平成20年12月定例会 第8回岩手県議会定例会会議録

前へ 次へ

〇22番(高橋雪文君) 自由民主クラブの高橋雪文でございます。
 以下質問をいたします。当局の元気で明瞭な答弁をよろしくお願い申し上げます。
 達増知事は、岩手の現在の危機を、県民の力、草の根とも強調しますが、その民力を結集して希望に変えるとさまざまな場面で表現をされております。危機を希望に変えるは、まさに達増県政の施策の柱であり、県民のだれもが願っていることでございます。
 しかしながら、達増県政下における基本的な情報を得るにも、人口減少は歯どめがかからず、毎年1万人規模で人口減少が続き、140万県民と声高に言っている人口も135万人を切る状況にあり、また、雇用の面でも、増田県政下の平成18年度の有効求人倍率は0.78に対し、平成20年10月は0.49と、雇用環境は悪化していると言えます。
 医師確保の分野でも、医師総数は増加しているものの、住民への公平な医療提供にはいまだほど遠く、今議会では、県立の1病院5地域診療センターを無床診療所化する計画が示され、地域によって医療提供の低下を実感しているというのが本音ではないでしょうか。
 そして、県民所得にしても、実際の個人所得が低下傾向にあるのにもかかわらず、企業所得がふえるとして順調に向上していると説明がありますが、県民の実感には離れた指標になっており、県民の実感に即した指標に変えるべきであると何度か議会で主張してきたところでございます。北上の東芝フラッシュメモリー工場の着工が見送られたことや県内景気の実情を想定すると、そもそも全体の県民所得向上も疑わしくなっている状況にあると感じます。
 そこでお尋ねいたしますが、それぞれの危機についてどのような現状認識をして、把握されておられるのでしょうか。
 この危機に対して、県当局の皆さんは努力を重ねて取り組んでいるのはわかります。しかし、その危機についての認識を庁内で共有しているかと考えると、甚だ疑問があります。さらに、達増知事の危機を希望に変えるという基本的な哲学が、民主主義や草の根という言葉とともに、その主体が県民に転換され、よくわからなくなっているというのが実感であります。
 どこに主体があるのか。それは、メッセージを送る知事に、その主体と責任があるのではありませんか。危機のときこそしっかりとしたリーダーシップをとって、率先垂範しながら難局に立ち向かうことで、達増知事の哲学も共有され、県民もその方向に向かっていけるのではないでしょうか。
 今は、県庁も県民も危機を十分認識していませんし、希望はいまだ遠くにあると感じますが、知事の御所見をお聞かせ願います。
 知事は、今の政権交代を掲げる民主党の動きに合わせて、民主党の選挙に向けた活動に率先して行動している姿があります。知事のこれまでの歩みを考えれば、国政に対する思いは理解できますが、しかしながら、今、知事に求められているのは、岩手の危機をどのように希望に転換していけるのか、その道筋をしっかり示すことであり、国政の政権が変わる、変わらないの話ではないと感じます。
 県民が知事に期待する仕事は何だとお思いでしょうか、その御所見をお聞かせください。
 1972年のローマクラブの提言に成長の限界というものがあります。地球は有限であり、資源も有限であること、そこから人の生き方や経済成長を考えると、21世紀前半にはピークアウトを迎えるというものであります。
 石油資源のピークアウトは有名ですが、環境問題においても、現在より2度以上温暖化が進むと後戻りできない危険な状況になると言われ、さきに日本で行われたサミットでは、2050年に世界の温室効果ガスを半減させるため、世界全体の温暖化ガス排出量を減少に転じさせる時期の合意形成を目指したところであります。
 私は、経済の分野でも、今回のサブプライム問題から始まる一連の流れが、これまで信じて歩んできた右肩上がりの資本主義経済のピークアウトが近づいている予兆であると感じるところであります。本当の危機とは、世界的な動向の中で大きく変革が迫られており、近い将来予測されるピークアウト後の新しい政治のあり方や人間の生き方を模索する必要があると感じます。
 現在の国政で行われている政治は、大局的な議論を離れ、短期的に国民を満足させる選挙のための議論に終始している感があります。だからこそ、地方の政治こそ、大局的な視野に立って新たな対策を講じる改革に着手すべき時期になったと感じますが、いかがでしょうか、知事の御所見をお聞かせください。
 次に、雇用問題について質問いたします。
 総合雇用対策局が設置されていた平成18年度の有効求人倍率は0.78。希望王国いわてを掲げて4大緊急課題の一つに雇用拡大を掲げ取り組んできた中での有効求人倍率は、0.49と大きく低下しているところであります。
 11月20日に行われた岩手県雇用対策推進会議では、有効求人数が減少する一方で、有効求職者が拡大。県が示す目標に対し、ほぼ全部の項目で改善の目標値を下回り、明らかに雇用関係は低下していると言わざるを得ません。
 県は、10月末現在の雇用状況を受け、どのような所見を持っておられるのか、まずお聞かせください。
 また、新規高卒就業者の県内就職促進の中で、近年、県内就職が極端に低下している現状がありますが、その理由を、何らかの理由ということで非常にあいまいな表現にして、希望の変更理由を高校生の責任に転嫁しているように感じたのですが、それでは県はあくまで他人事で、この問題の解決にはならないと強く感じます。今の状況は、かつて集団で都会に出稼ぎに行った昭和20年、30年代の状況と余り変わらないと感じます。
 地元で暮らし、地元で働きたい高卒就業者に、どのような施策をもって取り組むのかお知らせください。
 若年者雇用のためにジョブカフェ事業を県単事業として取り組んでいるところであります。ところが、人口流失は歯どめがきかず、特に20代から30代の若年者層がその中心であり、改善の兆しが感じられません。
 そこで、ジョブカフェの主な役割と実績、ジョブカフェ事業と人口流失とを関連させた場合、どのような傾向が見られるものなのか。さらに、若年者の人口流失にジョブカフェ事業が何らかの役割を発揮できないものかお知らせください。
 県内の人口流失の最大原因は、雇用の低下と報酬の格差にあると言えます。特に雇用が満たされなくなっている本県において、雇用をどのように維持し拡大していくかが問われております。その対策の方向性をお示しいただきたいと思います。
 岩手は、食料の供給県を目指し第1次産業に力を入れております。この中で近年、後継者育成が大きな課題になっているのは周知のとおりであります。まずは、これらの後継者育成がうまくいかない原因をどのように把握しておられるのかお知らせください。
 この後継者に、雇用を求める若年者層を就業の選択肢として与える制度を構築してみるべきではないかと感じますが、いかがでしょうか。
 代々先祖から受け継がれてきた大切な農地などを他人に譲渡することは、容易に認められないことだと思います。しかし、県や農協などが責任を持った一つの会社をつくり、その会社で若年者などを雇用し、農地を管理運営するシステムを構築しながら維持することを真剣に考える時期に来ていると思います。
 農地提供者には年金がわりの収入を支払い、会社としては雇用を確保し農地を守る。問題は費用対効果でありますが、将来的には自主独立を目指すとして、県や民間企業などが財政支援を行いながらモデル的な取り組みを支援することはできないものでしょうか。将来的に食料難が指摘される中、自給率向上を目指す取り組みとして、積極的な新しい岩手型第1次産業の育成手法を手がけることが必要だと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、雇用の確保の観点から、建設業界が危機感を強めている91社問題について質問をいたします。
 まず、91社問題で、無罪であるならばその危惧は要らないわけですが、仮に有罪となった場合、現行の規定のままでは、12カ月の県公共事業入札のペナルティーを実施することとしておるところでございます。この場合、県内建設業者でどのようなことが想定されるものでしょうか。また、倒産や雇用の減少など、どの程度の影響があるものなのでしょうか。
 県工事が12カ月の入札禁止を決めた場合、市町村でも同様の措置をせざるを得ないという話があります。各自治体の対応の問題でございますけれども、県はどのように指導されるのでしょうか、まずは質問いたします。
 私は、個人的に、談合は罪だと思いますが、県内経済に大きな影響を与え、地元企業が経営難に陥り、雇用の受け皿が大きく低下することは回避すべきことと思います。当然、県として企業の一部を優遇することは、自由競争が原則の経済活動の中では好ましいものではないことはわかります。
 しかし、談合が認められた場合、今の12カ月という入札禁止期間では、運転資金や資産が低下している中で、企業の倒産の可能性は十分あると感じます。それでは、これまで地域に貢献し、雇用の受け皿として存在していた企業価値がゼロになり、それこそ岩手の損失になると感じます。企業をゼロから立ち上げるより、これまで経験がある企業を再生、継続させることのほうが労力は少なくて済むはずであります。
 そこで、増田知事時代は、増田知事県政下の手法としてこのルールを位置づけ、新しくなった達増知事の県政下では、新たなペナルティーのあり方を議論し議会に提出してもよいのではないかと感じますが、いかがでしょうか。
 例えば、入札禁止期間を短縮して、そのかわり取締役の報酬を自主的に引き下げて、県民に自主的な謝罪の意を示す方法を選択させるとか、有罪となった企業に、ある一定期間の地域貢献によるボランティア活動を義務化させるなど、雇用に配慮しながら新たなペナルティーの選択肢を与えることも考えるべきではないかと思いますが、雇用の確保の観点から、新たなペナルティーの作成をどのように考えるかをお聞きいたします。
 この項の最後に、今議会では、緊急雇用対策本部を速やかに設置し対応するとの表明がありました。そのことについては何度となく要望を重ねていることでもあり可とするものでありますが、有効求人倍率などの雇用の目標をどのように設定しようとしておられるのか、また、財源の見通しが限りなく厳しい状況下で、どのように財源を確保し、雇用を確保しようとするのでしょうか。総合雇用対策局の時代は国からの支援がある中での取り組みでございましたが、今回の対応についてお示しいただきたいと思います。
 次に、パンデミック対策についてお聞きいたします。
 14世紀のペスト、19世紀のコレラ、1918年から19年にかけて全世界で2、500万人以上の死者を出したスペイン風邪など、世界的な流行をもたらすパンデミックという問題が指摘されているところであります。今補正予算でも、新型インフルエンザ対策のために、患者入院医療機関の院内感染を防ぐ目的のために、整備費補助5、663万6、000円を計上したところでありますが、その対策はいまだ十分ではないと言えます。
 近年、東南アジア諸国で発生している鳥インフルエンザは、現在、6段階あるパンデミックフェーズ3の段階にあると言われておりますが、ことし1月には、中国で人から人に感染した疑いがある事例が報告されるなど、ウイルスの亜型による変異によってパンデミックは時間の問題であると指摘されております。
 概して日本人はこれらの危機には余りにも疎いとされておりますが、それでも厚生労働省は、強毒性の新型インフルエンザによって国内で4人に1人が感染し、最大で2、500万人が医療機関を受診、最大で約64万人が死亡すると推計しております。11月20日に行われた厚生労働省の専門家会議では、感染者が一人でも発生した場合、都道府県単位で当該自治体のすべての学校、幼稚園を閉鎖するなど、これまでにない緊急の対策ガイドラインをまとめたところであります。この意味するところは、周期的なパンデミックの時期に当たること、新型インフルエンザがかなりの強毒性があること、そして日本国内では、他先進国と比べて対応におくれをとっていることを示すものであり、危機意識を持った早急な対策が必要な時期であると言えます。
 そこで質問いたしますが、県のパンデミック対策はどうなっているのか。今回は鳥インフルエンザの亜型が想定されておりますが、それ以外の対策はどうなっているのでしょうか。今回の補助ですが、実際に活用する段階では適正利用が必要ですが、機材、備品購入のみで満足しているように感じるところであります。東京都や和歌山県では対応訓練を行い、保健所や医療機関の連携と関係者の対応力を向上することをねらっておりますが、岩手県ではどのような対応を行うのでしょうか、お知らせください。
 また、プレパンデミックワクチンによる予防は、量的にも、予測的にも限界があり、県民の安全を保障するものではないと感じております。現在のところ、タミフルに効果があるとされていますが、その備蓄状況は県民を守ることができるレベルなのでしょうか。また、どのように計画を立てて最悪の事態に備えるのでしょうか。インフルエンザの中にはタミフル耐性のウイルスも発見されているところであります。ウイルスの変異の進化と人類の英知との戦いとも言えますが、自己責任としてパンデミックから逃れることも必要になっていると言えます。不必要な恐怖を与える必要はありませんが、県民に対する情報公開や告知の徹底、さらには自己防衛の指導など、県は責任があると思いますが、いかがでしょうか。県独自のプロジェクトチームを結成すべきとも思いますが、いかがでしょうか。
 次に、県による不正経理問題について質問いたします。
 会計検査院が任意に選んだ12道府県の国庫補助事業を調査した結果、岩手県でも不正経理が見つかり、全庁調査を行った結果、需用費で、預け、差しかえなど明らかに不正と思われる会計処理方法が、総務部、環境生活部以外のほとんどで見つかり、県民の信頼を大きく低下させております。
 そこで質問しますが、10年ほど前、県と議会では食糧費問題にかかわる不正支出問題が議論されましたが、その対処についてはどうなったのでしょうか、改めてお聞きしたいと思います。あわせて、今回の不正経理との同一部分と異なる部分をどう認識しておられるのでしょうか。
 食糧費問題では、使途不明の部分について、何人かの議員から裏金としての指摘があったようでございますが、実際、消耗品などは、十分な実態がわからないにもかかわらず、業務で消費したと当局側の説明がありましたが、その反論の根拠は非常に低いものと言わざるを得ません。また、発注基準もあいまいで、本当に必要な物品なのか、自宅への持ち帰りなど私的流用に当たらないのかなど推測がされます。特にパソコンや本棚、机など、本来、県の備品として計上、適正管理しなければならない項目も散見されますが、その管理についてどのように行われていたのでしょうか、質問いたします。
 また、需用費のうち、消耗品など、今回の不正経理の項目で示されたものと、通常の消耗品の関係の違いをお示しください。需用費で消耗品などを計上していると思いますが、その総額における不正経理部分の割合はどうなっているのでしょうか。需用費の中の消耗品と、今回の不正経理の中での消耗品との関係についてお示しください。
 また、部局では、総務部と環境生活部では翌年度納入の実態があったものの、いわゆる預けなどの項目はありませんでした。このほかの部局との違いは何なのでしょうか。裏を返せば、長年にわたり常態化していた部局では、経理における継続的な指導があったと思いますが、どうだったのでしょうか。
 また、今回の当局の基本スタンスは、その責任の所在を会計担当者や担当課長以下の責任としているところであります。これら歴代の担当者が独自の判断でやっていたとは思われません。このことに関し、改めて責任の所在はどこにあるのか、お聞きいたします。
 今回の問題で、私的流用が見当たらないとする中で、最大の問題は文書の偽造であると言えます。食料の不正表示、偽装などが社会問題化されておりますが、それを指導する立場の行政が文書を偽造していた点にあると言えます。公務員としての基本的な職務を果たしていないこと、社会的な道義を逸脱していたことは大きな罪であると言えます。その点について知事はどう考えておられるのか、改めて県のトップリーダーとしての御認識をお聞きいたします。
 次に、職員憲章について質問いたします。
 9月議会の総括質疑の中で、職員憲章を本年度中に作成することが明らかになりました。教職員の不祥事、不正経理の問題など、公職にある者の哲学や目指すべき職員像を示す憲章は必要だと感じます。
 そこで、この岩手県として、職員憲章はどういった目的で示されるべきと考えておられるのか、その御所見をお聞きいたします。
 また、憲章とともに職員の人材育成や職場のあり方などを示した基本方針などを作成した自治体もあるようであります。県議会では、議会のあるべき姿を模索しながら、岩手県議会基本条例を議員発議で提案しておるところでございます。今後、職員のあるべき基本的な姿や倫理などを規定する基本方針を策定すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 これから地方分権を目指す職員は、地域の担い手としても力を発揮していただかなければなりません。地域の町内会や消防団活動にも積極的に関与していく姿が求められております。人材確保に困っている、これらの日本のすばらしい組織に積極参加を促進する内容も必要だと思いますが、御所見をお聞かせいただきたいと思います。不景気感が高まり、議会や当局に対して不満が一部あるようでありますが、地域に積極的に関与することによって地域の要望にこたえ、地域の声を聞きながら新たな政策を講じることもできます。地域に根差した県職員の指針となる憲章や職員基本方針を早急に作成していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、教育について質問いたします。
 近年、犯罪の数は少なくなっているものの、凶悪な犯罪が低年齢化し、社会に無差別に被害をもたらす事件が多発しております。その余りにも自己中心的で社会性を感じられない犯罪者を見るにつけ、日本の教育の無力さを感じざるを得ません。どうすれば、これらの問題に教育機関や行政は貢献できるのでしょうか、まずは御所見をお聞かせください。
 秋葉原の無差別事件の理由は、社会への不満とともに親に対する当てつけがその理由であったとされております。親と子という当たり前の家庭環境が大きく崩れていると感じざるを得ません。人としての生き方を伝えるのは、社会や学校などもありますが、その責任者の第一は親であることは言をまちません。昨今、個人の自由や権利を強調して教えてきた社会風潮を改善し、自由に対する責任と権利に対する義務を教えるとともに、家庭教育を見直す動きが活発になってまいりました。地域でのおやじの会が各地域で設立されるのも、こうした動きからだと言えます。
 そこで質問いたしますが、教育委員会において家庭教育をどのように位置づけているのでしょうか、どのような方針で推進しようとしているのか、まずはお知らせいただきたいと思います。また、おやじの会の設立と取り組みに対する今後の支援についても、あわせてお知らせください。
 親学という分野では、親が変われば子供が変わる。まずは親が学ぶことが大切であるとしております。また、子育ては成長段階に応じて親としての役割も接し方も変わってくると、親の成長を期待するカリキュラムを提唱しております。岩手県では、親に対し、どのような指導で、どのように変わっていくことを求め、どういう貢献を果たしてほしいと考えているものなのでしょうか、その御所見をお聞かせください。
 また、いわて型コミュニティ・スクール構想を提唱されておりますが、地域の大人のかかわり方をどのように推進しようとするのか。また、教育的なねらいについても改めてお聞きしたいと思います。
 地域の素材を子供たちに伝え、教育効果を発揮することも求められております。その中で、郷土の誇りと生き方を伝える先人教育の普及は、教科書では学べない多くの気づきを子供たちに伝えることができます。盛岡市教育委員会では積極的に先人教育を推進し、独自に作成した副読本盛岡の先人を活用して、偉人伝を読みながらさまざまな学習効果を期待して取り組んでいるところであります。大変すばらしい試みですが、ほかの地域では、財政的な問題などもあり、十分に取り組めていないと感じています。各地域の先人教育がどのようになっているのか。また、これほど人の生き方や、よい生き方の価値観が失われている時代に、岩手県として積極的に郷土の先人を検証し、子供たちに示唆を与える先人教育にもっと力を入れるべきだと感じますが、いかがでしょうか。
 あわせて、食や自然が豊かな岩手において独自の環境教育が必要だと感じます。盛岡市はサケが遡上する珍しい市ですが、それには、もともとある自然の豊かさや自然を保護する取り組み、そして北上川の清流化の歴史など県民の努力があるからこそであります。そのような素材があるにもかかわらず、岩手の自然と食料供給県としての誇り、さらには温暖化対策などで環境問題を改善するために世界じゅうが取り組んでいる中で、日本の優位性や役割をしっかり子供たちに伝える取り組みがなされているとは思えません。
 そこで、21世紀の積極的な担い手を育成するために岩手独自の環境教育の取り組みが必要だと感じますが、いかがでしょうか。県議会は議員発議で水を守り育てる条例を策定中でありますが、そうした機運を生かしながら、学校教育や地域活動の中で取り入れるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 最後に、いじめについて質問いたします。
 文部科学省が公表した平成19年度の本県のいじめの認知数は、前年度から45%減少して、840件と減少しているようであります。しかしながら、実際は把握が困難であり、ネットなどを媒体とした陰湿ないじめが後を絶っていません。いじめは卑怯な行為であることを明示し、なくす努力が必要です。県が把握している実態について、また、今後の対策についてお聞かせください。
 以上で質問を終わらせていただきます。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 高橋雪文議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、危機の現状認識についてでありますが、私は、知事就任後、積極的に県内各地を回る中で目の当たりにした県民所得の低迷や医師不足などが、県民の皆さんの暮らしや仕事を圧迫している現状を踏まえた上で、危機を希望に変えていくための取り組みを盛り込み、いわて希望創造プランを策定したところであります。また、このプランに盛り込んだ私の思いや施策の方向性等については、県政懇談会やさまざまな講演の場などを通じて県民の皆さんに伝えるとともに、職員に対しても、対話や講話等により意識の共有に努めてきたところであります。
 一方、県民生活を取り巻く環境は、議員御指摘の最近の有効求人倍率や人口動態の状況等が示すとおり、金融危機に伴う世界規模での経済の減速などの影響により、プラン策定時と比較して、さらに厳しさを増していると認識しております。このため、いわて希望創造プランに掲げた県民所得、雇用環境、人口転出、そして地域医療の、本県が直面する四つの危機を克服することがより一層重要になってきていると考えており、今後においても、プランに盛り込んださまざまな施策を着実に推進し、県民の所得と雇用、安全な暮らしを守るということに全力を傾けていきたいと思います。
 なお、議員は質問の最後のところで、民主主義や草の根という言葉とともにその主体が県民に転換され、よくわからなくなってきているというのが実感というふうに述べられましたが、これは聞き捨てなりません。昨年の知事選挙において、私は、県が市町村と協力、連携しながら、草の根の県民の暮らしや仕事の現場により直接入っていって、県民の草の根の知恵と力を総結集しながら、県が、地域コミュニティでありますとか、また広域でありますとか、市町村の枠を超えたところでさまざまな働きかけを行って、県民とともに危機を希望に変えるという考え方を示し、多くの支持をいただいて、そして県民の負託を得たところであります。
 次点となった候補者の考え方と比較しますと、今ある市町村に任せ、県は市町村に対するサポート役に徹すればよい、市町村がちゃんとやっていけばいいんだという、今ある市町村の枠組みを最優先する考え方が示され、それについて少なからぬ市町村長が賛意を、支持を示していたようでありますけれども、しかし、県民の間に支持は広がりませんでした。議員には、ぜひ、民意というもの、そして選挙というものを大切に考えていただきたいと思います。
 議員は質問の最後のところで、今は庁内も、県民も危機を十分認識していませんとおっしゃいましたけれども、どこをどうすれば、今の岩手において県民が危機を十分認識していないという見解が得られるのでありましょうか。岩手の県民の危機意識、その叫びやうめきが議員には聞こえないんでしょうか。ぜひ、議員には、草の根の中に積極的に入っていって県民の声に耳を傾けていただきたいと思います。将来ある若い政治家である議員であるからこそ、申し上げさせていただきたいと思います。
 次に、2番目の質問でありますが、知事は、今の政権交代を掲げる民主党の動きに合わせて民主党の選挙活動に率先して活動している姿がある。しかしながら、今、知事に求められているのは、岩手の危機をどのように希望に転換していけるのか、その道筋を示すことであると感じるということをおっしゃいましたけれども、麻生総理が岩手に来ることはいいんですか。今、大変な危機に直面している日本の総理大臣、行政の長である麻生総理が、今、岩手に来て政治活動をすることについては、これはいいんですか。もし、行政の長であっても、与党の応援をするのはよくて、野党の応援をするのが悪いというのであれば、これは民主主義の基本原則を踏みにじる独裁主義の考え方です。もちろん、麻生総理が岩手に来たことが悪いというのであれば、それは一つの考え方だと思いますけれども、私は、麻生総理が、今、岩手に来ることは悪いことだとは思いません。なぜならば、危機の時代にこそ、行政のあり方とともに政治のあり方が問われるからであります。私は、民の声、県民の声、あるいは国民の声にしっかり耳を傾けて、生活が第一という考え方を推し進めようとする、そういう政治活動に対して支援を惜しむものではありません。
 なお、行政の面で県民の私への期待についてでありますが、私は日ごろから、知事の仕事は知ることと申し上げていますように、岩手についてきちんと把握し、説明できることがリーダーとして一番重要なことであると考えています。岩手が今どうなっているのか、県民が何に困っているかということがしっかりとわかり、どう対処すればそれを克服できるかを考え、県職員はもとより、県民の皆さんの総力を結集して問題解決に当たるとともに、対外的にはトップセールスや実効性ある国の政策形成を促すための国への提言、要望を行うなど、県民の代表として先頭に立って行動していくことが知事の務めであると考えております。
 次に、大局的な視野に立った改革についてでありますが、世界は今、温暖化や食料・エネルギー問題、貧困などの地球規模で解決すべき課題に直面しているほか、社会、文化、産業、経済などさまざまな活動において、国家や地域などの境界を越えた結びつきが強くなっています。こうした中にあって、地方が生き残り、豊かで生き生きとした社会を実現していくためには、これまでの発想を変え、従来の国対地方から、世界の中の地方という考え方に転換するとともに、グローバルな視点に立って、それぞれが持つ多様な資源や価値に磨きをかけ、国際的な貢献も含めて直接世界と結びついていくことが重要と考えています。
 私は、岩手には、高品質で安全・安心な農林水産物を初めとして豊富な人材資源とものづくり産業の集積、さらには自然環境や平泉に代表される歴史、文化のほか地域コミュニティの強い結束力など、世界に誇れるすぐれた潜在力があり、これらを最大限に活用して、芸術や文化にわたる創造的な産業を育成、強化することにより地域を活性化し、世界を舞台に活躍することができるものと考えています。こうした考えのもとに新しい長期計画を策定していく中で、10年後の岩手のあるべき姿、岩手の将来を牽引する希望の芽を育てる方策などについて議論を重ね、長期的な視点に立って戦略的な施策を検討してまいります。
 議員は、ローマクラブの成長の限界を引用されましたが、確かに、資源、エネルギー、食料は無限ではありません。しかし、文化、芸術の成長には限界はありません。それは、人間の成長には無限の可能性があるからです。物質中心の経済成長路線ではなく、文化、芸術、そして世界とつながっていくことの無限の可能性をベースにした人間成長路線を岩手から発信していきたいと思います。
 しかしながら、最低限の必要な物質的経済基盤の確保は喫緊の課題であります。現在の雇用環境についてでありますが、世界的な金融危機の影響を受けた企業業績の悪化等に伴い有効求人倍率が低下し、非正規雇用の雇いどめや新卒高校生の求人の取りやめが発生するなど、県内の雇用情勢は急速に悪化しています。今後、雇いどめや新卒採用の抑制の動きがさらに広がる可能性もあることから、県民の安心実現のため、可能な限りの取り組みを緊急に進めていく必要があるものと認識しています。
 そして、雇用の維持、拡大の対策についてでありますが、雇用の維持、拡大が喫緊の課題でありますことから、私が先頭に立ち、あらゆる機会をとらえて、関係団体や企業に、非正規雇用の雇いどめの自粛や新卒採用の継続について要請してまいります。さらに、国と共同で地域共同就職支援センターを年度内に立ち上げ、Uターン就職希望者や製造業における正規雇用希望者の就職を積極的に支援してまいります。また、新規雇用の拡大については、国の今後の補正予算に盛り込まれる見込みであるふるさと雇用再生特別交付金の活用を通じて、地域ブランド商品の開発や販路開拓など、本県における優位性や特色を生かした新たな雇用の場の創出に努めてまいります。
 次に、いわゆる91社問題にかかわる市町村への指導についてでありますが、この問題にかかわる審判が継続中であり、現時点では最終的な審決の内容を予測することは困難な状況にありますことから、県としてどのような対応を行うことになるかも未定であります。なお、入札契約事務は各市町村の自治事務であり、審決の結果への対応も各市町村が判断することとなりますが、県としては、指名停止等の対応について、市町村に特段の指導、助言等を行うことは考えておりません。
 指名停止のあり方についてでありますが、現時点では審決の結果が不明であり、具体的な対応については、審決の結果を踏まえて決定することになるものと考えています。雇用対策や経済対策は、建設業に限らず重要な政策課題として早急に取り組みたいと考えておりますが、指名停止措置は、雇用対策や経済対策とは別に、ルールに従って公平公正に対処することが求められるものと理解しています。
 次に、雇用の目標設定などについてでありますが、現時点では、非正規雇用の雇いどめの一層の拡大が懸念される状況であり、まずは雇用の維持、確保に最優先で取り組むことが重要と考えています。雇用情勢は刻一刻厳しさを増しており、その状況を的確に見通していくことが肝要であります。その動きを見きわめながら、新たな目標設定の検討を進めていくべきと考えております。今後、国の補正予算でふるさと雇用再生特別交付金の創設などが見込まれており、こうした制度を活用するとともに、県としてもできる限りの施策を盛り込んでまいります。
 食糧費問題への対処についてでありますが、食糧費問題については、平成10年2月に取りまとめた調査結果において1億5、043万円余の不適正な食糧費支出があることが確認され、三役の給料減額措置、関係職員の懲戒処分等を行うとともに、不適正支出額と利息相当額を、職員で組織した食糧費返還会を通して県に返還しました。
 この食糧費問題と今回の需用費等の問題については、会計ルールに反する事務処理であることや、事実と異なる支出関係書類が作成されているケースがあること、また、内部牽制が十分に機能していなかったことなどが共通点として挙げられます。
 一方、食糧費問題の際には、職員同士の内部での懇談、いわゆる官官接待や、配付先が確認できなかった食事券の購入などに使われていたほか、出張で自宅に宿泊したケースへの宿泊旅費の支給も確認されるなど、公金を充てることができない経費への公金支出という問題であったのに対しまして、今回の問題においては、需用費については公的に使用される物品の納入に充てられており、また、賃金と旅費については、支出内容は問題がなく、国庫補助の過大な活用という問題であった点が、かつての食糧費問題とは大きく異なっている部分であります。
 次に、預けなどが常態化した原因と責任の所在についてでありますが、全体的には、公共事業を担当するなど比較的多額の事務的経費を使う業務を行っている所属において問題事例が生じている傾向が感じられますが、平成14年度以降に不適切な事務処理が発生した所属の中にも、限られた年度だけに発生しているケースや、組織改編などの特別な事情のもとで発生しているケースなどもあり、発生状況はまちまちであります。
 こうした問題発生の状況や、関係職員からの2度にわたる聞き取り調査の結果などから、今回の問題は、統一的な指示等に基づいて一斉に不適切な事務処理が行われていたという実態ではなかったものと考えています。とはいえ、不適切な事務処理が長期間、複数の部局で行われてきたことは、組織の意識や風土、前例を含めた意味での予算や経理の仕組みなどに問題があったことを示しておりまして、これらを踏まえれば、管理監督的な立場にあった幹部職員の責任も大きいと考えられます。
 したがって、不適切な事務処理を直接担当した実務担当者や決裁にかかわったその上司だけではなく、県組織全体における管理監督者も含めて、広く責任があったものと感じているところです。
 次に、支出関係文書の作成に係る問題点についてでありますが、今回確認された不適切な事務処理は、会計ルールに違反するものであると同時に、事実と異なる文書が用いられる点など、特に公正さが求められる公務員の業務執行としてあってはならないものであり、行政に対する信頼を損なう大きな問題であると考えます。
 こうした不適切な事務処理を二度と起こさないように、再発防止策を徹底するとともに、組織の意識と風土を刷新していかねばならないと考えており、県政の責任者として、私が職員の先頭に立ち、職員とともに全力を尽くして取り組んでいきたいと思います。
 次に、職員憲章についてでありますが、私は、本県がより質の高い県民本位のサービスを提供していくためには、職員と私とが心を一つにして意識を共有するとともに、職員が物事を正しく考えていくための県職員としてのあるべき姿や行動基準として職員憲章を策定する必要があると考えています。
 本県には、倫理条例やコンプライアンスマニュアル等が既にありますことから、この憲章は、さまざまな要素を盛り込んだ網羅的でボリュームのあるものとはせずに、職員が日々携行し、こうありたいという姿を常に意識できるようなわかりやすい内容のものにしたいと思います。
 また、お尋ねの職員の消防団活動等への参加については、職員が自由な立場で自主的、自発的に参加すべきものでありますことから、職員憲章の中に具体的に規定することまでは考えておりませんけれども、地域社会の一員として地域活動に積極的に参加し、地域課題の解決に取り組むことは望ましいことであり、社会貢献活動への参加を促す表現などを盛り込むことを検討していく考えであります。
 職員憲章は、職員がみずから主体的につくり上げることによって、その実効性が確保されると思いますので、私の考え方を一方的に示すのではなくて、職員から意見を募集しながら作業を進めているところであります。年内を目途に策定し、新年からこの憲章のもと、職員が新たな心構えで仕事を始めることができるようにしたいと思います。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔「議事進行」と呼ぶ者あり〕

前へ 次へ