平成21年2月定例会 第10回岩手県議会定例会 会議録

前へ 次へ

〇42番(伊藤勢至君) 民主・県民会議の伊藤勢至です。
 議案第77号並びに78号について、委員長報告について反対の立場、すなわち原案を可決すべきとの立場から討論をいたします。
 この議案第77号と78号は、地域診療センターの無床化の実施に伴い、地域診療センターと基幹病院等とを結ぶ交通アクセスの確保などを柱として、必要な措置を講じるために提案された補正予算案であります。
 御承知のとおり、地域診療センターの無床化については、県民各界各層でさまざまな議論が行われてきましたが、先月、県がこの4月からの実施を決定したほか、県議会でも新年度の県立病院等事業会計予算と一般会計予算が先刻の予算特別委員会で圧倒的多数の賛成により可決され、無床化実施が現実のものとなりました。この賛否をめぐっては、さまざまな立場を超えて議論を尽くしてきたところでありますが、最終的には岩手でも医療崩壊が進んでいる実態を踏まえ、これ以上の崩壊を食いとめないと県民に責任ある医療の提供体制をとることができなくなるとして、大局的見地からの苦渋、苦悩の決断として議会の意見を予算特別委員会の場で示したものであります。
 しかし、その一方で、我が県議会がつけた附帯意見では、早急に地域住民の不安を解消し、市町村等との相互協力体制を構築し、地域医療確保に万全を期すことを県に求めました。この補正予算に盛り込まれている移送バスの購入は、無床化をめぐる地域説明会で、住民から、入院先が遠くなる、家族も毎日病院に行きたいとの交通アクセスに関する意見があったことを踏まえ、最終的に県民と県が約束をした地域診療センターと基幹病院等との間を無料で送迎するための交通手段を確保することを実現させるためのものであります。いわば住民の不安を解消するための一つの策であります。
 この交通アクセスの確保は、まさに住民と向き合った地域説明会の場で出された県民の声であり、無床化に当たって取り組むべき8項目の2番目に位置づけられるものであり、県議会は、こうした住民の要望によって具現化された政策予算を否決するべきではないと考えます。
 もう一つの視点は、極めて厳しい財政状況に置かれた県財政と県立病院会計の現実を踏まえ、どう交通手段を確保するかという点であります。
 県立病院会計は、今年度末で単年度29億円の赤字、累積欠損金が165億円に達します。毎年の一般会計の繰り出しは100億円をはるかに超え、これまでの繰り出し総額も3、600億円に達しております。
 確かに公的医療は赤字も辞さずして行わなければならない側面も持っているとは思います。しかし、現状は、専ら県が担うべき公的医療を維持するためにも経営改善は急務であり、財政健全化を図らなければ公的医療の維持もできないのが実態であります。だからこそ附帯意見では、医療局の組織や県立病院等の経営形態のあり方の検討についても求めているものであり、財政出動しても県が埋めるべき赤字と、自助努力で解消すべき赤字の区別をつける必要があると考えます。
 こうした点から考えると、今回の輸送バスの購入に当たっては、10分の10の国庫補助事業を導入するもので、県負担は大幅に軽減されます。仮にこの予算が否決されて見送られることになれば、ジャンボタクシーの運行による交通アクセスの確保を図らざるを得ませんが、試算によれば、輸送バスに比べて委託運行経費は年間1億円以上も出費がかさむことになりかねません。また、地元の路線バスを見てみると、地域によっては、地域診療センターと基幹病院や地域病院などを結ぶ直通バスが運行されていないところもあります。例えば、紫波地域診療センターから基幹病院の中央病院までは盛岡バスセンターで、花泉地域診療センターの場合は一関駅前でそれぞれ乗りかえが必要だったり、大迫地域診療センターの場合は、地域診療センターからバス停、バス停から基幹病院へと徒歩での移動が長距離になり、入院した家族の世話をする人の負担はそれこそ増すのではないでしょうか。これがお年寄りだった場合はなおさらのことであります。さらに、大迫の場合、入院患者の受け入れ先を遠野病院とした場合には、直通の路線バスがありません。
 これだけを見ても、路線バスの利用だけでは利便性が図られないことが容易に想定できるのではないでしょうか。もちろん、新たに購入する輸送バスの具体的な運行方法については異論の余地はあると思います。地元市町村との十分な協議が必要であることは言うまでもありませんが、この予算が繰越明許費であり、執行までに時間があることを考えれば、十分な議論を経た有効で合理的な運行の仕組みについての方法をとり得るものであり、輸送バスの活用は、財政負担の軽減と住民の足の確保を図る上で次善の策であります。
 異論の中では、既存の路線バスなどへの影響を危惧する声もあったと聞き及びますが、もともとこの輸送バスは、診療センターで診察を受け、県立病院に入院が必要と診断された患者とその家族が対象であるなど利用者が限定されることから、バス会社等への影響は少ないものと考えます。
 いずれにせよ、このバス購入を柱とする補正予算案の原案どおりの可決と速やかな執行は、これ以上、地域住民の不便や不安を増大させないためのものであり、かつ経費の削減による財政負担の軽減が見込まれるものであります。苦渋、苦悩の決断の上、無床化の裏づけとなる予算を委員会で可決した県議会は、その責任を逃れるべきものではなく、現実的対応として、無床化による影響を最小限にとどめる道を探るべきと考えます。
 以上の理由から、議案第77号と議案第78号を否決とした委員長報告に反対をするものであります。議員諸氏の懸命なる御判断を切にお願いし、討論を終わります。(拍手)
〇議長(渡辺幸貫君) 次に、柳村岩見君。
   〔36番柳村岩見君登壇〕

前へ 次へ