令和5年9月定例会 第2回岩手県議会定例会会議録

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〇16番(菅野ひろのり君) 希望いわての菅野ひろのりでございます。任期最初の登壇の機会を与えていただいたことに感謝申し上げます。
 さきの議員の皆様と重複する点がありますが、御容赦いただきたいと思います。
 それでは、質問に入ります。
 知事の県政運営と政治家像について伺います。
 岩手県政150年を迎えた中、歴代知事の中で初となる5期目の当選をなされました達増知事、今後の活躍に御期待を申し上げます。
 令和5年2月定例会の佐々木順一議員の、歴代の知事をどう評価され県政を担当されているのかとの質問に対して、歴代の知事の事績を心にとめ、継承、発展させていくことが重要であり、先人に学び、その知恵を生かしていくことを常に意識しながら県政運営に当たっていると答弁されました。
 5期目の県政運営を担う知事は県政初であることから、今任期の活躍は、今後の県政史に残り、後世への一つの指針になるのだろうと思います。
 県政史上初の5期目となる長期政権を担う達増知事は、その責任と役割をどのように捉え県政運営に当たるのか、あわせて、リーダーとして目指す方向性など、達増拓也御本人のその政治家像とはどのようなものか伺います。
 次に、知事訓示について伺います。
 知事選では相手候補に約10万票の差で当選され、報道によると、今までの県政運営を評価するが86%、幸福に感じるは56.9%と高い評価であり、県民が、達増県政の刷新ではなく継続を求めた民意が反映された結果だったと思います。
 達増知事は県職員に向けた知事訓示の中で、選挙戦を通じて県民と知事との距離が一層近づいた、きずなが強まったと確信を示し、県職員の皆様に向けて、決定的に新しい関係のつなぎ直しと述べています。
 一般論として、長期政権では継続、安定した政権運営が行われやすく、一方での弊害は、国政で言えば、利権化した社会が続くことや、行政で言えば、職員などがそんたくし、批判や反対表明がしづらくなるという意見があります。
 私はこの訓示の中で、県職員の皆様へ達増知事なりの表現でメッセージを送られたと読み取っておりますが、知事は、県民の負託に応えるため、決定的に新しい関係のつなぎ直しと表現された意図はどのようなものであったのか伺います。
 次に、マニフェストプラス39について伺います。
 知事は、ことしの2月定例会で、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランをみずから主導して実現するためとの理由で出馬を表明されました。
 その上で、選挙戦においては、第2期アクションプランに加え、マニフェストプラス39を掲げ、さらに踏み込んだ政策を盛り込み、県民に訴えてまいりました。
 中身を見れば、県北地域に産業技術短期大学校や、沿岸地域にリハビリテーションセンターなど、地域の実情に応じた提案などは、知事が想像する今後の岩手県像について、ハード整備など具体策を示した印象を私は持ちました。
 知事が第2期アクションプランに加え、マニフェストプラス39を掲げたその政策的な狙いと理由は何か、県民計画との位置づけはどのようなものか伺います。
 次に、人口減少対策について伺います。
 第2期アクションプランの目玉は人口減少対策です。人口減少は全国の課題であり、その成果は国の政策に左右されますから、その指針となる県としての目標設定は大変難しい作業であると認識します。
 また、令和5年10月6日には、社会減ゼロの目標を2024年から2026年に2年先送りとの報道がありました。地方自治体のそれぞれの努力が必要であり、子育て環境を全国トップクラスの施策や出生率、女性の県外流出、所得の確保、出会いの場創出など、課題は多岐にわたります。
 多くの議員が取り上げておりましたので詳細は割愛しますが、このような見通しが難しい中、社会減ゼロという困難な目標を2年後にした根拠と、岩手県として、今後、人口減少に対する目標をどのように置き、その対策に力を入れ取り組むのか伺います。
 次に、財源確保策について伺います。
 政策推進に当たっては、財源確保策が重要であります。達増知事が知事に就任する前の平成18年度当時と令和3年度で比較すると、県税収入は、産業振興や個人所得の増加等により1、291億円から1、685億円へ30%以上増加し、財政調整基金残高は80億円から347億円へ4倍以上増加、一方、将来の財政負担となる県債残高は、臨時財政対策債を除き1兆2、100億円から7、400億円と6割程度の水準まで減少され、その着実な成果も達増県政が評価された一つだと考えています。
 令和5年度当初予算編成では、人口減少対策の強化など四つの重点項目に対し1、060億円の重点措置を行いました。四つの財政目標、令和10年度当初予算までに収支均衡予算を実現、プライマリーバランスの黒字を維持、公共施設に係る県民1人当たり負担額1万2、000円以下の水準を維持、財政調整基金残高の令和2年度水準の維持を掲げました。ほか、財源確保として、全国自治体では初めてとなるグリーン/ブルーボンドを発行するなど、新たな歳入確保策を講じました。
 一方で、マニフェストプラス39を実現していくためには、今後さらなる財源確保策が求められるのだろうと思います。
 達増知事は、マニフェストプラス39、第2期アクションプランを実現していくため、新たにどの程度の財源が必要と想定し、今後、その財源確保策をどのように考えていくのか、現状のお考えをお伺いします。
 財源確保には県内経済の動向も影響します。昨年度の歳入は法人税が増加し県財政のプラス材料となり、その背景には、産業集積が進む誘致企業の好業績の影響があったと認識しています。
 財源を確保し、第2期アクションプランに加えマニフェストプラス39に掲げる新たな事業や政策を推進するためには、企業業績を初めとした県内経済の動向が大きく影響しますし、昨今の円安、物価高、新たなイスラエル、パレスチナ情勢など世界情勢が極めて不安定な中にあって、海外の動向に影響を受けやすい半導体産業の現状と見通しなどを的確に把握し、さまざまな影響を捉えておく必要があるのだろうと思います。
 ちなみに、キオクシア岩手株式会社では、業績悪化が続き初の早期退職募集と経営統合の報道もありました。
 一方で、そのような海外の動向に影響を受けにくい分野や産業、企業誘致などにも力を入れていく必要もあるのだろうと思います。例えば、本県の強みを生かした食品加工産業や、県央地域を中心としたヘルスケア産業などが挙げられるのだろうと思います。
 県は、産業集積が進む自動車、半導体関連産業の現状と県内経済へ与える影響をどう捉えているのか、また、今後のものづくり産業の方向性について、新たに力を入れていくべき産業も含めて、どのように考えているのか伺います。
 次に、産業集積に伴うインフラ整備について伺います。
 機会があるごとに発言させていただいておりますが、私は産業集積拠点と県内の物流のアクセス網の向上、県内港湾の活用が、岩手県経済を好循環にしていく一つの要因と捉えています。
 現在、県南地域では、自動車産業や半導体産業の集積が進み、奥州市では、さらに工業団地が拡張され、県が進める北上川バレープロジェクトは県内経済や雇用、若手の高所得などへ大きな成果を上げているものだと承知しています。
 現在、県内工業で使用されている部品、資材等の原材料は、主に仙台港や京浜港を経由し、移出入されているのが現状の中で、本県では、東日本大震災津波以降、釜石自動車道等の横軸が整備され、釜石港では、ガントリークレーンの整備によってコンテナ取扱高が上昇し、沿岸地域と内陸地域を結ぶ物流ルートが形成されています。
 まだまだ課題はあるものの、釜石市を初めとした沿岸地域の経済やドライバーの働き方改革など、このルートを活性化させていくことには、岩手県経済の大きな可能性を秘めていると私は考えています。
 関係自治体では、北上金ケ崎パシフィックルート整備促進期成同盟会など機運醸成への動きが少しずつ出始めています。港湾活用に向けた内陸地域と沿岸地域を結ぶ道路網の整備をどのように捉えているのか、認識を伺います。
 次に、工業団地の道路網の整備について伺います。
 工業団地が拡張することによって雇用増加や宅地需要増加と建設などメリットが挙げられますが、工業団地造成に伴う近隣環境への影響と変化も挙げられます。
 特に懸念されるのが通勤アクセスの改善です。例えば、奥州市の江刺工業団地では、新規に1、400名の雇用を見込む拡張の中で、現状であっても朝晩の通勤渋滞が発生している状況です。特に懸念されるのは冬季期間であり、勾配の坂を1車線で通勤する箇所やロードヒーティングもない箇所もあることから、市と連携しながら冬季期間への対策強化、右折車線の整備、長期的視点をもって結節点の道路網の拡張を含めて抜本的に解決すべきではないかと考えています。
 県は、江刺工業団地の渋滞の現状をどのように捉え、今後の改善の必要についてどう考えているか伺います。
 次に、達増知事の県政運営の力点について伺います。
 私が期待するのが、全国トップクラスの子育て支援、海外戦略、物価高騰対策の3点です。
 まず、子育て支援であります。達増知事の選挙応援では、泉房穂泉前明石市長が駆けつけ、子育て支援策について県民集会や街頭、さまざまな集会にて政策論が交わされました。
 市町村ではありますが、明石市では、岩手県が行っていない支援として、学校給食の無償化やゼロ歳児見守り訪問、おむつ定期便など紙おむつなどの赤ちゃん用品を生後3カ月から満1歳の誕生月まで毎月無料でお届けしています。
 私は、子育て政策は全国一律に向上させていくべきと考える立場でありますが、一方で、市町村の意向と歩調を合わせながら、先進的な取り組みなど、県がリーダーシップを発揮し、引き続き全国トップレベルの子育て政策を推進していただきたいと考えます。
 岩手県では、今後どのような子育て支援策の充実を行っていく考えか伺います。
 次に、海外戦略についてです。
 達増知事は、選挙期間中に、ニューヨークタイムズ紙で紹介されたPR効果の全県への波及などへの期待を感じ、本年度中にさまざまな手を打たなければと感じたと積極的に取り組む姿勢を見せており、5期目の取り組みの中で、海外への岩手県のPRをテーマに掲げました。
 ニューヨークタイムズ紙、大谷翔平選手の活躍等により注目される岩手県。インバウンドなど呼び込む観光施策と打って出る農林水産物を初めとする県産品の輸出の二刀流であるのだろうと思います。
 県は、海外戦略をどのように行っていくつもりか、インバウンドに関する観光施策、農林水産物等の輸出戦略をどのように進めていくのか伺います。
 次に、物価高騰への対応について伺います。
 達増知事は、選挙戦、記者会見、その他さまざまな場面で、燃料費、物価高騰に対して対策の必要性を述べられております。
 令和5年10月3日、商工労働観光部発表のエネルギー価格・物価高騰等に伴う事業者の影響調査結果では、エネルギー価格、物価高騰について、約9割が影響ありとしています。ここ数年では、岩手県内のレギュラーガソリン価格は、2020年3月、137.2円の底値に対して値上がりが続き、現在は、2023年9月、178円と、40.8円高い状況です。
 岩手県議会としては、原油価格引き下げのためトリガー条項発動について、希望いわてを初め、他会派共同で意見書を提出しました。
 一方で、国の動向を見れば、政府・与党自由民主党は、トリガー条項の凍結解除ではなく補助金を続けていますが、その効果は出ていないと言わざるを得ません。補助金の支給期間は4回延長され、措置した予算は6兆円を超えています。
 この先もガソリン高騰が続けば、政府は補助を終了することが難しく、新たな財源が必要になるおそれがあるとも言われています。現在の報道では、ガソリン補助金の来年3月末までの延長を検討しているとのことであります。
 県民の生活は本当に苦しい状況です。県は、エネルギー価格、物価高騰支援策について、どのように国へ要望、働きかけを行い、今後、生活者、県内事業者へ支援を行っていく予定か、具体的に伺います。
 次に、第1次産業の振興について伺います。
 まずは、酪農振興についてであります。
 エネルギー価格、物価高騰の影響は農業分野でも広がっております。特に厳しいのは、酪農、畜産現場であります。
 酪農現場では、御存じのとおり、飼料価格の高騰、生産コストの増大、生乳需給環境の悪化、乳用牛の子牛取引価格の下落となり、過去に例を見ないほど極めて深刻な事態となっています。その中、県は酪農家626戸を全戸対象に訪問し、現状のヒアリングを行っており、この対応については高く評価するところであります。
 そこで伺いますが、ヒアリング結果から、酪農現場の現状と課題をどのように受けとめ、その課題に対しどのような対策を講じていくのか伺います。
 次に、肉用牛振興について伺います。
 和牛子牛価格は、県南市場では、令和4年度平均64万6、481円が、令和5年9月市場では49万2、429円、前年同月比で約75%と価格下落がとまりません。
 県は、岩手県酪農・肉用牛生産近代化計画で、1戸当たりの飼養頭数について肉用牛で全国最下位と、全国に比較して経営規模が小さく、生産コストが高く、また、小規模な経営体を中心に離農が増加していることから、本県の畜産の生産基盤を維持、拡大していくためには、経営規模の拡大や生産性の向上が必要としています。
 また、県は、同計画の中で、肉専用種繁殖経営の目指す姿として、家族、複合経営、例として20頭でありますが、1頭当たり66万円の売り上げ、コストを約34万円から40万円としています。
   〔副議長退席、議長着席〕
 あくまで指標というのは理解しますが、昨今の農業情勢の実情とかけ離れていると思います。
 私は、この計画の中では、規模拡大ありきの政策に強い危機感を持っています。
 繰り返しになりますが、飼料高騰、肥料価格も上昇、トラクター等農業機具に使用する軽油価格も上昇、子牛価格は50万円を切っている状況では、経営規模が大きければ大きいほど倒産リスクが上昇しているのではないでしょうか。
 経営者の危機感が強いことからも、飼料価格高騰支援策はもちろんのこと、利子補給のような経営支援対策から、さらに踏み込んだ経営支援としてゼロゼロ融資のような貸付制度の検討も必要ではないかと考えています。
 県は、物価高騰、子牛価格の下落等に伴う畜産経営の現状をどのように把握し、今後の経営への影響をどのように捉え、対策を具体的に講じていくつもりか伺います。
 次に、稲作振興について伺います。
 岩手県の県産米は、品種別作付面積がコシヒカリに続いて全国2番目に多いひとめぼれが主軸であり、岩手県産米全体の評価を上げる役割の一つとして、ブランド米、金色の風、銀河のしずく等があると理解しています。
 米生産の食料安定供給は、食料安全保障上の岩手県としての責務と役割であり、現状、全県でブランド米を作付するのではなく、それぞれの生産条件に適した安定した作付と、販売戦略に基づいたブランド米戦略を行っていくことが重要だと考えています。
 農業は、米の品種一つをとっても、土壌が粘土質、砂地、水はけがよい、繊細な土壌条件や水質、気温等が影響し、そこに長年の経験や、近年はデータに基づいた栽培技術が加わることで、安定した高品質な米生産ができています。
 例えば、県南地域の課題として農業生産者から求められているのは、栽培技術が定着しているひとめぼれの生産を安定的かつ高価格帯で販売を行っていくことであり、特に、ひとめぼれ特A復活のための原因解明と対策、それに伴う再評価が求められております。
 ブランド米においては、銀河のしずくは好調である一方、金色の風の倒伏対策等の品種改良、さらなるつくりやすさや収量の増加が必要です。
 ブランド米の位置づけ、ひとめぼれの生産の取り組み、今後の県産米の販売戦略について伺います。
 次に、水田の畑地化について伺います。
 水田活用の直接支払交付金の対象となる水田の扱いが変わり、令和4年から令和8年までの5年間に一度も水張りが行われていない農地は、令和9年から交付金の対象となりません。特に中山間地域が多い岩手県にとっては、この制度改正は、小規模農家や農村地域を崩壊させるものであり、私は到底認めることはできません。
 一方で、水田を畑地化し本作化に取り組もうとする農家にとって、畑地化支援の10アール当たり14万円から17.5万円、ほか定着促進支援金や土地改良区の地区外決済金等支援の産地づくり体制構築等支援を含めるとかなり大規模な畑地化予算であります。
 懸念されるのは、実際に水田から畑地化を誘導し、大豆、小麦を作付し、品質や採算として岩手県の実情に合ってくるのかという疑問です。ちなみに、大豆作付には、水田と異なり水はけのよい土壌が求められたり、調整施設や新たな投資も必要であり、小麦においては、例えば地元江刺では土壌が合わないことから作付は皆無であります。猫の目農政と言われる愚策とならないようにしていただきたいと思います。
 県は、水田から麦、大豆の畑地化に向け、どの程度拡大していこうと考え政策誘導していくつもりか、また、畑地化事業の現状と課題、今後の見通しを伺います。
 次に、次世代を担う若手農業者の教育機関、農業大学校について伺います。
 岩手県立農業大学校は、農業、農村が必要とする高度な専門的知識と技術、幅広い教養、国際性を身につけた有能な農業の担い手となり、地域社会を発展させる上でのリーダー的役割を担い得る農業者を育成する実践的な教育機関であり、令和5年度は県内から78名、県外から24名、合計102名の生徒が入学しています。
 前任期で私は視察に伺わせていただきましたが、畜産などスマート農業の導入など、先進技術の習得も行っており、設備導入は進んでいるものの、職員室、教室や学生寮にはクーラーがなく、大教室は雨漏りがある状況で、老朽化など課題は多いと感じました。
 ことしも猛暑日が続きました。炎天下での農作業、教室、宿舎に戻っても高温では、体が休まるどころか、熱中症の危険性は高まるばかりです。
 農業大学校の今後の整備計画について伺います。
 次に、水産業の振興について伺います。
 岩手の魅力は、雄大な地形と海流の恩恵、山々から豊富な栄養を運ぶ852本の河川がもたらす三陸の海岸と漁場です。
 岩手県では水産業リボーン宣言を発し、より一層の水産振興を進めておりますが、御存じのとおり、本県の主要魚種は不漁が続いており、先日は宮古市の水産加工会社が倒産するなどの影響が出ています。
 また、秋の味覚のサンマは、ここ数年全国的に不漁が続いていて、大船渡市の水揚げ高は、昨年は3、054トンと前の年を24%上回りましたが、依然として低い水準とのことです。ほか、震災前と比べ、サケは2%、スルメイカは11%と厳しい状況です。
 対策として、単価が大きいサケの資源回復を行いながら、新たに県内ではサケ、マス類の海面養殖の取り組みが進み、沿岸地域では久慈市、宮古市、大槌町、釜石市、山田町など広がりを見せています。
 他都道府県では、佐賀県唐津市のブランド魚、唐津Qサバの養殖に人工知能を導入する試みが行われており、人工の餌を与えるため寄生虫アニサキスの心配がほとんどなく、給餌についてはスマートフォンでの遠隔操作を行っているとのことであります。
 私は、自然環境が大きく変化する昨今、海面養殖や内水面養殖などへの取り組みや先進技術への投資を行いながら、次世代の漁業のあり方を模索していくべきだと考えますが、水産業リボーン宣言の取り組み状況と、今後の海面養殖の可能性について伺います。
 次に、ILC誘致活動について伺います。
 ILCの誘致活動をめぐっては、昨年2月、文部科学省の有識者会議が誘致に関する日本政府の関心表明を前提とし、かつ、提案された規模によるILC準備研究所段階への移行を支持できる状況になく、時期尚早であると言わざるを得ないとする議論のまとめを公表したことに加え、コロナ禍による自粛が重なり、セミナー開催など理解増進の機運や機会が失われ、現在も市町村などの関連自治体を含め、誘致活動が低調となっているのではないかと懸念しています。
 一方で、政府の関連予算が令和5年度では9.7億円と令和4年度から倍増となるなど着実に進展している中で、改めて県内において見える形での誘致活動を行い、県民はもとより、国民的な機運醸成に向けた取り組みを行う必要があるのではないでしょうか。
 今後のILCに関する取り組みについて伺います。
 最後に、県内の不登校の実態に対する取り組みについて伺います。
 令和4年度の児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果によりますと、本県の不登校児童生徒数は2、588人と前年度より318人増加し過去最多でありますが、1、000人当たりの不登校児童生徒数は、小学校は全国で1番目、中学校は3番目に低く、高等学校においても全国を下回っている状況であるとのことであります。学校現場の早期対応が機能しているようにも見えますが、一方で、人数の多い少ないではなく、誰ひとり取り残さないことが重要だとも思えます。
 岩手県では、児童生徒の様子の変化を捉えるよう、配置型スクールカウンセラーに加え、本年度新設したエリア型カウンセラーも有効と考えますが、全県で14名であることから、より一層の体制拡充が求められます。
 また、児童生徒の個々の状況に応じて、教育支援センター、学びの多様化学校―いわゆる不登校特例校、フリースクールなどの民間施設、ICTを活用した学習支援など、多様な教育機会を確保していくことも重要です。
 前任期に訪問させていただいた花巻市の教育支援センターでは、学校と連携しながら、児童の状況について、学校と情報交換しながら双方で対応に当たっていることが高く評価され、また、今後については、市町村単位にとどまらず、広範囲において教育支援センターの受け入れも必要であり、安定的な運営のため財政支援も必要だという意見をいただきました。
 そこで伺いますが、県は不登校の要因をどのように捉え、今後、対策をどのように進めていくか伺います。
 また、義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律の観点から、教育支援センターや民間施設との連携による不登校児童生徒の支援が仕組みとして必要ではないかと考えますが、県の認識を伺います。
 以上で質問を終わります。答弁によっては再質問をさせていただきます。御清聴いただきまことにありがとうございました。(拍手)
   
〇議長(工藤大輔君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
   
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 菅野ひろのり議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、県政運営についてでありますが、先般の知事選挙において、多くの民意を得て、県政史上初めての5期目を迎えましたことは、これまでの県政に対する評価と今後の期待の大きさのあらわれと受けとめております。
 このような県民の思いに応えるため、いわて県民計画(2019〜2028)を基軸に、県民一人一人に寄り添った施策を迅速に展開するなど、希望郷いわての実現に向け、県民本位の県政を力強く進めてまいります。
 また、目指す政治家像についてでありますが、知事は県民とともにあることが重要と考えており、多くの県民と接し、対話し、県に関する情報の共有と県政への参画促進に努めるとともに、歴代知事の事績を継承し、発展させ、先人に学び、その知恵を生かしながら県政運営に当たっていきたいと考えております。
 次に、知事訓示についてでありますが、私が選挙で県民から受けた負託は、今後4年間の知事職に対する負託であり、その意味では、新しい知事が選ばれたのと同様であると考えております。
 県職員と私との間には過去16年間の関係の蓄積がありますが、改めて県民の声や民意というものを第一に考え、新鮮な気持ちで県職員に臨むべきものと考えております。
 特に、5期目という岩手県政において初めてとなる県民からの負託を受けた知事として、私自身、初心に返り県政を進めていきたいと考えており、職員にも、県民本位、能力向上、明朗快活、法令遵守、地域意識という岩手県職員憲章の五つの信条に常に立ち戻るなど、初心を忘れずに県政を推進ほしいという思いから訓示したものであります。
 次に、マニフェストについてでありますが、このたびの選挙でお示ししたマニフェストプラス39は、現職の知事として、いわて県民計画(2019〜2028)や第2期アクションプランの推進をマニフェストまたは公約とすることに加え、新たな施策を求める声もいただいたことから、さらにプラスとなるような政策を掲げたものです。
 現在、マニフェストプラス39の各項目について、財源の問題や既存の施策との関連等を全庁で検討しているところであり、市町村を初め、関係団体とも連携、調整を進めながら、その具体化を図ってまいります。
 次に、財源確保策についてでありますが、議員御指摘のとおり、財政の健全化を進めつつ、政策の裏づけとなる財源を確保していくことは重要であり、これまでも事務事業の精査を通じためり張りある予算編成などにより、限られた財源の重点的かつ効果的な活用に努めてまいりました。
 今後も、県有資産や各種基金の有効活用、ふるさと納税や使用料の見直しなど、これまでの取り組みを一層強化しつつ、グリーン/ブルーボンドの発行など全国をリードする新たな財源確保手法についても積極的に導入を進め、必要な財源を確保してまいります。
 マニフェストプラス39等に盛り込んだ諸般の施策を実施するに当たり、実施方針や規模等について、今後具体的に検討していく必要がありますが、その際、例えば、四つの財政目標の達成状況や岩手県公共施設等総合管理計画における2040年度、令和22年度までの延べ床面積の見直し目標などを勘案しつつ、中長期的な取り組みの中で所要の財源及びその確保策についても、あわせて検討を進めてまいります。
 次に、子育て支援についてでありますが、人口減少に立ち向かうためには、要因となっているさまざまな生きにくさを生きやすさに変えていく施策の展開が必要であり、県としては、国の施策を待たずに、市町村との連携により、他県でも例の少ない第2子以降の3歳未満児を対象とした所得制限を設けない保育料無償化や在宅育児支援金の創設など新たな取り組みを展開し、積極的に独自の支援策に取り組んでおります。
 今後の対策については、先月、岩手県人口問題対策本部会議を開催し、少子化要因の詳細な分析結果等を踏まえ、結婚支援策の強化や、仕事と子育ての両立に向けた子育て支援サービスの充実などを今後の取り組みの方向性として掲げたところです。
 少子化対策の推進に当たっては、議員御指摘のとおり、市町村と県が課題や方向性を共有し、連携して取り組みを進めていくことが重要であり、市町村の状況や意見をこれまで以上に丁寧に酌み取り、地域ごとの少子化の要因のさらなる分析も進めながら、施策の一層の充実を図ってまいります。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部局長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔政策企画部長小野博君登壇〕
〇政策企画部長(小野博君) 人口減少対策についてでありますが、岩手県人口ビジョンでは、本県の社会減について、地域ブロック別で東京圏への社会減が最も多いこと、本県の社会減が最も少なかった平成7年は、東京圏に対し、本県は社会増となっていることなどを分析の上、明らかにしております。
 こうした状況を踏まえ、国が掲げる地方と東京圏との転入・転出を均衡の達成目標に呼応しながら、県独自の施策を進めることで社会減ゼロを達成することを、平成27年に策定した第1期の岩手県ふるさと振興総合戦略から基本的な考え方としてきております。
 このような中、国では、平成26年度以降、地方創生に取り組んできたものの、東京圏と地方との転出入均衡はいまだ達成しておらず、昨年改訂した国の総合戦略では、転出入均衡の達成時期を令和6年度から令和9年度に変更しています。
 このため、県では、こうした国の改訂や第2期アクションプランの内容を踏まえ、岩手県ふるさと振興総合戦略の計画期間の延長を含む改定作業を進めているところでございます。
 社会減ゼロについて、先ほどお話しした基本的な考え方に基づき、さらに対策を一層強化することで、国よりも1年早い令和8年度の達成を目指しているところでございます。
 改定作業を進めております岩手県ふるさと振興総合戦略では、若年層の県内就職やU・Iターン促進、若者や女性が活躍できる環境づくりや柔軟で多様な働き方の普及などを今後一層強化、拡充するとともに、デジタル技術を活用した施策を全般に盛り込むことや、ニューヨークタイムズ紙掲載の効果の全県域への波及などの新しい視点も取り入れることとしており、こうした県独自の施策を国の東京一極集中是正の取り組みに呼応しながら進めることで、社会減ゼロを目指してまいります。
 次に、物価高騰への対応についてでありますが、県では、本年6月に実施した令和6年度政府予算提言・要望におきまして、エネルギー価格・物価高騰への対応として、達増知事が農林水産省や経済産業省などの関係省庁に赴き、エネルギーの確実かつ安定的な確保、供給や、中小企業の事業支援、飲食事業者、農林漁業者等への支援、低所得者層や子育て世帯への支援につきまして、知事から直接要望したところでございます。
 また、達増知事が副本部長となっております全国知事会くらしの安心確立調整本部におきましても、今月上旬、物価高等に対応する総合経済対策に向けた提言を行い、エネルギー価格の安定等に向けて、大胆かつ強力な対策を講じるとともに、必要な財源を確保し適切に地方財政措置を講じるよう、国に要請したところでございます。
 本県におきましても、物価高騰対策は喫緊の課題でありますことから、これまで、LPガス使用者や低所得者層及び子育て世帯を初めとした生活者支援、中小企業者や運輸、交通事業者、介護、福祉、医療施設や農業者等への幅広い事業者支援などを実施してきたところであり、今定例会におきましても、追加対策として補正予算案を提案しているところでございます。
 まずは、これまで実施してきた支援策を必要な方に迅速かつ確実に届けていくとともに、現在、検討が進められております国の経済対策の動向を見きわめつつ、県としてもこれに呼応し、補正予算案の編成を含め速やかに対応してまいります。
   〔商工労働観光部長岩渕伸也君登壇〕
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) 今後のものづくり産業の方向性についてでありますが、自動車産業は、コロナ禍や半導体不足の影響で減産を余儀なくされてきましたが、現在は生産が回復してきております。また、半導体産業は、需要の拡大を背景に企業の新増設が活発化しているところですが、メモリについては、市況の減退により生産調整の動きも見られるところです。
 令和3年度の県内の製造品出荷額は約2兆7、100億円と、5年前と比較して約14%増加しており、出荷額全体の約4割を自動車、半導体関連産業が占めているところです。また、令和4年度の法人二税では、製造業の税収額が約100億円と、全体の約3分の1を占めるなど、ものづくり産業の成長が地域経済全体の活性化につながっていると認識しております。
 自動車産業においては、電子化、電動化やカーボンニュートラルへの対応が進められており、また、半導体産業も中長期的には市場の拡大が見込まれることから、引き続き県内経済を牽引する役割が期待されます。加えて、持続可能な県内経済の成長につなげるため、景気に左右されにくく成長が見込まれる医療機器関連産業を第3の柱と位置づけるなど、自動車、半導体に続く新たな産業の創出にも取り組んでいるところでございます。
 県としては、引き続き、完成品メーカー、地場企業、ものづくり人材など、地域の持つさまざまな強みを生かし、国際競争力が高いものづくり産業が総合的に発展していくよう取り組んでまいります。
   〔県土整備部長加藤智博君登壇〕
〇県土整備部長(加藤智博君) まず、産業集積に伴うインフラ整備についてでありますが、産業集積が進む県南地区の工業団地から釜石港などへの主要な物流ルートである釜石自動車道の江刺田瀬インターチェンジへのアクセスについては、国道4号から国道456号などを経由するルートにおいて、いずれも2車線が確保されているものの、地元市町から、幅員が狭い区間などに対し拡幅などの要望をいただいているところであります。
 県といたしましては、港湾のさらなる利用促進や産業振興のためには、インターチェンジへのアクセス向上が重要であると認識しております。
 釜石自動車道全線開通後の物流の変化や周辺の開発動向、要望区間の交通状況などを見きわめつつ、現在、北上金ケ崎パシフィックルート整備促進期成同盟会が実施しているルートの需要調査の結果も注視し、引き続き、地元市町とも情報交換しながら、江刺田瀬インターチェンジから北上金ケ崎地区へのアクセスのあり方について検討してまいります。
 次に、工業団地の道路網の整備についてでありますが、江刺中核工業団地と江刺フロンティアパークにおける渋滞の状況については、奥州市から市道南八日市新地野線の工業団地西口交差点から北側の区間において渋滞が発生していると聞いております。
 また、新たな工業団地の整備に伴い、通勤時間帯等においては、工業団地周辺のさらなる交通渋滞の発生も想定されることから、奥州市では、交通状況の現状把握と今後の交通量予測により、道路整備の必要性を明確に整理するための調査が進められております。
 渋滞対策としては、車線の追加や右左折レーンの設置などのハード対策のほかに、信号制御や時差出勤、公共交通の利用促進などのソフト対策が考えられることから、まずは、奥州市で行っている調査検討の状況を踏まえ、必要に応じて助言を行ってまいります。
   〔ふるさと振興部長熊谷泰樹君登壇〕
〇ふるさと振興部長(熊谷泰樹君) 海外戦略についてでございますが、これまで県では、海外展開に係る県の関連施策の基本方針として、計画期間を令和3年度までとするいわて国際戦略ビジョンを策定し、各般の海外関係施策を展開してきたところです。
 一方、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大のため、次期ビジョンの策定を延期しておりましたが、渡航規制の撤廃などを踏まえ、今年度、関係部局と連携し、その策定作業を進めております。
 ニューヨークタイムズ紙の記事において、盛岡市の景観だけではなく、住民や生活文化の豊かさが高く評価されましたことは、本県には、海外の人とも共有すべき価値や魅力があることを示しており、これらの魅力を世界に発信することは、本県の県内産業の振興や交流人口の拡大に大きな効果があるものと認識しております。
 次期いわて国際戦略ビジョンは、岩手県ならではの価値や魅力を強力にPRしていくという視点をより一層重視して策定を進めることとしております。戦略的なプロモーションによるインバウンドの拡大や、農林水産物等のトップセールスによる輸出促進、世界と岩手県のつながりを促進するネットワークの強化など、関係部局と連携し、さらなる海外展開を図ってまいります。
   〔農林水産部長藤代克彦君登壇〕
〇農林水産部長(藤代克彦君) まず、酪農振興についてでありますが、飼料等の資材価格の高騰や乳牛の子牛価格の低迷により、大きな影響を受けている酪農経営体の経営課題に応じた支援を強化していくため、農業改良普及センターにおいて、関係機関、団体と連携し、飼料価格高騰への対策や無利子資金等の情報を提供しながら、これまでに酪農経営体の約9割となる580戸の訪問を行ってきたところです。
 酪農経営体からは、飼料や肥料の価格高騰の影響が大きい、自給飼料の増産や乳量の増加、乳質の向上のための飼養管理の改善への要望が多く寄せられたことから、自給飼料の増産技術や乳量の増加等を図るための飼養管理技術について助言するほか、継続的な指導を希望する約80戸に対し、それぞれの経営体の課題に応じた指導を実施しているところです。
 県では、これまで、配合飼料価格の上昇分を補填する国の事業の活用や県独自に酪農経営等への影響を緩和するための支援を行ってきたところであり、今後とも酪農経営を初め、畜産経営体の資材高騰等の影響を把握しながら、さらに必要となる対策について、現在検討が進められている国の経済対策の動向も踏まえながら、機動的に対応してまいります。
 次に、肉用牛の振興についてでありますが、飼料や肥料等の価格が高騰する中、本年の和牛子牛の平均取引価格は、令和2年と比べ約2割低下しており、本県の肉用牛繁殖農家は、厳しい経営環境に置かれていると認識しています。
 肉用牛繁殖農家の経営安定に向けては、肉用子牛生産者補給金制度等の国のセーフティネットを活用するとともに、収益の主体となる子牛の生産効率を高めること、子牛が高い価格で販売されるよう良好な発育を確保することが重要です。
 このため、県では、肉用子牛生産者補給金制度に係る生産者積立金への支援を行うほか、資金繰りに重大な支障が生じないよう、金融機関に対し、適時適切な貸し出しや既往債務の返還猶予など、実情に応じた十分な支援を行うことを依頼するとともに、生産者に対し、国の農林漁業セーフティネット資金等の活用可能な資金を情報提供しています。
 また、県、農協等で組織する肉用牛サポートチームにおいて、分娩間隔の短縮や子牛の発育改善指導などを行っています。
 現在、国において、子牛価格の下落対策等が検討されており、県としては、こうした動向も踏まえながら、肉用牛繁殖農家の経営が安定するよう機動的に対応してまいります。
 次に、稲作振興についてでありますが、本県の米生産において、ひとめぼれは作付面積の約6割を占める主力品種であり、日本穀物検定協会の食味ランキングにおいて、県南ひとめぼれが特Aを23回取得するなど、本県を代表する主食用米の品種です。
 ひとめぼれは、食味ランキングにおいて、近年、A評価等とされていることから、農業研究センターが中心となった解析に基づき、今年度は、適期の田植えや気温変動に応じた水管理、リモートセンシング技術を活用した適期の稲刈りなどの指導を徹底してきたところです。
 また、いわてのお米ブランド化生産・販売戦略に基づき、米卸業者等と連携した販路拡大や輸出促進、生活スタイルに合わせた中食、外食等への販路拡大に取り組んでいくこととしています。
 引き続き、本県の主力品種であるひとめぼれ、フラッグシップとなる金色の風、銀河のしずくなど、県産米の高品質、良食味米生産等による売れる米づくりとともに、ブランド化による消費拡大に積極的に取り組んでいきます。
 次に、水田の畑地化についてでありますが、本県では、県、関係機関等で組織する岩手県農業再生協議会が策定した水田農業の推進方針において、小麦や大豆、野菜等を転換作物の重点推進品目として位置づけ、転換作物の生産は、水稲とのブロックローテーションを基本としつつ、収益性、作業性等の観点から畑地としての利用が望ましい場合には、畑地化を推進することとしています。
 畑地化は、生産者の意向や経営内容、地域の実情等を踏まえて実施していく必要があり、県として目標面積を設定することは難しいところですが、今年度、国事業の活用を希望する面積は約2、300ヘクタールとなっています。
 また、今年度は、全国的に国の事業への要望が多く、本県の事業採択は要望の約1割となっており、県では、国に対し、事業採択に必要な予算を十分に措置するよう要望しています。
 現在、国において第2次採択の手続が進められており、県としては、こうした国の動向を注視しながら、生産者が希望する畑地化の取り組みが円滑に進むよう支援してまいります。
 次に、農業大学校についてでありますが、農業大学校では、地域農業の発展を担うリーダーとなる青年農業者を育成するため、農業の専門科目の講義と実習、先進的な農業経営体での実務研修など、理論と技術を一体的に学ぶ教育を実践しています。
 また、農業大学校の施設について、これまで教育環境の充実に向け、スマート農業などの先端技術を習得できる環境制御型ハウス等を整備するとともに、生活環境の充実に向け、女子寮や食堂の改修、トイレの洋式化などを進めてきたところです。
 一方、農業大学校の施設は、昭和40年から50年代に整備されたものが多く、校舎の一部は50年以上経過しており、計画的に整備していくことが必要と考えています。
 このため、県では、農業大学校の将来的なあり方や計画的な施設整備の検討を進めるほか、国に対し、施設整備に対応可能な事業の創設を繰り返し要望しており、引き続き、必要な財源の確保に努めるとともに、農業大学校の教育、生活環境の一層の充実が図られるよう取り組んでまいります。
 次に、水産業リボーン宣言についてでありますが、サケ資源の回復について、昨年度は、北海道などからの種卵の確保に努めるとともに、大型で遊泳力の高い強靱な稚魚を生産し、放流実績は目標を上回る約9、300万尾となっています。
 ウニ資源の有効利用について、蓄養、出荷の取り組みが12漁協に拡大するほか、サケ、マス類の海面養殖について、今年度は6地区で約1、800トンと、前年度に比べ約1.5倍の生産実績となっており、来年度は8地区で約1、900トンの生産が計画されるとともに、さらに養殖試験の実施に向けた調整を行っている地区もあります。また、自動給餌システムや飼育している養殖魚の体重を推定するシステムなど、ICTの活用も行われてきています。
 サケ等の主要魚種が不漁となる中、三陸沿岸のリアス式海岸ならではの静穏域を多く有する本県の強みを生かしたサケ、マス類の海面養殖は、取り組む地区や生産量が着実に拡大しており、本県の水産業を活性化していく新たな取り組みと考えています。
 県としては、こうした新たな漁業、養殖業の導入を推進するなど、引き続き、関係機関、団体と連携しながら、水産業リボーン宣言の取り組みを積極的に進めてまいります。
   〔ILC推進局長箱石知義君登壇〕
〇ILC推進局長(箱石知義君) ILCの誘致活動についてでありますが、ILCについては、昨年2月の文部科学省の有識者会議の議論の取りまとめ以降、国内外の研究者により、国際協働による研究開発や政府間協議に向けた取り組みが進められています。
 ILCの誘致には、こうした取り組みの加速とともに、その多様な意義を広く発信し、国民的な機運を盛り上げていくことが重要です。
 県では、コロナ禍にあっても、講演会のウエブ配信などの工夫を行いながら理解促進に努めてきたところであり、行動制限が解除された今年度は、北上山地が建設候補地とされて10年となることも踏まえ、県ILC推進協議会等と連携し、相次いで講演会を開催いたしました。
 ほかにも、ILCに関する国際ワークショップの盛岡開催など関連する動きが活発化する中、関係団体や経済界等とともに国民的な機運を醸成し、日本誘致に向けた大きな流れをつくり出しながら、国家プロジェクトとしての誘致推進を国に強く働きかけるなど、全力で取り組みを推進してまいります。
   〔教育長佐藤一男君登壇〕
〇教育長(佐藤一男君) 不登校対策についてでありますが、令和4年度の児童生徒問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果によりますと、1年間に30日以上登校しなかった不登校児童生徒数は、小学校617人、中学校1、388人、高等学校583人、小・中・高等学校合わせて2、588人で、昨年度より318人増加しております。
 また、1、000人当たりの不登校児童生徒数は、小学校11.3人、中学校46.5人、高等学校20.1人となっており、いずれも近年増加傾向にあります。
 不登校の背景や要因は、コロナ禍による影響のほか、多岐にわたっておりまして、個々の児童生徒の状況も多様であります。
 県教育委員会では、スクールカウンセラー、ソーシャルワーカーの配置、24時間子供SOSダイヤル相談窓口の設置、教育支援センターやフリースクール等民間団体との連携を図る不登校児童生徒支援連絡会議の開催など、これまでの不登校対策に加え、今年度新たに教育事務所管内を統括するエリア型カウンセラーやソーシャルワーカーの配置、いじめ対応・不登校支援等アドバイザーの常勤化、1人1台端末を利用したこころの相談室の開設、市町村の教育支援センターのさらなる設置による相談、支援体制の強化などに取り組んでいるところです。
 先般開催しました不登校児童生徒支援連絡会議におきまして、国の動向や参加団体からの実践発表を通じた児童生徒の支援のあり方等、情報交換や共有を図るとともに、会議での意見を踏まえて、フリースクール等関係団体の情報を取りまとめ、県のホームページに掲載したところであります。
 今後、県教育委員会としましては、不登校児童生徒の学びの場や居場所の確保を進めていくため、県の教育支援センターの機能等の見直しを図るとともに、フリースクール等民間団体と連携しながら、児童生徒の一層の支援に取り組んでまいります。
〇16番(菅野ひろのり君) 藤代農林水産部長に2点再質問いたします。
 まず、農業大学校の関係であります。国に要望しているということで、具体的な見通しは示されなかったわけですが、実際に宿舎の整備や職員室のクーラーの整備をする、そういう中で予算の試算等はしているのでしょうか。
 また、これはずっと要望されているのでしょうけれども、どれだけの期間ついていないのですか。今、人口減少で交流人口の拡大や移住、定住に取り組んでいる中で、県外からも来ていただいて、岩手県の農業をこれからしっかり考えていく中で学んでいただこうとしている方々に、そういう環境も整備できないというのは、岩手県が農業県としてしっかりと対応できていないのではないかと思っています。
 昨今の熱中症等の危険も非常にある中で、私はリスク管理さえ問われる問題ではないかと考えています。もう一度、その現状、今後の見通しについて伺いたいと思います。
 もう一点であります。畑地化についてでございます。先ほど県からの2、300ヘクタールの要望に対して、国の採択は10%ということだったと答弁がありましたが、これは金額としてどのくらいなのでしょうか。
 そして、国の説明は、なぜ10%程度なのか、今後の見通しはどうなっているのか。といいますのが、これは水田交付金の見直しに伴って、国が畑地化に力を入れたわけですね。その中で、10アール当たり14万円ですから、田んぼを大きくするといったら1ヘクタール当たり140万円とか、それ以上の多額の金額を国は示して畑地化を促進するわけです。そして、手を挙げたのが2、300ヘクタールもあって、けれども採択は10%。
 これでは岩手県の農業―これはほかの都道府県もそうなのですかね。これではやっていけないと思います。その現状について伺いたいと思います。
〇農林水産部長(藤代克彦君) 2点御質問をいただきました。
 まず、農業大学校の整備についてでございますが、先ほど答弁申し上げましたとおり、農業大学校は大変施設が古くなってきておりますので、計画的に整備をしていかなければならないと認識しております。
 これにつきましては、例えば、ここ10年ぐらいを見ますと、平成27年度に体育館を新築したり、あるいは、令和2年度あたりにWi−Fi、施設系の整備をしたり、あるいはトイレを洋式化したり女子寮食堂を改修したりということで、計画性を持って実施してきているところでございます。また、これからも先ほどお話があったクーラーというようなものについても、計画的に整備を行っていく必要があると承知しております。
 また、さらに大規模な改修部分については、非常に費用がかかりますので、学生が研修する施設については、さまざま国庫事業がありまして、そういうものを積極的に導入しながら整備を行っているのですが、学生が学ぶ教室のようなものについては、現時点で対象となる国庫事業等がないので、何とか財源の確保ということで国に事業創設をお願いしているところでございます。
 引き続き、県としては財源確保に努めながら、農業大学校が、今の若い方をしっかり呼び込めるような魅力ある施設になるよう取り組んでいきたいと考えているものでございます。
 また、2点目、畑地化についてでございますが、金額については現時点で持ち合わせていなくて申しわけないのですが、面積ベースからいくと約220ヘクタールという形で、先ほど申し上げました2、300ヘクタールの10%。内容としましては、畑地化を希望されるものが、麦、大豆、野菜等の高収益作物と、あと飼料作物に分かれてくるのですが、今回採択されたのは、野菜等の高収益作物に位置づけられるものという形で、それが約10%程度ということでございます。
 これについては全国も同じような形で、ポイント制で採択が行われています。そういう高収益作物のポイントが高くて、全国から需要が多かったために、今回こういう結果になっているということです。
 さらに、今2次採択という形で、国のほうでいろいろ手続が進められていますので、県としては、国に対して予算の措置を求めているところでございまして、生産者の皆さんが希望する畑地化というものが採択されるように、引き続き取り組んでいきたいと思っているところでございます。
〇16番(菅野ひろのり君) 今、藤代農林水産部長から、高収益作物の野菜、そして、需要が全国的に多かったということでありますが、これは、そもそも小麦、大豆のメニューとして広げつつ、高収益野菜の採択しかないわけですね。岩手県としては、小麦、大豆ではなく高収益のところはやりますが、それ以外はまだですと。さらに、需要が多いから予算枠が政府としてしっかり確保できていないということですか。
 その国の状況と、10%しか採択できていないと、さらに、小麦、大豆に対しては、今年度、予算措置の見通しというのは国から示されているのですか。そこが重要だと思うのです。答弁をお願いします。
〇農林水産部長(藤代克彦君) 現時点では野菜等の部分の採択のみという状況になっておりまして、これについては、経済対策の中でも、こういった畑地化支援の部分について拡充するというところもありまして、国のほうで全体予算枠を拡充するのではないかと見込んでおります。本県で希望している麦、大豆についても採択されるように取り組んでいきたいと考えているところでございます。
〇16番(菅野ひろのり君) 藤代農林水産部長としても大変苦しい立場だと思いますし、岩手県の農業者の皆さんの要望をかなえる立場だと思っております。繰り返しになりますが、水田交付金の見直しがあって、畑地化の高額のメニューがあって、これだけ要望が集まっていて、けれども10%しか採択されない。予算規模は確保されていない。今後、農業者はどうやってこれから農業をしっかり考えて、見通しを持ってやっていくのですか。
 私は、これは本当に国の大きな農業政策の失策といいますか不十分な点だと思っております。ぜひ、藤代農林水産部長には、引き続き国に強く要望していただいて、予算確保にしっかりと努めていただきたいと思います。
 そして、最後に、先ほどの農業大学校の件でありますが、本当に暑い日が続いております。藤代農林水産部長も現場に行っていただいて、作業して、炎天下で働いている、研修している生徒たちに声をかけてあげる、休憩あるいは休みをとらせてあげるという中に、涼しい環境を持てない、そういう学びの環境というのは、私はやはり子供たちにとっても適切な環境だとは言えないと思っております。何としても、これは強く働きかけをしていただいて、しっかりと環境を整えていただきたいと思います。
〇議長(工藤大輔君) 以上をもって菅野ひろのり君の一般質問を終わります。
   
〇議長(工藤大輔君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後5時33分 散 会

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