平成7年2月定例会 第17回岩手県議会定例会会議録

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〇48番(佐藤啓二君) 日本社会党・県民共同を代表して、知事にお伺いいたします。
 三陸はるか沖地震の余震いまだおさまらない中の1月17日、近畿地方に直下型地震が発生し、5、000人を超すとうとい人命が奪われるという大災害となりました。亡くなられた方々と、その御遺族に対し深く哀悼の意を表するとともに、被災された方々に対し心からお見舞いを申し上げます。
 政府並びに関係自治体が、これらの方々に対する救援と復旧に全力で取り組まれておりますこと、そして、現地で日夜を分かたず活動を続けておられる多くのボランティアの方々に敬意と謝意を表したいと思います。20万人を超す多数の方々が、寒さの中で避難生活を続け、その長期化を強いられることを考えますときに、できる限りこれらの方々の生活の不安を解消する一層の努力を願いながら、1日も早いライフライン、交通・通信網の復旧と、産業・経済活動の再開など、復興に向け適切な措置を講じられますよう強く念じてやみません。
 県もこれまで、職員、警察職員、医療職員を派遣するほか、救援物資の輸送など救援活動に積極的に取り組まれました。県内企業や労働組合も、復旧のための技術協力や労力提供など、すべて自前で行う活動を続けております。県内自治体においても、職員の派遣を行うほか被災者の受け入れの体制を整えるなどの努力もなされております。今回の災害を契機に、県民の防災に対する意識も高まっています。県は、調査とともに次第に明らかになってきている原因や、救援活動に参加された方々の体験を参考にしたり、政府の動向に留意しながら、鋭意防災対策の検討に取り組んでおられるところと存じます。既に、県の防災計画の見直しの状況や県内市町村に対する県の指導、また活断層の把握等について、ただいまお2人の方から質問がありましたので、私は、これらの点については重複を避けながら、次の点に絞ってお伺いいたします。
 1つは、三陸海岸は、地震・津波の常襲地帯なのに、予知のための国の施設がないのはどういうわけなのか。今回の災害を機に、国に強くその設置を求めるべきと考えますが、いかがでしょうか。また、県独自でも設置を考えるべきと思いますが、これらについて明らかにしていただきたいと思います。
 2つ目は、防潮堤の水門についてであります。人力による閉鎖に時間がかかり過ぎるとか、また、先日の岩手日報の投書によれば、動力用のエンジンが不調という指摘もありました。そこで、防潮堤の水門の改善をどう図られるのか、お示し願いたいと思います。
 3つ、本県の製造業は、原材料、部品等の供給を阪神地域から受けるなど密接な関係があると考えられますが、これら企業への影響をどう把握されておられるのか、明らかにしていただきたいと存じます。
 さて、本会議場を通じてあなたと議論を交わすのは、この定例会が最後となりました。私たち日本社会党は、昨年末、あなたに対し、1995年度岩手県事業及び予算編成に関する申し入れ書を提出し、1995年度は3県総前期計画の最終年度であり、3県総に対する県民の期待が大きいことから、私たちの要求項目の実現と、また、後期計画の中に十分に反映していただくよう要請したところであります。
 思えば、平成3年、あなたは、この豊かな大自然に恵まれた岩手を日本で一番住みよい理想の地に築き上げるため、身近なところから地域づくりの活動を展開しようではありませんかと県民に呼びかけ、3県総、第三次岩手県総合発展計画を策定されたのでした。あなたは、これを指針として、これまで県政推進に努力してこられました。しかも、あなたの真摯で清潔な政治姿勢は多くの県民に新鮮な印象を与え、また、県政に対する信頼と期待もかち得られたと思っています。過日の演述で、あなたはこの4年間を振り返り、3県総の示す4つの領域について施策の展開を進めてきたこと、そして、今後の課題について淡々と述べられました。その上で、最後にあなたは、我が郷土岩手には大きな発展可能性があること、そして、この貴重な地域特性を大切にしながら、地域、地域で県民の主体的な活動が結集され、快適で活力に満ちた個性豊かなまちづくり、村づくりが展開されるならば、必ずや、この岩手の地に理想的なふるさとが築き上げられるものと確信すると力強い声で結ばれたのであります。私の乏しい理解力をさらけ出すようですが、私は、あなたの演述から、平和と環境が人類共通の課題であるこれからの地球時代を生きる哲学を感じた次第でした。
 5年後には新しい世紀を迎えます。地方分権もかなり現実のものとなっているでしょう。逆に、岩手の農林漁業が自由貿易体制という厳しい状況に置かれることも予測されます。このような21世紀の岩手を展望して、あなたの所感の一端をお聞かせ願いたいものと存じます。
 次に、地方分権の推進についてお伺いいたします。
 御承知のように、政府は昨年末、地方が実情に沿った個性あふれる行政を展開できるよう、その自主性を強化し、地方自治の充実を図っていくことは民主政治の原点であるとして、いわゆる地方分権大綱を決定し、今国会に地方分権推進の基本理念や地方分権の推進に関する委員会などを定めた法律案を提出することを明らかにしました。その法律案の要綱がきょうの新聞で報じられていますし、朝日新聞は、大綱を越える地方分権法をという社説を掲げ、分権推進委員会の権限のなお一層の強化や委員会の構成などについて、分権に向けての明確な前進を強く求めています。
 また、これまでに国会も分権推進を決議しており、地方6団体や地方制度調査会も、地方分権推進について意見書や答申を提出しております。私は、地方6団体が国に依存しつつ、地方は責任を回避するというような甘えの姿勢をみずからただし、まず、地方が率先して地方分権について具体的な提言を行う必要があるとしたその姿勢を、そして、地方制度調査会が、地方分権推進法は時限立法として、おおむね5年程度で具体的成果を上げることを目標とすべきであるとした答申を高く評価しているところです。
 また、長洲神奈川県知事が、昨年12月30日付朝日新聞論壇に、今回が分権実現へのベストでラストチャンスだという提言を寄せています。その要旨を紹介いたしますと、第1に、分権の基本理念と見直しの方向と手順を示す分権推進法を制定すること。同時に実施状況を監視する第三者機関を設置すること。第2に、分権型社会にふさわしい税財源システムを実現すること。そのため3つのゲン、すなわち地方の権限、財源、人間をセットで充実させることだとし、その上で、分権が進めば私たちの暮らしが実際にどう変わるのか、その具体的な姿を、県、市町村はもとより、マスコミの力をお借りして広く訴え、住民の理解を得る努力をしなければならないし、国会が主導権を発揮すべきだと、大変示唆に富んだ内容であります。
 私たち日本社会党は、自治行政体制について、次のように考えています。すなわち、市町村がまず主体であって、地域づくり、住民の福祉、健康、安全及び教育、文化等住民生活に直接かかわる事務を行うこと。その上で、県は、医療、交通、試験研究、産業の育成・養成など広域的な機能を基本に、市町村に対する支援、調整、補完を担うものとしています。したがって、国からの機関委任事務、一説によれば、県にあっては8割、市町村にあっては4割がそれであると言われていますが、これは廃止することとしています。ただし、国政選挙や旅券等国との協力については、これを保障する方途を創設するとしています。県内においても、去る16日、町村会定期大会が地方分権の推進に関する特別決議を議決したことが報道されています。
 そこで、お伺いいたします。県は、地方分権推進研究会を設置して検討研究を進めているようでありますが、現時点での成果を明らかにしていただきたいと存じます。また、今後、市町村との連携をどう図っていかれるのか、お考えをお聞かせ願いたいと存じます。長洲提言にありました分権を推進する人材の育成は不可欠のことと思いますが、この点について県のお考えをお聞かせいただきたいと存じます。
 次に、県版行政改革についてお伺いいたします。
 ただいま申し上げました政府の地方分権大綱は、国及び地方公共団体の責務の中で、地方行政の改善・充実を進めること、行政全体の簡素合理化を進めることを明示しています。また、昨年成立した地域保健法によって、平成9年度をめどに保健所の統廃合が検討されているところだと存じます。こうした背景もあってか、県は、行財政改革を進められるようであります。
 そこで、お伺いいたします。新たな行政改革を推進する目的と課題は何か、また、推進の方法についても明らかにしていただきたいと存じます。
 次に、環境保全についてお伺いいたします。
 国は、昨年12月、中央環境審議会の答申を受け、環境基本計画を決定しました。循環、共生、参加、国際的取り組みの4つを長期的目標として、持続的発展可能な社会を目指し、21世紀初頭までの施策の方向を明らかにしたこの基本計画決定の意義は大きいと考えます。また、国土審議会が2010年、つまり21世紀初頭を目標とする新しい全国総合開発計画づくりに取りかかっているのでありますが、これに対し、1月13日付の朝日新聞は、生き方の反省に立った全総をという社説の中で、要旨、次のことを述べています。すなわち、戦後の日本はひたすら経済の発展を追求してきた。昭和37年以来の4つの全国総合計画は、基本的にそのための道具にすぎなかったこと。その結果、高い生活水準をかち得たが、反面、資源の乱費、環境の破壊、際限なく欲望を満たそうとする心の荒廃を招いた。こうして、あふれるごみや深刻な大気汚染は、こうした大量生産、大量消費、大量廃棄の経済が限界に近づいていることを示していると言える。したがって、21世紀の豊かさは、現在の生き方の反省に立ったものでなければならず、自然と共生し、時には便利さや快適を捨てる必要があるのだというものであります。いみじくも、環境基本計画は、その前文の中で、物質的豊かさの追求に重きを置くこれまでの考え方、大量消費、大量生産、大量廃棄型の社会経済活動や生活様式は問い直されるべきであると、同じ現状認識を示しているのであります。しかし、せっかくの4つの長期的目標の達成状況や施策との関係などを具体的に示す総合的な指標が組み入れられなかったこと、環境影響評価制度についても調査研究を進めるとされるなどの問題を残すものとなっています。
 他方、国土空間のとらえ方として、環境の恵沢を確保する観点から、新たに里地自然地域等の概念が取り入られたこと、環境教育・環境学習等の整備や廃棄物の発生抑制、リサイクル推進のための経済的措置として、家庭系廃棄物についても、従量制による処理手数料の徴収やデポジットなどの活用についても幅広く検討することなどが盛り込まれています。このような国の方針に留意して、県も、環境保全についてさらに施策の推進が必要であると考えますが、私は、特に自然環境の保全に絞ってお伺いいたします。
 1、環境体験、研修施設的機能や学習センター的機能を持った拠点施設の検討の状況についてお知らせいただきたいと存じます。
 2、平成7年度における県版ナショナルトラストの計画はどうなっているのか。また、滝沢村春子谷地など自然環境保全地域候補地の保全地域指定に向けての作業の進捗状況についても明らかにしていただきたいと存じます。
 次に、リンゴの輸入に伴う諸問題についてお伺いいたします。
 リンゴは本県基幹作物の1つであり、昨年のニュージーランド産に続いてアメリカ産リンゴが輸入されました。試算によれば、流通量の1割の輸入で、価格は3割下がるとの指摘もあります。リンゴ栽培農家の経営は一段と厳しいものになることが予測されます。県議会も昨年3月、アメリカ産輸入リンゴ解禁阻止について意見書を決議しました。
 そこで、お伺いいたします。
 1、リンゴ栽培農家に対する指導と支援についてお示しいただきたいと存じます。
 2、寄生病虫害に対する県の防疫体制は万全か、明らかにしていただきたいと存じます。
 最後に、岩手県立大学についてお伺いいたします。
 県立大学基本構想委員会の委員長であります船越岩手大学学長は、去る2月9日、県に答申をされた後、20世紀の光と影を踏まえ、21世紀を展望した未来志向型の大学を目指した。深い知性と豊かな感性を備えた人間を育成するため、学部間の教育連携、実学実践型の教育を重視した構想にまとめたと談話を発表しております。
   〔副議長退席、議長着席〕
 いよいよ、平成10年の開学に向けてスタートされるところまで来ましたことはまことに喜ばしく、また、県民の期待も大きいところであり、改めて関係者の御労苦に感謝を申し上げる次第であります。
 ところで、平成7年版河北年鑑によれば、東北各県の大学・短大の設置状況と現役生徒のいわゆる大学進学率--これは県内に限定したものではありませんが--は、宮城県は大学が10、短大が9、進学率は26・6%、福島県は大学が7、短大が5、進学率は26・6%、青森県は大学が7、学部のみが1、短大が7、進学率は26・4%、秋田県は大学が2、短大が5、進学率は26・9%、山形県は大学が2、短大が4、進学率は30・2%、本県は大学が4、学部だけが1、短大が6、進学率は27・1%となっております。宮城県では設置数が一番多いのに、なお、平成9年度に県立大学を開学するということであり、秋田県では、県立大学の構想を検討中であると聞いております。山形県は、公設民営のユニークな大学がありますので、東北各県がそれぞれ、やがては県立大学を有することになるでありましょう。また、紹介した事実から、大学進学率は大学数の最も少ない山形県が最高で、大学の数の最も多い宮城県は最低だという予想外の事実がありました。もっとも、これは単純な比較そのものが無意味なのかもしれませんが、大学そのものが開かれたものであり、それぞれが特色を持っていることによるものであり、大学の設置されている地域特性などは、選択の要素として重視されていないのではないかと考えた次第です。とするなら、岩手県立とはどんな意味を持つのか、自問した次第であります。私は、岩手県立大学は、岩手のすぐれた自然環境のもとで、また、繩文時代から、啄木も、賢治も生きてきたという歴史と風土と文化という社会環境の中で、思い切り研究と教育活動ができる高等教育機関であってほしいと考えます。だから、学生を岩手県に限定するという狭い考えにとらわれず、全国に開かれた大学を指向するということでいいのではないのか。その上で、こうした環境の岩手県立大学で学んだ学生が全国各地で有為な活躍をする、そして、学生時代を思い起こし、ふるさと岩手で働きたいという人があれば心よく迎える。そういう視野に立っていいのではないかと考えます。
 そこで、大学づくりについてですが、今後、発足までの間、専門家による準備委員会が設置され、教授陣や講座の決定、キャンパス等について検討決定されるという運びになるでありましょう。私は、その過程で、例えば、小・中・高校の先生方とか、農林漁業者、中小企業経営者、伝統的な芸能、工芸などその道の達人とか、それを支えてきた人々など、ぜひ、広く県民の声を聞いてほしいのであります。恐らく、大学のキャンパスについても、講座の開設やカリキュラムの編成についても、いろいろ意見が出されることでしょう。県内の大学はもちろんのこと、他の大学との連携を図ることや、特別講座の開設など県民の生の声を聞き、県立だからやれることをぜひやってほしいと考えます。既に申しましたように、船越学長は、20世紀の光と影を踏まえ、21世紀を展望した未来志向型の大学を目指すと述べられました。光と影という表現は、言い得て妙なるものであり、県民の声もこれを踏まえたものが出るでありましょう。それらを準備委員会がディスカッションをしていくという、そういう努力をしてほしいと考えます。
 地域としての岩手と岩手の人々とが切り結ぶ中から誕生した大学、そこで学びながら未来に生きる道を追求する、抽象的ですが、そういう大学が岩手県立大学なのではないかと考えた次第です。ぜひ、あなたの言葉で岩手県立大学の建学の精神をお聞かせ願いたいのであります。
 以上で、私の質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事工藤巌君登壇〕
〇知事(工藤巌君) 佐藤啓二議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、本県への地震・津波の予知観測施設の設置についてでございますが、三陸沿岸地域は地震の多発地域であり、過去に幾たびも津波の被害を受けておりますことから、県といたしましては、これまで気象庁や地震予知連絡会に対し、特定観測地域の指定と地震・津波の観測体制の強化を要望してきているところであります。現在、本県には、気象庁が盛岡市など8カ所に設置しております気象観測施設のほか、国土地理院が久慈、宮古、水沢の3市に地殻変動連続観測施設を設置しており、その状況は、人工衛星を利用して国土地理院で集中監視され、地震予知等の防災の基礎資料に活用されているところであります。地震・津波の予知観測につきましては専門性が極めて高い分野でありますので、引き続き国に対して観測体制の強化を強く要望してまいりたい、かように存じております。
 次に、防潮堤の水門についてでございますが、現在、本県の海岸防潮堤には約480の水門、門扉が設置されており、これらについてはその管理を委任している沿岸地域の市町村長により、日常の巡視点検や開閉操作の試運転が実施されているほか、必要に応じ県が補修を行うなど、緊急時において円滑な操作が行えるよう保守に努めているところであります。また、今年度新たに海岸水門等緊急改善事業を創設し、その操作に大きな労力と時間を要する手動式の水門について動力化を図るなど、積極的に施設の改善をも進めているところであります。今後とも、関係市町村との連携を密にし、水門等の適正な管理に努め、津波災害から県民の生命、財産を守るべく努力してまいる所存でございます。
 次に、阪神・淡路大震災による県内企業への影響についてでありますが、本県と関西地域との交流が年々活発化してきており、このたびの大震災による本県商工業への影響が懸念されるところであります。このため、県としてもその影響について調査を実施しているところであり、最終の調査結果をまとめるまでには至っておりませんが、現段階においても、小売業界ではケミカルシューズや酒類などの仕入れができず、商品構成の変更を余儀なくされている例や、納品先である企業の被災により、水産加工業や製めん業などの一部にいまだ正常な取引のめどがたっていない企業があるほか、関西以西への輸送コースの変更による納期の遅延や、神戸港の使用不能による輸入品配送等の混乱などの影響を受けている企業も見られます。今後におきましても、情報の収集に努めるとともに、県内企業への影響が最小限に食いとめられるよう、関係機関とも連携をとりながら対処してまいりたいと考えております。
 次に、21世紀の岩手を展望した所感についてでありますが、国においては、今後、21世紀に向けた国土政策を進める上で留意すべき経済社会情勢の変化として、地球時代、自然再認識の時代、人口の減少と高齢化時代、新地方の時代、本格的な高度情報化の時代、この5つを掲げ、従来とは異なる発想が必要であるとしているところであります。このような変化を踏まえて、今私たちに求められているのは、大量生産とそれによってもたらされる大量消費に支えられた高度成長や物質万能の考え方を転換し、自然と共生し、国内外の人々と幸せを分かち合う温かい心を培いながら、質の高い社会を形成し、次の世代に引き継いでいくことであると思います。本県は、変化に富んだ広大な土地、きれいな空気と水、豊かな自然、ゆとりある良好な生活空間、さらには歴史的、伝統的文化など、新しい時代の変化に対応しながら、大いなる飛躍を遂げ得るすぐれた特性を有しております。私は、県民の皆様1人1人が、このような貴重な地域特性をそれぞれに認識され、また、十分に生かしながら、ともに手を携えて個性豊かなまちづくりなど、21世紀の新しい社会にふさわしい地域づくりに努めるならば、必ずや、真の豊かさが実感できる地域社会がこの岩手の地に築き上げられていくものと確信いたしております。
 次に、地方分権の推進についてでありますが、政府は、今国会での地方分権推進のための法律の制定を目指しているところであり、本県としてもこうした動向に対応するため、いろいろな面で準備を進めているところであります。
 お尋ねのあった地方分権推進研究会では、国との関係で改善が必要と考えられる事項について調査や、県政モニターを対象とした調査などを行っているところであります。また、市町村との連携については、市町村は住民に最も身近で地域づくりの主体でもあることから、地方分権の推進に当たっても、市町村の意向を踏まえながら十分連携を図り、県と市町村が一体となった取り組みを進めることが大切であると存じます。さらに、人材育成については、地方公共団体がみずから政策を自主的に決定し推進していくためには、総合的な視野に立って企画立案のできる人材が求められていることから、今後はより一層、政策形成能力の高い職員の育成に力を入れてまいりたいと存じております。
 次に、県版行政改革についてでありますが、現行の行政改革大綱を策定した昭和59年から10年が経過しており、最近におきましては本格的な高齢化社会の到来に対応するための福祉、保健、医療行政のあり方など、社会経済情勢の変化に伴う新たな行政課題が生じております。また、県勢の一層の発展のため、3県総に掲げる諸事業などを着実に推進していく必要があります。一方、行財政環境は依然として厳しい状況にあることから、行政の肥大化を抑えながら限られた行財政資源の中で、これら行政需要に適切に対応していくことが求められております。したがいまして、行政の組織・運営全般にわたる全庁的な総点検を行うとともに、行政改革推進懇談会の意見などを踏まえ、新たな行政改革の方向を定め、県民の理解と協力を得ながら、行政改革を計画的かつ着実に推進してまいらなければならないと存じます。
 次に、環境保全拠点施設の検討状況についてでありますが、今日の環境問題は、経済社会の仕組みや我々の日常生活に深くかかわるものでありますことから、すべての人々の環境保全に関する正しい理解と生活様式の見直しが求められているところであります。県におきましては、現在、衛生研究所と公害センターの再編整備について検討を進めているところでありますが、この中で、従前の監視測定、調査研究等の機能に加え、大気や水質、騒音の状況、水生生物や野生生物、巨樹、巨木林などの環境情報の提供などの機能を備え、こうした環境保全に対する取り組みも機能的に行い得るよう検討してまいる考えであります。
 次に、県と市町村が連携しすぐれた自然を有する土地を買い取るための緑あふれる県土保全事業についてでありますが、これまで沢内村及び前沢町に助成しております。平成7年度につきましては、既に二、三の要望が出ているところでありますが、さらに市町村に周知を図り、適切に事業採択を進めてまいりたいと考えております。
 次に、岩手県自然環境保全審議会から答申のありました自然環境保全地域候補地の指定の進捗状況についてのお尋ねでございますが、春子谷地につきましては、指定の実現に向けて、現在、地元滝沢村の協力を得て、原案策定のための作業を進めているところであり、今後は、地権者や関係機関との調整を行っていく考えであります。その他の候補地につきましては、対象となる地域がいずれも国有林の区域内であることから、現在、青森営林局と鋭意調整中であり、今後におきましても、自然環境保全地域としての指定に向けて努力してまいりたいと考えているところであります。
 次に、リンゴ栽培農家に対する指導・支援並びに防疫体制についてでございますが、ニュージーランド産に続き、今般、米国産リンゴの輸入も解禁され、今後、国内外の産地間競争が一層強まるものと認識しているところであります。本県が今後ともリンゴ主産県としての地位を強固にしていくためには、全国に先駆けて普及してまいりました矮化栽培をさらに拡大し、省力低コストによる高品質なリンゴ生産を基本に、競争力のある産地形成を強力に推進していく必要があると存じております。このため、園地の基盤整備や優良品種への転換など、高生産性園地への改善対策、熟度・色別センサーを備えた近代的な選果施設の整備などを推進しておりますが、今後につきましても、これまでの対策に加え、より省力化が図れる新品種や栽培技術の開発を進めるなど、生産農家への支援対策を強化してまいることが肝要であると考えております。
 一方、コドリンガや火傷病などの病害虫防疫体制でありますが、輸入果実に対しては、徹底した薫蒸、低温処理がとられており、これら病害虫の防疫体制は十分に整備されていると存じております。しかしながら、国内で未発生の病害虫が万が一にも侵入することとなれば、リンゴ生産に大きな影響を受けることになりますので、国に対しましては、水際の検疫体制には万全を期するよう、再三にわたり要請しているところでありますが、県といたしましても、独自にこれらの病害虫の観測地点を新たに設置するなど、監視体制の強化を図っているところであります。
 次に、県立大学の建学の理念についてでありますが、先般の県立大学基本構想検討委員会の答申を受け、去る2月15日、その内容をもとに県の基本構想を策定したところであります。構想では、自然、科学、人間が調和した新たな時代の創造と、ともに支えともに生きる人間性豊かな社会の形成を、今後私たちがつくり出すべき理想像として掲げ、これら新たな時代の創造と社会の形成に役立つ深い知性と豊かな感性を備え、高度な専門性を身につけた自律的な人間の育成を基本理念としております。私は、20世紀と21世紀の節目に開学する県立大学は、真に豊かで活力ある地域社会を形成し得る人間を育成するため、本県が新たな世紀に向けて整備する極めて重要な事業であると認識しているところであります。今後、私たちが物心ともに豊かな地域社会を形成し、本当の幸せを実感しながら生きていけるよう英知を結集し、諸科学の進歩の上に立った人間性尊重の価値観のもと、自然、科学、人間が調和した社会を形成していくことが肝要であると存じます。幸い、本県は豊かな自然に恵まれております。また、古代から営々と人々をはぐくみ続け、御指摘がありましたように啄木、賢治を初め、多くのすぐれた先人を生み出してきた美しい風土があります。私は、このような環境の中でこそ、新たな時代を創造していく担い手として、若者の知性と感性が見事に開花されていくものと信ずるものであります。そして、この岩手の地が、豊かな自然に恵まれ、質的に高い文化に支えられた、ともに支えともに生きる人間性豊かな社会として築き上げられるものと確信しております。したがって、県立大学はこのような地域に創設される岩手の大学として、真に豊かな地域社会の形成に大きく寄与することができるように、地域に根差した自由な精神活動のための知的活動拠点として、科学の発展を支える創造的な学術研究と、幅広い人間性に支えられた開かれた教育の場でなければならない、こう考えているわけであります。
 私は、県民1人1人が、郷土岩手を愛し、その未来を信じ、地域の個性や特色を生かした創造的で活力のある、まさに幸せを実感できるような理想的なふるさとの実現に向けて着実に前進していく上で、この県立大学が大きな役割を果たすことを強く念願しているものでございます。
〇議長(佐々木俊夫君) 次に、千葉浩君。
   〔25番千葉浩君登壇〕(拍手)

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