令和5年6月定例会 第26回岩手県議会定例会会議録

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〇東日本大震災津波復興特別委員長(名須川晋君) 東日本大震災津波復興特別委員会のこれまでの調査の経過と結果につきまして御報告いたします。
 東日本大震災津波から12年4カ月が経過いたしました。これまで、県民一丸となった復旧、復興の取り組みによりハード面の整備はおおむね完了しましたが、完成していない社会資本の早期整備、被災地における新たなコミュニティーの形成、心のケア、主要魚種の不漁など、まだ課題は残されています。
 また、平成28年及び令和元年の台風による災害、令和2年から続くコロナ禍や物価高騰が、被災地の県民生活と地域経済にも大きな影響を及ぼしています。
 このような中、本委員会は、前任期に続き、令和元年9月臨時会において、議長を除く全議員を委員として設置されて以来、19回にわたり委員会を開催し、復旧、復興の現状、課題や取り組み状況等について、執行部や関係者から説明を受け、質疑、意見交換を行うとともに、延べ24回の現地調査を実施し、内陸を含めた被災市町村、復興や被災者支援に取り組んでいる方々と意見交換を行ってきました。
 この間、県では、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプラン復興推進プランに掲げる安全の確保、暮らしの再建、なりわいの再生、未来のための伝承・発信の4本の柱のもと、第1期復興推進プラン期間内に終わらなかった社会資本整備、被災者支援、産業振興等の復興事業のほか、震災の事実や教訓の伝承、発信、新型コロナウイルス感染症や今後起こり得る巨大地震、津波への対応など、復興の進展に影響を与える新たな課題に継続して取り組んでいます。
 また、国では、復興庁の設置期間を令和12年度まで延長し、令和3年5月には、復興庁岩手復興局を被災地の釜石市に移転するとともに、令和3年度から7年度までの5年間を第2期復興・創生期間と位置づけ、引き続き、復興の円滑かつ着実な遂行を期するための取り組みを進めています。
 まず、現状と課題についてでありますが、一つ目の柱である安全の確保についてです。
 国が復興のリーディングプロジェクトに位置づけた復興道路が、令和3年12月に全線開通したほか、海岸保全施設等ハード面の整備の多くが完了しています。現在は、残るハード面の整備が進められており、今年度以降も一部の海岸保全施設等の整備が続く見込みであるほか、ソフト面については、防災文化の醸成などの取り組みも進められています。
 なお、ALPS処理水の処分について、新たな風評被害の発生や安全性への不安、本県産業への影響を懸念する声があります。
 また、本年1月のいわて復興ウォッチャー調査では、防潮堤などのハード面が整備され、災害に強い安全なまちづくりが進んだことを実感する声がある一方で、防災教育や日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震に備えた地震、津波対策を進めることの重要性を指摘する声もありました。
 次に、二つ目の柱である暮らしの再建についてです。
 応急仮設住宅の全ての入居者が、恒久的な住宅へ移行したほか、医療施設や公立の学校施設などのハード面の整備は、完了しています。現在は、恒久的な住宅へ移行後のコミュニティー形成支援や心のケア、被災児童への支援、復興教育などの取り組みが進められています。
 被災者支援窓口には、依然として多くの相談が寄せられており、引き続き生活設計や経済面で複雑な課題を抱える被災者の安定した生活に向けて、専門家等と連携した支援が必要であります。
 また、時間の経過やコロナ禍の影響など、被災地において複雑化、多様化した課題を抱える方々に対する中長期的な心のケアの取り組みが必要であります。
 次に、三つ目の柱であるなりわいの再生についてです。
 農林水産業におけるハード面の復旧、整備は完了し、県産農林水産物などの販路拡大のほか、中小企業等の施設、設備の復旧や金融支援、観光資源の再生、観光キャンペーンの展開など、地域産業の再生に向けた取り組みが進められています。
 その一方で、被災地の基幹産業である水産業においては、主要魚種の記録的な不漁により水揚げ量が減少し、漁業者の減収だけでなく、水産加工業にも大きな影響が生じているほか、コロナ禍の影響により、観光入り込み客数の減少や幅広い事業者に大きな減収が生じるなど、地域経済が打撃を受けています。
 また、造成地や移転元地等を、企業誘致等による産業集積のほか、農用地や商業用地などに有効活用する取り組みについては、地域により検討状況や取り組み内容に差が生じています。
 さらに、原木シイタケの出荷制限の一部解除が進んでいるものの、早期出荷制限解除に向けた支援や放射性物質に対する消費者の不安払拭のための取り組みが引き続き必要であります。
 次に、四つ目の柱である未来のための伝承・発信についてです。
 東日本大震災津波伝承館の運営のほか、各種フォーラムの開催による震災の事実や教訓の伝承、復興支援への感謝と復興の姿の発信の取り組みが進められています。
 また、令和3年2月に東日本大震災津波を語り継ぐ日条例が制定され、各種広報媒体を通して県民への普及啓発が行われています。
 その一方で、いつどこで起こるかわからない災害への備えは、より一層重要性を増しており、震災の教訓への理解をさらに深め、地域の防災力を強化することが必要であります。
 そこで、本委員会では、これまでの調査結果を踏まえ、県当局に対し、東日本大震災津波からの復興を被災者が実感できるものとなるよう、次の事項に配慮して取り組まれることを要請するものであります。
 1、安全の確保については、近年、これまでに経験したことのないような自然災害が国内外で多発しており、今後起こり得る日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震などに備え、津波防災施設の早期完成に向けて着実に取り組むとともに、地域における防災意識の向上や防災文化の醸成と継承に継続して取り組むこと。
 また、ALPS処理水の処分について、国に対し、国民への丁寧な説明の継続や万全な風評対策など、国内外の理解と安心が得られるような取り組みを行うよう求めること。
 2、暮らしの再建については、いわて被災者支援センターや岩手県こころのケアセンターを初めとした相談窓口において、時間の経過やコロナ禍の影響により、複雑化、多様化しているさまざまな問題について、被災者一人一人に寄り添ったきめ細やかで専門的な心のケアに継続して取り組むとともに、個々の生活再建状況に応じた切れ目のない支援、恒久的な住宅移行後のコミュニティー形成支援を継続、充実させること。
 3、なりわいの再生については、主要魚種の資源回復、増加している資源の有効活用、新たな漁業、養殖業の導入などの不漁対策の取り組みや、業績の回復が伸び悩む漁業、養殖業及び流通、水産加工業などの地域水産業の再生のほか、商品開発や販路開拓等への支援に継続して取り組むとともに、コロナ禍の影響を受けた被災地の企業が抱える課題の解決や新たな事業を立ち上げる起業者等に対するきめ細かな支援を継続し、充実させること。
 また、被災地の土地活用の促進に向けて、復興庁事業の活用等による市町村における取り組みの支援や、放射性物質に対する消費者の不安の払拭、安全なシイタケ原木の確保や生産性を向上させる施設整備など、原木シイタケの産地再生に継続して取り組むこと。
 4、未来のための伝承・発信については、東日本大震災津波伝承館などの伝承施設、震災遺構を活用した復興、防災教育に継続して取り組み、震災の事実と教訓を風化させることなく次世代に伝承するとともに、復興の姿を国内外に発信していくこと。
 なお、取り組みに当たっては、沿岸地域で進む人口減少に歯どめをかけるため、復興の進捗に伴い変化する被災地の課題を丁寧に酌み取り、市町村や復興庁岩手復興局、関係団体と緊密に連携しながら、コロナ禍における事業手法に創意工夫を凝らし、復興道路等の新たな交通ネットワークや地域資源を活用した産業振興、交流人口の拡大など、地方創生の取り組みを総合的に推進すること。
 また、心のケアや産業振興等、中長期的視野での対応を要する取り組みについては、被災地に寄り添った人的、財政的支援を継続し、一日も早い復興の実現に向け邁進すること。
 以上のとおりであります。
 結びに、被災者一人一人が復興を実感し、ふるさとの未来に希望を持って生き生きと暮らし、将来にわたって持続可能な三陸地域の創造と発展に向けて、なお一層注力されることを切望し、東日本大震災津波復興特別委員会の報告といたします。(拍手)
〇議長(五日市王君) 次に、高橋新型コロナウイルス感染症対策調査特別委員長。
   〔新型コロナウイルス感染症対策調査特別委員長高橋はじめ君登壇〕
〇新型コロナウイルス感染症対策調査特別委員長(高橋はじめ君) 新型コロナウイルス感染症対策調査特別委員会のこれまでの調査の経過と結果につきまして御報告いたします。
 新型コロナウイルス感染症は、令和元年12月に中国湖北省武漢市で第1例目の感染者が報告されて以降、パンデミックと呼ばれる世界的な大流行となり、令和5年5月には、全世界における累計感染者数が7億人を超えています。
 国内では、令和2年1月に最初の感染者が確認され、1日当たりの新規感染者数は、令和4年8月19日の26万1、004人をピークに、令和5年5月時点では全国的に減少傾向となり、当初、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律上の2類相当に位置づけられてきましたが、令和5年5月8日、季節性インフルエンザなどと同じ5類へ移行しました。
 県内では、令和2年7月29日に最初の感染者が確認されて以降、感染拡大の波が繰り返され、令和4年に入ると、オミクロン株による感染が拡大し、1日当たりの新規感染者数は、令和4年12月20日に過去最高の2、699人を記録しました。令和5年5月7日時点では、累計感染者数は23万人を超え、死者数は625人となりました。
 本県議会においては、令和2年4月20日に岩手県議会災害対策連絡本部を設置し、知事への提言や執行部への質疑等を行ってまいりましたが、医療提供体制や県民生活への影響等について調査する必要があることから、令和3年9月定例会において、議長を除く全議員を委員とする委員会として設置されました。
 設置以来、10回にわたり委員会を開催し、感染状況、社会生活、経済活動への影響、感染の収束に向けた取り組み状況、課題等について、執行部や関係者から説明を受け、質疑、意見交換を行ってきました。
 この間、県では、感染拡大を可能な限り抑制し、健康被害を最小限にとどめ、社会、経済への影響を最小限に抑えるため、令和2年2月18日に岩手県新型コロナウイルス感染症対策本部を設置し、感染拡大の防止、社会生活、経済活動を支える取り組み、新しい働き方、暮らし、学びを進める取り組みが進められてきました。
 まず、感染拡大の防止の取り組みについてでありますが、適切な医療を提供するとともに、一般医療への影響を最小限にとどめ、限られた医療資源をオール岩手で有効に活用するため、医療機関等の設備の整備、医療従事者や入院病床の確保、院内感染防止対策の取り組み等への支援により、医療提供体制の強化を図ってまいりました。
 こうした取り組みにより、令和5年1月中旬以降、病床使用率は低下傾向が続き、同年5月7日時点では7.2%と低い水準となりましたが、今後の感染拡大期においても医療が逼迫することがないよう、医療体制の確保が必要であります。
 令和2年4月16日、本県にも新型インフルエンザ等対策特別措置法の規定に基づく緊急事態宣言が発出されました。
 また、令和3年8月12日、令和4年1月23日の2度、県独自の緊急事態宣言が発出され、県民に対して不要不急の外出の自粛や、基本的な感染対策の徹底の要請などが行われたほか、令和3年8月30日には、盛岡市の飲食店等に対する県独自の営業時間短縮要請が行われました。
 こうした中、市町村や医療機関と連携したワクチン接種体制の確保のほか、幼稚園、保育園、学校等各種施設や飲食店等における感染防止対策の徹底強化により、蔓延防止に取り組み、令和5年5月7日時点の本県の人口10万人当たりの直近1週間の新規感染者数は70.3人となり、感染状況は減少傾向となりました。
 令和2年2月8日には、帰国者・接触者相談センター及び一般の相談窓口を保健所等に開設し、PCR等無料検査の実施や、いわて健康フォローアップセンターの開設、県民からの相談対応、迅速かつ円滑な検査の実施や最新情報の提供により、相談、検査体制の強化、充実が図られてきたところであります。
 次に、社会生活、経済活動を支える取り組みについてでありますが、コロナ禍における社会生活を支えるため、不安やストレス等を抱える方への全般的な相談対応のほか、福祉分野においては、収入が減少した家庭やひとり親家庭への支援、学びの分野においては、保護者の家計が急変した学生への支援や奨学金の返済の相談対応等の取り組みが行われてきました。
 また、経済活動を支えるため、経営に関する全般的な相談対応のほか、事業者における資金繰りや雇用の維持、販路の確保などの支援、その他、文化芸術団体への活動支援等が行われてきました。
 長引くコロナ禍に加え、物価高騰により、県民の社会生活への影響は継続しており、一人一人に寄り添った切れ目のない支援が必要であります。
 令和5年2月に県が実施した新型コロナウイルス感染症等に伴う事業者の影響調査によると、新型コロナウイルス感染症の感染拡大、物価高騰等の影響が継続していると回答した事業者が76.7%であり、引き続き事業者の経営を支える取り組みが必要であります。
 最後に、新しい働き方、暮らし、学びを進める取り組みについてでありますが、コロナ禍を契機としたデジタル技術の進展に対応し、高度なAI人材の育成、確保、中小企業のデジタル化支援による生産性、付加価値向上への支援のほか、医療等のビッグデータの分析結果の活用等、新しい働き方、暮らしを進める取り組みの支援が行われてまいりました。
 また、コロナ禍により地方への移住の関心が高まる中で、移住、定住、U・Iターン就職の受け入れ体制支援、情報発信の強化の取り組みのほか、学校におけるICT機器の整備など教育の現場におけるICT化が推進されました。
 このような新型コロナウイルス感染症がもたらした新しい働き方、暮らし、学び、価値観の変化等の流れを捉えた取り組みを継続していく必要があります。
 そこで、本委員会では、これまでの調査結果を踏まえ、県当局に対し、新型コロナウイルス感染症対策において得た知見や経験を生かし、次の事項に配慮して取り組まれることを要請するものであります。
 1、5類移行後においても、診察、検査や入院といった医療提供体制に万全を期し、感染防止対策に取り組むこと。特に、高齢者施設等においては、入院が必要な高齢者が適切かつ確実に入院できる体制を確保するとともに、施設における感染対策の徹底、医療機関との連携強化の取り組みを支援すること。
 5月以降も継続設置しているいわて健康フォローアップセンター、ワクチン専門相談コールセンターにおいては、引き続き適時適切な情報提供や県民に寄り添った相談対応を行うこと。
 なお、新型コロナウイルス感染症の後遺症についても、引き続き情報収集に努めるとともに、ホームページでの関連情報の提供や患者本人の悩みに寄り添った相談、診療体制の確保に努めること。
 2、社会生活、経済活動を支えるため、引き続き新型コロナウイルス感染症や物価高騰の影響を受けている県民の実情に十分配慮した支援策を適時講ずるとともに、収入が減少した非正規労働者やひとり親家庭に対する就労支援など生活再建の後押しをしていくこと。
 また、長期にわたるコロナ禍で疲弊した地域経済の早急な復興、再生に向け、事業者の実情に応じた相談対応や支援策を適時講ずるとともに、飲食、観光、宿泊事業等の需要回復に向けた対策を講ずること。
 3、コロナ禍におけるデジタル化の急速な進展は、時間や場所にとらわれない柔軟で多様な社会の実現の可能性が広がっており、地方を舞台にした新しい挑戦の機会が生み出されていることから、さらなる取り組みの拡大を図ること。
 以上のとおりであります。
 結びに、令和5年5月8日、新型コロナウイルス感染症は、感染症法上の位置づけが5類へ移行しましたが、完全な収束までにはさらに時間がかかることが懸念されております。引き続き、県民一人一人が、場面に応じた感染対策を実践しながら、感染拡大の防止と社会経済活動の両立を目指すとともに、県当局においては、関係機関等と連携して、その時々の感染状況に応じた効果的な対策を講ずるなど、コロナ禍克服に向けて、なお一層注力されることを切望し、新型コロナウイルス感染症対策調査特別委員会の報告といたします。(拍手)
〇議長(五日市王君) 次に、佐々木デジタル社会・DX推進調査特別委員長。
   〔デジタル社会・DX推進調査特別委員長佐々木宣和君登壇〕
〇デジタル社会・DX推進調査特別委員長(佐々木宣和君) デジタル社会・DX推進調査特別委員会のこれまでの調査の経過と結果につきまして御報告いたします。
 本委員会は、令和3年9月定例会において設置されて以来、7回の委員会及び3回の県内外での現地調査を実施し、各分野におけるDXの推進への取り組みについて調査を実施してまいりました。
 まず、現状と課題についてでありますが、DX―デジタルトランスフォーメーションとは、デジタルと変革を意味するトランスフォーメーションによりつくられた造語で、ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でよりよい方向に変化させることを意味しています。
 DXは、単にICTを利活用し業務の効率化などを目的としたデジタル化とは異なり、これまでの業務の方法を抜本的に見直すもので、生産性の向上や新たな価値の提供を実現させるものであります。
 令和3年5月にデジタル改革関連法が成立、公布され、デジタル社会形成基本法では、地方公共団体は、基本理念にのっとり、デジタル社会の形成に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の特性を生かした自立的な施策を策定し、及び実施する責務を有することとされました。
 本県は、近年、毎年1万人程度の人口減少が続いており、あわせて少子高齢化が進行しております。
 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、本県の人口は2040年に96万人程度となり、15歳から64歳までの生産年齢人口は人口の50%にまで減少し、その後も減少が続くと試算されております。
 また、東日本大震災津波からの暮らしの再建、近年の主要魚種の不漁などの地域課題に加えて、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う産業への打撃や消費の落ち込みなど、経済、社会に大きな影響を及ぼす課題に直面しております。
 今後、一層人口減少、少子高齢化が進行する中で経済成長を続けていくためには、行政を初め、産業における生産性の向上や子育て、教育、医療、介護分野等を含むあらゆる分野での改革、変革が避けられず、持続可能な社会の実現にはDXが必要とされております。
 また、各分野の課題解決の鍵となるDXを推進するため、データ、デジタル技術を駆使し、新たな価値を提供する人材の育成、確保も重要であります。
 本委員会としては、これまでの調査結果を踏まえ、今後ともDXの推進に関する取り組みを進めていくため、県当局に対し、次の事項に配慮し、施策に取り組まれるよう申し入れるものであります。
 まず、行政のDXについてですが、1、各種行政手続について、いつでも、どこからでも手続が可能となるよう、インターネットを利用した電子申請・届出等システムの利用手続拡大や利活用促進などを行い、県民サービスの向上を図ること。
 また、県が保有する情報の特性を把握し、県民がわかりやすく、活用しやすい方法で提供することにより、利便性の向上を図ること。
 2、RPAやAIなど、業務に適用可能な新たなデジタル技術を活用し、組織内部における効率的な働き方に資する取り組みを進めるとともに、県民の利便性向上に適用できる新たなデジタル技術の活用に向けた取り組みを進めること。
 3、社会情勢の変化や新たな脅威の出現など、情報セキュリティーを取り巻く状況の変化等へ対応できるよう、新たなセキュリティーリスクの情報収集と対策を行うこと。
 4、共通する地域課題の解決を効率的に進めるため、市町村との情報共有を図るとともに、必要な支援を行うこと。
 次に、産業のDXについてですが、1、社会経済環境の急速な変化に対応するため、デジタル技術を活用した生産性の向上、新事業分野の開拓等に向けた支援を行うこと。
 2、働く人一人一人が、ライフステージやライフスタイルに応じた多様で柔軟な働き方を選択できるよう、テレワーク等の環境整備の促進に向けた取り組みを進めること。
 3、DXの急速な進展に対応したセミナーやリカレント教育、リスキリング教育等の充実を図り、企業が求めるIT人材を確保、育成すること。
 次に、社会・暮らしのDXについてですが、1、住みなれた地域で質の高い医療が受けられるよう、オンライン診療を初めとした遠隔診療の実施に必要な設備整備を支援するとともに、情報通信機器を活用した画像診断など、遠隔地からの専門医師による診療支援に取り組むこと。
 2、児童生徒が、これからの時代に必要とされる資質、能力を習得することを目指し、教員が授業や学習活動においてICT機器を積極的に活用できるよう、ICT活用指導力向上のための研修の充実に取り組むこと。
 3、災害情報収集、共有スキームの変革や災害時におけるドローンの利用など、災害対応にかかわるさまざまな場面でデジタル技術の活用を促進することにより、安全かつ迅速な避難行動の実践を実現し、今後、発生が見込まれる広域的かつ大規模な災害への対策を講じること。
 以上のとおりであります。
 結びに、DXの進展は、人口減少など地域が抱える社会問題の解決に寄与し、個性豊かで活力に満ちた地域社会への可能性を広げるものであります。
 誰ひとり取り残されることなく、全ての県民がDXの恩恵を享受できる社会の実現のため、行政やあらゆる産業のDXの促進、子育て、教育、医療、介護分野等における利便性の向上に向けた取り組みを進めていくことが求められております。
 県当局においては、本委員会の意見や要望に十分配慮しながら、県政運営になお一層の努力を傾注し、課題解決に向けた取り組みを行うとともに、DXの一層の推進に向けた実効性のある取り組みを実施するよう切望し、デジタル社会・DX推進調査特別委員会の報告といたします。(拍手)
〇議長(五日市王君) 次に、柳村地球温暖化・エネルギー対策調査特別委員長。
   〔地球温暖化・エネルギー対策調査特別委員長柳村一君登壇〕
〇地球温暖化・エネルギー対策調査特別委員長(柳村一君) 地球温暖化・エネルギー対策調査特別委員会のこれまでの調査の経過と結果につきまして御報告いたします。
 本委員会は、令和3年9月定例会において設置されて以来、7回の委員会及び3回の県内外での現地調査を実施し、地球温暖化対策等やエネルギー対策について調査を実施してまいりました。
 まず、地球温暖化対策等の現状と課題についてでありますが、令和3年8月、世界気象機関は、暴風雨や洪水、干ばつといった気象災害の発生件数が、昭和45年から令和元年までの50年間で5倍近くに増加したと発表しました。
 気象災害の増加は、異常気象の発生頻度の高まりや気候変動によるものとされ、地球温暖化もその要因の一つとされています。
 地球温暖化は、私たちの生活や産業、生物の多様性に深刻な影響を与えるものであり、世界の全ての国が協力していかなければ解決できない問題となっていることから、平成27年に新たな国際的枠組みであるパリ協定が採択され、地球温暖化の原因の一つとされる温室効果ガスの削減に向けた取り組みを世界各国が積極的に推進しています。
 また、コロナ禍等で落ち込んだ経済を復活させるため、再生可能エネルギー、省エネルギー、自然資源投資による雇用創出、経済復興であるグリーンリカバリーの促進も必要と考えられています。
 令和2年10月、政府は2050年までに日本の温室効果ガス排出量を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指すと表明し、令和2年12月のグリーン成長戦略の策定、令和3年5月の改正地球温暖化対策推進法の成立など、目標達成に向けた取り組みが推進されています。
 本県においても、令和元年11月に、温室効果ガス排出量2050年実質ゼロを表明し、令和3年3月には、第2次岩手県地球温暖化対策実行計画を策定しています。
 令和5年3月には、社会情勢の変化や国の動向を踏まえ計画を改定し、温室効果ガスの削減割合の57%への引き上げや再生可能エネルギー電力自給率66%などの目標を掲げたことから、今後、実効性のある取り組みが求められています。
 本県は、北海道に次ぐ全国2位の森林面積を有し、すぐれた自然環境に恵まれており、豊富な森林資源を背景に、造林や間伐などの森林整備や木質バイオマスの利用拡大が図られています。
 また、平成23年の東日本大震災津波により甚大な被害を受けた沿岸域は、基本的に砂層が表層を覆ってしまい、底質が全く変わってしまいましたが、少しずつ回復傾向にあり、藻場の再生、造成によるブルーカーボンの活用が期待されています。
 次に、エネルギー対策の現状と課題についてでありますが、エネルギーや食料などの多くを海外に依存する日本は、新興国の経済成長や世界人口の増加による需要の急増に対応する必要があり、また、東日本大震災津波による原子力発電所事故を契機に、エネルギー構造の転換に向けた動きが広がったことから、再生可能エネルギーの導入や脱炭素に向けた取り組みなどが推進されています。
 令和3年10月には、第6次エネルギー基本計画が閣議決定され、2050年のカーボンニュートラルに向けて、電力分野は再エネ、原子力、水素、アンモニア発電、二酸化炭素の回収、有効利用、貯留などにより脱炭素化を図ること、非電力分野は、電力プラス脱炭素化電力、水素、合成メタン、合成燃料の活用により脱炭素化を図ることとされています。
 また、2030年に向けた政策対応として、徹底的な省エネ、非化石エネルギーへの転換、蓄電池等分散型エネルギーリソースの活用、地域との共生や系統制約克服等により、再生可能エネルギー導入の拡大などを図ることとされています。
 本県においては、陸上風力は東北地域の中でもポテンシャルが高く、また、洋上風力は県北部沿岸域の風況が良好であるとされています。
 また、太陽光発電、地熱発電、水力発電、波力発電などの再生可能エネルギーについても導入の可能性があることから、今後の地球環境やエネルギー問題を解決するため、一つに的を絞ることをせず、併用しながら成長させることが必要であります。
 これまでの調査結果を踏まえ、今後とも、地球温暖化対策等やエネルギー対策に関する取り組みを進めていくため、この際、県当局に対し、次の事項に配慮し、施策に取り組まれるよう申し入れるものであります。
 まず、地球温暖化対策等についてでありますが、1、自然環境や資源、エネルギー、社会基盤などを持続可能なものとして次世代に引き継いでいくことは、私たちの使命であることから、脱炭素社会、循環型社会、自然共生社会を実現していく施策を講ずること。
 2、経済的手法、規制的手法、情報的手法などの多様な手法を用いながら、地球温暖化対策に取り組むこと。
 3、グリーンリカバリーとして、民間投資の誘導や必要な公的投資などに取り組むこと。
 4、地球温暖化に対する意識啓発を図るため、環境の学びの場を提供するなど、全県的な取り組みを行うこと。
 5、寒冷地の特質を踏まえ、建築物の低炭素化、省エネルギーと健康維持増進の両立を図る取り組みを進めること。また、持続可能なまちづくりのため、公共施設等の脱炭素化を図ること。
 6、森林吸収源対策として、二酸化炭素の吸収、固定など森林の多面的な機能を持続的に発揮させるため、引き続き、間伐や再造林等の森林整備を進めること。
 7、森林資源や海洋資源などの管理を適正に行うとともに、森林、農地、海岸の環境保全機能の向上をさらに進める施策を講ずること。
 次に、エネルギー対策についてでありますが、1、再生可能エネルギーについては、全国トップクラスの高いポテンシャルを生かし、関連産業への参入支援や自立・分散型エネルギーシステムの構築などにより導入を促進し、さらなる自給率の向上を目指して取り組むこと。
 2、住民、中小規模事業者の再生可能エネルギーへの取り組み促進に向けた方策を講ずるとともに、地域主導型の再生可能エネルギー事業に取り組み、エネルギー自立地域を目指すこと。
 3、民間企業などで進める波力発電などの次世代新エネルギー開発については、さらなる支援を行うこと。
 以上のとおりであります。
 終わりに、豊かな自然を有する本県において、自然環境を守り、自然の豊かさとともに暮らすことが何よりも大切であります。
 多様ですぐれた自然環境の保全や環境型地域社会の形成等による環境保全の推進と同時に、再生可能エネルギーの導入や適切な森林整備などの地球温暖化対策の推進が求められております。
 県当局においては、本委員会の意見や要望に十分配慮しながら、県政運営になお一層の努力を傾注し、地域経済と環境に好循環をもたらす持続可能な新しい成長を目指し、実効性のある地球温暖化対策等を実施するとともに、再生可能エネルギーの積極的な導入を進めるよう切望し、地球温暖化・エネルギー対策調査特別委員会の報告といたします。(拍手)
〇議長(五日市王君) 次に、吉田教育・子ども政策調査特別委員長。
   〔教育・子ども政策調査特別委員長吉田敬子君登壇〕
〇教育・子ども政策調査特別委員長(吉田敬子君) 教育・子ども政策調査特別委員会のこれまでの調査の経過と結果につきまして御報告いたします。
 本委員会は、令和3年9月定例会において設置されて以来、7回の委員会及び3回の県内外での現地調査を実施し、教育や子育て環境等について調査を実施してまいりました。
 まず、教育に係る現状と課題についてでありますが、本県の令和3年度のいじめ認知件数は、小・中・高等学校と特別支援学校を合わせて8、039件で、高どまりの状況にあります。
 いじめ防止対策においては、子供が抱えるさまざまな背景を把握するため、子供の声にしっかりと耳を傾けながら、学校や教育委員会が関係機関と情報共有を図り、連携して必要な支援を行うことが求められています。
 また、令和3年度の本県の不登校児童生徒数は、小・中・高等学校を合わせて過去最多の2、270人となっています。
 不登校児童生徒の支援のため、個々の状況を適切に把握し、多様な支援を行うことで学びを保障するとともに、居場所の確保やアウトリーチのきっかけづくりが必要であります。
 少子化の進行により本県の中学校卒業予定者は減少が見込まれ、学校の小規模化が進むこととなります。
 高等学校にはさまざまな背景を持つ生徒が入学している現状を踏まえ、学習意欲や新たなことに挑戦する意欲を喚起するとともに、多様な人々と協働して、豊かな人生を切り開いていく持続可能な社会の担い手の育成が必要であります。
 令和4年8月、八幡平市にハロウインターナショナルスクール安比ジャパンが開校し、世界各国から生徒が集まっています。地域の振興に関する連携協定による同校生徒と本県の児童生徒との交流が期待されています。
 次に、子育て環境の現状と課題についてでありますが、令和4年の本県の合計特殊出生率は1.21で、結婚観の多様化や経済的な不安定さ、仕事と子育ての両立の難しさなどにより、過去最低となりました。
 令和2年岩手県子どもの生活実態調査報告書によれば、就学援助世帯の6割を母子世帯が占め、公的な相談窓口が有効に活用されていないなどの実態が明らかとなっています。
 ひとり親家庭等の就労形態や収入は不安定な場合が多く、公的支援施策が十分に活用されていないため、保護者の就労支援、教育支援等の充実とともに、包括的な相談支援体制の構築が必要であります。
 また、地域のつながりが希薄化する中、養育環境の複雑化等、子供を取り巻く課題は複雑かつ複合的になっているため、多様な価値観や課題に対応した居場所づくりが求められています。
 本県の児童虐待相談対応件数は、家庭養育機能の脆弱化や養育者の育児不安の増加等を背景に、近年、大幅に増加し、令和3年度は過去最高の2、560件となったことから、児童相談所の体制強化や市町村の児童家庭相談体制の充実に取り組むとともに、地域全体で児童虐待の未然防止、早期発見、対応の取り組みを推進することが求められています。
 加えて、家庭環境に恵まれず社会的養護を必要とする子供たちが、適切な支援やケアを受けながら養育されるように、里親や児童養護施設、乳児院等の各施設、市町村と連携する必要があります。
 これまでの調査結果を踏まえ、教育と子育て環境等に関する今後の施策の推進に当たり、この際、県当局に対し、次の事項に配慮し、施策に取り組まれるよう申し入れるものであります。
 まず、教育についてでありますが、1、いじめの未然防止、早期発見、適切な対処のため、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置を拡充するとともに、学校や教育委員会が、警察や児童相談所等と情報共有を図り、地域と連携して、相談、支援体制を強化すること。また、自分を大切にし、他者を大切にする子供の人権について、子供たち自身が学ぶ機会を設けること。
 2、教職員等による体罰、ハラスメントの防止のため、再発防止策岩手モデルを早期に策定すること。
 3、不登校対策のため、教育支援センターの市町村への設置を促進するとともに、不登校特例校や夜間中学校等の設置を検討し、多様な教育機会の確保に取り組むこと。
 また、校内外の居場所づくりやフリースクールとの連携等により、多様化、複雑化する不登校児童生徒のきめ細かい支援に取り組むこと。
 4、多様な生徒の学習意欲を喚起しながら、能力や可能性を最大限に伸ばすため、魅力化協働パートナーとともに、各高等学校の特色化、魅力化に取り組むこと。
 5、本県の子供が、多文化共生について理解を深め、グローバルな視野を持てるように、ハロウインターナショナルスクール安比ジャパン等との交流、連携を進めること。
 次に、子育て環境についてでありますが、1、安心して子供を産み育てられる環境をつくるため、妊娠から出産、子育て期までの切れ目のない伴走型支援を市町村と連携して推進すること。
 2、どのような子供、家庭にもリスクはあると捉え、全ての妊産婦、子育て家庭と多様な接点を持ち、見守り、支援を行うことにより、児童虐待を未然防止するとともに、子供の貧困やヤングケアラー等の実態を把握し、適切な支援につなげること。
 3、子供の貧困をなくすため、困難な状況にある保護者が適切な支援に確実につながるよう、必要な情報にアクセスしやすい環境を整備すること。また、市町村や民間の支援団体が広域で連携できる体制整備を行うこと。
 4、地域のつながりの希薄化や子育て環境の変化に対応するため、全ての子供が安心して安全に過ごせる多様な居場所を持てるよう環境の整備を進めること。
 5、児童心理司や児童福祉司を増員するなど、児童相談所や市町村の児童家庭相談体制の強化に取り組むとともに、潜在的に支援が必要な子供を把握して、福祉、保健、医療、教育、地域のきめ細やかな支援により、地域全体で児童虐待防止の取り組みを推進すること。
 6、社会的養育が必要な子供、貧困家庭の子供、障がいのある子供、医療的ケアを必要とする子供等、子供の状態に合わせた多様なケアを充実させること。
 また、質の高い里親養育を実現するため、児童相談所が行う里親制度に関する包括的業務の質を高めるための里親支援事業や職員研修を充実させること。
 7、こども基本法に基づき、こどもまんなか社会の主役である子供や若者の声を聞き、政策に反映させること。
 また、子供の権利擁護のため、社会的養護を受けている子供の意見を大人が代弁する仕組みを検討すること。
 以上のとおりであります。
 結びに、本格的な人口減少社会の到来、東日本大震災津波による被害、デジタル化の進展など、予測困難で変化の激しい社会の中で、岩手県の未来を担う子供たち一人一人を健やかに育てていくことが求められています。
 県当局においては、本委員会の意見や要望に十分配慮しながら、県政運営になお一層の努力を傾注し、子供たちが安心して学び、自分らしく健やかに安心して過ごせる環境を整えるとともに、希望する誰もが、安心して子供を産み育てることができる社会を実現するよう切望し、教育・子ども政策調査特別委員会の報告といたします。(拍手)
〇議長(五日市王君) 次に、岩渕新産業創出・働き方改革調査特別委員長。
   〔新産業創出・働き方改革調査特別委員長岩渕誠君登壇〕
〇新産業創出・働き方改革調査特別委員長(岩渕誠君) 新産業創出・働き方改革調査特別委員会のこれまでの調査の経過と結果につきまして御報告いたします。
 本委員会は、令和3年9月定例会において設置されて以来、7回の委員会及び3回の県内外での現地調査を実施し、新産業創出及び働き方改革について調査を重ねてまいりました。
 まず、新産業創出に係る現状と課題についてでありますが、本県の製造業の製造品出荷額は平成30年に過去最高の2兆7、272億円となり、コロナ禍においても主要な産業として本県経済を牽引しています。
 自動車、半導体関連産業を中心に産業集積が進められているものづくり産業は、世界的にデジタル化やカーボンニュートラルなどの流れが加速しており、地域の産業、雇用に好循環をもたらすものづくり産業の振興に向け、社会経済環境の変化に対応した一層の産業集積と高度化に取り組む必要があります。
 本県の中小企業は、県内全体の企業数のうち99.8%を占めており、事業活動を通じて県民の暮らしや地域経済を支えています。一方で、新型コロナウイルス感染症や原油、原材料等の高騰による経営への影響、人口減少、少子高齢化の急速な進行による人手不足、デジタル化への対応等が課題となっています。
 また、県内高等教育機関を初めとする産学官金の連携により、科学技術による持続的なイノベーション創出が進められており、新たな付加価値を創出する基盤の強化が必要であります。
 加えて、本県は、全国初の地熱発電所が立地するなど、風力、地熱を初めとした全国有数の再生可能エネルギーのポテンシャルを有しています。GX―グリーントランスフォーメーションの推進に向け、関連産業の創出、育成に取り組んでいくことが重要であります。
 さらに、本県は、豊かな自然や食、風土に根差した歴史文化など多くの観光資源を有しています。観光は裾野の広い産業であり、地域経済への影響も大きいことから、観光を取り巻く環境の変化を的確に把握し、旅行者のニーズを捉えた施策を展開していく必要があります。
 次に、働き方改革に係る現状と課題についてでありますが、いわて働き方改革推進運動の展開のもと、デジタル技術やテレワークの導入等により、本県の1人当たりの年間総実労働時間は着実に減少しています。一方で、本県の令和4年の総実労働時間は全国平均を上回り、年次有給休暇取得率も全国平均を下回っているなど、労働生産性と働きやすさを高めていく必要があります。
 また、コロナ禍におけるデジタル化の急速な進展により、テレワークや兼業、副業などの働き方が多様化しているほか、働く人のエンゲージメントを高める雇用、労働環境の整備の促進が求められています。
 さらに、本県では18歳から20歳代前半の若者の県外転出が多くなっていますが、高卒者の県内就職率が上昇傾向にあるなど、若者の地元志向の高まりも見られ、雇用のミスマッチを防ぐとともに、多様な分野で若者が活躍できる環境づくりが必要であります。
 また、県内の雇用情勢は、幅広い業種の有効求人倍率が1を超えるなど、コロナ禍にあっても堅調に推移しています。一方で、産業集積の進展や人口減少等に伴い人手不足が続いており、若者、女性、高齢者、障がい者、外国人等のあらゆる人が、持てる能力を最大限に発揮できるダイバーシティー経営の導入促進が必要であります。
 本委員会としては、これまでの調査結果を踏まえ、この際、県当局に対し、新産業創出及び働き方改革に関する今後の施策の推進に当たり、次の事項に配慮し取り組まれるよう申し入れるものであります。
 まず、新産業創出についてでありますが、1、自動車関連産業や半導体産業のより一層の産業集積を図ること。なお、自動車関連産業は、産業構造の大変革期を迎えており、サプライヤーの技術開発や事業展開、再構築など、時代の変化に的確に対応できるよう各種支援策を講じること。
 また、ロボットやAI、IoT等の最先端技術の導入促進に取り組むとともに、地場企業の高度な基盤技術を生かしながら、自動車、半導体関連産業に続く医療機器関連産業のさらなる成長促進、付加価値の高い新産業の創出を図ること。
 2、中小企業の経営の安定化に向けた金融支援に引き続き取り組むこと。また、デジタル技術を活用した生産性の向上や起業、スタートアップ支援に取り組むほか、産業人材の交流を促進し、地域経済の担い手のネットワーク構築を図ること。
 3、大学や企業等が有する多様な技術や経験を生かした研究シーズの創出、育成から応用化、事業化まで、ステージに応じた切れ目のない伴走型の支援を行うこと。また、ILCを核とした国際研究拠点の形成を見据え、産学官連携による共同研究の推進、県内企業の加速器関連産業への参入支援や技術力向上等に取り組むこと。
 4、エネルギーの地域内循環を促進し、GXの経済効果が県内全域に波及するよう、市町村や地域新電力、発電事業者等との連携のもと取り組むこと。
 5、ワーケーションや体験型、滞在型の観光など、観光ニーズの変化を的確に把握し、観光資源の磨き上げや高付加価値化、地域ブランドの創出等を図ること。
 次に、働き方改革についてでありますが、1、長時間労働の改善に引き続き取り組むほか、ライフステージに応じて支え合うことができる人員体制や休暇制度の導入、職場環境の意識醸成等が図られるよう支援すること。
 2、仕事のやりがい、働きがいの向上を図るため、デジタル技術等を活用した多様な勤務形態の導入、相談体制の充実、キャリアアップのための学びの場の確保等を支援すること。
 3、若者の県内定着を促進するため、キャリア教育やインターンシップの充実を図るとともに、製造、技術部門に加え、企画、研究開発部門の県内誘致、企業育成を進めるなど、職種の多様化を推進すること。また、サテライトオフィスの誘致や魅力ある地域づくり、住環境の整備等を図り、岩手で働く、岩手で暮らす魅力を高める取り組みを推進すること。
 4、誰もが活躍できる全員参加型社会を実現するため、個人の特性を能力と捉え、業務のマッチングや職業能力の開発などに取り組むこと。
 以上のとおりであります。
 結びに、産業、雇用を取り巻く環境は、世界的規模での技術革新や人口減少、少子高齢化の急速な進行、コロナ禍を契機とした働く環境を重視する価値観の多様化など、大きな転換期を迎えています。
 県当局においては、本委員会の意見や要望に十分に配慮しながら、県政運営になお一層の努力を傾注し、本県の地域経済を支える産業を育成、創出するとともに、ワーク・ライフ・バランスの推進が図られ、希望とやりがいを持って働くことができる社会の実現に取り組まれるよう切望し、新産業創出・働き方改革調査特別委員会の報告といたします。(拍手)
〇議長(五日市王君) お諮りいたします。各調査事件については、これをもって調査を終了したいと思いますが、これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇議長(五日市王君) 御異議なしと認めます。よって、各調査事件については、これをもって調査を終了することに決定いたしました。
   
〇議長(五日市王君) この際、暫時休憩いたします。
   午後2時40分 休 憩
   
出席議員(45名)
1  番 千 田 美津子 君
2  番 小 林 正 信 君
3  番 千 葉   盛 君
4  番 千 葉 秀 幸 君
5  番 岩 城   元 君
6  番 上 原 康 樹 君
7  番 高橋 こうすけ 君
8  番 米 内 紘 正 君
9  番 高 橋 穏 至 君
10  番 山 下 正 勝 君
13  番 高 田 一 郎 君
14  番 佐々木 朋 和 君
15  番 菅野 ひろのり 君
16  番 柳 村   一 君
17  番 佐 藤 ケイ子 君
18  番 岩 渕   誠 君
19  番 名須川   晋 君
20  番 佐々木 宣 和 君
21  番 臼 澤   勉 君
22  番 川 村 伸 浩 君
23  番 ハクセル美穂子 君
25  番 木 村 幸 弘 君
26  番 吉 田 敬 子 君
27  番 高 橋 但 馬 君
28  番 小 野   共 君
29  番 軽 石 義 則 君
30  番 郷右近   浩 君
31  番 小 西 和 子 君
32  番 高 橋 はじめ 君
33  番 神 崎 浩 之 君
34  番 城内 よしひこ 君
35  番 佐々木 茂 光 君
36  番 佐々木   努 君
37  番 斉 藤   信 君
38  番 中 平   均 君
39  番 工 藤 大 輔 君
40  番 五日市   王 君
41  番 関 根 敏 伸 君
42  番 佐々木 順 一 君
43  番 伊 藤 勢 至 君
44  番 岩 崎 友 一 君
45  番 工 藤 勝 子 君
46  番 千 葉   伝 君
47  番 工 藤 勝 博 君
48  番 飯 澤   匡 君
欠席議員(なし)
   
説明のため出席した者
休憩前に同じ
   
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
   
午後2時57分再開
〇議長(五日市王君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
   
   日程第27 発議案第1号計画的な教職員定数改善及び義務教育費国庫負担制度拡充を求める意見書
〇議長(五日市王君) 日程第27、発議案第1号計画的な教職員定数改善及び義務教育費国庫負担制度拡充を求める意見書を議題といたします。
 提出者の説明を求めます。佐々木文教委員長。
   〔文教委員長佐々木宣和君登壇〕
〇文教委員長(佐々木宣和君) 発議案第1号につきまして、文教委員会提案でありますので、委員長であります私から、提案理由の説明を行います。
 発議案第1号計画的な教職員定数改善及び義務教育費国庫負担制度拡充を求める意見書でありますが、今期定例会において、請願陳情受理番号第103号ゆたかな学びの実現・教職員定数改善・義務教育費国庫負担制度負担率の引き上げを求める請願が、文教委員会に付託され、採択と決定したことに伴い、意見書を提案するものであります。
 その趣旨を御説明いたしますと、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律の施行により、公立小学校の学級編制の標準が小学校2年生から35人に段階的に引き下げられましたが、中学校、高等学校での早期引き下げも必要であります。
 学校現場においては、子供たちの多様化が一層進展するなどの状況下において、貧困、いじめ、不登校、教職員の長時間労働や未配置など、解決すべき問題が山積しております。
 本年4月28日公表の文部科学省による教員勤務実態調査では、6年前より在校等時間は短縮されたものの、依然として、長時間勤務が行われている状況にあり、子供たちに向き合うための時間を十分に確保することが困難な状況となっております。
 学校における豊かな学びや働き方改革の実現を図るためには、さらなる学級編制の標準の引き下げ、少人数学級を実現するとともに、加配教員の増員や少数職種の配置増など教職員定数改善が不可欠であります。
 教育予算は、三位一体改革により、義務教育費国庫負担制度の負担割合が2分の1から3分の1に引き下げられましたが、子供たちが全国どこに住んでいても、一定水準の教育を受けられることが憲法の要請するところであり、定数改善に向けた財源を確保し、義務教育を保障するための条件整備は不可欠であります。
 厳しい財政状況の中、独自財源により人的措置等を行っている地方自治体もありますが、自治体間の教育格差が生じることは大きな問題であり、国庫負担割合の拡充が必要であります。
 以上のことから、本意見書案においては、教育環境改善のために、計画的な教職員定数改善を推進することなど、4項目の実現を国に要望しようとするものであります。
 以上をもって提案理由の説明を終わります。
〇議長(五日市王君) これより質疑に入るのでありますが、通告がありませんので、質疑なしと認め、質疑を終結いたします。
 ただいま議題となっております発議案第1号は、委員会提案でありますので、会議規則第34条第2項の規定により、委員会の付託を省略いたします。
 これより討論に入るのでありますが、通告がありませんので、討論なしと認め、討論を終結いたします。
 これより、発議案第1号計画的な教職員定数改善及び義務教育費国庫負担制度拡充を求める意見書を採決いたします。
 本案は、原案のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
〇議長(五日市王君) 起立多数であります。よって、発議案第1号は、原案のとおり可決されました。
   
   日程第28 発議案第2号健康保険証廃止の中止等を求める意見書及び日程第29 発議案第3号性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律の改正を求める意見書
〇議長(五日市王君) 次に、日程第28、発議案第2号及び日程第29、発議案第3号を一括議題といたします。
 提出者の説明を求めます。佐々木環境福祉委員長。
   〔環境福祉委員長佐々木朋和君登壇〕
〇環境福祉委員長(佐々木朋和君) 発議案第2号及び発議案第3号につきまして、環境福祉委員会提案でありますので、委員長であります私から、提案理由の説明を行います。
 まず、発議案第2号健康保険証廃止の中止等を求める意見書でありますが、今期定例会において、請願陳情受理番号第108号「健康保険証を持てない人」をつくり出す健康保険証廃止の中止を求める請願が、環境福祉委員会に付託され、採択と決定したことに伴い、意見書を提案するものであります。
 その趣旨を御説明いたしますと、マイナンバーカードをめぐる問題が続出する中、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律案が、令和5年6月2日の参議院本会議で可決、成立しました。
 マイナンバーカードの取得は任意とされてきましたが、健康保険証と一体化させることによって、マイナンバーカードの利用を国民に強制することにつながる重大な方針転換でありますが、法案可決後も、個人情報に係る問題が次々に明らかになっています。
 健康保険証の廃止は国民皆保険制度の根幹にかかわる重要事項であり、政府の冷静な判断が求められているものであります。
 以上のことから、本意見書案においては、健康保険証の廃止により健康保険証を持てず、保険診療を受けられない人が生じないよう、健康保険証の廃止とマイナンバーカードへの一体化について、中止を含め見直すことについて国に要望しようとするものであります。
 次に、発議案第3号性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律の改正を求める意見書でありますが、今期定例会において、請願陳情受理番号第110号LGBT理解増進法の改定を求める意見書の提出ならびに岩手県における差別禁止条例の制定及びパートナーシップ・ファミリーシップ制度の導入を求める請願が、環境福祉委員会に付託され、採択と決定したことに伴い、意見書を提案するものであります。
 その趣旨を御説明いたしますと、令和5年6月16日に参議院本会議において、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律が成立しました。
 同法案は、令和3年に超党派の議員連盟で性的指向及び性自認を理由とする差別は許されないとの文言を盛り込み、合意に至ったにもかかわらず、その内容は合意とは異なったものとなり、理解を阻害するおそれのある内容になっているところであります。
 これは、LGBTQ+当事者の人権が抑制、侵害されかねないものであり、同法第3条の基本理念に反する法の効果をもたらす危険があります。
 また、LGBTQ+当事者が直面している生きづらさ、差別、孤独は、命にかかわる問題であります。
 以上のことから、本意見書案においては、同法が性的指向や性自認に関する取り組みを阻害する動きに使われることなく、同法第3条の基本理念にのっとった取り組みが進められるよう法改正を行うことについて、国に要望しようとするものであります。
 以上をもって提案理由の説明を終わります。
〇議長(五日市王君) これより質疑に入るのでありますが、通告がありませんので、質疑なしと認め、質疑を終結いたします。
 ただいま議題となっております各案件は、委員会提案でありますので、会議規則第34条第2項の規定により、委員会の付託を省略いたします。
 これより討論に入るのでありますが、通告がありませんので、討論なしと認め、討論を終結いたします。
 これより、発議案第2号健康保険証廃止の中止等を求める意見書を採決いたします。
 本案は、原案のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
〇議長(五日市王君) 起立多数であります。よって、発議案第2号は、原案のとおり可決されました。
 次に、発議案第3号性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律の改正を求める意見書を採決いたします。
 本案は、原案のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
〇議長(五日市王君) 起立多数であります。よって、発議案第3号は、原案のとおり可決されました。
   
   日程第30 発議案第4号選択的夫婦別姓制度の導入を求める意見書
〇議長(五日市王君) 次に、日程第30、発議案第4号選択的夫婦別姓制度の導入を求める意見書を議題といたします。
 提出者の説明を求めます。佐藤ケイ子さん。
   〔17番佐藤ケイ子君登壇〕

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