平成21年2月定例会 第10回岩手県議会定例会 会議録

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〇11番(小野寺有一君) 自由民主クラブの小野寺有一であります。
 3度目の一般質問の機会を与えていただきました先輩、同僚議員の皆様方に、心からの感謝を申し上げます。
 質問の中に、さきの質問者の方々と一部重複する箇所がありますことをあらかじめ御了承くださいますよう、お願いいたします。
 それでは、通告に従いまして順次質問させていただきます。
 まず、二元代表制に対する知事の認識について伺います。
 知事は、昨年12月議会の高橋雪文議員の一般質問に対して、県民は私を知事に選ぶことによって、危機を希望に変えていく主体たらんという選択をした。また、同議員に対し、知事のリーダーシップが見えないのは選挙の結果に背を向けているからで、民意に背を向けないで、選挙の結果にも背を向けないでやってほしいと述べ、それに先立ち、将来ある若い政治家である議員であるからこそ、申し上げると、議員に対するお説教ともとれる答弁を行いました。しかしながら、高橋雪文議員や私たち県議会議員も、紛れもなく、知事選と同日に執行された選挙で選出されているのであって、高橋雪文県議の質問に対する知事の答弁は、知事選で示された民意が、県議選で示された民意に優越しているという認識から生じていると思わざるを得ないのであります。
 知事は、慶應義塾大学教授の片山善博前鳥取県知事が言うところの、自治体は、住民とその代表である議会によって支えられコントロールされるという、二元代表制の意義についてどのような認識をお持ちになっているのか、お示し願います。
 次に、県立病院等無床化問題への知事の対応について伺います。
 県立病院の新しい経営計画では、パブリックコメント等によって寄せられた意見のうち、実に8割以上の意見が無床化反対であったにもかかわらず、来月から診療センターの無床化を実施する旨の計画が決定されました。同計画が決定されるまでの過程においては、知事とその政治的立場を異にする議員のみならず、民主・県民会議の議員からも、知事と地域との直接対話を求める意見が提起されておりました。
 知事は、前述の高橋雪文議員に対する答弁の中で、知事選挙において、私は、県が市町村と協力、連携しながら、草の根の県民の暮らしの現場に、より直接入っていって、県民の草の根の知恵と力を総結集しながら、県民とともに危機を希望に変えるという考え方を示し、多くの支持をいただいて、県民の負託を得た。また、県民の危機意識、その叫びやうめきが議員には聞こえないのでしょうか。議員には、草の根の中に積極的に入っていって県民の声に耳を傾けていただきたいと述べていらっしゃいます。
 そこで伺いますが、まず第1に、知事は、このたびの県立医療機関の無床化及び病床削減計画の策定において、どのように市町村と協力、連携をしたのでしょうか。
 第2に、県民の草の根の知恵と力をどのように総結集したのでしょうか。
 第3に、知事には、対象となる地域の住民の危機意識、その叫びやうめきがどのように聞こえたのでありましょうか。
 第4に、この無床化及び病床削減計画によって、地域住民の医療に対する危機感が本当に希望に変わったと思われるのでしょうか、お答え願います。
 加えて、無床化及び病床削減案を策定する前に、知事は、医療現場から離脱する可能性が高いと思われる医師に対し、地域住民の納得が得られるまでの間、あるいは、病院を地域全体で支える体制の構築まで、今しばらくの時間を与えてくれるよう、直接働きかけを行ったのでしょうか。また、民間の医療機関に比べて割高な医療局の人件費削減の努力を行ったのでしょうか、お答え願います。
 次に、不正経理による国庫補助金の返還問題について伺います。
 会計検査院の指摘に端を発した不正経理問題について、県当局は、一貫して不適切な事務処理という呼称を用いています。本件の問題は、職員の私的流用や不正の意思の有無だけではなく、公文書や補助金の執行が関係法令に照らし不正に行われたことにより、何の落ち度もない県民に、新たな負担が生じることになるということであります。当局はなぜ、不適切な事務処理という呼称を使用し続けるのでしょうか、明確な理由をお示しください。
 このたびの不正経理により、補助金返還、加算金、備品・消耗品の割高購入などで約2億3、000万円の損害が発生し、うち、約5、000万円を現役、OB職員で負担するとの説明がなされました。補助金は私的に流用されておらず、県民のために使われたものであるから、その返還金を一般会計から支出するとのことでありますが、補助金の流用は明確な違法行為であり、れっきとした不正であります。宮古市では、同様の補助金返還をすべて職員の負担としていることからも、県民に負担を求めることは許されません。
 職員の負担について、補助金返還がおくれれば加算金がかさむことから、一時、一般会計から立てかえ払いすることはやむを得ないとしても、全額、現職、OB職員で負担すべきものと考えますが、明確な見解をお示しください。
 次に、県財政における退職手当債について伺います。
 団塊の世代が定年退職を迎え、県は平成18年度より退職手当債を発行しており、21年度一般会計予算案においても、43億円の退職手当債を発行するとしています。退職手当債は、現在の職員の退職金を、未来の県民から前借りして支払う問題の多い借金であります。将来の世代は、退職した公務員からは何の恩恵も受けないのに、税負担を強いられます。将来の税負担が公共投資に充てられるのなら未来の県民も受益できますが、退職手当債の発行は負担だけが残ることになります。退職手当債は、民間では通らない根拠のない借金であります。退職手当債の発行総額と返済総額をお示しいただくとともに、将来負担となる退職手当債発行は可能な限り抑制し、償還の期間をできるだけ短くしていくべきと考えますが、当局の見解を伺います。
 次に、世界遺産登録を目指す取り組みへの支援について伺います。
 現在、本県では、浄土思想を基調とする文化的景観としての平泉と北海道・北東北の縄文遺跡群としての一戸町御所野遺跡の世界遺産登録を目指す取り組みを進めていますが、釜石市においては、昨年、前述の縄文遺跡群とともに、世界遺産暫定リストに入った九州・山口の近代化産業遺産群の構成資産に、日本近代製鉄発祥の地である橋野高炉跡を加えようとする動きが出ています。県として、平泉、御所野遺跡に、第3の世界遺産候補地として橋野高炉跡を加え、並行して世界遺産登録を目指す取り組みを支援していくべきと考えますが、御所見を伺います。
 次に、県立病院経営の優先順位について伺います。
 医療局は、今年度、21億円余の職員の退職金の支払いのため、退職金支払い総額とほぼ同額の21億円の退職手当債を発行するとしています。
 一方、県内九つの二次医療圏のうち釜石医療圏は、唯一、がんの放射線治療設備が設置されておりません。国は、二次医療圏内に最低1カ所のがん拠点病院を設置することを定めており、県立釜石病院に同設備を設置するには、約10億円の建設改良費を要すると言われております。
 前述したように、退職手当債は、現在の職員の退職金を将来にツケ回しする根拠のない借金であります。職員の退職金の支出は借金してでも認められるが、その半額程度で、しかも単年度で済むはずの地域住民の健康に直接影響する建設改良費の支出は認められないという、公営企業たる医療局の経営判断は、県内にあまねく医療の均てんをという崇高な理念のどこから導き出されてくるのでしょうか、明確な説明をお願いいたします。
 次に、県立病院に勤務する医師の最近の退職動向について伺います。
 知事、医療局は、県立病院等の新しい経営計画の決定、4月実施の大きな理由の一つに、過酷な勤務による医師の退職の増加を挙げています。もし、それが事実だとすれば、同計画案の素案が示された昨年11月以降、医師の負担軽減が期待され退職者が減少しているはずでありますが、退職者の最新の動向をお示しください。
 次に、同経営計画における無床化、病床削減に該当しない医療機関の実態について伺います。
 このたびの新しい経営計画で、無床化、病床削減の対象となっていない病院等でも、開業などによる医師の退職が予想されていると聞いております。無床化、病床削減に該当しない医療機関における医師の確保、慰留は着実になされているのか、実情を御説明願います。
 次に、県立病院への地域による支援について伺います。
 市町村や医師会など独自の人的ネットワークによって、招聘の見込みが立った医師を関係機関に所属させ、その人件費の一部を市町村、一部事務組合等が負担し県立病院等に派遣する、いわば地方公共団体による県立病院サポーター的な仕組みを導入することはできないでしょうか。これによって、医療を県任せにせず、地域も応分の負担を負い、県立病院等における医師の処遇の硬直性などを補うことが可能になると考えられます。こうした地域からのさまざまな支援の提言があった場合、県立病院として、どう対応していかれるのか伺います。
 次に、海洋資源を生かした産業振興について伺います。
 県においては、平成18年度に策定した県北・沿岸地域の産業振興の基本方向、さらには、いわて希望創造プランに基づき、これまで、県北・沿岸振興に取り組んでいただいていることに改めて敬意を表するものであります。
 昨年5月、知事は、今後の地域振興の方向性などについて、地域の方々との意見交換を集中的に行った県北・沿岸移動県庁の一環として行われた海洋研究機関との懇談の中で、海洋科学を中心とした産業集積基盤が三陸にあり、市町村と一緒に環境づくりに取り組むと述べられました。今後の沿岸圏域の振興のためには、三陸沿岸に立地している海洋研究機関の総力を結集しながら、豊かな海が育てる水産資源の高付加価値化や多様な海洋資源を生かした食産業の振興など、三陸沿岸の持っている海の資源を生かした産業振興を図っていくことが重要であります。県北・沿岸圏域の振興のため、三陸沿岸の海洋資源を生かした産業振興をどのように図っていこうとしているのか、お示しください。
 次に、サケ漁の課題と今後の取り組みについて伺います。
 平成18年度の農林水産統計による本県沿岸漁業生産額は320億円となっており、このうち、サケは全体生産額の3割を占める重要な魚種であり、本県漁業を支える大きな柱であります。平成20年度のサケ漁はおおむね終了し、1月末現在の漁獲金額は101億円となり、平成12年度以来、8年ぶりに100億円を超えたとのことで、漁業者等も一息ついたところであります。しかしながら、今年度の漁獲金額は、大産地の北海道が前年に比べ約25%の減産となったことから、品薄感で単価が高目に推移したことが幸いしたもので、肝心の漁獲量は約2万4、000トンにとどまり、平成11年以降、3万トンを下回るレベルで推移している状況を脱したものではありません。
 本県が目指す水産物の産地形成の中核はサケであることは間違いないことであり、このためには、かつて3万トン以上の漁獲量が安定的にあったように、一定のレベルの漁獲量を確保することが、漁業者を初め流通や加工など、関連業種においても期待されているところであります。
 そこで、サケ漁の現状を踏まえ、課題をどのようにとらえ、今後、どのように取り組んでいくのか、お示し願います。
 次に、ものづくり系専攻科設置による教育の充実について伺います。
 いわて希望創造プランでは、ものづくり産業人材の育成を政策項目の一つに掲げ、教育界と産業界の緊密な連携体制のもとで、工業高校や産業技術短大への専攻科の設置を進めるとされ、地域産業のニーズに対応して黒沢尻工業高校と産業技術短大へ専攻科が、水沢工業高校に自動車専攻コースが、さらには、宮古高等技術専門校に金型技術科が開設されました。釜石市では、ものづくりの基盤や地場産業、それを支える歴史、人材、物流基盤などの地域特性を最大限に活用した地域産業の振興に努めており、誘致企業や地場企業関係者から、ものづくりを支える担い手、即戦力となる有能な人材確保が求められております。産業界のニーズにこたえ、雇用創出や地域の活性化につなげていけるよう、来月、釜石工業高校と釜石商業高校を統合して新設される釜石商工高校に、遠からず、ものづくり系専攻科を設置すべきであると考えますが、県教育委員会の御見解を伺います。
 次に、道路基盤整備について伺います。
 医師不足等によって、より高度の救急医療施設への医療資源の集約が進む中、病院間の患者搬送の一層の拡大が確実視されております。現在、大槌町は、盛岡市までの到達時間が県内の市町村の中でも最長と言える地域で、その道のりも急勾配、急カーブが多いため搬送される患者の負担が大きく、近いうちに必ず発生する宮城県沖、三陸沖地震津波など、災害時の地域の孤立化が不安視され、企業誘致など地域産業振興の妨げになっております。
 主要地方道大槌川井線土坂峠のトンネル化は長年にわたる地域の悲願であり、町民に対する高度医療の提供、町の産業振興、観光振興、経済活性化、防災対策、文化交流施策等のかなめであることから、その早期着工は必須かつ喫緊の課題であります。今後の県の取り組みについて、前向きな見解をお示しください。
 次に、地域の価値を高める取り組みについて伺います。
 我が国の個人の金融資産は、年齢が上がるほど資産の形成が進むのが特徴で、1、500兆円を超す日本の個人金融資産の6割は60歳以上の方が所有しており、その貯蓄残高は、働き盛りの我々40代の2倍前後に達しております。また、長生きする人がふえた結果、子供が親の資産をすべて相続する年齢は30年前より15歳以上上昇し、現在は60代後半に達しています。本県から大都市に移住し、定年後も都市部にとどまる団塊の世代の多くが、岩手県内の親の家など不動産を相続した場合、維持管理にコストがかかり、兄弟で一つの物件を共有するのが大変なことから、現金化を選ぶケースがふえています。
 地元経済の疲弊で、所有する不動産に価値の目減りしか見込めないと判断すれば、一刻も早く手放して成長性のあるものへ乗りかえようとすることは、経済的には合理的な判断と言え、このように相続した資産が現金化されて首都圏の銀行口座に移されると、五、六年の間に本県の個人資産の2割近くが他府県に流出し、人口の流出以上に深刻な事態を招くという試算があります。これを防ぐには、不動産の価値を上昇させ、相続者に、現金化するよりも実物での所有が有利であるという判断をしてもらうほかありません。
 いわて希望創造プランに掲げる県民所得の向上のためには、県民の資産である不動産の価値を高めることによって、県民所得の構成要素である資産所得を上げていくことも重要であり、個人の資産価値に注目した考え方も必要と思われます。地域そのものの価値を上げていく観点から、知事の見解をお示しください。
 次に、受益と負担の世代間格差について伺います。
 平成17年度年次経済財政報告書によると、現行制度を維持した場合、行政サービスによる受益額から納税などの負担額を差し引いて得られる生涯純受益の世代間比較では、60歳代の4、875万円のプラスに対し、将来世代は4、585万円のマイナスになると試算がされております。祖父母と孫で1億円近い世代間格差が生じることになります。受益と負担の世代間格差の大半は、年金や医療などの社会保障から生じてきます。みんなが、将来は今より豊かになれると思える高度経済成長期には、所得配分の不公平はそれほど感じられませんでしたが、少子・高齢化が進んで経済成長の前提が崩壊すると、分配の格差が大きな問題になってまいります。
 1兆4、000億円を上回る巨額の県債残高からもわかるように、選挙権を持つ我々の世代は、公債で財政を賄うという政治的意思決定をしがちになります。私たちは、将来にツケを残す財政手法によって、今はまだ選挙権を持たない、あるいはこの世にまだ生を受けていない子供や孫たち将来世代の税金の使い道を、勝手に決めてしまっています。こうした世代間格差の拡大を防ぐために世代ごとの純負担額を評価し、世代間対話の手段にもなる世代会計を国に先駆けて本県に導入すべきだと考えますが、知事の見解をお示しください。
 結びに、花巻市で幼少年時代を過ごされた宗教学者の山折哲雄氏が、作家の五木寛之氏と月刊文藝春秋3月号で対談されております。
 宮沢賢治の雨ニモマケズについて山折氏は、ヒデリノトキハナミダヲナガシとあるでしょう。あれ、賢治の手帳にはヒドリと書いているんです。花巻あたりでは日が照れば不作なしで、農民たちは喜ぶはずです。むしろ、夏に気温が上がらないことのほうが恐ろしい。実は、ヒドリというのは方言で日雇い仕事のことなんです。雨ニモマケズが書かれた昭和6年頃、不作のために土木の仕事をやったり、他県に出稼ぎに行く農民が大量に発生していました。今、派遣切りなど非正規雇用の人々の生活の問題がクローズアップされていますが、状況はまさしく重なるのですと述べておられます。
 これをきっかけに、改めて雨ニモマケズの全文を読み返してみると、わずか30行の短い詩の中に、私たちが煩わしい日常の中で置き去りにしがちな強い意思や優しい気持ち、足るを知るライフスタイル、理想の人間像、悲しい出来事に対して私たちがどのように振る舞うべきかなど、考えさせられる言葉が凝縮されています。
 世界じゅう、日本じゅう、そして岩手県じゅうに、未曾有の経済危機、通貨危機、100年に一度の大不況などといった言葉があふれていて、私たちの前には難問が山積しています。しかしながら、私たち政に携わる者がなさなければならないことは、今も昔もそれほど変わっていないのではないでしょうか。
 東ニ病気ノコドモアレバ 行ツテ看病シテヤリ 西ニツカレタ母アレバ 行ツテソノ稲ノ束ヲ負ヒ 南ニ死ニサウナ人アレバ 行ツテコハガラナクテモイヽトイヒ 北ニケンクワヤソシヨウガアレバ ツマラナイカラヤメロトイヒ、政の基本とは結局のところ、こういうことなのではないでしょうか。
 私は、達増知事とは政治的立場を異にしているわけですが、知事の物事に対する誠実さやまじめさ、草の根を重視する姿勢など共感する点も多く、尊敬に値する先輩であると思っています。しかしながら、最近の知事は、賢治の言うところの、アラユルコトヲ ジブンヲカンジヨウニ入レズニ ヨクミキキシワカリ ソシテワスレズというところを、失いかけているのではないかという気がしてなりません。知事は、県民の代表であると同時に、県庁という巨大組織を統治する巨大な権力者としての側面も兼ね備えています。
 達増知事におかれましては、県民の代表にふさわしい度量と巨大組織を束ねる長に必要な思慮深さを兼ね備えたガバナーを目指していただくよう、切望するものであります。
 雨ニモマケズの中で私が最も感銘を受けるのは、最後に、サウイフモノニ ワタシハナリタイという、みずからの決意を持ってその詩が結ばれているところであります。ヒドリノトキハナミダヲナガシながらも、雨ニモマケズ、風ニモマケズ、今の県民の暮らしを守るために、議会と当局が時に競い合い、将来の岩手を担う世代に希望を与えるために、議員と知事が切磋琢磨し合ってこの難局に立ち向かっていくことを約束して私の一般質問を終わります。
 答弁によっては自席より再質問をさせていただきます。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 小野寺有一議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、二元代表制に対する私の認識についてでありますが、地方自治において二元代表制が採用されているのは、議決機関である議会の議員と執行機関の最高責任者である首長を住民がそれぞれ直接選ぶことによって幅広い住民意思を直接行政運営に反映させるとともに、相互牽制と均衡による公正な行政運営を行うためであると理解しております。
 したがって、選挙で選ばれた首長と議員は、地方自治法に定められたお互いの権限と責任において、政策的に議論を深めながら県民の負託にこたえていくべきものと考えております。
 次に、県立病院の新しい経営計画についてでありますが、市町村や地域住民への対応等については、私は、日ごろから県内各地域で岩手フロンティア懇談会や草の根地域訪問などを通じ、さまざまな職業、年齢層の方々から暮らしや仕事の現場での課題等を幅広く伺っておりますが、生命にかかわる救急医療や高度専門医療を担う中核的な病院の診療体制に対する不安など、地域医療についての声もいただいております。
 医療局の新しい経営計画については、求めがある地域の皆様に具体的でわかりやすい説明をし、地域の個別具体の要望や提言を伺うことが必要でありますことから、医療局長や現場を熟知している医師が出向いたほうが適切であると判断したものであり、その結果については医療局から報告を受けております。
 無床診療所化に当たっては、市町村や地域の皆様からいただいた意見について、計画に反映できるものは可能な限り取り入れ、入院患者の受け入れ先や交通アクセスの確保など8項目の対応策を盛り込んだところであります。
 そもそも岩手の地域医療の危機はすべての県民が直面する緊急の課題であり、今後においても、危機を希望に変えるため、昨年11月に立ち上げた県民みんなで支える岩手の地域医療推進会議の運動などにより、医療従事者、行政、関係団体、県民が一体となって、地域医療体制づくりの県民運動を全県的に推進しながら、県政懇談会等の場を通じて県民の皆様から幅広く意見を伺い、県政運営に生かしてまいりたいと考えております。
 次に、医師への対応等についてでありますが、医師に対する働きかけについては、それまでは実施してこなかった知事と病院長や現場勤務医との意見交換の場を平成19年度、おととしから設けておりまして、そういう機会などを通じ、県立病院に勤務している医師の過酷な勤務状況について、私自身が直接生の声を聞き、医師の勤務環境を改善しなければならないと強く感じているところであります。
 今回の新しい経営計画はこうした病院現場の医師の声を反映したものであり、医師不足が危機的な状況にある中で、県立病院で頑張っている勤務医の業務負担を少しでも軽減することが勤務医の離職防止につながるものと考えております。
 また、医療局の人件費削減については、医療局の独自の取り組みとして、現改革プランの期間内では特殊勤務手当の見直しにより合計で約6億9、000万円を削減してきたところであり、新しい経営計画でも、平成21年4月から職員の給料の調整額の廃止や病院業務手当の廃止を含む特殊勤務手当の見直し等を行い、合計で約13億8、000万円の削減を見込んでいるところであります。
 なお、これらの医療局独自の見直しとあわせまして、知事部局等に勤務する職員に準じて、平成18年度から実施の県人事委員会勧告に基づく給料表の減額改定や、また、平成20年度から平成22年度までの給料月額及び給料の特別調整額の減額措置についても実施しているところであります。
 次に、不適切な事務処理の問題についてでありますが、この問題は、需用費、旅費、賃金の三つの費目において発生したものでありますが、そのうち需用費については、事実と異なる品目や納品日に基づき支出を行ったものであり、適正を欠く経理処理でありましたが、一方で賃金、旅費につきましては、執行内容や執行手続は適正なものであり、問題点は、国庫補助の対象に該当するか県の単独財源で執行すべきかという振り分けの問題でございました。
 このため、会計検査院からの指摘においても、需用費については不適正な経理処理と表現されている一方で、旅費と賃金については不適正とは表現されず、補助の対象外という表現がなされているところであります。また、旅費と賃金については、経理処理としては適正なものでありますことから、会計検査院の指摘では、旅費と賃金の問題については経理処理の問題という表現も使われておらず、県の単独事業費を財源とすべきであったという指摘がなされているところであります。
 こうした会計検査院の整理の仕方や、本県における問題の実態、具体的には、国に返還を予定している補助金の半分近くが旅費、賃金に係るものであることなどに基づいて、本県においては、需用費、旅費、賃金の3費目の問題の全体を表現する言葉としては不適切な事務処理と説明してきたところであります。
 次に、国への補助金返還と職員負担についてでありますが、まず、国庫補助金返還の性格について申し上げますと、これは過去の補助金の交付決定の一部を取り消されることに伴って所要額を国に返還するものでありますが、今回のケースはいずれも県としての公的な事務事業に充てられた支出であり、国への補助金返還は、当該支出に国費を充てず、県の単独財源をもって支出すべきものであったという最終的な整理と判断を国から示されたことになるものであります。
 また、お金の動きの面から見ましても、県から国への補助金返還は、国民、県民の皆様からお預かりした税金が、一度国から県への財政支援として交付されたものが県から国へ戻る形で移転するものであり、国、県を通じた公の財源としては失われていないものであります。このため、国、県を通じた公金という意味での税金を失わせたり私的用途に消費したりした場合は別として、国に対する補助金の返還自体を職員に負担させるべきものと位置づけることはできないと考えております。
 こうしたことから、その他のさまざまな補助金返還事例においても、着服や私的流用などがなく、職員の何らかの業務上の落ち度に伴って発生した補助金返還については、別途、落ち度に応じた職員の処分は実施するものでありますが、国へ補助金を返還すること自体について職員に負担を求めることは行われていないところであります。
 今回の本県における不適切な事務処理の問題についても、返還対象となった需用費、旅費、賃金についてはいずれも県の事務事業の遂行に充てられていたものでありますことから、国庫補助金の返還財源として職員に負担を求めるという考え方はとっていないものであります。
 一方、本県においては、国への補助金返還とは別の観点から一定の職員負担を求めることとしましたが、その考え方は、需用費の預け金、差しかえ、一括払いについては、その執行に当たって、出納機関を通じて購入した場合と比較して割高な購入になっていたと認められますことから、業者に預けていたことによる資金の運用益の損失も生じていたと考えられますので、国費、県費を含めた公金をその分だけ失わせる結果を招いているという点に着目して職員に負担を求め、その失った額について100%を超えるような負担金を集めることとしたものであります。
 こうした判断に基づいて本県では職員から負担を求めるべき金額や単価を算定し、近く実際の負担金の収集を開始することとしておりまして、関係した職員に適切な処分を行うこととあわせて、この設定した職員負担金を確実かつ円滑に収集できるようしっかり対応してまいりたいと思います。
 次に、海洋資源を生かした産業振興についてでありますが、本県の三陸沿岸は、親潮と黒潮が交錯する世界有数の漁場を形成し、我が国を代表するすぐれた海岸美を有するほか、未知の海底・海中資源の可能性など、海の持つ多様な資源を有しているところであります。また、沿岸圏域には北里大学や東京大学海洋研究所などの海洋関連の大学、研究機関が集積しており、私は、昨年5月に実施した釜石市での移動県庁における海洋研究者との意見交換を通じまして、これらの地域資源や海洋関連研究機関の集積を生かした海洋産業の振興の可能性を強く感じたところであります。
 海洋産業の振興は、現在取り組んでいる県北・沿岸圏域における産業振興の基本方向を重点化、加速化していくものであり、今後、これら圏域の振興を図っていく上で極めて有効な施策と考えております。そのため、平成21年度は新たに海洋担当の特命課長を配置し、国の海洋基本法に対応した水産資源、海洋バイオ、海底・海中資源、海洋エネルギー、海洋レクリエーションなどの分野別の施策を盛り込んだ総合的な海洋産業振興のための指針を策定することとしております。
 今後におきましては、地域の産業関係団体、企業などと一体となってこれらの海洋産業の振興施策に取り組むとともに、三陸沿岸への海洋研究開発のためのプロジェクトの導入についても国等に対して積極的に働きかけてまいる所存であります。
 次に、地域の価値を高める取り組みについてでありますが、本県を初め地方では地価の下落が続くとともに、空き家や耕作放棄地の増加など、地域全体の活力や価値を低下させるような問題が生じています。私は、県民が地域に愛着を持って、そして自信と誇りを持って地域資源を生かした個性ある地域づくりに取り組みながら生き生きと暮らしていくことが地域に魅力と活力を生み出し、新たな人を引きつけ、呼び込むことによって地域全体の価値が向上し、ひいては不動産などの個人の資産価値も高まっていくものと考えております。
 こうした考えから私は岩手ソフトパワー戦略を掲げ、地域における歴史的・文化的価値を再認識する取り組みや安全・安心な農林水産物など本県のすぐれた資源を活用し、発信する取り組み、豊かな自然や水など良好な環境を守り育てていく取り組み、個人のライフスタイルや価値観の多様化を背景とした地方志向の高まりをとらえた団塊世代を中心とした定住や交流の促進などを進めるとともに、農地の生産力向上が不動産価値を高めていくことなどにもつながりますことから、生産性、市場性の高い農林水産物の産地形成などにも努めております。このような取り組みを通じて、今後とも地域全体の価値、岩手全体の評価が高まっていくよう取り組んでいく考えであります。
 次に、受益と負担の世代間格差についてでありますが、世代会計とは、公共財、サービスの提供や公的年金、医療といった社会保障給付等の生涯受益額と税や社会保障負担などの生涯負担額を世帯主の年齢階層ごとに算出し、年代別に生涯を通じて見た受益と負担の関係を定量的に評価しようとする手法であり、内閣府の平成17年度年次経済財政報告における高齢化と医療、介護の課題の分析などで用いられているところであります。
 こうした分析は、社会保障制度のような、国民がどこに居住してもひとしく保障される社会的なセーフティネットとして国民が皆で支え合う制度を考える上では参考となりますが、県レベルでは世代間の受益と負担の関係が地域内で完結しておらず、県外の若者が本県の高齢者を支えるという現状もあること、本県の統計のみでは試算に必要な数値がそろわないことなどの課題がありますことから、本県のみを対象とした有効な世代会計を作成することは難しいところでありますが、政策立案、評価のためにはさまざまな分析手法を研究していくことは必要だと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては関係部局長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔総務部長川窪俊広君登壇〕
〇総務部長(川窪俊広君) 退職手当債についてでございますが、本県においては、これまで平成18年度に45億円、平成19年度に54億円の退職手当債を発行しており、また、今年度においても53億円程度の発行を見込んでいるところでございます。したがって、今年度までの累計発行額は152億円となっております。これを返済する際には利子が加わりますことから、将来にわたる返済総額は182億円程度と試算しております。
 退職手当債は、定数削減等による人件費削減効果の範囲内で発行できる制度上認められた地方債ではございますが、可能であれば発行せずに対応するほうが望ましいとは認識しており、今後の財政運営においても必要最小限の活用という考え方で努力していきたいと考えております。
 ただ、しかしながら、現在の地方財政計画が国、地方を通じた巨額の財源不足を背景に、退職手当債を発行することを織り込んだ形で地方交付税の額等が決定されていることなどを踏まえますと、県が必要な歳出を行うためには、現状では退職手当債を含めた財源対策を講じざるを得ない状況でございまして、退職手当債の縮小や償還期間の短縮といったことに関しては、県の努力だけではいかんともしがたい面もございますけれども、できるだけ努力してまいりたいと考えてございます。
   〔医療局長田村均次君登壇〕
〇医療局長(田村均次君) 県立釜石病院のがん放射線治療設備の整備と退職手当債についてでありますが、県立釜石病院は、釜石保健医療圏の中核病院として、圏域の他の医療機関との機能分担と連携により急性期医療を担っておりますが、がん放射線治療設備につきましては、現施設では機器を設置するスペースがとれないこと、放射線治療を行う専任の医師や診療放射線技師等のスタッフの確保が困難であることなど、現状では条件が整っていないところであり、今後の検討課題と考えております。
 また、退職給与金は退職手当債の発行の有無にかかわらず義務的に支出しなければならない経費であり、ここ数年は、団塊世代の大量退職及び昭和40年代に看護体制強化のために大量に採用した職員が退職時期を迎えることなどにより例年に比べ15億円程度の増加が見込まれますことから、費用の平準化を図るため退職手当債を発行したところであります。
 次に、医師の退職の動向や無床化等に該当しない病院の実態についてでありますが、県立病院の常勤医師数は平成16年度以降減少が著しく、本年度も昨年12月までに既に25人が退職し、今後さらに十数人の退職が予定され、平成21年度当初の常勤医師数は平成15年度末に比べ86人減少の449人と見込まれるところであります。
 今年度の退職者25人、今後の退職見込み十数人の大半は中央病院、または広域基幹病院の退職者でありますが、中には医師が数人しかいない病院も含まれております。これらの規模の小さい病院では、大学からの医師派遣が難しいことから影響が特に大きいものと認識しております。
 医師の退職の理由には、子弟の教育上の問題や親の開業の後継ぎといった個人的な事情によるもののほか、厳しい労働環境などから開業や民間病院への異動、大学院への進学などが主な要因と認識しておりますけれども、無床診療所化や病床数削減にかかわりなく、できるだけ残っていただけるよう慰留に努めているところでございます。
 次に、県立病院への地域による支援についてでありますが、市町村等が招聘した医師を県立病院以外の組織に所属させ県立病院等に派遣するというスキームについては、いわゆる労働者派遣事業法において原則として医師の派遣が認められていないことから県立病院と雇用関係を結ぶ必要があることや、現在、県立病院に勤務している医師との処遇上のバランスをどうとっていくかなどの課題があるものと考えております。
 こういった課題があることも念頭に置きつつ、どういうやり方であれば可能なのかなど、関係者の意見も聞きながらいろいろ研究していきたいというふうに考えております。
   〔農林水産部長高前田寿幸君登壇〕
〇農林水産部長(高前田寿幸君) サケ漁の課題と今後の取り組みについてでございますが、本年度のサケの漁獲量は約2万4、000トンにとどまる見込みでございまして、依然として回帰率は2%台と低い水準にございます。
 この要因といたしましては、ふ化場の過密飼育や適期前の放流が多いこと、飼育施設の老朽化が進んだことなどが指摘されており、健康な稚魚の育成管理が課題となっております。
 このため、県といたしましては、これまでの飼育管理マニュアルの普及等により飼育技術の向上に努めてきたところでございますが、こうした取り組みに加えまして、回帰率を早急に向上させるため、来年度から新たにサケ回帰率向上緊急対策事業を実施し、本県独自の総合的な取り組みを推進することといたしております。
 具体的に申し上げますと、技術開発面では、産学官の連携により、稚魚を海水に早く適応させ、成長や歩どまりを高める飼育技術の開発、人材育成面では、ふ化場技術者を対象とした研修制度を創設し、技術力の底上げと中核を担う高度な技術者の育成、基盤整備の面では、老朽化したふ化場の機器整備の促進による飼育環境の改善などを関係団体及び市町村と一体となって進めることとしており、これによりサケの回帰率向上に努め、漁獲量の増大を図ってまいります。
   〔県土整備部長佐藤文夫君登壇〕
〇県土整備部長(佐藤文夫君) 主要地方道大槌川井線の土坂峠道路の今後の取り組みについてでありますが、計画延長は約5.2キロメートルありまして、早期に整備効果が発現できる現道拡幅区間の約1.1キロメートルの区間と、地形が急峻であるため長大なトンネルが必要となる4.1キロメートルの区間から成っております。
 現道拡幅区間につきましては、平成18年度までに0.6キロメートル区間の整備を終えたところでありまして、残る約0.5キロメートル区間につきまして、昨年度から鋭意事業を進めているところであります。
 トンネル部分を含む区間の整備につきましては、県全体の道路整備計画の中で、交通量の推移や道路予算の動向も見きわめながら検討してまいりたいと考えております。
   〔教育長法貴敬君登壇〕
〇教育長(法貴敬君) 世界遺産登録を目指す取り組みの支援についてでありますが、九州・山口の近代化産業遺産群は、非西洋地域において最初でかつ極めて短期間に飛躍的な進展を遂げた日本の近代工業化の過程を明確に示す遺産として世界遺産暫定リストに登載されております。
 一方、釜石市の国指定史跡橋野高炉跡は、日本の近代工業化に欠くことのできない銑鉄の製造に成功した我が国最初の洋式高炉であり、日本の近代製鉄の礎を築いた重大な近代化産業遺産であると認識しております。
 文化庁によれば、九州・山口の近代化産業遺産群の世界遺産登録に向けた主題設定や構成資産については事務局である鹿児島県を中心に検討していくということであり、今後、釜石市と連携して情報収集に努めてまいります。
 次に、ものづくり系専攻科設置による教育の充実についてでありますが、工業高校における専攻科教育は、高度な先端技術、技能を習得させ、企業において即戦力となる人材を育成することを目的とするものであり、その設置に当たっては、ものづくりに関する高度な知識習得のために、県内大学や企業からの講師派遣など授業に対する協力が不可欠であるとともに、生徒の長期インターンシップや就職の受け入れなど地元企業の継続的な協力体制が確立されている必要があります。
 新しい釜石商工高校へのものづくり系専攻科の設置については、昨年度設置された黒沢尻工業高校の状況を検証しながら、地元企業の意向や大学等の協力体制の状況、さらには県内産業の立地動向などを見きわめながら検討していくことになると考えております。
〇11番(小野寺有一君) 御答弁をいただきましてありがとうございます。
 主に県立病院等の無床化、それから病床削減の問題について、それから不正経理による国庫補助金の返還金の問題について再質問をさせていただきたいというふうに思います。
 先ほど知事の御答弁の中で、医療局長や、それから現場を熟知している方が出向いたほうが適切だということで、地域説明会のほうには知事が参加されなかったというお話がありました。他方、病院長さんの会議あるいは県立病院の医療スタッフの方々との間で構成する団体との懇談等は知事が現場の生の声を直接聞いたという御答弁でありました。
 私は、これは考え方がひっくり返っているんではないかと。要は専門家を相手にしたときには専門家の方が聞くべきであって、そして地域の住民の方の声を聞くときには、むしろ知事のように政治的な判断のできる方が説明会に出向くという考え方が当たり前のところではないかというふうに思うわけであります。
 先ほどの知事のお答えを聞いておりますと、知事はよく草の根に分け入るということを表現で使われますけれども、知事のおっしゃっているその草の根というのは、御自身の考え方に賛同している方だけのことを指しているのではないかというふうにすら思えるところであります。結局、草の根という知事の表現というのは、そういった知事の態度、あるいはそういった考え方の二重基準を覆い隠すための方便に使われているのにすぎないのではないかというふうにすら思えるところであります。
 地域にはみずから出向くことなく、医療関係者からは直接生の声を聞くことになった、そういった判断を下された理由は何かということをもう一度わかりやすい説明をいただきたいというふうに思います。
 それから、県立病院等の医師の退職の動向について、先ほど医療局長のほうからお答えがございました。今年度は4月から12月までの間の8カ月間で25人おやめになって、それからあと1月から3月の間に十数人おやめになる見込みであるという御答弁でありましたけれども、ということは、1月以降も、比率で言うとほとんど退職者は減っていないんじゃないでしょうか。県とそれから医療局のほうは、この新しい経営計画の策定の理由として、一貫して、医師の過酷な勤務による退職者の増加を防ぐために集約化が不可欠であるという説明をされていらっしゃいました。私もお医者様の過酷な勤務が、その退職の大きな理由の一つになっているということは、全面的に認めるものであります。ただ、この計画案が11月に示された後も、退職者が減らないというこういった状況を見ると、この医師の退職理由というのが、医療局がおっしゃっている過重勤務だけでおやめになっているとは必ずしも言えないと。医療局が出されてきた新しい経営計画案の前提が、無効になっているのではないですか。
 お医者様がおやめになる理由というのはたくさんあるんだろうと思いますけれども、その過酷な勤務のほかにも、給与とかあるいはそれ以外の勤務体制に含まれない、そういった待遇や、あるいはドクターの意見よりも事務方の経営判断のほうが優先されるというような現在の医療局の体制に対する不満とか、もっと根の深い問題があるのではないですか。無床化とかあるいは病床削減の前に、こういった重大な問題を早急に調査検討しなければならないと思いますけれども、県立病院の開設者たる知事の考え方を示していただきたいと思います。
 それから、不正経理による国庫補助金の返還問題について再質問をさせていただきます。
 先ほど知事のほうから、不適切、不適正あるいは適用処理の範囲外といった事務的な言葉の解説がありましたけれども、そもそも不適切なだけであれば、なぜ補助金を返還させられるのでしょうか。不適切なことだということの指摘であれば、その処理を適正化すれば済むだけの話じゃないんでしょうか。不適切に当たらなくて不正であるからこそ、この補助金が返還させられるということなのではないでしょうか。
 先ほど知事のほうからは、これは税金が一回国から交付されたものが、それが岩手県から国のほうに戻るだけだというお話がありましたけれども、それはちょっと違うんじゃないでしょうか。そもそも、戻さなくていいものだったわけですから。やっぱりこれは県の財政に穴をあけたことになるんじゃないでしょうか。
 この不正経理による国庫補助金の返還問題についてはいろいろな、はっきり言いますけれども違法行為の疑いがございます。少なくとも、補助金適正化法以外に、地方自治法の第232条の3に支出負担行為というものと、同条の4に支出の方法というものがありますが、この定めに明確に違反しています。
 それから、先ほど何という表現でしたでしょうか、手落ちとおっしゃったかな、ちょっと表現忘れましたが、そういったことの表現があったとおっしゃっていましたけれども、故意あるいは重大な過失があったということは、これは明らかなんじゃないでしょうか。場合によっては、国家賠償法第2条、公務員に対する求償権にも該当する可能性がある。県の職員の方々の負担が重くなるというのは、大変じくじたる思いもありますけれども、これはやはり県の皆様方で県民の負担をなくすという方向が正しいのではないでしょうか。
 最近、新聞報道で載っておりましたけれども、愛知県では、本県と同様の事案において、不正経理の損害額約2億5、000万円を、全職員と退職者で自主返還を求めるとする最終報告をまとめたという報道がございました。この中には、本県では返還の対象とされていない加算金の分も含まれているわけであります。他県との対比という意味でも、職員の方に対しての負担の求め方を再検討すべきであると感じますが、県民の負担をゼロとするための方策を早急に示すべきだと思われますが、いかがでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 今回、無床化が計画に盛り込まれた診療所等への対応についてでありますけれども、これは地域の皆様の意見、特に要望や提言を新しい経営計画の中に盛り込むことをすぐに実行していくためにも、医療局長や現場を熟知している医師から説明し、また、要望や提言を伺うほうが適当と判断したものでありまして、そして実際、説明会及び懇談会を踏まえ、計画に反映できるものは可能な限り取り入れることができたと考えております。
 私は、知事選挙及びその準備の段階、また、知事に就任してから、県内広く県民の声を伺う中で、医師不足によって生命にかかわる診療がきちんと受けられなくなるのではないかという声を多く聞き、それが今、岩手県民が直面する最大の危機、最大の不安の一つであると認識しております。
 草の根地域訪問などで伺った意見の中には、二戸病院の産婦人科は、去年まで常勤医師が二、三名いたが、今は1人。待ち時間が三、四時間というのがざらにある。お産が入れば1日がかりで、その日診てもらえるかどうかということになるでありますとか、久慈病院のケースですが、胃に5センチ穴があいて今すぐ手術というときに、手術する医師はいるけれども麻酔科の先生がいなくて、4時間ぐらい待ったあげくに、八戸に行ったということがあった。遠野市の例。遠野市でも産科医がいなかったり、医師不足が本当に深刻な問題。盛岡に行くまで1時間半ぐらい、雪道だと2時間もかかる。
 岩手が直面している地域医療の危機の現場というのは、まず、この医師不足の勤務医が働いている現場、これはイコール患者が診療を受けている現場でありまして、そこに入っていって実情を知ることが、危機を希望に変えていくためにまず必要と考えているところでありますが、ただ、私はアポなしである県立病院に飛び込んで、そこの様子を勤務医に伺おうとしましたけれども、手術や術後の説明などでてんてこ舞いで、知事が来ても会うことができないという現状でありました。そのため、医師との意見交換会の場を設けたり、また、患者の側の、今、例に述べましたようなそういうお話も伺いながら、岩手の地域医療の危機は、これは県民すべてが直面する県民全体の問題でありますので、その解決に当たって、現場から考えて対応していこうと努めているところであります。危機を希望に変えていくためには、すべての県民が医療を支える担い手としての自覚を持って、県民みんなで支える岩手の地域医療という体制をつくっていくことが必要であり、4月からの県立病院の新しい計画の実行は、その大きな一歩になると考えております。そのことは、勤務医の意識にも大きな影響をもたらすと予想されますが、勤務環境以外の個人的な理由で退職をしたいという医師に対しては、先ほど医療局長から説明がありましたとおり、手分けをして慰留に努めていくべきと考えております。
 次に、不正経理による国庫補助金返還問題についてということでありますけれども、不適切という表現については、需用費、旅費、賃金の三つの費目において発生した問題全体を指すものとして用いておりまして、このうち需用費の問題、中でも預け金等については会計検査院からも指摘されているとおり不適切、すなわち、適正でないという、私もそのとおりの認識であり、県として深く反省し、県民の皆様におわび申し上げなければならない問題であったと考えております。
 この問題の違法性については、御指摘のとおり、会計規則や会計年度区分を定めた地方自治法等の法令、また、関係省庁が定めている国庫補助事業の条件などを逸脱したものであり、こうした点が、法令や補助条件を遵守して補助事業を執行しなければならないという、補助金適正化法に定められた補助事業者の義務にも違反したものであります。このため、関係省庁から補助金の交付決定の取り消しを受けることとなったものでありますので、県としては、こうした問題を二度と起こさないよう、再発防止を徹底してまいりたいと思います。
 また、他県の状況についてでありますが、平成19年度に、会計検査院の実地調査を受けた本県を含む12道府県においては、予備費で対応予定としている県が2県、2月補正予算への計上が本県を含めた10道府県となっており、いずれも今年度内に国への返還を行う方向で手続を進めております。
 職員の処分については、各道府県において検討中と聞いておりますが、職員に負担を求めるかどうかという点については、現時点では、職員から一定の負担を求める方向、方針を出しているのは、本県のほか愛知県と京都府であり、それ以外には、これまでのところ、職員から負担を求めるという情報は聞いておりません。
〇11番(小野寺有一君) 私がお尋ねしたことに対して答弁をいただいておりませんので、改めてお伺いさせていただきますけれども、まず、無床化それから病床の削減の問題でありますが、知事が地域説明会に出席をされなかった意図はわかりました。それから、病院のスタッフに対して生の声を直接聞いたという、そういったことの意図もわかりました。だけれども、私にはわからないのは、前者には知事が行かなくて、後者には行ったという、この対比をどのような判断に基づいてなされたかということに対してのお答えは私には理解できませんでした。もう一度お答えをいただきたいと思います。
 それから、今回の新しい病院の経営計画の効果が期待されると、これがお医者様の退職を減らす希望になるんだということを知事はおっしゃったわけですが、先ほどの医療局長の御答弁でもわかるように、今年度の前半の8カ月で25人、一番最後の3カ月で15人、全然減っていないじゃないですか。要は、この経営計画が4月から実行されるという確かな確信があるのであれば、お医者様方はやめずに済むはずじゃないですか。前提が全く狂ってきてしまっているということをどのようにおとらえになっているのかということを、もう一度お話をいただきたいというふうに思います。
 それから、補助金の不正返還問題についてでありますけれども、技術的な問題はいろいろあるんだと思います。しかし、私は質問の中で、愛知県は延滞金、加算金の分まで職員の方々で返すということになっているということを申し上げましたけれども、本県ではこの加算金の分は入っておりません。この分を愛知県との対比においてどのようにとらえていらっしゃるのかということをお尋ねをしたい。
 それから、そもそもでありますが、今、先ほどから何度も私と当局とのやりとりであるように、岩手県は大変な状況に置かれているわけであります。もう、県民は大変な経済的な苦境に直面している。それが現実であります。そこのところで、公務員の皆さん方は、身分は保障されて、給料が何十%か、もしかしたら何%かカットされているかもしれませんけれども、来月から給料半分で勘弁してくれというようなことになりますか。あるいは、6月になったら、皆さんのところにはきちっとボーナスも支給されるでしょう。今、県の中小企業のところで、ボーナスを支給できる会社がどのぐらいあると思うんですか。そういう恵まれた境遇にある公務員の皆さんが、あえて言いますが、やらかした不始末のしりぬぐいを、何で雇用不安と所得の低下に苦しんで、あすをも知れない生活をしている県民の人たちが負担しなければならないんですか。もう一度、県民の負担を極小化するための方策を再検討するかどうか、知事の考え方を明確にお答えいただきたいと思います。
〇知事(達増拓也君) まず、なぜ医師には知事が直接会っているのかということでありますけれども、岩手において、地域医療の危機を抜本的に解決するための県民みんなで支える岩手の地域医療に向けた取り組みというものが、本来であれば、岩手全体でもっと早くから始まっていなければならなかったと思いますけれども、結局、これは私が、特に県、これは医療局も含めてですけれども、イニシアチブをとって県を挙げて取り組む体制に踏み出したということがございます。そうした県としての意思決定、決断ということは、やはり知事みずからが医師不足問題、県の地域医療の危機の核心部分に迫り、そしてそこから得られた知見をもとに、県全体を動かすというところからでなければ動かせなかったことだと思っておりまして、そうでなければ、医師との対応も、つかさつかさに任せておくべきところで、前知事まではそうされていたんだと思いますけれども、特に私は、みずから医師等に直接接することを決断したところであります。
 それから、最近の医師の退職動向については、通告で医療局長答弁という整理になっていたと理解しておりますので、差し支えなければ医療局長から答弁させていただきたいと思います。
 次に、愛知県の場合に、不適切な事務処理の発生総額が15億円近くの巨額に上ったことに加えまして、カラ出張などによりいわゆる裏金の発生、それから着服による逮捕者の発生など、本県とは事情が異なる面があり、問題の発生状況に応じた愛知県なりの判断があったのではないかと想像しております。
 一方で、今年度末に国庫補助金の返還を行うことにしている他県では、これまでのところ、職員からの負担を求める方針を示していない県も多くあるところであり、本県としては、決定した方針に従って、迅速に職員負担を集めることとしているところであります。
〇医療局長(田村均次君) 退職の動向の部分で、今年度25人、そして、これからも十数人退職をするということで、こういった新しい経営計画をつくっても減っていないんじゃないかというような御趣旨だったと思うんですけれども、この25人の退職者のうち、11月の発表以後の退職者は1名でございます。しかも開業でございますので、相当前から準備をなさっておられたのではないかと思っております。
 それから、この十数人の方々も、実際に内々の院長先生の退職の意向というのは相当前に示されております。そうしませんと、ある日突然やめるということになりますと大変な影響がございますので、相当前から、いずれ、この方々についても退職の意向が示されているということで、それを何とか今、慰留に努めている状況だということで御理解いただきたいと思います。
 いずれ、やめた理由を個々人から直接お聞きすることはなかなか難しいし、なかなかお話ししていただけないんですけれども、残った現職のお医者さん方からいろいろお聞きするにつけ、やはり過重な勤務というのが要因の一つとして非常にあるんだということは、県立病院のお医者さん方から私も再三再四聞いておりますので、そういったことが要因の一つとしてあるんだということで御理解いただきたいと思います。
〇議長(渡辺幸貫君) この際、暫時休憩いたします。
   午後2時24分 休 憩
出席議員(46名)
1  番 木 村 幸 弘 君
2  番 久 保 孝 喜 君
3  番 小 西 和 子 君
4  番 工 藤 勝 博 君
5  番 岩 渕   誠 君
6  番 郷右近   浩 君
7  番 高 橋   元 君
8  番 喜 多 正 敏 君
9  番 高 橋 昌 造 君
10  番 菅 原 一 敏 君
11  番 小野寺 有 一 君
12  番 熊 谷   泉 君
14  番 高 橋 博 之 君
15  番 亀卦川 富 夫 君
16  番 中 平   均 君
17  番 五日市   王 君
18  番 関 根 敏 伸 君
19  番 三 浦 陽 子 君
20  番 小田島 峰 雄 君
21  番 高 橋 比奈子 君
22  番 高 橋 雪 文 君
23  番 嵯 峨 壱 朗 君
24  番 及 川 あつし 君
25  番 飯 澤   匡 君
26  番 田 村   誠 君
27  番 大 宮 惇 幸 君
28  番 千 葉 康一郎 君
29  番 新居田 弘 文 君
30  番 工 藤 大 輔 君
31  番 佐々木 順 一 君
32  番 佐々木   博 君
33  番 工 藤 勝 子 君
34  番 平 沼   健 君
35  番 樋 下 正 信 君
36  番 柳 村 岩 見 君
37  番 阿 部 富 雄 君
38  番 斉 藤   信 君
39  番 吉 田 洋 治 君
40  番 及 川 幸 子 君
41  番 佐々木 一 榮 君
42  番 伊 藤 勢 至 君
44  番 小野寺 研 一 君
45  番 千 葉   伝 君
46  番 佐々木 大 和 君
47  番 菊 池   勲 君
48  番 小野寺   好 君
欠席議員(1名)
43  番 渡 辺 幸 貫 君
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後2時43分 再開
〇副議長(佐々木大和君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。三浦陽子さん。
   〔19番三浦陽子君登壇〕(拍手)

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