耳当たりのよい言葉が色あせてしまう。前例にとらわれない柔軟な発想、行政品質向上運動などの独創的なアイデアを持っていても、厳しい財政で新規事業になりにくい無力感に対し、知事は苦慮されていると思います。社会資本の充実に配慮した長期の県総合計画が立てられてから後、小泉政権が誕生し、厚生労働省が発表した人口動態の全国統計では、ことし上半期で日本の人口も予想より2年も早く3万人以上減り、人口減少社会が訪れ、岩手は5年前から既に減り始めている。この政策評価の持つ意味を否定するわけにはいかないが、時代がさま変わりした中で、膨大な労力を必要とすると拝察するこの政策評価システムを知事はどのように生かされて継続されるのか。その力をもっと県民サービスに向けたらどうかとも思うのですが、見直すお考えはないか、伺います。
 次に、振興局見直し案について伺います。
 県は、今月5日、広域生活圏を三つから四つの圏域にくくり直した。本年度は11地域で市町村合併が行われる。人口減少や少子・高齢化、財政問題、分権の加速などで合併はさらに進み、岩手の地図が大きく塗り変わることが予想される。振興局再編の基本的な考え方は、増田知事が2月定例会でも触れた。県と市町村、本庁と振興局の望ましい役割分担を検討し、その上で地域が担う方がいいと述べ、6月定例会に、事務は地域完結を目指して振興局に権限、財源、人員の委譲を進めていくことだ。自治の近接性、補完性の原理の具体化を強調した。これを踏まえると、再編案は市町村との相互理解、役割、つまり、仕事の分担論議が後回しではあり得ないのではないか。産業振興が区分けの要因の一つだが、その将来的なビジョンの妥当性も議論の対象になる。市町村側も、振興局に期待する役割や権限委譲に何を望むかをみずから示す積極さも必要だが、合併でそれどころではない。そもそも振興局の役割を知っている県民はどれだけいるのか。振興局はまちの中心部にある。なくなれば人の集まり方が変わり、まちづくりにも影響すると思う人が大部分なのではないか。何をどのように振興局、市町村に移譲し、再編メリット、デメリットはどうか、改めてお聞かせください。
 6月の県総合計画審議会で3再編の際、総合政策室長は、今後、大変速いピッチで人口減少が進み、その8割は内陸の北上川流域に集中するのではないか。それを視野に入れながら、広域生活圏見直しと振興局再編の素案で、県政の大きな転換点と説明したと報じられた。また、6月議会で知事は、06年度当初の地方振興局配置は、県北、沿岸地域は現状を維持し、おおむね5年後に見直しの検討を始める方が適切だと答弁していた。今回くくり直した理由は、久慈、二戸は農業の比重が高く、八戸都市圏との交流による産業振興も視野に入れるという。しかし、製造品出荷額は約900億円と、県内の4%と極端に少ない。農業産出額でも自立できるほどの額なのだろうか。久慈は沿岸だとの声を聞くにつけ、地方がみずからの責任と負担で個性ある地域づくりを進める地方分権社会が築けるとは思えない。久慈・二戸圏域は盛岡と一緒の方が特に負担の面ではよかったのではないか。
 一方、盛岡は3次産業の比重が高く、学術・研究機能の集積を生かした新産業を創出するとしている。圏域を分けるほどの新産業とは何を描いているのか。盛岡は中核市への移行も視野に、広域振興局は置かないという。県南地域は、自動車産業を中心とした工業集積が進むなど自立できる基盤ができたとしているが、昔からの歴史、文化や人的、物的交流を考え、花巻は盛岡と一緒とすべき、気仙を県南に入れないのはなぜかと異論は多い。
 広域圏の設定は、国、地方財政の三位一体改革で補助金改革、税源移譲が進み、地方の自由度が高まることを想定しているが、現状はそのシナリオがよく見えてこないのも懸念材料だ。不確定要素があることを理由に、再編案はあと数年の諸条件を見きわめてからでも遅くはないとの論もある。産業、保健医療、防災など広域的サービスをどう向上させるのか伺いたい。県南を先行させたり、沿岸、県北のように自立、具体化の道筋が見えにくかったり、盛岡のように地方振興局の役割感が薄かったり、おのおの本庁への距離が違う中で県政の一体的行政がうまく機能するのか、御説明願いたい。
 また、地方交付税を中心とした財政危機感を抱き、人口10万の都市が並んだ県南地域、地域事情もあるのだろうが、財政規模では合併十分とは言えない県北・沿岸地域。道州制、北3県構想など地方の自立に意欲を燃やす増田知事はなぜ市町村合併に手を染めないのか。三つのくくりのままで合併を促すべきではないか。今後は積極的に指導するのか。三つのくくりが四つになったことにより、これからの産業振興を中心にした広域生活圏の方向性を知事はどう考えているのか。私は、県土の均衡ある発展を思うとますますわからなくなってきましたが、納得させる、リーダシップに富んだ御答弁を願います。
 次に、先日の報道で県は、関東自動車を中心とした自動車産業の基盤づくりに向け、7月の宮城県との連携に続き、山形県も加えた3県で県境を越えた一大拠点形成を目指す方針を固めたそうです。朗報として受けとめたい。米沢地域の電気機械の集積が進んでおり、経済産業省の地域新生コンソーシアム研究開発事業で岩手大と山形県工業技術センター、企業などで自動車用高度部材の生産技術開発を行うなど、協力関係を強めているという。秋から25万台の生産能力を有する工場へ増強されれば、その経済効果は、東北地域内の部品の調達率を50%に高めた場合、現在の2、900億円の2.5倍の7、400億円と東北産業局では試算している。県予算に匹敵する規模である。大きな期待を寄せられ新たなアジアのマザー工場になることは、東北経済の発展のかぎを握ることとなる。近くの部品工場が充実していればそれだけでコストカットになるし、細やかな仕様変更にも対処できる。世界的な競争にさらされるコンパクトカー市場で勝ち抜くには、これまで以上に安く、高品質の部品を調達しなければならない。今年度の当初予算では、生産技術向上や人材育成を支援する自動車関連産業創出推進事業で3、000万円、いわて産業人材育成事業で2、100万円を計上している。部品組み込みソフトウエアを養成する県立大の講座やいわてものづくりアカデミーの開設などを進めているところだが、とても規模にふさわしいとは言いがたい。ものづくりの基盤をどのように描いておられるか、お尋ねしたい。
 あわせて、金ケ崎工業団地周辺のインフラの整備について伺います。
 一昨日、京都議定書批准に伴うモーダルシフトにより、北上市相去に貨物駅構想が持ち上がっていると報じられた。したがって、車の渋滞で頭を抱えている金ケ崎地内の国道4号の4車線化はどうなっているのか。北上川を挟んで国道に並行する県道、一関北上線稲瀬地内の拡張整備、さらに提案ですが、金ケ崎工業団地から北上金ケ崎インターへは直線で2キロ足らずであり、道路計画を立てると北上南部工業団地と一体化すると思うが、いかがお考えか、整備見通しをお伺いします。
 今月2日、北東北のグランドデザイン、副題は、自立、飛躍するアジアの北東北を目指してと題して北東北広域政策推進会議より報告がなされました。これは、平成9年からの知事サミットを中心とした北東北広域連携構想策定後の社会経済状況の変化を踏まえ、いま一度将来像を掲げ、実現の取り組み例を示したものだとされています。すなわち、新たな段階とも言える連携の第2ステージに踏み出そうとするものなそうです。東アジアを見据えた経済的自立と活性化を目的とした飛躍するアジアの北東北を目指し、従来、各県単位で進められてきた空港、港湾など大規模な施設などの社会資本の整備は、少子・高齢化が進み、財政規模も漸減していくことが予想される中で、自分の区域内にすべての機能や施設を整備すること、すなわちフルセット主義からの脱却ととらえております。そして、交通、物流では、特に国外向けコンテナが青森県5割、秋田県8割に対し岩手県は2割にとどまり、仙台港が利用されていることを認めています。空港利用は、今後、新幹線が北に延伸することにより、伸び悩むことも予想しております。今後、北3県の港湾、空港のより効果的な利活用を進める必要があると結んでいます。フルセット主義からの脱却は大いに賛成であります。したがって、この考え方が本県の港湾、空港整備事業への知事の方向性の変化に影響を及ぼすと受け取ってよろしいか伺います。
 次に、経済状況では、全国と比較して、農林水産、建設業、公務員など公的な財政支出と関係のある分野の割合が高く、雇用機会など労働環境は低水準にあり、新産業創出が大切としています。産学官連携のもと、本当に北3県だけで目標が達成できる見通しが立つのでしょうか、お尋ねします。
 私は、以前より宮城県を初めとした南の県との地域連携の方が我が県の連携先としてふさわしいと思っています。知事は、それに対し、北東北3県が連携してこの地域の魅力を深めることで南の地域が振り向くことになり、東北全体の底上げになるとしてきました。しかし、宮城、福島には財政的にゆとりがあり、地方の自立が国から求められたとき、南が北3県を重荷に感じていたとしたら南への道が縁遠くなることを心配するものです。知事は、一国多制度を基本とした多様な自治制度が必要だと唱え、北東北3県連携を推進してきました。一方、関東自動車を中心とする北上川流域の工業団地が経済の推進役として期待されています。流通や交流は南に向かっているのに、相反する施策になりはしまいかと危惧するものです。北東北のグランドデザインと徹底した情報公開や住民参加で総合行政の推進を目指し、産業の振興や働く場、医療、福祉や人づくりを目指したはずの岩手のグランドデザインの変更が余儀なくされていないか、県民や地域に本当に自主性や自立が芽生えてきているのか、お聞かせください。
 また、道州制には踏み込んだ議論を避けておられるようですが、事実の積み重ねが先行し過ぎることも心配いたします。第3ステージなり将来ビジョンも明らかにしてください。
 次に、県も国も、3月に策定された新たな食料・農業・農村基本計画で担い手をどう育てるか、基本計画が示す農政スケジュールに目が行っている。一方、全農あきたの架空取引による補助金不正受給に端を発し、こうした不正受給の事実を重視し、農水省は、農協が経済事業と営農指導のもととしてきた農作物の需給調整の見返りの全農経由の補助金を経由しない形で農家に直接払う方式に改める方向で、省内に4月下旬に立ち上げた副大臣を座長とする全農に関する改革チームで検討し、早ければ来年にも実施の予定だという。補助金の主な内容は、全国合計で米730億円、大豆250億円、麦1、100億円のほか、野菜向けなどである。この配分機能を農協系統から剥奪し、地方農政局や農協以外の業界団体、地方自治体などを経由する案を軸に検討に入ったと報道されている。しかし、農水省が直接支払う方式に変更すると、これまで農協系統が担ってきた窓口機能も必要になり、人員やコストなどが増加する可能性の方が高く、検討課題は多い。
 一方、郵政民営化の後は、同様に貯金、保険、経済事業を行っている農協の解体が政府の規制改革・民間開放推進会議の話題になっている。そうでなくても農協は、ことし4月からのペイオフ解禁で、窓口閉鎖、つまり農協支所閉鎖に追い込まれ、農家の農協批判が巻き起こり、経営基盤が揺らいでいる。一方、今回の市町村合併の加速化で、複数の農協エリアをまたぐ自治体が相次いで誕生する。したがって、県農協中央会は、平成18年秋のJA岩手県大会に向けて農協組織再編の検討に取り組むこととしている。農協の指導監督をつかさどる県は、農協の経営基盤強化をどう分析し、今後をどう描いているのか、お答えください。
 農協解体に踏み込んだ農水省。農協統制力が高い本県では、農協が弱体化すれば、米を初めとする農産物流通をだれが担うのか。県内の農産物卸売市場は、産地直接買いする大手スーパーや地産地消のかけ声の産直に押されぎみで、経営内容も悪化している。農業の担い手だけでなく、農産物流通をどのように考えておられるのか、お尋ねしたい。
 以上で質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 渡辺幸貫議員の御質問にお答え申し上げます。
 初めに、総選挙の結果でございます。今回、国民は、自民・公明連立政権の継続を選択いたしました。小泉総理は、この選挙期間中、郵政改革を突破口に改革の前進ということを繰り返されたわけでありますが、こうした郵政改革にかける熱意や衆議院解散以降に見せたその指導力に多くの国民が共感をしたのであろうと。ただ、今回の国民の選択には、郵政民営化問題にとどまらず、社会保障、財政再建、国と地方の三位一体改革などの推進に向けた期待というものも込められているもの、このように理解をしております。
 先週の21日に第3次小泉内閣が発足いたしました。この新内閣に対しましては、国民が安心できる、持続可能な社会保障制度の構築や徹底した行財政構造改革の推進、それから、中央政府と地方政府の役割と責任を明確化した分権型国家の実現など、大きな課題にも積極的に取り組んでいただきたい、そして、国民の期待にもこたえる成果を出していただきたい、このように強く望んでおりますし、また、社会的弱者のセーフティーネット構築にもしっかりと対応していただきたい、このように考えております。
 さらに、都市部での国会議員の党派構成に今回は大分変化がございましたが、都市部の課題対応に偏重することなく、地方の課題解決にも積極的に取り組むことを期待したいと考えております。
 県でも、こうした改革に寄せる県民の期待に積極的にこたえるために、県と市町村の役割分担を見直して、市町村への権限や事務の移譲の推進、それから、行財政構造改革プログラムの推進のスピードアップ、行政とNPOとの協働といった公の仕事の官と民による分担・連携などをさらに進めていく必要がある、このように認識をしております。
 次に、経済財政白書についてでございます。
 県財政について、国の地方財政対策に左右されない自主的な行財政運営を行っていける体質に切りかえていくことが必要であると認識をしておりまして、このために、大胆なコスト削減などの抜本的な行財政改革が重要、このように認識しています。
 また同時に、県民生活の維持向上を図っていく観点から、さまざまな行政施策の継続性というものについても十分に配慮していく必要があると考えております。
 県では、平成15年10月に行財政構造改革プログラムをつくったわけでありますが、これまで、それに基づいて職員定数の縮減、給料の減額、公共事業費の適正化、事務事業の見直し、こうしたスリム化に取り組んでまいりました。
 今後も、こうしたことに一層取り組むということで、より質の高い行政サービスを提供できるスリムで強固な行政体への転換を図っていきたい。今まで、人間の体に例えれば、病弱な、病気持ちの、そういう財政構造でありましたけれども、それをまず一刻も早く健康体にする。さらには、筋肉質のスリムで強靱な、そういった体質に切りかえていきたい、こういうことであります。
 このような一切の聖域を設けない徹底したスリム化を進める一方で、福祉や雇用など社会的な弱者が犠牲になることのないよう十分なセーフティーネットの構築が重要でございまして、総合的な観点からの取り組みが必要、このように認識しております。
 合併特例債の関係でありますが、これは、特例債が地方交付税措置が講じられることとなっているわけで、まず、地方交付税制度が、これは地方団体固有の財源でありまして、今後とも堅持されるべきもの、このような認識に立っております。その上で、この合併特例債についてでありますが、これは、合併団体が、それぞれの建設計画に基づくまちづくりの実現とともに、将来の健全な財政運営の維持というものも念頭に置いて適切に発行していくべきもの、このように考えております。
 次に、政策評価についてのお尋ねでございます。
 このシステムは、平成13年度に導入して5年を経過したわけでありますが、この間、総合計画でおくれている分野、それから県民のニーズの高い分野に施策を重点化するなど、いわゆるプラン・ドゥー・シーのマネジメントサイクルの中で、有効に機能していると認識しております。
 今後も、施策や事業の緊急性、重要性をより重視して、戦略的な選択と集中が行われるように、この政策評価の仕組みをさらにステップアップしていく考えでございます。
 また、一方で、この業務量の問題が御指摘ございましたけれども、この政策評価の業務の効率化と業務量の縮減は、これはこれとして図っていく必要があると考えておりまして、今すべての分野の政策評価を実施していますが、例えば、進捗がおくれている分野に絞って重点的に評価を行うなど、効果的・効率的な評価が行われるように事務の改善を進めていきたいと考えております。
 次に、地方振興局関係について幾つかお尋ねがございました。
 まず、再編のメリット、デメリットについてでございますが、この再編の流れの大きな背景として地方分権改革があるわけでございまして、こうした地方分権改革をそれぞれの地域で着実に進めていくことが必要である、このように認識をしています。
 こうした観点に立って、県と市町村の役割分担を見直しして、基礎自治体である市町村の強化を進めることが最も重要でございまして、市町村との共通認識の上で、権限、財源、人材の一括移譲などの取り組みを今後も強化していきたいと考えています。
 また、合併が今進められていくわけですが、合併市などを中心に、権限移譲に対する問題意識は大変高うございまして、これからの進展というもの、権限移譲の進展というものを大いにそうした合併市も期待しているわけでございます。
 一方で、このような権限移譲に伴って、県は、産業振興など、これまで以上に広域的な業務に重点を移行させていきたい、このように考えております。こうした広域的な業務、例えば広域的な雇用対策、それから社会資本の整備、環境保全など、広域的・専門的な行政サービスを今まで以上に充実させていきたいと考えております。
 このような取り組みの中心になるのが、今回の振興局の再編と機能強化でございまして、予算権限を中心にした抜本的な権限強化と、それから、本庁からの市町村の機能強化に向けた支援、産業振興などの重要業務の移管を実現して、業務の完結性を高めながら、現場主義に立脚した地域振興を推進していきたい。そして、分権型社会への道筋を明確にしていく、こういう考え方に立っているところでございます。
 次に、産業、保健医療、防災など、こうした広域的サービスをどう向上させるかというお尋ねでございますが、まず、産業振興でございます。これは広域行政の重要課題でございまして、市場競争力と付加価値を高めるということが大変重要でございます。地域にさまざまな資源や技術、ノウハウ、それから人材などがいるわけでございますが、これを多方面に連携・結集させて、それぞれの圏域での取り組みを強化するということで、四つの圏域を想定していますが、それぞれで到達目標を設定して、具体的な戦略を練りながら、経済基盤づくりに取り組んでいきたいと考えています。
 それから、保健や医療、そして防災といった、これは県民の日常生活と密接にかかわる分野でございますが、ここは、市町村が住民参画のもとに取り組んでいくことが基本、このように考えております。
 その上で県が市町村を補完する、こういう関係に立つわけでありますが、例えば防災については、初動体制は市町村ということになりますけれども、津波、地震等の防災ネットワークによる住民の安全確保といった問題については、これは県が中心になって取り組む分野が非常に多いと思います。
 また、保健・医療などにつきましても、県の役割、感染症対策とかさまざま、住民が安心して暮らせる環境の整備というものに多く県が取り組む分野があるもの、このようなことを考えているところでございます。
 それから、地域ごとにそれぞれの取り組みが違うということについての御指摘がございました。県政の一体的な運営ということでございますが、本県の場合には、県土が広大である、それから、産業の視点から見ても、電気・機械産業、自動車産業というものは県南地域でありますし、畜産・園芸を中心とした農業主体の県北、それから水産業の沿岸、やはり圏域ごとの特徴がかなり異なっているということがございます。
 こうした産業の展開の状況のほか、県南地域では、合併で10万人前後の四つの市が誕生いたしました。一方で、県北・沿岸圏域については、これからの一層の合併の進展が期待される、このような違いがございます。
 このように、圏域ごとに異なった状況を踏まえて地方振興局の見直しを進めることが必要である、このように考えているわけでありまして、その上で、各圏域の地域経営につきましては、全体としては、県下全域については、私のリーダーシップのもとに、県全体の方針に基づいて、あるべき岩手の姿、それから達成すべき目標を共有して、それぞれの圏域が果たすべき役割を明確にしながら取り組んでいく考えでございます。
 それから、産業振興を中心とした各広域圏の方向性についてのお尋ねでございますが、今申し上げましたとおり、県北・沿岸地域というものは、もう一段の市町村の行財政基盤の強化が避けられない課題でございまして、合併などについても、合併新法のもとで、これまで以上に取り組みを強化していく方針でございます。
 産業振興について成果を上げていくためには、素材ですとか人材、技術など、さまざまなものを組み合わせていく必要があるわけでございまして、今回くくり直しを行おうとする二戸・久慈の県北地域についても、盛岡だけでなくて、八戸都市圏との連携も視野に入れた振興策を検討していくことも必要であると考えております。特に、県北圏域の関係者の皆さん方とは、このような産業振興の広域的なスケール感について問題意識を共有していく考えでございます。
 また、県北・沿岸地域では、人口動向を見ましても、2030年には約30%の人口減、これは2000年比較ですが、そういう超高齢社会の到来が予想されていますので、地域社会の基盤強化というものが喫緊の課題である。こうした危機感を、市町村長ともぜひ共有して、合併や産業振興の取り組みを今後さらに強化していく考えでございます。
 分権型社会のもとでは、地域が自立していくために、地域みずからが地域のことを考え、みずからの判断と責任で地域振興を図っていくことが重要でございまして、そのことを基本としながら、それぞれの圏域の振興に取り組んでいく考えでございます。
 最後に、北東北のグランドデザインについて幾つかお尋ねがございます。
 まず、本県の港湾・空港整備事業の関連でございますが、この空港・港湾の活用や役割分担につきましては、3県の関係部で議論を重ねているわけでございますが、今現在、具体的な方向性をまとめるまでには至っていないわけでございます。
 今回のグランドデザインの中で、取り組み例として提案しておりますこの北東北の空港港湾ビジョン策定というものもございまして、これが今後具体化した場合には、港湾やそのアクセス施設の整備などに関して、広域的な視点からの重点化、集中化が図られまして、今まで以上に効率的な投資や利用につながっていくもの、このように認識しております。
 それから、新産業の創出についてでございますが、ことしのサミットで産業振興をテーマに意見交換をしたわけでございますが、この中で、北東北3県が、グランドデザインに書いてある方向性を共有して、今後も、調整が必要な課題も含めて連携していこう、このようにしたところでございます。
 今後、その具体化のために、3県の産業担当部長による検討組織を設置して検討を進めていくわけでございますが、地域資源を生かした産業の振興、それから新産業の創出・育成、地域産業に貢献できる人材の育成などについては、こうした北東北3県に限定せずに、さらに広い範囲で着実に取り組んでいくことが、経済的な自立につながっていくもの、このように認識しているわけでございます。
 この北東北3県の広域連携でございますけれども、特に、宮城県との連携のお尋ねがございました。
 岩手県のグランドデザイン、それから宮城県との連携のお話があったわけでございますが、この3県の広域連携というものは、全国に先駆けて平成9年から始められたわけでございます。
 当時、考えてみれば、各県が個別に競争して施策を展開しているということで、連携による効果ということを十分に理解していない時期に、先駆けてこうした連携に取り組んで、その実績の積み重ねによりまして、今やこの3県の動向について全国が目を向ける状況も形成されてきている、このように考えております。
 本来、こうした広域連携は、その取り組みによって、それぞれの県民にどのような効果、メリットをもたらすかを視座に置くべきものでございまして、この北東北3県連携という先駆的な実績も踏まえて、各県は、それぞれの実情や必要性に応じて、多様な枠組みによる広域連携をさらに展開してしかるべきもの、このように考えております。
 したがいまして、本県では、今、議員も御指摘ございましたが、自動車関連産業の分野では、宮城県など南東北地域との連携も強化をしているわけでございまして、このように県境を越えた広域連携の取り組みは、南東北地域にも拡大しておりまして、今後は、東北全体での連携についても、当然、視野に置くべきものと考えております。
 それから、岩手のグランドデザインとの関係でございますが、特に、さまざまな住民団体が県内に活動を展開しております。福祉、環境、地域づくりなどの分野で、NPO団体、地域づくり団体が、地域に密着した活動を展開して、行政と住民との新たな協働の取り組みも進められているわけでございます。
 したがいまして、これらの展開は、3県でもそれぞれで同じような状況にあるということを踏まえますと、北東北のグランドデザインで、連携の第2ステージでは、NPOや各種団体など多様な参加主体による交流・連携の拡大等が求められている旨、今回書かれているわけですが、これもこうした背景に基づくもの、このように認識しているわけでございます。
 道州制について、今この関連でお話がございました。国では、道州制についての議論が地方制度調査会などにおきまして進められているわけでございますが、我が国の地方行政は、将来、市町村が住民の生活に直接かかわる事務を行う、基礎的自治体である市町村が住民の生活に直接かかわる事務を行って、市町村の範囲を越えた広域的な事務については広域自治体が担っていく、いわゆる補完性の原理に基づいた新しい姿に改革されていくべきもの、このように考えております。
 この場合におきまして、国、それから広域自治体、それから基礎自治体、それぞれの相互の役割分担につきましては、十分な住民の議論も踏まえて、よく検討することが重要でありますし、広域自治体につきましては、その圏域での経済的な自立が図られるように相当規模の枠組みが必要になるもの、このように考えております。
 広域連携の第2ステージに踏み出したというわけでございまして、北東北の枠に限らない、さらなる広域のエリアでの連携についても進めていく考えでございます。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承をお願いいたします。
   〔商工労働観光部長酒井俊巳君登壇〕

〇商工労働観光部長(酒井俊巳君) ものづくり基盤をどのように描いているかとのお尋ねについてでございますが、現在、県が力を入れております自動車産業は、多様なものづくり要素技術が集積している産業であります。これを本県のリーディング産業と位置づけ、関連する産業の集積を進めることは、国内外の厳しい競争の中にあっても、しっかりと存立できるものづくり基盤を本県に構築する上で、大変有効な政策と考えております。
 このため、県では、大きく三つの視点で自動車関連産業の集積を促進したいと考えております。まず一つは、地場企業を育てるという観点から、自動車関連産業への参入を促進いたします。二つ目は、自動車関連産業を新たに創るという観点から、産学官連携等による技術開発の推進とその実用化・事業化を進めてまいります。三つ目は、つれてくるという観点、つまりサプライヤー、協力企業でございますが、高いレベルにあるサプライヤー等自動車関連企業の誘致を積極的に進めたいというふうに考えております。
 この三つの視点に加え、ものづくりを担う産業人材の育成が不可欠であるほか、宮城、山形など隣接他県等との連携を図りながら、自動車産業の先進地である九州地域に肩を並べる産業の集積を目指し、東北地域としての取り組みを進めることも重要と考えているところでございます。
 こうした考えのもと、それぞれの視点に応じた各般の施策の展開を図っているところでございますが、この岩手にしっかりとしたものづくり基盤を構築させることが、必ずや地域経済の自立的な発展と安定的な地域雇用の確保につながるものと確信し、今後とも一層工夫を凝らしながら、予算面での確保も含め、関係諸施策の充実に努めてまいりたいと考えております。
   〔県土整備部長橋本義春君登壇〕

〇県土整備部長(橋本義春君) 金ケ崎工業団地周辺のインフラ整備についてのお尋ねでございますが、まず、国道4号の4車線化についてですが、金ケ崎工業団地周辺では、現在、国において、北上拡幅として北上市界から北へ延長12.2キロメートル区間の4車線化が進められており、今年度は、和賀大橋の約500メートルの拡幅が完了すると聞いております。今後とも、整備中区間の早期完成とともに、金ケ崎地内の早期整備について、引き続き国に対して要望してまいりたいと考えております。
 次に、一関北上線稲瀬地区の拡幅整備についてでありますけれども、稲瀬工区として平成16年度に延長2、400メートル区間が完了し、現在は、北上市下門岡工区の延長2、100メートル区間について整備中でございます。江刺市にかかる残りの区間につきましては、下門岡工区の進捗状況及び県全体の道路整備計画の中で検討してまいりたいと考えております。
 次に、金ケ崎工業団地から北上金ケ崎インターへの道路計画についてでありますが、金ケ崎工業団地と北上金ケ崎インター、あるいは北上南部工業団地を結ぶことによります効果は、多様で、かつ大きいものと考えております。そのため金ケ崎町においては、北上市道とを結ぶ道路計画を策定しまして、延長1、100メートル区間について整備を進めているところでありますが、残る600メートル区間の用地について、地権者の理解が得られないことから難航している状況にあると聞いております。早期に解決することを期待しているところでありまして、必要に応じて適切にアドバイスしてまいりたいと考えております。
   〔農林水産部長今泉敏朗君登壇〕

〇農林水産部長(今泉敏朗君) 農業問題について、農協の経営基盤強化をどう分析し、今後をどう描いているのかというお尋ねについてでございますが、現在、農協系統では、組合員数の減少や金融緩和など経営環境の変化に対応し、生産資材コスト軽減などの経済事業改革や支所・支店体制の再構築による経営効率化など、諸改革の断行に組織を挙げて取り組んでいるところでございます。
 今後におきましても、新たな組織再編も視野に入れながら、経営改革に向けた主体的な取り組みをさらに一層加速していくことが必要であると認識しております。
 こうした経営改革の取り組みによりまして、営農指導や集落営農組織の育成、安全・安心な農産物の生産・流通拡大などの組合員サービスがさらに充実され、組合員に支持、信頼される農協として、地域農業生産力の増進と農家組合員の営農や生活の安定・向上という本来の役割を将来にわたって確実に果たしていくことができるものと考えており、組合員の利益実現のためにも、やはり、ぜひとも抜本的な改革に取り組んでいただくことを期待しているところであります。
 次に、農産物流通をどのように考えているのかというお尋ねについてでございます。
 国は、新たな食料・農業・農村基本計画の中において、食料の安定供給や地域経済活性化に重要な役割を果たしている食品産業等の強化を図るための一環として、農業と食品産業の連携強化、食品流通部門の構造改善の推進など、食品流通の効率化を打ち出しております。
 農協系統におきましても、多様なニーズに対応した流通ルートの開拓や食品産業との連携の強化、農産物の高付加価値化、流通コストの低減など、消費者と生産者をつなぐ農協ならではのみずからの強みを生かした経済事業改革に取り組んでいくことによって、今後とも、農産物流通の担い手として、消費者への食料の安定供給や生産者の経営安定など、重要な役割を担っていくことができるものと考えております。

〇41番(渡辺幸貫君) 知事に、振興局の再編について伺います。
 地方が、おのおの権限なり、財源なり、人材なり移譲しながら市町村が強化されていくと。それは当然、国もそういうものの考え方ですから、県も同じような考え方で構わないんですが、ただ、それが、果たしてその認識が、本当に末端まで行っているかということに対して私は不安を感じるんですね。
 例えば、地方交付税が、合併しないところは減っていく、そして一方では、例えば、昔であれば、沢内村が乳児死亡率ゼロなんていうことを自分でできた。ところが、今はできない。
 なお、例えば核家族が進めば、地方というか、不便な地域ほど、例えば、うちで福祉のサポートなどをやろうとしても、そういう人が、家族がいないという、苦しさが、かえって不便なところに多いのではないか。逆に言えば、そういうところにこそ行政の手が伸びていかなければならん。
 そう考えたときに、市町村財政が、やっぱりある程度力を持つ、つまり、市町村合併をしながら、地方交付税をしっかりと受け取りながら、今、知事がおっしゃった産業振興などを描いた広域圏という描き方は、次の段階でできるのであって、まず最初の段階のクリアも、なかなか私は、県北・沿岸地域にとっては大変厳しい先行きが待っているような気がしてならないんですね。
 ですから、私は、広域圏をそのまま三つなら三つで待った方がいいのではないかとさっき申し上げましたが、それは、市町村の合併なり何なりを持たせて、早く自覚させて、やはりそういう、住民が、今後危惧される住居環境というんですか、住む、そういう住民の置かれる環境をやっぱりよくするという意味合いから督促をする。それはつまり、県としては、市町村に直接手が下せないんだったら広域圏の考え方にもう県はなっていきますよという、市町村に対してもあせらせるような物の考え方も必要じゃないかと。ただ、人材の配置なり何なりはなかなか来ない部分では、それはそれなりに配置することも必要かもしれませんが、あえてどんどん地域の要望があったから細分化していくということが果たしてその地域の人たちに本当の意味の自立なり政治的な恩恵を受けるなり、そういう道が開けるのかということに疑問を感じるわけでありますが、その点についてのお答えを願います。

〇知事(増田寛也君) 今の話ですが、私も県北や沿岸地域が、市町村、特に町村でありますけれども、町村の持っている力にかなりまだ差がある、それから基盤が脆弱なところがかなり多いというふうに思っておりまして、今後、市町村合併をそうしたところでさらに一段進めていただく必要があるだろうと。それは広域的な観点から幾つかくくりを考えなければいけませんが、そういう市町村合併をさらに一段進めていく必要があるだろうと。それから何としても、その中で強い産業をつくるための手だてをみんなで知恵を寄せ合って、あるいはみずから動いて考えていかなければならない、そういうふうに思っていました。ですから、そこの認識は同じだなということで今聞いておりました。今回、やはり私は、県南地域はかなりそういった基盤ができ上がった地域と本県の中では考えておりますので、特に県北・沿岸地域については少し時間差を設けるような形をしておりますが、まだ県として、そういう市町村を直接サポートしていったり、あるいはさまざまな合併を考えていただくような、そういう条件整備などの時間も必要でしょうから、一律にやるというのではなくて、また、そういった地域でのこれからの基礎自治体の強化のあり方を今の地方振興局の体制の中で考えていければと。その上で、私はやはり何としても、これからの厳しい時代に人口も減るような中で、少しでも地域の産業の素材を生かしていく必要がありますから、将来的には、やはりそこを広域で、類似しているものをくくって、広域でやはり英断を持ってくくりを大きくしていかなければならないと思っていますが、それまでにさまざまな工夫を凝らしたい、こういうふうに考えているところであります。

〇議長(伊藤勢至君) 次に、柳村岩見君。
   〔24番柳村岩見君登壇〕(拍手)


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