平成18年2月定例会 第18回岩手県議会定例会会議録

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〇15番(関根敏伸君) 民主・県民会議の関根敏伸でございます。
 登壇の機会を与えていただきましたことに感謝を申し上げ、また、諸先輩の先生方と重複する部分がございますことには、あらかじめ御理解をいただきますようお願いを申し上げながら質問をさせていただきます。
 まず、格差社会への認識についてお尋ねいたします。
 今の日本経済は、戦後3番目の長きにわたる景気回復基調にあると言われております。2001年1月から始まるこの景気は、このまま続いていくと、バブル景気やいざなぎ景気を抜くとさえ言われております。また先ごろは、平成16年度の岩手県の実質経済成長率は1.2%と、3年連続のプラス成長であるとの速報値が報告されております。
 しかしながら、なかなかそれを実感としてとらえることができないのが我が県を初めとした地方の実情ではないでしょうか。そんな景気回復感に地域の大きなばらつきがある中、にわかに議論されておりますのが格差社会についての議論であります。OECD加盟国の中にあっての日本の貧困率、あるいはまた、所得の不平等指数と言われるジニ係数などの聞きなれない係数が盛んに用いられ、1億総中流と言われた日本型の成長方向が大きく変化し、国民所得の二極化が進んでいるとの指摘がなされております。
 そこで今、国会を初め、盛んに議論がなされている日本の格差社会に対しての増田知事の御認識をお伺いいたします。知事は、現在の日本が果たして格差社会にあるものとお考えでしょうか。そして、仮に格差が存在するとの御認識の場合、その原因をどのようにとらえておられるのでしょうか。そしてまた、この現状が一過性のものであり、政府が言うとおり、この格差がいずれは日本全体を押し上げる推進力となるのか、それとも多くの弱者が固定化される社会へとつながっていくのか、それぞれについてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 現在の議論の中で、格差の特徴として挙げられますのが製造業と非製造業、大企業と中小企業、そして、中央と地方における格差の存在です。そして、この中でも殊に問題となってくるのが中央と地方の格差、さらに地方の中における地域間格差の問題であります。
 去る1月31日に公表された全国の有効求人倍率には、最高の愛知県の1.61と最低の沖縄県の0.41ではかなりの開きがあることがわかります。また、有効求人倍率の高い愛知県を初め、東京、群馬、三重などの上位5県と、沖縄、青森などの低い下位5県では、バブル前のデータと比較し、格差が拡大傾向にあることも指摘されております。また、我が岩手県におきましても、北上地域の1.55、水沢地域の1.01、盛岡地域の0.76といった倍率の地域がある一方で、久慈地域の0.35、二戸地域の0.43といったように、低い倍率の地域も存在しております。四国4県に匹敵する岩手県では、このように有効求人倍率でも大変大きな開きが出ております。仕事をしたくても働く場所がないという一方で、県南の私の住んでいる一部地域では、欲しくても必要な人材が集まらないと嘆いている地元経営者も少なからず出始めているのが実態です。
 そこで、総合雇用対策局長にお伺いいたしますが、この県内の求人者にとりましても、求職者にとりましても大変不幸な現状を解決するためのとり得る有効な手だてはないものでしょうか。岩手労働局と連携した県内雇用の地域間格差解消のための効果的な施策についての御見解をお聞かせください。
 もともと大企業や製造業関係の就職先が少なく、また、社会資本が十分に整備されていない地方にあっては、地域から出た若者が進学や就職で都会に定着し、そこで納めた税金がやがては交付税という形で地方に還流する所得循環メカニズムが機能しておりました。また、財源が豊富な中で、国土の均衡ある発展政策のもと、中央と地方が同時に景気回復を果たすための補助金や公共事業のシステムが機能しておりました。
 しかしながら、このシステムやメカニズムが大きな見直し時期に来ていることは御承知のとおりであります。そのことが、今後さらに加速する少子・高齢化、人口減少、硬直する国と地方の財政力の現実と相まって、さらに大きな地域間格差に拡大していく可能性が強くなってきています。交付税の持つ財源保障機能と財源調整機能の今後の制度設計に対する知事の御見解とともに、中央と地方の格差、そして、県内における地域間格差是正に向けた強い意思をお聞かせ願います。
 次に、自治体の運営と財源確保の方針などについてお尋ねいたします。
 総務省では、1月に竹中大臣の私的懇談会、地方分権21世紀ビジョン懇談会を開催し、21世紀の地方分権のビジョンについて検討を始めました。この懇談会は、不完全な形で一応の決着を見た今回の三位一体改革後の地方分権のあるべき姿を描き、それを実現するための抜本的改革案をつくり上げるためつくられたものであるとされております。しかしながら、会合を重ねながら検討内容が具体的に示されるにつれ、当初の目的である地方分権のあるべき姿とは異なった方向に議論が進みつつあるようです。
 その一つは、自治体の破綻制度の導入に向けた提言内容です。自治体の財政面の基盤強化のため、現状の財政再建制度を抜本的に改革し、一定以上の赤字を抱える団体については、首長を初め、執行部あるいは議員の責任を問い、国の管理のもとに第三者が整理に当たる仕組みのものであります。これは、地方分権の流れの中で、地方への税源移譲を進め地方の自由度を高める反面、だめな自治体は厳しい対応を迫られることを余儀なくされ、自治体経営に市場原理を導入するものと言えます。
 この件につきましては、今議会で何度か取り上げられておりますが、私からも増田知事にお伺いいたします。知事は、この懇談会での一連の議論をどのように感じておられるのでしょうか。また、地方の自立を訴え、分権改革の先頭に立って活動を続ける増田知事は、分権と自立の表裏一体をなす責任という観点から、この懇談会での破綻制度の議論、検討内容に対しどのような所感をお持ちか、お聞かせください。
 また、知事は、地方の自立に不可欠な自主財源の確保の観点から、ことしの4月に施行されるいわての森林づくり県民税のような政策目的税あるいは法定外普通税といった地方自治体における課税自主権に対してはどのようにお考えでしょうか、認識をお聞かせください。
 知事は、新年の地方紙のインタビューに答え、高い負担に国民の合意がなされ、高い福祉レベルを維持する北欧型社会を岩手のこれからの方向性のヒントとしてとらえているようですが、高い負担における税負担、受益者負担の認識とあわせてお聞きいたします。
 続きまして、総務部長にお伺いいたします。この一連の議論の中で、自治体の発行する地方債の格付議論が表面化しております。仮にこれが現実化した場合、県内各自治体にどのような影響が出てくるものと予想されますでしょうか。自治体の財政状況により利率などの地方債の発行条件が大きく左右され、引受先等の懸念材料も出てくることが考えられ、全国の都道府県での格差、そして、都道府県内の地域間格差が一層広がることが懸念されますが、予想される財源上の問題、自治体経営上の課題についてお聞かせください。
 この行方は今後の経過を見守っていかなければなりませんが、議論の過程における地方軽視の考え方、モラルハザードなどといった地方を全く信用しない前提での発言内容に大変大きな憤慨を覚えざるを得ません。分権改革と言いながら中央集権を推し進める議論は、地方自治の大幅な制限にもつながり、国と公選によって選ばれた首長との関係、また、一層の地方の格差拡大に結びつきかねない議論の方向性に大きな疑問が残るものと考えるのでありますが、いかがでしょうか。
 次に、少子化対策についてお聞きいたします。
 新しい年を迎えての新年の各新聞は、国勢調査の結果を得て、予想以上のスピードで進む人口減少の現実への戸惑いにも似た記事であふれておりました。そして、各紙とも共通して取り上げていたのが、超少子化時代の日本の将来に対する制度設計の必要性と出生率回復に向けた具体的かつ効果の期待できる施策への期待でありました。
 国が少子化対策をとり始めたのは15年前、いわゆる1.57ショックのときからだと言われております。少子化は、出生率、人口移動、死亡率と三つの要素から生じるとされております。出生率という極めて個人的な問題に国や行政が関与すべきかどうか、当初大きな議論があったところと聞いておりますが、2003年の少子化社会対策基本法の成立で、行政が出生率回復への具体的な方針にかじを切ったのは御承知のとおりです。しかし、この間にも日本の出生率の低下には歯どめがかからず、政府のとってきた各種の施策に対しては、総花的、寄せ集めとの評価がなされているところでもあります。
 知事は、平成18年度の重点施策の一つに本格的な少子化問題を取り上げております。そこでお伺いいたしますが、知事が考えるこれからの少子化社会とはどのようなものか、人口が減るという厳然たる事実の中で、岩手が進む将来は衰退への道なのか、成熟への道なのか、そして、それを分けるキーポイントは何なのか、御認識をお伺いいたします。
 また、この少子化に向けた対策は、四半世紀――25年後を見越しての長期展望に立ったものとされております。知事は、今議会の知事演述の中で、国の小さな政府に対して、それとはくみしない適正な政府規模について触れておられますが、25年後の岩手県の全体規模、それに見合う適正な岩手県政府の規模、あり方等をどのようにお考えなのでしょうか、お聞かせください。
 次に、関係部局長にお伺いいたします。県が具体的に少子化対策の必要性を認識し、具体的取り組みをされたのはいつごろでしょうか。また、これまで取り組んできた各種施策と現状の岩手県の出生率の現実を踏まえ、今までの政策をどのように総括し、評価されているのか、お伺いいたします。
 この少子化対策においては、日本には残念ながらまだ成功のモデル例がないと言われておりますが、県が今年度以降取り組もうとされている少子化対策について、出生率回復に向けた具体的施策と出生率下げどまりの時期についての認識、さらに、少子化の背景にあると考えられる、子供を持ち育てることに対する人生観、幸福感へのとらえ方と、それらへの対策を含めた総合的な対応策についてお聞かせください。
 また、最後に、格差社会の拡大が懸念される中、社会的人口移動にかかわる、いわゆる住みにくい環境から住みやすい環境へと移住する、足による投票への見通しについて、県内から県外への人口移動、また、県内の広域生活圏ごとの人口移動への予測とその対策についてお聞かせください。
 次に、現在、国会に改正案が提出されているまちづくり3法の方向性及び県の中心市街地活性化研究会の報告に基づく県独自の方向性についてお伺いいたします。
 当初、この問題は、ともすれば中央資本の大型店と地場の商店街の商業調整的なものとしてとらえられていた感があります。しかし、その後、国と地方を取り巻く環境が大きな変化を見せるに至り、これは単に商店街の活性化の視点からだけでは論じられない問題へと変化してまいりました。人口減少と高齢化の進展、それに伴う国と地方の財源不足の現況下で、これからのまちづくりの方向性を考え直さなければなりません。自治体経営を考える場合、環境負荷への影響を無視した手法をとることは論外となり、かつ、産業振興の切り口として、農業等の地方独自の産業を生かした特色ある自治体経営を進めるために郊外の再田園化も求められ始めております。そう考えたとき、この問題は、まさに地方再生の方向性を左右する大変広範な政策課題と位置づけられると思われます。先ほど足による投票でも触れましたように、今は人も物もお金もグローバルに移動できる時代と言われております。しかしながら、地方の高齢者や商店街、農業は自由に移動することはできません。
 このような中、地方のまちづくりのあり方に一石を投じることになったのが、憲法論議まで呼んでいる福島県における福島県商業まちづくりの推進に関する条例の制定です。そして、そんな地方の動きがようやく国を突き上げる形で現在の国会に提出されているのがまちづくり3法の改正案とも言えるのです。
 そこでお伺いいたしますが、ここ数年の岩手県内の大型店の出店が今後も継続するとした場合、拡散するまちに対応した社会資本整備をするために必要とされる財源の額、あるいはそれによって生じる環境負荷への影響度などをどのように把握されているのでしょうか。そして、それを踏まえ、コンパクトシティーという理念の一つを今後岩手のまちづくりにどのように導入されようとしているのでしょうか。
 次に、現在、議論されようとしております都市計画法、中心市街地活性化法の改正により、ねらいとされるコンパクトなまちづくりと魅力ある中心地のにぎわいが具体化されるとお考えでしょうか。
 また、この法改正を前提として、さらに岩手県としてより充実したまちづくり、地域再生を実現するための県独自の条例化についてはどのようにお考えでしょうか。知事は、今議会で、この問題について、岩手の地域力発揮のため緊急に取り組むべき課題として認識し、県としての役割の必要性に触れておられましたが、その具体的対応についてお聞かせください。
 最後に、魅力ある大型店を支持する消費者の動きを法律や条例でとめることができるのかとの指摘もあります。今法改正と条例化に向けた消費者理解を得るためには何が必要とお考えでしょうか。
 今は焼き畑農業的とも評される大型店の出店攻勢の結果、中心地の空洞化とともに、郊外での空洞化が早くも現実化しております。中心地と郊外の両方の破壊により、地方のまちそのものが維持できなくなりつつある現状が間近に迫っている実態を消費者も含めた形で冷静に議論していく必要性を強く感じるものであります。
 次に、国の医療制度改革と岩手県の地域医療についてお尋ねいたします。
 社会保障制度の根幹をなす医療制度が今見直されようとしております。このままでいくと、平成18年度予算ベースで28兆5、000億円の規模が20年後には56兆円にも上ると予想される医療費を、適正な範囲まで数値管理しながら、現在の医療サービス水準をできるだけ維持していこうという大変困難な課題を抱えた制度改革です。
 医療費の伸びを抑えるための短期的な対策と中長期的な対策、並びに医療保険制度体系の見直しの二つの柱から成り立つこの案は、新たに創設が予定される高齢者医療制度を初めとした受益者側の負担増と診療報酬の見直しという医療提供者側の負担増という内容になっております。また、現在の組合健康保険、国が運営する政府管掌保険、そして、市町村が運営する国民健康保険のそれぞれについて、都道府県を軸とした大幅な再編・統合を進めていこうとするものであります。しかしながら、この制度改革の行方いかんによっては、医療受給者間の格差拡大、医療分野における地域格差をますます広げていくことにもなりかねません。
 そこで、今回の改正の行方の議論を注視しつつ、いずれは避けることのできない改革が岩手県の地域医療に与える影響などにつき何点かお伺いいたします。
 まず、制度の見直しにより、全国の都道府県の役割と負担が格段に大きくなるものと思われます。医療費抑制のための医療費適正化計画が義務づけられ、数値化を盛り込んだ目標設定のもと、その進捗状況を逐次国に管理されていくことになります。
 そこでお伺いいたします。これらの医療制度改革により地域医療がどのように変化してくるものとお考えでしょうか。これが単に医療の効率化を地方に押しつけ、地域医療がさらに疲弊していく結果になるのか、医療費適正化計画の実績いかんによっては、地域事情に応じた医療体制をつくるため、都道府県ごとの診療報酬の特例設定が認められるようでありますが、この特例の導入により、地域医療の実績に合った医療体制が構築されていくものなのか、現状での御所見をお伺いいたします。
 また、創設が検討される後期高齢者医療制度については、運営主体は全市町村が加入する都道府県単位の広域連合が行うとのあいまいなものになっていますが、高齢化が急速に進行する岩手県でこの新制度が導入された場合、その運営はいかようなものになってくるとお考えでしょうか。現在の県内各市町村の高齢者医療費の実態とあわせ、制度への御認識と岩手県の高齢者医療の未来に対する御所見をお伺いいたします。
 続いてお伺いいたします。今回の診療報酬の改定は、3.16%の減と、最近になく大きなものとなっておりますが、全国的に偏在が懸念される小児科と産科の診療報酬と在宅医療の分野は若干ながらアップし、めり張りのある改定とも評価されております。我が県においても大変大きな懸念材料になっている小児科と産婦人科の医師の確保には、今回の改定がどのように影響してくるものとお考えでしょうか。
 また、全体の報酬の引き下げにより、県立病院の医業収入と経営改善計画への影響はどのように試算されておりますでしょうか。医業収入の減少により、県立病院での医師確保はさらに難しい環境に置かれるものと思います。現在は、その診療環境と労働条件の過酷さに比較し、給与とのアンバランスから、県立病院を去り、開業へと向かう医師が増加しているとの報道もなされております。さきの県立病院に対する包括外部監査は、医業収入に占める人件費の高さの是正を指摘しておりましたが、その改善と県立病院での医師確保の両立という大変困難な問題を解決するための方向性についてお考えをお聞かせください。
 最後に、増田知事にお伺いいたしますが、この医療制度改革は、医療分野における構造改革とも位置づけられておりますが、さきの政府の小さな政府論の動きの中で、この改革をどのように見ておられるのか、御所見をお伺いいたします。
 次に、産業振興施策についてお聞きいたします。
 昨年の12月議会で大きな議論を呼んだ広域生活圏の見直しについては、議論の過程の中で、今後の県と市町村の役割分担の方向性と、県の仕事の最重要課題の一つが産業振興であると強く明確にされたことは一つの成果であるとも考えます。
 そこで、関係部局長にお伺いいたします。この4広域圏の将来と地域振興を図る上で、まず、それぞれの地域振興ビジョンなくしては進むべき方向性と戦略が明確にならず、海図を持たずに見切り出航した船のようなものと思えるのですが、地域設計図であるビジョンの策定時期はいつごろになるのでしょうか。また、その策定方法と策定後のビジョン実現に向けた財源確保の道筋はどのようになっていくのか、お聞かせください。
 続けてお聞きいたします。県の平成18年度の産業振興の最重要施策は自動車分野であると理解をいたしますが、この千載一遇のチャンスに、経済波及効果を最も大きくするためには、部品の地元調達率50%の実現が不可避だと思われますが、現状の見通しと対策についてお聞かせください。また、この大きなチャンスを県南部だけではなく、県内各広域生活圏に最も効果的に普及させるためには、何が大切になってくるとお考えでしょうか。県北・沿岸への二次展開の具体化に向けた取り組み策についてお聞かせください。
 今、企業の国内回避の動きがようやく始まっていると言われております。企業が地方に進出するためには、優秀な人材が確保できること、社会資本整備が進んでいること、そして、大消費地への輸送面での利点があることなどが不可欠であると言われております。県では来年度、ものづくり人材などへの具体的施策を講じるとともに、企業誘致に向けた新たな条例案を今議会に提案するなど積極的な姿勢を示され、その意欲と意図するところには大きな期待をするところであります。しかしながら、大消費地への輸送という点からは決して恵まれていない我が県にあって、ものづくり産業の集積を目指し、このデメリットを克服するため、社会資本の整備を初め何が必要となるとお考えでしょうか。厳しい財源の中でのより効果的な施策について、県のお考えをお聞かせください。
 また、今後さらに進むと思われる東北各県との連携は理解するとして、水面下では厳しい県単位の誘致に向けた駆け引きが進んでいるのが現状と考えますが、東北内地域間競争を勝ち抜くための具体的施策と、その展望をお聞かせください。
 今、日本は将来の進むべき方向性の選択で大きな岐路に立っていると言われております。経済的な成功者としてだけではなく、世界の中で尊厳を持って迎えられる地位を得るためには、国の品格を備えることが必要であり、その基本は武士道精神に基づく惻隠の情であると説いた本が、今、ベストセラーになっております。我が岩手県は新渡戸稲造を生んだ県であります。すぐれた経営者は、片手にそろばん、片手に論語を持ち、冷静な数値管理とともに、高い人間観、人生観に基づいた経営理念で組織を引っ張っていくと言われております。
 知事は常々、県民の誇りと自信に基づいた岩手の自立を説かれます。今こそ、岩手を日本の中で品格ある尊厳を持って迎えられる県として、精神的に成熟した県としての歩みを始めるべきと考えます。品格ある国をつくり出すためには、強い信念と美しい情緒に基づいた独立不覊の心、美的感情をあわせ持った人材の輩出、高い道徳心、そして美しい田園の四つを要素として挙げておりますが、すべて我が岩手に当てはまるものばかりでありますが、いかがでしょうか。
 最後に、この本はこう締めくくっております。イギリスを訪れた人は、だれでも田園の美しさに打たれます。美しい田園が保たれているということは、農民が泣いていないということでもあります。経済的に最もしわ寄せを受けやすい農民にまで心が配られていて、農民が安心して働いている証拠です。経済原理だけではなく、祖国愛や惻隠の情が生きていることでもありますと。
 知事の高い人間性に基づく志高い県政運営を願いつつ、以上で質問を終わらせていただきます。
 御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 関根敏伸議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、格差社会の認識についてでありますが、現在の我が国が格差社会にあるかどうかは、どう定義するかによっても異なってはまいりますが、各種の統計などから、一定の所得格差があることは事実である、このように認識をしております。また、所得格差の原因については、市場経済のもとでのさまざまな競争の結果でありまして、近年では景気低迷や低所得の高齢者世帯の増加もその一因になっているもの、このように考えております。市場経済の社会は、基本的には競争原理の社会でありまして、そのことが社会や経済の活力を生む要素となっていると考えられますけれども、市場経済において公正な競争が行われるための改革やルールづくりは必要である、このように考えております。また、所得格差が固定化することのない柔軟な社会が維持・継続されるとともに、生活保護などの社会保障制度がしっかりと維持されることが必要であります。とりわけ、市場経済のみにゆだねることのできない分野、地域があることを考えますと、社会的に弱い立場にある人を地域全体で支えるようなセーフティネットを構築していくことが極めて重要である、このように考えております。
 次に、交付税制度などについてのお尋ねがございます。都市部と地方圏の財政力格差の是正のために、地方交付税が果たす役割は今後とも重要である、このように考えます。特に、交付税の本来的機能とも言えます財源調整機能と財源保障機能を適切に発揮できる仕組みが最も大切でありまして、今後は、国の政策誘導的な機能を順次縮小するなど、制度の簡素・透明化が必要であります。そして、本来の機能を果たしていく方向で、この制度設計を行う必要がある、このように考えております。
 また、交付税制度のみならず、税制度とのセットでの見直しによる税財源の地域偏在の是正を進めていくべきでありまして、法人関係税の一部を、これは大都市に税源が集中しがちでありますので、これを国税に移管して、逆に地域偏在の少ない消費税の一部を地方税へ移管する、こういったような国税と地方税の交換といった踏み込んだ制度改革も必要ではないか、このように考えます。こうした制度改革とあわせて、本県の各地域における確かな経済産業基盤を構築していく考えでございまして、特に県北・沿岸地域ですが、この地域にそうした経済の振興、また、内陸部との連携による物流の強化、企業の二次展開といったようなことによりまして、地域の自立に向けた取り組みを強力に支援していく考えであります。
 次に、竹中懇談会について幾つか聞かれております。竹中総務大臣の設置いたしました地方分権21世紀ビジョン懇談会ですが、ここでは、地方の自由と責任を確立するための改革ということで、国による補助負担金や法令などによる規制の問題、地方債発行における自由と責任、税源配分、課税自主権のあり方、地方交付税の配分ルールなどについて、今、検討が進められております。この評価については、まだ検討についたばかりでありますので、軽々にはできないと考えておりますが、破綻法制のあり方や地方交付税制度の見直しなどの個別の議論に入る前に、分権社会のビジョンや、それを踏まえた国と地方の役割分担という、この基本的議論を十分にしていただきたい、このように考えております。
 また、この自治体の破綻法制でありますけれども、分権の行き着く先としては、こうした自治体の責任が重視されるものと認識をしておりまして、検討の方向性については一定の理解はするわけでありますが、しかし、現状では、自治体がその責任をとれるだけの、歳入の自治も含めた分権がなされているとは言いがたいわけでありまして、また、1990年代に繰り返されました国の景気対策に際して発行された地方債が多数ありますが、この地方債につきましては、地方と国の双方に責任がありまして、こうした過去の財政規律のあり方などについての検証も必要だと思います。今回の懇談会では、地方の自由度の拡大のための改革、これが議論されるというふうに聞いていますが、そうした地方分権、地方自治のあるべき姿についてしっかりと議論、検討がなされて、その上で地方の責任の明確化のための改革が検討されるべきと、このように考えております。
 次に、課税自主権についてでありますが、地方団体の自主・自立性を高め、分権社会を実現していくために、歳入の自治の確立が必要でありまして、そのためには、まず、国からの十分な税源移譲によって地方税源を充実させ、その上で、地方団体において必要に応じ課税自主権を発揮していくことが必要と考えています。ただ、主要な税源は既に法定化されていますので、課税自主権の発揮のみで地方財源を充実させることにはおのずと限界もある、このように思います。
 一方で、産業廃棄物税やいわての森林づくり県民税、これはそれぞれ廃棄物の発生抑制や、荒廃が進んでいる森林の保全といった地域の政策課題解決のための税制でありまして、40の政策の実現を図るための税制度でもあります。こうした意味において、課税自主権の発揮は戦略的な自治体経営を可能にする手段となり得る、このように理解をしております。
 次に、北欧型社会での高負担、また受益者負担ということについての認識であります。北欧諸国のように、人口がさほど多くなくても、高い負担に国民の社会的合意がなされて、高い福祉レベルを実現している発展性の高い国々がありまして、本県のこれからの方向性としてさまざまなヒントを得ることができると考えています。人口減少、超高齢化の時代にあって志向すべきは、質の高い福祉社会と言えると思っておりまして、これを支える高い国民負担については、もとより税制面だけでなくて、社会負担全般について、受益と負担の関係を明確にしながら、住民の理解と合意のもとに、その内容や水準が決定されていくべきものでありまして、負担の多寡に関する住民の意識というのは、個別の行政サービスの質だけでなくて、社会的なセーフティネットや、社会そのものの信頼性といったことに対する総体的な満足度によって変わってくるものと考えられておりまして、そうした意味で、住民に対して、これからの目指すべき社会の姿や進むべき方向性をしっかりと説明して、よく御意見をお伺いしながら、真に住民が必要とする行政サービスを実施していくことが重要と考えております。
 それから、竹中懇談会の議論の方向性であります。分権社会で自治体の責任はこれまでよりも重くなるものと認識しておりますが、そうしたことを踏まえて、今、地方6団体として検討委員会を設置して、今後の分権改革のあり方について検討を進めていますので、この委員会と竹中懇談会が双方で率直に意見交換などを行いながら、よりよい分権社会のビジョンを取りまとめ、実現していくことが重要だと思います。そういった改革の進展の上で、先ほどお話がありました破綻法制なども議論されるべきものでございまして、また、分権改革の道筋がつかない中で、地方交付税の大幅削減の議論が進むことは、我々としてはやはり容認できない、このように考えております。
 次に、少子化対策でありますが、人口減少、少子・高齢化の加速が見込まれる中で、労働力人口の減少による経済規模の縮小、そして、高齢化の進行に伴う社会保障面での負担の増加など、マイナス面の影響を懸念しております。このような中で、今後、本県がいわゆる成熟への道を歩んでいくためには、成長が期待される産業の発展を加速する。そして、農林水産資源など地域資源が有する潜在能力の十分な発揮、また、産業の発展を支え、地域力を高めるための人材の育成、こういったことが重要なポイントになるというふうに認識をします。このため、自動車関連産業を核としたものづくり産業の集積、農林水産物のブランド強化を初め産業振興の取り組みを推進するとともに、産業人材の育成に努めるわけでございます。
 また、いわゆる質の高い福祉社会を実現するためには、防災、治安、介護などの地域課題について、NPOなどと協働し、地域コミュニティーの力が最大限に生かされる岩手ならではの取り組みを支援していく考えでございまして、こうした取り組みを推進することで、少子化時代における自立した地域社会の形成につなげていきたいと考えております。
 また、25年後の県政府の規模などについてお尋ねでございます。国の推計予測によりますと、2030年に本県の人口が約123万2、000人まで減少する。そして、本県の各都市圏を含む全国の9割近い都市圏で域内総生産が減少する、こういうことも予想されております。このように、今後、地域経済社会が縮小していくことが予測される中で、やはり四半世紀先とはいえ、そこをしっかりと見据えた戦略を描きながら、自立を可能とする確かな産業経済基盤の構築と、そして、社会的に弱い立場にある方々へのセーフティネットを整備していく必要がございます。地方分権が四半世紀の間に大きく今後も進む、こういうふうに考えておりまして、保健や福祉、教育など住民に近い行政サービスは基礎自治体である市町村が担い、県が、経済のグローバル化などに対応して、産業振興など、特に他県との連携を強化したより広域的な役割や機能を担っていく必要がある、このように考えておりまして、道州制といった新しい広域自治制度に関する議論の方向性なども踏まえながら、地方分権社会に対応した新たな行政経営体としての規模、そしてあり方を見定めていくことが適当と、このように考えております。
 最後に、国の医療制度改革についての所見を問われていますが、この改革では、基本的な考え方として、安全・信頼の医療の確保と予防の重視、医療費適正化の総合的な推進、超高齢社会を展望した新たな医療保険制度体系の実現というものを掲げております。県でも、こうした考え方は、地域医療の確保や持続的な制度の維持といった観点から重要と考えていますけれども、この改革が、単に医療費の総額規制管理の観点から進められるのではないか、国から地方への責任転嫁や高齢者等への過度の負担が生ずる可能性はないか、こういった点に懸念を持っております。また、新たに都道府県の役割として、国と共同して医療費適正化計画を策定することが義務づけられるわけでありますが、この計画において目標とされることとなる生活習慣病の予防の徹底、そして平均在院日数の短縮について、具体的な手法が必ずしもまだ明らかにはなっておりません。安心・信頼の医療の確保の前提となる医師の確保について、国の責任において具体的な取り組みを進める必要がある、このようにも考えておりまして、こうしたことから、地方として国に具体的に発言をしていかなければならない。既に全国知事会などで何回か意見を表明しておりますが、さらに今後も地方として国に具体的に発言をしていかなければならない、このように考えております。いずれにしても、県民が安心して生活するための基本的な仕組みにつきまして、国において、全国的な水準の確保、安定的な制度運営の確保といった観点から、その責任を果たしていただく必要がある、このように考えております。
 その他のお尋ねにつきましては関係部局長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔総合雇用対策局長長葭常紀君登壇〕
〇総合雇用対策局長(長葭常紀君) 県内でも県北・沿岸地域における雇用情勢が厳しいということは、県内の地域間格差について県としても認識しておりまして、雇用の場の確保のためにも、受け皿となる産業の振興は重要であると考えております。このため、県では県北・沿岸振興本部を設置しまして、それぞれの地域の特色あるすぐれた資源を最大限に生かしながら、食産業や観光産業などの今後の振興策の検討を進めているところであります。
 一方、内陸地域では、有効求人倍率が比較的高いものの、企業と求職者とのミスマッチなどもありますので、ジョブカフェ・サテライトを一関に設置し、また、北上には市が独自で設置しておりまして、ハローワークなどの関係機関と連携して、適職診断やカウンセリング、各種セミナー等による雇用のマッチングを図っているところであります。県としては、今後とも雇用の拡大とマッチングの両面、さらには人材育成の面からも、県内の雇用環境の整備に取り組んでまいりたいと思っております。
   〔総務部長時澤忠君登壇〕
〇総務部長(時澤忠君) 地方債の格付についてでありますが、財政投融資改革や郵政民営化等の影響によりまして、公的資金のシェアが減少し、民間資金のシェアが拡大をしております。自治体の再建スキームの検討の議論とあわせますと、地方債の格付は、今後、自治体の資金調達に今まで以上に影響を及ぼしていくものと考えております。仮に、各自治体の財政状況によりまして発行条件に大きな格差が生ずることとなりますと、利子負担の増加の懸念というものがございます。さらには、自治体の安定的な資金調達に支障が生じる、このような懸念も持っているところでございます。自治体の格付、これは信用力と置きかえてもいいかと思いますが、そうしたものの評価の基準といたしましては、税収を左右する域内の経済力とその動向、債務の規模、そして返済に回せる資金のバランス、財政収支の構造と状況、さらには財政運営の能力、そういったものが挙げられております。したがいまして、産業振興による税源涵養、プライマリーバランスの均衡の継続によります県債残高の圧縮、歳出規模の見直しによる持続可能な行財政構造の構築などが課題というふうに考えております。
 また、各自治体におきましては、将来に向けて市場や引受先の信認を得るためには、財政の健全化を確保するということはもとより、各自治体の財政状況についてのIR活動、これは投資家向けの広報というふうに言われておりますが、そういった広報活動の重要性が高まってくるというふうに考えております。
   〔保健福祉部長赤羽卓朗君登壇〕
〇保健福祉部長(赤羽卓朗君) 少子化対策について、これまでの取り組みへの評価等についてでございますが、県で少子化に係る具体的な取り組みを開始いたしましたのは、国のエンゼルプランの策定を踏まえまして、平成7年3月に岩手県子育てにやさしい環境づくり対策指針を策定したといったことが具体的な始まりではないかなと考えております。その後、平成13年に最初のいわて子どもプランを、平成17年度には新しいいわて子どもプランを策定し、施策の充実を図ってきたところでございます。
 これまで、保育所の定員の増でありますとか、多様な保育サービスの充実、放課後児童クラブの設置拡大などを図ったほか、地域子育てボランティアの養成やファミリー・サポート・センターの設置にも取り組み、地域で子育てを支える仕組みづくりに重点を置いた取り組みを推進してきたところでございます。
 しかし、この間、本県の合計特殊出生率は、平成7年の1.62から平成16年の1.43まで低下しております。年間出生数も、平成7年1万3、021人から、平成16年1万1、167人まで減少しているところでございます。平成17年の県民意識調査では、安心して子供を産み育てられる環境づくりといった項目につきまして、県民の8割が重要と答えておられます。一方、現状については、満足と感じておられる方が約20%、不満とする方が約42%と、不満の方が大幅に上回っており、施策の一層の充実が必要と考えているところでございます。
 今後の対応策についてでございますが、フランスやスウェーデンなど出生率が上昇に転じた国々では、働きやすい環境づくりや地域の子育て支援サービスなどの社会基盤が整備され、男女がともに子育てに参加できる社会の実現に努力しているところでございまして、その結果として、女性の就業率が上昇すると同時に出生率も上昇している例が見られるところでございます。こうしたことから、本県においても、保育サービスの充実に加え、男女がともに子育てに参加できるよう、働き方の見直しなども含め、これまで以上にさまざまな施策をミックスし、より総合的な施策の推進を図ってまいりたいと考えております。
 出生率の下げどまり時期のお尋ねでございますけれども、結婚や出産は基本的には個人の自由な選択の問題でもありますことから、県として予測することは困難と考えております。県としては、安心して子供を産み育て、子育てに喜びを感じることができるような環境づくりを社会全体で着実に推進していくことが重要であるというふうに考えております。
 次に、国の医療制度改革に関連してでございますが、特に地域医療の影響等についてでございますけれども、今回の医療制度改革におきましては、地域医療については、予防の重視、あるいは地域医療連携の仕組み、介護など他制度との連携など、予防や連携を重視した仕組みづくりが重要な課題となっているところでございます。今後、18年度から新たな医療計画の策定に取り組み、平成20年度に向け、医療機関、その他の関係者の御協力をいただきながら、住民が疾患の状態や時期に応じて適切な医療を受けられることができるよう、疾病ごとの医療連携体制を構築していくなどの取り組みを進める必要があると考えているところでございます。
 また、平成20年度から実施されます医療費適正化計画は、国の責任のもと、国及び都道府県が協力して進めることとされており、都道府県におきましては、糖尿病の患者、あるいはその予備軍の減少や、平均在院日数の短縮に関する政策目標と、その実現のための施策を定め、実行することが求められることとなります。
 こうした地域医療連携や予防などの取り組みを行った結果として、効率的な医療提供が図られるのであれば、中長期的に見て、医療費の大幅な伸びが抑制されていく可能性もあると考えております。ただし、適正化を進めるための具体的な手法等について、いまだ国から十分な情報提供がないところであり、今後、この点について国の動きも注視してまいりたいと考えております。
 診療報酬の特例設定は、その具体的な内容について、現在、国で検討中でございまして、まだ県には具体的に示されていないところでございます。したがいまして、特例設定が医療費の適正化に与える影響については、現段階では明確になっておりませんので、引き続き、今後の状況を見きわめたいと考えております。
 次に、後期高齢者医療制度についてでございますが、新たな高齢者医療制度につきましては、現在、国会で審議中でございまして、県として把握しております主な制度内容といたしましては、運営主体は全市町村が加入する広域連合が行う。患者負担は原則1割であること。財源構成は、患者負担を除き、公費5割、現役世代からの負担4割、高齢者からの保険料1割であるといったことなどが示されているところでございます。
 本県の場合、平成17年の後期高齢者人口は15万8、000人でございますが、平成22年には18万8、000人と増加が見込まれておりまして、制度の安定的な運営が大切であると考えております。この新たな制度におきましては、広域連合に対する高額な医療費等についての国・都道府県による財政支援、国・都道府県も拠出する基金による保険料未納等に対する貸し付け・交付など、財政的なリスクが軽減されるような仕組みが導入されると伺っておりますが、中長期的に安定的な制度となるよう、県としても、今後、国会における審議に注目しながら対応してまいりたいと考えております。
 それから、現在の市町村の高齢者医療の実態等についてでございますが、本県の老人医療費総額は、ここ数年、約1、400億円程度で推移しているところでございます。対象者1人当たりの医療費は、全国40位前後の約66万円程度となっておりまして、決して高い水準ではございませんが、県民に必要な医療はしっかりと確保すること、より質の高い医療サービスの提供に努めること、その上で予防重視の視点に立ち、より効率的な制度運営に努めるといったことを進め、今回の新たな後期高齢者医療制度、県民の医療に対する安心・信頼を確保するとともに、将来にわたり持続可能な制度としていく必要があると考えているところでございます。
 次に、医療費改定の小児科、産婦人科医の確保に対する影響についてでございますが、今般の診療報酬の改定におきまして、小児科につきましては乳幼児深夜加算の新設、小児入院医療管理料の引き上げ、産科につきましては、ハイリスク分娩管理加算の新設などの改定がなされる予定となっております。
 診療報酬の改定が医師確保に与える影響についてですが、長期的な医師確保対策と2年に1度行われる診療報酬の改定とを直ちにリンクすることは難しいと考えておりますが、小児科医療及び産科医療の環境改善に今回の改正が何らかのインセンティブを与えるのではないか、また、小児医療、産科医療に対する一定の評価がなされているのではないかといったようにも考えておりまして、こうしたことが小児科医や産科医の選択にもつながっていけばといったふうに期待しているところでございます。
   〔総合政策室長相澤徹君登壇〕
〇総合政策室長(相澤徹君) 議員からお話のございました足による投票ということについてでございますが、このモデルは、住民が各地方公共団体の提示する税負担と行政サービスのメニューを比較しながら、自分の希望に最も合った地方公共団体に移り住む結果、各団体で最も効率のよい行政サービスの提供が可能になる、こういう財政理論でございますが、居住地の移動のための費用がかからないことなど、さまざまな前提条件があるところでございます。したがいまして、この移住行動につきましては、交通アクセスのよい都市圏あるいは県外からのIターンなどにおいて実態としてはあり得ると考えておりますが、本県においては、これらに加え、むしろ進学や就職などが人口移動の大きな要因になっている、こういうふうに考えております。
 県内から県外への人口移動の要因については、データで見ましても、高校及び大学卒業時における県外への進学、就職などによるものと考えており、また、県内の人口移動の動向につきましても、内陸においては転入超過、県北・沿岸では転出超過、いわゆる社会減であります。今後においては、これらの動向に歯どめをかけることが喫緊の課題であると考えておりまして、県北・沿岸圏域を初め、県内の地域産業の振興を一層強化して、地域社会の活力が維持され、さらに発展できるように取り組んでまいりたい、このように考えております。
   〔県土整備部長橋本義春君登壇〕
〇県土整備部長(橋本義春君) 中心市街地活性化に関連しまして、拡散するまちに対応した社会資本整備費及び環境負荷についてでございますけれども、県内においては、過去10年間で床面積1万平方メートルを超えた大型店の出店は9店舗ありますが、道路など既存の社会資本を活用したもので、大規模な社会資本整備を行ったものはないところであります。このような開発などがあった場合は、何らかの環境への負荷はあるものと考えますが、それらの数値については、国などの研究事例はございますが、定まった推計方法はないところでございます。
 今後についてでありますが、現在把握している出店計画を見ますと、新たに大規模な社会資本の整備を要するものはないものと考えているところでございますが、環境への影響等につきましては、今後の課題としまして、国の研究状況などを踏まえながら検討してまいりたいと考えております。
 次に、コンパクトシティーの理念をどうまちづくりに導入していくかについてのお尋ねでありますが、県では、平成16年に策定しました岩手県都市計画マスタープランにおいて、基本理念の一つとしましてコンパクトなまちづくりを掲げ、基本的な方向性を示しており、地域住民や市町村、県等がこの理念を盛り込んだ都市の将来像を見据え、これからのまちづくりを行うことが肝要だと考えています。
 県としては、関係機関・団体との連携をより一層深めまして、積極的に取り組んでまいりたいと考えています。
 次に、コンパクトでにぎわいのあるまちづくりが具体化するかについてでございますが、今回の法改正では、中心市街地の活性化に意欲的な地域に対し国は集中的に支援する施策が打ち出されておりまして、今後、民間団体や市町村と県が連携して、大規模集客施設の適正立地や公共公益施設などを中心市街地へ集約誘導する国のさまざまな支援措置を有効に活用しながら、地域が一体となって総合的かつ実効性のある取り組みを行うことによってコンパクトでにぎわいのあるまちづくりが実現していくものと考えています。
 県としては、このようなまちづくりに対しまして、広域的視点による調整や技術的助言、国の支援施策の情報を提供するなど、積極的にその役割と責務を果たしてまいりたいと考えております。
   〔商工労働観光部長酒井俊巳君登壇〕
〇商工労働観光部長(酒井俊巳君) まず、まちづくりなどのための条例化などについてのお尋ねでございますが、当面は、改正されるまちづくり3法の法的な仕組みを活用しながら、総合的なまちづくりの取り組みを進めることが必要であると考えているところでございます。
 今後、国会の審議を経て見直されるまちづくり3法が施行され運用される中で、新たな仕組みを評価しながら、運用による課題などを検討し、必要な場合は、条例化も含め、本県独自の制度的対応の検討を行いたいと考えているところでございます。
 今後の具体的な対応でございますが、平成18年度の早い時期に有識者懇談会を県の中に設置することとしてございますが、この中で中心市街地活性化を含む本県のまちづくりのあり方につきまして、こうした有識者の意見を聞きながら検討をしていくこととしておりますが、この中で3法を十分に生かしたまちづくりのあり方や手法、さらに、本県独自に対応すべき課題や支援策のあり方などを議論していきたいと考えております。
 次に、法改正などに向けた消費者理解を得るためには何が必要と考えるかというお尋ねでございます。
 いわゆる大型店については、消費者に多様で質の高い商品とサービスを提供しているという評価もあり、高い支持を得ているところもございます。今回のまちづくり3法の改正は、これらの大型店に対し商業調整的な出店規制を行うものではなく、持続的な都市構造をつくるために、出店地域を計画的に設定し、適正立地を誘導することを主眼としているものと認識してございます。
 今後の法改正に当たりましては、こうした基本的な考え方について、国においてそれぞれ周知をしていくものと考えておりますが、県としては、これらへの理解に加え、県民一人一人が今後のまちのあり方などを積極的に考えるための環境づくりをしていくということも重要であると考えております。こうしたことから、先ほど申し上げました有識者によるまちづくりの懇談会などの検討を通じまして、県民のまちづくりへの理解、参加を促す具体的方策、そういったことも考えながら、広く議論を喚起しながら県民理解の形成を図ってまいりたいと考えております。
 次に、自動車産業の振興に関して、部品の地元調達率の向上、それから、県北・沿岸への二次展開ということについてのお尋ねでございます。
 まず、部品の地元調達率についてでございますけれども、関東自動車岩手工場では、増産に伴い、コスト低減との観点から、現在、40%程度となっている部品の地元調達率を来年――07年以降に50%以上に引き上げたい意向であると伺っております。したがいまして、県としても、有力サプライヤーの誘致や地場企業の参入を一層促進する必要があると考えておりまして、そのための具体的な対策としては、企業誘致という観点では、今般、条例案を出させていただいております特定区域における産業の活性化に関する条例、これは、大型補助あるいは県税等の減免でございますが、こうした措置、それから、名古屋への新たなコーディネーターの配置などを考えてございますし、地場企業の参入促進という面では、北上の工業技術集積支援センターという県の施設がございますが、ここのスタッフの増員、あるいはサプライヤー企業から地元の企業が技術者の派遣を受ける場合の補助の制度、こういったことにより取り組みを強化していきたいと考えております。
 また、県北・沿岸への二次展開でございますが、県北・沿岸の企業による自動車関連産業への参入は十分に進んでおりませんが、この原因の大きなものとして、やはり自動車産業というものに対する理解が必ずしも十分ではないと考えております。したがいまして、このことから、宮城、山形の連携組織を来年度早い時期に立ち上げるわけでございますが、その組織の中に、県北・沿岸の企業に対しても広く参加を呼びかけ、そして、この組織の活動の中で、参入における必要な情報を提供する、意識の啓発を図る、あるいは工程の改善指導を行う、あるいは愛知等で行う技術商談会などへの積極的な参加を促す、それと同時に、先ほど申しました大型補助等の条例の活用など、こうしたことによりまして県北・沿岸地域への二次展開というものも促進してまいりたいと考えております。
 次に、ものづくり産業の集積を目指す上で、本県のデメリットを克服するには、社会資本の整備を初め、何が必要となるか、効果的な施策についての考えはどうかというお尋ねについてでございます。
 本県においては、これまで東北自動車道、東北新幹線など高速交通インフラが順次整備されておりまして、こうした高速のインフラのメリットを本県の立地企業が十分に享受できるよう、関連するアクセス道路の整備など、ボトルネックの解消を行ってきたところでございますが、今後、議員のお話にありましたとおり、財政的な制約が大きいということもございますので、今後は、立地企業のニーズに的確に対応した形での社会資本の整備を図る、それに重点化をすることが重要だと考えておりまして、これまでの鉄道、港湾を利用した新たなモーダルシフト、そういったものを検討するなどして既存のインフラを最大限に生かした施策を展開すべきものと考えてございます。
 また、そういった社会資本の整備のほかに、本県の人材に対しては、現在立地している企業の多くはその質の高さというものを非常に高く評価をしていただいているところでございますので、平成19年度から予定してございますが、黒沢尻工業高校あるいは産業技術短期大学に専攻科を設置しようとしていることなどがございますが、こうしたことをしながら、岩手県内の人材を育成して優秀な人材を安定的に供給できる仕組みを整備して岩手の強みを発揮していきたいと考えてございます。
 次に、東北内地域間競争を勝ち抜くための具体的な施策についてということでございますが、近年、国内企業の設備投資が活発化している中で、全国の自治体の多くは、今が企業を誘致する絶好のチャンスということで、さまざまな優遇策を入れたインセンティブの高い施策を打ち出してきているところでございます。こうした自治体間競争に的確に対応し、本県に企業を誘致するためには、やはり本県においても、他県にない、遜色のない優遇措置を講ずることが必要だと考えているところでございます。
 こうしたことから、先ほど来申し上げております条例による大型補助等の優遇制度を講ずることとしたところでございますし、また、人材育成あるいは産学官連携につきましては岩手県は全国でも高い評価を得ているところでございますので、こうした強みをアピールしながら、岩手県の競争優位性を確保して一層の企業誘致を推進してまいりたいと考えております。
   〔医療局長法貴敬君登壇〕
〇医療局長(法貴敬君) 診療報酬改定に伴う県立病院の医業収益と経営収支改善計画への影響についてでありますが、今般の医療制度改革に伴う診療報酬改定の公表改定率マイナス3.16%のうち、診療報酬本体医科分の改定率はマイナス1.5%、薬価等の改定率はマイナス1.8%となっており、現段階では改定内容の詳細が示されていないことから厳密に試算することは困難でありますが、それぞれの公表改定率を平成17年度4月から10月までの入院外来収益及び薬品等材料費の実績に当てはめ単純に試算しますと、平成18年度の県立病院事業への影響額は約21億円から25億円程度の減収になるものと見込んでおります。
 この改定に伴う経営収支改善計画への影響についてでありますけれども、平成16年度から取り組んでいる県立病院改革によって本年度までに約16億円の経営改善効果があると見込んでいるところでありますが、この診療報酬改定の影響もあり、平成18年度当初予算においては、差し引き損益で6億円余の純損失となると見込んでいるところであります。
 今後、医療制度改革など、医療を取り巻く環境が厳しさを増すことが見込まれることから、県民に良質な医療を提供していくためには、このマイナス改定の影響をできる限り少なくする工夫をする一方で、さらなる改善の余地を探りながら県立病院改革実施計画を着実に実行していかなければならないと考えております。
 次に、人件費比率の改善と医師確保についてでありますが、平均在院日数の短縮による入院患者数の減少及び長期投薬の拡大に伴う外来患者数の減少などにより医業収益が減少してきていることから、平成16年度決算における医業収入に占める人件費の割合は63.9%となっております。この人件費率の改善については、まずもって医業収益の増収が必要であると考えており、県立病院改革実施計画において定めたDPCへの対応などの取り組みを強化するとともに、その取り組みを着実に推進してまいりたいと考えております。
 また、人件費の縮減については、医師を初め、職員のモチベーションにも配慮する必要があり、慎重に検討していく必要があると考えておりますが、今般の包括外部監査においてさまざまな御提言をいただいているところであり、人事給与制度についても、他の都道府県立病院の例も参考にしながら、医師の確保にも十分配慮しつつ検討してまいりたいと考えております。
 なお、現行の県立病院の医師の給与は、僻地に勤務する医師に手当を加算するなどの措置により、平均給与は東北各県及び新潟県の県立病院と比較して最も高額となっており、ちなみに、本県を100とした場合、新潟県95.6、青森県90.1、山形県89.3、福島県80.9、宮城県80.0、秋田県71.8となっており、必ずしも本県の医師の給与水準が低い状況にはなっておらないところであります。
   〔地域振興部長山口和彦君登壇〕
〇地域振興部長(山口和彦君) 地域振興ビジョンについてのお尋ねでございます。
 地域振興ビジョンは、四つの広域圏ごとに産業振興や各種の生活環境整備についての目標や戦略の方向性を示すものでございまして、今後の地域振興施策の大きな柱になるものでございます。ビジョンの策定に当たりましては、地域の皆さんと十分に議論を重ねていく必要があると考えております。既に、現在の総合計画の地域計画の検証作業などに着手しているところでございまして、平成18年度秋には中間的な取りまとめ、それから、18年度末までに成案をまとめたいと考えております。
 策定に当たりましては、住民や産業界関係者、それから市町村とのワークショップを開催したり、地域の方々などとの意見交換を重ねながら進めてまいります。県南広域振興局と各地方振興局に設ける地域協働委員会――これは仮称でございますが――等で幅広く地域の皆さんの声を確認しながら、数値目標や民と行政の役割分担のあり方、あるいは推進戦略などを具体的に盛り込んで、各圏域が目指していく将来の姿をしっかり描いてまいりたいと考えております。
 平成18年度以降、予算編成については政策優先配分方式への転換を検討しているところであり、その検討の中で、県南広域振興局や各地方振興局が現場主義に立って地域の特性に応じた施策を展開し、地域振興ビジョンの実現に向けて取り組んでいけるよう、財源確保に十分配慮してまいりたいと考えております。
〇15番(関根敏伸君) どうも御答弁ありがとうございました。
 1点だけ再質問をさせていただきます。
 商工労働観光部長にお伺いいたします。産業集積を図る上での社会資本整備を初めとする有効な施策という中で、部長も触れていただきましたが、モーダルシフトのことをちょっと詳しく聞かせていただきたいと思っております。これは、初日の代表質問で高橋賢輔議員も御質問されて、たしか知事がJR貨物さんとさまざまな方向性をにらみながら検討中といったような御答弁だったと思いますが、当初これ、私ども聞いた話ですと、関東自動車としてJR貨物さんに北上操車場跡地を利用してというふうなことですから、民間の話だと思いますが、基本的には大変公共性の高い、また、産業振興、環境への影響、あとはモーダルシフトの中で自動車軽減によるような、かなりいろんな広範囲の公共的な結果が得られるというふうに思っております。
 それで、現在の検討状況の中で、課題があるとすればどういった課題が明らかになってきているのか、どういった課題の中でクリアできてくれば、これは県あるいは北上市にも話が行っていると思いますが、行政として動くタイミングと申しますか、条件をクリアできるのか、この辺の認識と、あと、伺った話ですと、今、実験的に1日4コンテナを盛岡駅に運び込んで、それをトラックで運び込む形だと思いますが、最終的には、ことしの秋口ぐらいから1日40コンテナということですから、10倍ぐらいの部品が動き始めるという形になっていると思います。とすると、かなり実施時期云々かんぬんにしても、1年内外程度には方向性を見出してほしいというふうな恐らく意向もあると思うんですが、このスケジュール的な今後の見通し等々につきまして、今お話ししていただける範囲で結構でございますのでお知らせをいただきたいと思います。
〇商工労働観光部長(酒井俊巳君) 北上の操車場跡地へのモーダルシフトという件でございます。
 今、議員からお話がありましたとおり、北上操車場を利用したモーダルシフトということにつきましては、JR貨物あるいはトヨタグループ、地元自治体――北上市等と打ち合わせなどを行ってきているところでございます。課題としては、面積とか、そういう部分については問題はないというふうに思っておりますが、やはり大きな課題は、絶対的な量という問題がございまして、関東自動車がコンテナで向こうから部品等を持ってくるわけでございますが、問題は、その帰り荷というものがあるわけでございまして、空で帰るということになると非常にコストが高くつくということもございまして採算上合わないという問題がございますので、特に帰りの荷の確保というところが課題になっておりまして、そのため、現在、JR貨物と県とが共同で周辺企業等への調査を行っておりまして、どれだけの貨物量が見込めるのかというようなところを今やっているところでございます。
 それから、スケジュールにつきましては、これは、国土交通省の運輸関係の補助制度が使えるのではないかというところもございますので、確実ではございませんが、そういった補助制度の関係等からいいますと、平成20年以降に使えるのではないかというようなところもございますので、その辺のところをにらみながら作業を進めていきたいと考えているところでございます。
〇議長(伊藤勢至君) 次に、小野寺好君。
   〔36番小野寺好君登壇〕(拍手)

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