平成12年2月定例会 第5回岩手県議会定例会会議録

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〇45番(村上惠三君) 自由党の村上惠三であります。
 西暦2000年に入り、初めての本会議において、会派を代表して知事に質問できる機会を得ましたことを光栄に思い、同僚議員に感謝しつつ、以下、県政運営全般について質問してまいります。
 まず、知事の県政運営に当たっての基本的な姿勢についてであります。
 増田知事は、昨年4月選挙において、68万4、000票という圧倒的な得票を得て再選されました。前回は、新進党を後ろ盾に、各種団体を背景とした選挙戦でありましたが、今回は6政党を初め、幅広い団体の推薦を得て選挙戦を勝ち抜かれました。政党との関係では、いわば全方位に転じ、一党一派に偏しない県民党的姿勢に転換したと指摘されております。
 ところで、政党は、平成6年に政党助成法が定められ、この法律に基づく政党に対しては、国民一人当たり250円の政党交付金が交付され、また法人格も付与されることになり、政党は国家がこれを公認し、かつ国民がこれを支えているものと言えるものであります。また、現実の政権は、国民多数の支持を得た政党が、時には単独で、時には連立してこれを担っており、決してこれを軽視してはならないのであります。知事は、一党一派に偏らない政治姿勢を示しているものと県民に理解されているようでありますが、県の政策の形成については、時には国政との調整を図り、時には国からの援助を仰がねばならないのであります。また、県議会も政党を中心とした会派でもって運営されており、政党との円滑な意思疎通こそ重要であり、決してこれを軽視してはならないのであります。私は、もちろん知事の県民党的姿勢を評価するものではありますが、一方では、ただいま申し上げました理由から、政党についても、これまで以上に礼節を保ちながら公平に望んでいくことが肝要であろうと存ずるものであります。
 この際、知事は、政党に対していかなる政治信条をお持ちかお伺いいたします。
 知事の基本姿勢についての第2の質問は、知事のリーダーシップの発揮に関してであります。
 知事は、日ごろ、職員に対しては、県民の立場に立っての職務の遂行を初め、県民との情報の共有などを訴えていると聞いております。しかしながら、昨年の久慈地方振興局での貸付金の不正流用、花巻地方振興局での補助金の不正な支出、職員の酒気帯び運転による交通事故の発生、さらには民間企業の有害物質の検出に関するタイミングを逸した公表など、知事の願いとは裏腹な不祥事や県民対応が発生し続けているものであります。これらの職員は、知事部局5、000名に上る職員の一部ではありましょうが、マスコミを通じてこうした事件が報道されますと、県職員全体の県民の不信感が増し、県政に対する信頼感が著しく低下してまいります。ひいては、県民に呼びかけている夢県土いわての創造というキーワードさえ、そらぞらしく感じさせることにもなりかねません。
 若き知事は、公共事業の見直し、環境の重視や情報公開への積極的な取り組みなど、これまでの県政には見られない新しい視点での県政運営を展開し、私はもちろん多くの県民は、これら新鮮な感覚に多大な期待を寄せているものと確信するものであります。しかるに、県職員の、これはほんの一部であってほしいのでありますが、こうした知事の感覚についていけない、あるいは意識ギャップが生じているのではないかと危惧の念さえ覚えるのであります。知事は、日ごろ、研修で職員に語りかけ、また振興局の若手職員の意見を聞くなど、御自身でも職員への意識の浸透に努めていると聞いております。私も小さいながら従業員を抱える企業の経営に携わっておりますが、これをやれ、あれをやれだけでは人は心底ついてまいりません。ふだんからよく語りかけ、そして褒めてやるように心がけ、常に会社の方針を示して根気よくやる気を起こさせるよう努力しているつもりであります。要は、従業員を大切に扱うことであります。
 知事、来年度は新しい計画の実質初年度であります。職員に対してどのようにリーダーシップを発揮されようとしているのか、職員に何を望んでいるのか、率直なお考えをお示し願いたいと存じます。
 私は、地方分権という新しい時代に突入した中で、140万県民のよきリーダーとして、若き知事が新鮮な感覚を維持しながら、さらに円熟味を増し、着実に県政運営のかじを取られるよう期待申し上げ、そしてまた応援するものでもあります。
 次に、新年度予算に関連して質問いたします。
 知事は、今議会に総額8、963億円に上る一般会計予算案を提案しております。昨年6月、現計予算額に比較して0.7%増のこの予算案は、新しい総合計画の実質初年度にふさわしく、この計画の柱である環境、ひと、情報はもちろんのこと、公共事業費の確保や中小企業金融対策の充実などの景気対策への配慮、介護保険関連予算の確保などによる高齢化社会への積極的な対応、さらには市町村の自主性を尊重した総合補助金の創設など、計画の推進や時代の要請に積極的に配慮したきめ細かな予算であります。厳しい財政状況のもとで、精いっぱい工夫されたものとして、その御労苦を多とするものであります。
 しかしながら、一方では、県のこれまでの借金の返済に充てる公債費は約1、090億円で、約109億円、11.1%と大きく伸びており、予算全体に占める割合も1.2ポイント上昇し、12.2%となっており、県財政を圧迫しているのが明らかであります。また、県債発行額は、前年6月補正後よりも抑制したとはいえ、その残高は12年度末では歳出規模を大きく上回る1兆2、000億円にも上る見込みとなっております。会社でいえば、年間の営業費用を超える借入金を抱えていることになり、とうに倒産の危険ラインに達したと言えるのであります。
 当局は、これまで同僚議員の質問に対して、県債については、将来、元利償還金が交付税で措置されている優良なものを導入しており、財源確保には大きな不安がない旨の答弁を繰り返してまいりました。しかしながら今、その交付税そのものの財源が不足し始めたのではありませんか。すなわち、これまでの交付税のうち、国税収入で賄えない部分は、資金運用部資金から借り入れて手当てしていたのでありますが、郵便貯金の償還金の増加によってこれが不足し、民間金融機関からの借り入れで穴埋めするような状況になったのであり、私は今後の県財政に大きな不安を覚えるものであります。
 また、既に、宮城県では財政赤字への危機が迫っていると言われており、幾つかの県では危機宣言を行うなど、都道府県財政にほころびが見られ始め、独自の安定した地方財源の確保の必要に迫られているものと認識しております。
 以上のような状況を踏まえて、以下、具体的に伺ってまいります。
 まず、県は昨年10月に、総合計画の着実な推進を可能とする財政運営の道筋を示すため、中期財政見通しを作成いたしました。この見通しによりますと、平成12年度では411億円の歳入歳出ギャップが生じ、これを基金の取り崩しや財政健全化努力によって解消することとされておりますが、当初予算案編成の過程では、実際のギャップはどの程度であり、またこれをどのようにして解消されるのか明らかにしていただきたいと思います。
 また、見通しによる歳出規模とほぼ同額に近い予算案となっておりますが、見通しと比較した予算案の評価についてもお聞かせ願います。
 次に、東京都、神奈川県など、財政再建団体の移行の危険性のある団体や宮城県などのように財政赤字が見込まれた団体などと比較して、一体本県の財政状況はどのような位置づけにあるとお考えでしょうか、お示しを願いたいと存じます。
 特に、この点に関しては、県民が最も明らかにしてほしいと願っている問題ではないでしょうか。また、職員自体も知りたいと思っている問題でもあります。財政状況によっては、県民生活に大きな支障を及ぼしますし、職員の給料にも影響を与えかねません。厳しい状況にありながら、当面はやりくりできるのか、それとも幾つかの団体のように予算が組めないような状況に置かれるのか、その見通しなり、財政危機団体と比較した位置づけなりを明らかにしていただきたいと思います。
 次は、安定的な財源の確保についてであります。
 まず、交付税の確保の問題についてでありますが、ただいま申し上げたとおり、県が今後の県債償還財源として当てにしている交付税そのものの総体的な確保が困難な状況に陥ってきた中で、知事はその確保にどのように取り組むお考えでしょうか。御所見をお示し願いたいと思います。
 こうした国による地方財源の確保が困難となっていく状況の中では、地方自治体の財源の確保対策が重要となってくるわけでありますが、東京都は独自の財源確保のために金融機関の一部を対象とした外形標準課税を導入することといたしました。また、大阪でも導入の論議が行われていると伝えられております。この問題はマスコミでも大きく取り上げられ、各位御承知のとおりでありますが、私は一般論ではありますが力のある企業ほど適度に借金を繰り返し、結果として税金を収めないと、こんなふうに感じております。
 しかしながら、企業活動は日常的に道路を初め、多くの公共財を使用して行われていることから、こうした面での税は、企業活動の固定的な経費と考えるべきであり、法人全体が公平に負担すべきものと考えるものであります。知事は、東京都の外形標準課税の導入に一定の理解を示しているようでありますが、私は公平性の観点から、金融機関のみならず法人全体について全国一律に導入すべきものと考えるものであります。
 さて、知事は、東京都の導入によって本県にどのような影響が及ぼされるとお考えでしょうか。また、本県での導入についてどのような見解をお持ちでしょうか。
 次に、盛岡地域の広域合併についてお尋ねいたします。
 この問題につきましては、私は、旧都南村村議会議員時代から、当時の藤村村長と合併推進委員の立場を明らかにして活動してきた経緯もあり、この壇上から繰り返し繰り返し知事や当局に質問してまいりました。盛岡圏域が拠点性を一層高めていくには、広域的観点から計画的な土地利用を図り、また計画的に都市施設を整備していくことが急務であります。このためには、既に盛岡市と一体的に都市化が進んでいる滝沢村、矢巾町との広域合併が避けて通れない課題であります。
 過日、関係3首長が二度目の三者会談を行い、まちづくりの基盤整備は一体的に努力し、まちづくりの構想についても意見交換しながら努力していくと申し合わせを行ったと報じられております。私はこれを見て、正直申し上げ、落胆の色を隠せなかったのであります。まことに残念であります。県が北東北の拠点性を高めようと標榜したのは、新幹線が開業した昭和50年代後半の新県総の時代であります。当時、盛岡周辺の基盤整備やプロジェクトは一体的に進められていかなくてはならなかったのであり、私はうかつにも調整や役割分担が十分になされ、広域的視点から密接な協力関係のもとに進められていたものと考えておりました。残念ながら、私は、ここに県の盛岡市に対する指導の甘さを感じるものであります。しかも、一体的なまちづくりに最も効果的な広域合併については、県の指針を見てからにしたいとの発言だったそうであります。とすれば、この問題は今、県にボールが投げ返された状況にあると言えるのではないでしょうか。
 県の指針は、年度内に策定されると聞いておりますが、具体的にはいつごろ示すものでしょうか。また、合併特例法の期限は平成17年までとなっております。県は、この指針に基づいて強力に働きかけていくべきと思いますが、どうでしょうか。
 私は、旧都南村の合併の際、尾沢盛岡地方振興局長が見せた積極的なリード、そして後任局長としてこれを引き継いだ現千葉副知事の適切なアドバイスなど、合併時にこそ県の積極的な対応が必要であると身にしみて感じているものであります。いずれにせよ、関係市町村に対し、県のこれまで以上の積極的な関与を求めるものであります。
 次に、高齢化社会に対応した居住環境の整備についてお尋ねいたします。
 まちづくりについて、ただいまの盛岡圏域の広域合併問題の中でも触れましたように、広域的な視点からこの地域の望ましい姿を展望し、関係団体がそれぞれ機能分担しながら一体的に進められるべきものと存じております。加えて、高齢社会に突入した現在においては、まちづくりの視点に高齢者や障害者が自立して生活できるよう、例えば個々の住宅や商店はもちろんのこと、公共施設のバリアフリー化、保健福祉施設の計画的な配置など、住宅政策と保健福祉が連携したコンセプトが不可欠であると考えるものであります。
 県の住宅施策は、例えば住宅供給公社が整備している紫波中央駅前の団地に見られるように、景観に配慮したまちづくりなど新しい視点のもとに展開されるべきであると思います。今後は、さらに保健福祉とも連携した具体的な施策を進める必要があると思うのであります。知事の御所見はいかがでしょうか。
 また、このようなハード面での整備に加えて、例えば松園団地に見られますように、高齢化が一段と進んだ団地においては、保健福祉サービスの提供を持ち合わせ行う共同住宅を公社なりが建設して、自宅の処分と交換に入居してもらい、自宅はリフォームの上、さらに持ち家を必要としている若い世代に譲渡していくといった資源循環型とも言えるようなソフト面でのシステム構築も提案したいのでありますが、あわせて御所見をお聞かせ願いたいと存じます。
 次に、伝統産業の振興策についてお尋ねいたします。
 本年11月に、第17回伝統的工芸品月間全国大会が本県で開催の運びとなっております。この大会は、全国約200品目に及ぶ伝統工芸品の大会であり、1、000人を超える関係者が集い、全国の伝統工芸品を一堂に展示する大規模なものであり、10万人の来場者を見込む一大イベントであります。本県においても、鉄器、漆器を初めとする伝統工芸品が数多くあります。これらは本物だけが持つ風格と末長く愛用できる味わいを醸し出し、多くの愛好家に親しまれているところであります。県においては、このイベントを一過性のものとせず、これを契機に本県の伝統工芸品を初め、伝統産業の振興策を講じていくべきと思いますが、いかがでしょうか。
 また、本県伝統産業の現状や市場での評価などの課題については、どのように把握しているのでしょうか。御所見をお伺いいたします。
 次に、本県の第1次産業の振興についてお尋ねいたします。
 まず、農業についてであります。
 県が昨年策定した農業・農村基本計画によれば、平成22年までの間に、県内農業粗生産額を平成9年度比で約15%増の3、640億円に高めていこうとしております。一方、計画の基礎となっている農業就業人口は、7年比で農家数が24%減、就業者で38%減が見込まれ、担い手の確保が大きな課題となっており、果たして計画が順調に達成されるのかどうか、この数字から見る限りでは疑問が生ずるものであります。
 改めてお伺いしますが、このような担い手の減少の状況下で、しかも減反による稲作依存が低下する中で、どのような方途によってこの計画目標を達成しようとしているのでしょうか。具体的な施策とその効果をお示しの上、お答え願いたいと存じます。
 次に、林業・水産業についてでありますが、水産業の生産高が平成9年度は前年度に比べ増加したとはいうものの、趨勢的には林業も水産業も減少の傾向を示しているのであります。
 単刀直入に伺います。就業者も減少を続ける中で、真に投資効果や思い切った構造転換を検討する時期に入っているのではないでしょうか。林業・水産業の今後の展開と展望について、どのようにお考えかお示し願いたい。
 次に、児童福祉の問題についてお尋ねいたします。
 昨年11月の厚生省の発表によりますと、全国の児童相談所が平成10年度に扱った父親、母親らによる子供への虐待に関する相談件数は、前年度より約30%増加した6、932件で過去最悪の状況となっており、ここ9年間で6.3倍にも上っていることが明らかになりました。私は、平成6年7月、全国的にそのような状況を示す傾向を察知し、子供の人権を守る立場から、この壇上において具体的な事例を挙げた上で、当局に対策をとるよう発言した経緯があります。残念というべきか予想どおりというべきか、本県においても平成10年度には前年の2倍、前々年の6倍にも達する67件の事例があったと聞いております。虐待によって受ける、いたいけな子供の心の傷は生涯いえることもなく、その子の人格形成にも大きな影響を及ぼす深刻な問題であります。
 知事は、この問題についてどのように部下職員から報告を受け、またどのように対処されようとするのか、そのお考えをお聞かせ願えれば幸いであります。
 最後に、これも子供に関連いたしますが、青少年の健全育成についてお尋ねいたします。
 新聞の見出しであります。過激十代 ネットで偽りの売買、15万円詐取。高3恐喝容疑、妹誘拐などと1、100万円。中学生兄弟母死なす。いやはや驚くばかりであります。今、少年非行は戦後第4のピークを迎えていると言われております。
 本県でも、平成10年に殺人、強盗などの凶悪犯の補導件数は21人で、過去10年間で最も多く、恐喝、傷害など粗暴犯も110人と前年より22人がふえ、少年犯罪の悪質化が際立ってきているところであります。こうした犯罪の防止は、学校教育の現場はもちろんでありますけれども、警察、地域、そして家庭が一体となって総合的に取り組むべき緊急の課題であります。さらには、青少年団体との連携プレーも必要であります。
 知事は、青少年を取り巻くこうした現状についてどのような認識をお持ちでしょうか。また、環境、情報と並んで、ひとというキーワードで新しい岩手をつくろうとする知事は、次代を担う本県青少年の健全な育成についてどう取り組んでいこうとされるのか、その具体策を示すよう求め、私の代表質問を終わります。
 御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 村上惠三議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、政党に対する私の政治信条についてお尋ねがございました。
 政党は、国民がその意思を政治に反映させるために、国民と政治を結ぶ媒体として極めて大きな役割を担っておりまして、議会制民主政治に重要な機能を果たしているものと認識いたしております。
 私は、21世紀をまさに目前に控えた変革と創造の時代にありまして、県政を担い、強力に推進していくためには、県政推進や政策課題に対する私の考え方に、より多くの皆さん方の御賛同とお力添えをいただきながら、これを実行・実現していくことが必要であると、このように考えております。このためには、国政と県政を担う各政党の御理解をいただくことは、極めて重要なことであると考えております。
 私は、県政は県民が主役の政治であると、このように考えているところでございまして、今後とも常に県民の利益を最優先に考え、その実現に向けて各政党・会派の御支援と御協力をいただきながら、県政を推進してまいりたいと考えております。
 次に、私のリーダーシップの発揮と職員に対する期待についてお尋ねがございました。
 地方分権はいよいよこの4月から新たな実行段階に入ることになるわけでございますが、このような時代にあって、私は、県政の主役はそれぞれの地域に暮らし、地域の発展を願い、日々努力を重ねておられる県民お一人お一人でございまして、こうした皆さんの視点に立って県政に取り組んでいくことが、何よりも重要であると考えております。職員一人一人が、このような意識を高めながら職務の遂行に当たることが、強く今求められているところでございます。
 このため、県行政においては、それぞれの職員が生活者の視点に立った県政、地域の視点に立った県政など、先般の岩手県総合計画で示した県行政を進める上での四つの方針に掲げる施策を日々着実に実行して、成果を上げていくことが必要でございます。
 また、私はさきの知事演述におきまして、行政品質の向上運動について申し述べたわけでございますが、このような取り組みを推進することによりまして、職員みずからも真に県民のための行政を行っていることを強く実感して、こうした積み重ねによって、公務に対する新たな意識も一層高まっていくものと確信いたしております。
 今後におきましては、職員すべてがこれらのことをしっかりと自覚するとともに、改めて県政に対する県民の負託に思いをいたして、県民の信頼にこたえる行政に、私を含め職員一丸となって取り組む考えでございます。
 次に、平成12年度当初予算における歳入と歳出のギャップについてでございます。
 予算編成におきましては、県税収入の伸び悩みや原資となります国税収入の低迷によりまして、国庫支出金などに多くを期待し得ない一方で、公債費などの義務的経費が累増するという極めて厳しい財政事情の中にありまして、総合計画の実質初年度として、環境、情報、ひとという三つの柱を中心とした各施策の着実な展開を図ることに意を用いたものでございます。
 平成12年度当初予算における歳入と歳出のギャップにつきましては、中期財政見通しでは411億円と見込んでいたわけでございますが、実際の編成過程におきましては374億円のギャップとなったところでございます。このギャップにつきましては、まず、いわゆる財政健全化努力によりまして174億円解消したところでございます。その内容といたしましては、スクラップ・アンド・ビルドによりまして29億円、それから、公共事業の重点化などによりまして133億円、未利用地処分などにより12億円を生み出したところでございます。また、残っております200億円につきましては、財政調整基金などの取り崩しにより対応したところでございます。
 次に、中期財政見通しと比較いたしました今回提案いたしております当初予算の評価についてでございますが、中期財政見通しと比較した場合には、若干数値上の違いは出ておりますものの、これは、見通しを策定した時点では見込み得なかった国の平成11年度第2次補正予算の編成や平成12年度の地方財政対策の内容の確定、あるいは地方財政計画の決定など、その後の情勢変化の影響によるものでございます。
 具体的には、歳出面では、その後出された県の人事委員会勧告に沿った給与改定による給与費の減額や公共事業の重点化などにより、投資的経費が見通しよりも減少したこと、また歳入面にありましては、公共事業の財源としての国庫支出金の減少や県税収入の増加があったことなどによるものでございますが、基本的な道筋に影響を与えるものではございませんで、おおむね中期財政見通しに沿った編成であったものと考えております。
 次に、本県の財政状況についてでございますが、本県の財政構造を直近の平成10年度の各種財政指標で見ますと、財政の弾力性などを示す指標でございます経常収支比率は87.0%──これは数値が低い方がよいわけですが、これは全国で低い方から数えて第15位でございます。それから、人件費などの義務的経費の割合は36.3%、これも全国で低い方から第10位でございます。また、起債制限比率は11.7%、全国で低い方から第28位でございます。また、財政調整基金と県債管理基金の残高850億円余りございますが、この850億円 余の標準財政規模に占める割合は21.7%──これは数値が高い方がいいわけですが、全国で高い方から数えて第5番目と、こういう数値になってございます。
 このようなことから、景気の低迷による税収減の影響を大きく受ける自主財源の割合の高い団体──東京周辺の自治体などがこういったものに該当するわけですが、こうした団体と比較いたしますと、現時点におきましては財政赤字を生じるほどの危機的な状況にあるとは考えてはいないものの、近年の地方財源不足対策としての財源対策債等の発行を余儀なくされたことに伴いまして、公債費が累増しております。これらの指標が悪化してきておりまして、今後とも極めて厳しい状況が続くものと考えておりますが、総合計画の着実な推進のため、健全な財政運営に努めてまいりたいと考えております。
 次に、地方交付税の安定的な確保についてでございますが、地方交付税は、税源の偏在による格差を是正するとともに、それぞれの地方公共団体が行政水準を維持しながら、計画的にその運営を行っていく上で極めて貴重な財源でございます。地方分権時代におきましても、地方財政計画の策定を通じて、その総額の安定的確保を図っていくことが不可欠であると、このように考えております。
 地方交付税につきましては、これまでも対象税目への消費税、たばこ税の追加や消費税、法人税の地方交付税率の引き上げなどが行われてきたわけでございますが、今後におきましても、その安定的確保と充実強化の観点から、交付税率の引き上げや地方固有の財源であることを明確にするための交付税特別会計への直接繰り入れの実現など、こうしたことを全国知事会などを通じて、引き続き強く働きかけてまいります。
 また、この4月から施行されるいわゆる地方分権一括法にあわせ法制化されました、地方交付税の算定方法に関する意見提出制度につきましても、積極的に活用する考えでございます。
 次に、法人事業税の外形標準課税についてのお尋ねでございますが、今回の東京都の外形標準課税の導入問題は、地方公共団体の課税自主権が大きくクローズアップされたものでございまして、地方分権時代における国と地方のあり方に一石を投じたものと、このように評価しているわけでございます。
 私は、みずから徴収する税で自分たちの行政を行っていく、いわゆる歳入面での地方自治を確立していくためには、課税自主権は最大限に尊重されるべきものと考えているわけでございますが、東京都のような外形標準課税の導入は、他道府県への影響も含め、さまざまな課題があることも一方で事実でございまして、これら課題との調整を図っていくべきものと考えております。
 東京都の外形標準課税導入による影響につきましては、法人事業税の税額が損金に算入されるといったことなどから、将来における一定の仮定計算のもとではございますが、本県においても法人二税及び地方交付税収入がマイナスとなることが想定されるところでございます。
 また、本県独自の外形標準課税の導入につきましては、徴税コストの増加や地方交付税の減収等もございまして、果たしてメリットがあるかといったような問題も抱えております。
 このように、外形標準課税の導入につきましては、最終的には地方税財源のあり方と深くかかわる問題でありますことから、地方税法の改正による全国統一基準による導入が望ましいと、このように考えておりまして、今後、全国レベルで議論が深められ、地方全体にとってすべてにメリットのある、地方分権を支える安定性を備えた地方税体系の確立に沿った方向で検討が進められることを期待するものでございます。
 次に、盛岡地域の広域合併についてでございますが、広域行政推進指針は、さまざまな広域連携の可能性をお示しして、市町村や地域住民の皆さんの間で、市町村合併を含む広域行政について広く議論が行われて、その望ましい方向性を自主的に判断するための材料となるよう、現在、策定に向け検討を進めているところでございます。
 その策定の時期につきましては、当初、今年度末を目途として策定することとしておりましたが、今月中にも公表が予定されております県立大学の調査・研究報告書を十分しんしゃくし、また、市町村の意見や市町村議会での議論、3月にいろいろ議論があると思いますので、そうした議論の状況を踏まえ、さらに県民の皆さんの意見を聞くなどして、来年度の早い時期に策定して公表したいと、このように考えております。
 この指針の策定後におきましては、市町村や住民の皆さんが、広域行政の意義や効果について理解を深め、市町村のあり方を主体的に検討できるよう、その内容を周知するために県のホームページに掲載して、また、各地方振興局で閲覧に供するほか、広域行政シンポジウムや各地域での説明会を開催するなど、積極的に広域行政推進の機運の醸成に努めてまいります。
 とりわけ盛岡都市圏は、都市化の進展、交通網の整備に伴いまして、住民の日常生活や経済活動の範囲が一層拡大して、一体的な生活圏が形成されておりますことから、関係する市町村が合併をも視野に入れた密接な連携を深めることが期待されている地域でございまして、こうした取り組みにより、この地域が北東北の交流拠点として、21世紀における北東北発展の先導的かつ中核的な役割を担うとともに、県勢発展の牽引的な役割を確実に果たし得る地域になるものと認識しております。
 今後、この指針の周知を図るために、盛岡都市圏の関係する市町村に十分説明して、盛岡地方振興局の相談窓口において随時相談に応じるほか、圏域のビジョンづくりに県としても参画するなど、市町村の自主的な取り組みを積極的に支援してまいります。
 次に、高齢社会に対応した居住環境の整備についてでございますが、高齢者が自立して快適な生活を営むことができるように、岩手県の総合計画におきまして、快適に安心して暮らせる社会の実現を主要な柱の一つに据えて、福祉と連携した居住環境整備を進めることとしてございます。
 今後、岩手県住宅供給公社が行う団地開発におきまして、県、公社、そして関係団体が連携して、バリアフリー仕様と緊急通報システムを備えた新たな高齢者向け住宅の整備にも取り組むなど、保健、医療、福祉施設の一体的な整備を促進することとしております。
 次に、資源循環型のシステム構築についてでございますが、高齢者の住みかえ需要にこたえつつ、その持ち家を若い世代に譲渡したり賃貸するなど、その資産を有効に活用しながら、より高度な福祉サービスを享受できるようなシステムの確立は、大変重要であると考えております。このため、本県においても高齢者向け優良賃貸住宅の整備の促進とあわせまして、公社や社会福祉法人の参画により、これらのシステムの構築を図る必要があると認識しております。
 今後とも、住宅・社会資本の循環活用方策の普及につきましては、国の動向を見きわめ積極的に対応してまいりたいと考えております。
 次に、伝統産業の振興策についてでございますが、いわゆる伝統産業は、原材料や労働力、技術力などの地域資源を活用した物づくり産業として、地域経済の発展に大きく貢献をしております。本県におきましても、国が伝統的工芸品として指定しております南部鉄器、岩谷堂箪笥、秀衡塗、浄法寺塗を初めとして、100年以上の伝統を有する工芸品が数多くございまして、それぞれ地域産業の重要な担い手となっております。
 県内の工芸品は、物産展などにおきまして人気を博しておりまして、市場での評価も高いものと認識しておりますが、近年の景気の低迷や生活様式の変化により、需要が伸び悩む傾向にあり、また、熟練した技能者の高齢化と後継者の育成確保が大きな課題となっているところでございます。このため、県で南部鉄器など、指定工芸品の産地組合が実施する後継者育成事業などの支援を初めとして、商品開発などに対する助成、物産展などによる販路拡大など、各種の振興策を講じてきているところでございます。
 本年11月に開催される第17回の伝統的工芸品月間全国大会では、記念式典のほか、伝統工芸士の全国大会や全国193品目の工芸品を一堂に紹介する、伝統工芸ふれあい広場などが開催されることとなっております。県では、この大会を通じて県民に伝統的工芸品のよさや味わいを再認識していただくとともに、特に、次代を担う子供たちが本物に触れることのできる絶好の機会ととらえまして、県内の工芸品を紹介する展示会の併催や小中学生が伝統的工芸品について体験・学習する場として提供することなどを計画しているところでございます。
 この大会を契機として、躍進いわての産業まつりや県内外の物産展を充実強化するとともに、新たに伝統的工芸品の全国的なニーズの把握や、それに対応した新商品開発などによる販売システムの構築を行う販売促進モデル事業に取り組むなど、これまで以上に伝統産業の振興を図ってまいります。
 次に、岩手県農業・農村基本計画の目標達成についてでございますが、これからは明確な達成目標の設定と取り組み成果の検証が極めて重要であると考えております。計画が目指す農業粗生産額については、将来の農地面積や農業就業人口の見通しに立ちまして、土地、労働力を最大限に活用し、地域の立地特性を高度に生かした作目の導入・拡大などを総合的に検討して設定したものでございます。
 この目標達成のためには、まずもって、本県農業の相当部分を担い、それぞれの地域において中心的な担い手となる主業型農家の育成が重要でございます。このため、農業改良普及センターが中心となって、今後、育成すべき農家も含めた主業型農家のデータベースを整備して、これらの主業型農家が最大限に力を発揮できるよう、各種の施策をこうした主業型農家に集中的かつ重点的に講じてまいります。
 また、市町村初め、関係機関・団体と連携しながら、農地流動化ステップアップ運動を展開することとしてございまして、主業型農家への農地の利用集積を、現在32%という数値でございますが、これを倍以上の65%に高めまして、その経営基盤を強化するなど、こうした取り組みにより県内で1万1、000戸の主業型農家の育成を図っていく考えでございます。
 さらに、効率的な生産体制を確立するために、主業型農家を中心に、地域の実情に応じ、副業型農家や自給的農家も含めた話し合いのもとに、土地、労働力などの資源を高度に活用する地域ぐるみ農業を一層推進してまいります。特にも、米の減収分を補てんする観点に立ちまして、水田を高度に活用した野菜、花卉などの園芸作物や、麦・大豆などの土地利用型作物の導入・拡大を図りますとともに、生産の団地化や機械・施設の効率的な活用によりまして、所得形成力の高い水田農業を推進する考えでございます。
 具体的な施策の展開に当たりましては、意欲ある農業者の自主的、主体的な取り組みに対して、県、市町村、農業団体が一体となってさまざまな面から力強く支援して、計画の着実な達成に努めていく考えでございます。
 次に、林業・水産業の今後の展開と展望についてでございますが、本県の林業・水産業は、広大な森林と日本を代表する漁場とを活用した多彩な生産活動が展開され、木材産業や食品関連産業など、2次、3次産業と結びついて県経済を支えている基幹産業であると認識しておりまして、将来にわたって一層振興を図っていかなければならないと考えております。
 まず、林業につきましては、地域の木材資源を基盤として製材や木炭の生産がなされるとともに、森林資源の充実のため、県土面積の約3割に及ぶ人工林が造林を今までされてきたところでございますが、近年、森林の公益的機能に対する社会的な期待や加工度の高い木材製品に対する需要が一層高まってきております。このため、これら人工林を基盤として、持続可能な森林経営を目指して、計画的な間伐の推進による森林資源の質的な充実を図るとともに、気仙の杉や遠野のカラマツなどを高度に加工するための、大断面の集成材工場などの施設整備を進めてきたところでございまして、今後とも、より高品質な木材製品の生産体制の整備に取り組むなど、時代に即応した林業の振興に努めることとしております。
 水産業につきましては、漁業資源が減少している中で、全国に先駆けてつくり育てる漁業に取り組んで、現在では漁業生産額全体の約6割を占めるなどの成果を上げて、養殖ワカメとアワビは全国で第1位、サケ、マス、養殖昆布などは同じく第2位の生産量を誇る全国でも有数の生産県として、我が国における水産物供給に大きな役割を果たしているところでございまして、さらに食品の安全性への消費者ニーズの高まりに対応した、いわゆるハセップ方式の導入など、重点的に推進して、付加価値の高い新鮮で安全な水産物の供給体制を構築していくこととしてございます。
 今後においても、このような森林資源や水産資源の適切な管理と有効利用を進めますとともに、林業や水産業が果たしている環境の保全など、多面的な機能の維持・増進に努めながら、潤いある豊かな県民生活の実現を図っていく考えでございます。
 次に、児童虐待の問題についてでございますが、これにつきましては、必要に応じ担当部から報告を求め、その実態について承知してございますが、県内3カ所にございます児童相談所で処理した児童虐待相談の件数、平成8年度が11件、平成9年度が37件、平成10年度が67件と、全国と同様に増加傾向にあるわけでございます。このような状況にかんがみまして、児童虐待の未然防止、早期発見、そして迅速な対応を図っていくために、県では、平成10年度から、地方振興局の単位ごとに児童虐待防止地域連絡会議の設置を今進めておりまして、市町村、保育所、学校、そして弁護士、警察など、関係機関との連携強化を図っております。
 また、本年度におきましては、地域で活動する主任児童委員や保健婦など児童福祉関係者に対して、児童虐待の未然防止や早期発見に関する専門研修を実施するとともに、児童虐待防止手引書を作成して配布することとしております。今月中に配布を終えることとしてございます。
 そのほか、子育てに悩む親などのため、中央児童相談所に子ども家庭テレフォンを平成3年度から開設してございまして、特にも、平成10年度からは、年末年始を除く毎日、児童虐待を含めた各種相談に応じてございます。平成12年度からは、児童虐待対応協力員を各児童相談所に1名ずつ配置して、虐待事例への迅速かつ的確な対応を行うなど、児童虐待対策の体制を強化してまいります。
 最後に、青少年の健全育成についてでございますが、あすを担う青少年が、たくましく、心豊かに成長することは県民すべての願いでございますが、御指摘のとおり、少年非行が増加し、質的にも凶悪・粗暴化するなど、大変憂慮すべき状況にあるものと考えております。このような問題は、社会全体が抱えるさまざまな問題を反映したものでございまして、家庭、学校、地域住民、民間団体、関係機関等がそれぞれの果たすべき役割を再認識するとともに、一体感を持って取り組んでいくことが求められております。
 このため、県では、家庭教育に関する各種相談や地域で子育てを支援するネットワークの推進、学校不適応に対する地域指導体制の充実を図りますほか、少年補導員による非行防止活動や不健全図書の販売規制などの環境浄化対策を実施いたしますとともに、健全育成の強調月間を設けて、県民大会や街頭での啓発等を行ってきております。
 また、青少年は地域社会からはぐくむ、このような観点に立った活動を全県的に展開するために、青少年育成県民会議の取り組みを支援するとともに、青年海外派遣事業などによるリーダーの育成、さらには盛岡駅西口地区の県有地活用基本計画に──仮称でございますが、青少年活動交流センターというものを位置づけまして、健全育成の拠点づくりを進めるなどの総合的な施策に取り組んでいく考えでございます。

〇議長(山内隆文君) 次に、佐々木大和君。
   〔18番佐々木大和君登壇〕(拍手)


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