平成21年5月臨時会 第11回岩手県議会臨時会 会議録

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〇37番(阿部富雄君) 議案第3号特別職の職員の給与並びに旅費及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例について、議案第4号一般職の職員の給与に関する条例等の一部を改正する条例についてお聞きします。
 これは、県人事委員会が、平成21年6月期の職員の期末手当及び勤勉手当に関する特例措置について議会と知事に勧告したものを受けて勧告の完全実施をするとともに、この措置との均衡上、特別職に係る期末手当の支給の一部凍結を行うための給与関係条例案です。
 県人事委員会は、人事院が特別調査の結果に基づき、本年6月期の特別給の一部0.2月を凍結する措置について勧告し、他の都道府県も、ほとんどの団体が国と同様に6月期の特別級の一部0.2月を凍結する動向にあることからすると、地方公務員法に定める情勢適応の原則に照らして、一般職の職員の給与に関する条例等に定める本年6月期の特別給の支給月数について、国と同様に、その支給月数の一部0.2月を凍結する特例措置を講じることがこの原則に沿うものであるとしています。
 この特例措置は、地方公務員法第14条情勢適応の原則を十分反映しておらず、同法第24条給与の根本基準の適応も明確でなく、人事院が行った夏季一時金に関する特別調査の予測値を根拠とした人事院勧告を踏襲したものと言えます。
 人事委員会委員長にお聞きします。
 地方公務員法第14条では情勢適応の原則が規定されていますし、総務省からの通達でも、平成21年6月分の期末・勤勉手当等については、各地方公共団体において地域の実情を踏まえつつ、国の取り扱いを基本として対応されたいこととされておりますが、勧告を行うに当たり、社会一般の情勢、地域の実情をどのように把握されたのかお聞きします。
 人事院の夏季一時金に関する特別調査では約2、700社を対象に実施し、夏季一時金決定済み企業は340社であり、企業割合で13.5%、決定済み企業に勤務する従業員数では全体の19.7%、全体の約8割の従業員の夏季一時金が未定となっています。
 決定済み企業の夏季一時金の対前年増減率はマイナス14.9%であり、調査対象全企業従業員ベースで算出すると、夏季一時金の対前年増減率はマイナス13.2%としています。調査が中途であり、しかも全体の約8割の従業員の夏季一時金が未定となっていること、一部の決定企業の調査をもとに減少率を算出しておりますが、あくまでも予測値であり、社会一般の情勢に適応しているとは言いがたいものです。
 県人事委員会は、人事院勧告の情勢適応の原則をどう受けとめているのかお聞きします。
 県人事委員会は、人事院が本年6月期の特別給の一部0.2月の凍結措置を勧告し、他の都道府県も、ほとんどの団体が国と同様に6月期の特別給の一部0.2月を凍結する動向にあることからすると、国と同様に特例措置を講ずるよう勧告することが適当と判断したとしていますが、勧告等を行わない人事委員会は11県と少なからずありますが、これらの人事委員会はどのような事情によるものと把握しているのかお聞きします。
 県人事委員会は、この特例措置による凍結分に相当する支給割合の期末手当及び勤勉手当の取り扱いについては、現在、県人事委員会が行っている職種別民間給与実態調査において、例年どおり民間の特別給の支給状況を調査し、その結果を踏まえて、本年秋には必要な措置を議会及び知事に勧告するとしています。これは、民間の夏季一時金が例年より大きく減少することがうかがわれ、12月期の特別給で1年分を清算すると大きな減額となる可能性があることを考えると、本年6月期の特別給の支給月数について何らかの調整的措置を講ずる必要があるためとしています。この対応は、まさに情勢適応の原則ができていないことを示しています。予測値で判断することなく、必要であれば12月期での対応を行うこともやむを得ないことではないでしょうか。こうした対応は法の趣旨から外れるものと思いますが、どう認識するのかお聞きします。
 また、こうした特例措置は、平成16年の改正により、地方公務員法第14条に第2項が追加され、人事委員会が勧告することができることの拡大解釈あるいは濫用に当たるのではないかと思われますが、認識をお聞きします。
 県人事委員会が勧告をするのであれば、情勢適応の原則に基づき、特別調査を行うなど実態を調査した上で行うべきですが、今回、なぜ調査を行わなかったのかお聞きします。
 人事委員会は、給与、勤務時間その他の勤務条件、厚生福利制度その他職員に関する制度について絶えず研究を行い、その成果を地方公共団体の議会もしくは長または任命権者に提出することと、地方公務員法第8条第1項第2号で規定されています。みずからの職務のあり方を含め、お答えください。
 こうした一連の対応について、総務省の通達でも十分な説明責任を果たす必要があると考えられることとありますが、県人事委員会は、勧告を行うとともに委員長談話を発表していますが、これで十分な説明責任を果たしたと認識しているのかお聞きします。
 地方公務員法第24条第3項では、職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定めなければならないと均衡の原則が規定されており、これらを考慮しつつも、人事院は国家公務員法、人事委員会は地方公務員法に基づき独立して設置されている機関ですから、人事院の対応に従順するにとどまらず、主体的な取り組みが求められるところですが、どう運営していくのかお聞きします。
 今回の経緯にかんがみ、調査方法を現状に即応できるよう、迅速、弾力的に行うことも必要ですが、あわせてお聞きします。
 知事にお聞きします。
 県人事委員会の勧告にかんがみ、特例措置を講ずる条例案を提案しましたが、情勢適応の原則をどのように判断したのかお聞きします。
 また、県内の民間の特別給の支給状況の結果を踏まえた勧告に基づき、12月期の特例給で対応することなく、今回の勧告に基づく特例措置を速やかに提案した理由についてお聞きします。
 職員個々や職員団体への対応はどのように行われたのか、理解が得られたのかお聞きします。
 特例措置による特別職の職員の期末手当、一般職の職員及び市町村立学校職員の期末手当及び勤勉手当並びに任期付研究員及び特定任期付職員の期末手当の特例措置を講ずることによる影響額はどうなるのか。 
 また、買うなら岩手のものの取り組みで県内の消費拡大を図ろうとしている中で、少なからずの影響が懸念されるところです。景気の後退で厳しい状況がある県内経済に対する影響はどう見込まれるのかお聞きします。
〇知事(達増拓也君) 阿部富雄議員の質問にお答え申し上げます。
 まず、条例案の提出に当たっての情勢適応の判断についてでありますが、今般の人事委員会の勧告は、人事院が行った特別調査を踏まえ、本年6月期に支給する特別給の一部0.2月を凍結する措置について勧告した経緯に加え、他の都道府県の大半が国と同様の措置を講ずる動向にあることから、地方公務員法に定める情勢適応の原則を踏まえ、国と同様にその支給月数の一部0.2月を凍結する特例措置を講ずる必要があるという趣旨のものと承知しております。
 県といたしましては、第三者機関である人事委員会からの勧告を重く受けとめ、適切に対応することが情勢適応の原則にかなうものと判断したところであります。
 次に、今回の勧告に基づく特例措置を提案した理由についてでありますが、職員の給与改定に当たりましては、県としては、これまで、人事委員会勧告を最大限尊重するという基本姿勢に立ちながら対応してきたところであります。今般の人事委員会の勧告は、諸般の情勢を踏まえ、6月に支給する期末手当及び勤勉手当において必要な措置を講ずるよう速やかな対応を求めたものであり、これを受けた県としては、従来からの基本姿勢にのっとり、人事委員会勧告どおり実施することが必要と判断したことから、臨時会による御審議をお願いしたものであります。
 次に、職員個々や職員団体への対応についてでありますが、県としては、今般の人事委員会勧告の実施に当たって、職員の理解を得るため、人事委員会勧告を受けて以来、職員団体─地方公務員共闘会議と数次にわたり精力的に協議を進めてきたところであります。この結果、職員団体側からは、県内経済への影響を回避するための適切な対策や職員の士気向上に向けた勤務条件の改善等について指摘がありましたものの、現在の厳しい社会情勢下における特例措置であることは受けとめる旨の考え方が示され、今般の措置の趣旨については一定程度の理解を得ているものでございます。
 次に、特別職及び一般職の職員の期末手当及び勤勉手当の特例措置による影響額についてでありますが、今般の措置は暫定的な特例措置であり、今年度の額は確定しておりませんが、仮の財政所要額としては、普通会計ベースで約16億5、000万円程度のマイナスと試算しているところであります。
 次に、県内経済に対する影響についてでありますが、期末・勤勉手当の支給の一部凍結による凍結額16億5、000万円をベースとして産業連関表を用いて試算をすると、およそ25億円程度と見込まれますが、県内経済の活性化は県政の最重要課題であり、地域経済の減速や雇用危機への迅速、的確な対応を図るため、いわて希望創造プランに基づく各般の産業振興施策を強力に推進し、県民所得の向上や雇用環境の改善に重点的に取り組んでいく所存でございます。
〇人事委員会委員長(及川卓美君) お答えいたします。
 勧告を行うに当たって、社会一般の情勢、地域の実情をどのように把握しているかということについてでありますが、まず、人事院が実施した特別調査の結果によると、民間企業における本年の夏季一時金は、昨年の夏季一時金に比べて大きく減少することがうかがわれる状況にあることが明らかになったところであります。
 なお、本県の経済状況については、各種統計調査の結果から急速に悪化している状況がうかがえるところであり、県内民間企業における雇用、賃金に非常に大きな影響を与えているものと判断したところであります。
 次に、人事院勧告を本委員会がどのように受けとめているかということについてでありますが、人事院は、特別調査の結果、民間企業における本年夏季一時金は、決定済み企業で昨年の夏季一時金に比べて大きく減少することがうかがわれることから、民間の夏季一時金と公務における特別給に大きな乖離があることは適当でなく、可能な限り民間の状況を公務に反映することが望ましいとの考えから、今回の勧告を行ったものと受けとめます。
 次に、勧告を行わなかった人事委員会の事情についてでありますが、総務省から提供のあった全国状況の資料によると、既に独自の給与減額措置を行っているあるいは独自調査を行った団体では、夏季一時金決定済みの民間事業所が少ないといった事情によるものとされております。
 今回の対応が法の趣旨から外れるのではないか、地方公務員法第14条2項の濫用に当たるのではないかとの御指摘についてでありますが、本委員会が勧告した特例措置は、地方公務員法に定める情勢適応の原則の観点から、職種別民間給与実態調査結果に基づく精確な比較による措置を講ずるまでの間、国及び他の都道府県との均衡を図るため、暫定的に支給月数の一部を凍結するものであります。
 地方公務員法に定める情勢適応の原則は、随時、適当な措置を講じなければならないとされているところであり、地方公務員法第14条第2項に規定する人事委員会の勧告についても、随時、議会及び長に勧告することができることとされており、緊急性等を勘案して随時に勧告した今回の措置は、情勢適応の原則の趣旨に沿ったものと認識しております。
 特別調査を行わなかった理由とみずからの職務のあり方についてでありますが、人事委員会といたしましては、毎年実施している職種別民間給与実態調査により、県内民間事業所の給与等の状況を精確に把握した上で職員と比較を行い、生計費、国及び他の都道府県の状況についてもあわせて調査研究し、その成果を議会もしくは長または任命権者に提出するとともに、必要な勧告を行うことが重要な職務と認識しており、今後もその職務を適切に果たしていく所存であります。
 今回、特別調査を行わなかった理由についてでありますが、本県の民間事業所では、夏季賞与の支給水準が4月時点で決定している事業所が少ないと考えられることから、調査を実施したとしても得られるサンプル数は限定されると判断し、調査を見送ったところであります。
 本委員会が十分な説明責任を果たしているかとのことでありますが、本委員会が勧告を行うこととした考え方については報告の中で述べているほか、私の談話でも説明しているところであり、その表現内容についてもわかりやすい内容となっているよう意を用いたところであります。
 なお、本委員会のホームページにおいて、勧告書本体、勧告要約版、談話を掲載しているほか、行政情報センターにも勧告書等を配布しており、県民の皆様が勧告の内容及び本委員会の考え方を把握できるように配慮しているところであります。
 なお、勧告を行った5月13日には、職員団体と各任命権者等を対象とした説明会を開催しており、県民、職員双方に説明責任を果たすよう努めているところであります。
 最後に、今後の運営等についてでありますが、人事院とは職種別民間給与実態調査を共同実施するなどしているところでありますが、指揮命令を受ける立場にはないものであります。本委員会は、地方公務員法に定める人事行政の専門機関として各任命権者から独立した第三者機関であり、今後とも、独自の検討、判断により、適切にその役割を果たしてまいりたいと考えております。
 なお、本委員会といたしましては、基本的に職種別民間給与実態調査において県内民間事業所の支給実績を精確に把握した上で、職員の給与と比較し、その結果を踏まえた上で勧告を行うことが適当と考えておりますが、民間の状況を把握するために必要な情報収集に努め、本委員会の運営に適切に生かしてまいりたいと考えております。
〇37番(阿部富雄君) 人事委員会委員長にお伺いいたしますけれども、今、答弁をいただきましたが、答弁の中で、この勧告の意図する数的なものは全然出てこなくて、例えば大幅に減少するだろうとか、岩手県内のボーナスについては4月時点で決まっているところが少ないから調査をしないのだとかという、極めて他人的な話で人事委員会は対応してきたのではないかなというふうに私には見えるわけです。少なくとも、岩手県内の職員の関係については、あなた方が全責任を負うわけでありますから、きちっと調査をするという姿勢がないと私はだめだというふうに思うんですよ。従前の方法で対応できなかったのが今回の特別措置でしょう、国でやっているのも。ですから、当然、従前で対応できなかったことを今回やるわけでありますから、それにふさわしいようなやり方を私はきちっとやるべきだと思いますけれども、今後、進め方として、人事委員会はきちっと調査をして勧告を出すという考えに立つのか、お尋ねして終わります。
〇人事委員会委員長(及川卓美君) 調査を行わなかった理由についてですけれども、岩手県の場合は、夏季賞与の支給水準を4月時点で決定している事業所が少ないと考えられたこと、これは過去の民間給与実態調査データの結果に基づいて行っております。
 参考までに、平成20年の民間給与実態調査における夏季賞与の水準の見込みについて─5月から6月での調査ですけれども、103事業所中の42事業所で課長級で40.8%、それから係長級で41.5%、それから本県調査事業所では44.9%、これが課長級、それから係員級で46.8%というふうになっておりますけれども、これは5月、6月時点での話でありまして、4月時点ではここまでいっておりません。ほとんどサンプルが得られないという状況で、過去の調査では明らかでした。そのために、ことしの4月ではこれは調査してもサンプル数がほとんど出てこないだろうと、こういう状況では調査しても意味がないということで、今回は調査をしませんでした。事情が変われば、人事委員会としては調査することはやぶさかでないと考えております。
〇議長(渡辺幸貫君) 次に、斉藤信君。

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