平成12年2月定例会 第5回岩手県議会定例会会議録

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〇21番(川口民一君) 自由党の川口民一でございます。
 昨年、第2回岩手県議会定例会において一般質問を行い、以来9カ月を経過し、再度質問をさせていただきます。
 まず、大東亜戦争後50数年を経過し、何人も予知できなかったような現在の繁栄を達成し、その恩恵を受けております。このことに対して、ここに先人を含む多くの方々に感謝の意を表するものであります。
 さて、21世紀まで余すところ10カ月を切り、新たな時代の幕開けが目前に迫っております。これからどのような日本を形成すべきか、そして、どのような岩手県を構築すべきかを考えなければならない重要な時期と思います。来るべき21世紀は、すべての県民が、幸せで繁栄と豊かさを享受し、県民が誇りを持って生活が営める社会環境を実現する責任と使命を県、県議会ともども担っておりますが、その実現は大変厳しいものと認識しております。
 今、社会システムの根幹において大きな変革が行われようとしているとき、政治家や官僚の腐敗が怒りを買っております。また、政治、行政、社会などに対し不信の声が上がっております。みずから襟を正し、信頼回復に全力で努力しなければなりません。県民との対話を重視し、民意をよく把握し、公正、公平な政治、行政に努めなければならないと考えます。しかしながら、社会は混乱、経済は不振であり、右も左も真っ暗やみでござんす。歌の文句ではございません。これが現実の社会情勢であります。
 それでは、県政の明るい将来展望に期待しながら、通告に従い質問いたしますので、どうぞ誠意ある御答弁をお願い申し上げます。
 まず、県財政運営についてであります。
 財政基盤の安定なくして適切な行政執行は困難と考えます。平成11年度末現在の県債残高は1兆1、000億円余となり、いわゆる借金財政予算であります。しかし、私は、一概に起債を行ったことに対し責任を問うものではありません。県政推進のためには必要と判断して起債を行ったものであり、本県のおくれた社会資本の整備を促進し、大きな効果をもたらしたことも事実であります。その結果として1兆1、000億円余の県債残高であります。このような現状は、当然、今後の財政に公債費の増として大きな負担となり、いわゆる後世代のツケになることも事実であります。県債残高のうち約50から60%は国の交付税措置が伴っており、心配がないという意見もありますが、地方交付税の原資である国税五税が伸び悩む中で、果たして将来見込みどおり地方交付税収入が確保されるのか、確かな見通しがつかない現状と思います。
 また、財政調整基金を初めとする基金残高は、今後減少が見込まれますほか、県税収入についても右肩上がりの経済成長の達成が難しい現状から、大きな伸びは期待できないと多くの方々が認識していると思います。今後、事業の見直し、再構築の徹底、公共事業の重点化など、従来の総花的財政運営を脱却し、真に県民が望む事業への歳出の重点化を図るなどの意識改革が急務と考えます。今後の県財政運営について、知事の見解と決意のほどをお伺いいたします。
 次に、公共事業評価制度についてお伺いします。
 既に事業計画が採択されて着工している事業でも、見直しが検討されています。昨年は20数年も事業を行ってきた奥産道一般県道雫石東八幡平線、この件については昨年も質問しましたが、知事は、今後工事費が膨大となり、現在のような厳しい経済情勢下では県民の理解を得ることが難しいこと、観光を主体とした地域振興上の波及効果が明確にならないこと、さらに、自然と共生する新しいライフスタイルや21世紀を展望した新たな価値観に対応するため、結果的に工事の再開を断念しました。しかし、多くの県民が疑問視しているのも事実であります。マスコミの記事でも、大迫町の事件などより、奥産道のような莫大な負担を負う公共事業を一朝にして破棄した県行政への不信の方が、知事を初め県の責任を問い続けるべき、全県民にとって重大事件であると指摘いたしております。
 人間と自然の共生は、現地の地域住民の意見が最優先で尊重されるべきことであり、自然の大切さと自然保護の重要性については、地域住民が一番真剣に考えております。私は、自然環境の保全の重要性は認識していますが、地域住民の生活安定、確立こそ、県政の最重点課題と考えるものであります。客観的判断は必要ですが、そのためには十分な検討時間と地域の意見に配慮することが必要であります。
 そこでお伺いいたしますが、公共事業評価制度において、これまで中止、休止した案件はどのような内容であったのか、また、今後の公共事業評価制度の進め方について、どのように取り組んでいこうとしているのかお示しください。
 県勢の発展には投資的事業が必要不可欠であり、その投資の結果についての判断は後世に委ねることとして、県総合計画で取り上げられた事業について可能な限り速やかに実行することが、真の県政であり、その積極的な実行を期待してやみません。
 次に、県内の国有林内に埋設されている2、4、5-T系除草剤の問題についてであります。
 県内には、ごく微量ながらダイオキシン類を不純物として含む2、4、5-T系除草剤の埋設地が、雫石町の14カ所を初めとして、県内6町村21カ所にあると伺っております。このことが問題となって、平成9年以来、県ではこれまで、国や関係市町村とともに埋設地の周辺環境整備調査を実施するなど、その安全性の確認を行ってきているところであります。しかしながら、ダイオキシン類は、発がん性などのほか、環境ホルモンの疑いも有する有害物質であり、微量とはいえダイオキシン類を含む除草剤の埋設地が依然として存在することは、住民に対する不安を残し続けるものと考えており、特に埋設地が集中している雫石町の下流、御所湖の汚染について、不安が消えていないところであります。
 一方、全国各地でダイオキシン類による土壌汚染などが問題となる中、昨年7月には、ダイオキシン類対策特別措置法が公布され、新たにダイオキシン類の土壌や水質について環境基準が設定されるなど、ダイオキシン類による環境汚染問題について、改めて県民の関心が高まってきているものと考えております。
 そこでお伺いいたしますが、ダイオキシン類を含む2、4、5-T系除草剤の埋設地問題について、県としてどのように認識し、今後どのように対処されるつもりであるのかお尋ねいたします。
 次に、新農業基本法の取り組みについてお尋ねします。
 昨年7月に新農業基本法が成立して、いわゆる食料・農業・農村の新しい基本法ができました。知事は、この基本法をどう評価いたしていますか、まずお伺いいたします。
 生産条件の不利な地域である中山間地域に対する直接支払制度は、日本の農政史上初めての制度であり、岩手県農業にとってはまことにプラス面が多いと思います。反面、運用によって支払い対象外の農家を初め、消費者や他産業の従事者などから、不公平ではないかとの声が出ることが懸念されております。この点についてどのように運用されるおつもりですか、お示し願います。何とぞ万全を期した体制の構築をお願いいたします。
 次に、畜産農業の負債対策についてお伺いします。
 北上山系を初め、県内の活力ある中山間地域農業の基盤を形成するには、畜産は欠くことのできない重要な部門であります。畜産振興を農政推進の大きな柱に据えることが急務と考えます。しかしながら、現実の畜産を取り巻く環境はまことに厳しい状況下にあり、畜産農家の負債などは、現状の社会情勢では償還が大変困難であると言われております。最悪の場合は農地を手放すなど、やむなく離農の結果を招くことが想定される現状を踏まえて、対策をどうお持ちですか、お伺いします。
 次に、県産農産物の流通対策についてお尋ねします。
 私は、県産農産物の流通対策は、まず県内消費の拡大が基本であると考えます。県外出荷も経済行為として当然ですが、県内販売についてもっともっと農業関係者は目を向けるべきと思います。特に、牛肉などよいものは県外の首都圏などの巨大な消費経済圏、いわゆるマーケットに販売される流通の条理はやむを得ないとしても、一たん県外に出荷されたものが県内にUターンされ、県民は高いものを買わなければならないという矛盾をよく聞きます。農産物を初め、すべての商品は、品質改良の努力も必要ですが、それ以上に流通対策の確立が最も重要と考えます。くどいようですが、一たん県外に販売、Uターンされた牛肉などは、生産者が販売したときに比べてかなり高い価格になっていると言われており、それが現実であります。食料供給県として、県外出荷も当然でありますが、しかし、県内生産物を県内消費者に直接販売することができるならば、生産者、消費者両者に大きな経済的メリットとなり、特に農家経営所得にはプラスになると確信しております。県の積極的な取り組みを願いつつ、お伺いします。
 まず、県産農産物の流通対策をどのように進めようとしているのか、農政部長の所見をお伺いします。
 また、県内の食品製造業においても、本県の豊かな農畜産物を積極的に活用していただきたいと考えますが、こうした商品を開発し、売り込んでいくという、いわゆるいわてブランドの創造と育成についてどのように促進されるお考えか、商工労働観光部長の所見をお伺いします。
 次に、森林整備と森林組合についてお尋ねします。
 本県は県土のおおよそ80%以上が山林であります。戦後、荒廃した山々の再生を図るために植林を進めてきた結果、一見したところ緑の森林となりました。が、しかし、外材の輸入による外圧などが木材価格の低迷を引き起こし、山にかかわる人が激減してまいりました。山は泣いております。山に入ってみてください。植林した林はやぶに覆われ、薄暗い不気味な状況であります。森林の整備対策に積極的な対応が必要です。
 ここで、別角度で言及させていただきます。実際には、我々人間はほとんど川下・平たん地に生活しております。川下の人間がたまに平地から山に来て、自然環境の破壊とか山岳の開発はどうのこうのと言っております。が、当然に森林の整備対策の提言があってしかるべきと思います。ただいたずらに勝手放題なお話は自重していただきたい。皆さん、皆さんの生活はどうでありますか、森林の破壊につながっておりませんか。有識者は、石油、石炭などの化石燃料の燃焼で生じた硫黄酸化物や窒素酸化物が汚染物質として排出され、酸性雨になり、人間の生活に、動植物の生態系に大きな影響を与えていると警告しております。
 森林は、水源涵養、酸素の供給、さらには大気、空気の浄化など、多くの機能を担っております。そのほかにも、森林浴や人間のリフレッシュの場所の提供など、多面的な利用がなされております。将来において、安全な生活が営まれる環境を構築し継承する責任と義務が現在の我々にあります。このように重要な森林の育成・整備をどのように図っていくお考えか、林業水産部長の積極的な対策と所見をお伺いします。
 あわせて、県総合計画において豊かな環境と調和した農林水産業の振興を挙げておられますが、環境との関係で森林をどのようにとらえておられるのか、お伺いします。
 また、森林組合の育成・強化についてでありますが、本県の森林資源は豊富であり、林業を21世紀の有望産業として成長させることが重要と考えます。このような中で、森林組合は森林の造成から間伐や木材の生産など、多様な事業を展開している協同組合であり、森林を健全な姿で次代に引き継ぐなど、重要な役割を担っております。しかしながら、林業を取り巻く厳しい経営環境に対処するためには、森林組合の執行体制やコスト低減へ向けた取り組みがまだまだ必要であります。ついては、森林組合が地域林業の中核的な担い手として、経営基盤の強化などによる効率的な事業展開が必要と考えますが、森林組合の広域合併の現状と、今後どのように促進しようとしているのかお伺いします。
 それから、木材対策についてであります。前段申し上げたように、木材価格は低迷しております。昨年12月定例議会で、飯沢議員から森林交付税の提言がございました。我が意を得たりともろ手を挙げて賛成するものであります。木材対策は森林対策と共通課題であります。我が国では、江戸時代から伐採と植栽が繰り返され、住宅などは木材で建築されており、まことに価値のある資源であることは言うまでもありません。このような木材の付加価値を高めるためには、木工製作の工房建設とか、新規産業、木工製品企業の創設などに努力し、木材にかかわる職場の確保を積極的に図るよう要請するものであります。
 次に、観光振興についてお尋ねします。
 県内には国立公園、国定公園、県立公園など、多くのすばらしい公園に加え、歴史的神社仏閣、名所旧跡のほか、世界規模のスキー大会が開催されたスキー場など、観光資源が数多くありますが、近年の経済不況、さらには岩手山火山活動による風評被害等々によるものと考えられますが、スキー客などの観光客が激減しております。私は、火山活動の終息も見通しが立たず、対策についても混迷している現状から、まずは防災対策にかかわる施設整備と安全性の確保について積極的に取り組むことが喫緊の課題と考えます。それらの取り組みとともに、本県の豊かで美しい自然環境などを生かした観光の振興が重要であります。
 観光の経済波及効果は飲食、宿泊、交通、雇用など、多くの分野に及ぶものであり、その効果をより確かなものとするために、滞在型観光の推進、観光施設の整備、グリーン・ツーリズムの推進のほか、農村や海岸の景観などの地域資源の活用により観光の振興を図る必要があります。観光の振興は地域活性化策の戦略としても重要課題と考えますが、県観光連盟会長にも就任していただいております知事として、根本的な観光施策の取り組みとその具体的推進方策をお示し願います。
 次に、県内の高速交通体系などの整備についてお伺いします。
 国道、県道等の整備は地域産業の振興に大きく貢献するとともに、文化の向上、交流に寄与することは当然であります。県土の広い我が県は、道路整備が県勢発展の重要課題でもあります。昨年、県は道路整備に関するプログラムを策定しましたが、今後の道路整備に期待するもの大であります。その中で、これまで進めてきた広域生活圏の中心都市から盛岡まで、いわゆる90分構想が掲げられておりますが、今後の見通しについてお伺いします。現在、まだ所要時間が3時間もかかる箇所もあると思いますが、途中の改良整備が緊急と考えます。市町村道の整備が90分構想にもかかわってくることから、新規改良や新ルートによって早期実現につながるものと思います。国、県道との連結などについても積極的に協議がなされ、早期にその構想が実現するよう期していただきたい。
 知事はさきの記者会見において、できるだけ新規を抑制して継続分に配分し、完成年度を早めるということで、特に重点化を図ったと説明しておられますが、適正なことであり、敬意を表するものであります。知事の所信表明に交通ネットワークの整備に向けて、東北横断自動車道釜石秋田線の釜石-花巻間、三陸縦貫自動車道等の整備を促進していくとありますが、盛岡以北については、国道4号の果たす役割は極めて重要であり、現在工事が進められている国道4号渋民バイパスの整備状況と今後の見通しについてお伺いするとともに、事故多発区域であります国道46号雫石七ツ森一里塚周辺の曲線改修の早期着工を強く要望いたします。
 この項の質問については終えます。
 次に、防災対策についてお尋ねします。
 一昨年から岩手山火山活動、同じく岩手県内陸北部の地震や夏の県南沿岸部の大雨災害、昨年10月下旬の軽米町を中心とした大雨災害など、県内の広範にわたり大災害が連続して発生しております。被災者に対して心よりお見舞いを申し上げます。
 災害は忘れたころにやってくると言われておりますが、近年は、台風、地震、山火事など頻繁に発生しておりますほか、本県の三陸地域は津波の常襲地帯であり、特に津波に対し常日ごろから備えておくことが大切と考えます。この津波対策との関係で、さきの防災対策特別委員会の席上、地震、津波による防潮堤門扉などを閉鎖するハンドルの形式を標準化することが急務であるとの意見が出され、多くの賛意を得ております。緊急に調査の上対処する必要があると存じますが、どう対応されるか、お考えをお尋ねします。備えあれば憂いなし、防災対策の緊急・重要性からも、速やかに調査・対応が行われなければならないと考えます。
 次に、教育問題についてであります。
 我が国の将来を担う子供たちの心と、そして現状の社会環境の荒廃はまことに深刻な問題であります。凶器の使用などで殺傷事件が相次ぐなど、さまざまな犯罪が起こっております。親が子供を虐待するなどの考えられない事件も続発しております。地域社会、学校、家庭における教育の対策が早急に必要と考えます。いじめ問題、不登校、少年非行、犯罪の低年齢化あるいは集団強盗など、最悪な状況であり、これは教育の荒廃が根底にあるものと考えます。また、現在の社会には、連帯責任、相互に助け合う精神が欠如しているのではないかとも考えます。学校のみならず、社会の荒廃も原因と思いますが、いわゆるマイペース、自己本位の子供たちがふえてきているように感じております。
 政府では、平成11年9月に教育改革プログラムを改訂し、道徳教育の改善充実、心の教育相談員の配置などを行う心の教育の充実、個性を伸ばし多様な選択ができる学校制度の実現や教育長の任命承認制の廃止、現場の自主性を尊重した学校づくりの促進など、教育改革を進めると聞いております。そのためには、地域住民の積極的行動が不可欠であるとしております。他人のお子さんでも、悪いことには注意をしてやることが大切で、それが真の優しさであると思います。私は、人間社会として当然のことが忘れられているのではないか、もう一度社会の原点を再考する時期と認識しております。
 これからの教育は、地域住民、学校教師、家庭の三者が相互に連携・協力して、英知の結集が必要と考えます。
 そこでお尋ねしますが、教育委員会はこのようないじめ、不登校、犯罪の低年齢化などの問題に対し、学校だけでは解決できないという現場の教師の意見などにどのような対応をし、どう取り組んでいるのかお伺いします。
 また、最後となりますが、生涯学習教育や社会教育の推進についてお伺いいたします。
 各市町村の公民館などでは、高齢者大学や女性セミナーなどの生涯教育や社会教育セミナーが数多く開催されております。高齢化社会を迎えた今日、高齢者を初めとする県民のさまざまな学習要望にこたえていくことは、本県の生涯学習や社会教育を進める上で重要なことと考えております。県教育委員会における取り組み状況とその成果について、あわせてお伺いいたします。
 以上質問いたしました。明快な御答弁をお願いいたしまして終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 川口民一議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、今後の財政運営についてお尋ねございましたが、平成12年度当初予算におきましては、厳しい財政環境にありながらも、岩手県総合計画の実質的な初年度といたしまして、その着実な推進を図るために昨年秋に策定をいたしました中期財政見通しを踏まえながら、事務事業評価などの評価手法に基づきまして、緊急度と優先度の高い施策を厳選するなど、歳出の重点化に努めたところでございます。
 今後を見通しますと、これまでのような右肩上がりの経済成長が日本としては、我が国としては望めない状況がございます。また、長期的には県の県税収入や国庫支出金などの伸びに多くを期待し得ないという状況がございますが、限られた財源を効果的に活用していくためには、単に毎年毎年の単年度の予算編成をいかに取りまとめるかということではなくて、新しいこの岩手がどういう方向を目指すのか、将来の次の世代に何を残すべきかなどの広い視野に立って優先度の高い施策を選択していくと、これを推進していくことが私たちの使命であるというふうに考えております。
 したがいまして、今後の財政運営に当たりましては、これまでとってまいりました評価手法に加えまして、今申し上げましたような観点に立った総合的かつ体系的な評価システムによる評価を実施したり、それから大変多くなっておりますこの県債残高に関しましては、資産とそれから負債の関係を明らかにするために、平成13年度に本格導入をいたしますバランスシートなど、発生主義会計の考え方による分析成果、こうしたものを取り入れると──これは今、全国の九つの県とともに、その手法について研究会を開いて研究しております。その成果を得て、平成13年度から本格的に導入をしたいと思ってますが──そこでの分析結果を取り入れるなどして、県民の皆さんや地域にとって、真に必要で優先度の高い施策は何かということについて、将来の財政負担をも見通しながら県民の皆さんとともに考え、事業を厳選しながら新しい岩手づくりに向けた施策の展開に努めたいと考えております。
 次に、国の食料・農業・農村基本法に対する評価についてお尋ねございましたが、旧農業基本法──今の農業基本法の前の旧農業基本法というのは、一言で言えば農業の生産性の向上ということに重点を置いておりました。今回の新たな基本法におきましては、食料の安定供給の確保、農業の多面的機能の発揮、農村の振興など、農業生産にとどまらない広範な基本理念をその中で掲げておりまして、国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展に寄与するということをこの法律の目的といたしております。
 さらに、この新たな基本法におきましては、今申し上げました基本理念や基本的な施策を具体化するものとして、国が食料・農業・農村基本計画というものを策定いたしまして、5年ごとの施策に関する評価を踏まえて所要の見直しを行うなど、政策の実効性が担保されている、このような仕組みになっていると考えております。このように本県が統一要望などで要望してまいりました事項が、この新しい法律の中に盛り込まれておりまして、我が国経済社会における農業・農村の位置づけと、そして振興策を具体化するシステムが明確にされて、農業を基幹産業とする本県にとって心強いことと、このように考えおります。現在、国ではこの法律に定められました食料・農業・農村基本計画の策定作業に入っているというふうに聞いておりまして、今月中にこの計画が策定されると、このように聞いております。内容はその中で食料自給率ですとか、それから政府が総合的に構ずべき施策といったものがこの計画の中に盛り込まれると、このように聞いているところでございまして、こうしたことについてパブリック・コメントを求めるなど国民の広い理解を得る中で、意欲ある農業者が将来展望を持って営農にいそしむことができる、そうした食料自給率の目標が設定をされて、21世紀に向けた我が国農業・農村の再構築が着実に進展されることを期待しております。
 次に、観光振興についてお尋ねございましたが、この観光についての認識は、幅広い分野を包含する総合産業だということでございまして、新たな雇用の創出や交流人口の増大ということに結びつくわけでございますし、地域経済の発展に大きく貢献をする21世紀の本県を代表する基幹産業の一つでございます。また、豊かな自然環境や地域固有の文化、産業など、岩手の魅力を丸ごと活用しながら推進していくことが重要であると、このように考えております。このため県では、この本県の持つ豊かな自然や特色ある伝統文化など、多様な地域資源に光を当てて、まだ世の中に余り知られていない宝を発掘していくいわて地元学を実践しながら、新しい新たな観光資源の発掘に努めて魅力的な観光地づくりを進めるとともに、新しい観光キャッチフレーズとして、こちら、岩手ナチュラル百貨店というのを先般決めました。また、そうした標語と合うシンボルマークというものを今、選定を進めている作業中でございまして、今月中にこのシンボルマークも発表できると思います。現在、策定中のこのシンボルマーク、この二つにちなんだ首都圏でのナチュラル百貨店フェアの開催やインターネットの活用などによりまして、国内外に観光情報を発信して、市町村や県を越えた広域連携、特にも青森、秋田との北東北3県との絆を一層強めながら、観光客誘致に積極的に取り組みたいと考えております。
 また、地域主体の観光地づくりをより効率的、効果的に推進するために、地域提案型の旅行企画の支援ということについて、地方振興局の取り組みを一層強化することを考えておりますし、また民間の皆さん方の活力やノウハウが最大限に発揮されるよう、社団法人の岩手県観光連盟──先ほど議員がお話ございましたとおり、私が会長を引き受けておりますが──この社団法人岩手県観光連盟の一層の充実強化をこれから図りたいというふうに思ってます。そして、官民一体となった観光振興に取り組む考えでございます。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部局長から答弁をさせますので御了承をお願いいたします。
   〔土木部長中山隆君登壇〕

〇土木部長(中山隆君) まず、公共事業評価制度についてでございますが、県が実施しております事業で着手から一定期間を経たものにつきまして再評価した事業は、平成10年、11年あわせまして116件でございます。そのうち、中止、休止した事業は、広域基幹林道夏油湯田線と北本内ダムの2件でございます。広域基幹林道夏油湯田線でございますが、防災対策や貴重な植物の保全のための路線変更に伴いまして経費が増大いたし、費用対効果が低下する見込みとなったことなどによりまして中止したものでございます。北上川水系和賀川の支川に建設を予定しておりました北本内ダムは、これまでの調査の結果、貯水池内の大規模な地すべり対策などが必要となりまして、建設事業費が大幅に増加すると見込まれましたことから、費用対効果や水需要の将来予測、さらには代替案も含めて総合的に検討することが必要であると判断されまして休止することとしたものでございます。公共事業評価につきましては、これまでも必要性、緊急性、費用対効果の評価の充実に加えまして、現地調査の実施など評価の精度の向上に努めてまいりました。
 平成12年度でございますが、自然環境や生活環境保全の観点からの評価を充実するため、環境分野の専門家を委員会に加えることについても検討しております。そのほか、大型構造物につきましては、景観に関する評価方法の充実に取り組んでまいります。今後とも評価の方法につきましては、調査研究を重ね、透明性の向上に努め、公共事業のより一層の重点化、効率化を図ってまいりたいと考えております。
 次に、県内の高速交通体系の整備についてでございますが、県の総合計画におきましては、時間距離の短縮プロジェクトの主要な指標といたしまして、沿岸地域の主要な都市から盛岡市への平成22年度における到達目標時間を具体的に設定いたしまして、その実現に向け取り組むこととしております。この取り組みにおきましては、東北横断自動車道釜石秋田線の宮守インターチェンジから花巻ジャンクションまでの区間や国道106号の簗川道路、それから宮古西道路、国道283号の仙人道路、遠野市の上郷道路、国道107号住田町・清水工区、それから県道戸呂町軽米線の軽米町・宮沢工区などの整備を進めるとともに、東北縦貫自動車道など既存の高速道路を活用することによりまして時間短縮を図ることとしております。
 その目標とする到達時間でございますが、久慈市及び宮古市からは99分、釜石からは95分に、そして大船渡市からは96分に短縮することといたしまして、沿岸地域から県都盛岡市までの到達時間につきまして、90分台の達成を図ろうとするものでございます。しかしながら、その整備に要する膨大な財源を確保いたしますことは依然として厳しく、県といたしましては高規格幹線道路の重点整備を強く国並びに日本道路公団に働きかけていくとともに、より一層の事業の重点化、効率化を進めまして、目標の達成に向け最大限の努力を傾注してまいりたいと考えております。
 次に、国道4号渋民バイパスの整備状況と今後の見通しについてでございますが、この延長約5.6キロございますが、このバイパス工事につきましては用地取得が難航したこととか、埋蔵文化財調査に時間を要したことなどから、これまで工事に着手できなかったものでございます。しかしながら、昨年より盛岡側の起点からバイパスのほぼ中間に位置いたします村道までの約2.5キロメートルございますが、この区間につきまして本格工事に着手し、現在その進捗率は約59%となっておりまして、極力早期の暫定供用を目指すこととしております。国でございますが、高規格幹線道路などの重点的な整備を行うこととしておりまして、一方、それ以外の一般国道の整備につきましては、非常に厳しい環境下にございます。こういったもので地元の強い要望を国に伝えまして、今後ともその整備促進について国に働きかけてまいりたいと考えております。
 次に、防潮堤の門扉を操作するハンドル形式の標準化の対応についてでございますが、県では昭和35年のチリ地震による津波災害を契機にいたしまして、その抜本的な対策といたしまして、防潮堤並びに水門、それから陸閘の施設整備を進めてきたところでございます。これらの門扉等のうち、ハンドル操作形式のものにつきましては、差し込み部分の形状が制作メーカーによって異なるということから、最近になりまして操作を円滑にかつ迅速に行うことができるよう、メーカー間で統一が図られてきているところでございます。しかしながら、県内にあります門扉は、その統一以前につくられたものが多い現状にございます。そういったことで一部の門扉につきましては、今年度改善を図ったところでございます。残っているものにつきましても、早急に改善してまいりたいと考えているところでございます。
   〔生活環境部長村上勝治君登壇〕

〇生活環境部長(村上勝治君) 県内の国有林内に埋設されております2、4、5-T系除草剤問題についてでありますが、平成10年──これは、2月と6月にそれぞれ水質土壌を実施いたしておりますけれども、国、県、関係市町村による負担によります埋設地の河川、それから土壌の調査結果におきましては、この除草剤に起因するダイオキシン類は検出されてないということで、専門家の意見としまして、埋設地からのダイオキシン類の移行はないと判断され、当分の間、現状維持することが最善と考えられる、こういう見解をいただいております。このほかに、県が独自に御所湖の水質調査も実施いたしておりまして、この際にもこの除草剤に起因するダイオキシン類は検出されておりません。
 また、埋設地の保全状況につきましては、昨年2月に設置いたしました関係市町村での問題の連絡会議というのがございますが、この協議会での協議を踏まえまして、年2回の現地調査を実施いたしました。その結果、その埋設地に特に問題になるようなものが見られなかったということで、管理が適正に行われているということを確認しているところでございます。しかしながら、埋設地の地域住民の皆さんの不安は理解できるところでございまして、この不安を解消するためには、国の責任において必要な措置を講ずべきものというふうに認識いたしております。
 県といたしましては、今後ダイオキシン類対策特別措置法に基づきます常時監視の強化の一環として、御所湖などの水質調査等を継続して実施しますとともに、引き続き関係市町村との協議を重ねながら、東北森林管理局青森分局に対しまして要望してまいりますが、特に地震等の緊急時の臨時点検、それから連絡体制の整備を含めた埋設地の保全対策の一層の強化、及び安全性を確認するための国による定期的な周辺環境の調査を求めてまいりまして、さらに抜本的な対策としましては、埋設除草剤の撤去を含む恒久対策について要望を続けてまいりたいというふうに考えてございます。
   〔農政部長佐藤徳兵衛君登壇〕

〇農政部長(佐藤徳兵衛君) まず、中山間地域等に対する直接支払制度についてでありますが、本制度におきましては、農業生産条件の不利性に応じた客観的な基準に基づいて対象農地を指定することとなっております。また、交付を受ける農業者等には、集落協定に基づいた農地の適正な維持管理などの活動が義務づけられるものであります。協定の取り組み状況や各集落に対する直接支払いの交付状況などは、市町村を通じて公開されるものであり、さらに県段階に設置する公正中立な審査機関において、実施状況が点検されることになっております。こうした取り組みを通じて、県民に対する説明責任を果たし、透明性を確保しながら運用してまいりたいと考えております。
 次に、畜産農家の負債対策についてでありますが、畜産農家の中には、畜産物の輸入自由化、景気の低迷に伴う消費の落ち込みによる畜産物価格の低落などにより、負債の償還に苦慮している経営体が多数あります。県では大型負債農家のうち、経営再建に意欲的な畜産農家に対し、既存負債を長期かつ低利な畜産特別資金及び農家負担軽減支援特別資金に借りかえる負債対策を実施し、平成5年度から11年度までに188件、42億2、000万円の借りかえ措置を講じました。この資金貸付農家の一部には、償還財源を確保できず、農業信用基金協会の肩代わり弁済を受けているものもありますが、ほとんどの農家の貸付残高は着実に減少してきていると認識いたしております。これらの資金貸付農家に対しては、経営改善計画が着実に達成されるよう、県の指導機関や岩手県畜産会のコンサルタントを中心に巡回指導を行うなど、経営健全化に向けた支援を行っているところであります。
 県といたしましては、今後とも農家の自助努力を基本としながら、個々の農家の実状に応じて経営の転換をも視野に入れた個別具体的な経営改善指導を徹底し、生産効率の向上を図りながら、市場で評価される高品質で安全な畜産物の生産など、新たな情勢にも対応できる経営体の育成に努めてまいる考えであります。
 次に、県産農産物の流通対策についてでありますが、県内で生産された農産物がストレートに県内で販売、消費される、いわゆる地産地消の生産流通対策を確立すべきであるとの御指摘は、まさにそのとおりであります。
 Uターンの事例でお話のありました牛肉については、県内で肥育した肉用牛の約7割が生体で県外に出荷され、残りの約3割が岩手畜産流通センターで処理されて県内外に販売されておりますが、前沢牛のような全国ブランドのものは、東京食肉市場に上場された後に全国各地に供給され、その一部が県内にUターンして販売されております。肉牛の県内出荷がこのように少ないのは、食肉には必ずヒレやロースなどの需要の多い部位とスネやネックなどの低需要部位がありまして、需要の多いサシが多く入った上物ほど高値で取引されるわけですが、低需要部位をさばけるだけの需要マーケットと販売力がないと、仕入れ業者も出荷農家も安定的な取引ができないことがこれまでの背景にございます。
 県産農産物の生産と県内消費を拡大するためには、生産面においては、安全、安心で健康ニーズにマッチした純情産地いわてであることの強力なアピールに加えて、他県産地に比べ、より優位な品質、コスト、出荷量の確保と県産農産物に対する力強い県民の支援──もっと食べていただく、あるいは贈答用にももっと使っていただく──そうした県民の力強い御支援が不可欠でありますので、多様化する消費者ニーズあるいは流通チャネルの動向にも対応し得るよう、農政部の最重点課題として取り組んでまいります。
   〔商工労働観光部長合田武君登壇〕

〇商工労働観光部長(合田武君) いわてブランドの創造と育成についてでありますが、本県の特産物を内外に強くアピールしていくためには、地域の特性と資源を生かした商品開発を行うことが重要であると考えております。
 県といたしましては、工業技術センターのノウハウやデザイン指導を初め、各種補助事業を活用した新商品開発、施設の合理化のための融資、県内外で開催される物産展やアンテナショップなどを通じて岩手の特産品を広く紹介するなど、その販路拡大にも取り組んでいるところであります。特に、来るべき21世紀に向けて、いわてブランドの創出・育成を図るため、毎年度1品目を重点的に取り上げ、原材料の生産から商品開発、市場開拓までの総合的な方策について振興アクションプランを策定し、その商品化を促進しているところであります。
 具体的には、例えば平成10年度は、県産小麦、南部かしわなどを使ったひっつみの商品開発に取り組み、平成11年度は、県産の酒造好適米と酵母を使用した県産オリジナル吟醸酒の商品化に取り組んでいるところであります。このほか、地場産業振興補助事業において、県内農畜産物を効果的に活用した盛岡冷麺、ワイン、紫蘇ジュース、ピーマンうどん、まつたけ酒など、さまざまな新しい特産品の商品化に努めているところであります。
 今後におきましても、いわてブランドの創造と育成に向けて、特に今まで原材料の生産者と食品製造業者との連携が薄かったものですから、特に今後におきましては、原材料の生産者と食品製造業者との連携を強化するなど、関係者が一体となって本県の豊かな農畜産物を活用した商品開発やその販路拡大を積極的に進めてまいりたいと考えております。
   〔林業水産部長佐藤克郎君登壇〕

〇林業水産部長(佐藤克郎君) まず、森林の育成整備についてでありますが、本県の民有林では、戦後積極的に造林が進められ、これまで34万ヘクタールの人工林が造成されておりますが、その多くは育成途上にあり、除伐、間伐等の保育の推進が緊急の課題でございます。また、天然林につきましても、シイタケ原木林を初めとする多様な森林資源の育成など、適切な整備に努める必要がございます。
 このため、国の新たな緊急間伐5カ年対策、これは手入れがおくれている一定の団地について、補助対象の上限の林齢、これは従来の7齢級35年生から9齢級の45年生に引き上げて間伐を推進しようとするなどの対策でございますが、この対策の実施やこうした団地以外でも林齢の高い人工林の間伐を促進するため、県単独事業といたしまして、高齢級間伐促進事業を創設するなど、これまでにも増して積極的な間伐を進めることといたしております。
 また、天然林につきましても、有用な樹木の生長を阻害する不用木の抜き切り等によりその育成を進めるなど、今後とも健全で多面的な機能を高度に発揮し得るよう、森林の整備を一層推進してまいりたいと考えております。
 次に、環境との関係で森林をどのようにとらえているのかということでございますが、森林は、多様な動植物等から成り立っている生態系の働きにより、社会経済活動にとって不可欠なさまざまな便益を提供していると考えております。とりわけ、自然災害の防止や水資源の涵養、あるいは生活環境の保全など、安全で快適な生活の基盤を形成する公益的機能はもとより、自然の営みから生産される木材は、二酸化炭素を吸収・固定することから、地球環境の保全に役立つことが注目されているところであります。こうした森林の機能は、まさに健全な森林が整備されてこそ発揮されるものであると考えております。したがいまして、今後とも森林資源の質的充実と木材資源の循環的利用を図りながら、森林の保全と利用が両立するよう、適切な森林整備や木材への需要拡大など、各般の施策を積極的に推進してまいりたいと考えております。
 次に、森林組合の広域合併の現状と今後の促進についてでございますが、森林組合系統では、平成元年に策定いたしました岩手県森林組合合併基本方針に基づきまして、合併に向けた自主的な取り組みを進めてきたところでありますが、県といたしましても、一層の促進を図るため、昨年の10月、岩手県森林組合合併基本構想を策定いたしまして、その支援に努めているところであります。
 これらの取り組みによって、平成12年1月には大船渡地区で3組合が合併し、これまでに11の広域合併組合が設立され、現在、県内の森林組合数は、組合系統が基本方針を定めた平成元年当時の44組合から26組合になっております。
 さらに、将来的には流域を単位として合理的な林業を展開するために、県内五つの流域ごとに、地域の中核となる広域合併組合の設立を目指しているところであります。
 森林組合の合併につきましては、組合の抱える累積欠損金が大きな阻害要因となっておりますので、引き続き財務改善に必要な資金の貸し付けや経営指導を行うなどいたしまして、広域合併の促進に努めてまいりたいと考えております。
   〔教育長大隅英喜君登壇〕

〇教育長(大隅英喜君) まず、児童生徒の問題行動等への取り組みについてでありますが、御指摘のように、子供たちを取り巻く社会環境の大きな変化を背景として、いじめや不登校、暴力行為等の問題行動などが発生しているところであります。こういう問題の多くは、さまざまな社会的要因が複雑に絡み合って発生しているものであり、学校における教育のみでは解決困難な側面を持っております。
 生命を尊重する心、他者への思いやりはもちろんのこと、社会性や倫理観を備えた人間性豊かな子供をはぐくんでいくことは、時代を超えて求められているものであります。子供たちに社会生活上のルール等を地道に教えていくと同時に、子供たちが自分たちの力で、自分たちの集団を高めていこうとする気持ちを育てていくことも極めて大切なことであります。こうしたことから、学校におきましては、道徳の時間や特別活動における自然体験やボランティア体験等を通じて、児童生徒相互の人間関係づくりやコミュニケーション能力の育成に努めているところであります。
 また、学校におけるこのような取り組みとともに、全国子どもプランの一環として家庭教育手帳等を配布し、家庭におけるしつけや地域ぐるみの子育てを支援するなど、学校、家庭、地域社会が相互に連携しながら、子供たちの豊かな人間性の育成に努めているところであります。
 なお、こうした取り組みとともに、スクールカウンセラーや心の教室相談員の配置等により、学校における教育相談体制の充実を図っているところであります。
 次に、生涯学習関連事業の実施状況とその成果についてであります。
 人々が生涯のいつでも自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に評価されるような生涯学習社会の実現を目指すことが極めて重要であるととらえ、市町村を越えた広域学習サービス事業であるいわて学びらんどなどを実施しているところであります。
 具体的例として申し上げますと、成人を対象とし、男女共同参画社会の形成や国際化等の課題をテーマとしたいわて・ライフロング・カレッジを今年度県立大学で開催しましたところ、県内各地から募集定員の3倍を上回る参加者がありました。学習意欲の高まりを感じたところでございます。
 また、急速に進展する高齢化に対応し、生きがいのある人生を送るための高齢者への学習機会として、県立の3青少年の家におきまして岩手県長寿学園を開設しておりますが、毎年熱心な参加を得ておりまして、延べ2、500名の実績となっております。
 これらの生涯学習活動に参加した方々は、ボランティアとして、あるいは活力ある地域社会をつくるためのリーダーとして、学習の成果を生かし活躍していただいております。
 今後ますます多様化・高度化します県民の学習意欲にこたえるために、市町村や高等教育機関、民間等との連携を深めながら、学習の機会や情報の提供に一層努めてまいりたいと考えております。

〇議長(山内隆文君) 次に、樋下正信君。
   〔3番樋下正信君登壇〕(拍手)


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