平成20年2月定例会 第5回岩手県議会定例会会議録

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〇31番(佐々木順一君) 民主・県民会議の佐々木順一でございます。私は会派を代表し、民主党の理念にのっとり、県政の基本問題についてお伺いいたします。
 初めに、知事の任期についてお伺いいたします。
 知事はマニフェストで、みずからの任期を、原則2期8年と明言されました。私は、この勇気ある表明は、多選の弊害を排除することを法整備に求めるものではなく、また、選挙民にその判断をゆだねるものでもなく、みずから退路を断つことによって使命を果たすとの、いわば覚悟に満ちた決意の表明と受けとめており、究極のマニフェストであると理解しております。ついては、権力は腐敗する、絶対的権力は絶対的に腐敗するとの歴史の教訓がありますが、みずから任期を制限された真意についてお伺いをいたします。
 関連しお伺いいたしますが、問題は、自主的に任期を区切ることに意味があるのではなく、県の最高指導者として、何をなし、どういう結果を残すかが最も大事な事柄であると思います。
 知事は、今直面している岩手の危機に正確に向き合い進むべき指針、すなわち希望を掲げ、県民の士気を鼓舞されておりますが、人間の病に例えるなら、危機は診断であり、希望はすなわち処方せんであると思いますが、その希望の先にどういう健康体の岩手が存在するのでしょうか。
 地方を弱体化させた三位一体改革などにより、さまざまな病理現象を抱えている現在の地方自治体でありますが、今後、地方自治体は国政とどう向き合うべきか。特にも、民主主義の原点とも言うべき草の根政治を標榜されている達増知事でもありますので、地域主権社会のあるべき姿も含め、真の民主主義観についてお伺いいたします。
 次に、明年度予算案についてお伺いいたします。
 知事就任後、初めての当初予算編成となった20年度予算案は、みずから希望創造予算と命名されるとともに、その性格を、希望の芽を守り育てる出発点と位置づけるなど決意の一端を示されましたが、これは、前知事から引き継いだ未決処理問題を初め、本県が抱える県民所得の向上、雇用環境の改善、人口減少問題、地域医療の確保、そして、深刻な財政状況のいわば五大危機を克服するため、予算編成に合わせ取りまとめられた平成22年度までの中期財政見通しのもと、いわて希望創造プランの実効性確保に向け、戦略的に編成されたものと承知しております。しかしながら、プライマリーバランスが達成できなかったことは残念でありますけれども、国が今までとってきた国民生活を犠牲にしてまでこだわり続ける財政健全化至上主義は、そもそもあってはならないことであり、県民生活最優先を唱えるのであれば、今回の対応はやむを得ない措置と理解するものであります。ついては、初めての当初予算編成作業に当たり、どのような所信を持って臨まれたのか。また、予算案に込められた知事の魂をお示しいただきたいと思いますし、予算の効果を最大限発揮するためには、県民の意欲に満ちた理解と協力が必要不可欠でありますので、この際、県民へのメッセージをお示しいただきたいと思います。
 さらに、今回、プライマリーバランスの未達成が生じたことについてどのように受けとめておられるのか、御見解をお伺いいたします。
 次に、中期財政見通しについてお伺いいたします。
 前任者から引き継いだ県財政は、岩手競馬の救済措置のための基金の取り崩しなどから、主要3基金の残高は百数十億円台まで落ち込む一方、当初は毎年100億円規模の財源不足が生ずるおそれが見込まれるなど、絶体絶命の危機的状況に直面しておりましたが、今般、財政危機を回避するため基金の活用や1、000件を超える事務事業の総点検、さらには、新たに3年間で60億円余の給与削減を図ることなどによって、これまで行われてきた歳出削減の流れ、すなわち負のスパイラルに一定の歯どめをかけ、結果として、今後3年間の県財政の底固めを行ったことは評価したいと思います。しかしながら、主要3基金の残高見通しは、平成22年度には51億円程度の財政調整基金のみであり、財政基盤は依然として深刻な状況が続くことは避けようのない事実であります。ついては、これからの県税や地方交付税を初めとする歳入についてどのような見通しに立っておられるのか、今回の中期財政見通しを踏まえた23年度以降の財政運営のあり方についてお伺いいたします。
 次に、次期総合計画の策定とマニフェストの取り扱いについてお伺いいたします。
 知事は、次期総合計画について演述で手短に言及されましたが、私は、ポスト総合計画の策定作業に当たって特に留意すべき視点は、これまでの団体自治主導のものから、住民自治の理念に基づくものに実態を移すべきであり、何よりも意見集約のためのプロセスを大事にすべきと思っております。
 例えば、知事は、地域コミュニティを殊のほか大事にされておりますが、住民自治の最先端と言うべき地域コミュニティの集合体が地方自治体であるとするならば、これらの意向を広範囲に集約し、計画に反映させる仕組みづくりを考慮する必要があると思いますが、いかがでしょうか。
 また、計画の完成品は県民だれもが理解できるような平易でわかりやすく、しかも、簡素でありながらも内容が充実したものが望まれます。ついては、次期計画はどのようなお考えに基づき策定に着手されるのか、作業開始の時期、意見集約の方法や審議会のあり方、計画の柱をなす主な要素、さらには、目指す目標についてお伺いいたします。
 引き続きお伺いいたしますが、前知事のマニフェストは、県行政の中では明確な位置づけが確認されないまま県政が運営されてまいりましたが、今回から知事のマニフェストは行政の執行計画と一体化され、いわて希望創造プランとして策定されたことは、大いに評価するところであります。言うまでもなく、マニフェストはいわば首長と住民との契約であることから、県行政の施策の中でも優先的に取り扱うべきものでありますが、その有効期間は4年間であり、しかも県計画の実効性を確保するものでなければなりません。ついては、次期計画の中間年次は、マニフェストが効力を失う時期ごとに定めるべきものと思いますが、いかがでしょうか。次期計画期間をどう定めるのかも含め、合理的な御見解をお伺いいたします。
 次に、マニフェストに関連し、広域振興局の整備についてお伺いいたします。
 知事は、マニフェストで岩手四分の計を唱えるとともに、4広域振興圏を将来の自治体に位置づけることを明言、さらに新地域主義戦略の中では、4広域振興圏が明確な顔を持った地域とするため、それぞれの地域の経済基盤の確立にさまざまな取り組みを進めることを強調されておりますが、いわて希望創造プランの実効性を確保しマニフェストを実現するためには、県行政の地域の拠点をなす、残る三つの広域振興局の整備は急ぐべきものと考えます。
 この問題については、当初はおおむね10年後を目安に、原則として広域振興圏ごとに一つの局を目指すというのが県の公式的立場でありましたけれども、その後、知事は議会で、22年度を目途に一定の姿を示す旨の踏み込んだ答弁をされておりますが、この一定の姿とはどういうことを念頭に置かれているのでしょうか。思うに、計画案を指しているものと思いますが、いずれにしろ幅広い解釈が可能であることから、一定の姿とは何を意味されるのか、具体的内容についてお伺いをいたします。
 また、当初のおおむね10年後を目安にという原則は、どのように取り扱われるのでしょうか。公平であるべき行政体制が変則状態のまま10年間も続くことは、そもそも異常であります。さらに、振興局の整備は通常の行政組織の問題ではなく、マニフェストにも掲げられたことから、いわば知事の意思が先行するべきであり、目標年次は明確に定めるべきものと思いますが、御見解をお伺いします。
 次に、県民所得の向上についてお伺いいたします。
 現在の総合計画の中では、県民所得については着実な上昇を維持すると強調されておりますが、先般発表された内閣府の県民経済計算によると、都道府県民1人当たりの所得額は全国平均で304万円余に対し、本県は230万円台に低迷、ほとんどの都道府県が前年度を上回る中にありながら、本県ほか7県のみが前年度を下回り、全国順位も38位と厳しい情勢下にあります。県民所得の向上に有効な施策を打てなかった前任者の結果責任は極めて重いものがありますが、今回、知事は、社会経済情勢の変動に著しく左右されるリスクの高い所得の向上に正面から向き合い、今後4年間で1人当たりの県民所得を平成12年度水準、すなわち、260万円台まで引き上げることを行政執行面で明確に目標設定されたことは、まさに民のかまどをほうふつさせる取り組みであり、率直に評価したいと思います。しかしながら、問題は、数値目標を達成することではなく、国民負担率の関係なども考慮しながら、個々の可処分所得をどのように確保するかが問われると思います。また、目標達成には国民の意欲を高めることが必要であることから、全県レベルの目標値もさることながら、生活に密着した目標値、例えば四つの広域圏別あるいは産業別など、個別の目標設定も検討すべきと思います。ついては、さまざまな領域における可処分所得をどう描いておられるのか、また、個別の目標設定の要否について御所見をいただきます。
 関連しお伺いいたしますが、所得の目標達成のためには、産業別の成長を段階的にどう高めていくかが求められると思います。知事も政策の6本の柱の中で、地域に根差した世界に挑む産業の育成と日本の食を守る食料供給基地岩手の確立を掲げるとともに、産業振興は県民所得の向上や雇用を守ることに直結するものであり、本年度の最重要項目の一つとの認識を示されておりますが、現状は、農林水畜産業においては、原油高、飼料価格の高騰、生産調整の行き詰まりや、農村社会の崩壊に拍車をかけるような国の品目横断政策の導入などにより、それぞれの粗収益が物財費を大きく割り込んでいるのが実態であり、もはや自助努力の限界に達しております。また、雇用情勢も、労働者派遣法改正で規制を緩めたことなどにより、非正規労働者はこの10年間ふえ続け、その実態は全労働者の3分の1にまで達し、今やフリーター、ワーキングプア、ネットカフェ難民という言葉が平気でまかり通る社会になっており、最低限度の生活すら保障されない労働者がふえ続けているのが実情であります。ついては、当面の緊急措置として、原油高、飼料価格の高騰や非正規雇用の縮小などにどのような具体的対策をとられるのか、お伺いをいたします。
 また、第1次、2次、3次産業別の成長をどう見込んでおられるのか、260万円達成に至る道筋と、その要因についてお伺いをいたします。
 なお、演述では、厳しい地方の疲弊にかんがみ、国の緊急経済対策の早期実施の必要性に言及されておりました。共感するものでありますが、一口に経済対策と言っても財政出動もありますし、減税などの制度改正あるいは金融政策もあります。しかしながら、政府は、もはや経済は一流ではないとの認識に象徴されるように、危機感が極めて希薄であります。ついては、どのような具体的経済対策を期待されているのか、また、政府に対しどういう手段を駆使され実行を求めていかれるのか、お伺いいたします。
 次に、コミュニティづくりについてお伺いいたします。
 このほど行った県のコミュニティ調査によると、集落の定義が明確ではない、担当課が定まっていないなどの理由から、8市町村が回答できない部分があったとお聞きしておりますが、住民生活の実態を把握し、ライフミニマムの確保に努めることが行政の最低限の任務であるにもかかわらず、多面的機能を持つかけがえのないコミュニティの実態を把握していない自治体が存在するということは極めて残念であり、市町村に対する県の適切な助言を求めるものであります。格差社会の象徴であって、今の悩める日本社会の縮図そのものである集落衰退の深刻さは、国、県、市町村とも危機認識を一にしておりますが、限界集落以外にも、55歳以上が半数以上を占める準限界集落も数多く存在しており、予防行政の展開も強く求められております。
 国も限界集落の支援事業として、明年度予算に5億円余を新規計上しましたが、これでは全くもって焼け石に水であります。もはや、国、地方を挙げて再生に向け、総合的かつ本格的な取り組みを行うべき局面を迎えていることから、この上は、上下流域共同管理の考えに徹し、ほとんどの県が導入しているいわゆる森林税の趣旨に倣い、国に対し、山の面積などに着目した目的税としての森林環境税の創設を強く要請すべきと考えます。財政論的には、目的税は極力避けるべきものとされておりますが、道路特定財源よりはるかに納税者の納得が得やすいと思いますが、御見解をお伺いいたします。
 また、限界集落あるいは準限界集落で暮らす方々が今最も強く望んでいるのは、医療、福祉、教育と並んで、携帯電話や地デジなどの情報機能の早期の整備であり、ここで暮らされている人々にとっては、まさにライフラインそのものであります。この際、予防行政の一環として、限界集落あるいは準限界集落に限定した具体性のある年次別整備計画を作成し、それを公表することによって、人口流出に一定の歯どめがかかるものと思います。
 情報は、情けに報いると書くわけでありますから、文字どおり知事の情けのある御見解をお伺いいたします。
 しかしながら、集落活性化の究極のねらいは、コミュニティが権力や行政に対するそもそもの権利、すなわち、直接請求や住民投票などの直接参政の行使に純粋に習熟し、団体自治をコントロールするような成熟した住民自治の形成に照準を定めるべきであり、これこそ知事が唱える草の根と言えるのではないでしょうか。
 一方、過度の行政のコミュニティへの介入は、住民自治を弱体化させるおそれもあります。また、直接参政の行使については、当然のことながら、市町村からは歓迎されないことも承知しておりますが、私は、首長など地方の政治関係者が政府に対し地方分権を声高に唱えることもさることながら、並行して最先端の自治権の確立にも、草の根支援事業を通じながら、県行政が節度を持ってその醸成に一定の役割を果たす必要があるものと思っております。一見、相反する領域であることから違和感があることは否定するものではありませんが、双方がこののりを越えることによって自治権と行政権が対等になるものと思いますし、こうした関係が実現してこそ、負担と受益の関係も正しく理解され、ローカルスタンダードの定着にも貢献するのではないでしょうか。自治経営に最も必要な真の協働を目指すためにも、ぜひ、県としてコミュニティ再生支援に意を用いるべきと思いますが、御見解をお示し願います。
 次に、平泉の世界文化遺産についてお伺いいたします。
 知事は演述で、7月の登録に関し、岩手の価値の一部が世界に認められることであり、本県が世界から注目される年であるとの認識を示されましたが、まさにこれまでの日本の中の岩手が、7月のある時点から、突然世界の中の岩手に急浮上することになります。知事みずからも登録後の1年間をいわて平泉年と定め、その価値を内外に広く発信するとともに、プロジェクト事業の全県的展開に強い意欲を示されておりますが、私は、国内向けの事業展開もさることながら、並行して、世界に向けて平泉の価値を具体的に発信する必要もあると思います。幸い、知事は外務省出身でもありますので、例えば国内にある国際機関や各国大使館などを訪問され、岩手の中の世界文化遺産・平泉を正しく理解していただくための取り組みも検討すべきと思いますが、いかがでしょうか、御見解をお伺いいたします。
 関連し、いわて花巻空港の平行誘導路整備についてお伺いいたします。
 大規模事業評価委員会の答申を受け、県は舗装工事を5年間休止しており、供用開始時期は、早くて22年度以降とされておりますが、本年7月に世界遺産に登録され、知事が国際機関などに平泉を情報発信されれば、必然的にいわて花巻空港の早期の国際標準装備を求める声は次第に高まってくるものと思いますし、そもそも5年間休止の決定時期は平成15年10月末であることから、平泉世界遺産問題は想定されていなかったものと思います。
 一方、委員会の答申には、社会経済情勢等の変化があり、再評価を実施する必要があると判断した場合には、再度、再評価を実施する旨が述べられております。よって、平泉の世界遺産登録は、答申に付されている社会情勢などの変化に相当するものと思いますし、何よりもこうした中にありながらも、当分の間、いわて花巻空港の国際標準化を見送ることは、費用対効果以上にあらゆる面において著しい損失をもたらすものと心配されます。ついては、花巻空港の国際標準化に向け、委員会への諮問も含め事務作業を早急に進めるべきと思いますが、御見解をお伺いいたします。
 次に、いわゆる森のトレー問題についてお伺いいたします。
 当該事案は、一般常識では考えられないような不適切な事務処理、不自然な補助金交付などの事実が確認されながらも、責任の所在が明確にならなかったことから、議会でも、現地視察、関係者の参考人招致、さらには連合審査会への知事の自発的出席など、制度的に許されている議会の権能を最大限に駆使し、真相究明に努めてまいりましたが、結果として、訴訟の道を選択せざるを得なかったことは残念であります。競馬問題もしかりでありますが、こうした行政執行上の不祥事が発生した場合、行政関係者などの責任は不問となるケースが多く、結果として、県民が税負担という形で最終責任を押しつけられることがほとんどであります。ついては、明年度予算案に国への返還金が計上されておりますが、県民が最終責任を負わなければならないということについてどのようにお考えになられているのか、御見解をお伺いいたします。
 また、返還の根拠となっている補助金適正化法の欠陥も明らかになりました。例えば、免除規定がほとんど国の裁量にゆだねられていること、あるいは事業主体の失敗をすべて地方に負わせ、国は一切の責任を負わない規定になっていることなどであり、地方分権を明らかに阻害している法律であることは、疑いの余地のないところであります。ついては、今回の教訓を生かし、いわゆる国の補助金の縮小と相当分の一般財源化に向けどのような取り組みをされるのか、あわせてお伺いをいたします。
 最後に、補助金的問題の象徴とも言える道路特定財源問題についてお伺いいたします。
 議論が沸騰していた道路特定財源問題は、いわゆるつなぎ法案がつながらなかったことによって国会の審議も落ちつきを取り戻しつつありますが、つい最近まで、政府は無駄な道路はつくらせないと豪語し道路公団の民営化に踏み切った小泉内閣、あるいは道路特会の余剰金の一般財源的処理に踏み込むとともに、次年度の法改正を閣議決定した安倍内閣の取り組みに見られるように、一般財源化についてはそれなりに筋を通されてきたものと思っております。
 一方、こうした国政の動向に民意も敏感に反応を見せております。例えば、一般財源化を望む声は各種世論調査のたびにふえており、現下の国民生活を苦しめている原油高も影響し、直近の調査によると、一般財源化賛成が54%、反対が35%というデータが示されております。特にも、道路整備中期計画については、計画を推進すべきが14%に対し、計画を減らすべきが75%になるなど、国民は極めて冷静にこの問題をとらえております。ついては、道路が必要なのか、道路工事が必要なのか、あるいはそれ以外の目的なのか、政府の意図は判然としませんが、民意をどう把握されているのか、お伺いいたします。
 引き続きお伺いいたします。道路特定財源の一般財源化については、これまで我々は国政選挙のたびにマニフェストに掲げてきたところであり、今回、暫定税率の廃止と廃止分の代替財源として国直轄事業負担金を廃止し、これを一般財源化することなどを柱とする具体的改革案を国民に示しております。
 試算では、本県の場合、平成20年度ベースで、暫定税率廃止による減収額153億円に対し国直轄負担金は216億円であり、財政上63億円のプラスになります。加えて、車のユーザーに対する減税効果も発生することから、これを本県1世帯当たりに置きかえますと、実に7万6、000円の負担軽減になり、結果として、大都市と地方との負担格差の縮小に大きく貢献することにもなります。もとより、我々の今回の改革は、事の本質は、これからの国の資源配分は社会保障や医療、教育、環境など、財政需要の高い分野にシフトさせなければならないという使命感と、この問題を地方分権改革を初め、国の税体系の抜本的見直しに踏み出す第一歩にすべきであるとの強い認識に基づくものであります。しかしながら、今日、地方6団体が一貫して国に対し、国直轄事業の廃止や国庫補助負担金の廃止に伴う一般財源化を強く求めてきたにもかかわらず、今回の問題に限り、全国知事会を中心に、ほとんどの首長が道路特定財源の維持で足並みをそろえていることは極めて残念であり、特にも分権改革の旗手として、現職のときにはその旗振り役を務めてこられた総務大臣が、道路特会10年間維持の立場をとられていることは、甚だ理解に苦しむところであります。確かに、各地方自治体は、道路特定財源を前提に予算編成を行っていることから、現時点での一般財源化に不安を抱くことは理解するものでありますが、暫定税率が廃止された場合でも、予想される地方財政上の混乱あるいは国民生活における混乱を回避する責任は国にあることから、地方は、言われているようなさまざまな脅迫観念にとらわれることなく、暫定税率の廃止に伴う一般財源化、地方の道路予算の確保、さらには、混乱回避の3点セットを政府に求めることに心を砕くべきであります。ついては、今、個々の首長に求められているのは、予算単年度主義にこだわった歳入欠陥を回避するだけの行政判断ではなく、住民の立場に立ちながら分権改革の行く末を念頭に置いた政治的行動そのものであると思いますが、道路特定財源制度はどうあるべきか、知事の御所見をお伺いいたします。
 また、真に必要な道路に対しては、どなたも異存がないところでありますが、言葉のみ先行し、その実態が国民の前に明らかになっていないことが議論をわかりづらくしている側面があります。国の責任で建設する道路と、地方が主体的に優先順位をつけて、責任を持って建設する道路を県民の前に明確にすることが議論の出発点であることから、これを県民の前に明らかにする仕組みづくりを検討すべきと思いますが、御所見をお伺いいたします。
 さらに、道路予算が10年間固定されることを認識しながらも、全国ほとんどの首長が、足並みをそろえ特定財源の維持を訴えていることは、分権改革をあきらめることと同じであり、まさにあってはならない行動であると思いますが、御見解をお伺いいたします。
 以上で質問は終わりますが、今日、地方自治体は受難の時代を歩むことを余儀なくされております。どうぞ、達増知事におかれましては、草の根政治の実践を通じ、真の自治権確立に向け勇往邁進されますことを心から御期待を申し上げ、御清聴いただきましたことに感謝を申し上げまして質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 佐々木順一議員の御質問にお答えいたします。
 まず、私が、マニフェストで知事の任期を原則2期8年としたことの真意についてでありますが、地方分権の進展に伴い、首長の権限はこれまでと比較し強まっていると言えます。その中で、多選は行政の硬直化やマンネリ化を招くおそれがあること。実際、各地の自治体で談合事件に絡み首長が逮捕される事件が続発し、その要因の一つに首長の多選問題が挙げられていることなど、私も多選の弊害を強く認識しているところであります。私自身、知事の任期は原則2期8年が適当であると考え、県民と県行政との信頼関係を構築する上でもマニフェストに明示し、県民の皆様とのお約束としたところであります。
 次に、希望の先にある岩手の姿についてでありますが、私は、希望の先にある岩手の姿とは、県民一人一人がふるさと岩手で豊かで安心して暮らしていける喜びを感じることのできる社会であると考えております。
 具体的に申し上げますと、県民の所得や雇用が確保されることにより安定した生活が送れることや、医療・福祉などセーフティネットの充実により、子供からお年寄りまで、だれもが安心して暮らせる社会が希望の先にある姿であると認識しております。
 私は、今般策定したいわて希望創造プランに基づき、ものづくり産業や農林水産業、観光などの産業振興、医師確保や子育て環境の整備などのともに生きる岩手の実現に向けた取り組みを着実に推進していくことで、県民一人一人が希望を抱き、その希望を実現していくことこそが、まさに希望の先にある健康な岩手につながるものと確信しております。
 次に、真の民主主義観についてでありますが、私は、先日の所信表明において、地域主権の確立とは、主権者である県民が地方自治の本旨である自立と共生の道を進んでいくことと述べましたが、この地域主権社会のあるべき姿を実現するためには、国を支える源泉である草の根の地域コミュニティが元気であることとあわせ、地域住民の視点に立った行政を総合的に担える地方政府の確立が不可欠であると認識しております。そのため、今後、地方自治体は、自治行政権、自治立法権、自治財政権を有する完全自治体に生まれ変わることが必要であり、このことが、これまでの地方分権改革で目指した国と地方の対等協力の関係の確立にもつながるものと考えております。
 現在、さらなる地方分権改革の実現に向けた議論が活発になされていますが、私としても、全国知事会を通じた国等への働きかけも行いながら、地方政府の確立による地域主権社会の実現を通じ、地域のことは主権者である県民の判断で決めるという真の民主主義の実現を目指し、積極的に取り組んでまいります。
 次に、平成20年度の当初予算についてでありますが、これは、私にとって初めての当初予算であるだけではなく、いわて希望創造プランや3年間の中期見通しの策定作業とあわせて実施した予算編成であり、この予算を、危機を希望にという私の県政推進の基本方針を明確に体現するものとしなければならないという強い決意を持って臨んだものであります。特に、すべての県民がふるさと岩手に誇りと愛着を持ち、安心して暮らしていくことができるよう医療や福祉などのセーフティネットを充実させること、本県が有する地域の特性やさまざまな資源を活用しながら地域経済の活性化を実現することといったことを基本に、重点的に取り組むべき施策や事業に関する予算を積極的に計上しております。極めて厳しい財政状況の中で、中期的見通しを持ちながら、こうした施策の積極的、重点的な予算化を行うため、私自身が予算編成過程ですべての政策的経費に目を通し、全庁的な調整を行いながら、地域振興や産業振興、地域医療の確保など、県民の皆さんの希望の芽を育てるような事業をしっかりと盛り込んだところでございます。こうした施策が実を結び、その成果がまた次の希望を生み出すといった好ましい循環を、これからの3年間で実現していきたいと考えており、そのためには、企業、NPO、民間団体、住民組織、そして県民一人一人の力と行動が重要であり、それらが結集した地域の力をいかに強化していくかが成功のかぎを握っています。県民の皆様方とともにこの希望の芽を守り育て、大きな花を咲かせ、県民一人一人が確かな希望を抱くことができるふるさと岩手の実現に向け、この予算を第一歩として全力で取り組んでまいる所存でございます。
 次に、プライマリーバランスについてでありますが、平成20年度予算では、歳出の徹底的な見直しや人件費の抑制に取り組んでおりますが、都道府県分の臨時財政対策債の増額という国の地方財政対策の影響や、当面の県政課題に対応する事業を予算化する必要性などを総合的に勘案した結果、プライマリーバランスが赤字となっております。ただし、平成22年度までの3年間で見ますと、平成20年度の単年度では赤字となるものの、基金の取り崩しを最小限にとめつつ、3年合計でプライマリーバランスは均衡する見込みでありますので、県民の皆様の御理解をお願いしたいと考えております。
 次に、今回の中期財政見通しと平成23年度以降の財政運営についてでありますが、中期見通しにおける地方交付税や地方税は、平成20年度の地方財政対策の結論や、現時点での政府の経済見通しをベースに試算しておりますが、今後の国政や経済の動向によって変動する可能性もあり、また、公債費がもうしばらく増加を続けることなどから、平成23年度以降も厳しい財政環境のもとでの財政運営が予想されるところであります。地方財政の危機や地方の疲弊の背景には、これまでの地方交付税の大幅な削減などの国策の影響も大きいことから、来年度以降も地方交付税の復元、増額などの地方税財政制度面での対応を国に求めていくとともに、集中改革プログラムに基づく行財政改革や、地域経済の活性化を通じた税源の涵養に積極的に取り組み、平成23年度以降の財政運営がより円滑なものとなるよう努めてまいります。
 次に、地域コミュニティの意向の反映についてでありますが、私は、草の根の力こそがこの国を支える源泉であり、草の根の力を引き出し、地域で暮らす人々の生活をよくしていくことが私に課せられた責務であると考えているところであります。したがって、次期総合計画の策定に当たっては、暮らしや仕事の現場の声をしっかりと受けとめることが何よりも重要であると認識しており、こんにちは知事ですを初めとした県政懇談会を今後も精力的に開催するほか、草の根の知恵と力を総結集する仕組みをつくり上げていきたいと考えております。
 次に、次期総合計画の考え方についてでありますが、私は、より県民にわかりやすい総合計画を、より多くの県民の方々の参画をいただきながら策定することを基本とした上で、まずはその構成や期間を初めとした計画のあり方についての検討に早急に着手していく必要があると考えております。
 具体的には、現在の総合計画は、基本構想、基本計画、実施計画の3層により構成されておりますが、例えば基本構想と実施計画の2層による構成とすることも考えられるところであり、また、計画期間についてもさまざまな考え方があるものと認識しております。また、これらについて御審議いただく総合計画審議会と各政策分野における審議会との連携方法などについても検討していかなければならないと考えております。こうした検討を進めながら、計画の理念、将来像や目標のほか、地域経済や県民生活を取り巻く環境が目まぐるしく変化する中での中長期的な経済見通しの必要性などを含め、計画の具体的な内容について、議会を初め広く県民の皆様の御意見を伺ってまいりたいと考えております。
 次に、マニフェストについてでありますが、マニフェストは地域の将来ビジョンやその実現に向けた政策を有権者と約束するものであり、民主主義の質を高めていくためにも重要な役割を果たすものであると認識しております。したがって、マニフェスト・サイクルと次期総合計画の整合性を図ることは欠かすことのできない視点であると考えており、次期総合計画のあり方を検討する上で、中長期的なビジョンを踏まえた基本構想のもとで、マニフェストを織り込んだ4年間の実施計画を策定していくことは、その有力な選択肢の一つであると認識しております。しかしながら、一方で基本構想を含めて4年ごとの総合計画とするべきであるといった意見などもあることから、マニフェスト・サイクルと計画期間の関係については、特にも慎重に議論を重ねていく必要があると考えております。
 次に、広域振興局体制への移行についてでありますが、県南広域振興局以外の3圏域における広域局のあり方については、県南局の成果や課題の検証を踏まえつつ、地域特性に応じた組織体制や運営の方法などを一定の姿として取りまとめ、できるだけ早い時期に素案としてお示しし、県民の皆様や市町村の御意見なども伺いながら検討を進めてまいります。
 なお、その移行時期については、当初の目安もさることながら、平成17年12月の県議会において、県南広域振興局以外の広域振興局についても、可能な限り早期に設置されたい旨の附帯意見をいただいているところであり、また、県の行財政改革を進めるとともに地域特性に応じた県民サービスを提供し、広域圏の産業振興を進めるためにも早期の移行が必要と考えており、平成22年4月にスタートできるよう準備を進めてまいりたいと考えております。
 次に、さまざまな領域における可処分所得、目標設定等についてでありますが、今後、人口の減少や高齢化の進行に伴い社会保障面での負担の増加が見込まれる中、力強い産業経済基盤を構築しながら、県民の生活水準を維持向上していくことが重要であると考えております。このため、各産業分野において産業の高度化や生産性の向上を図り、県内総生産を持続的に高めることで企業所得や雇用者報酬を増加させ、県民所得全体の向上、ひいては生活の実感により近い可処分所得の向上につなげてまいりたいと考えております。
 また、今般、いわて希望創造プランにおいてお示しした県民所得の目標設定に必要な本県の経済見通しについては、本県経済の推移をもとに、物価上昇率や本県人口の見通しなどにより経済規模をマクロ的に推計したものであり、産業別や広域圏別に目標を設定することは、統計手法等の制約から難しいものと考えております。しかしながら、いわて希望創造プランにおいては、県民所得の向上に関連する目標値を可能な限り明らかにしたいと考え、ものづくりや食産業分野における製造品出荷額、観光分野における県外観光客数や県外宿泊者数、農林水産分野における産出額など、具体の数値目標を圏域別も含め設定したところであります。
 次に、原油高等に対する具体的対策についてでありますが、昨年12月以降、国の原油高騰に関する緊急対策と並行して、本県においても県単融資制度の拡充などの対策を迅速に取り進めているところであります。また、農林水産業や中小企業及び生活弱者への支援など、より本県の実情に応じた効果的な対策を推進するため、本年1月21日には岩手県県民生活安定緊急対策本部会議を開催し、関係部局間の情報共有を進めながら総合的な対策の実施に努めております。
 お尋ねのありました具体的な対策について申し上げますと、基幹産業である農林水産業については、原油及び輸入穀物等の価格高騰に伴う深刻な影響に対処するため、関係機関・団体と連携を図りながら、技術対策や補助事業、融資制度の活用などの総合的な取り組みを着実に取り進めております。
 また、非正規雇用の問題については、県内の商工関係団体に対し、岩手労働局や市町村と連携しながら要請活動を実施しているほか、シンポジウムやフォーラムの開催、各振興局に配置した専門の相談員による企業訪問など、正規雇用の拡大に向けた企業への働きかけを積極的に行っているところであり、今後においても、これらの取り組みをさらに強化してまいりたいと考えます。
 次に、260万円達成に至る道筋とその要因等についてでありますが、今回の目標設定に当たっては、1次、2次、3次産業別に推計したものではなく、平成18年に策定した産業成長戦略においてお示しした本県の経済成長率の見通しをもとに、本県の人口や物価上昇率が国の推計により推移することを前提としたところであります。この戦略においては、成長率を0.4%から1.2%程度と見通し、加えて、本県経済を牽引することが期待されるものづくり産業、食産業、観光産業、農林水産業などを合わせて0.6%程度の成長率の上乗せを見込んだものであり、平成27年度までの本県の成長率を1.0%から1.8%と推計したところであります。
 今月公表した県民経済計算の速報によれば、本県の平成18年度の経済成長率は実質で1.4%と、この見通しの範囲内で推移しているほか、1人当たり県民所得は240万8、000円と前年度に比べ4万5、000円増加したところであります。もとより、県民所得の目標達成については、昨今の経済情勢をかんがみますと、予断を許すものではないと考えておりますが、今後、地域の総力を結集しながら、ものづくり産業の集積促進や、本県の特性を生かした食産業・観光産業の振興、農林水産業の産地形成や販路拡大など、いわて希望創造プランを着実に推進し、目標達成に向けて邁進してまいりたいと思います。
 次に、国の緊急経済対策の早期実施の必要性についてでありますが、現在の日本は個人消費は低迷したままであり、特に最近では原油や原材料価格の高騰から物価が上昇し、さらに個人消費を冷え込ませる可能性が高くなっています。また、日本の余剰資金が海外に向けられ、国内での資金循環も悪化していることから、このままでは再び景気が下振れする可能性が強いものと考えています。さらに、経済専門家の話として、日本の経済が健全で国民が生き生きと生活していくためには、ある程度の経済成長率を保っていく必要があるという主張もあり、私もその考え方に賛同しているものです。そうした考えを踏まえますと、現状では、緊急措置として個人の消費を拡大するような減税や、国内の余剰資金を吸い上げ内需拡大に振り向けるための国債発行と財政出動などが必要な情勢であると考え、先般の知事演述で緊急経済対策について申し上げたところです。これまでも内需の拡大こそが真の構造改革であるということを主張してまいりましたが、政府には、景気に不透明感が出ているこの時期に、早期にこうした経済対策を実施することを期待しています。
 次に、目的税としての森林環境税の創設についてでありますが、コミュニティを維持、再生していくためには、市町村が地域の実情に応じて自主的、自立的な行財政運営を行えるための財源を確保する必要があります。そのためには、一般財源である地方交付税において、森林面積により重点を置いた算定をすることによって、その充実を図るのも一案と考えます。平成20年度において地方交付税の中に新たに創設される地方再生対策費のように林野面積を算定の一部に用いる等、地方への一定の配慮がなされたところでありますが、県といたしましては、今後も、コミュニティの維持、再生につながるような地方税財政制度の確立に向け、国に対して提言してまいりたいと考えております。
 次に、過疎地域等における情報化に向けた整備計画についてでありますが、昨年12月に、平成22年度までの携帯電話鉄塔や地上デジタル放送の共同受信施設の整備時期、財源等の計画を定めた市町村別整備工程表を市町村と協働して作成したところであります。また、多くの条件不利地域でのブロードバンド整備、携帯電話及び地上デジタルなどの複数の課題を総合的、効率的に解決し、具体的施策を検討するため、産学官民連携によるいわて情報通信基盤整備戦略会議を─仮称でございますが─来年度早々、新たに設置することとしております。今後、この会議での検討も踏まえつつ市町村の情報化基盤の整備支援に努め、人口流出の歯どめの一助にしてまいりたいと考えております。
 次に、コミュニティの再生支援についてでありますが、私は、コミュニティは民主主義の最良の学校であり、また、民主主義が成功するための最も基礎的な実践の場であると認識しております。本県の多くのコミュニティにおいては、結いの精神に基づき、それぞれのリーダーのもとで相互扶助等の多面的な機能を果たしておりますが、一方で、厳しい経済社会情勢のもと、その活動を担う後継者不足などの課題を抱える地域も多いものと考えております。今後、コミュニティの維持、再生のためにも、住民一人一人のコミュニティへの潜在的な参加意識を具体的な行動にまで高めることができるよう、草の根地域訪問や草の根コミュニティ大学の開催などを通じ、その支援に努めてまいる考えであります。
 次に、平泉の世界文化遺産についてでありますが、私は、平泉の文化遺産は世界的にも傑出した価値を持っていると考えておりまして、その価値の一つは、敵も味方もひとしく死を悼み、人と人とがともに生きる平和への祈りを持ち続けたことであり、もう一つは、人と自然とがともに生きるという環境の理念の実現であったと認識しております。この平和と環境という21世紀の人類にとって最も大事な二つの理念を平泉は800年以上も前に実現していたのでありまして、世界遺産登録を契機に、登録後1年間をいわて平泉年と位置づけ、平泉の理念を改めて県民で共有するとともに、御提言のような取り組みも含めて、平泉の価値を海外にも積極的に発信していきたいと考えております。そのため、こうした平泉文化の理念に加えて、平泉が自立し地方主権を確立していたこと、この自立と共生を希求する心は岩手の風土の中ではぐくまれてきたのだということ、そして、我々岩手県民は、平泉の文化遺産とともに自立と共生という平泉の黄金の心を継承し、守り続けていく旨の誓いなどを盛り込んだいわて平泉宣言といったものを7月のユネスコ世界遺産登録と同時に発したいと考えているところであります。
 次に、いわて花巻空港の平行誘導路整備についてでありますが、平行誘導路は、国際チャーター便の運航先の多様化による国際交流を図る上で、また、外国からのチャーター便の大型化に対応する上でも必要な施設でありますが、県の財政状況が厳しい中で県民の出国者数が伸び悩んでいることから、平成16年度からその整備を休止したものであります。整備再開の是非や整備期間につきましては、来年度、大規模事業評価専門委員会に速やかに諮問し、その審議を踏まえて判断することとなりますが、平泉の世界文化遺産への登録のほか、国際チャーター便の就航状況、中・大型機の就航希望に対応できない事態が顕在化している現状等の社会経済情勢の変化を総合的に考慮する必要があると考えております。
 次に、森のトレー問題についてのお尋ねでございます。
 まず、県民が最終責任を負わなければならないことについての認識でございますが、本事案の責任につきましては、会計検査院の指摘にもありましたように、トレー組合の事業執行を適切に指導監督して事業の目的を達成することができなかったことについて、当時の県の対応に問題があったことは事実であると考えております。このため、既に関係職員10名に対して減給等の処分が行われ、また、前知事を初めとする三役についても給与の減額が行われているところでありますが、この問題は、生産設備の不具合により事業中断に至った事案であり、生産設備を納入した企業の責任が問われるべきものであると認識しており、このことについては、今後、訴訟によって結論が出されるものと考えております。本事案につきましては、私が引き継いだ県政課題の一つであり、国庫補助金の未返還金に伴う延滞金リスクを解消することが最優先課題であると考え、今般、林野庁と協議し、補助金本体部分の返還免除は困難となりましたものの、これまでの延滞金の免除に加え、3年間の分割払いによる返還が可能となり、さらに、その間の延滞金も免除されることとなりましたことから、県民に将来の新たな負担やリスクが生じないための総合的な判断として、このたび、そのための予算案を御提案申し上げたところであり、県民の皆様に御理解をいただきたいと考えております。
 なお、最終的には訴訟で返還金を回収するという基本スキームがございまして、今後とも県民負担を最小限とするため、引き続き訴訟に全力を尽くしてまいりたいと考えております。
 次に、国からの補助金の縮小と一般財源化についてでありますが、これまでにも補助金行政の弊害というものが指摘されてきており、地方分権の観点からも、事業実施についての自立的・主体的な判断が尊重され、その結果についても地方が責任を持って対応する仕組みに改めていくことが重要と考えております。具体的な改革の方策については、税源移譲や交付金化などを含めさまざまなやり方があり得るところですが、いずれにしても、地方の財源が適切に確保され、地域格差が拡大しないような方向で検討が進められなければならないと認識しており、今後の地方分権改革の動向も踏まえながら、国に対し必要な働きかけを行ってまいりたいと考えております。
 次に、道路特定財源についてでありますが、今国会では、揮発油税の一般財源化を可能とする道路整備費の財源等の特例に関する法律等の改正案が議論されているところであります。このような中、道路特定財源についての世論調査が御指摘のような結果になっているということは、国民の身近な生活がだんだん厳しくなっていることや、最近の政治不信を反映しているのではないかと感じております。
 一方、岩手県においては道路整備を求める声が多いものと思っておりまして、今後も、これらの声に耳を傾けながら、真に必要な道路の整備を進めてまいりたいと考えております。
 次に、道路特定財源のあり方についてお尋ねいただきましたが、本県の道路整備は、産業振興や救急医療を支える東北横断自動車道釜石秋田線などや、安全で安心な暮らしを支える生活道路などの整備が大幅におくれており、県民からも多くの要望が寄せられていることから、計画的かつ着実に道路整備を進めるため、また、適切な維持管理を行うための安定した財源が必要であります。県としては、地方分権を進める中で、高規格幹線道路や地域高規格道路などの根幹的な道路ネットワークは国の責任において整備し、それ以外の道路は、地方が主体性を発揮できるように権限や財源を充実することが望ましいと考えております。
 なお、道路特定財源の見直しに当たっては、県民の声を踏まえながら、景気の低迷が続く地域経済に配慮しつつ、道路整備の財源を確保することも必要ではないかと考えております。
 次に、道路建設の仕組みづくりについてでありますが、高速自動車国道の整備に当たっては国土開発幹線自動車道建設会議で審議され、また、個々の道路については、国や県における事業着手時の公共事業評価を行って、その結果を公表するとともに、予算編成の際にも、その必要性について吟味される仕組みとなっております。県としては、このような仕組みを通じて、国や地方で建設する道路を明らかにするよう努めてまいりたいと考えております。
 次に、道路特定財源問題に関する全国の首長の行動についてでありますが、私は、今回の各首長の個々の行動については十分に承知しておりませんが、一般論としては、各首長は、都道府県の状況、政府との関係、政治的立場を踏まえてそれぞれ判断して行動するものであり、その責任はそれぞれの地方公共団体の有権者に対して負うべきものと考えております。
 なお、首長として対外的に何かを訴える場合に私が気をつけておりますことは、行政の長の立場と政治家としての立場の違いに留意することであります。行政の長としての主張を政府に訴えることは、行政同士の関係としてさまざまあってよいと思いますが、政府以外の個人や団体への働きかけについては政治活動と見なすべき場合もあることから、他の首長と一致する、しないにかかわらず、慎重な判断の上で行動すべきであると考えます。
〇議長(渡辺幸貫君) 次に、菊池勲君。
   〔47番菊池勲君登壇〕(拍手)

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