平成21年2月定例会 第10回岩手県議会定例会 会議録

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〇教育委員会委員長(箱崎安弘君) 第10回県議会定例会が開会されるに当たりまして、平成21年度の教育行政推進の基本的な考え方と施策の大要について申し上げます。
 社会が急速な変化を遂げる中にあって、県民一人一人が充実した心豊かな生活を送り、地域社会を支え発展させていく上で、教育の果たす役割は極めて大きいものがありますが、県民総参加の教育立県を基本理念として、自立する岩手を担う人材育成のために全力を尽くしてまいる所存であります。
 まず、次世代の岩手を担う子供たちをはぐくむ最も重要な基盤である学校教育について申し上げます。
 近年、我が国の教育を取り巻く社会環境は、経済的な豊かさの実現など社会が成熟化する中で、家庭や地域の教育力の低下や、子供の学ぶ意欲、学力・体力の低下、問題行動など多くの課題が指摘されております。
 また、食品偽装や無差別殺人など次々に社会問題化した多くの事件の背景には、規範意識や倫理観の低下、人間関係の希薄化などが指摘されており、このような社会の変化が子供たちに大きな影響を与えることが懸念されております。
 私は、こうした中で、教育に対する関心、期待はますます多様化、高度化し、今日の学校教育の困難さが増しているものと認識しております。
 本県におきましても同じような課題に直面しておりますが、私は、子供たちの確かな成長を支え、よりよい社会を形成し得る有為な人材、地域社会の活性化に寄与し得る人材としてはぐくんでいくことこそが教育に課せられた使命であると考えております。
 そのためには、社会の変化がどう進もうとも、子供たちが未来を切り開き、変容する社会の中を生き抜く力を身につけ、知・徳・体を総合的にはぐくむ人間形成という教育目的の実現に全力を尽くさなければなりません。
 また、同時に、子供一人一人の個性や特性などにきめ細かに対応し、小学校、中学校、高等学校の段階を一体のものととらえてその伸長を図ることが求められます。
 このために、私は、次の四つの基本的な方針のもとに、本県の学校教育を進めてまいりたいと考えております。
 第1に、岩手の教育の目的は、子供たちの知・徳・体を総合的にはぐくむ人間形成そのものであるということを、教員を初めすべての教育関係者が再確認することであります。
 第2に、この人間形成という教育の大前提を踏まえた上での学力の向上であります。
 読み・書き・計算といった学習の基盤となる知識の徹底した習得から、知識や技能を活用する力、思考力やコミュニケーション能力など、社会で生きていくために求められる基礎・基本をすべての子供たち一人一人に確実に定着させることであります。
 第3に、子供たちに社会の一員としての役割を果たしていくことの大切さや喜びなどを十分に伝え、社会人になるということの意義を教えることであります。
 第4に、人間形成という教育目的の実現には、学校のみならず、家庭や地域との連携を強化していくことであります。
 私は、今日の学校教育の困難な状況を克服していくためには、この四つの基本方針をすべての教育関係者と共有するとともに、学校や教員の自由度を高め、子供たちをはぐくむ現場である学校の役割を強化し、教員の創意工夫が最大限発揮される仕組みをつくることが何よりも大切であると考えております。
 このような考え方のもとに、次のとおり、学校経営改革の推進、学力・授業力向上対策の強化、キャリア教育の推進による進路実現の支援、生徒指導対策の充実など、学校教育の充実のための諸施策の実現に取り組んでまいります。
 まず、学校経営改革の推進についてであります。
 現在、各学校においては、人間形成という教育目的の実現のため、学校経営計画、まなびフェスト等によりそれぞれの創意工夫により取り組み、徐々に成果があらわれてきております。今後の推進に当たっては、これまでの取り組みを踏まえ、さらに質の向上を図り、すべての学校で家庭、地域との協働、PDCAサイクルの確立等の具体的な行動を促し、それぞれに特色ある目標達成型の学校経営の実現を図ってまいります。
 そのため、家庭や地域社会がそれぞれの教育的機能を発揮し、学校と一体となって子供たちの教育に当たるよう、家庭や地域社会の教育力向上のための支援を充実してまいります。
 特に小・中学校においては、これまでのいわて型コミュニティ・スクール構想の取り組みを踏まえ、一層の質の向上を促すため研修の充実を図り、さらには、教育振興運動との連携、学校支援地域本部の活用の促進や積極的な情報提供を行ってまいります。
 次に、児童生徒の学力の向上についてでありますが、子供たちが持つ可能性を十分に引き出し、自分の将来をみずから切り開いていけるよう、学習面及び生活面での基礎・基本の確実な定着を図るためには、学力向上と教員の授業力向上を両輪として推進し、少人数学級の試行、教員研修の充実などの取り組みを強化してまいります。
 まず、全国学力・学習状況調査や学習定着度状況調査等の分析結果から明らかになった課題に的確に対応するため、小・中・高等学校の指導内容の系統性を踏まえた指導方法の工夫と授業改善に取り組んでまいります。
 また、新たに中学校1年に35人学級を試行的に導入し、学級担任や教科担任ができる限り生徒一人一人に目の届く環境を整え、基礎学力の向上及び基本的な生活習慣の定着を図ってまいります。
 教員の授業力向上対策につきましては、教員研修体系を見直し、教員のライフステージに応じた能力向上を図ってまいります。
 また、キャリア教育においては、これからの岩手のキャリア教育のあり方についての方向性を取りまとめ、発達段階に応じた勤労観、職業観の理解促進につながる取り組みを進めてまいります。また、本県の特色ある産業、文化を支える人材を育成するため生徒個々の進路実現に向けた取り組みを支援するとともに、就職支援相談補助員を配置するなど進路実現の支援のための取り組みを推進してまいります。
 次に、豊かな心をはぐくむ教育の推進についてでありますが、多様な個性を持つ児童生徒一人一人を受け入れ、それぞれの自己実現を支援していく学校づくりを進めるとともに、道徳教育を初めさまざまな体験活動や読書活動などにより、豊かな感性や情操をはぐくむ教育を推進してまいります。
 一方で、生徒指導対策の充実が急務であり、まず、教員の学級経営、学級集団づくりの充実を図り、好ましい人間関係や規範意識を醸成する取り組みを強化してまいります。
 その上で、暴力行為、いじめ、不登校などの問題について、その状況を適切に把握できるように教職員が一体となって当たり、地域や関係機関と連携しながら早期対応を図ってまいります。
 また、情報機器利用における危険性を理解させる情報モラルに関する指導の充実と保護者への啓発活動の推進により、携帯電話等による問題行動の未然防止に取り組んでまいります。
 次に、児童の体力向上についてでありますが、子供たちが運動を楽しみ、みずから進んで実践し得るよう、体育の授業力向上のための体育実技アシスタント派遣や岩手っ子体力アップ運動などの取り組みを強化するとともに、児童の肥満傾向や体力低下の改善などに向けて、家庭における生活習慣の改善や食育の充実のため、学校と家庭が連携した取り組みを推進してまいります。
 次に、特別支援教育の充実についてでありますが、障がいのある子供と障がいのない子供が、地域の学校、学級で共に学び、共に育つというインクルーシブ教育の理念を推進していくため、幼稚園、小・中・高等学校における特別支援教育校内体制を確立するとともに、教職員の特別支援教育への理解を深めてまいります。あわせて、県民理解の増進を図るため、関係機関と連携しながらボランティア養成講座やセミナーの開催など、啓発活動の充実を図ってまいります。
 また、特別支援学校の分教室の設置など、教育の場の拡充を図るほか、高等学校への特別支援教育支援員の配置の促進、関係機関や企業と協力した就業支援や職業指導支援員の配置による進路実現のための支援も充実してまいります。
 次に、競技スポーツを初めとしたスポーツの振興について申し上げます。
 昨年は、北京オリンピックを初め、国体、高総体などでの本県選手の活躍は目覚ましいものがあり、県民に大きな感動と希望を与えてくれました。このように、県民だれもが心身ともに活力ある健全な生活を送る上で、生涯を通じてスポーツに親しむことができる環境づくりが重要であります。
 一方では、精神的なストレスの増大や日常における身体を動かす機会の減少など心身両面での問題も指摘されております。
 私は、地域社会の活力の維持、向上という観点からも、県民が心身ともに健全な生活を営むことは大切であり、年齢、性別を問わずスポーツに関心を持ち、親しむ環境づくりをより一層進めていくことが重要であると考えております。
 特に、平成28年の第71回国民体育大会の本県開催に向けて、県民意識の高揚を図るとともに、各競技団体の組織体制の強化、スーパーキッズ発掘育成事業など中長期的な視点に立った選手の育成、選手の能力を最大限に引き出すトップコーチの養成、選手強化の拠点整備などによる競技力向上のための取り組みを強力に推進してまいります。
 次に、歴史遺産の継承や伝統文化を初めとした文化芸術の振興について申し上げます。
 昨年、残念ながら平泉の文化遺産の世界遺産登録は延期となりましたが、平成21年度は、改めて平成23年の登録に向けて、平泉の価値を明らかにし、世界遺産委員会に推薦書を提出する非常に大事な年であります。幸いにも、今まさに県民運動として一丸となった取り組みがより強固なものになってきており、県民すべての英知を結集し、登録に向けて全力を傾ける所存です。
 昨年12月には、北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群の世界遺産暫定一覧表への追加記載が決まり、また、重要無形民俗文化財である早池峰神楽は、平成21年度ユネスコの無形文化遺産への登録が見込まれるところであり、これらを機に、地域に伝わる伝統芸能や歴史、文化の正しい理解と保存、伝承に一層尽力してまいります。
 さらに、平成21年度を岩手県文化芸術振興指針元年として、一層の機運の醸成を図る好機ととらえて、豊かな創造性の涵養と文化芸術活動への支援や情報発信を行うとともに、岩手県文化振興基金を活用しながら、新進・若手芸術家の育成支援やアートマネジャーの育成など精力的に取り組んでまいります。
 現下の経済情勢はかつてない不況と戦後最悪とも言われる経済危機に直面しておりますが、私は、激動する社会の中にあっても、いつの時代も人づくり、すなわち教育が基盤であると考えております。
 ここに改めて教育の大切さに思いをいたし、これまでの岩手の教育関係者のたゆまぬ努力の蓄積をさらに発展させ、岩手の将来を担う人づくりのために全力を尽くしてまいるとともに、教職員による不祥事の根絶に取り組み、教員に対する信頼を確保してまいりたいと考えておりますので、議員の皆様、並びに県民の皆様の御理解と御協力を心からお願い申し上げます。
 ありがとうございました。(拍手)
   日程第5 議案第1号平成21年度岩手県一般会計予算から日程第51 報告第2号道路の管理に関する事故に係る損害賠償事件に関する専決処分の報告についてまで
〇議長(渡辺幸貫君) 次に、日程第5、議案第1号から日程第51、報告第2号までを一括議題といたします。
 提出者の説明を求めます。川窪総務部長。
   〔総務部長川窪俊広君登壇〕
〇総務部長(川窪俊広君) 本日提案いたしました各案件について御説明いたします。
 議案第1号は、平成21年度岩手県一般会計予算であります。
 この予算の編成に当たりましては、極めて厳しい財政環境下にあることから、戦略的な政策形成を支援する新しい政策評価と連携し、成果を重視した予算編成により事業の重点化を図り、効果的に財源が活用されるように取り組んだところであります。また、現下の経済情勢を踏まえ、雇用の維持・創出や地域経済の活性化などへの早急な対応、2度の震災被害を早急に克服するための復旧・復興への取り組みなどについても迅速かつ的確に対応できるように注力し、あわせて、切れ目のない予算とするため、平成20年度の補正予算と一体的に取り組んだところであります。
 以下、この当初予算の概要について御説明いたします。
 第1条は、歳入歳出予算の総額を、それぞれ6、588億3、728万4、000円と定めるものであります。これを前年度当初予算と比較しますと0.1%の増となっております。
 次に、歳入の主なものについて御説明いたします。
 第1款県税につきましては1、047億6、100万円を計上しており、前年度当初予算と比較しますと248億6、100万円の減となっております。
 第5款地方交付税につきましては2、109億2、789万円余を計上しており、前年度に比較して191億4、721万円余の減となっております。
 第9款国庫支出金につきましては820億9、023万円余を計上しており、前年度に比較して25億7、595万円余の増となっております。
 第12款繰入金は166億2、863万円余を計上しておりますが、これは、地域振興基金、県債管理基金、ふるさと雇用再生特別基金等から繰り入れを行うものであり、前年度に比較して62億5、757万円の増となっております。
 第15款県債につきましては1、091億8、450万円を計上しておりますが、前年度に比較して218億9、500万円の増となっております。
 これは、国の地方財政対策により、地方交付税のかわりとして臨時財政対策債を大幅に発行することなどにより増額となるものであります。
 次に、歳出の主なものについて御説明いたします。
 第2款総務費につきましては303億4、981万円余を計上しておりますが、その主なものは、合併市町村自立支援交付金13億3、161万円余、市町村総合補助金6億2、000万円などであります。
 第3款民生費につきましては671億6、485万円余を計上しておりますが、その主なものは、介護給付費等負担金125億9、556万円余、後期高齢者医療療養給付費負担金101億4、956万円余、国民健康保険事業安定化推進費96億5、400万円余等であります。
 第6款農林水産業費につきましては671億8、961万円余を計上しておりますが、その主なものは、中山間地域等直接支払事業費40億3、973万円余、畜産基盤再編総合整備事業費8億4、009万円余、経営体育成基盤整備事業費72億1、908万円余、治山事業費33億232万円余、広域漁港整備事業費24億3、615万円余等であります。
 第8款土木費につきましては706億3、982万円余を計上しておりますが、その主なものは、道路改築事業費63億3、706万円余、緊急地方道路整備事業費61億5、700万円、基幹河川改修事業費8億4、000万円、港湾改修事業費5億6、100万円等であります。
 第10款教育費につきましては1、469億8、797万円余を計上しておりますが、その主なものは、すこやかサポート推進事業費2億6、858万円余、校舎建設事業費5億4、081万円余、公立大学法人岩手県立大学運営費交付金42億8、288万円余、私立学校運営費補助48億1、843万円余等であります。
 第12款公債費につきましては1、012億8、911万円余を計上しております。
 第13款諸支出金につきましては538億1、947万円余を計上しておりますが、その主な内容は、公営企業負担金178億284万円余、地方消費税交付金120億3、537万円余等であります。
 第2条債務負担行為は、岩手県信用保証協会が行う創造的中小企業支援資金についての信用保証契約の履行に関する損失補償ほか37件について、債務を負担しようとするものであります。
 第3条地方債は、道路新設改良事業ほか43件について、限度額、起債の方法、利率及び償還の方法を定めようとするものであります。
 第4条一時借入金及び第5条歳出予算の流用は、それぞれ所要の措置を講じようとするものであります。
 議案第2号から議案第12号までは、平成21年度岩手県母子寡婦福祉資金特別会計予算ほか10件の特別会計予算でありますが、これらは、それぞれの事業計画等に基づき、その所要額を計上したものであります。
 議案第13号から議案第15号までは、平成21年度岩手県立病院等事業会計予算ほか2件の公営企業会計予算でありますが、これらは、それぞれの事業計画に基づき、収益的収支及び資本的収支の所要額を計上したものであります。
 議案第16号から議案第21号までの6件は、建設事業等に要する経費の一部を受益市町村に負担させることに関し、それぞれ議決を求めようとするものであります。
 議案第22号から議案第41号までの20件は条例議案でありますが、これは、岩手県職員定数条例、岩手県の事務を市町村が処理することとする事務処理の特例に関する条例等の一部を改正しようとするものであります。
 議案第42号は、北上市と奥州市の境界変更に関し議決を求めようとするものであります。
 議案第43号は、全国自治宝くじ事務協議会への岡山市の加入並びにこれに伴う全国自治宝くじ事務協議会規約の一部を変更することの協議に関し議決を求めようとするものであります。
 議案第44号は、包括外部監査契約の締結に関し議決を求めようとするものであります。
 議案第45号は、ひとにやさしいまちづくり推進指針の変更に関し議決を求めようとするものであります。
 報告第1号は、職員による自動車事故に係る損害賠償事件に関する専決処分について報告するものであります。
 報告第2号は、道路の管理に関する事故に係る損害賠償事件に関する専決処分について報告するものであります。
 以上のとおりでありますので、よろしく御審議の上、原案に御賛成くださるようお願いいたします。
〇議長(渡辺幸貫君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後2時11分 散 会

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