平成18年9月定例会 第21回岩手県議会定例会会議録

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〇30番(佐々木順一君) 民主・県民会議の佐々木順一でございます。
 私は、全住民を代表し、また、民主党の一員の立場から一般質問を行うものであります。
 まず最初に、知事の志についてお伺いいたします。
 人間だれでもそうでありますが、私は、指導者に最も必要な要件は、まず、何よりも志がなければすべては始まらないと思っております。知事は、平成7年の初当選以来、夢県土いわてを政治目標に掲げ、今日まで一貫して県政の指導者として、また、いわゆる改革派知事の一人として活動されてまいりましたが、中でも、大胆、透明性、挑戦をキーワードに、開かれた県政を掲げ、県内隅々まで歩かれた1期目は、まさに、どなたかのお言葉を借りるまでもなく、恐れず、ひるまず、とらわれず、そのものであったと思います。
 例えば、大胆の一つは、奥山道の建設中止を決定したこと。透明性では、庁内職員の食糧費問題に指導性を発揮し、決着させたこと。そして、挑戦の分野では、国政選挙に積極的に関与されるなど、いわば心に一点の曇りもないくらい鮮明な言動をとられる一方、2期目からは、改革派知事の一人として、政府に地方分権の実効性を強力に迫るとともに、3期目では、全国に先駆けマニフェストを導入されるなど、いわば政治家としての良心とその心の命ずるままに、公選知事としての役割を十二分に果たされてきたものと思っております。この間、社会経済情勢の変化などにより、問題解決の優先順位の変更も余儀なくされた局面もあったと思いますし、政党の離合集散は政界の習いという打算に満ちた現実も、目の当たりにされたものと思います。しかしながら、競馬問題に象徴されるように、最近の知事の議会答弁に接するたびに強く感じることは、県政諸課題の解決に向けてのみずからの明確な意思を伴った発言が見えにくくなってきていることであり、結果として、当初の、大胆、透明性、挑戦、ひいては、開かれた県政の旗印が色あせてきているのではないでしょうか。ついては、初当選以来、今日まで貫かれているみずからの志について、改めて御披瀝いただきたいと思います。
 関連しお伺いしますが、知事は、いわゆる県民党を標榜されております。政治活動は自由であることから、この選択もまた一つの方法であることは理解するものでありますが、我が国の政治体制は、好むと好まざるとにかかわらず、政党政治に基づく議院内閣制をとっております。したがいまして、政策本位の健全な政党政治に基づく議会制民主主義をしっかりと定着させることが何よりも求められるところであり、このことに力を注ぐことが、政治に携わる者の一つの責任でもあると思います。
 以前、知事は、知事演述で、近代政党の象徴、原敬を引用されたことがありましたが、政党政治に対しどういう御見解をお持ちなのか。そして、今後、どう向き合おうとされているのか、お伺いをいたします。
 次に、岩手競馬問題についてお伺いいたします。
 一昨年の50億円融資問題に端を発した競馬組合問題は、結局、融資は27億円までに圧縮される一方、再建計画の当初案は、競馬議会あるいは本議会での再三にわたる広範な疑問点が的中し、結果的に、目標に到達せず初年度を終了。これを受け、危機感を持った我々県議会は、本年度の融資案を可決するに当たって、最後通牒とも言える異例の意見をつけ、採決でもって、再度、融資案を認めたところでありますが、実行計画の見直しは附帯意見の要請にこたえ切れず、成果を上げることのできないまま今日に至っております。本来なら、執行者側は、計画の見直しに全勢力を傾けるべきものと思いますが、今度は、衝撃的な累積債務処理構想まで打ち出しました。まさに、ディープインパクトそのものであります。もはや、同組合の再建問題は、混迷の水準をはるかに超え、迷走状態に陥っております。
 一方、先日、知事は、県の主要3基金の投入による巨額負債の整理構想について、構成団体に対し、組合規約にのっとった負担割合を基本とする協議方針を示されたとお聞きしておりますが、この方針に接した盛岡市、奥州市の両首長は、現状では白紙状態を強調されております。執行側の責任で新対策を打ち出すことを否定するものではありませんが、内容が詰め切れていない状態で県民に示すことは、拙速以前の問題であります。内容が伴わないものを示されても、我々としては議論することは不可能でありますし、結果的に、県民の一層の不信感を増幅させることにもなり、極めて遺憾であります。しかも、基金の目的外使用という指摘を回避するために、間接投入方式を検討されているともお聞きしておりますけれども、この方法は、行政技術論としては可能かもしれませんが、本筋の考えではないことから、これでは県民の信頼はますます離れていくばかりであり、ここは一たん、議論を整理する必要があると思います。ついては、どういう意図で、こうした荒っぽい未整理状態の方針のものを公表されたのでしょうか。まず、その真意をお伺いいたしますし、後で触れさせていただきますが、県民医療のあり方を含め、社会的格差の解消などの県政課題が山積しているにもかかわらず、なぜ、競馬問題のみを優先して、県の主要3基金の投入による巨額負債の整理を検討しなければならないのか、御説明をいただきたいと思います。
 引き続きお伺いいたしますが、県側が打ち出す一連の対策は、結果として、大変失礼ではありますが、まさに兵力の逐次投入は愚の骨頂そのものであり、これでは、競馬組合再建計画に県民の信頼を得ることは、もはや、技術的には不可能であります。
 信なくば立たずという月並みな言葉がありますが、どの時代の為政者も、問題解決に人心・知恵を結集させるため、その大前提となる信頼を得ることに、常に心を砕いて物事を運営してまいりました。よって、この局面では、競馬組合の進むべき方向に対し、県民の信頼を得ることに腐心すべきであり、そのためには、計画の未達成を含め、競馬組合が深刻な事態に陥った反省、すなわち、不明を恥じることを出発点としながら、特にも、構成団体の中心をなす知事の強い意思と中身が伴った廃止のシナリオ、あるいは、存続の将来ビジョンを県民に真剣に語るべきではないでしょうか。
 廃止、存続のどちらに照準を定めているのか、判然としないところもありますので、競馬組合問題の存廃に対する知事の明確な御意見も確認させていただきます。
 さらに、議会対応について指摘させていただきますが、提案されたものに対し、審議を尽くし、修正、継続を含め、賛否の態度を決めることが議会の役割であるにもかかわらず、先ほどの基金の問題もそうでありますが、素案の段階で競馬組合などに報告の形で構想を説明し、結果として、議会や県民の反応・意向を取り入れながら、徐々に補強し成案を固めていくという手法は、本来あるべき姿ではないと思います。原案を固める段階で、どうしても県民の意向を聴取する必要が背景にあるとするならば、これは議会などから意見を聴取するよりも、県民の意向をストレートに把握することのできるパブリックコメントを含め、別途、他の方法を取り入れるべきと考えますが、いかがでしょうか、御見解をいただきたいと思います。
 なお、税財政の番人でもある総務部長にお聞きしますが、県の3基金から財源を捻出し、これを他の公共団体の累積債務の解消に充てるという手法は、3基金条例及び関係諸法令、さらには、地方財政運営の基本原則などの財政規律に照らし合わせ妥当な方法と言えるのか、御見解をお伺いいたします。
 次に、格差問題全般について順次お伺いいたします。
 社会に格差があることは認めますが、政治的立場にある者はこれを容認してはならず、その縮小・解消に努めることが一つの使命であると思いますけれども、政府が、この5年間推し進めてきた新市場原理主義、財政至上主義がもたらした強者の論理は、日本社会に深刻な勝ち組、負け組、あるいは富裕層と非富裕層という二極化をもたらしました。
 具体的に、個人レベルでは、例えば介護保険料、厚生年金・共済年金保険料の引き上げ、老人医療費の改悪、サラリーマンの医療費3割負担、所得税減税の廃止、配偶者特別控除の廃止、生活保護費の各種加算の廃止などなど、いずれも社会的弱者の負担を求めるものばかりであります。特にも、こうした格差容認政策は、年功序列制度や終身雇用制度といった、日本的経営原理の象徴の一つであった勤労者のセーフティネットをことごとく破壊、その結果、非正規雇用者の増大を招くとともに、地方経済には疲弊をもたらす一方、経済的生活苦を中心とした年間3万人、本県では500人前後を超える自殺者が発生しております。また、凶悪犯罪や犯罪の低年齢化、あるいは想像を絶する事件・事故を連日のように発生させるなど、こうした順法精神の低下や倫理観の欠如は、社会の退廃を引き起こしております。いわば、将来に不安を抱き、人生設計ができない毎日を暮らす、漂流する日本国民と言っても言い過ぎではないと思いますけれども、知事は、2月定例会の演述の中で、セーフティネットの充実・構築に言及されましたが、こうした一連の政府の取り組みが、我が国の最高規範に明記されている生存権の保障に値するものなのか。そして、今の深刻な社会現象が、御自身の目にはどのように映っておられるのか。さらには、その根本的原因はどこにあると御認識をされているのか、お伺いいたします。
 特にも、歴史を見れば、失業者の発生や働く貧困層の拡大によってもたらされた格差の極端な開きは、深刻な社会問題を経て、やがては例外なく国の乱れ、社会の乱れにつながっております。ついては、特にも社会の安定のためには、同一労働、同一賃金の原則に基づく非正規雇用から正規雇用への転換こそ、今、直ちに取り組まなければならない喫緊の課題であると思いますが、いかがでしょうか。ただし、誤解されては困りますが、これからの正規雇用は、従来の年功序列主義ではない終身雇用の保障であって、かつ、実力主義とも併存したものにしなければならないと思います。いずれ、我が国には懲罰を伴った労働ではなく、勤労というすばらしい概念がありますので、この思想を正しく反映させるためにも、中身の濃い雇用政策の展開に知事は意を用いるべきと思いますが、御見解をお伺いいたします。
 さて、その自殺対策についてお伺いいたします。
 自殺対策を法律でもって対応しなければならないこと自体、まさに日本社会が異常事態であることを如実に示すものであり、嘆かわしいことでありますが、基本法では、地方公共団体などにも対策上の責任を明記しております。一方、本県の自殺発生率は、全国ワーストスリーとなっております。ついては、この要因をどのように分析されておられるのか、また、自治体としてどのように責任を果たされるお考えなのか、お伺いいたします。
 引き続き、格差問題に関連しお伺いいたします。
 昨年、異例ずくめの衆議院解散総選挙を経て法制化された郵政民営化は、明年10月の民営化に向けて準備が進められていると仄聞しておりますが、去る4月3日、知事はこの監視機関、すなわち、郵政民営化委員会の委員に御就任されたとお聞きしております。
 一方、郵政公社の内部検討資料によると、無集配化が検討されている郵便局は、本県では21カ所となっており、ここに該当する地元住民にとっては、サービス水準がどう変わるのかが最大の関心事でありますが、郵便局が独自で行ってきたひとり暮らし高齢者宅への声かけサービスなどの社会貢献活動の後退は避けられないところであり、どう見ても、地方切り捨ての印象はぬぐえず、このままでは、地域を支える総合サービスの低下が懸念されております。さらに、融資業務についても、当初は公的金融の縮小、民業圧迫の解消であったものが、正反対の肥大化に進んでいるのではないかとの指摘もあります。ついては、知事は、どういう考えのもとに委員に就任され、どのような立場で監視されるお考えなのか、そして、委員就任が県民の利益に資するものなのか、お伺いいたします。
 また、参考までにお伺いいたしますが、かかる法案は、参議院の否決を受け衆議院を解散するという、まさに禁じ手によって実現したものであることから、私は、この解散は、王道ではなく、まさに覇道そのものであったと思っております。結果として、法案の有効性は認めざるを得ないところでありますが、知事は、憲政の常道に照らし、郵政民営化の是非を争点としたさきの解散総選挙についてどのような感想をお持ちなのか、政治的御見解をいただきたいと思います。
 次に、農政上の格差問題の一つである品目横断的経営安定対策に関しお伺いいたします。
 まず、知事の御認識をお尋ねいたしますが、政府が進めている担い手経営安定新法で本県の農業が守れるとお考えなのか、率直な御見解をお伺いいたします。
 私は、新対策の対象者を、一定の規模以上の農家や集落営農に絞り込むこの政策のみでは、対象から除かれた農家は営農が継続できなくなり、結果として、農業生産の減少、耕作放棄地のさらなる増加を招く可能性が高いと思っております。しかも、財政上の効率のみではつくることのできない農村集落文化まで破壊せしめ、やがては農村集落の消滅まで行き着くおそれもあります。農村集落の消滅と文化の破壊は、日本人の心の喪失にも直結する問題でありますので、知事は、こうしたおそれを感じておられるものなのかも含め、御見解をお伺いいたします。
 一方、私どもは、将来の世界的食料不足の予測、食料の海外依存の高い我が国の体質にかんがみ、食料の国内生産、安全性の確保が緊急の課題であるとの認識のもと、食料自給率上昇による食の安全確保及び欧米並みの直接所得補償による農業振興策を提案させていただいております。すなわち、食料自給率を今から10年後に50%にすることを明記するとともに、計画的に生産するすべての販売農家に対し、単年度1兆円規模の直接支払いを実施、ただし、ばらまきとならないよう、経営規模、品質、環境保全に資する度合いに応じ加算を行う。また、米の生産調整を廃止する。さらに、加工食品などの原料原産地表示を義務づけることなどを盛り込んだ、いわゆる農林漁業再生基本法案でありますが、これに対する御批評を仰ぎたいと思います。
 次に、これも格差問題の一つでありますが、今後の地方分権のあり方についてお伺いいたします。
 そもそも、地方分権の真のねらいは、成長優先から生活重視の政策に転換し、国民がゆとりと豊かさを実感できる社会を実現することに置かれておりましたが、第1期分権改革は、制度論や個別課題の議論に終始、本来の目的に沿った検討はいつの間にか影を潜め、結果として、国の財政再建のために分権が利用されたのではないかとの思いを強くするものであります。恐らく、この3年間の取り組みの中でもたらされた成果を歓迎する自治体は皆無であり、ほとんどの住民は、失望感を抱いているものと思われますが、分権改革の旗振り役を務めてこられた知事は、第1期改革をどのように総括されておられるのか、お伺いいたします。
 さて、未完の改革と言われている分権改革は、明年度から始まる第2期改革に舞台を移すことになります。既に知事会などでは、新地方分権推進法の法制化を求めていくとお聞きしておりますが、地方側と政府側の今後のテーマ設定を比較してみると、例えば政府側は、新型交付税、再生型破綻法制、地方債の完全自由化などの導入を、一方の地方側は、地方行財政会議の設置、国と地方の協議の場の法制化、地方共有税の導入などを唱えております。まさに、双方の考え方の違いがにじみ出ているわけでありますが、私の解釈では、政府側は地方財政の一体的改革を、地方側はゆとりと豊かさを実感できる分権社会を念頭に置いており、優劣につきましては論評を避けますが、今後、改革を進めるに当たって最も大事な事柄は、改革の恩恵を最後に受ける者は住民であるという当たり前の認識であり、その手段として、自治に最も必要な住民自治の拡大・強化にこそ、力点を置いて作業を進めるべきと思いますが、知事は、今後、分権改革の真の実効性を確保していくため、どのような領域に力を注がれるのか、御見解をお伺いいたします。
 関連しお伺いいたしますが、住民自治とは、すなわち、議事機関そのものであります。しかしながら、いわゆる車の両輪と称される二元代表制の一方の議会の権能は、執行機関と比較し、法制面などにおいて劣っていることは否めない事実であります。例えば、最近、一部改善がなされたとはいえ、議会招集権が依然として首長にあること、議長に議会費予算の執行権がないこと、あるいは決算が不認定の場合、首長の対応措置の規定がないこと、予算修正権に著しい制約があることなど、ことほどさように首長優位の実態となっております。我々も、分権時代にふさわしい議会と首長の権限配分の観点から、全般的な見直しを行ってきているところでありますが、この実態について知事はどう認識されているのか、お伺いいたします。
 次に、典型的な格差の一つである県立大迫病院の充実についてお伺いいたします。
 質問の前提として、ぜひ思い起こしていただきたいことは、昨年の9月定例会本会議の場で、大迫高校の分校化について議論をさせていただきましたが、その記憶が冷めないうちに、今度は診療所化問題をたださなければならない事態を迎えていることであります。いわば、2カ年連続で大迫地域の人々は翻弄させられてきており、結局、その救いの手を、今回も、請願権の行使に頼らざるを得ないという事実と、地域の住民は失意の中にあるということを、まず御認識していただきたいと思います。
 現在、県立大迫病院の充実を求める請願は、これまで環境福祉委員会で各委員の熱心な質疑により、相当程度審議が深められております。この中で、県医療局は、花泉、紫波両病院も診療所化されていること、大迫病院の最近の入院患者は減少傾向となっていること、さらには、市営バスも運行されるなど、交通手段も確保されたことなどの事実を紹介しながら、人口減、医師の過重労働や確保難、診療報酬の減などに対応するため、オーバーベッド地域の病床数の縮小は避けられない。このため、広域基幹病院等への機能の集中による医療の質の向上確保のために、診療所化はやむを得ない措置であることを強調されております。
 一方、診療所化にかかわる請願は、これまで花泉、紫波両病院の2件が議会に提出され、審議の上決着したところでありますが、これら二つの請願は、いわゆる国の医療制度改革関連法案が成立する以前の問題であり、加えて、地域特性も全く異なることから、大迫病院と性質が違うということを、まず指摘させていただきたいと思います。
 また、最近の大迫病院を取り巻く事例を数点紹介させていただきますが、9月中旬の入院患者は8名ほどとなっております。しかしながら、本年7月時点では約40名もおりました。これは、関係者からの聞き取り調査によるものでありますが、病院から他の病院施設への転院が行われていることや、他の医療機関への紹介によるものであると言われております。
 また、交通手段については、市営バスが運行開始されたとは言いながらも、大迫バスセンターから花巻厚生病院まで1日4往復、お年寄りにはそれ相当の経済的、時間的負担が伴います。しかも、盛岡方面へはさらに負担は上乗せになりますし、バスセンターに来るまでのさまざまな負担を考えると、かなりのものがあります。果たして、県民のセーフティネットの基本である医療事業が、政策展開の基本方針である聖域なき見直し、あるいは財政事情と医師不足のみの理由から、県内一律的に診療所化を進めていいものでしょうか、大いに疑問があります。
 県立病院改革プランが目指すものは、2次保健医療圏単位とした良質な医療の確保であり、特にも、知事は2月議会の演述で、血の通った地方自治及び社会的弱い立場にある方々に、光が当たるような質の高い福祉社会の実現を唱えられており、大迫地域の方々は、この知事の言葉に最後の望みを託しております。ついては、高齢化が顕著で、統計的に所得水準も低く交通手段も劣っている、いわば社会的弱者に犠牲と負担を強いるような大迫病院の診療所化は再検討すべきと考えますが、知事の御見解をお伺いいたします。
 最後に、都道府県知事の任期の制限についてお伺いいたします。
 今回でこの問題を取り上げるのは3回目でありますが、私が継続的にお尋ねしてまいりました理由は、権力は腐敗する、絶対的権力は絶対的に腐敗するという、歴史の教訓に我々は素直に学ぶ必要があると判断するからであり、同時に、成熟した民主主義社会を目指すためには、被選挙権の自由を超えて制限すべきものと考えるからであります。例えば、合衆国の大統領、特にも同州知事は、いずれも任期は2期8年とされております。特にも、地方分権の進展とともに、都道府県知事の権限はますます強化される方向にあり、その及ぶ範囲は限定的ではありますが、それでも行政委員会まで含めた一連の人事権、予算編成権・提案権、行政執行権などを握っており、事実上の権力の総覧者と言っても言い過ぎではないものと思いますし、以前も御紹介申し上げましたが、国内的には多選自粛条例をみずからに課している首長も現におります。
 さて、平成11年の私の一般質問に対し、知事は、立候補の自由、選ぶ側の選挙民の自由という観点から幅広い意見を踏まえ、十分に国民的な議論がなされる必要があると答弁され、検討されることは否定されませんでしたが、本年2月議会の答弁では、一般論として、多選の弊害が生じるおそれがあることを認めつつも、制度的に制限を加えることに否定的見解を示しつつ、最終的には、有権者の選挙における投票行動の判断にゆだねるべきものと述べるなど、当初の答弁から明らかに後退していることは明白であります。
 一方、知事は、以前、みずからの任期について、3ないし4期と制限することを本議会で明言されましたが、この考えは、最終的には、有権者の選挙における投票行動の判断にゆだねるべきものとの見解と相反することになります。任期の制限を有権者の判断にゆだねるべきものとするならば、3ないし4期という見解はあり得ないことになりますし、逆に、3ないし4期との答弁に変化がないとするならば、これは事実上の多選自粛に当たるものでもあります。
 また、先日の記者会見では、5期は長いとも発言されたとお聞きしておりますが、なぜ5期を否定されるのでしょうか。有権者の判断にゆだねるとするならば、5期否定発言はあり得ないと思いますが、いずれ、岐阜県あるいは福島県の二つの不祥事をめぐり、都道府県知事の任期のあり方が識者などの発言によって最近目立つようになってきており、改めて問われてきております。ついては、首長の任期の制限につきまして、整理された御見解を求めるものであります。
 以上で一般質問を終わりますが、残り任期もあと半年余りとなったことから、恐らく私の一般質問はこれが最後になるものと思っておりますし、民意の意向によっては、今後、不可能になるかもしれません。つきましては、知事初め県幹部の皆様のこれまでの御対応に改めて深く感謝申し上げるものでありますが、ぜひ、御答弁につきましては県民の琴線に響く深みとコクのある言葉を御期待申し上げまして、一般質問を終わりたいと思います。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 佐々木順一議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、初当選以来、今日まで貫かれている志について披瀝しろと、こういう御質問でございました。県民のために尽くす、県民の幸せのために身をささげる、平和で安心な住みよい県土づくりの先頭に立つ、これが私の志でございます。
 次に、政党政治に対するお尋ねがございました。
 まず、県政についてでありますが、県政は住民により直接選挙で選ばれました知事と議会の二元代表制、これは今、議員がお話しになったとおりでございまして、こうした二元代表制でありますので、県政執行の最高責任者である知事として、県民の視点に立って、望ましいと判断される政策については、党派を問わず率先して取り入れることが基本である、このように考えます。また、国政につきましては、これは議院内閣制でありますから、各政党が国民に日本の将来ビジョンをしっかりと示した上で、政党間の活発な政策論争の中で、国民が選挙を通じて政権選択をしていく、これが本来の姿であろうと思います。
 以上のような認識のもとで、私は、県内の各政党の皆さん方との間で分け隔てなく、議会の場を初めとして、それぞれの場面でお互いに一定の緊張感というものを保ちつつ、政策実現のために切磋琢磨し合う、そして県政を進めていく、こういう考え方でございます。
 次に、岩手競馬についてであります。
 まず、新計画(案)公表の意図についてお尋ねがございました。これまで、組合はコスト削減と発売の拡大ということによって、いわば自助努力で債務を解消できるよう経営改革に取り組んできたわけでありますが、盛岡競馬場整備のための多額の起債など、それが多額の債務というふうになりまして、一方で、当面発売の大幅な拡大は期待できないという状況にございます。自助努力による借入金の償還は困難な見通しでございますが、かといいまして競馬事業廃止が、後に述べますように、構成団体の財政や雇用・経済に与える影響が極めて大きいということを踏まえて、従来の基本的な考え方を大きく変更する案をお示しする必要がある、このように判断をいたしました。
 この新計画(案)は、収支が均衡して赤字が拡大しないということを条件に、存廃の基準を明確にした上で、競馬事業を継続するという基本的な方針でございまして、発売収入の25%の事業収益で全部の経費を賄える構造へ転換する。また、債務を繰り上げ償還して、構成団体融資に切りかえる融資スキームを計画のポイントとして盛り込んであります。
 このような考え方は大きな変更でございまして、こうした大きな変更に際しては、競馬関係者の皆さん方の御理解、御協力を得ながら進めていくということが不可欠であります。また、構成団体融資につきましても、これは構成団体個々の財政運営に深くかかわるものでございますので、構成団体議会はもとより、県民・市民の皆さん方に十分説明して御理解を得ることが必要ということで、この新しい計画(案)を早い段階で公表して、競馬組合議会、それから構成団体議会、競馬関係者、さらには広く県民・市民の皆さん方に御説明をして、御意見もいただきながら、この取りまとめをしようと、こういう意図でございます。
 万が一、事業を廃止した場合でありますが、これは資産処分状況などによりまして増減はいたしますけれども、組合の規約に基づきまして、債務や廃止に伴う費用など約370億円強と試算されておりますが、その支払いが構成団体に求められまして、構成団体にとって極めて大きな財政負担となりますほか、関係者の雇用問題の発生や、全体としての経済効果の喪失といった地域経済への影響など、これは影響が甚大であるというふうに考えております。
 この新しい計画の融資スキームでございますが、これは、そうした廃止の影響も考慮しながら、構成団体の大きな負担を避けるという最善の方策として提案をしているものでございまして、当然のことでありますが、こうした競馬組合問題に限らず、今、県政としては県北・沿岸地域の産業振興や医師確保など、さまざま当面する重要課題を抱えておりますので、それぞれにつきまして必要な対策を、今、講じているところであります。今後とも、こうした県政全般にわたりまして重要かつ喫緊の課題に鋭意取り組んでいきたいと、このように考えております。
 それから、存廃に関する知事の意思が明確ではないのではないかというお尋ねがございました。今述べましたように、この事業を廃止した場合には、構成団体の財政、それから雇用などに与える影響が極めて大きいということでございますので、繰り返しになりますが、この融資を盛り込んでいるこうしたスキームによりまして、収支が均衡して赤字が拡大しないことを条件に、できる限りの手だてを尽くして競馬事業を継続したい、このように考えております。
 それから、県民意向の把握についてであります。これは、手順としては、今申し上げましたような重要な検討課題が含まれておりますので、まず、競馬組合議会や構成団体議会に説明をさせていただきまして、議員の皆さん方の御意見をいただいているところでありますが、広く県民・市民の皆さん方の御理解、御協力が不可欠でありますので、それを御説明して、意見を伺っております。
 まず、9月16日に、私と両市長とともに記者会見の場で、マスメディアを通じて趣旨を御説明したわけでございますが、そのほか、今、ホームページに新計画(案)を掲載して意見を募集するといったようなことを行っております。今後も、組合を中心に計画(案)の概要版の作成・配付やシンポジウムなどの開催をいたしまして、県民の意向の把握に努めて、そうした寄せられた意見も踏まえながら計画(案)を煮詰めて競馬の再生を図っていきたい、このように考えております。
 次に、格差問題についてであります。規制緩和などを進めた構造改革の取り組みでございますが、このことによって企業活動が活発化して生産性が向上する、さらには新たな雇用が生まれるなど一定の効果をもたらしたものと考えていますが、しかし、こうした構造改革というのは、公正な競争が行われるための制度やルールをしっかりと構築した上で行われるべきものでございまして、急速な構造改革が、こうしたルールが未整備なために、企業倫理を大きく逸脱したような利益至上主義など、ある種の社会規範の緩みというものをもたらしたという側面も否定できない、このように考えています。
 一方で、介護、医療、年金といったものにつきましては、社会政策的な観点に立って低所得者への配慮が十分になされる、そういう必要があります。また、制度としても持続可能な制度として構築される必要がある、このように考えております。とりわけ、議員からお話がございました生活保護につきましては、最も基本的なセーフティネットとして、これは堅持されなければならない、このように考えます。
 また、自殺者の増加、それから凶悪犯罪の発生、犯罪の低年齢化といった問題につきましては、これは、経済的な問題だけでなくて、人と人とのつながりの希薄化、それから道徳観・倫理観の欠如など、社会全体で解決しなければならない複雑な原因が絡み合っておりますので、官民や地域が一体となって解決に取り組んでいく必要がある、このように考えています。
 次に、非正規雇用の増大の話でございます。
 今、雇用・就業形態の多様化が進んでいるわけでありますが、正規雇用以外の選択肢がふえること、これは多くの場合、雇用する側にとって有益であるということだろうと思います。ただ、雇用される側にとりましても、家庭の状況や一人一人の価値観に合わせて働くことができるという側面も確かにありまして、高齢者や家庭を持つ女性の雇用機会の拡大などに役割を果たしてきた部分もあると思います。しかし、今、広く世の中に広がっております現在の状況につきましては、これは、雇用される側から見ますと、正規雇用に比べて立場が弱い、それから賃金や待遇が公平でない、将来の選択肢が狭まるという問題がございまして、一方で、雇用する側も中長期的な競争力の低下が懸念されておりますので、これらの解決を図ることが差し迫った課題であると考えます。
 国の方では、こうした問題について、正規・非正規労働者間の均衡処遇というものを掲げて労働環境を整備していく姿勢を明確にしておりますが、県でも、これまで企業経営者に対して正規雇用の拡大を呼びかけてまいりました。やはりしっかりとした勤労観を持った労働者をできるだけ正規の雇用で雇っていただくということが企業の発展にもつながり、それはひいては地域経済・社会の豊かさにもつながっていく、このように認識をしておりますので、正規雇用の拡大を呼びかける、この取り組みにさらに力を入れていきたい。そして、この労働問題には国の行政が深くかかわっておりますので、地方自治体での解決が困難な課題が多いわけでありますが、これに対しては、国に対して必要な制度整備を働きかけていきたい、このように考えます。
 それから、郵政民営化委員への就任のお尋ねでございます。
 来年の10月から実施予定の郵政民営化でございますが、これは、来年の10月から、その後10年間に政府の出資が順次なくなって、そして来年の10月以降、10年後に完全民営化するということになっておりますので、いわば、この10年間の移行期間は政府の関与が何らかで残る期間という形になります。こうした政府の関与が残る巨大な金融機関が、全地方銀行の預金残高に匹敵する資金規模で市場に入ってくるわけでありますけれども、これが融資業務などの新規業務に進出するということになりますと、地域の金融機関、特に小さな金融機関というのは経営が圧迫されます。そして、場合によっては廃業に追い込まれるという可能性もございまして、地域経済にも大きな影響を与えるという懸念があります。まさに民間との対等な競争条件を確保する、イコールフッティングの確保ということが必要であります。
 また、コストのかかる過疎地の郵便局が廃止になりますと、この郵便局ネットワークというものの機能が失われてしまうということで、過疎地の郵便局の設置水準を維持していく、郵便局ネットワークの維持ということが大変重要なことであります。さらに、郵便事業は収益状況がそもそも厳しいわけでありますが、全国均一のユニバーサルサービスを確保していく、これも大変重要な課題でございます。
 そのほか、民営化になりましたら、会社の経営の自由度が増しますので、創意工夫を入れて、そこを拠点にして多様で良質なサービスを提供する拠点にもなり得るものでございます。こうした課題、多くの問題がございますので、このように民間との対等な条件のもとで公平な競争を図る、あるいは郵便局の設置水準を維持する、郵便事業のユニバーサルサービスを確保するといったことにつきまして、これをうまくそれぞれ調和、両立させるよう、その監視をしていくということが大変重要でございます。そういうことによって国民全体の利益が確保されるわけでありますので、そのことが郵政民営化委員会に課せられた役割でありますし、私もこうした考え方のもとに委員に就任しておりまして、この委員としての活動が、国民さらには県民の利益につながるというふうに認識しております。今後も、委員として委員会に与えられた職責をしっかりと果たしていくように取り組んでいきたいと考えております。
 それから、この郵政民営化をテーマにして争われた昨年の解散総選挙についてでありますが、これは、今、議員からもお話がございましたとおり、衆議院では可決をされて、参議院では否決をされた議案の是非について、衆議院を解散するという手法で国民の意思を問うたという点で極めて特異なものというふうに思うわけでありますが、これは、憲法上、内閣に帰属する権限として総理の高度な政治判断により行われたと、このように考えます。また、この選挙結果についてでありますが、郵政改革の賛否という形での、まさに象徴的な対立軸をつくり出したということで、自民党が大勝するという結果になったのではないか、このように考えます。
 次に、農政の関係であります。品目横断的な経営安定対策についてのお尋ねでございますが、これは、今現在、農業従事者の減少・高齢化、それから耕作放棄地の増加など、全体として構造の脆弱化が進行する中で、兼業農家、高齢農家を初めとして、多様な構成員からなる地域農業を、担い手を中心として再編しようというものでございまして、この対策の導入に当たりましては課題が幾つかございます。個別経営では対象とならない小規模・兼業農家をどういうふうに取り込んでいくのか、それから、本対策が対象としてない園芸や畜産部門の経営安定対策の充実・強化をどう図るか、こうした問題があると思っております。特にも、集落営農組織への小規模・兼業農家の参加が進まなければ、今、議員から御指摘がございましたとおり、さらに耕作放棄地が増加したり、集落機能が低下する。ひいては農村文化の消滅も懸念されるということでありますので、こうした規模の小さい、またさらに兼業農家、こうしたところには、この対策の特例を活用した規模要件の緩和や集落営農組織の設立によって、その組織への加入を促進する。それから、園芸作物の導入による所得向上に、今努めているところであります。県では、こうした取り組みを加速させることによって、主業型農家や小規模・兼業農家、さらには女性・高齢者それぞれが創意工夫を生かし、発揮して、共存し、発展していけるような集落営農を育成して、農業・農村の活性化を図っていきたい、こういう考え方に立っております。
 それから、民主党の方で提案しております農林漁業再生基本法案についてでありますが、これはまだ具体的な施策の内容が不明な部分もありますけれども、この基本理念に掲げております食料自給率の向上、農家経営の安定対策、そして農業・農村の多面的機能への配慮などの重要性について、これは論をまたないところだろうというふうに思います。
 今後、具体的な施策の内容を、こうした農業政策について検討するに当たりまして、私は、やはり真に構造改革に資するものであるということ、それからWTOにおける国際規律に対応し得ること、財源確保について十分な措置が講じられて、なおかつ、農業者以外ということも含めて国民の理解が得られること、このような観点から議論がなされることが重要であると考えておりまして、国政レベルでの政策論議をさらに深めていただくことを期待しております。
 次に、地方分権について幾つかお尋ねがございました。
 まず、三位一体改革の第1期についてでございますが、この評価は、従来も議会で申し上げてまいりましたが、初めて3兆円規模の基幹税による税源移譲を実現できたということについて、一定の評価をしております。しかし、内容については、補助率、負担率の引き下げといったようなことで、裁量の拡大につながっておりませんので、内容的にはやはり不十分ということであります。
 今後に向けてでありますが、知事会初め6団体がこの地方案を一本化するといったような、そういう結束をこれまで強めてまいりました。また、国・地方が同じテーブルに着いて協議する国と地方の協議の場というものが初めて設置されたという成果もありますので、これを財産として、今後の真の分権改革につなげていくということが必要であろうというふうに思います。
 それでは、どのようにつなげていくかということでありますが、やはり今後の分権改革につきましては、国と地方の役割分担のあり方をもう一度見直しをして再構築していくことが必要である。そのためにも、医療ですとか、福祉ですとか、産業ですとか、まず各政策分野ごとに国と地方が協議を進めて、それぞれの政策テーマごとに補助金、負担金の廃止や税財源の移譲、それから地方に対するさまざまな規制、関与の廃止といったようなことについて真摯に議論していく。そして、分権型社会の道筋をはっきりと示していくということが必要であると思います。こうした分権改革と並行して、都道府県と市町村の役割分担の見直しというものも、これは地方の側で大胆に行うべきでございまして、本県でも、基礎自治体である市町村の行財政基盤の充実強化を進める必要があると考えております。
 さらに、こういった県や市町村という行政組織だけではなくて、市町村の強化と相まって、自治の担い手である住民組織やNPOの育成・強化を行うということも大事な観点でありまして、地域の皆さん方がみずから地域課題を解決していけるようにするなど、やはり住民自治の力を十分に発揮できる仕組みづくりに今後力を注いでいきたいと考えております。
 それとの関係で、議会の権限強化、首長の権能のあり方ということでございます。昨年、本県の議会が、議会の権限強化や、議会と首長との関係の見直しを内容とした都道府県議会制度の充実に関する意見書を採択したことにつきましては、まさに時宜にかなったものと、このように考えています。こうした動きが地方制度調査会の地方議会のあり方に関する答申に反映されて、議長への臨時会の招集請求権の付与、専決処分の要件の明確化等を柱とした自治法の改正がなされたと、このように考えております。
 今般の改正に盛り込まれなかった議長への予算執行権の付与など、議会と首長との関係に関する基本的な事項についてでありますが、これは、やはり分権時代にふさわしい形に向かって今後見直しをされるべきもの、このように考えております。
 次に、県立大迫病院の充実についてのお尋ねでございます。
 平成16年度から取り組んでおります県立病院改革でございますが、県内における医師不足の深刻化、県立病院の患者数の大幅な減少、県の医療費抑制政策を背景に県立病院の経営が急速に悪化して、現状の規模・体制で運営していくことが困難となったということでありまして、考え方は、二次保健医療圏を単位として医療資源を広域基幹病院に重点的に配置する。これを中心に県立病院群を一体的に運営しながら良質な医療の提供を目指す。また、二次保健医療圏ごとに医療需要に見合った経営規模の適正化を図る。3点目としては、病院運営全般にわたりまして総合的に経営の改善を図る。こういうことを柱にして安定した経営基盤を確立して、今後とも県民に良質な医療を持続的に提供しようということでございます。
 また、この改革の計画でございますが、大迫病院につきまして申し上げますと、当初、無床として計画をつくっておったわけでございますが、地域の皆さん方からさまざまな御要望もちょうだいしたということがございまして、これを有床に見直す、切りかえるということで見直しをした上で策定をしたものでございます。
 この大迫病院につきましては、岩手中部保健医療圏において、当時、これは平成15年度でございますが、約110の一般病床があいていたわけでございますので、スケジュール的には19年度に診療所化するという計画でございます。その後の17年4月の花巻厚生病院の1病棟、これは65床ですが、花巻厚生病院の病棟の休止、それから、ことしの7月の遠野市の岩手中部保健医療圏編入等を経て、その上で、ことしの8月末におきましても、圏域全体としては約170の一般病床があいているということ、また、大迫病院の病床利用率が低位で推移しているということから、計画どおり診療所化を進める必要がある、このように判断をしております。
 なお、診療所への移行に当たりましては、地域医療確保の観点から、住民に最も身近な外来診療は、他の県立病院や関係大学などから応援を得ながら内科・外科を中心とした診療体制を確保して、これまでどおり通院できる環境を維持する。また、夜間・休日の初期救急医療や訪問診療、訪問看護等を継続する。できる限り入院診療が必要な患者にも対応する。これを基本として、広域基幹病院を中心としたネットワークによって良質な医療の提供に努めていきたい、このように考えております。今、こうした県立病院の改革を進めていきませんと、県民への良質な医療の提供にも支障を来すと、このように考えておりますので、ぜひ、今後も十分に県民の理解を得ながら改革を進めていきたいと考えております。
 最後に、都道府県知事の任期の制限についてのお尋ねでございます。私は、知事である者が、知事として引き続きさらにその職責を担うかどうかにつきましては、まず知事本人の識見による判断がある、まず知事の本人の判断がある、このように考えます。その上で、有権者が選挙における投票行動によって判断すべきものと、このように考えます。こうした考え方に立ちまして、知事の任期は、多選の弊害を生じさせることがないように、これまで、3期ないし4期がその節目であり、5期以上はやるべきではない、これは知事としての判断として申し上げてきたところでございます。そういうことで、私もこの考え方に沿って判断をしたい、このように考えております。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いいたします。
   〔総務部長川窪俊広君登壇〕
〇総務部長(川窪俊広君) 競馬組合への融資と主要3基金についてでございますが、県の既存の基金におきましては、条例によりそれぞれ設置目的が定められておりますので、本来の目的に従って取り崩す必要があるものでございます。
 今回検討しております競馬組合への融資におきましても、それぞれの基金条例に従いまして既存基金の取り崩しを行い、その取り崩し金を本来目的に沿った経費に充当することによりまして、その経費に充てることになっていた一般財源がその分だけ浮くという形になるため、その一般財源を積み立てまして、新たな競馬対策のための基金を造成する形を想定しているところでございます。
 なお、こうした対応を行うためには、既存基金の取り崩しや新基金の積み立てを予算計上いたしますとともに、新基金の設置のための新たな条例を制定することが必要となりますので、具体的な内容を固めた後に、補正予算案や条例案を議会にお諮りした上で実施することとなるものでございます。
 また、この対応を行いますと、既存の主要3基金の残高が縮小いたしまして、今後の財政運営に一層気をつけなければならなくなるという影響が生じるわけでございますけれども、このような方法によって基金を活用すること自体につきましては、法令等との関係において、特に問題となるものではないものと認識しているところでございます。
   〔保健福祉部長赤羽卓朗君登壇〕
〇保健福祉部長(赤羽卓朗君) 自殺予防対策についてでございますが、本県における自殺の要因については、県警本部資料、平成17年中における自殺の概要によりますと、自殺の原因としましては健康問題と経済生活問題が多く、自殺者総数の約6割を占めているところでございます。また、厚生労働省が行いました研究事業の結果によりますと、多くの場合、うつが自殺の引き金となっているといったことが明らかにされているところでございます。
 一方、同省の人口動態統計から年齢階級別の自殺死亡者数を見ますと、10年ほど前と自殺が急増してきております最近5年間の比較をとりますと、男性では、40代から60代にかけての、いわゆる働き盛りの世代の増加が顕著でございまして、こうした動きは、経済動向と無縁とは言えないという研究結果も示されているところでございます。
 本県の自殺予防対策についてでございますが、こうしたことから、自殺は、本県にとって極めて深刻な社会問題の一つとして受けとめているところでございます。今年度、自殺予防対策といたしまして、地域予防活動の担い手育成や、うつについての普及啓発、予防、相談の実施、県内4地域における自殺予防のための地域介入モデル事業、自殺者の心理学的剖検や自死遺族への相談支援体制の構築などの取り組みを進めているところでございます。
 また、本年6月に岩手県自殺予防対策推進協議会を設置し、官民一体となった自殺予防対策の推進を図ることとしているほか、北海道・北東北3県とも連携した自殺予防対策を進めることとしております。県としては、今後とも、こうした官民協働などの関係者の連携、あるいは地域での予防活動の着実な推進を図り、自殺の予防の取り組みを進めてまいりたいと考えております。
〇30番(佐々木順一君) 名答弁、ありがとうございました。それで、県立病院と競馬について聞きます。
 まず、病院問題。
 大迫の方々が今置かれている状況を、今、自覚症状などに名医の誉れ高い知事にお聞きしたわけでありますが、結果は、診断は異常なしということでありましたので、これでは、ちょっと今の状況を正確に御認識されていないというような認識もしたものでありますので、もう一度、今置かれている状況をお話し申し上げたいと思っております。
 まず、大迫地域の5月時点の国保関係者の入院患者は52名おりました。これは国保だけでありますから、それ以外も当然あるわけでありますから、もっとふえます。また、大迫病院の利用状況、今までは1日30人で、在院期間20日。したがって、長期的、社会的入院が多いとは言えない状況だろうと思っております。
 また、先ほども経済的な面を話しましたが、例えば、大迫バスセンターから花巻厚生病院まで片道910円、日赤病院までは1、030円、所要時間は双方60分。そして、直近の統計では、1人当たりの所得は年間189万円と、経済的、時間的問題はこれでおわかりになると思います。そして、高齢化率は33%。さらに、当地域には特養50、老健80ありますが、最近における待機者はあわせて61人。いつ、病に倒れるかわからない方々もいらっしゃると思います。そして、今月の1日から一定のお年寄りの医療費の窓口負担がふえましたし、医療型療養病床の食事、居住費の自己負担もふえました。恐らく、知事の耳にも達していると思いますが、多くの高齢者から悲鳴の声が上がっております。
 また、花泉と紫波、両病院は先行して診療所化されましたが、相次いで、院長、副院長、医師が退職する事態になっております。なぜ退職したかという、こういった検証も不十分なまま、三たび大迫病院が診療所化されますと、また同じ過ちを繰り返すのではないかなと、こういう心配もあります。大迫地域に関しては、学校が縮小、病院も縮小では、結果的に、県みずから過疎促進策を奨励しているというようなことにもなるのではないかなと思います。
 一方、県では、本年6月14日に可決された医療制度改革関連法、これを踏まえて、医療費適正化計画、療養病床の転換などを柱とする新しい医療計画の策定に取り組まれているわけでありますが、現在、この検討中の一連の計画を確定させた後に診療所化が果たして妥当かどうか、こういった考え方を持つべきではないかなと思っております。
 今回、請願には7、491名の第1回目の署名が添えられておりますけれども、きょうは伊保内からも同じ請願が出ました。大迫だけではないということであります。こういった署名は、単なる名前の列記ではなく、いわば当該地域の痛みを伴った地元の方々の切実な叫びであろうと、こう思います。最初の質問で、知事の心を変化させることはできなかったものでありますから、今置かれている大迫地域の実態を申し上げたところでありますので、もう一度、この点につきまして再答弁を求めたいと思っております。
 それから、競馬につきまして、いろいろ御相談されて11月ごろにも成案という話がありましたが、新聞でも11月ごろという話がありましたけれども、先般の新聞で、知事は、非常に細い道であるが、今、とり得る最善の道であると、こういうことを強調しておりました、この一連の計画は。であれば、いろんな各団体に協力、相談をして、理解を得る努力も当然必要だろうとは思いますが、これだけ最善のものであるとするならば、各団体を説得して、そういう強い意思で取り組むべきだろうと思っておりますし、ついては、全体像が果たしていつごろ明らかになるのか、この2点につきまして再度答弁をお願いしたいと思います。
〇知事(増田寛也君) 2点お答え申し上げます。
 まず、県立大迫病院の関係であります。大変住民の皆様方に御不便をおかけすることになると。また、こうした、いわば追い詰められているような地域の皆さん方の悲痛な叫びというものが、請願あるいはさまざまな意見を医療局の方も直接いただいておりますので、そういうところに出てきているなという思いがありまして、私もこうした診療所化ということを打ち出して、地域の皆さん方に御理解をいただくことについて、内心じくじたる思いもございます。しかし、さらにそこを乗り越えて申し上げなければならないわけでありますが、今、一つ医師不足ということをとりましても、働く現場の医師の方からも、医療資源をもっと集約化してくれないとこれ以上自分たちもやっていけないという、一方でそうした悲痛な叫び、現場の声も出てきているということも事実でありますし、それから、医療制度改革の中で、県の新たな医療費適正化計画をつくるという、こうした役割も出てまいりましたけれども、そういうことも国がほとんどなし得ないところまで全体として制度が来てしまっていると、こういう事実もございます。そして、財政的に今医療局が抱えているもの、これは今現行の自治体病院でなし得る財政措置としては、県としても最大の措置をしているつもりでございますが、それでも、今の医療局の県内全体のネットワークを維持していくということは至難の状況であると、こういう状況も現実にありますので、ここはぜひ、有床で地域に診療所としてお残しをするということを、何とか御理解をいただけないかと。まだ、若干時間がございますので、その間に私どもの方で県立花巻厚生病院なり、あるいは今度統合病院になりますけれども、そちらの方との連携をさらに強めて、そして保健医療圏全体の医療水準の確保ということにつきましては、個々具体的にさまざまな対応をとっていきたいと思いますので、何とか大迫の皆様方に御理解を賜りたいと、このように考えております。
 今、特養ですとか老健などに入っている皆様方のお話がございました。一方で、そちらも療養型病床の大幅な削減ということで、地域の受け皿をどうするかという、多々問題がございます。この点については、大迫地域の医療の問題という、そういう側面だけでなくて、やはりその後に続く福祉の問題も含めて、全体としてやはり考えていくべき問題であろうと思いますので、今後もこの問題について、もちろん我々も真剣に考えていきたいと思いますが、ぜひこの点について、県の置かれている立場を御理解いただきたいというふうに思います。
 それから、競馬のお話でございましたが、説得をするというお話でございました。やはりこちらもそれだけの覚悟を持って事に当たっていきたいと。やはり手順を踏んで、実態を理解していただくというところから始まっていくと思いますので、こういう同じ自治体の組織としての競馬組合の中で、それにつながる関係者ということでございますので、もちろん、競馬組合の意向というのは、厩務員ですとか騎手ですとか、そういう人たちが大きく影響されるわけですが、やはり同じ目線と同じ立場に立って理解を求めていくというところから始まらなければいけませんので、いろいろ御説明をするというところからスタートさせていくわけであります。しかし、残された時間という問題もございますし、また、やり方としては、若干の、中での動静はあるかもしれませんけれども、基本的な考えとしては、新計画(案)で示したようなものに落ち着かせざるを得ないだろうと、こういうふうに考えておりますので、議員から今お話がございましたとおり、そうした覚悟を持って、十分理解を賜るように努力していきたいと、このように考えております。
〇30番(佐々木順一君) それではもう一点、大迫病院、しつこいようでありますが。
 かつて県立病院の発展、創業に多大な貢献をされました中村直元知事が、退任後の温故知新という回想録の中で、病院問題について次のように語っております。
 すなわち、都市部には医師が集中しているが、不足している診療所は依然として多い。医療にしても一極集中ではなく、地方に分散すべきである。こうした地方分散施策は、厚生省もほとんど手を打っていない。私は、その点を指摘し、機嫌を損ねたことがある。
 地方で地域診療を支えている人のために財政措置を講ずるとか、ある年限が過ぎたら海外研修をさせるとか、叙位叙勲で配慮するとかなどの工夫がほしいものだ。診療点数の値上げとか総医療費の抑制施策、ベッド数の抑え込みや薬価基準の振りかえなど、小手先の議論が行われていると述べております。
 今から10数年前の話でありますが、将来的な傾向や予想される課題などを見据えて、先進的な対策の必要性を強調されており、まことに示唆に富む内容であろうと、こう思っております。つきましては、この貴重な体験に基づく中村元知事のこの思いに対し、どのような御見解をお持ちなのか。そして、これを踏まえて、知事は、大迫病院の診療所化を含め、県立病院改革にどう取り組まれるお考えなのか、確認をさせていただきます。
〇知事(増田寛也君) お答え申し上げますが、今、先人の偉大な言葉というものが紹介ございました。今、その中で、こうしたことが考えられないものかとお話しになったようなことは、いずれも大変示唆に富む話でございますし、やはり海外研修などを、今県として医師確保の中で提案をしております。海外、国内でも、他の地域での研修制度というものをもっと大幅に取り入れるべきではないかと。これは国としてということだけではなく、県でもその方向で、今そういう医師確保対策案の中に入れて、近々にそれを具体化していこうというふうに思いますし、それから、地域医療に従事する人たちに対しての社会的な評価を上げるということも、これは県というよりも、国全体でこの部分は取り上げていくべき話だと思いますが、私どもの方で、厚生労働省に繰り返し言ってきていることであり、今やっとその方向で少しずつ動き出していることかと。そのほかにも今お話がございましたが、大変示唆に富むお話であったというふうに思いますし、今、県立病院の開設者として、それを受け継ぐ立場にある私としては、それを実現するために全力を尽くしていくべき、その時期にあるというふうに思っております。
 今、行っております国への活動ですとか、県での新しい施策の中にそういったものをぜひ生かしていきたいと。そして、その上で大迫病院についても、今議員を介してお話があった、地域の皆さん方の声に真正面から向かっていくということは、今後も続けていきたいというふうに思います。
 この診療所化ということについては、私は県立病院改革の中で、実はどうしても今置かれている状況を、それだけを考えればやはり避けられない問題でありますから、今後、我々が動きまして制度改革ということが少しでも何らかの分野で実現できれば、また事態を改善させるということにつながっていくことはもちろんあり得ると。また、それを目指していかなければならないと、このように考えるわけでありまして、今の議員の御紹介のお話も十分心に刻みながら、県民に良質な医療を提供するということで努力をしていきたいと、このように考えます。
   〔「関連」と呼ぶ者あり〕

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