平成12年2月定例会 第5回岩手県議会定例会会議録

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〇38番(千葉浩君) 政和会の千葉浩でございます。
 増田知事には、昨年の再選以来、引き続き山積する課題に積極果敢に取り組まれ、昨年8月には新しい岩手県総合計画を策定されました。これにより、21世紀初頭の本県の進むべき道筋が明らかにされましたが、景気の先行きが見通せない現下の経済情勢や厳しい財政状況の中で、計画実現への道のりは平坦なものではありません。増田知事には、輝かしい岩手の未来、すなわち夢県土いわてづくりに向け、全力を挙げて県政運営に邁進する決意を披瀝していただき、以下、通告に従いまして順次質問をいたします。
 まず、平成12年度当初予算及び財政運営についてお伺いをいたします。
 県は、今議会に総額8、963億円余の平成12年度予算を提案しております。平成12年度は環境、ひと、情報を、岩手の未来を開くキーワードと位置づけている岩手県総合計画の実質的初年度であり、予算も計画に即して編成されたものと思います。ついては、予算編成の基本方針、事業の重点とその予算措置など、どのような考え方で編成されたのか、知事の御所見をお伺いいたします。
 県の総合計画においては、平成17年度までの前期計画期間中に行う主要事業について、約300事業、事業費は4兆円余を見込んでおられます。その一方で、県の財政状況は、景気回復のための国のたび重なる経済対策に呼応しながら積極的に事業を展開してきたことから、県債残高が既に1兆円を超えており、また昨年10月に発表した中期財政見通しにおいても、毎年度多額の財源不足が生ずると見込まれるなど、健全な財政運営が維持されるのか懸念されるところであります。県では、総合計画の推進と財政再建との関連をどのように考え、どのように両立させながら財政健全化に取り組んでいこうとしているのでしょうか。特に、新幹線、並行在来線、胆沢ダムなどの大型事業の財源の見通しについてもお聞かせ願います。
 また、国においては、景気回復のための経済対策優先の積極予算から、財政再建への方向転換が議論されているようでありますが、このことについて知事の御見解をあわせてお伺いいたします。
 次に、本県の景気動向についてお伺いをいたします。
 経済企画庁が発表いたしました2月の月例経済報告によりますと、景気は緩やかな改善が続いているとされておりますが、依然として設備投資は減少基調にあることは変わりはなく、また民需の柱である個人消費は、所得環境の悪化から足踏み状態になっております。このような状況を踏まえ、政府は景気を本格的な回復軌道に乗せていくとともに、21世紀の新たな発展基盤を築くため、経済新生対策を初めとする諸施策を推進しているところでありますが、景気の現状を考えれば、果たして政府のシナリオどおり、来年度の後半には民需中心の自律的回復が図られるのかどうか、景気の先行きは楽観できないものと思われるところであります。
 一方、県内の景気は、個人消費が低調に推移しているなど、民間需要の回復力が弱く足踏み状態となっている中で、県民は景気の本格的な回復を期待していると思いますが、知事は、本県の景気動向をどのように認識し、今後どのような対策を講じようとしているのかお伺いをいたします。
 次に、雇用対策についてお伺いをいたします。
 最近の雇用情勢を見ますと、昨年の平均失業率は4.7%と初めて米国を上回り、統計を取り始めた1953年以降最悪の記録ということであります。また、本年1月の完全失業率は4.7%と、依然高水準で推移しているところであり、今後も厳しい雇用情勢が続くものと推測されるところであります。
 一方、本県におきましても、長引く景気の低迷により、県内の負債額1、000万円以上の企業倒産が、2月は一けた台となっているものの、この1月まで5カ月連続で二けたの倒産となっており、雇用面でも企業が生き残りをかけたリストラを続ける中で引き続き採用を抑制しておりますことから、中高年を中心とした非自発的な離職者の再就職も大変困難な状況であると同時に、新規学卒者の就職戦線も依然としてまことに厳しい状況にあるものと認識をしております。知事は、現在の本県の雇用情勢をどのように把握され、今後どのような対策を講じるお考えなのか、あわせてお伺いをいたします。
 次に、地方分権時代の到来に対応した市町村の広域行政の推進についてお伺いをいたします。
 交通・通信手段の格段の発達によりまして、市町村のボーダーレス化や介護保険などの少子・高齢化に対応した施策の推進など、近年、市町村を取り巻く行政環境は著しく変遷してきております。また、昨今の長引く景気の低迷により、かつての経済成長に支えられてきた市町村行財政運営のあり方については、特に少子・高齢化の著しい小規模市町村において、構造的に見直さざるを得ない局面を迎えているのではないでしょうか。このような情勢のもとに、昨年7月にはいわゆる地方分権一括法が成立し、合併特例法は即日施行、他の法律は平成12年4月1日に施行されることになっております。今後、市町村においては、分権に対応した積極的な取り組みが必要となってまいりますが、市町村の規模や行政体制を考えた場合、厳しい財政状況のもとで山積する諸課題に対応していくためには、より一層の行政改革や広域行政の推進が求められるものと考えております。地方分権の推進に当たっては、何よりも市町村の自主的な取り組みが必要でありますが、同時に、県の指導力を発揮した取り組みも必要ではないかと考えるものであります。
 知事は、分権時代に対応する今後の市町村の行政体制の整備を考える上で、市町村の合併問題についてどのようにお考えでしょうか。基本的な姿勢をまずお伺いいたします。
 合併問題は、市町村の利害が絡み、難航するケースも考えられますが、現在の合併特例法では市町村合併に対するさまざまな優遇措置が講じられており、同法の期限である平成17年3月までの合併が望まれるものであります。先ほどの答弁では、現在策定中の広域行政推進指針を平成12年度の早い時期に公表したいとのことでありますが、知事は、今後における広域行政の方向性についてどのようにお考えでしょうか。また、指針の策定も含めて、県として今後の取り組みについて、知事のお考えもあわせてお伺いをいたします。
 次に、介護保険制度についてお伺いをいたします。
 少子・高齢化社会に対応し、高齢者介護を社会全体で支える新しい仕組みとして、本年4月から介護保険制度がいよいよスタートいたします。この介護保険については、平成9年12月の介護保険法の成立を受け、この2年余の間、制度の運営主体となる市町村を初め、県、関係機関において急ピッチで準備が進められてまいりましたが、この2月に介護報酬が決定されたことにより、制度の内容もほぼ固まり準備も最終段階に入りました。この制度が円滑にスタートし、県民だれもが必要とするサービスを等しく受けられるよう、準備に万全を期さなければなりませんが、本県における準備体制はどのような状況になっているでしょうか。
 次に、要介護認定において、いわゆる自立と判定された方々に対する対策についてであります。
 この制度においては、介護サービスを受ける前提として、保険者である市町村から介護が必要かどうかを判定する要介護認定を受けることになっております。このため、認定の結果によっては、これまで生活を支えてきたいろいろなサービスが受けられなくなるのではないか、といった心配をされている高齢者や家族の方々の声をよく聞くのであります。
 そこでお伺いいたしますが、介護サービスを受けられない、いわゆる自立と判定された方々への対策をどのように考え、どう講じていくのでしょうか。また、人口の4人に1人が高齢者という超高齢社会を迎えるに当たり、一方で、元気な高齢者がその能力と創造性を発揮し、心豊かに生き生きと暮らすことができるような対策を積極的に進めることが重要となっております。こうした元気な高齢者が、介護を必要とせず健康で生きがいを持って社会活動に参加できる環境づくりについて、知事はどのように考え、どのような施策を進めようとしているのか、あわせてお伺いをいたします。
 次に、国際協力の推進についてお伺いをいたします。
 増田知事は、昨年5月、来日中のペルー共和国フジモリ大統領と面談され、本県が誇る南部鉄器の鋳造技術をペルーに移転・協力することに合意されました。これは、何度か来県されているアリトミ駐日ペルー大使が、ペルーが鉄鉱石の産出国でありながら国内に加工産業が育っていないということで、地場産業である水沢の鋳物技術に注目し、何とかそれをペルーに移転できないかと持ちかけられたのがきっかけと承知をいたしております。私も地場産業の振興の観点からも、この技術移転が実現し円滑に進んでほしいものだと考え、水沢の鋳物関係者と何度か話し合いを持ってまいりました。県では、大統領との面談直後から実現に向けた検討会を設置し、関係者間で計画の具体化に向けた話し合いの場を設けるとともに、昨年の10月にはペルーへ事前調査団を派遣、また去る2月17日には、ペルーの鋳物技術関係者を招聘し、本県でワークショップを開催しておられます。
   〔副議長退席、議長着席〕
 この結果、平成12年度からペルーの鋳物技術者を本県で受け入れ、研修を積んでもらうことになったようであります。本県のすぐれた伝統工芸品である南部鉄器の鋳物技術が遠くペルーの地で花開き、ペルーの産業振興に役立つことになれば、まさに地域からの国際協力となるのではと期待しているものであります。
 そこでお伺いいたします。
 これまでの経過を踏まえ、今回のペルーとの鋳物技術の交流の成果をどう評価しているのでしょうか。また、県では、鋳物以外でも農業あるいは林業などの複数の分野で海外からの研修員を受け入れておられますが、地域に根差した独自の技術や多様な人材を活用した国際協力に今後どのように取り組んでいかれるのか、あわせてお伺いをいたします。
 次に、農政問題についてお伺いをいたします。
 国においては、食料・農業・農村基本法に基づく施策の総合的、計画的な推進を図るため、食料・農業・農村基本計画の策定作業が進められております。この計画に掲げられる食料自給率目標の設定は、40%まで低下し、減少を続けている自給率に歯どめをかけるとともに、単に国内生産体制の強化にとどまらず、農産物貿易や安全で良質な食料供給の体制づくり、国民の食生活のあり方に対し重要な意味を持つものであります。
 こうした状況の中で、昨年県においては、本県農業・農村の再構築を目指した岩手県農業・農村基本計画を策定しております。12年度はこの計画の実質的な初年度でありますが、知事は、この我が国有数の総合食料供給基地の確立に向け、どのような基本戦略で臨もうとしているのか、所信をお示しいただきたいと思います。
 次に、水田農業の確立対策についてお伺いをいたします。
 国は、このたび食料自給率の向上と水田の活用に向けて、水田を中心とした麦、大豆等土地利用型作物の生産拡大の方向性を示したところであります。翻って、本県の農業の状況について見ますと、農地面積は全体で16万7、000ヘクタール余りでありますが、そのうち10万ヘクタール近くを水田で占めており、私は本県が我が国有数の総合食料供給基地としての地位を確立するためには、この水田をいかにして効率的に活用していくかにかかっていると考えております。
 その方策の一つとして、本県としてもやはり一定の目標を掲げて、麦、大豆の生産に取り組むべきだと考えます。条件的に合わないところでは、野菜などの園芸作物を取り入れ、バランスがとれた水田農業を進めていく必要があると考えます。さらに、そのためには、作付の団地化や排水対策などの問題もあります。知事は、今後の水田農業の確立とその対策をどのように講じていこうとしているのか、基本的な考えをお示し願います。
 次に、中山間地域等直接支払制度についてお伺いをいたします。
 本県の中山間地域の農業は、農家戸数や耕地面積、農業従事者、粗生産額とも全県の6割前後を占めるなど、本県の農業・農村にとって極めて重要な地位を占めているところであります。中山間地域は、平場と異なり傾斜地が多い上に、農地も狭隘で分散しているなど自然的条件が不利で、最近においては農業従事者の減少や高齢化の進行により、耕作放棄地の増加や農道、用水路等の管理低下等、地域の農業生産活動の停滞が懸念されております。直接払いは、こうした地域において懸命に頑張っている農業者を後押しするものであり、制度の円滑な導入により、中山間地域の農業の発展に大きな効果があるものと思っているところであります。現在、この制度の実施主体である市町村では、平成12年度実施に向けて、対象集落に対する説明や集落協定の締結指導等で大変悪戦苦闘しているようであり、果たして平成12年度から確実に実施できるのか危惧しているところであります。知事は、このような状況をどのように認識し、今後どのように対応していこうとしているのかお伺いをいたします。
 次に、観光振興についてお伺いいたします。
 現在、3県で組織する北東北3県観光立県推進協議会では、平成9年10月の第1回北東北知事サミットの合意に基づき、北東北の観光振興に取り組むべき施策の基本方針として、平成10年度に設定されたアクションプランに沿って事業に取り組んでいると聞いております。今後、こうした連携を推進する上で、集客のノウハウを持つ交通機関、旅行代理店などとの連携を強化することがさらに重要となるものと考えます。
 聞くところによりますと、JR東日本では、3月から2000年を記念して旅行代理店などとのタイアップにより、がんばれ東日本をテーマに2000年鉄道ロマンの旅という特別企画商品の売り出しとキャンペーンを実施し、東日本に相当多数の観光客を送客するプランがあると聞いております。私は、例えばこのような企画を北東北の広域観光をPRする絶好の機会ととらえ、最大限活用すべきと考えますが、知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、科学技術の振興についてお伺いをいたします。
 西暦2000年を迎えた今日の科学技術は、インターネットを初めとする情報通信技術やバイオテクノロジー技術など、新たな技術革新のうねりの真っただ中にあります。20世紀が主として、原子力や半導体、コンピューターの開発によるハイテク産業が飛躍的に発展した世紀であったのに対し、21世紀はバイオと情報の時代になると言われております。新時代の基幹産業はこの二つの分野から生まれると見られており、欧米ではベンチャー企業等が大学等の研究機関と連携して、活発な技術開発に乗り出しているようであります。日本は、この分野では大幅におくれていると言われており、巻き返しを図るために5省庁共同でミレニアムプロジェクトをスタートさせる予定で、特にも遺伝子関連の研究に力を入れるとのことであります。
 また、現在、日米欧共同で進められているヒトゲノム計画では、この春にも人の遺伝情報の90%の解読を終える見込みと言われており、解読が終わりますと医療の様相はガラリと変わるとも言われております。こうした生命科学の発展は、がんなどの病気の予防・治療、寒さや病害虫に強い農作物の開発やクローン技術など、県民医療や本県の基幹産業の一つである農業、畜産業の分野においても、画期的な変革をもたらすものと思われます。私は、かねてより、本県が活力ある持続的な発展を遂げていくためには、こうした科学技術を活用した産業興しが重要であり、また環境問題やいわて情報ハイウェイを初めとする情報化の推進など、県民の生活基盤の向上に結びつく分野についても、科学技術はこれを支えるかぎであろうと思っております。その振興を図ることは、岩手県総合計画が掲げる夢県土いわての実現にも大きく貢献するものと考えております。折しも本県では、新年度早々、宇宙及び科学に関するシンポジウムや世界地熱会議、さらには国立天文台水沢観測センターを中心に地球潮汐学会が開催される予定と聞いており、科学技術関連のイベントが続く年となるようであります。
 そこでお伺いいたしますが、西暦2000年という節目を迎え、科学技術の振興も節目の年にふさわしい取り組みが必要と考えますが、知事の考えをお伺いいたします。
 終わりに、知事は、今議会冒頭の演述で、21世紀を見通したとき、変化の予測のつかない、まさに海図なき航海に旅立った思いと述べておられます。その海図なき21世紀に向かって、本県の未来を開かんとするこのたびの新しい総合計画の成否は、まさに県民の総参加と協力いかんにかかっていると思うのであります。増田知事には、強力なリーダーシップを発揮され、今後とも県民とともに力強く歩み、県民の先頭に立って夢県土いわての創造のために、なお一層の御奮闘を御期待申し上げ、私の質問を終わります。
 御清聴まことにありがとうございます。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 千葉浩議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、平成12年度当初予算編成の基本方針についてお尋ねがございました。
 本県財政は、県税収入などの伸び悩みの一方で、公債費など義務的経費が増嵩するなど厳しい環境が続く中にございまして、中期財政見通しを踏まえながら、財政健全化にも最善の努力を傾注しながら、岩手県総合計画に盛り込まれた施策の着実な推進を図ることとしたところでございます。特にも、計画に盛り込まれた重要課題でございます環境、ひと、情報を中心に、これからの新しい岩手の方向に対応したさまざまな分野の施策の、いわゆる芽出しを随所に行ったところでございます。
 また、実行段階を迎えた地方分権の推進や、4月からの介護保険制度の円滑な施行に向けた諸施策の推進などにも重点的に取り組むなど、県民の満足度向上を目指して予算編成を行ったところでございます。
 次に、総合計画の推進と財政再建との関連についてでございますが、中期財政見通しは、徹底した行政システム改革などの財政健全化努力によりまして、計画の着実な推進を可能とする道筋を示したものでございまして、今後ともこの見通しを踏まえて、事務事業評価等の評価手法に基づき、歳出の重点化を図ることなどにより財政運営の健全化に努め、計画を着実に推進していく考えでございます。
 また、大型事業の財源でございますが、国関連の事業につきましては、まずもって国庫補助金の確保に最大限に努力をいたしますとともに、県単独事業につきましては、後年度の財政負担にも考慮しながら、償還に交付税措置のある優良起債の導入を図るとともに、基金の有効活用に努めることとしております。
 次に、国の財政再建への方向転換の議論についてでございますけれども、国の平成12年度予算におきましては、財政構造改革を推進するという基本的な考え方は守りつつも、まずは、我が国経済を本格的な回復軌道につなげていくために、経済運営に万全を期する、こういうこととしているわけでございますが、財政構造改革は避けて通れない課題であることは言うまでもないわけでございますので、県でも、国の動向を見きわめながら、両面の要請にこたえられるような適切な財政運営に努めてまいります。
 次に、本県の景気動向と今後の対策についてでございますが、まず、景気動向につきましては、最近の主要経済指標によりますと、大型小売店販売は前年割れが続いておりまして、有効求人倍率は依然として低水準となっております。一方、このところ低調でございました乗用車販売、住宅建設がともに前年水準を上回っておりまして、鉱工業生産は、基調としては持ち直しているというところでございます。
 こうしたことから、去る2月24日に公表いたしました最近の景況におきましては、なお厳しい状況にある中で、足踏み状態から脱する動きも見られると、このようにしたところでございまして、本県の景気は、国内景気よりは幾分緩やかながら、回復基調にあるものと認識しております。
 なお、県中小企業振興公社の調査によりますと、県内中小企業の業況判断指数は依然としてマイナスで推移しておりまして、ひところに比べて改善されているとはいえ、なお懸念されるところでございます。
 今後の対策についてでございますが、平成12年度当初予算におきましては、安定的な経済回復を目指す国のいわゆる15カ月予算に呼応いたしまして、県内経済の活性化を図るため、生活関連社会資本整備などのいわゆる投資的経費につきましては、前年度を上回る事業量を確保するとともに、今議会に提案を予定しております2月補正予算におきましても、ゼロ県債などを措置して、切れ目のない財政出動に努めることとしてございます。
 また、当初予算では、中小企業対策についても新規貸付枠を増額するなど、金融の円滑化を図るとともに、雇用対策についても、緊急地域雇用特別基金を活用するなど、積極的な対応を行うこととしてございまして、景気対策に万全を期することといたしております。
 次に、雇用対策についてでございます。
 本県の雇用情勢について今見ますと、本年1月末における有効求人倍率は0.54倍と、全国平均を0.02ポイント上回って、昨年5月を境として緩やかな上昇傾向を示しておりますが、一方におきまして、企業の倒産や合理化に伴う、いわゆる事業主都合による離職者が前年同期を上回っております。また、新規高卒者の就職内定率も82.0%と、大変厳しい状況にあるものと認識しております。
 このようなことから、県では中高年齢者の求人開拓を専門とする県単独の職業アドバイザーを、県内各公共職業安定所に配置いたしまして──これは総勢で11名でございますが──求人確保に努めておりますほか、特に雇用環境が厳しい中高年齢者及び障害者に対しては、職場適応訓練などによりまして、再就職の支援に努めてきたところでございます。
 さらに、新卒の高卒者に対する就職面接会を本年度は大幅にふやして開催いたしました。従来は年1回やっておりましたが、今年度は7回ほどやったわけでございます。また、本年1月から新たに就職促進員や就職未決定者特別相談員を配置して、学校との連携の強化を通じて、早期就職の促進に努めているところでございます。
 今後におきましては、引き続き求人開拓に努めるほか、国の施策と相まって、離転職者の再就職支援のための職業能力開発や緊急地域雇用特別基金の活用、さらには、新たな事業の創出や企業の誘致などに積極的に取り組みまして、雇用機会の拡大に努めてまいります。
 次に、地方分権時代の到来に対応した市町村の広域行政の推進についてでございますが、多様化・高度化する住民ニーズに的確に対応して、地域住民の一人一人が真に豊かさを実感できる社会を築いていくためには、地域の実情に応じた市町村合併を含む広域行政の推進は、まさに時代の要請でございまして、これまで以上に市町村間の連携を深めて、市町村みずからが分権時代に対応した行政体制の整備・強化を図る必要があるものと認識いたしております。
 現在、県におきまして策定中の広域行政推進指針におきましては、各市町村間の通勤通学、商圏や医療圏などの各種データによる結びつきやそれぞれの地域の歴史や文化などを踏まえ、さらに市町村の意見を聞くなど十分な調査を行って、市町村合併のパターンのみならず、新たな広域連合の設置など、地域の将来にとって望ましいと考えられる広域行政の方向性についてお示しをしたい、市町村や地域住民が幅広く議論できる資料として活用されるようにしていきたいと、このように考えております。
 本指針は、明年度の早い時期までに策定して、また、指針の策定後におきましては、県のホームページへの掲載、各地方振興局での住民の皆さんへの供覧、また、現地での説明会の開催など、住民の皆さんへの積極的な周知を通じて、広域行政推進の機運情勢が図られるよう努めてまいります。
 また、市町村合併を含む広域行政の推進に向けた議論が深められ、その取り組みが具体化するに至った場合には、行財政全般にわたる総合的な支援を行うなど、市町村の取り組みが円滑に推進されるよう積極的に対応してまいります。
 次に、介護保険制度についてでございますが、この制度が本年4月から円滑にスタートするためには、まず、県民の皆さんに制度の趣旨や仕組みを十分に御理解いただいた上で介護サービスを利用していただくことが重要と考えまして、現在、市町村と連携しながら、説明会の開催や各種広報を積極的に実施しております。
 また、市町村のサイドにおきまして実施しております要介護認定につきましては、1月末現在において、申請見込者のうち約5割が終了して、現在、これらの皆さんについて、居宅介護支援事業者におきまして介護サービス計画、いわゆるケアプランですけれども、この介護サービス計画の作成が進められているといったような状況でございます。
 介護サービス基盤につきましては、特別養護老人ホーム、老人保健施設については、全県における必要数をほぼ確保できる見込みとなっておりまして、介護療養型医療施設につきましては、本年1月から指定の手続を今進めているところでございます。
 また、訪問・通所系サービスや短期入所サービスについては、訪問介護や通所介護など主要なサービスは確保できる見通しとなっておりますが、不足が見込まれます訪問看護等につきましては、地域の実情を踏まえながら、引き続き関係団体に協力を要請するなど、その確保に努めてまいります。
 県としては、準備の最終段階に当たりまして、今後とも介護サービス計画の作成など、準備状況をきめ細やかに点検いたしますとともに、利用者への情報提供や苦情解決体制の整備を行うなど、市町村と一体となって準備を進めてまいります。
 次に、要介護認定で自立と判定された皆さんに対する対策についてお尋ねございましたが、このような皆さんに対しては、引き続き自立して在宅で生活が送れるように、必要な介護予防・生活支援サービスが受けられる体制を整備することが重要であると考えております。このため、市町村における在宅介護支援センターを核とした相談支援体制の整備を図りますほか、生きがい対応型デイサービスに加えまして、新たに日常生活に関する支援・指導を行います生活指導員の派遣、高齢者生活福祉センター等を利用したショートステイ、除雪などの軽易な日常生活の援助や住宅改修に関する相談援助などの介護予防や生活支援対策を市町村が効果的に実施できるよう、より一層支援をしてまいります。
 次に、元気な高齢者の社会活動に参加できる環境づくりについてでございますが、県では、高齢者の皆さんが生涯を健康で生きがいを持って社会活動に参画できるように、市町村や関係機関・団体との連携のもとに、地域活動のリーダー養成や組織づくりなど、社会参加のための機運づくり、場づくり、人づくりを総合的に推進することが重要であると考えております。このため、これまでの県民長寿体育祭などの健康づくり活動や高齢者大学などの学習活動に加えまして、今後におきましては、高齢期においてより充実した社会活動ができるよう、中年期からの高齢期を展望した生涯設計づくりの支援、活動を促進するための情報化の推進、退職後における就業機会の提供、さらには、ひとり暮らし高齢者に対する見守りなどの地域活動の拠点となる交流センターの県内全市町村への設置の促進など、高齢者が積極的に社会参加できる基盤づくりをより一層推進してまいります。
 次に、国際協力の推進についてのお尋ねでございますが、本県におきましては、これまでにも国際協力事業団や県内の民間企業などとの連携によりまして、水稲栽培や畜産などの農業分野や林業分野のほか、地熱探査や廃棄物処理分野における研修員の受け入れ拡大に努めるなど、本県の個性や特色を生かした地域レベルでの国際協力を推進してきているところでございます。
 ペルーとの鋳物技術の交流につきましては、フジモリペルー共和国大統領の要請にこたえまして、国際協力事業団や鋳物業界を初めとする関係者の理解と協力をいただきまして、ワークショップを開催するなど、検討・協議を続けてきたところでございますけれども、これまでの取り組みによりまして、ペルーの鋳物産業の現状やその技術レベル、本県からの技術協力に関する具体的なニーズの把握がなされまして、平成12年度からのペルー研修員の受け入れに向けて進展が図られたところでございます。
 このペルーへの技術協力につきましては、岩手に根差した伝統的な鋳造技術がペルーの鋳物産業の振興に寄与するとともに、南部鉄器を含む岩手の鋳造技術を世界にPRするよい機会となるほか、ペルーとの交流によりまして、他の分野における国際協力が促進されるものと、このように考えておりまして、まさしく地域が行う国際協力のモデルケースの一つになるものと期待しているところでございます。
 また、本県の鋳物以外のすぐれた技術、多様な能力を持つ人材を活用した国際協力につきましては、グローバリゼーション、ボーダーレス化などの時代の大きな流れを、世界の中の岩手という広い視野でとらえながら、本県が国際社会においてどのような役割を果たすことができるのかを念頭に置いて進めていくべきものと、このように考えておりまして、今後におきましても、県の試験研究機関のほか、大学や民間企業などとの連携により、積極的に海外からの研修員を受け入れるとともに、開発途上国などに専門技術者を派遣するなどいたしまして、本県の特色を生かした国際協力の一層の充実に努めていく考えでございます。
 次に、我が国有数の総合食料供給基地の確立に向けた基本戦略についてでございますが、まずもって、産地づくりの中心となる主業型農家の育成・確保が急務でございますので、主業型農家への農地利用集積を加速度的に進めるとともに、作付の団地化により、生産性の向上を強力に推進してまいります。
 また、本県農業の先達が築いてまいりました米、園芸、畜産を基軸としたバランスのとれた農業県であることの特性は、21世紀を展望しますと大変貴重な財産でございまして、環境と共生しながらこれを守り育てることも、私どもの責務であると認識しております。このため、適地適作を基本とした作目再編を促進するとともに、畜産と耕種の連携による土づくりを進めながら、本県の冷涼な気象を生かした減農薬栽培など、環境に配慮した持続的な農業の一層の展開を図ってまいります。
 さらには、積極的な産地情報の発信などによる販売戦略を強化して、新鮮で安全、安心な農産物を供給する純情産地いわてを強力にアピールして、力強い支持がいただけるように努めてまいります。
 加えて、食品産業との連携を強化して、付加価値を高めた新たな食品開発を進めるなど、新しい視点に立って総合食料供給基地の確立に努める考えでございます。
 次に、水田農業の確立対策についてでございますが、国は、食料・農業・農村基本法のもとに、需要に応じた米の計画的生産と水田を有効に活用した麦・大豆などの本格的生産を柱とする、水田農業経営確立対策を決定したところでございます。こうしたことを踏まえ、稲作については、可能な限り良質米地帯に作付誘導するとともに、食味と品質の向上を目指すいわて純情米レベルアップ運動を展開して、産地間競争に打ち勝つ、売れる米づくりの取り組みを強化してまいります。
 また、米を作付しない水田におきましては、稲作の減収分を補てんする野菜、花卉などの高収益作物の生産を拡大するとともに、自給率向上の一翼を担う麦・大豆などの土地利用型作物を積極的に導入することとしてございます。特に麦・大豆につきましては、収量・品質の安定と生産コストの引き下げを図ることが重要でございますので、団地化や排水対策などの導入を促進する見地から、新たに県独自の支援措置を講じたところでございます。
 また、売れる麦・大豆とするため、実需者も交えた推進協議会におきまして、流通・販売を視野に入れた取り組みを強化することとしております。
 今後におきましても、安全、安心な食料の安定的な供給を基本といたしまして、農家の経営安定が図られる、体質の強い水田農業の確立に取り組んでいく考えでございます。
 次に、中山間地域等直接支払制度についてのお尋ねでございますが、直接支払制度は、平成10年12月に公表されました農政改革大綱において、平成12年度からの実施が明示され、具体的な検討が進められてきたところでございますけれども、ようやく本年の1月下旬に至りまして、制度の概要と地方財源措置が確定したところでございます。こうした経過から、該当する市町村におきましては、その対応に大変御苦労が多いものと存じております。
 目下、関係市町村において諸準備が進められておりまして、3月中には集落住民への説明がなされるものと見込んでおります。交付の前提となる集落協定の締結期限につきましては、制度実施の初年度ということになりますので、本年8月中旬までと猶予されております。猶予期間がございますので、12年度からの導入には十分可能である、間に合うというふうに考えております。
 また、対象農地の選定は傾斜度が基準となっておりますが、高齢化率や耕作放棄率など、条件不利の内容に応じて取り扱うこととされておりますので、引き続き対象農地の選定に遺漏のないよう指導していく考えでございます。
 本制度は、我が国農政史上初めてのものでございまして、大きな期待が寄せられておりますので、県でも、制度の創設効果が十分に発揮されるよう、今後とも市町村と密接な連携をとりながら取り組む考えでおります。
 次に、観光振興についてでございますが、私は、北東北3県は十和田・八幡平や陸中海岸などの雄大な景観、新緑、紅葉、雪といった四季折々の自然など、共通する観光資源を多数有することから、この地域が連携して観光の振興を図ることが必要と考えております。このような広域観光を推進するに当たりましては、鉄道を初めとする交通機関や旅行代理店、観光関係団体等との連携が重要でありますことから、北東北3県におきましては、これまでにもJRと連携してたびたび大型の観光キャンペーンを実施するなど、効果的な観光客誘致に努めてきたところでございます。
 今年度におきましても、北東北文化観光振興アクションプランに基づきまして、県境を越えた広域旅行商品の開発や大手旅行代理店、またJR東日本とのタイアップによります北東北観光キャンペーンを全国で展開しているところでございます。
 また、ただいまお話のございました2000年鉄道ロマンの旅につきましては、ミレニアムを記念したタイムリーな企画でございまして、北東北の主要な観光地をレール等でつなぐ周遊型の観光コースも多数含まれておりまして、首都圏などでの観光情報誌の発行、JR東日本管内での車内広告の実施、そして、全国紙での特集記事の掲載などを通じて、大々的に宣伝活動が展開されることとなっております。
 このため、県におきましても、本事業とのタイアップによりまして、中尊寺、小岩井農場、浄土ケ浜など、本県を代表する観光地のPRが図られるとともに、首都圏などからの観光客誘致に大きな効果が期待されますことから、各県と協調を図りながら、積極的に取り組む考えでございます。
 最後に、科学技術の振興についてのお尋ねでございますが、西暦2000年という大きな節目となる本年は、本県におきましても、平成2年に岩手県科学技術振興推進指針を策定し、全国に先駆けて地域における科学技術振興の取り組みを開始してから、ちょうど10年が経過する年に当たっております。この間、超電導工学研究所の誘致や産学官の連携による研究開発プロジェクトなどの推進を図ってきたところでありまして、昨年4月には、本県の先端的科学技術振興の拠点施設として先端科学技術研究センターを開設いたしまして、磁気科学に関する地域結集型共同研究事業をスタートさせたところでございます。
 一方、近年の情報通信分野、遺伝子工学を初めとするバイオテクノロジー分野などの急速な技術革新の進展や地球環境問題への意識の高まりとともに、国の新たな科学技術政策の基本となります科学技術基本計画の改定の動きなど、科学技術の振興をめぐる状況は大きく変化してきておりまして、本県におきましても、新たな視点に立った科学技術の振興が求められていると、このように認識しているところでございます。
 この平成12年度におきましては、総合計画の基本目標でございますみんなで創る夢県土いわての実現のため、これまでの成果を踏まえながら、今後の本県科学技術振興の基本方向を定める新たな指針を策定するとともに、平成12年度を夢県土いわて科学技術年と位置づけまして、第22回宇宙技術および科学の国際シンポジウム、そして、西暦2000年世界地熱会議などの国際的な学会、全国的なイベントを相互に関連づけをいたしながら連続して開催して、国内外の研究者との交流を行うなど、新たなスタートにふさわしい取り組みを行うことといたしております。
 ことしは、このような取り組みを通じまして、広く県民の皆さんの理解と関心を喚起しながら、21世紀に向けた本県科学技術振興の飛躍を期してまいります。
   

〇議長(山内隆文君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時16分 散 会


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