平成19年12月定例会 第4回岩手県議会定例会会議録

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〇34番(平沼健君) 自由民主クラブの平沼健でございます。
 通告に従い、順次質問をさせていただきます。
 まず、新しい地域経営の計画についてお伺いいたします。
 このたび県は、県民所得向上など四つの重点目標を設定した新しい地域経営の計画案を示されました。これまでの素案では数字化されていなかった1人当たりの県民所得を今後4年間で平成12年度の所得水準であった260万円台まで引き上げる計画案となっております。しかしながら、県民所得を所得要素別に調査すると、賃金や雇い主の社会負担である雇用者報酬が最大のウエートを占めております。しかも、この雇用者報酬は、建設業、卸・小売業等、今後も厳しい経営が想定される業種が中心であります。また、所得要素別で次に大きな企業所得は、平成13年度に大幅に落ち込んだ後、少しずつ増加に転じておりますが、昨今の為替の円高傾向、株安、そして原油高騰の影響も懸念され、民間法人企業や個人企業、特に農林水産業の収益性の確保をいかに図るかが県民所得向上には最も大きな課題であり、困難を要するものと考えます。特にも、この県民所得を2010年度までに達成するためには、依然として低迷している農林水産業を初めとした1次産業の底上げを最優先に図らなければならないことからも、県北・沿岸振興策の成否がそのかぎを握っていると言っても過言ではありません。
 そこでお尋ねします。まず、この計画は、総論、そして各論として地域編、政策編、改革編に分類し、詳細に組み立てられておりますが、歳入歳出ギャップが年間200億円とも300億円とも試算されている中で、この施策を実行するため、今後、財源をどのように確保していくのか、お伺いします。
 また、1人当たり県民所得差が国内平均値に比べ近年拡大してきた原因をどのように分析し、それを今後どう生かそうとしているのか、あわせてお伺いします。
 次に、本県における地方分権の推進についてお伺いします。
 地方分権改革は、平成12年の地方分権一括法施行、平成15年の三位一体改革により進められております。こうした中で、岩手県においては59市町村が35市町村に再編され、県から市町村への権限移譲も行われてまいりました。行政サービスの提供は住民に最も身近な市町村が行うよう行政のシステムを確立することが重要であり、地域の自主性と自立性を高めることにより、個性豊かな活力ある地域社会を実現することにあります。
 県は、市町村の行財政基盤を強化するという目的で、これまで三つの施策に取り組んでまいりました。一つは市町村の合併の推進、一つは権限移譲、そして広域振興局体制への移行であります。
 そこでお尋ねいたします。まず、市町村合併の推進についてでありますが、県は、これまで合併支援プランあるいは自立支援交付金等で支援してきました。そして、合併新法のもとでは、平成18年4月、自主的な市町村合併の推進に関する構想を策定され、今後あるべき八つの合併の姿を示されました。これは、現在の35市町村を14にする案でありますが、これまでの59市町村から35市町村への合併の総括をどのようになさっておられるのか、合併後の市町村住民の不安等をどのように分析し、次の合併につなげようとしているのか、お伺いします。
 また、逆に当面自立を唱えている自治体には今後どのような指導、対応で臨んでいこうとしているのか、あわせて伺います。
 二つ目の市町村への権限移譲についてでありますが、県は、一括事務移譲方式や人的支援をポイント化したポイント式一括移譲制度などにより事務移譲を進めてきましたが、規模や体制の違いによる市町村の取り組みのばらつきにより行政サービスに格差が生じているのではないかという大きな課題が指摘されております。また、必要な事務権限の移譲は今後も迅速に進める必要がありますが、その意義や効果が十分に住民に理解、共有されているでしょうか。あるいは、県の考え、都合で移譲していると受けとめられてはいないでしょうか。大事なことは、地域住民の視点が十分反映され、市町村から望まれている事務権限を移譲することであり、そのことが将来、市町村の力を高め、個性豊かで活力ある地域社会の構築につながると考えるものでありますが、今後、県では、この権限移譲をどのような考え方で進めていこうとしているのか、御所見を伺います。
 三つ目の広域振興局体制についてですが、県南広域振興局が平成18年度にスタートし、将来は県央・県北・沿岸地域も広域振興局体制に変革する方向で進んでおります。既に県南広域振興局でこれまでの成果や課題についての検証がなされていることと思いますが、県南地域住民に屋上屋を架すことになってはいないでしょうか。県南広域振興局体制の大きな意義は、市町村中心の行政システムの確立と産業振興への対応強化と承知しておりますが、従来の県南6振興局を一つの広域振興局にくくり直し、4支局と2行政センターを配置し、県からすると効率的な組織体制に移行したと自負するものでありましょうが、果たして市町村や住民から見て、わかりにくい行政、組織になってはいないかと危惧するものであります。広域振興局体制での大きな課題は自己完結性を高めることでありましたが、この自己完結性についての地域住民、市町村の反応をどのようにとらえているのか、お伺いします。
 次に、本県の人口減少の諸問題について伺います。
 平成17年度国勢調査による本県人口は138万5、000人余りと、平成12年の前回調査結果に比べ3万1、000人余り下回り、140万人を割り込むこととなりました。また、県が行う人口推計調査によりますと、平成18年10月1日現在の本県人口は137万4、000人余りと平成9年以降10年連続して減少を続け、減少幅は年々拡大傾向にあるとのことであります。これは、まことに憂慮すべき事態と思います。人口減少は、経済活動の根幹をなす個人消費の縮小につながり、さらには企業の業績にも大きな影響を与え、県内経済全体の停滞に直結すると言っても過言ではありません。それだけ人口の減少はあらゆる方面に大きな影響をもたらすものと思います。
 そこでお尋ねしますが、この人口減少は、県独自の取り組みだけで解決できるものではないとは思いますが、今後も減少が続くと見込まれる本県の人口減少をどう受けとめ、それにどう対処していこうとしているのか、知事の基本的考えを伺います。
 次に、こうした人口減少が及ぼす県財政への影響についてお伺いします。
 三位一体改革の一つとして進められた交付税改革により、平成19年度から人口と面積に応じて交付される新型交付税が導入されておりますが、岩手県の場合、これによりどのように影響があったのか伺います。あわせて、県内各市町村への影響はどうなのか、お伺いいたします。
 また、国から地方への税源移譲でありますが、税源が移譲された後、本県の税収がどのように変化しているのでしょうか。この税源の偏在を解決するのは地方交付税しかないと思いますが、知事は、税源移譲後の財政力の格差をどう見ておられるのか、また、それはどのような方法で是正されるべきとお考えなのか、地方自治体のトップとして知事の考える税源のあり方や地方交付税にかかわる改革全体の理想的な姿とあわせてお聞かせください。
 次に、ものづくり人材の確保についてお伺いします。
 本県は、減少する生産年齢人口で増加する老年人口を支えていくという極めて厳しい高齢社会の到来が予測されており、今後の県民生活の維持向上を図るためには、付加価値の高い産業構造をつくり上げ、県民の雇用や所得を確保しながら地域経済の基盤を築いていく必要があります。
 しかしながら、その担い手として期待される本県の中学校卒業者は、平成17年3月の1万4、857人から平成21年3月には1万3、797人と推計され、この間約7%減少すると見込まれております。一方、高校進学率は98%台後半の高率で推移し、高校卒業者の大学等への進学率も、平成16年度33.7%、平成17年度34.4%、平成18年度には37.2%と年々上昇しております。こうしたことから、今後、地域の産業を担う技術者、技能者等の不足とともに、熟練した技術・技能が次の世代に継承されないことが危惧されますが、これらについて、県として具体的にどのように対応しようとしているのか、伺います。
 また、本県においては、自動車関連産業や先端技術関連産業などの企業立地等により、北上川流域を中心に電気、電子、精密機械及び輸送用機械等の産業集積が進み、また、宮古・下閉伊地域においては、世界的にもトップシェアを誇る企業を中心にコネクターの生産及びそれに関連する金型企業等の集積が進んでいるほか、久慈地域において東北では最大級とされる造船関連企業が進出するなど、ものづくり産業の集積が進展しております。県では、こうした産業のニーズに対応したすぐれたものづくり人材の育成と安定的かつ継続的な供給体制をどのように考えているのか、伺います。
 次に、雇用対策について伺います。
 総務省が11月30日発表した10月の完全失業率は先月と同率の4.0%となっております。また、雇用情勢に関する判断を、このところ改善の傾向が少しとどまっているとの見方を示しました。とりわけ本県の経済情勢はいまだ先行き不透明で、一度も改善の気配すら感じられないまま厳しい状況が続いているというのが大方の企業、そして県民の実感だと思います。
 このような中、本県の雇用情勢について見ますと、10月の有効求人倍率は0.65倍と前月より0.04ポイント低下し、残念ながら全国で39番目となっているところであり、さらに重要なことは、同じ県内でも北上川流域と県北・沿岸部の有効求人倍率の大きな差は依然として埋まらずにあります。
 そこでお尋ねします。県では、本県の雇用情勢をどのように分析し、今後、その対策をどう講じようとしているのか、お伺いします。
 一方、本県の平成14年における若年層のフリーター率は12.6%で、その人数は2万1、600人に達していると見られております。早期離職者や不安定就労若年者の増加は、若年者本人の職業能力の蓄積を妨げるのみならず、本県全体の労働力の質の低下を招くおそれがあります。そこで、県におけるフリーター対策についてお伺いします。
 さらに、障害者の雇用について、平成18年度末においては県内ハローワークの登録者6、633人のうち1、841人が求職中であり、多くの障害者が就職を希望しながらも職につけない状態にあります。障害者の職業的自立を図るため、障害者に対してどのような支援をしていこうとしているのか伺います。
 次に、県北・沿岸振興策の一つの核であります水産業振興について伺います。
 遠洋・沖合漁業を中心とする、とる漁業からつくり育てる漁業に転換し、県もさまざまな施策で水産業を支援してきましたが、輸入水産物の増加や産地間競争が激化する中で、沿岸漁業は、近年、秋サケの水揚げは低迷し、主力養殖種であるワカメの生産量も大きく減少しております。このような中、新たな増養殖種の開発や水産物の高付加価値化や販売力強化及び漁業の担い手の確保・育成が喫緊の課題であります。
 海面漁業生産額のうち、沿岸漁業の生産額はピーク時の昭和60年438億円と対比して、平成15年には257億円と58.7%まで落ち込んでおります。また、本県の漁業就業者数は毎年500人弱ずつ減少し、ここ20年間で約半減するとともに、平成15年の男子就業者のうち、60歳以上の就業者の割合は45%と高齢化が進んでおります。
 そこで県は、本年度からワカメ養殖を中心にグループ化と機械化を進め、利用されていない空き漁場等の効率的な利用を図るため、地域営漁計画推進特別対策事業を実施しております。これは、本県の沿岸漁業1経営体当たり生産額を引き上げる方策でもあるわけですが、この取り組みも含め、地域営漁計画の県内各漁協の取り組み状況、事業の進捗状況はどのようになっているのか伺います。
 次に、漁業者所得向上のため、事業化に取り組んでいるナマコとマツカワについてお尋ねいたします。
 特に投資効率の高いナマコの増殖事業に県内の漁民は期待しております。平成20年を目途に種苗量産技術を確立する計画と聞いておりますが、今後の種苗放流適地の検証や漁法の検討とあわせて種苗放流効果実証試験を実施し、増殖を経済的に成立させるための課題解決等、実際に増産体制になるまでの見通しをお伺いします。
 また、県水産技術センターと北里大学水産学部はマツカワの養殖技術を開発し、緑色や青色の光を当てることによりマツカワの成長が促進されることを突きとめ、これを特許出願し、岩手の光養殖を世界に発信しました。これは、サケやアワビなど他の魚介類にも応用できる可能性があると言われ、今後大いに期待できる研究成果だと思います。このすばらしい光養殖技術を県として将来どのように生かそうとしているのか、そのお考えを伺います。
 次に、地球温暖化防止に向けた森林整備について質問いたします。
 平成14年に我が国は京都議定書を締結し、平成17年、京都議定書目標達成計画が閣議決定されたところであります。この計画では、温室効果ガスの6%削減の達成に向け、1、300万炭素トン─基準年総排出量比約3.8%程度を森林による二酸化炭素吸収により確保することを目標に盛り込んでおり、森林吸収源は、我が国の温暖化対策において特に重要なものとして位置づけられております。
 しかしながら、現在の森林整備では、1、300万炭素トンを確保するためには110万炭素トン不足しており、この不足分を確保するため、平成19年から平成24年度までの6年間で毎年20万ヘクタール、合計120万ヘクタールの追加整備が必要であることから、国は、平成18年度補正予算で530億円、平成19年度当初予算で235億円、合計765億円の追加予算を確保しましたが、これに対する岩手県の対応はどのように行われているのか、お伺いします。
 また、この森林整備は、国有林は10分の10で整備されるでしょうが、民有林に対する間伐事業費のうち、国は10分の3、県が10分の1補助であり、種々上乗せを図っても、最大で、国、県合わせて68%になりますが、所有者負担が32%となることから、民有林の整備が思うように進まないのではないかと危惧するものであります。森林整備は国が実施すべきだという観点からも、民有林整備には地方自治体や民有林所有者に大きな負担をかけない森林整備であるべきだと考えるものでありますが、県として、今後の民有林の間伐作業を含めた森林整備についてどのように考えているのか、御所見をお伺いいたします。
 次に、岩手競馬のコスト削減策について伺います。
 黒字または収支均衡が競馬事業存続の条件となっている岩手県競馬組合に対し、平成19年10月25日付で岩手県競馬組合議会は三つの提言と二つの勧告を行い、経営全体に対して管理者のリーダーシップによる判断を求めたところであります。これを受け、11月8日に本年度3回目となる2億9、000万円の追加コスト削減が決定されたことにより、11月12日の定例記者会見で管理者である達増知事は、黒字がほぼ確実になったので、来年度の存続もほぼ確実と言っていいとし、存続に強い自信を見せました。これまでの関係者の継続に対する熱い思いと努力、そして構成団体からの330億円の融資を考えるとき、黒字で存続できるのであれば、これほどすばらしいことはありません。
 しかし、これまで3回実行されたコスト削減策についての疑問点を何点か伺います。
 そもそも事業再建のコスト削減はスタート段階で、もうこれ以上削減できないところまでコストを絞り込みスタートするのが再建計画であり、売り上げを見ながら小出しにコストを合わせていくやり方は、県民の血税である330億円を投入していることから見ても余りにも甘く、納得できない県民が多いのではないでしょうか。
 そこでお伺いします。コスト削減に振興公社基本財産から1億3、800万円補てんしていますが、これはコスト削減とは言わないわけであり、ましてや県は、馬資源の流出を防ぐための補てんで、競馬振興という公社の設立趣旨には合っていると述べていますが、公社設立趣旨に合っているかどうかではなく、このような考え方は明らかに岩手競馬事業再建という趣旨からは大きく外れていると考えるものでございますが、いかがでしょうか。また、仮にまだ取り崩しできる財産があるのであれば、それは構成団体からの融資330億円の返済に利用するのが管理者、事業者の責任であり、今回のようにコスト削減の一部を補てんするのは経営上大きな間違いだと考えるものですが、あわせて御所見を伺います。
 最後に、道路特定財源について伺います。
 本県は広大な面積を有し、人、物の移動のほとんどが自動車交通に頼らざるを得ない状況にあります。反面、都市間の距離が遠く、加えて急峻な地形や寒冷な気候などの厳しい自然環境下にあり、峠と雪の克服も大きな課題となっております。さらに、救急医療においても60分以内で高次医療施設に到達できない地域がなお多く存在し、地震・津波等の災害時の代替交通路が整備されていない地域も多く残されているなど、安全で災害に強い命を守る道路の確保が重要な課題であることから、特に地方の道路整備は早急に進める必要があります。
 しかしながら、問題はその財源確保であります。国は、11月13日、道路の中期計画素案で、国費を投入する高速道、国道、地方道の総事業費が今後10年間で68兆円必要との案を示されました。これは道路特定財源のすべてを道路整備に投入することであり、目的税の原理原則から見ても当然のことであります。税金を納めた車の使用者に利益が還元されるべきものであります。万一、道路特定財源が一般財源化された場合、本県の道路網整備や橋梁の補修工事等に大きな影響を与えるものと思われます。また、道路特定財源の暫定税率の適用期限が来春すべて切れた場合、本県税収が大きく落ち込み、道路整備計画に重大な影響を与えることが危惧されます。
 そこで伺いますが、道路特定財源は目的税であり、現在の暫定税率を維持し、道路整備に充てるべきものと考えるものです。この道路特定財源の維持と暫定税率の継続を国に対し強く求めていくべきと思いますが、いかがでしょうか。県としての御所見を伺います。
 以上をもちまして私の質問を終わります。ありがとうございます。(拍手) 
〇議長(渡辺幸貫君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 平沼健議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、新しい地域経営の計画の実行のための財源確保についてでありますが、近年の地方交付税の抑制基調がこのまま継続された場合には、自助努力による財源確保も限界があることから、現在、地方交付税の復元・増額と地方税の偏在是正についての早急な制度改正に向け、本県のみならず、地方が一体となって国に強く働きかけを行っているところでございます。こうした制度改正による財源の確保は、平成20年度のみではなく、21年度、22年度に向けても、さらに改善・充実を図るべく、継続的に力を注いでいく所存でございます。
 また、改革編の岩手県集中改革プログラムに基づき、県有財産の有効活用や県税等の収入未済額の縮減、使用料、手数料の見直しなど歳入の確保策に努めるとともに、組織のスリム化や全庁的視点での選択と集中による優先度の高い事業への重点化をさらに進めるなど、徹底した歳出の見直しを行うほか、ゼロ予算事業なども実施しつつ、最大の効果が発揮できるように努め、財政の健全化を進めながら新しい地域経営の計画の実現に全力で取り組んでまいりたいと思います。
 次に、県民所得についてでありますが、本県の1人当たり県民所得は、平成13年度に、前年度と比較してマイナス7.7%と大きく落ち込んだところでございますが、これは、IT関連需要の冷え込みに伴う誘致企業の撤退などにより、情報通信などの電気機械部門を中心に製造業の生産が減少したこと、また、公共事業の縮小により建設業の生産が減少したことがその主たる原因であり、こうした傾向は全国的なものでありますが、本県は、県内総生産に占めるこれらの部門の割合が高かったことから、その落ち込みが特に大きかったものであります。その後、国民所得が着実に回復していく中、本県にあっては、建設業や第1次産業の落ち込みが大きいほか、全国と比べて第3次産業の伸びも緩やかであったことから、その格差の拡大に歯どめがかかっていないところでございます。こうしたことを踏まえ、今後は、ものづくり産業の集積促進や、観光産業、食産業の振興、さらには農林水産業の産地形成や販路の拡大など、本県の個性や特色を生かした産業振興に向けた取り組みを、地域の総力を結集して展開していくことが何よりも重要であると考えております。同時に、私は、国に対して地方経済の活性化や地方財政の健全化をより重視した経済財政運営を強く求めていかなければならないと考えており、これらを両輪として、今般、計画に掲げた260万円という県民所得の目標達成に全力を傾注してまいる所存でございます。
 次に、人口減少に係る基本的考えについてでありますが、本県の将来人口は、国立社会保障・人口問題研究所が本年5月に公表した人口推計によりますと、平成47年─2035年には、平成17年─2005年に比べ、約25%減少すると予測されており、平成14年に公表された推計に比べ、減少の度合いが一層大きいものとなっております。人口減少社会においては、労働力人口や消費人口の減少による地域経済規模の縮小や、高齢化に伴う社会保障面での負担の増加に加え、中山間地域を中心として地域コミュニティの維持に困難が生じることなど、負の影響が懸念されているところであります。
 今後、我が国の人口が長期にわたり減少していくことが見込まれる中にあって、本県においては主に地域経済の低迷によって社会減が拡大している状況にかんがみ、現在策定を進めている新しい地域経営の計画において、人口転出への歯どめを重要な課題の一つと位置づけ、ものづくり産業の集積促進や食産業の振興などにより確かな地域経済基盤を構築し、若年層を中心とした人口流出の抑制や、Uターン、Jターン、Iターンによる転入の促進を図っていくところでございます。また、あわせて、低下傾向にある出生率に歯どめをかけていくことも必要であることから、安心して子供を産み育てられる環境の整備に向け、女性の就業環境の整備や子育て支援などの取り組みを強化していくところでございます。こうした人口減少という大きな課題に対し、議員御指摘のとおり、県など行政が主体的にできることには限りがありますことから、まさに県民、企業、NPOなど地域の総力を結集しながら取り組んでいくことが肝要であると認識しております。
 次に、税源移譲後の財政力の格差と改革の理想的な姿についてでありますが、今般の税源移譲においては、地方の個人住民税をいわゆる10%比例税率とする形で国の所得税との間で税率構造の調整が行われましたため、3兆円の税源移譲の部分だけ見れば、税源の偏在を拡大させずに地方税を増加させることができたと言えますが、地方では、その税源移譲の金額以上に国庫補助が削減されている上に、近年の法人関係税収の増加などもあり、年々、税源が豊かな大都市部の団体と、税源が乏しい本県のような地方の団体との財政力の格差が拡大しているところであります。
 このような問題を是正するのが地方交付税の役割でありますが、近年続いている地方交付税総額の大幅な削減により財政力格差はさらに拡大し、税源が乏しい地方の自治体においては、地方税と地方交付税を合わせた財源が大きく減少している状況であります。その是正方法といたしましては、現在、地方交付税の復元・増額や臨時財政対策債制度の見直し、いわゆる税源交換方式による地方税の偏在是正などを国に対して働きかけておりまして、まずはその実現を通じて地方の財源を確保していく必要があると考えておりますが、望ましい姿としては、本格的な分権型社会にふさわしく、地方自治体が地域社会や住民生活を支える行政サービスを自立的かつ安定的に提供できるような地方税財政制度、すなわち本格的な税源移譲等により、地方消費税や個人住民税を中心とした偏在性の低い地方税が地方の歳入の中核となる一方で、その充足度の差を十分に調整できる規模と機能を備えた地方の共有財源としての財政調整制度を確立することが必要であると認識しているところでございます。
 次に、産業のニーズに対応した人材の育成と供給体制についてでありますが、本県ものづくり企業の成長や一層の産業集積を実現していく上で人材の育成・確保は最も基盤となるべき部分であり、その推進に当たっては、県内産業界と教育界とが強固に連携して取り組んでいくべきものと認識しております。このため、これまで、地域産業のニーズを踏まえながら、黒沢尻工業高校及び産業技術短期大学校への専攻科や宮古高等技術専門校への金型技術科の設置を初め、岩手大学大学院金型・鋳造工学専攻、いわゆるものづくり大学院の開設支援などに先駆的に取り組んできたところであります。
 また、同時に産学官が連携して地域産業に必要な人材を育成する仕組みとしては、北上川流域ものづくりネットワークや宮古・下閉伊モノづくりネットワークなどの設置を進めるとともに、このネットワークを中心として、小・中学校や工業高校でのものづくり体験授業や技能講習会、企業若手人材の研修の実施など、小・中学校段階から高校、大学、企業人材に至るまでの各ステージに応じた人材育成のための取り組みを総合的に進めているところでございます。今後においても、本県産業界と教育界との連携を一層強めながら、県内全域で産業ニーズに対応したすぐれた人材を継続的かつ安定的に育成、輩出できる体制の構築に積極的に取り組んでまいります。
 次に、競馬組合問題についてでありますが、競馬振興公社の基本財産の取り崩しとコスト削減については、競馬組合は新計画の枠組みに沿って売り上げに応じたコスト調整を実施しており、賞典費についても、他の経費と同様に売り上げの減少に応じて引き下げたところでございます。
 一方で、調騎会と厩務員会から、馬資源確保のために公社の基本財産を活用すべきとの要望が出され、公社の基本財産の多くが調騎会と厩務員会の寄附で造成されたものであること、また、公社設立の目的が岩手競馬の振興であることなども踏まえ、公社において検討した結果、馬資源の流出を防止するための公社独自の事業として、出走した競走馬に奨励金を交付しているものでございます。再建途上にある岩手競馬にとって馬資源確保は極めて重要な課題と考えており、賞典費の引き下げによる馬資源の流出をできるだけ防止するために行われている今回の措置はやむを得ないものと考えています。
 なお、今回の措置はあくまで臨時的なものであり、来年度に向けては、競走計画や賞金体系を抜本的に見直し、馬資源の流出を防止する観点から、できるだけ出走手当を確保する方向で検討してまいりたいと考えています。
 また、公社の基本財産の取り崩しを構成団体融資の返済に充てるべきとの御指摘については、公社が岩手競馬の振興に寄与することを目的として設立された法人であり、その基本財産は法人設立の目的達成のために活用されるべきものでありますこと、及び今回の公社からの奨励金の制度の財源は、公社の基本財産の中でも、調騎会と厩務員会から寄附された部分を充てているものでありますことなどから、今回の公社の基本財産の活用方法は適切なものと考えております。
 次に、道路特定財源についてでありますが、平成18年度の県の道路予算約520億円のうち、道路特定財源で賄われている分が約380億円で、全体の約73%を占めています。仮に、本則の税率、1.2倍から2.5倍高くなっている暫定税率が廃止されますと、道路整備の貴重な財源が大幅に減少するため、今後の道路整備に大きな影響が出るものと見込まれます。道路は、ものづくり産業や観光産業などの振興を図り、安全で安心な生活を支える最も重要な社会資本でありますことから、地方の道路整備を着実に進めるため、道路特定財源については、現行の暫定税率を維持しつつ、受益者負担の趣旨にそぐわない一般財源化をすることなく、道路整備の財源として確保するとともに、地方公共団体への配分割合を高める必要があると考えております。
 このような認識のもと、全国知事会における提言活動に加え、去る10月17日には、国土交通大臣を初め財務省、岩手県選出国会議員に対して、道路整備財源を確保するよう要望活動を行ったところでございます。今後も、いろいろな機会をとらえて道路整備財源の確保に努めてまいりたいと思います。
 その他のお尋ねにつきましては企画理事及び関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔企画理事酒井俊巳君登壇〕
〇企画理事(酒井俊巳君) 広域振興局の自己完結性等に関するお尋ねでございます。
 平成18年4月に広域振興局の先行モデルとして設置されました県南広域振興局の組織体制は、広域振興局化による地域への急激な影響を避けるため、過渡的に総合支局は平成17年度までの地方振興局の役割、機能のかなりの部分を継承した組織となっていることなどから、本局、総合支局、行政センターの間での役割・機能分担などの面でわかりにくい組織となっているとの御指摘はいただいているところでございます。このため、こうした御指摘やみずから問題と認識したことなどについては、その都度、可能な限りの改善等の対応に努めてきたところでありますが、今後予定している県南広域振興局の組織再編、具体的には総合支局等の廃止、新たな行政センター等の設置に当たりましては、こうした御指摘等も踏まえまして、県民、市町村等にとってわかりやすい組織となるように十分検討してまいりたいと考えております。
 自己完結性については、これまでも可能な限り地方振興局において完結するよう、業務、権限の移譲が進められてきたところでありますが、広域振興局の設置とともに、県南広域振興局のみに、中小企業経営革新計画の承認業務、3ヘクタール以上ではございますが、都市計画法の開発行為の許可の業務など、新たに37の業務が本庁から移譲され、一層完結性は高まったというところでございます。
 また、工業振興や観光産業振興、各種団体の指導監査業務など、広域性、専門性の高い業務分野については、本局に業務及びマンパワーを集約した結果、完結性の向上も含め行政サービスの質的向上が図られていると考えているほか、産業振興戦略の策定、広域的なネットワークの構築など、県南広域振興局独自の取り組みを積極的に推進しておりますことから、そうした独自の取り組みを含めて自己完結性は高まっているものと認識しているところであり、地域においてもそのような御理解、評価をいただいているものと考えているところであります。
   〔地域振興部長藤尾善一君登壇〕
〇地域振興部長(藤尾善一君) 市町村合併後の住民の不安等への対応についてでありますが、合併市町では、合併効果の一つとして、共通の総務部門、議会事務局や教育委員会等を集約し、合理化を図っていると同時に、市町村がより専門的に行政事務に取り組めるよう、人的体制を強化することができたところでございます。その結果として、旧町村の役場が支所化して人数が減ることもございますが、こうしたことが、住民にとっては合併により旧町村部が寂れるのではないかとの心理的な不安の原因となっているところでございます。このことについては、合併前から合併市町は十分に認識し、周辺部に配慮したさまざまな取り組みを行ってきてございまして、十分に解決が可能であると考えているところでございます。
 例えば、宮古市では、地域の活性化のため、旧田老町には産業振興担当課の一部、旧新里村には教育委員会を置いて、一定の人員体制を維持して地域経済に配慮してございますし、花巻市では、旧市町村の区域よりも小さい単位である小学校区を単位として市内を26地区に分けて、小さな市役所─振興センターを設置しまして、職員と財源、交付金でございますけれども、これを配分して、住民主体で地域づくりに取り組む域内分権を実施いたしておりますし、一関市、久慈市におきましては、地域コミュニティ振興のための補助金を設けて地域住民の主体的な取り組みを支援しているところでございます。こういった取り組みが行われておりますけれども、このような周辺部対策の先行事例を、新市町まちづくりサポートセンターなどを通じて情報提供しながら、今後の合併協議にも生かしてまいりたいと存じます。
 次に、当面自立を唱えている自治体への対応についてでございますが、これからの市町村は、地方分権型社会において住民に最も身近な基礎自治体として、教育や福祉、まちづくりなどの行政サービスをきめ細かく総合的に提供する役割を担っていくべきものと認識してございますけれども、今後、こうした役割を小規模な自治体が担うことは、人口減少や少子・高齢化が進む中で、自主財源に乏しい財政体質や、1人で幾つもの事務をこなしている職員体制のもとでは、極めて大きな困難を伴うものではないかと考えているところでございます。
 当面自立という場合の当面につきましては、次の世代にいかに安定した行財政運営の体制を引き継ぐかが大切な視点でございまして、単に当座をしのげればよいというものではない。また、自立と言い得るためには、単に財政上赤字が発生しない、単年度収支が均衡することをもって自立ということだけではなく、市町村に期待されている役割を十分に担い、道路や下水道、各種施設の維持管理を含め必要な住民サービスを、国や県に依存せずに、将来にわたって持続的、安定的に提供していく確実な見通しが立つことが必要ではないかと考えておるところでございます。そのためには、市町村合併による行財政基盤の充実強化が不可欠と考えております。合併新法の期限まで残り2年4カ月を切っており、市町村合併について、今まさに真剣に議論をする時期に来ているものと認識いたしておりまして、県としては、地域における議論を強力に促してまいりたいと存じます。
 次に、権限移譲の推進についてでありますが、分権型社会におきましては、住民に最も身近な基礎自治体である市町村が、教育、福祉等の行政サービスをきめ細かく総合的に提供する市町村優先の行政システムの確立が必要であると認識いたしております。このことから、平成17年4月に権限移譲に関する指針を策定し、市町村の行政基盤の強化や住民生活に密接に関連した事務権限などにつきまして、市町村の意向に沿って移譲を進めてきたところでございます。
 その結果、これまでに1、161項目、延べ7、142事務の権限移譲が行われたところでございますが、一つには、市町村と県の役割分担の考え方、権限移譲の意義や効果などが共有されていない、二つには、住民の視点が十分反映されていない、三つには、市町村の規模や体制等によって移譲項目の種類や件数に差異が生じつつあるといった課題があることも事実でございます。このような状況を踏まえまして、県では本年度、知事を座長とする岩手県分権推進会議を設置し、住民の参画のもとに、市町村と県の望ましい役割分担やその具体的な実現方策などについて検討を重ねてきているところでございます。
 今後、この会議におきまして、本年度末までに権限移譲等を推進するための基本計画を策定した上で、来年度以降、これに基づき個別に市町村との協議を行いながら、それぞれの移譲のための具体的なプログラムを策定するとともに、本年度、新たに盛岡市、花巻市、一関市を権限移譲モデル市町村として選定いたしまして、権限移譲の効果と課題を検証しつつ、その成果を他の市町村に波及させることなどにより推進してまいりたいと考えております。
 次に、新型交付税の影響についてでありますが、新型交付税は、算定の抜本的な簡素化を図り、交付税の予見可能性を高める観点から、人口と面積を基本とした簡素な新しい基準による算定方法として平成19年度から導入されたものでございます。その算定に当たりましては、単純な人口や面積を用いるのではなく、一定の補正を行った人口や面積を用いることによりまして、算定結果に隔たりが生じないよう配慮することとされたところでございます。
 県内市町村への影響につきましては、平成18年度に国から示された方法による試算結果では、新型交付税導入による影響は、市町村全体の交付税算定の基礎となる基準財政需要額の0.15%の減少となっておりますことから、これを平成19年度にそのまま当てはめますと、基準財政需要額ベースでは4億6、000万円程度の減額と推測されるところでございます。
   〔総務部長川窪俊広君登壇〕
〇総務部長(川窪俊広君) 県分の新型交付税の影響についてでございますが、制度の導入に当たりまして、国が示した方法によって平成18年度の交付税算定結果に基づく影響額を試算しましたところ、本県分といたしましては、基準財政需要額ベースで4億8、000万円程度の増加と見込まれたところでございます。
 いずれにしても、新型交付税は基準財政需要額の算定方法における改革でございまして、全国総額に影響を与えるものではありませんが、今後、その比重が順次高まる見込みでありますので、本県のような地域が不利とならないように注視しながら、今後も必要に応じて制度の改善を国に働きかけていくとともに、あわせまして、地方一般財源が増加するように、地方交付税総額の復元・増額について引き続き国に働きかけていくことが必要と考えております。
   〔商工労働観光部長阿部健君登壇〕
〇商工労働観光部長(阿部健君) まず、ものづくり人材に係ります技術・技能の次世代への継承についてでありますが、現在、黒沢尻工業高校などに専攻科を設置し、より高い技術力を有する人材を育成しますとともに、県立の職業能力開発施設や民間の認定職業訓練校等におきましては、各種の訓練を通じまして地域企業への人材輩出に取り組んでいるほか、在職者訓練などを通じまして地場企業の就業者の技術力強化にも取り組んでいるところでございます。また、産学官が連携したものづくりネットワークの中では、技術継承を重要な視点として、高等学校への高度熟練技能者の派遣や企業でのインターンシップの実施、地場企業の若手従業員を対象としたものづくり塾などを開催しているところであります。
 今後におきましても、これらキャリア教育など企業と学校機関との連携を強めるとともに、今年度から国の助成事業として始まりました企業が行う実践型人材養成事業の活用促進も図りながら、技術・技能の継承と人材の育成支援に努めてまいりたいと考えております。
 次に、雇用対策についてでありますが、本県の雇用情勢につきましては、有効求人倍率が平成13年度の0.41倍を底に、平成18年度には0.78倍まで回復したものの、直近の本年8月から10月までの3カ月につきましては連続して前月の水準を下回るなど、雇用情勢は弱い動きとなっております。また、県北・沿岸地域におきましては依然として厳しい状況が続いているものと認識しております。
 このため、現在策定中の新しい地域経営の計画においては、雇用環境の改善に重点的に取り組むこととしており、産業振興施策を積極的に推進するとともに、人材の育成とあわせ、相互のマッチングを促進しながら雇用の場の創出に取り組んでまいる考えであります。特に県北・沿岸地域につきましては、ものづくり産業、食産業、観光産業の展開、地域の核企業への事業支援、同地域の特性を生かした企業誘致への取り組みなど、これらの産業振興施策をしっかりと推進し、雇用の場の創出が図られるよう努めてまいる考えであります。
 次に、フリーター対策についてであります。
 フリーター化の防止に向けましては、正規雇用の拡大など雇用環境の改善が前提でありますが、若年者本人がしっかりとした勤労観、職業観を身につけることも重要であり、そのためには、小・中・高等学校等のそれぞれの段階に応じたキャリア教育を地域や産業界と連携しながら推進していくことが必要と考えております。また、早期離職がフリーターの原因になりやすいことから、県といたしましては、新入社員向けセミナーの開催や年度当初におけるエリアジョブコーディネーターの事業所訪問を通じた新規就職者へのフォローを行うなど、職場定着に向けた支援をしているところであります。
 一方、フリーターへの支援につきましては、ジョブカフェいわて等を拠点とし、キャリアカウンセリング、社会人基礎力養成セミナーの開催などを通じ、若年者本人の職業の適性把握やスキルアップ等の就業支援サービスを提供するとともに、日本版デュアルシステム訓練などの実践型のインターンシップを通じまして能力向上を図り、就業に向けた支援をしているところであります。
 次に、障害者の職業的自立を図るための支援についてであります。
 県におきましては、チャレンジド就業支援事業として、障害者を対象として、能力や適性に応じた多様な職業訓練を企業やNPO法人などに委託して実施しているほか、県内5カ所に設置されている障害者就業・生活支援センター等において障害者の就業に係る相談や職場定着支援を行っているところであります。
 障害者の一般雇用への移行が進む中で、地域に根差した支援体制の強化が必要とされており、今後は、地域の福祉、労働、教育等の関係機関が連携した就業支援のネットワークを県内各地に構築するとともに、障害者就業・生活支援センター等を現在の5カ所から9カ所に増設することを通じて、地域レベルでのきめ細かな就業支援に努めてまいりたいと考えております。
   〔農林水産部長高前田寿幸君登壇〕
〇農林水産部長(高前田寿幸君) 水産業の振興についてでありますが、まず、地域営漁計画の取り組み状況及び事業の進捗状況につきましては、養殖漁場の生産性の向上や担い手の確保育成等を図るため、養殖業の盛んな県内の21漁協を対象に地域営漁計画を策定することといたしまして、平成18年度は田老町漁協など5漁協が計画を策定いたしまして、本年度は残りの16漁協の計画策定を支援しているところでございます。
 また、地域営漁計画に基づく養殖施設の整備を支援するため、平成19年度から実施しております地域営漁計画推進特別対策事業につきましては、本年度、広田湾漁協など4漁協のカキ、ホタテガイ、ワカメの養殖施設整備について助成したところでございます。
 次に、ナマコの増産についてでございますが、近年、中国を中心に干しナマコの需要が急速に拡大し、ナマコは新たな増養殖対象魚種として有望でありますことから、本県漁業と水産加工業の振興を図るため、ナマコの増産体制の確立に向けて本年度から本格的な取り組みをスタートさせたところでございます。
 本年度は、水産技術センターの研究員を栽培漁業協会種市事業所に駐在させ、平成20年度を目標に30ミリサイズの種苗を10万個生産できる技術の開発に取り組むとともに、漁協との連携のもと、県内22カ所で天然資源の分布調査を行ったほか、種苗放流の適地や漁獲方法等を検討するための基礎データを収集したところでございます。来年度におきましては、引き続き種苗量産技術の開発に取り組むとともに、今年度の調査結果を踏まえて種苗放流効果の実証試験を行ってまいりたいと考えております。こうした成果を踏まえまして、平成22年度までには具体的な種苗放流効果を明らかにして、できる限り早期に本格的な増産体制を構築し、ナマコをアワビ、ウニに次ぐ本県栽培漁業の中核魚種として育成してまいります。
 次に、水産技術センターが北里大学水産学部と共同開発したマツカワの光養殖技術の活用についてでありますが、この技術は、マツカワの種苗生産において緑色や青色の光がマツカワの成長を促進させ、赤い色の光を当てると雌雄の均等化に効果があるというものでございまして、本年11月までにこれらの技術の特許を出願したところでございます。
 このような光の波長と水産動物の成長などとの関係の研究は新しい分野の研究でございまして、今後におきましては、マツカワの種苗生産段階はもとより、本格的な養殖にも生かすことができるよう、新たな飼育装置の開発など実用化に向けた研究開発を推進するとともに、アワビなど他の魚種への応用の可能性につきましても具体的に研究してまいります。
 次に、国が森林整備関係事業として措置した追加予算に対する県の対応についてでございますが、国が措置いたしました追加予算765億円のうち、国有林や緑資源機構事業を除く都道府県対応分はその4分の1に当たる185億円となっております。このうち本県には、現時点で国の平成18年度補正予算に対応する分として1億2、000万円、また、平成19年度追加予算に対応する分として4億1、800万円、合わせて5億4、000万円の内示がございました。これらについては全額平成19年度予算で措置しているところでございます。この結果、今年度の本県森林整備関係予算は、平成18年度繰越分も含め、昨年度の事業実績に比較し、22%増となる総額23億2、000万円を確保しているところでございます。
 次に、今後の民有林の森林整備についてでございますが、本県では、平成17年に岩手県間伐推進計画を策定し、間伐の推進に鋭意取り組んでいるところでございますが、長期にわたる木材価格の低迷による森林所有者の経営意欲の低下や間伐に要する経費負担の問題等から、間伐の実績は計画の目標に対して63%にとどまっております。このため、今後、間伐等の森林整備を進めるためには森林所有者の自己負担を軽減することが重要と考えており、県では、昨年度から間伐作業を含め地域単位で森林経営を担う地域牽引型経営体を育成しているところであり、これらの経営体が中心となって行う施業の団地化や機械化により間伐の一層の低コスト化を実現し、所有者負担の軽減を図りながら間伐を促進してまいりたいと考えております。
 また、国に対しましては、これまで全額公的資金で森林整備を行う制度の創設を提案してきたところでございますが、国では今年度、新たに民有林を対象に所有者負担を伴わない低コストな間伐をモデル的に実施する事業を創設したところであり、今後は、こうした事業を積極的に導入することにより健全な森林の整備を促進してまいります。
〇34番(平沼健君) ありがとうございました。
 二、三再質問させていただきます。
 まず、順番がちょっと変わるかもしれませんが、権限移譲について先ほど御答弁いただきました。この権限移譲、実はけさ、ある新聞に上がっておりました。権限移譲推進へということで県が支援交付金をつくったと。盛岡、花巻、一関ですね、こういうことで新聞に取り上げられております。こういうことで、やっぱり権限移譲をどんどんやっていくということはすばらしいことだと思っておりますし、こういう支援のあり方が本当にいいことだと思っております。ただ、盛岡とか花巻、一関、こういう大都市というか、そういうところはやっぱり人材も豊富だし、財源的にも他の市町村に比べればまだいいというか、余裕とは言わないけれども、そういうような中でこういう3カ所でもって県内全体の引き上げを図る、そのような思いだと思いますが、反面、こういうような地域以外の市町村、人というか人材というか、そういうようなところの問題がある市町村がたくさんあるわけだし、財源的にも大変な状況です。そういうところと並行してやっていけないものなのかどうなのか、それをお尋ねいたします。
 それから、森林整備に関連してお尋ねいたします。
 ただいま、所有者負担を伴わないものがありますよというお話をいただきました。これに力を入れていくということでございますので、本当にそれはすばらしいことだと思っております。特に岩手県の場合、7割弱、六十数%が民有林なわけです。その民有林の整備ということがやっぱり大事なことだし、難しい問題を現状では抱えておるわけです。先ほど壇上でもお話ししましたけれども、所有者の負担というものは幾らでも少なければ少ないほどいいわけですが、今までの民有林の間伐、除伐、そういうようないろいろな負担を見てみますと、やっぱり所有者負担というのは10%以下、五、六%というところが従来やってきたような形だというふうに私は認識しております。
 そういうような中にあって、この民有林に対して、先ほど御答弁ありましたけれども、特別交付税的なものができないものかどうか。そしてまた、一方では我が岩手県も、いわて森林づくり県民税というものがございます。これがいろいろな形で今、森林整備に活用されておりますが、この一部をこういうような形に振り向けることができないのかどうなのか、それもあわせてお尋ねしたいと思います。
 森林整備は従来から国、県も各市町村もやってきましたけれども、国有林、民有林に限らず、間伐された後の用材というか、価値のあるものは搬出されてこれが使われるということなんですが、未利用材といいましょうか、そういうものが切られた状態で山元にあるわけです。これは川下に搬出さえすれば、今すべてこれは原料として利用できる、そういうような時代にあるわけですけれども、そういう未利用材が山元に依然としてあると、例えば大雨の場合、それが二次災害の大きな問題になっておるのも事実なんですね。ですから、そういうような間伐された未利用材というものを運び出して川下に使わせるというか、そういうところまでを踏まえた森林交付税というか、そういうような形がとれないものかどうなのか、その辺をあわせてお尋ねしたいと思います。
 それから、最後に、知事から回答をいただきました競馬組合の問題でございます。
 知事も、やむを得ずという言葉を使われておりました。私もこの競馬組合、330億円の融資をしていますから、これは必ず継続しなければいけない、そういう思いでおります。ただ、先ほどお尋ねしましたとおり、コスト削減というのは、我々民間では、今回のようにトータルで7億8、500万円削減されたわけですので、本来であればそこまで追い詰めて、1回目からそこまでのコスト削減をした状態でスタートするというのが私が認識している事業の再建ということなんです。だから基本的な考え方の違いがそこにあるわけですけれども、これが例えば1回目からそういうような形でいけば、今ごろはもう十分に利益が出ておったということになろうかと思うんですが、その辺を踏まえながら、そしてまた、これもまた振興公社の基本財産、この財産というのは、やっぱりコスト削減だという位置づけというか、意識が全く私は相反する考え方なものですから、くどいようですけれども、再度その辺も踏まえながらもう一度知事の回答をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
〇知事(達増拓也君) 競馬組合のコスト削減を売り上げの減少に応じて年度途中に順次行ってきていることについてでございますけれども、平成19年度収支見通しをもう少し厳しく見積もるべきであったとの御指摘はこれまでの県議会でもいただいてきたところでございまして、結果として年度途中のコスト調整が必要になったことは見通しが甘かったと言わざるを得ないものと考えております。
 一方、今年度3次にわたって行ったコスト削減の累計額をあらかじめ当初予算や第1回目のコスト調整の時点で削減するという方式についてでありますが、今年度の年度途中のコスト削減は、例えば組合職員のボーナスを全額カットするなど、計画どおりの売り上げが実現できていれば削減しないことが適切であるものや、賞典費のように、馬資源の確保やレースの魅力の向上の観点からは一定の金額を必要とする性格のものについて、売り上げの低迷に伴いやむを得ず削減しているものなどがコスト削減の内容となっておりまして、競馬事業の安定的な運営や商品であるレースの質の維持向上などを犠牲にして、あらかじめコストを大きく削減しておくことは困難であり、また、馬インフルエンザのような予測できなかった事態に伴う売り上げ減少もコスト調整の対象とせざるを得ないということも考え合わせますと、今年度のように売り上げ実績に基づいて必要となる調整を重ねていくことが適当であると考えているところでございます。
 また、コスト調整をまとめていく実務の上で、競馬関係者や取引先企業も厳しい収支状況のもとで経営している中、具体的な根拠を示さずにあらかじめ一度に大幅なコスト削減を要請した場合、関係者の理解を得ることが難しいと考えておりまして、その意味でも現在の方式は合理的と認識しております。
 次に、競馬振興公社の基本財産の活用についてでありますが、公社が岩手競馬の振興に寄与することを目的として設立された法人であり、今回、活用する財源が調騎会と厩務員会から寄附されたものであることを踏まえ、年度途中の売り上げ減少に対応するためのやむを得ざる対策として出走手当の削減に対する補てん策を実施しているものであります。これに対し、構成団体融資は、平成18年度までの競馬組合の累積の負債330億円を構成団体からの融資に切りかえたものであり、構成団体融資は、公社の基本財産との関係で増減するような性格のものではないと認識しております。
 いずれにしても、来年度はこうした公社の基本財産の活用はできなくなりますことから、馬資源の確保にも十分留意しながら適切なコスト配分を検討し、収支が均衡する事業計画を取りまとめてまいりたいと思います。
〇地域振興部長(藤尾善一君) 規模の小さい市町村も権限移譲モデル市町村とするべきではないかという御提言でございました。この権限移譲モデル市町村制度につきましては本年度創設したところでございますけれども、県から市町村への権限移譲を円滑に推進するため、モデル市町村が行う先進的な権限移譲に関する事業に対して交付金を交付することによりまして、その取り組みを支援しようとするものでございます。今回、申請のあった3団体を選定したところでございますが、県としては、さまざまなタイプの市町村をモデルとすることが望ましいものと考えてございまして、規模の小さい市町村であっても、そういう小規模な団体なりの権限移譲の受け方、限られた体制のもとでの工夫、そういったようなものは他の同様の規模の小さい市町村にも参考になりますし、また、いろいろな課題を解決する上で非常に大きい力になるもの、そのように考えておるわけでございます。
 したがいまして、今後、この権限移譲モデル市町村は全体で5団体ほど予定しておりますけれども、今申し上げましたように小規模の町村も対象といたしておりますので、来年度以降については、こういった小規模市町村からもモデル市町村として申請が出てくるよう促してまいりたい、そのように考えております。
〇農林水産部長(高前田寿幸君) 森林整備に関連して3点お尋ねをいただきました。
 まず、1点目でございます。民有林の整備促進を図るために特別交付税のようなものを考えてはどうか、創設することを要請してはどうかというようなお話でございます。
 森林整備に関する国の支援制度の創設につきましては、私ども、平成17年から毎年国に対して全額公的資金による森林整備の制度化を提案してきたところでございまして、その結果、先ほどお答え申し上げましたように、国におきましては今年度から低コストの間伐を森林所有者の負担を伴わない形で行うモデル事業を創設したところでございますが、このほか、森林整備事業に対する県、市町村の負担を軽減する措置といたしまして、新たに平成20年度予算におきまして森林整備事業を起債の対象とする措置を今、国のほうで概算要求していると伺っております。こういったようなものがございまして、本県といたしましては、こうした施策をできる限り積極的に活用して、今後とも森林整備に努めてまいりたいと考えております。
 それから、2点目でございますが、いわて森林づくり県民税の活用についてでございます。
 森林整備は、申し上げるまでもなく、第一義的には森林所有者みずからが行うべきものでございまして、これを支援するための施策として既存の森林整備事業がございますが、御案内のように、長期にわたる木材価格の低迷等によりまして、所有者の意欲にゆだねるだけでは必要な森林の整備が行われなくなってきております。このため、この県民税によりまして、所有者みずから管理ができず、荒廃した森林で公益上特に重要かつ緊急に整備する必要のある森林を対象に、所有者にかわって県が森林整備を行おうとするものでございます。こうした県民税の趣旨を県民の皆様から御理解をいただき、税の負担をいただいて森林整備を行っておりますことからも、民有林所有者への補てんといったものへこの税を活用することは難しいと考えております。
 3点目の間伐に関する補助金の範囲の拡大についてでございますが、現行の補助制度におきましては、間伐材を林道や作業道まで搬出する経費に対しては助成を行っておりますが、市場や加工施設までの運搬経費については助成の対象となっていないところでございます。運搬経費の助成につきましては、資源の有効利用の観点からは効果が期待されるわけでございますが、流通経費に対する補助になることなどもございまして、林業以外の他の分野の事業と同様、これを助成対象とすることは難しいものと考えております。
 したがいまして、県といたしましては、間伐材利用を促進するためには、まずは伐採から搬出までの経費を極力削減することが重要と考えてございまして、先ほどお答え申し上げましたような地域牽引型経営体等の施業の団地化、機械化による低コスト化といったようなこと、それから、交付金の助成による高性能林業機械の導入、さらには森林整備事業による作業路開設に対する補助といったようなことなどによりまして間伐材の流通を促進してまいりたいと考えております。
〇議長(渡辺幸貫君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後5時37分 散会

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