平成12年2月定例会 第5回岩手県議会定例会会議録

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〇23番(斉藤信君) 日本共産党の斉藤信でございます。
 議案第1号2000年度岩手県一般会計予算に反対の討論を行います。
 反対する第1の理由は、従来型の大型開発、公共事業優先で、県財政の危機的状況を一層深刻にする予算となっていることであります。小渕自自公政権のもとで、国と地方の借金は2000年度末で645兆円にも達します。これは世界に例のない異常な借金で、このまま推移するなら大増税か悪政、インフレという国民にとって最悪の事態になりかねません。ところが、増田県政は破滅型の国の政策に追随して、従来型の大型開発、むだと浪費と言うべき公共事業優先の史上最高となる8、963億円の予算を組み、推進しようとしています。一方で、県債残高は1兆2、017億円となり、予算を大幅に上回るものとなっています。特に増田県政の5年間で5、338億円も借金がふやされたことは重大であります。大型開発の内容も、本議会の論戦で明らかにしたように、大型開発先にありき、事業のための事業と言うべきものが少なくありません。総事業費1、400億円を超える港湾整備事業は、319億円投入した久慈港が活用のめどが立たず、宮古港は港湾計画の改定で貨物取扱量を370万トンから100万トンに、約4分の1に見直しました。しかし、事業費は当初計画以上に拡大しています。大規模林道川井住田線横沢-荒川区間については、岩手大学の井上教授が費用対効果分析を公表しました。その内容は、これまでの造林、育林で推移するなら民有林事業者さえ費用負担の方が便益よりも10億7、000万円も上回り、全体でも153億円も費用負担が便益を上回るというものであります。3つがいのクマタカが生息する地域の環境問題を含め、こうした事業は抜本的に見直すべきであります。
 利用客が50万人台で停滞し、みずから利用頻度が低いと認めている花巻空港拡張問題、農家の6割が農業用水を希望しないと言われている国営、県営合わせて700億円の馬淵川沿岸水利事業など、事業のための事業というべきものは、1兆2、000億円もの深刻な財政危機のもとでは慎重に対応し、見直すべきであります。
 同時に、この間の公共事業の拡大は、景気回復にも雇用の拡大にも役立たなかったことも明らかになりました。この間、岩手県に投資をされた公共事業は13年間で1、600億円から3、200億円に、2倍に拡大されたものの、1日当たりの就労者数は2万2、500人から1万9、200人に逆に減少しました。資本金5、000万円未満の中小企業の受注率は47.7%から32.6%に大幅に減少しました。今こそ、県政と予算の主役を大型開発、公共事業から県民の暮らし、福祉、教育に転換を図るべきであります。
 反対する第2の理由は、本県経済と産業を牽引する原動力である中小企業対策と雇用対策が極めて不十分なことであります。
 県内中小企業は、事業所数で99%、従業員数でも約8割を占めています。県内経済の振興と雇用拡大に決定的役割を果たしています。ところが、県の中小企業対策は総額731億円で、予算の8.2%、金融対策を除けばわずかに71億円で、予算に占める比率は0.8%にすぎません。中小企業対策を金融対策のみならず、技術支援から経営に役立つ支援まで抜本的に強化することを求めるものであります。公共事業の中身も、ゼネコン優先の大型開発から生活、福祉密着型に転換するなら、総額を減らしても中小企業への仕事を大幅にふやすことができます。
 深刻な雇用危機打開の問題では、何よりも長時間労働の改善が必要です。県職員の15億円に及ぶサービス残業を解消することを初め、県内労働者の超過勤務、残業を解消するだけで、約2万8、000人の雇用に相当します。国の目標である年間1、800時間を達成するなら、約3万人の雇用を拡大することができます。
 私は、増田県政が大企業の異常なリストラと下請単価の切り下げなどに正面から立ち向かい改善を求めるとともに、実効ある雇用対策に取り組むよう求めるものであります。
 反対する第3の理由は、福祉に冷たい県政になっていることであります。
 数日後の4月から介護保険が実施されますが、準備状況は3月17日現在で、介護サービスのケアプランが作成されている在宅高齢者は申請見込みの46.6%、ケアプランの作成依頼が64.1%と非常におくれています。この要因は国の取り組みのおくれにありますが、高齢者への説明不足も問題であります。さらに、高過ぎる保険料、利用料の徴収によって、これまでのサービスが受けられなくなる高齢者も少なくありません。施設入所を新たに希望しても、入所できる条件も不十分であります。行政が介護サービスを求めるすべての高齢者のケアプラン作成に責任を持つなど、万全の対策をとるよう求めるものであります。
 介護保険制度は、準備のおくれとともに、保険料、利用料などの低所得者対策、介護サービス基盤の拡充など、引き続き改善が強く求められています。少子化対策というなら、盛岡市を含め、県下18市町村に広がった乳幼児医療費の無料制度や、青森、秋田両県で既に実施し成果を上げている保育料の第3子無料化を本県でも実施すべきであります。
 反対する第4の理由は、農林水産業の対策の6割、7割が公共土木事業となっており、農林漁民が切実に求めている価格保証、所得補償の対策が全く不十分なことであります。この間の農業粗生産額の縮小という厳しい現実から教訓と課題を酌み取り、生産者の生活と再生産を補償する対策を抜本的に強めるべきであります。
 反対する第5の理由は、県民の願いに背を向けた教育政策の推進であります。
 県立高校新整備計画は、一部に見直しが行われたものの、紫波高校、一戸高校の総合学科への転換は、地域住民と関係自治体が強く見直しを求めています。広田水産高校の学科存続の要望も根強いものがあります。県民が高校改革に求めたものは、深刻な受験競争の解消であり、高校間格差の解消と地域と結びついた高校の拡充でありました。しかし、県教育委員会の新整備計画は、こうした願いに背を向け、高校多様化の名のもとに、再編統廃合によって新しいタイプの高校を広げ、高校間格差を一層拡大、固定化させることでありました。生徒の興味関心が多様化しているというなら、それにこたえられない40人学級こそ見直し、子供たちに行き届いた30人学級をこそ実現すべきであります。
 私は、県教育委員会が上から押しつけるやり方を改め、話し合いで知恵を集め、県民地域住民が納得する計画となるよう見直しを求めるものであります。
 今議会中に教師による体罰事件が明らかになりました。この背景には、何よりも子供たちの人権が認められていないこと、生徒を抑えつける管理主義の強化という根深い問題があります。子供の最善の利益を実現するという子どもの権利条約の精神を学校教育の場で具体的に徹底実行すべきであります。子供が中心の子供の人権が大切にされる学校教育に再生を強く求めるものであります。
 次に、議案第11号、第12号、第15号は、港湾整備事業と県民ゴルフ場事業特別会計と県工業用水道事業会計予算ですが、むだと浪費、赤字体質の事業であり、反対いたします。
 議案第13号は、県立病院等事業会計予算ですが、県立病院が県民の医療にとって重要な役割を果たしていますが、標榜診療科の医師不足、深刻な2人夜勤と過重な委員会、研修など、患者の生命と健康にかかわる解決すべき課題が残されており、反対するものであります。
 議案第16号から第21号までは、建設事業費の一部を市町村に負担させるものであり、反対です。
 議案第32号、第35号、第36号、第43号、第44号、第46号、第51号、第54号、第57号、第65号は、使用料手数料を値上げするものであり、反対です。
 議案第100号は、胆沢ダムの基本計画を変更し、県に新たに100億円の負担を押しつけるものであります。わずか10年間で事業費が1、360億円から2、440億円に1、080億円も拡大するもので、異常な計画変更であります。本来、計画の必要性と代替案こそ検討すべきであり、こうした巨大開発は見直されるべきものであります。
 以上申し述べまして、反対討論といたします。御清聴ありがとうございました。

〇議長(山内隆文君) 次に、佐藤正春君。
   〔42番佐藤正春君登壇〕


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