平成9年6月定例会 第10回岩手県議会定例会会議録

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〇27番(三河喜美男君) 折居議員の林野火災に関する質問に関連しまして、私から二次災害防止対策について林業水産部長にお伺いをいたします。
 5月2日に発生しました紫波町、石鳥谷町における林野火災の被害地につきましては、私も県議会農林水産常任委員会の一行とともに、去る6月11日に県内調査の折に現地を視察してまいりました。焼け焦げた林木が立ち並び、荒涼とした風景にさま変わりし、樹齢40年以上も経過した美しく手入れの行き届いた杉などが無残な姿で残されておりました。長年にわたり丹精込めて営々と育て上げた森林が、一瞬にして灰じんに帰した森林所有者の心中を思えば心が痛む思いであります。また、森林は県民共通の財産でありますことから、県民にとりましても大きな損失をこうむったものであります。さらに、下草などの下層植生や養分に富んだ腐食土層も消失しているなど、森林の生態系にも少なからず影響を与えるものと考えられます。
 森林は、水資源の涵養機能はもとより、山崩れなどの災害防止、環境保全など、多面的な公益機能を有していることは御案内のとおりでありますが、今回の林野火災によりこれらの機能が著しく低下したと考えられますことから、地域住民の方々はこれからの梅雨時に当たって、長雨や豪雨による土砂の流出、山崩れなど、二次災害の発生について大きな不安を抱いております。
 思い起こしますと私の地元であります久慈市においても、昭和58年に被害面積が約870ヘクタールに及ぶ大規模な林野火災が発生しておりましたが、その際には激甚災害法の指定を受け、被害後、直ちに二次災害防止のため治山事業を実施していただいたところであり、その結果、山崩れなどの災害は未然に防止され、現在は緑豊かな森林に復旧されているとともに、県土の保全が図られているところであります。このことから私は、治山工事は二次災害防止対策として大いに効果があり、かつ現在も有効に機能しているものと考えるところであります。昭和58年発生の久慈市ほか8市町村の林野火災の際には、治山事業などどのように行われたのでしょうか。また、その事業効果について、県はどのように把握しておられるのかお伺いをいたします。
 次に、今回の紫波町、石鳥谷町の林野火災での二次災害対策についてでありますが、私が6月11日に現地を視察した際には、既に沢に土砂が流出している箇所が見受けられ、早急に治山対策が必要であると実感をいたしたところであります。激甚災害法の適用にならない今回の森林災害に当たって、この6月議会に二次災害防止のための緊急治山事業の実施に要する経費を補正予算に計上されていることについては高く評価するものであります。その内容は国庫補助事業と県単独事業に区分されており、紫波町分は県単事業で実施するとのことでありますが、これはどのような理由によるものか。1火災1救済事業として扱うべきものと考えるところであります。御所見を賜りたいと思います。
 なお、山で雷に打たれて黒焦げになった材を、ひきますと癖のない素直なすばらしい材料が得られることは、昔から承知されておるところであります。県内には葛巻木材さんとか、あるいは江刺に木鳳舎さん等、薫煙熱処理木材に取り組んでおられるところがありますので、表面の焦げた林木の利用についても一考を願いたいと思うのであります。
 いずれにいたしましても、本県においては過去にも大きな林野火災が幾度も発生をしており、そのたびに森林所有者を初め関係各位は、大きな困難を克服しながら森林の復旧に努めてこられたところであります。これまでの経験を踏まえながら、県、両町、森林組合等の関係者がともに協調して復旧に当たり、一日も早く回復されることを祈って、私の関連質問を終わります。
   〔林業水産部長中村陽兒君登壇〕
〇林業水産部長(中村陽兒君) まず、昭和58年発生の久慈市ほか8市町村の林野火災における治山事業の実施状況でありますが、昭和58年度に緊急治山事業で堰堤工や谷止工などの治山ダム工を久慈市、大槌町がそれぞれ5基、西根町、岩泉町がそれぞれ1基、あわせて12基を実施したほか、昭和59年度には久慈市において、復旧治山事業で治山ダム工1基を実施しております。このほか、岩泉町の保安林内においては、保安林機能を早期に回復させるため、保安林改良事業、保育事業を実施したところであります。この結果、治山ダム施工後は不安定土砂の流出が抑止されるとともに、山腹崩壊が防止され、また、さらに治山施設周辺の森林が復旧されたことから、森林の有する諸機能が十分に回復していると考えているところであります。
 次に、5月2日に発生した紫波町、石鳥谷町の林野火災での二次災害防止対策についてでありますが、可能な限り、国の補助事業である災害関連緊急治山事業の導入を図るため、国と鋭意協議を重ねてきたところであります。その結果、紫波町については石鳥谷町に比較して、焼けた表土が浅く不安定な堆積物が少ないこと、また、山腹、溪流とも勾配が緩く、不安定土砂などが余り見受けられないこと、さらに林野火災の激害地が山奥に集中し、保全対象まで遠いことなどの理由によりまして、国庫補助事業の採択は難しいと判断されたものであります。
 しかしながら、国庫補助事業の対象にはならなかったものの、県といたしましては現地の状況などから判断して、災害防止対策は必要と認められることから、県単独事業の実施により二次災害の発生防止に努めてまいる所存であります。
 次に、被害木の利用についてでありますが、被害木はくい材などの土木用資材、垂木などの一般建築材としての利用のほか、木炭化して住宅の床下調湿用等に利用することが考えられます。このため、まず被害木の強度などを確認する必要がありますので、県林業技術センターにおいて性能評価試験を実施し、技術的な指導を行うことといたしております。
 また、具体的な利用に当たりましては、岩手県森林組合連合会や地元森林組合を初めとする関係団体等とも連携を図りながら、森林所有者の意向などを踏まえて検討してまいりたいと考えております。
〇議長(那須川健一君) 次に、菊池勲君。
   〔35番菊池勲君登壇〕(拍手)

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