平成20年6月定例会 第6回岩手県議会定例会会議録

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〇35番(樋下正信君) 自由民主クラブの樋下正信であります。
 まず、この6月14日に発生いたしました岩手・宮城内陸地震におきましては、県内でも死者2名と多くの重軽傷者の方が出たほか、大規模な土砂崩れ、建物、道路や橋などに甚大な被害が発生いたしました。改めて、被害を受けられました皆様に心よりお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。私も、議会の一員として尽力してまいりたいと考えております。
 では、通告に従い順次質問させていただきます。
 まず、知事の政治姿勢についてお伺いをいたします。
 達増知事は、知事就任以来、行政の長として、議会や市町村などへの対応には、不偏不党、公正中立で臨み、政治信条や政治姿勢で差をつけないと述べ、一方では、行政の中立を侵さなければ、政治的には自由にやらさせてもらうと述べ、行政の長と政治家の二つの顔を使い分けると明言してこられました。しかし、岩手県が抱える行政課題は、危機的な財政状況、医師の確保、地域経済の衰退、社会基盤の整備、県内の地域格差の解消など難問が山積しております。さらにまた、今回の地震被害の復旧には、相当多額の費用がかかるものと思われます。これらの危機的な状況を打開するためには、特に財政力の弱い本県にあっては国の全面的な協力が不可欠であり、政治家としての知事と政府・与党との太いパイプがあれば、本県にとっても極めて有益と考えます。
 そこでお伺いしますが、知事は、今回の災害を契機に、これまでの政治姿勢を見直し、知事在任中は政治的な面においても党派を離れ、中立的な立場になるお考えはないでしょうか、知事の御見解をお伺いします。
 また、知事のリーダーシップについてでありますが、民間企業では、難しい場面ではしばしば経営者自身が交渉に臨み、トップセールスにより局面を打開することがあります。他県でも知事がリーダーシップを発揮し、みずから政府・与党との交渉や企業誘致、地場産品の販売促進などに当たり、成功している事例が多く見られます。一方、本県の場合は、県民から見て、知事自身のリーダーシップがわかりにくいとの声もあります。この難局を打開するためには、今こそ知事の強力なリーダーシップと率先垂範が必要と考えます。
 達増知事は、トップとしてのリーダーシップをどのようにとらえているのでしょうか。御自身の具体の取り組みとあわせて、知事の認識をお伺いします。
 次に、広域振興局体制への再編についてお伺いします。
 県は、去る6月3日に、広域振興局体制の整備の基本的考え方の素案を公表したところです。平成18年度の地方振興局の再編、すなわち、県南広域振興局の設置の際に、県は、おおむね10年後を目安に広域振興圏ごとに一つの広域振興局を設置することとしておりましたが、現在は、移行時期を平成22年4月としています。広域振興局体制への移行は、全県的にも地域においても影響が大きい改革です。また、平成18年の再編後2年が経過し、県南広域振興局も徐々に業務が軌道に乗ってきたところと推察します。そのような状況下で、平成18年の再編後、4年しか経過していない平成22年4月に、なぜ急いで広域振興局体制への移行を進めようとしているのでしょうか、知事の考え方をお伺いします。
 今回示された素案は、基本的な方向性しか示されていないように思います。とりわけ、県民の関心は、どこに本局または行政センターを置くかであろうと思われます。県は、県民の関心の高い本局、行政センターの設置場所を示すべきと考えますが、県の考え方をお示し願います。
 次に、観光振興についてお伺いします。
 まず、本県観光にとって重要な意味を持つ平泉世界遺産登録についてであります。
 平泉の文化遺産については、現在、7月の世界遺産委員会に向け、国、県、地元が一体となって登録に向けた取り組みを行っており、関係各位の努力に敬意を表するとともに、本年度の登録を切に望んでいるところであります。
 私は、今回、ブラジル岩手県人会創立50周年記念式典への出席等のため、ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、アメリカ等を訪問いたしましたが、その途中に世界自然遺産イグアスの滝を視察する機会がありました。イグアスの滝は、世界3大瀑布にも数えられ、その雄大さと迫力に強く感動いたしました。平泉の文化遺産も、世界遺産として同様な価値を持つものと確信しておりますが、なお登録は予断を許さない状況との声も聞かれます。そこで、逆転登録に向けた県の取り組み状況と現時点での感触について、知事の御所見をお伺いします。
 次に、平泉効果の県央部への波及策についてですが、先月のイコモスの勧告は我々にとっては残念な内容でありましたが、県内外の平泉の文化遺産への関心を高める効果もありました。世界遺産委員会での判断にかかわらず、全国から平泉エリアに多くの観光客が訪れることが予想されますが、平泉エリアを訪れた観光客に県内各地を回遊していただき、地域経済を活性化させるためには、盛岡を中心とした県央部に来ていただき、ここを起点として県北や沿岸地域を訪れていただくことが有効と考えますが、県はどのようにして平泉効果を県央部に波及させようとしているのか、お伺いします。
 次に、来月から9月までの3カ月間実施するいわて・平泉観光キャンペーンについてですが、昨年の北東北デスティネーションキャンペーンについては、期間中の観光客の入り込み数が対前年同期比で3.96%の増加となり、一定の効果があったものと認識しております。今回は、本県単独であり、昨年とは異なる枠組みではありますが、本県の観光を全国に発信する絶好の機会と考えますが、具体的な取り組み内容とキャンペーンの目標をお示しください。
 また、今回の地震により、夏場の観光客の宿泊キャンセルが全県的に出始めているとの報道もあり、風評被害が懸念されるところですが、県は、今回の地震の観光に対する影響についてどのようにとらえているのでしょうか、現時点での認識についてお聞かせください。
 次に、農業振興についてお伺いします。
 まず、集落営農組織に係る取り組みについてでありますが、平成19年度から国の新農政の導入に伴い、全国で約5、300、本県では326の集落営農組織が誕生しました。ある新聞報道で、県内の代表的な集落営農組織である都南営農組合へのアンケート結果が掲載されており、この中でも集落営農組織に期待することとしてコストの低減などが上位に回答されており、こうした期待の実現に向けて、県内の集落営農組織は、今まさに取り組みを進めているところであります。しかしながら、生産コストの低減への取り組みは進めつつも、現在の農産物の価格動向を見ると、今後好転を期待することは難しい状況にあり、何らかの新たな取り組みが必要と考えます。
 集落営農は、さまざまな農家で構成されており、農用地の利用集積など担い手農家だけでなく、農地の出し手となる小規模農家や兼業農家も含めた集落営農全体への支援が必要と考えます。このような状況を踏まえ、県では、集落営農の中の小規模兼業農家等に対してどのようなことを期待しているのか。また、集落営農の所得向上につながる経営多角化・高度化についてどのような支援を行っていくのか、お伺いします。
 次に、グローバル化に対応した農業経営体の育成等についてでありますが、近年、世界経済のグローバル化の進展に伴い、世界の農産物貿易は拡大しております。このことは、今回のブラジル訪問でも、広大な農地による大規模農業を武器に、世界の農業大国として農産物を輸出している状況を目の当たりにし、肌で感じたところであります。
 一方、我が国においては、農産物輸入額が増加し食料自給率は39%まで低下し、これ以上の海外依存は食料安定保障上も問題であります。このようなときこそ、日本の食料供給基地岩手の農業をリードする経営感覚にすぐれた経営体の育成が極めて重要であります。
 そこで、グローバル化が進展する中、本県農業の担い手の経営能力の向上にどのように取り組んでいくのか、知事のお考えをお聞かせください。
 また、ブラジルでは畜産も盛んに行われ、牛の飼育頭数では世界第1位、鶏肉の生産・輸出は世界第2位、豚肉の生産・輸出は世界第4位で、広大な国土を有効に利用しております。本県も我が国有数の畜産県であり公共牧場を各地に有しておりますが、仄聞するところによりますと、公共牧場の中には、有効に活用されていないところもあると聞いております。公共牧場の利用状況と有効活用の取り組みについても、あわせてお伺いします。
 次に、バイオエネルギーの振興についてでありますが、さきに訪問したブラジルでは、第1次オイルショックを教訓に国策としてバイオエタノールを振興しており、今では、バイオエタノールが20%から30%混合されたガソリンの使用が義務づけられており、これに比べ、我が国の現状は大分おくれていると強く感じたところであります。バイオマスエネルギーの利活用は、温室効果ガスの排出抑制による地球温暖化の防止などに資するとともに、資源の乏しい我が国にとって積極的に進めるべきものと考えるものです。
 こうした状況の中で、政府では、国産バイオ燃料の本格導入に向け、2007年2月に国産バイオ燃料の大幅な生産拡大に向けた工程表を作成し、2011年度には、単年度で国産バイオ燃料5万キロリットル、中長期的には、稲わらや木材等のセルロース系原料や資源作物全体から効率よく製造できる技術などを開発し、600万キロリットルの生産を目指すと聞いております。バイオマスの供給においては農林水産業が重要な役割を担っており、1次産業を基幹とする本県においては、積極的に取り組むべきものと考えております。
 そこで、このような中で食料生産との競合の問題も考えられますが、県は、バイオエネルギーの振興をどのように図っていこうとしているのでしょうか、考え方をお伺いします。
 また、特にバイオエタノールの利活用について、県は本年度事業としてどのように進めていこうとしているのでしょうか、県の取り組みをお伺いします。
 次に、水力による電源開発についてお伺いします。
 今回のブラジル訪問では、世界最大級の水力発電所であるイタイプ水力発電所を見学いたしましたが、ブラジルでは、電力の86%が水力発電で賄われているとのことであります。水力、風力などの自然エネルギーは環境に優しく、原油価格の高騰などの影響を受けない安定的なエネルギー資源であり、我が国においても推進していく必要があると考えます。本県においては、企業局が北上川総合開発への参加を初めとして水力発電に取り組んできておりますが、ここ数年間は、新たな水力発電の開発が進んでいないようであります。今後、新たな水力開発に積極的に取り組んではどうかと考えますが、企業局長の御所見をお伺いします。
 次に、環境に関する取り組みについてお伺いします。
 まず、化学物質とその環境リスクに対する取り組みについてであります。
 かつて大きな社会問題であった四日市ぜんそくに代表される大気汚染、水俣病に代表される水質汚濁といった従来型の深刻な公害問題については、全国的にも減少してきているものと認識しています。しかし、近年では、多種多様な化学物質が、製造業はもとより、さまざまな業種、場面において使用が拡大しており、それによる環境汚染が懸念されているところであります。化学物質の中には、発がん性など有害性のあるものを含め国内に約5万種以上流通していると言われており、これが大気、水、土壌などを経由して、人の健康や生態系に影響を与えている可能性は否定できないものと考えます。化学物質の影響は、身近な環境問題として県民の関心が高いものがあります。
 そこで、本県における化学物質についての排出量規制、監視測定、立入検査などがどのように実施されているのか、そして問題は発生していないのかどうか、まずお尋ねいたします。
 次に、最近、化学物質やその環境リスクに対する県民の不安に適切に対応するため、これらの正確な情報を県民、事業者、行政関係者などが情報を共有し、相互の意思疎通を図るいわゆる環境リスクコミュニケーションという考え方が普及しつつあります。本県においても、その取り組みが進められていると聞いておりますが、その取り組み状況についてお聞かせください。
 次に、環境王国展についてであります。
 21世紀は環境の世紀と言われ、来月開催される洞爺湖サミットでも、地球温暖化問題が主要テーマとなっております。洞爺湖サミット開催を契機として、国においても、福田総理を先頭として、二酸化炭素排出量削減などをポイントとするいわゆる福田ビジョンを発表するなど、取り組みを進めております。本県でも達増知事が就任し、従来の環境首都いわてを環境王国いわてとし、さらに積極的な取り組みが期待されます。岩手のすばらしい環境を守り次の世代に引き継ぐためには、環境の分野のみならず、産業、教育、情報通信、社会基盤整備など、広く分野を超えた積極的な取り組みが必要と考えます。
 そこで、県では、このような県民、事業者、団体などの取り組みを促進するため、今年度環境王国展を開催すると聞いておりますが、その概要と準備状況についてお聞かせください。また、地球温暖化やごみ問題などは県民一人一人の行動が重要であります。そのような行動を促進していくため、環境王国展を機会に、環境に対する県民意識の高揚をさらに図る取り組みが必要と考えますが、知事の御所見をお伺いします。
 次に、建設業の総合対策についてお伺いします。
 今般の地震災害については、早速、地震当日、泉防災担当大臣が視察に訪れたほか、6月15日冬柴国交大臣、6月16日増田総務大臣、6月18日福田内閣総理大臣に視察をいただいたところであり、大変ありがたく思っております。私も去る6月25日、県議会による現地調査団の一員として直接現地を調査してまいりましたが、むき出しになった山肌やずたずたに寸断された道路、崩落した橋の惨状を目の当たりにし、災害復旧の早急な必要性と作業の直接の担い手である地域の建設業の重要性を改めて痛感したところであります。
 県では、平成18年4月に、建設業対策中期戦略プランを策定し、企業の経営革新に向けた総合的な支援に取り組んでいると聞いております。経営多角化を進めようとする企業もふえてきており、一定の成果があらわれてきているものと考えます。しかし、一方で、建設工事の受注競争は激しさを増しており、多くの建設企業の経営は悪化の一途をたどっております。
 統計によると、県内建設企業の平成18年度決算の売上高営業利益率の平均はマイナスとなっており、建設業が利益を生み出せていない状況を示しております。建設業の収益の源は工事現場であり、効率的な工事施工は受注者の収益確保に直結します。また、価格のみによる競争に一定の歯どめをかけることのできる総合評価落札方式には、多くの事業者が期待を寄せているところであります。効率的な工事施工に向け、県は発注者としてどう取り組んでいこうとしているのか、総合評価落札方式の取り組みとあわせてお尋ねいたします。
 また、建設業者の無用なダンピング競争を回避し適正な工事の質を確保するため、他県においては、最低制限価格や価格による失格基準の引き上げを検討しているところもあると聞いておりますが、この点について県の御見解をお伺いします。
 次に、盛岡地域の道路整備についてお伺いします。
 本年4月に中核市となった盛岡市は、北東北の拠点都市として、経済や文化において県全体を牽引する役割が期待されており、さらなる都市機能の充実が図られるものと考えています。その中で、県が行っている盛南開発事業に対する支援等は重要な役割を果たしており、今後も大いに期待しているところであります。中でも、盛南開発事業地区を通る盛岡西バイパスについては、市内の慢性的な渋滞の緩和や物流の促進を図る重要な基盤となるものであり、現在は、前潟地区交差点から盛南開発地区内の一部までの間が整備済みとなって既に供用されていますが、この全体計画はどのようになっているのか、お伺いします。また、早期全線開通への期待は、地域住民はもとより、広域に及ぼす効果からも大きいと考えますが、今後の完成までの予定はどのようになっているのかについてもお伺いします。
 盛岡西バイパスと並び、盛岡地区では国道455号北山トンネル、主要地方道盛岡和賀線の整備が行われ、地域住民の期待も大変高いものがあります。道路特定財源の問題もあり、これらの工事のおくれを心配する声も聞かれますが、今後の整備の見通しについてお知らせください。
 以上で私の一般質問を終わらせていただきます。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 樋下正信議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、私の政治姿勢について、今回の災害を契機に見直すべきではないかとのお尋ねがありました。岩手・宮城内陸地震の発生に際し、福田総理大臣は、内閣を挙げて全面的な支援を行う旨、明言されており、議員御指摘の国の全面的な協力については得られているという印象を受けております。きょう、午前中の内閣官房長官記者会見におきましても、町村官房長官より、政府としては全力で支援していくという旨、述べられているところであります。私といたしましては、今回の災害を契機に党派を離れ、政治的に中立な立場になる考えはございません。
 なお、今回の震災では、各政党でも党本部や県連に災害対策本部を立ち上げていただき、被災地の視察や、国や県に対する災害対応の働きかけなど精力的に活動いただいており、非常時においても、複数政党からなる政党政治が有効に機能するのだということに感銘を受けております。危機に対して最も強い政治体制は、やはり民主主義なのだとの思いを深めましたので、私も岩手から、民主主義の発展、特に政党政治の成熟に引き続き微力を尽くしてまいりたいと考えます。
 次に、私のリーダーシップ等についてでありますが、私は、知事就任以来、本県の危機的状況を希望に変えるため、国内外における県産品販売や企業誘致、観光客の誘客活動などにおけるトップセールスのほか、平泉の文化遺産のイコモスでの登録延期勧告を受け、ユネスコ委員国の大使館や総領事館、関係省庁への働きかけをみずから行うとともに、先般の岩手・宮城内陸地震に対応するため、宮城県と合同で国への緊急要望を行い、総務大臣、国土交通大臣を初め6大臣に対して直接面談の上で要請するなど、知事としてできる限り先頭に立って取り組んできたところでございます。
 私といたしましては、日ごろから、知事の仕事は知ることと申し上げておりますように、岩手についてきちんと把握し、説明できることが、リーダーとして一番重要なことであると考えております。岩手が今どうなっているのか、県民が何に困っているのかということがしっかりわかり、どう対処すればそれが解決できるかを考え、県職員はもとより、140万県民と力を合わせて問題解決に当たり、岩手を守っていくこと、それがリーダーの務めであると考えております。こうした議会の場において、議員の皆様から御意見を伺うことも重要なことであると考えておりますので、今後とも御助言をお願いしたいと思います。
 次に、広域振興局体制への移行を平成22年4月とした理由についてでありますが、本県では、予想を上回る人口減少、特にも若年層の人口減少傾向が顕著であること、県北・沿岸圏域と、自動車や半導体関連企業の集積等が進む県央・県南圏域との格差拡大の懸念など、社会経済情勢が急激に変化しております。そのため、県としては、いわて希望創造プランに基づき、これまで以上に効果的な産業振興施策などを展開しつつ、市町村優先の行政システムの確立に向けた支援を強化する必要があり、その場合、極めて厳しい財政状況の中、組織力を最大限に発揮できる簡素にして効率的な組織体制で臨まなければならないことなどから、県南圏域以外の圏域においても、できるだけ早く広域振興局体制に移行していく必要があると考えているところであります。特にも、県北・沿岸圏域については、先ごろ、現地に赴き、移動県庁を実施したところでありますが、この圏域単位での振興策の重要性、緊急性を痛感し、そのためにも広域振興局体制への移行は、何を置いても急がなければならないとの思いを強くしたところであります。
 次に、平泉世界遺産登録についてでありますが、イコモスの勧告後、速やかに、国、県及び関係市町と指摘のあった内容について分析するとともに、今後の対応方針について協議したほか、さまざまな有識者の御助言も参考にしながら、ユネスコ日本政府代表部の近藤大使とともに、委員国への説明に当たっての論点を整理し、説明資料の具体的な内容について協議したところであります。また、県では、6月5日に私が外務省及び文化庁を訪問し、世界遺産登録に向けて要望を申し上げたほか、北海道・東北地方の知事の賛同をいただき、北海道東北地方知事会として広域的な立場からの緊急提言をさせていただいたところであります。さらに、県議会の皆様の御理解をいただき、世界遺産登録に向けた意見書を提出していただいたところであります。加えて、外務省及び文化庁と情報を共有しながら、6月中に、私と副知事が委員国の関係大使館を訪問し、平泉の現状や地元の思いなどを説明してきたところであります。登録に向けた感触については、現時点では何とも言えないところでありますが、近藤大使は精力的に活動されていると聞いており、また、大使館訪問では各国大使の好意的な反応もあり、平泉への理解が少しずつ広がっていると感じております。
 次に、グローバル化に対応した農業経営体の育成についてでありますが、国際化が急速に進展する中で、市場ニーズに的確に対応し、国内外との産地間競争を勝ち抜いていくためには、マーケティングやマネジメント能力など経営感覚にあふれ、海外市場にもチャレンジするような意欲と能力のある担い手を育成することが重要と考えます。このため、昨年度から、岩手大学等と連携し、経営管理や革新的なマーケティング技法、さらには高度な生産技術を習得するいわてアグリフロンティアスクールを開催するとともに、関係団体が連携して経営改善を支援するワンストップ相談窓口の設置や、法人化の促進を目的とした研修会の開催、税理士等による濃密な経営指導などを実施しているところであります。また、本年3月、東アジアをターゲットにした輸出戦略を策定するとともに、商談会や輸出促進セミナー等を開催し、海外市場の開拓に取り組む担い手を支援しているところでもあります。今後とも、こうした取り組みにより、担い手の経営能力の向上を支援するとともに、先進的な農業者が経営能力を相互に研さんするためのネットワークづくりを進め、生産者から経営者へのステップアップを促進してまいりたいと考えております。
 次に、環境に対する県民意識の高揚を図る取り組みについてでありますが、県民が享受している本県のすばらしい自然や環境は、先人の知恵と努力により守り育てられてきたものであります。また、世界遺産登録を目指す平泉の文化遺産は、人と自然との共生という普遍的な価値観をよりどころとしています。かけがえのない自然や環境を守り、次の世代に引き継ぐとともに、こうした価値観を世界に発信していくことは、今に生きる私たちの使命であると考えます。そのため、本年11月に開催するいわて環境王国展に、県民、事業者、NPOなどに幅広く参画していただくとともに、自然との共生という価値観や、環境王国を目指す県民の思いを盛り込んだ環境王国宣言を公表する考えであり、環境王国展を契機に、県民一人一人が環境を守り育てる県民運動が定着していくよう取り組んでまいりたいと思います。
 その他のお尋ねにつきましては関係部局長から答弁させますので、御了承をお願いいたします。
   〔地域振興部長藤尾善一君登壇〕
〇地域振興部長(藤尾善一君) 広域振興局の本局、行政センターの設置場所についてでありますが、今回お示ししなかったのは、まずは、基本的考え方の素案におきましては、広域振興局体制の基本方向等に関する県の考え方をお示しし、素案の段階から県民の皆様方や市町村と十分な議論を尽くし、理解を得ることが先決と考えたからであります。
 設置場所を決めるに当たりましては、広域振興局としての機能が効果的に発揮できるかなどの観点から総合的に勘案する必要がありますので、今後、具体的な組織体制や機能などを十分に検討した上で設置場所の考え方をお示しし、その後、県民の皆様方から意見を伺い、決定してまいりたいと考えております。
   〔商工労働観光部長廣田淳君登壇〕
〇商工労働観光部長(廣田淳君) まず、平泉効果の県央部への波及についてでありますが、旅行商品としては、本年4月から、白神山地、八幡平を経て盛岡に宿泊し、翌日、平泉を訪れる周遊プランなど、既に平泉と県央部をつなぐ商品が販売されているほか、交通アクセスにつきましても、4月から、平泉とつなぎ温泉等を結ぶ乗り合いタクシーが運行され、7月から12月までは、県内の鉄道等が4日間乗り放題の東京都区内発岩手・三陸フリーきっぷが販売されるなど、その充実が図られているところであり、こうした旅行商品や交通アクセスなどについて積極的なPRに努めているところであります。今後におきましても、紫波町の平泉関連史跡を初めとする県央部の観光資源について情報発信を行うとともに、平泉と県央部をつなぐ新しい旅行商品の造成について旅行会社に働きかけるなど、県央部への誘客について力を入れてまいります。
 次に、いわて・平泉観光キャンペーンについてでありますが、本キャンペーンは、幸せ出ずる国、いわてへをキャンペーンコピーとして、情報発信、イベントの実施、受け入れ態勢整備を柱に、県内各地への誘客を図ろうとするものであります。このため、既にJR東日本主要駅において告知ポスターやイベントガイドブックを掲示、配架しているとともに、ホームページや雑誌広告を活用するなど、イベントや観光資源の情報発信に力を入れているほか、首都圏におけるオープニングイベント、県内におけるスタンプラリーやフォトコンテスト、イベント列車の運行などにより、積極的な誘客活動を行うこととしております。また、横断幕やのぼり、おもてなしシールを配布するとともに、県内のバス、タクシー、レンタカーにキャンペーンシールを張っていただくなど、県民総ぐるみの受け入れ態勢の整備についても取り組んでいるところであります。
 キャンペーンの目標値についてでありますが、昨年実施しました北東北デスティネーションキャンペーンにおいては、JR6社や県内各地の取り組みが功を奏し、対前年同期比約4%増という効果がありました。今回は、岩手・宮城内陸地震による影響が懸念されますが、平泉の世界遺産登録に向けた動きというチャンスを生かし、観光客数1、370万人回、対平成18年比5%増、約65万人増を目指したいと考えております。
 次に、今回の地震による観光への影響についてでありますが、県内の旅館・ホテル業界団体の調査によりますと、6月21日現在で延べ2万人を超える宿泊予約のキャンセルがあったと聞いております。こうしたことから、県では、観光客が風評に惑わされることなく本県においでいただくために、観光施設の被害や復旧状況など正確な情報発信と誘客活動に取り組んでいるところであります。具体的には、ホームページによる最新情報の提供、県内観光事業者の各種イベントやテレビへの出演、県外事務所によります旅行会社訪問など、さまざまな機会をとらえて情報提供を行っております。今後は、7月12日に首都圏で行いますいわて・平泉観光キャンペーン・オープニングセレモニーで、知事が先頭に立って本県への来訪を呼びかけることとしており、引き続き、県内外に向けて積極的に情報発信を行うなど、関係者が一丸となって強力な取り組みを展開してまいります。
〇議長(渡辺幸貫君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
   〔農林水産部長高前田寿幸君登壇〕
〇農林水産部長(高前田寿幸君) まず、集落営農組織に係る取り組みについてでありますが、集落営農を発展させるためには、農地の利用集積等による土地利用型作物の生産性の向上を促進するとともに、新規作物の導入や流通・加工部門への進出など、経営の多角化による所得の向上を図ることが重要であると考えております。このようなことから、地域での話し合いを基本に、担い手への農地の利用集積を促進するとともに、小規模兼業農家には、それぞれの経営志向に応じて、保有機械や労働力を活用した高収益作物の導入、さらには地域特産品の加工・販売等のアグリビジネスへの参画を期待しているところでございます。
 県といたしましては、集落営農の多角化を促進するため、今年度から新たに実施しているいわて希望農業担い手応援事業等を活用し、新規作物等の導入・拡大を支援するとともに、アグリビジネスの振興に向けて、事業戦略プランの策定や加工品の試作・販売による市場調査の実施、さらには、商品開発力を高めるためのノウハウの習得などを支援しているところでございます。今後とも、集落営農の実態や発展段階に応じて、こうした取り組みをきめ細やかに支援し、集落営農の所得向上につながる経営の多角化・高度化を促進してまいります。
 次に、公共牧場の利用状況と有効活用についてでありますが、本県の公共牧場は155カ所に設置されており、このうち、現在、32カ所が、放牧頭数の減少による集約化等により、利用を休止してございます。近年、配合飼料価格が高騰する中で、飼料コストの低減や飼養管理の省力化等の面で公共牧場が大きな役割を果たすことが期待されており、本県の畜産振興を図る上で、その有効活用を図ることが重要であると考えております。このため、県といたしましては、草地や放牧施設の再整備による放牧、採草機能の強化、飼料用トウモロコシへの作付転換、さらにはキャトルセンターの整備と組み合わせた周年預託機能の強化などに努めているところであり、今後とも、市町村やJA等との連携のもと、こうした取り組みにより公共牧場の有効活用を図ってまいります。
 次に、バイオエネルギーの振興についてでありますが、バイオエネルギーの利活用は、地球温暖化の防止に加え、未利用農地や転作田の有効活用、アグリビジネスの創出など、農山漁村の振興に新たな展望を開くものと期待しているところでございます。
 このため、県といたしましては、本年3月、いわてバイオマスエネルギー利活用構想を策定し、地域循環を基本としたエネルギーの地産地消や、本県独自の先端技術開発の加速化などに取り組むこととしているところでございます。今年度は、この構想の実現に向けて、特にバイオエタノールの利活用のための技術開発を中心に、いわてバイオエネルギー利活用促進事業を実施しているところでございまして、具体的には、岩手生物工学研究センターにおいて、食料と競合しない稲わら等からバイオエタノールを効率的に生産する本県独自の技術開発を推進するとともに、低コスト化のための直まき栽培に適応できる水稲多収品種の開発や、10アール当たり収量800キログラムを目標とした原料米の現地実証試験などに取り組んでいるところでございます。今後とも、産学官の連携を強化しながら、本構想に基づいて、本県に豊富に賦存するバイオマス資源の活用を促進してまいります。
   〔企業局長千葉勇人君登壇〕
〇企業局長(千葉勇人君) 水力による電源開発についてでありますが、企業局では、これまで水力発電所を13カ所建設し、その総出力は14万3、750キロワットで、県内一般家庭の消費量換算で約14万世帯分を供給しております。最近の水力による電源開発としましては、平成11年の柏台発電所以来新たな着工には至っていないところでありますが、これは、開発の余地のある地点が山間奥地化・小規模化し、コスト高となっていることが、その主な要因であります。
 このような状況にありますが、企業局としましては、水力発電は二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーであり、地球温暖化防止の観点からも、その開発の重要性は増しているという認識で取り組んできており、本年度は新たに、小規模ではありますが、八幡平市において北ノ又第三発電所の建設に着工するほか、奥州市に建設する胆沢第三発電所の基本設計を行っているところであります。今後におきましても、さらに開発の可能性を探るため、雫石町の有根沢地点等県内3カ所で河川の流量観測を実施しているところであり、また、国においても水力発電への支援策の強化を検討しており、その動向等をも注視しながら、新たな水力発電の開発に向けて積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
   〔環境生活部長瀬川純君登壇〕
〇環境生活部長(瀬川純君) 化学物質と環境リスクに対する取り組みについてでありますが、化学物質の規制につきましては、これまで、水質や大気の汚染防止に関する法令に基づき、環境中への排出に対する規制を中心とした対策に取り組んできたところであります。平成19年度は、一般環境の常時監視は、公共用水域で246地点、大気測定で15測定局において実施し、立入検査は、水質関係で延べ816事業場、大気関係では延べ352事業場において実施いたしました。その結果、県内の公共用水域や大気の状況はおおむね良好であり、特に化学物質の排出に伴う問題事案は発生していないものであります。こうした直接的な規制のほか、化学物質による環境リスクを未然かつ効果的に低減するための新たな手法である特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律―いわゆるPRTR法に基づき、事業者の自主的な取り組みや、社会全体での化学物質の管理を目指した取り組みを進めているところであります。
 その一環として、県では、平成15年度から、関係団体との協働で環境コミュニケーションの推進に努めてまいりました。中でも、企業と住民等による情報共有と相互理解を図るための地域とはじめる環境報告会は延べ25企業によって開催され、参加者数は726人に上り、年々取り組みが拡大しております。化学物質による環境リスク低減は大変重要なテーマであり、県としては、平成19年度から平成22年度までの間に環境報告会の延べ100回開催を目標としており、環境コミュニケーションの普及啓発を目的とするセミナーや、企業実務者を養成する研修会を開催するなどして、重点的に取り組んでまいります。
 次に、いわて環境王国展の概要についてでありますが、世界に誇れる岩手の環境の実現を目指した取り組みを進める施策の一つとして、11月1日と2日に盛岡市で開催するものであり、地球環境をテーマにした講演、NPOなどによる地域での取り組みを踏まえたワークショップ、企業の環境関連の商品や技術などの展示・紹介、行政の取り組みのフォーラムなどを予定しております。
 準備状況ですが、県内の環境関係団体や経済団体、市町村等に参加を呼びかけ、本年5月に実行委員会を組織し、各界の幅広い御意見を反映させることとしておりますほか、庁内の部局連携組織で具体的な内容を検討しながら、関係団体等への働きかけを行っているところであります。今後、11月の開催に向けて、県内各地域で機運を醸成しながら、本県の取り組みが内外に発信されるよう、準備を進めてまいりたいと考えております。
   〔県土整備部長佐藤文夫君登壇〕
〇県土整備部長(佐藤文夫君) まず、建設業の総合対策についてであります。効率的な工事施工に向けた取り組みについてでございますが、受注者と協力して工程管理を行い、できるだけ早期に工事を完成させることは、供用による効果の早期発現とともに受注者側のコスト縮減にもつながるものと考えております。このため、昨年度から、県、施工者及び設計者の3者が、設計意図の確認などに関しまして協議を行う設計・施工技術検討会を試行しているところであります。早期に問題の解決が図られ、円滑な工事施工に効果が認められていることなどから、本年度はさらに試行件数を拡大することとしております。
 また、受注者と一体となった取り組みとして、工事中に発生した諸問題に即日対応するいわゆるワンデイレスポンスを今年度からより組織的なものとするべく、試行することとしております。
 次に、総合評価落札方式についてでありますが、本年度は件数を昨年度の2倍の200件程度に拡大して実施する予定としておりますが、これまでの実施結果を踏まえ、技術力のある企業がきちんと評価されるよう、技術評価点の引き上げや加点対象となる工事成績評定点の見直しを行うとともに、新たに地域貢献活動を評価項目に追加したところであります。また、市町村への導入拡大も重要であると考えておりまして、県と全市町村で構成します岩手県総合評価落札方式研究会を通じまして、導入にかかわる課題解決に向けた検討を行うなど、多くの市町村で早期に導入が図られるよう、積極的な支援に努めているところであります。県としては、引き続き、効率的な工事施工や総合評価落札方式の拡充に取り組むなど、技術と経営にすぐれた企業が存続し、成長できる環境整備に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、盛岡地域の道路整備についてでありますが、まず、盛岡西バイパスの完成の見通しなどについてでありますが、本事業は、盛岡都市圏の交通を円滑にし都市環境を改善するなど、都市機能を高めることを目的に、国土交通省が整備主体となって工事を進めているところでございます。
 全体の整備区間は、前潟地区の交差点から盛南開発の地区を経由し、県道上米内湯沢線までの全長7.8キロメートルとなっております。昭和59年度に上厨川前潟地区から事業着手し、平成17年度までには約5.1キロメートルの区間が供用され、本年度はさらに500メートルの供用が予定されております。現在、国では、今後整備する区間について計画の見直しを行っていると聞いており、計画が決まり次第、県では、都市計画決定の変更の手続を進めることとしております。県としましては、盛岡南新都市開発事業が完了する平成25年度までに全体の区間が供用開始されるよう、今後とも強く国に対して要望してまいりたいと考えております。
 次に、一般国道455号北山トンネルの整備の見通しについてでありますが、現在、トンネルの舗装工事、非常用通報設備や換気設備などの管理設備工事を進めております。平成21年度内の供用を目標として取り組んでいるところでございます。
 次に、主要地方道盛岡和賀線羽場地区の整備の見通しについてでありますが、南側の羽場工区1、580メートルのうち1、180メートルは整備済みですが、残る区間の一部については用地取得の同意が得られなかったことから、現在、土地収用法に基づく手続を進めているところでありまして、早期の供用を目指し鋭意取り組んでおります。また、北側の飯岡工区1、800メートルにつきましては、今年度用地補償や埋蔵文化財調査を進めることとしておりまして、平成20年代後半の供用を目指しております。
   〔総務部長川窪俊広君登壇〕
〇総務部長(川窪俊広君) 低入札対策についてでございますが、本県では、ダンピング対策の強化を図る観点から、昨年の入札制度の改正におきまして、他の入札者と比べて特に低い価格で入札した者を自動失格とする失格基準価格を導入したほか、工事費内訳書の費目の計上金額によりまして、一定基準に該当すると失格となります数値的判断による失格基準、さらには、詳細調査による失格基準といった低入札調査制度を的確に運用いたしましてダンピングの防止を図っているところでございます。さらに、低入札工事につきましては、着工後の追跡調査や履行保証割合の引き上げ、前払い金の引き下げなどを行っておりますほか、失格となった者への注意や警告を行い、低入札による失格の再発を防止するよう努めているところでございます。
 こうした制度のもとで、失格にならずに低入札で落札されました工事につきましては、品質等のフォローアップ調査を行っていくこととしておりまして、その結果として、品質低下等の問題が傾向として明らかになってきた場合には、国や他県の動きも見ながら、低入札調査制度のあり方について検討してまいりたいと考えております。
 県といたしましては、当面は工事の品質を重視していく方向で、総合評価落札方式の拡充を検討していくこととしているところでございます。
〇議長(渡辺幸貫君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後5時11分 散会

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