平成21年2月定例会 第10回岩手県議会定例会 会議録

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〇38番(斉藤信君) 議案第46号、第58号の修正案が議決されましたが、達増知事から県議会史上初めて拒否権が発動されて再議が提案をされました。
 まず最初に、再議の提案に当たって、知事は4度にわたってこの議場で土下座をいたしました。私、これは極めて異常な行動だと思っています。この県議会の議場というのは言論の府であります。言論を通じて物事を解決していく。そのときに、全くそれとは無縁の土下座の行動を議長の許可もなく知事がこの議場の中で振る舞うなどということは、まさに県議会の議場を冒とくする行為ではなかったのか。言論で問題解決することができない政治的敗北ではないですか。第1にこのことをお聞きいたします。
 第2に、新しい経営計画の実施について、4月実施が不可欠だと述べました。しかし、この問題については、来週から開かれる予算特別委員会で審議すべき課題であります。ところが知事は、補正予算の中に4月実施を前提にしたマイクロバスの購入予算2、300万円を盛り込ませました。当初予算審議で審議して解決する、議決する、その前にこそっと2、300万円、わずかな予算のマイクロバス購入費を盛り込ませたというのは、私は進め方としてやっぱり不正確な進め方だったのではないかというふうに思います。
 三つ目の問題。知事は、地域の皆様の意見を踏まえて、交通確保のためにマイクロバスの整備は不可欠だと。しかし、4、591件に及ぶパブリックコメント、2回にわたる住民説明会・懇談会、県議会の12月定例会での論戦、地域住民のたくさんの声をあなたはどう受けとめたんですか。ことごとく無視してきたんじゃないですか。そして、8項目というのは、無床化を強行するためのあなた方の口実の中身でしかないじゃないですか。地域住民の意見を踏まえてやったというのは、私は、事実にも反する、実態にも反する、無床化のための口実でしかないんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
 そもそも8項目の中身というのは極めてあいまいなものであります。例えば、入院が必要な患者の受け入れ先の確保、基幹病院を中心に受け入れると言っていますが、急性期中心の病院で、慢性期の高齢患者をどうやって受け入れるんでしょうか。いつまで入院させられるんでしょうか。
 さらにこう書いています。二次保健医療圏の基幹病院を中心に、他の病院とも連携しながら受け入れ先を確保する。退院後も他の県立病院、連携している民間病院、介護施設等との連携を図り、在宅に戻るまでフォローします。どういう体制でフォローするんですか。
 無床診療所化で、当分の間看護師の当直を配置します。こんな要望は出ていないんですよ。当直で看護師さんが配置されても何の対応もできませんよ。責任もありませんよ。こんな無責任な配置はないというのが医療現場の声です。医療相談されたら、基幹病院に行ってくださいと言うしかないですよ。当分の間というのはいつまでですか。看護師さんの役割というのはどういうものですか。
 次に、マイクロバスがなければ交通手段の確保ができないと先ほどの再議書で知事は述べています。しかし、マイクロバスがなくたって交通手段は確保できるじゃないですか。私は、ほかの代替手段だって考えられるし、2、300万円の予算案のために拒否権を発動して再議を求めるというのは極めて異常な手段だと思います。
 そもそもこの予算原案は、88億円の雇用対策、そして93億円の地域活性化対策、18億円の障害者自立支援対策、7億4、000万円に及ぶ妊婦健診事業、切実な県民の課題がかかっているんですよ。代替手段もその後の対策も可能なわずか2、300万円のこの対策で、拒否権を発動して再議にかけるということに私は全く根拠がないんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、私は、切り捨てられる地域医療、保健・医療・介護の連携、このことについて、8項目ではこうなっています。
 地域との協議の場というので、地域の個別課題への対応、無床化をしてから話し合う。それでは遅いでしょう、無床化をしたら、この連携は壊されるのですよ。
 私は、そういう点でも、介護施設の高齢者の入所者が、例えば紫波だって3人から5人、常時入院しているんですよ。外来に通っているんですよ。紫波に入院できなかったら行き先がないのですよ。老人病院はどこも満床なんですよ。遠くの病院に運ぼうと思ったら、介護士か看護師さんをつけなくちゃならない。人員増も必要だ。4月に無床化を実施したら、あと20日後にはそういう対応をとらなくちゃだめなんですよ、介護施設は。
 私は、こういう切実な課題について、事前に解決をしてこそ、やっぱり無床化を進めるにしてもその条件が生まれると思うんです。無床化を強行して、保健・医療・介護・福祉の連携を壊してから地域と協議しましょうなどというのは、本当に相手を殴ってから握手しましょうというようなやり方ではないのか。全く道理のないやり方だと思います。
 知事は、本会議の答弁でおわびの言葉を述べました。地域住民の皆さんに不安と心配をおかけした、おわびしますと。これが言葉だけだったら何も意味はないんです。地域住民は何に不安を感じ、何を心配しているのか、それについて知事は解決策を示す必要があるんじゃないでしょうか。言葉ではなく、具体的な住民の心配と不安にこたえてこそ私はあなた方の計画というのを実施できる条件が出てくると思いますが、いかがでしょうか。
 医師不足を最大の口実にしています。私も医師不足の深刻な実態を理解するものであります。しかし、医師不足をあおるだけでは解決にならない。医師が足りない中で、どういう医師を支える体制をつくれるのか、地元の開業医や医師会の協力がとれるのか、臨床検査技師や認定看護師や薬剤師や、医師を支えるそういう専門職員の配置をどうできるのか。そして、さらには地域住民の協力です。医師不足だからこそ、こういう医療関係者、地域住民それぞれの協力関係を構築するというのが本当の解決策ではないのか。もし知事がこれをこのまま強行したら、協力・協働の関係を築くどころかそれを破壊してしまう。私は、こういうやり方はいま一度立ちどまってやるべきだと思います。
 最後ですけれども、実は去年4月に住田が診療所化されました。そのときには、常勤3人の医師体制、19床を守ってほしい、わかりました、こうやってスタートしたんですよ。大迫の診療所のときもそうです。今までの医療を守ります、心配ありません。それがたった2年たったら無床化だ。これは地域住民に対する公約違反で、裏切りなんですよ。そういうことを進めるんだったら、地域住民に対する丁寧な説明と協議が当然必要なんじゃないでしょうか。
 私たちが求めているのは、そういう点で、いま一度立ちどまって地域住民と協議をし、必要なら経過を見直すと、ぎりぎりの提案を県議会はしているのです。その点について知事の明確な答弁を求めます。
〇知事(達増拓也君) 今回の再議の付議につきましては、議会が一度議決したことをもう一度議決をお願いすることでありまして、これは異例中の異例のことでありますから、特に礼を尽くしてお願いを申し上げなければならないということであのように頭を下げさせていただきました。
 そして、再議の理由でありますけれども、これは再議書の理由に述べられたとおりでありまして、地元の住民の皆様との話し合いの中でもやはりマイクロバスの整備が不可欠であるということで、この2月補正として措置させていただきたいということでこの再議をお願いするものであります。
 地域の住民の皆さんとの協議、話し合いについては、一つは不安、御心配を一つ一つ具体的になくしていくための、これは今までもそういう話し合いを持たせてきていただいているわけでありますけれども、それは今後も、4月1日以降も続けさせていただいて、そして同時に知事としてお願いをしていかなければならないのは、岩手県民として、岩手のこの直面する危機的な地域医療の状況を御理解いただいて、これは診療所の地域の皆様にお願いするだけではなく、すべての岩手県民に対して少しずつ不便、不自由あるいは我慢をしていただいて、その中で勤務医を守り、そして勤務医を守ることが患者を守ることにつながります。
 いざというとき、命や健康、すべての県民の命や健康を守るために、まずは勤務医の皆さんにより余裕を持って患者さんに接することができる新しい体制を4月1日から始めさせていただく。その体制の中のさまざまな不安、御心配については、これはもう誠意を尽くして取り組ませていただきたいということでございます。
〇総務部長(川窪俊広君) 御質問のうち、議案の提出の仕方関係の部分につきまして、私のほうから御答弁申し上げたいと存じます。
 当初予算の審議の前の2月補正への計上という部分についてでございますけれども、今回に限らず、当初予算と2月補正につきましては一体的な形で予算をそれぞれのほうに相互に関連する予算というような形で計上させていただくことが非常に多くございまして、これは、今回の当初予算の中にも2月補正を前提とした予算というものもございます。それが当初予算のほうが先に提案させていただいているということがある一方で、逆に2月補正予算のほうを、当初予算と実際には一体的に執行するのでございますが、財源の都合等によりまして2月補正予算に計上させていただいているものもございます。
 今回の件につきましては、財源の有効活用の観点も含めまして2月補正に計上させていただくということで、同じ2月定例会に一体的に提案させていただいているというものでございます。
 次に、ちょっと飛びまして、2、300万円のための再議という部分でございますけれども、一度議会で確定した議決として決定されたことというのは非常に重いものでございまして、予算の場合で申し上げますと、議会で削除し、この事業は不可といいますか、この事業の予算は削るということになったものにつきましては、執行部としてはそれを実施することはできず、ほかの一般的な枠的な予算でやっていいというものにはならないというふうに考えております。そういたしませんと、議会で修正等が行われても、いわばそれをそのままにして同じことをほかの予算でやってしまうというわけにはまいらないというものだと考えております。
 こういったことから、足の確保という約束を実施するための予算、これを実現していく、少なくとも提案をさせていただいていくということのためには、バスの購入という事業費は不可であるという議決が確定するということにつきまして、これを何とか回避させていただかなければならないという事情がございましてやむなく再議をお願いさせていただいているというものでございまして、よろしく御理解をお願いできればと思っているところでございます。
〇医療局長(田村均次君) 看護師の当直の関係でございますけれども、夜間、診療所が無人になるといいますか、そういった不安の声が非常にあったということがございまして、ドクターの当直というのが非常に厳しい状況の中で、何とか電話等の相談に応ずるということで、看護師が何をするということではなくて、要は看護師さんには医療知識があるわけですから、それを一定の相談をしたり、病院に行くような、要するに相談業務をするということを当分の間続けたいということで考えているものでございます。
 それから、検診等の業務については、これは議会でも再三御質問がございましたけれども、特に岩手町の検診の体制については、私も直接岩手町に行きまして、この問題については、無床化したからやめるなどということはしませんと。この部分は、今までの岩手町でやってきた流れをきちっと無床化後もやりますと私もきちっと約束しておりますので、そういうことについては、無床化したからやらないとかできないとかというふうには考えておりません。
 それから、専門職員の配置、それから医師会あるいはクラークの配置というような医師不足に伴ってやるべきこと、これも当然やらなければならないと思っておりますけれども、これはこれですべて今の医師不足の状況を解消できるわけではないんだということで、これもやりつつも、診療の体制の見直しもあわせてやらないと厳しい状況だということでございます。
 それから、5年前のときの3人体制のお話ですけれども、今、5カ所のうち、実際に3人いるところは1カ所だけでございます。そういった意味で、診療所の診療体制を維持していくこと自体も非常に残念ながら厳しい状況にあるということで御理解をいただきたいと思います。
〇38番(斉藤信君) 私は、地域に犠牲を強いる、医療・介護連携の問題についても検診体制の問題についても介護施設の入所者の問題についても、それを4月にもう無床化して、後から相談しましょうというのは話が別じゃないか。
 住田診療センターの話、これは去年4月の話なんですよ。まさに約束違反。だったら丁寧に話をすべきじゃないか、私はこのことを言っているんですよ。大体もう切り捨ててから、後から相談します。例えば岩手町だって、いいですか、がん検診のために医者2名、検査2名かかっているんですよ。病院体制があるからやれるんですよ。それを診療所になってもやれるようなあいまいな話をするからだれも信じないのですよ。そういう見通しを示してこれはやるべきなんだと。
 医師不足の問題だって、みんなが実態を理解すれば協力するのです。ところが、今はそうじゃないんですよ。先に無床化ありきなんです。私は、その進め方は極めてやっぱり稚拙で拙速で無謀だと。改めて知事に、こういうやり方をしたら理解を得られませんよ、いかがですか。
〇知事(達増拓也君) 施設・設備などをふやしていく、増強していくようなことに関しては、これはまだそのことが正式に決まる大分前から、まだアイデアの段階から内々に、これは正式決定ではなくまだたたき台の段階なんだが、県としてこうすれば市町村のほうではどう対応してくれるかといったような相談がしやすいんだと思いますけれども、体制を縮小していくというような話については、まずそもそも原案をつくる段階から、やはり安易な提案はできませんので、かなり締め切りぎりぎりまでかかって、ほかに何とか代替措置はないのか、少しでも減らさずに済む方法はないのかということを衆知を集めて検討し、それでもだめな、ぎりぎりのもうこれでいくしかないというのが決まってようやく関係者に御相談をすることができる、そういう経緯だったと思っております。
 その結果、地域の皆さんに唐突感を与え、不安や心配を抱かせたことについては本当に申しわけなく思っておりますけれども、また、その背景として、191人の医師が今、実際足りない状態にある。その結果、この4月1日から花巻・北上の新しい中部病院ですら産婦人科については規定の人数より足りない状態でスタートを、そういう不備な状態でスタートさせなければならない。
 今回の新しい計画案には、診療所の無床化のほかにも、あらゆるところで地域の皆さんに御不便、御不自由をかけ、我慢をお願いしなければならない内容がたくさん入っております。そうしたことについて、より早い段階から岩手県民の皆さんに明らかにして、そして県民的な議論、オール岩手の観点から、この少ない医療資源を岩手の中にどう配剤していけばいいのかということについて、すべての県民の皆さんに納得いただけるような形で事を進められなかったことについては、これは本当に重ねて申しわけないと思っております。
 そういう中で、この岩手全体としてはこれでいかせていただきたいという案をお示ししながら、それで個別具体的に生じる不安、心配については具体的な協議の中で一つ一つ解決をさせていただきたい、そういう思いでおります。
〇議長(渡辺幸貫君) 次に、飯澤匡君。

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