平成20年2月定例会 第5回岩手県議会定例会会議録

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〇10番(菅原一敏君) 民主・県民会議の菅原一敏でございます。
 県議会議員として初めての一般質問の機会をいただきましたことに深く感謝を申し上げます。
 通告に従いまして順次質問をさせていただきますので、県民にわかりやすく、将来に向かって希望の持てる御答弁をお願いいたします。
 最初に、県と市町村との役割分担にかかわる幾つかの基本的な事柄についてお尋ねいたします。
 本格的な地方分権の時代を迎え、地域の行政は地域の住民が自分たちで決定し、その責任も自分たちで負う自己決定、自己責任の原則のもとでの行政システムの構築が今求められています。そして、このことによって、身近な地方公共団体において住民が自主的にまちづくりなどの仕事やさまざまな行政サービスの水準などを決めることができるようになり、また、国、都道府県、市町村のそれぞれに役割と責任の範囲が明確となり、地域の実情やニーズに合った個性的で多様な行政を展開することができるようになることが期待されております。このような状況を踏まえて、県では、これからの県と市町村との役割分担のあり方についてどう考えておられるのか、基本的な考え方をお示しいただきたいと思います。
 次に、県から市町村への権限移譲についてお尋ねいたします。
 平成12年4月から施行された地方分権一括法による地方自治法の改正によって国と地方との基本的な役割分担が明確にされ、本県においても、これまで、県から示された事務事業の中から市町村が選択する形での権限移譲が行われてきました。しかしながら、権限移譲に当たっての具体的な基準がなく、また、県と市町村との役割分担も明確化されておらず、これまでの市町村の取り組みは個々ばらばらで、結果として住民サービスにも格差が生じてきているのが現状ではないかと思っております。これまで行われてきた市町村への権限移譲の実績と課題について、まずお伺いいたします。また、これを踏まえ、これからの権限移譲の進め方をどのように考えておられるのか、あわせてお伺いいたします。
 さらに、権限移譲を推進するための人的支援と財源措置の考え方についてもお伺いいたします。
 次に、市町村合併についてお尋ねいたします。
 地方分権の担い手として積極的な行政を展開していくためには、地域づくりの主体としての市町村の行政能力の強化と財政基盤の確立が必要とされております。加えて、日常生活圏の拡大や超高齢社会への対応、国、地方を通じた財政状況の悪化などから、市町村の合併は避けては通れない課題であると認識しているところでありますが、市町村合併に対する知事の基本的な考え方についてお伺いいたします。
 全国の市町村の数は、平成10年度末の3、232から、平成の大合併を経て、平成17年度末には1、821まで減少し、本県においても、旧法のもとで進められた合併によって新しく12の市町が誕生し、平成17年度末には、それまでの59市町村から35市町村となったところであります。こうした合併に伴う圏域の広域化により、市町村とコミュニティ、住民との関係も変化してきているものと思いますが、知事は、将来の地方分権社会を見据え、市町村合併が進んだ後の市町村とコミュニティ、市町村と住民との関係をどうあるべきとお考えか、お伺いいたします。
 次に、県としてのこれからの合併支援のあり方についてお伺いいたします。
 平成17年7月に公布された岩手県市町村合併推進審議会条例に基づいて合併審議会が設置され、12名の委員による諮問事項の審議が行われています。これからの焦点は、平成18年4月に示された自主的な市町村の合併の推進に関する構想に盛り込まれた八つの構想対象市町村の組み合わせに基づいて、今後どのように県として支援をしていくかにあると思いますが、県内市町村の合併に対する意識や取り組みにはかなりの温度差が見られ、県の合併支援のあり方も、それによって当然変わってくるものと思います。2年後の3月31日で効力を失うことになる合併新法の期限内での合併を促進するためには、合併に向けた議論や取り組みの熟度に応じて集中的な支援をすることも必要ではないかと思いますが、知事のお考えをお伺いいたします。
 次に、振興局の再編についてお尋ねいたします。
 平成18年4月に、県内を四つの圏域に再編した新しい広域振興圏が設定されました。そして、この4圏域の中では最も市町村合併が進んだ県南圏域において、新たに県南広域振興局を中心としての再編が行われ、企画理事が局長を兼ねる体制のもとで、これまで2年間、市町村中心の行政システムの構築と、産業振興を核とした地域の経済的な自立に向けた取り組みが行われてきましたが、まず初めに、県南広域振興局の業務の成果と明らかになった課題について、広域局としてどのように対応してきたか、お伺いいたします。そして、今後、県南広域振興局の検証結果を踏まえて、県南を含む広域振興局について、それぞれどのような方向性で新たな組織体制の構築を進めていくお考えか、お伺いいたします。
 次に、県北・沿岸地域の振興についてお尋ねいたします。
 県北・沿岸地域にはさまざまな課題があります。その中で特にも緊急に具体的な取り組みが必要な所得格差の是正、道路交通網の整備、雇用対策及び企業誘致の4点について、以下、順次お伺いいたします。
 最初に、所得格差の是正についてであります。
 このほど公表された岩手県県民経済計算の速報値によると、平成18年度の1人当たり県民所得は240万8、000円で、前年度の236万3、000円から1.9%の増加となりましたが、全国平均もまた前年度の287万1、000円から1.8%増の292万2、000円となり、本県と全国との差は依然として縮まっていない状況にあります。この数値は、全国を100とした場合の本県の1人当たりの県民所得の水準が82.4にすぎないものであることを示しており、さらに、これを県内の地域別に見た場合には、平成17年度の推計数値で、県計を100とすると、沿岸圏域で87.2、県北圏域で77.7となっており、県内における所得の格差もまた顕著であります。全国で最下位グループの本県でさらに県平均を大きく下回っているのが県北・沿岸地域であり、そして問題なのが、この差が縮まるどころか、このまま放置すれば、今後一層拡大していくことが確実に思えることであります。いわて希望創造プランにおいては、県民所得の低迷を本県最大の危機ととらえ、県民所得を平成22年度までに、10年前の水準である1人当たり260万円台まで引き上げることを目標として掲げました。このことは、知事の格差是正に取り組む強い決意のあらわれであり、私も高く評価するところでありますが、この格差を是正するための具体的な取り組みの状況と今後の課題について、まず最初にお伺いいたします。
 次に、幹線道路網の整備についてお伺いいたします。
 三陸縦貫自動車道の早期全線開通は沿岸住民にとって長年の悲願であり、産業の振興や企業誘致の促進のために、さらには防災面や救急医療面からも大きな効果が期待されるところであります。県北・沿岸地域の格差是正のまず第一歩が、おくれている道路交通網の整備にあることは疑いようがありません。
 そこでお伺いいたしますが、三陸縦貫自動車道の整備促進のために、これまでどのような取り組みを県ではされてきたのか。そして、今後はどのような考え方で整備促進を図ろうとしているのか。さらには、隣県である宮城・青森両県とどのように連携しながら取り組もうとしておられるのか、お伺いいたします。
 また、本県における高速交通網の確立に当たっては、その課題として、東北新幹線を初め東北縦貫自動車道、花巻空港とすべての高速交通機関のそろっている内陸部と、高速交通の恩恵に浴することのできない沿岸部との時間短縮をいかにして図るかにあると思いますが、県は、このように立ちおくれている沿岸部を内陸部につなぐアクセス交通網をどのように整備しようとしているのか。また、そのための基本的なビジョンはどうなっているのか、お伺いいたします。
 次に、雇用対策についてお伺いいたします。
 平成17年の国勢調査によると本県の完全失業率は6.2%であり、上昇傾向にあります。圏域別に見ると、沿岸圏域7.6%、県北圏域7.8%となっており、県北・沿岸圏域の完全失業率が県南・県央圏域と比較して高くなっています。このことは、有効求人倍率にも同じようにあらわれており、平成18年度の数値では、県全体では0.78倍まで回復しておりますが、公共職業安定所別に見ると、久慈地区が0.38倍、大船渡地区が0.54倍と、県北・沿岸においては依然低迷が続いている状況にあります。これらを踏まえ、県においては、昨年11月に今後の雇用対策の方向を定め、県内に職を求める者が県内で希望どおりに就職できるよう、特にも県北・沿岸圏域で職を求める者が就職できるよう、求人不足の解消や正社員求人の確保・拡大に向けた取り組みを進めることとしていますが、今後の具体的な取り組みについてお伺いいたします。
 国では、一体だれのために行政改革を進めようとしているのか、疑問に思うことがありますが、このほど、厚生労働省から公表された岩手労働局のハローワークの出張所の廃止もその一つであります。一関公共職業安定所千厩出張所と大船渡公共職業安定所陸前高田出張所が平成20年度中に廃止される見通しが示されたわけでありますが、県内の有効求人倍率が全国平均を大きく下回り、なおかつ県内でも雇用情勢の非常に厳しい地域である沿岸部の出張所の廃止は、職を探し、職を求める地元住民にさらなる不便を強いることになり、非常に重大な問題であります。県は、このことをどう受けとめ、地域住民へのサービス低下にどのように対処するお考えか、また、今後も県内の出張所の廃止を含む再編が予定されていることについて、国に対してどのように対応していくお考えか、お伺いいたします。
 次に、企業誘致についてお伺いいたします。
 新たな企業の立地を進めることは、地元に雇用機会を創出し、若者を中心とする人口流出に歯どめをかけ、さらにはさまざまな波及効果が生み出されることによって地域経済が活性化されるなど、大変大きな効果が期待されるものであります。本県における本年度の企業誘致の件数は1月末時点で15件と前年度をわずかに下回りましたが、その後、東芝の北上市への立地が決定するなど、堅調に推移しているものと思われます。
 しかしながら、15件のうち県北・沿岸地域へはわずか2件のみであり、過去の企業誘致の実績を見ても、内陸部が80.3%を占め、内陸部に大きく偏っている状況であります。その理由としては、内陸部には広大で工業用水の完備した中核工業団地が整備され、しかも高速交通網が完備していることなどが挙げられますが、その点、県北・沿岸地域は非常に立ちおくれているわけであります。この対策について、県はどのようにお考えか、お伺いいたします。あわせて、今後の企業誘致の具体的な取り組みについてもお伺いいたします。
 また、企業誘致に当たって市町村との連携はどのように行われているのか、本庁と振興局の産業振興や企業誘致担当との連携は円滑に行われているのか、お伺いいたします。
 そして、県内での2次展開を促進するためにも誘致後のフォローアップが大切と思われますが、県ではこれにどのように取り組んでおられるのか、あわせてお伺いいたします。
 次に、市町村消防の広域化についてお尋ねいたします。
 市町村消防の広域化にかかわる消防組織法の改正が平成18年6月に行われました。近年の災害や事故の多様化、大規模化などの消防を取り巻くさまざまな環境の変化に対応し、市町村消防の体制の整備充実を図るため、市町村消防の広域化推進に係る規定が新たに盛り込まれたものでありますが、これを受けて、本県においても消防広域化を推進するための取り組みが行われています。そして、先般明らかにされた本県の消防広域化推進計画の素案によりますと、今回の広域化は、管内人口10万人未満の小規模消防本部の解消を基本的な考え方とし、対象となる遠野市と陸前高田市についてそれぞれ幾つかの組み合わせパターンが示されましたが、この案に至るまでの過程で、その他の案、例えば県内1消防の考え方や4広域圏に対応したより大きな枠組みなどについてどのような検討がなされたのか、また、市町村消防の広域化に対する県の基本的な考え方はどうなのか、お伺いいたします。
 次に、この素案に対しての関係市町村からの意見聴取の結果はどうだったのか、そして、万一この案に賛同できないとする市町村があった場合の対応はどうなるのか、あわせてお伺いいたします。
 次に、医師確保対策についてお尋ねいたします。
 今、我が国の医療は存亡の危機に瀕していると言われています。医療の担い手である医師が不足し、これまでそれぞれの地域で地域住民を守ってきた県立病院、市立病院、市民病院などという地域の基幹病院から、特にも産婦人科や小児科において、他の診療科と比べて過重労働であることや、責任の重さから勤めていた病院をやめて開業医への道を歩む医師が多くなったことがその主な原因であると言われております。
 このような状況を踏まえ、県においては医師確保のためのアクションプランを定め、医師確保対策室を設けるなどしながら懸命に医師確保に取り組んでおられることに敬意を表しますが、県内における県央部と県北・沿岸部の医療の格差の解消は進んでいません。
 そこでお伺いいたしますが、医師確保のために今後重点的に取り組むべき施策の中で、当面の医師確保のみではなく、岩手で育ち岩手で学んだ岩手の医師をつくり育てることが大切であるという観点から、岩手医科大学の地元入学枠を50%以上とするなど思い切って拡大することが必要と思いますが、御所見をお聞かせいただきたいと思います。旭川医科大学において、平成21年度から北海道内勤務を条件に定員の半数を地域枠とするとの報道もありましたし、同じ北海道の札幌医科大学においても、地元推薦枠の20名を大きく上回って、平成16年度は定員100名のうち81名が道内出身者で占められたとのデータもあり、本県においても不可能ではないと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、気仙医療圏の県立病院の医療体制についてお伺いいたします。
 救命救急センターが併設されている県立大船渡病院では、昨年4月から循環器科の常勤医師が3人から1人に減員となり、入院患者の受け入れを停止し、一時的にせよ機能不全に陥るという危機がありました。その後、関係者の御努力により改善されてはおりますが、今なお循環器科、神経内科、呼吸器科は常勤医師が不足し、応援診療に頼っている状況にあります。このようなことから、救急医療、特に心筋梗塞などの循環器系の患者は大船渡病院の救急センターに搬送できない場合もあり、陸前高田市においては気仙沼市立病院に受け入れをお願いしている実態であります。気仙保健医療圏の広域基幹病院として地域医療を支えなければならない大船渡病院が、本来の役割を十分には果たせない状況になっているのであります。高田病院のベッド数の削減と慢性的な常勤医師不足、加えて、県が現在進めている県立病院改革の一環として新年度から実施されることとなった住田病院の診療所化など、気仙地区の医療環境は他地区にも増して深刻な状況にあります。
 これらを踏まえて、医療局においては今後の気仙地区の県立病院のネットワークをどう構築し、そしてどのように医師確保を図っていくお考えか、お伺いいたします。
 また、県立住田病院の診療所化に当たっては、県医療局と住田病院による住民説明会が開催され、診療所化後においても常勤医師3名による現行の診療・入院体制を維持し、訪問診療と訪問看護サービスを継続する旨の説明がされ、また、住民からの要望も出されておりますが、この基本方針を今後とも守り抜いていくという県医療局の強い御決意を改めてお聞かせいただきたいと思います。
 次に、教育行政にかかわって2点についてお尋ねいたします。
 最初に、本県における中高一貫教育のあり方についてお尋ねいたします。
 中高一貫教育の制度は、6年間の学校生活の中で計画的、継続的な教育が行われることによって、生徒や保護者がこれまでの学校に加えて新しいタイプの学校も選択できるようにすることで中等教育の一層の多様化と地域のリーダーや地域を担う人材を育成しようとするものでありますが、本県においては、新しいタイプの学校に関する検討委員会における検討結果を踏まえて、まず最初に併設型中高一貫校として、平成21年度からの一関第一高等学校での設置、開校が決定されたところであります。
 そこでお伺いいたしますが、教育委員会においては、県立高等学校新整備計画後期計画との整合性をどのように図っていこうとしているのか、また、この広い県土を有する本県にあっては、検討委員会での議論にもあったように2校目、3校目の設置に向けての取り組みがぜひとも必要と思いますが、今後の取り組みに当たっての基本的な考え方をお伺いいたします。
 また、この件に関しまして、住田町の教育委員会から中山間地型・併設型の中高一貫校の設置についての提言がなされており、この提言内容は、本県県土のおよそ8割を占め、県民の約半数が生活している中山間地域の次代を担う人材育成を図るためには地域の特性を生かした中高一貫教育が必要不可欠であるとの基本認識のもとに、中山間地域への併設型での中高一貫校の設置を提言しているものでありますが、県教育委員会としてこの提言をどのように受けとめ、どのように評価されておられるのでしょうか。そしてまた、中山間地域における人材育成のビジョンをどのように描いておられるのか、お伺いいたします。
 次に、第2点目として、新整備計画後期計画に基づいて統廃合が行われた高田高校の今後の学校運営についてお尋ねいたします。
 新しい高田高校は、高田高校の普通科と広田水産高校の水産技術科の統合校として誕生することになります。さらに、この4月の開校時からは、高田高校情報処理科と広田水産高校家政科の在校生も高田高校に在籍し、全員が高田高校から卒業していくこととなり、その結果、統合後は現行の12クラスから17クラスに増加することになりますが、生徒同士の融和や校舎の受け入れ態勢に心配はないのか、まずお伺いいたします。
 次に、水産教育のあり方についてお伺いいたします。
 地域の大事な産業である水産の灯を消すなという地域住民の熱い思いで高田高校への統合という形で市内での存続が決まった広田水産高校の水産技術科でありますので、住民の期待も大きく、水産教育の成果を地域の水産業の活性化に結びつけながら将来のリーダーの育成にも取り組むことが求められています。
 こうした中、先月22日に教育委員会から発表された高田高校海洋システム科の最終志願倍率は0.74倍となり、昨年までの広田水産高校として募集していた水産技術科と比べれば大幅に増加していますが、いずれにしても定員割れしていることには変わりがないわけであります。
 そこでお伺いいたしますが、教育委員会は、今後、海洋システム科の魅力を高め、将来において漁業の担い手となることや水産関係産業への就職に結びつくような職業観をはぐくむための教育や進路指導についてどのように取り組んでいくのか、基本的な考え方をお示し願いたいと思います。
 次に、水産教育に欠かすことのできない実習授業をどのように行う考えなのか。また、当面、広田水産高校の旧校舎での実習はやむを得ないとしても、近い将来、学校に近い場所へのコンパクトな実習施設の整備が必要と考えますが、このことについてもあわせて御所見をお伺いいたします。
 以上で私の一般質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
〇議長(渡辺幸貫君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 菅原一敏議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、これからの県と市町村の役割分担についてでありますが、平成12年4月の地方分権一括法の施行により、地域における行政事務は、県の役割とされた広域的事務、連絡調整事務、補完事務を除き広く市町村が担うこととされ、地方自治における市町村優先の原則が明確にされました。このような基本原則にのっとって、私が座長を務める岩手県分権推進会議におきまして、今後の県と市町村のあるべき姿や役割分担のあり方を議論してきたところでありますが、地方分権型社会においては、市町村は、住民に最も身近な基礎自治体として、住民の参画のもとに創意工夫を凝らしながら生活に密着した行政サービスを総合的に提供する役割を担っていくこと。一方、県は、市町村を補完する広域自治体として、広域的な産業振興や社会資本整備など、専門的、または高度に政策的な行政サービスなどを担っていくことが必要と考えております。
 次に、市町村合併の認識についてでありますが、市町村は、住民に最も身近な基礎自治体として、住民生活に密着した行政サービスを、地域の実情に応じ、自己決定、自己責任の原則のもと総合的に提供する役割を担うべきであります。しかもその行政サービスは、地域間で格差が拡大しないようにすることはもちろん、将来にわたって持続性が確保される必要がございます。さらには、情報化の進展によりまして、かつてのように国あるいは県が情報を独占し、国や県にお伺いを立てなければ決められなかったようなことが、今はだれでもインターネット等を通じて情報を取得し、より現場に近いところで判断し解決していくことが可能となるなど、市町村の問題解決能力が飛躍的に高まってきているということがあると思います。市町村が住民に対してよりよい行政サービスを提供するためには、これらの問題解決能力を活用すべきものと考えております。
 こうした中にありまして、地方分権の担い手となるべき市町村は、特に小規模な市町村において行財政基盤が脆弱な状態であることから、ある一定規模以上の基礎自治体となって行財政基盤を強化していくことが必要であると考えておりまして、そのための最も有力な手段が市町村合併であると考えております。したがいまして、私といたしましては、地域において合併新法の期限が迫っていることを念頭に置きながら、将来のまちづくりを見据えた市町村合併の議論が行われるよう積極的に促してまいりたいと思います。
 次に、合併後の市町村とコミュニティ、住民との関係についてでありますが、地方分権の進展や人口減少社会に対応した、持続可能で自立した地域社会を構築していくためには、自立した住民が主体となって支えるコミュニティが不可欠であり、市町村は、そのため、市町村合併などにより行財政基盤を強化してコミュニティの維持・再生に向けた取り組みを進めることが求められているところと考えます。
 実際に合併した市町にあっては、強化された行財政基盤を生かして、効率的な行財政運営を行いながらコミュニティの自立を支援する仕組みづくりを既に始めており、例えば花巻市のように、合併をきっかけに新たな域内分権の取り組みを進めている自治体もあり、その成果を期待しているところであります。
 県としても、合併市町村自立支援交付金などの財政的な支援のほか、元気なコミュニティ100選や草の根コミュニティ大学事業等を通じ、合併した市町におけるコミュニティの維持・再生のための取り組みに対して最大限の支援をしてまいりたいと考えます。
 次に、市町村合併に向けた取り組みへの支援についてでありますが、平成22年3月末の合併新法の期限を考えますと、議論のために残された時間は限られておりまして、特にも当面自立を掲げている市町村は、住民が的確に判断できる材料を早急に提供して、オープンな場での議論を積極的に進めていただきたいと考えております。その上で、県としても、まずは合併協議会などが設置されるよう、市町村議会議員や地域の経済団体、民間団体などを対象とした説明会や意見交換会を開催して情報提供を行い地域の議論を積極的に促すとともに、また、合併協議会などが設置された場合には、新岩手県市町村合併支援プランに基づいて人的支援や市町村総合補助金などの財政的支援を行い、合併に向けた取り組みを強力に支援してまいりたいと考えます。
 次に、県北・沿岸圏域における県民所得の向上に向けた取り組みの状況と今後の課題についてでありますが、県民所得の向上に向けては、県北・沿岸圏域における産業振興の基本方向に基づいて、地域の皆様方とともに産業振興に積極的に取り組んでいるところであります。
 具体的には、食産業分野においては、雑穀のブランド化や消費拡大を推進しているほか、異業種連携による豆類の栽培と食品加工への利用、ナマコ増殖技術の開発などに取り組んでいるところであります。ものづくり産業分野においては、地域ものづくりネットワークの設置により、学校と企業間の連携によるものづくり人材の育成を推進し、また、北上川流域企業との交流、販路開拓の支援などを実施しています。観光産業の分野においては、地域資源を生かした体験型観光の推進や教育旅行の誘致拡大を図っているところであります。
 今後の課題といたしましては、食産業では、生産と加工が一体となった高付加価値化の一層の推進と新たな販路開拓、ものづくり産業では、県南部におけるものづくりネットワークのような異業種間連携の仕組みや産業人材の育成の強化、観光産業に関しては、入り込み客の増加を地域の所得向上に結びつけること、また、平泉の世界文化遺産登録を契機として、県北・沿岸圏域と平泉を結びつける魅力ある観光ルートの開発などが挙げられます。
 私は、これらの課題に適切に対応していくため、新年度予算においても積極的に県北・沿岸振興に係る事業を盛り込んだところであり、取り組みを一層推進してまいる所存です。
 次に、三陸縦貫自動車道の整備についてでありますが、三陸縦貫自動車道は、豊富な資源を有する三陸沿岸地域の産業の振興や救急医療のための幹線道路として極めて重要な路線であると考えます。そのため、これまで県は、国への要望活動、気仙沼市と八戸市を含めた関係市町村や期成同盟会と連携した住民大会の開催、国の整備とあわせ、大船渡三陸道路の大船渡碁石海岸インターチェンジなどへのアクセス道路の整備等を行ってきたところでありまして、引き続き早期に整備が図られるよう積極的に取り組んでまいります。
 また、隣県との連携についてでありますが、この自動車道は、八戸・久慈自動車道や三陸北縦貫道路と一体となって沿岸部の縦断軸を形成することにより、より一層大きな効果が発揮されるものでありますので、宮城、青森両県との連携を強化し、沿線市町村とともに官民一体となって総決起大会を開催するなど県境を越えた取り組みを行い、道路整備に対する地元の熱い思いが実現されるよう粘り強い運動を展開してまいります。
 次に、沿岸部と内陸部とのアクセス交通網についてですが、沿岸部と内陸部を結ぶ道路は、県北・沿岸地域の振興を支えるとともに、本県の力強い産業経済基盤の構築のために極めて重要であると考えており、これまで東北横断自動車道釜石秋田線の整備促進を国に働きかけるとともに、横軸の幹線道路である一般国道106号や397号などの整備に努めてきたところであります。
 今後は、いわて希望創造プランに基づき、内陸の工業団地や流通基地などの物流拠点と港湾を結ぶ道路、高規格幹線道路のインターチェンジへのアクセス道路など、経済活動の基盤となる道路を選択と集中による重点化を図りながら整備し、沿岸部と内陸部の時間短縮を図るなど効率的な物流ネットワークの形成を図ってまいります。
 次に、県北・沿岸地域の雇用対策についてでありますが、県においては、県北・沿岸圏域で平成22年度までに1、200人以上の正規雇用を創出することを目標に産業振興施策を積極的に推進することとしており、その目標達成に向けては、県北・沿岸圏域における産業振興の基本方向に盛り込んだ、農林水産資源を活用した食産業の展開や既存企業の強化と企業誘致の推進によるものづくり産業の集積などを通じて正規雇用の創出に取り組んでいくこととしております。
 また、これらに加えて、地域ジョブカフェや就業支援員、ものづくりネットワークの取り組みなどによって地元産業界が求める人材を育成するとともに、求職者と地元産業界の適切なマッチングを推進し、県北・沿岸圏域における雇用環境の改善に努めてまいる考えであります。
 次に、公共職業安定所出張所の再編についてでありますが、本県の雇用情勢は、全国との格差が縮まらないままこのところ横ばいの動きとなっており、このような中で、雇用のマッチングの中心的な役割を担っている公共職業安定所の出張所が廃止されることは、雇用対策を県政の重要課題と位置づけている本県にとって大変厳しいものであると受けとめております。
 このため、岩手労働局に対しては、廃止が予定されている出張所の地元自治体の意見を十分聞くとともに、地域住民へのサービスが低下しないような措置を講じるよう要請しているところであります。
 なお、今後の県内出張所の再編に対しては、存続を強く要請してまいりたいと考えております。
 次に、消防の広域化の検討についてでありますが、御指摘のあった県内1消防という案や4広域圏単位での広域化という案については、消防庁が目安として示した管轄人口30万人以上という発想からは考え得る案でありますが、一方において、消防庁の指針では管轄面積等の地域の事情を考慮すべきともされており、本県の地理的特性等を十分に踏まえた案とする必要があること、数年程度の期間において実現可能な案とする必要があること、本県では従来から管轄人口10万人程度を目標とした広域化を推進してきたことなどを踏まえ、関係機関等にも加わっていただいている岩手県消防広域化推進計画調査検討委員会で検討した結果、先般取りまとめた素案のような形で案をお示ししたところであります。
 県の基本的な考え方についてでありますが、現在の消防本部の体制のうち、特に小規模な消防本部については、人員配置や資機材の整備、救急医療体制との整合性などの面で課題が多く、一定規模の消防本部の体制を構築できるような広域化を進めることが必要であると考えており、最終的には市町村や消防本部がみずからの責任で決定するものではありますが、消防組織法が改正されたことを踏まえ、県としては、広域化推進計画を策定し、その計画に沿った取り組みを進めていきたいと考えているところでございます。
 その他のお尋ねにつきましては企画理事及び関係部局長から答弁させますので、御了承をお願いいたします。
   〔企画理事酒井俊巳君登壇〕
〇企画理事(酒井俊巳君) 県南広域振興局における成果と課題についてでありますが、県南局においては、平成18年4月設置時に与えられました組織ミッションを達成するため、広域振興局ならではの組織特性を生かした取り組みを推進してきたところであります。
 具体的な成果としては、まず、組織特性の一つである所管エリアの広域性と厚い産業集積を強みとして、県南圏域に係る各産業分野別の産業振興戦略を設置初年度に策定したところであり、また、その成果が企業立地促進法に基づく北上川流域産業活性化基本計画の速やかな策定と計画の全国第1号認定につながったほか、南いわて食産業クラスター形成ネットワークなど各産業分野別の八つの広域ネットワークを設立し、圏域の官民が一体となって持続的に産業振興を進める仕組みを構築したところであります。また、広域振興局化によって集約した職員、マンパワーを活用し、各分野の諸課題にかかわる調査研究事業を積極的に実施し、新たな施策、事業の展開に生かしているところであります。
 課題については、最も大きな課題として、県南局はこれからの再編を見込んだ過渡的な組織となっているため、本局と総合支局等間の階層構造が不完全なものとなっており、その結果、本局と総合支局等間の役割分担が不明確などの評価等がなされているところであります。このため、県南局においては、局長、総合支局長等を構成員とする経営戦略会議を設置し、一体性の発揮に努めてきたほか、平成19年度からは本局の2名の副局長が分担して、本局、総合支局等の各部を一体的に統括する体制としたところであります。また、県南局では、今後の県南局のあり方に関する検討グループを立ち上げているところでありますが、こうした仕組みやあり方検討等の結果を踏まえ、諸課題への適切な対応を図りつつ、広域振興局化による成果が一層発揮できるよう努めてまいる考えであります。
   〔地域振興部長藤尾善一君登壇〕
〇地域振興部長(藤尾善一君) 市町村への権限移譲についてでありますが、これまでに県事務の市町村への移譲指針を策定し、市町村と振興局が共同で設置した研究会で検討を行うなど、市町村の意向を踏まえて権限移譲を推進してきたところでございまして、その結果、平成20年度までに1、395項目、延べ1万69事務の権限移譲が行われる見込みであり、特に、平成18年度以降は市町村合併の進展に伴い、合併市町においては延べ4、559事務と大幅に権限移譲が進みつつあるところであります。課題としては、市町村によって取り組みに差異が見られるという状況にありまして、これは市町村と県の役割分担の考え方、権限移譲の意義、効果が共有されていないこと、住民の視点が十分反映されていないこと、特に小規模市町村においては、職員体制等による制約が大きいことといった理由によるものと認識いたしております。
 今後の進め方でありますが、本年度、知事を座長として設置した岩手県分権推進会議におきまして、市町村長や有識者、住民の参画のもとに、市町村と県の望ましい役割分担や権限移譲の進め方などを検討し、岩手県権限移譲等推進計画を現在策定しているところであります。計画におきましては、これまで以上に住民本位の行政サービスを提供していくため、1、住民視点に立つこと、2、明確な役割分担に基づくこと、3、市町村行政の総合性を高めること。こうした三つの基本的な考え方に基づきまして権限移譲を進めていくこととしております。来年度以降、個別市町村ごとに協議を行いまして、移譲を希望する事務権限、時期、研修の方法等につきまして具体的なプログラムを定め、円滑かつ着実に移譲を進めてまいる考えであります。
 次に、権限移譲における人的支援と財源措置についてでありますが、人的支援の面では、平成14年度から一括事務移譲方式の試行に伴う職員派遣、平成18年度から人事交流、そして平成19年度からは事務の専門性や業務量に応じて職員を派遣するポイント式一括移譲制度を創設しまして、これまで延べ56人の職員を派遣してきたところであります。平成20年度には、このポイント式一括移譲などにより21人の職員派遣を行うことといたしております。人的支援は市町村における円滑な事務処理とその定着に有効でありますことから、今後におきましても、事務権限の性質や内容に応じて積極的に進めてまいりたいと考えております。また、市町村における事務処理に要する経費につきましては、地方財政法に基づきまして、個別の事務ごとに市町村事務処理交付金として所要額を措置してきているところでございまして、平成17年度における実績額が1、793万円であったところ、権限移譲の拡大に伴いまして、平成20年度の当初予算要求額は約4倍の7、604万9、000円となっているところであります。
 次に、今後の広域振興局の構築の方向性についてでありますが、他広域圏に先行して設置いたしました県南局の検証結果を踏まえ、4広域振興圏がそれぞれの特色を生かした自立した地域として発展していけるよう、圏域内の多様な構成主体との連携のもと、現場主義に立った総合力、機動力を生かした県民サービスの提供や、市町村のさらなる自立支援などの役割を果たし得る体制構築を目指したいと考えております。その場合、本庁と広域局との役割分担をさらに見直し、本庁からの権限移譲を進め、機能の充実を図るとともに、組織体制につきましては、県南局を基本としながらも、それぞれの地域特性に応じたものとする考えであります。今後、早い時期に具体的な方向性についての素案をお示しし、県民の皆様方や市町村の御意見なども伺いながら、平成22年4月のスタートに向けて検討を進めてまいります。
   〔商工労働観光部長阿部健君登壇〕
〇商工労働観光部長(阿部健君) まず、県北・沿岸地域の企業誘致の取り組みについてであります。この地域では、近年、健康食品製造、造船、コネクター、空気圧機器製造など、地域の核となる企業の立地や集積が進んでおり、今後、こうした企業のさらなる増設や関連企業の誘致のほか、特にも、この地域に豊富な農林水産資源を生かした水産加工と食品関連企業の誘致などに力を入れて取り組んでまいる考えであります。
 また、現在、県内各地で企業立地促進法に基づく基本計画の策定が進められているところでありますが、年度内には県内全域で基本計画について国の同意を得られる見込みであり、気仙地域では食品産業、木材関連産業を重点業種としていることから、今後は、内陸部との横軸、また沿岸部との縦軸のインフラ整備も促進しながら、こうした業種を中心に誘致活動に取り組むほか、県北・沿岸地域でより高い補助率を設定している企業立地促進奨励事業費補助などを活用しながら、県と市町村が連携して企業誘致を進めてまいります。
 次に、企業誘致活動における市町村との連携についてであります。
 現在、県及び県内29市町村等により岩手県企業誘致推進委員会を組織し、共同で東京、大阪等での企業誘致セミナーなどを開催しているほか、企業誘致のスキルアップのため担当者研修などを実施し、その資質の向上に努めているところであります。また、新規の誘致案件につきましては、企業情報を共有し、合同で企業訪問するなど、関係市町村と緊密な連携のもとに取り組んでいるところであります。
 本庁と振興局との連携につきましては、本庁と振興局とが企業誘致の戦略等の共通認識を持ち、本庁は県外企業の誘致折衝及び主要企業とのフォローアップを中心として、また、振興局は管内の既立地企業のフォローアップにそれぞれ重点を置いて取り組んでいるところであります。今後とも、これら市町村等との連携につきましては、常に情報の共有を図りながら誘致活動に取り組んでまいる考えであります。
 次に、企業誘致後のフォローアップについてでありますが、県では、フォローアップ日本一の県を目指して、知事を初めとして本庁及び振興局によるフォローアップに積極的に取り組み、本年度1月末現在で約300件の企業を訪問しているところであります。これらの機会を通じて、県等に対するさまざまな要望を聴取し、県の施策に反映するとともに、企業の要望する人材確保や企業間取引の拡大などの支援もあわせて行いながら、企業のさらなる増設や2次展開の促進を図っているところであります。現在、これらの取り組みにより、企業の増設等が見られるところでありますが、今後ともフォローアップには力を入れ、既立地企業の本県における拡大に努めてまいる考えであります。
   〔総務部長川窪俊広君登壇〕
〇総務部長(川窪俊広君) 消防広域化計画の素案に係る関係市町村からの意見聴取の結果についてでございますが、県内の各市町村に対しまして意見照会を2月末までを期限として行ったところでございます。現時点ではまだ出そろっていない可能性もございますが、寄せられた意見を見ますと、意見なしとの回答のほか、一般論としての広域化の必要性には理解を示しつつも、具体の組み合わせについては現状では困難との意見、また、関係者間でのさらなる議論が必要との意見などさまざまな内容となっております。これらの意見と、3月7日までを期限として実施しておりますパブリックコメントに寄せられた意見とをあわせまして、調査検討委員会でも検討を行った上で、県としての広域化推進計画の取りまとめに向けまして、さらに検討してまいりたいと存じます。また、素案に賛同できないとする市町村との関係などにつきましては、今後、広域化の必要性についての県の考えを、それらの市町村や消防本部に丁寧に御説明しつつ、同時にその市町村や消防本部が希望しておられる広域化の姿などをよくお伺いしながら、今後の広域化が円滑に進むような取り組みを検討してまいりたいと存じます。
   〔保健福祉部長赤羽卓朗君登壇〕
〇保健福祉部長(赤羽卓朗君) 岩手医科大学の地元入学枠の関係でございますが、まずもって、県内の医師の絶対数を確保するためには、より多くの本県出身者に医学部に進学してもらうということが重要と考えております。岩手医科大学医学部にいわゆる地域枠として50%以上を設定することは、医学部進学者の増につながるものとは考えておりますが、実際上、同大学が私立大学であるため入学者の学費の負担が大きいことや、医学進学者の中には国公立大学で学びたいという希望の方も少なからずあるということ、また、大学の考え方も当然あると考えております。こうした中で、直ちに大幅な地域枠の拡大は難しいのではないかと考えております。県といたしましては、まず、来年度からの岩手医科大学医学部の10名の定員増について、地域枠として設定していただいたところでございまして、これまでの80名の定員が90名、うち10名が地域枠ということになっております。さらに、昨年5月に政府・与党が公表しました緊急医師確保対策に基づく平成21年度からの新たな5名の定員増につきましても、地域枠とすることについて、岩手医科大学と具体的な協議を進めてまいりたいと考えております。
   〔医療局長法貴敬君登壇〕
〇医療局長(法貴敬君) 気仙医療圏の県立病院の医療体制についてでありますが、県立病院は、医師の地域別、診療科別の偏在や患者数の減少などに伴い、厳しい経営環境に置かれているところであり、今後は、民間医療機関も含めた県全体の医療提供体制の中で、県立病院と他の医療機関との役割分担と連携を図るとともに、それぞれの県立病院が特色を生かしながらネットワークを構築し、地域医療を確保していくことが必要であると考えております。
 気仙地域においては、大船渡病院が圏域の基幹病院としてその機能を発揮するように努めるとともに、他の病院等は、大船渡病院との連携をより一層強化しながら役割を明確にして地域医療を確保していくことが必要であると考えております。また、医師確保については、関係大学への医師派遣要請を重ねたところ、岩手医科大学の御理解をいただき、この4月から、圏域で不足している循環器科医師の招聘におおむねめどがついているところであり、今後とも、引き続き関係大学への要請を続ける一方で、公募等により即戦力医師の招聘にも努めてまいります。
 次に、県立住田病院の診療所化についてでありますが、診療所化は、入院患者数の減少に伴い空き病床が増加してきたことから、平成16年度から進めている県立病院改革の一環として、病床規模の適正化を図りながら、限りある医療資源のもとで県民に良質な医療を持続的に提供していくために行うものであります。住田地域診療センターは、常勤、応援を含めて平均3人以上の医師の確保に努め、本院との役割分担と連携を深めながら、外来診療と夜間・休日等の初期救急を中心とした役割を果たしていくほか、訪問診療、訪問看護にも取り組んでいくこととしております。しかしながら、一方で医師の絶対数の不足や、地域別、診療科別の偏在がますます顕著となり、また、公立病院改革ガイドラインに基づく改革プランの策定が義務づけられたことにより、県全体の医療提供体制の中での県立病院のあり方をなお一層論議していくことが求められており、今後、その議論を踏まえながら、各病院等の機能や特色を一層明確にした新しい経営計画を策定していくこととしております。
   〔教育長相澤徹君登壇〕
〇教育長(相澤徹君) まず、併設型の中高一貫教育の取り組みについて、県立高等学校新整備計画後期計画との整合性についてでありますが、後期計画では、平成17年度から平成21年度までの計画期間内に、検討委員会から中高一貫教育のあり方についての報告を受け、県教育委員会として具体的な方向性を示すこととしていたところであります。この方針に基づきまして平成17年度に検討委員会を設置いたしまして、検討いただいた上で、平成19年2月に県として併設型の中高一貫校を設置する方針を固めて、その準備を進めてきたところであります。また、併設型中高一貫校の今後の取り組みについては、平成21年度に開校する県立中学校が目指す教育がどのように進展しているか、県立中学校の設置による地域の義務教育に与える影響はどうであるかなど、1校目の導入の成果と課題を検証し、次の方向性はどうあるべきかを検討していく考えであります。
 住田町の提言と中山間地域の人材育成についてでありますが、まず、住田町が掲げる中山間地型・併設型の県立中高一貫校については、中山間地域の人材育成のあり方について一つの具体案を取りまとめたものと認識しておりますが、地域における生徒数が将来にわたり減少が続く見通しなどを考慮した場合に、設置の責任者たる県として、相当慎重な検討が必要ではないかと率直に感じているところであります。
 中山間地域の人材育成につきましては、地域の産業を支え、地域を担う人材をどう育てるかという視点が重要であります。地域の行政や産業界、義務教育も含めた学校関係者、そして地域の多くの方々との十分な協議が必要であり、教育委員会としては、平成22年からの本県の高校教育のあり方をめぐる検討の中で、地域の協議に十分に参画し、それぞれの地域の人材育成の方向づけに向けて取り組んでまいりたいと考えております。
 新しい高田高校についてでありますが、新しい高田高校は、1学年は5学級、2学年、3学年はそれぞれ6学級の編制となる見込みでありますが、高田高校の校舎は建築当時から1学年7学級規模で整備をされており、十分な教室が確保されます。既に各教室の整備や昇降口、下足箱等の準備を終え、万全の受け入れ態勢を整えております。また、両校生徒の融和については、本年度1年間をかけて、遠足、文化祭などの学校行事や高田松原海岸の清掃などのボランティア活動、さらには部活動などを通じて両校生徒の交流を積極的に進めてきたところであり、新しい学校づくりに向けて生徒同士の意識も高まっているところであります。
 高田高校の海洋システム科の教育についてでありますが、新設する海洋システム科においては、つくり育てる漁業を中心とした漁業生産から加工や流通・販売に至る一連の水産に関する分野の総合的な教育に重点を置くとともに、海洋環境、海洋スポーツなども取り入れた幅広い分野の教育内容とする予定であります。特にも、現在の広田水産高校が取り組み、大きな成果を上げてきました地元の水産物を利用した製品開発の学習を発展させるとともに、関連企業におけるインターンシップあるいはチャレンジショップといった現場実習の充実を図り、地域の産業界との連携をより一層深めることによって、海洋システム科の目的に沿った進路を実現できるように取り組んでまいります。
 次に、実習施設についてでありますが、水産教育の実習授業については、現在の広田水産高校に、実習艇を格納する艇庫や、缶詰等の製造実習を行う食品製造実習室など、水産に関する実習施設が整備されていることから、今後もこれらの施設設備を活用して実習を行う予定であります。また、実習の際には、生徒が現在の広田水産高校まで移動する必要があります。したがいまして、生徒移動用のバスを配置して円滑な移動を図るとともに、移動の時間のロスを最小限とするために水産実習を集中させた時間割りを編成するなど、カリキュラムの面でも工夫をしてまいりたいと考えております。なお、将来につきましては、現施設の老朽化等の状況を見ながら検討してまいりたいと考えております。
〇10番(菅原一敏君) 御答弁をいただきましてありがとうございました。
 何点か再質問をさせていただきたいと思います。
 まず、公共職業安定所の再編、出張所の廃止についてでありますけれども、いずれ、国の方針として廃止が避けられないということになれば、地域住民へのサービスの低下を来さないような代替措置が必要だという御答弁もあったわけでございますが、そのためにはやはり時間も必要なわけでございますから、この廃止について、何年か先延ばしにすることについて国に対して働きかけをするようなことはどうなのか。
 それから、今、地方分権の時代を迎えているわけでございますけれども、国の公共職業安定所という仕事、出張所で行っている仕事のあり方ということについて、国との間で検討されるなり、さまざまなことを通じまして、例えば県に対する権限移譲はできないものなのか、そういうことについて国等に対する提案といいますか、そのようなことはお考えになられておられないか、知事の考え方をお伺いしたいと思います。
 それから、医療局長にでございますが、診療所化後の住田病院について、新しい病院の経営計画の中で検討、位置づけをされるということでありましたけれども、いずれ、診療所化に当たって住民に対し医療局から説明した事項については、そのことをきっちりと参酌していただいて、経営計画にも盛り込んでいただくようにお願いしたいと思いますが、その辺についてもう一度お聞かせいただきたいと思います。
 それから、教育長にお尋ねいたしますけれども、中高一貫教育のあり方にかかわってでございますが、いずれ、一関一高の成果、県立中学校の成果、これらを踏まえて次の取り組みをされるということになるわけでございますが、少し時間をかけて中山間地域の人材育成のあり方などについてもじっくりと御検討をされて、そして本県の中高一貫教育はどうあるべきか、2校目、3校目をどのように対応すべきか、もう一度教育長のお考え、それからスケジュールも含めてお尋ねしたいと思います。
 最後ですが、広田水産高等学校の旧校舎については、老朽化するまでは実習施設として高田高校からのバス移動によって使用するということでございますが、老朽化するまで待ったのでは、今後何十年かかるかわからないわけですから、財政状況もあろうかと思いますけれども、生徒の利便性、時間的なロス、いろんなことを考えますと、それから、学校の全体を利用するわけではなくて、広田水産高校の一部を利用するがために、全体の地域での利活用に供することもできないわけですから、できだけ早い機会に新しい実習施設の建設と、それから、地域への広田水産高校の跡地・校舎の利活用について御配慮をいただきたいと思いますが、御見解をもう一度お聞きしたいと思います。
 以上でございます。
〇知事(達増拓也君) 公共職業安定所出張所の廃止延期についてでございますが、2月27日に開催された労働政策審議会において、厚生労働省のほうからは、全国で公共職業安定所の出張所を含め17カ所を廃止することなどを盛り込んだ2008年度の再編整備計画を確定したものとして説明したと聞いておりまして、国における計画の撤回、変更は困難な状況にあると考えております。
 公共職業安定所業務の権限移譲につきましては、岩手県として、ことしの1月に国の地方分権改革推進委員会に対しまして提言書の提出をしました。地方分権推進のための国の制度改正等に関する緊急提言書として、その中に8項目の一つとして公共職業安定所業務の権限移譲について盛り込んだところであります。現在、地方分権委員会の場において、本県の要望等も踏まえ議論がなされていることから、その動向を注視してまいりたいと思います。
〇医療局長(法貴敬君) 新しい経営計画というものは、今年度策定されました医療計画との整合性や、新たに来年度早目にやられます地域医療連携会議の議論などを通じて策定することになります。その議論を通じて、我々が今、診療所化した経緯、あるいはそのやったことに対するさまざまな住民説明なども十分参酌しながら策定してまいりたいと考えています。
〇教育長(相澤徹君) まず、住田町からの提案も踏まえてということでありますが、住田町の提案につきましては、ある意味では中山間地域でこういう教育をやりたいんだという一つの考え方は示されていると思うのでありますけれども、なかなかそれがああいう形でストレートに実現できるものかどうかというのは、相当慎重に考えなければいけないとも考えております。いずれ、平成22年度以降の本県の高等学校の教育のあり方、再編も含めてでありますが、しっかり議論してまいりたいと思って、今いろいろ議論を開始しております。来年度も有識者の検討委員会も設置いたします。そういう中で中山間地域の高校教育のあり方、そして、中高一貫校のあり方も含めて、しっかりベースになる議論をしてまいりたいと思いますので、また、その議論の中でいろいろ話し合いもさせていただきたいと思っております。
 それから、高田高校の実習施設でありますけれども、高校の再編もございますし、老朽化している高等学校はたくさんありまして、体育館などでも大変なところもございまして、これから長期的にどういうふうに高校の整備にお金をかけていくか、財政見通しも踏まえながらしっかりとした長期プランを立てたいと思っております。その中で、やはり優先順位の高いものからやっていきたい。安全性の問題もございますので、そういうふうに考えております。同時に、もし地元でいろいろ使われたいといったようなことが何かあれば、御提案があれば、またひとつ優先順位も上がっていくのかなと思いますので、また、その辺も含めて検討させていただきたいと思います。
〇議長(渡辺幸貫君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後5時28分 散 会

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