平成9年12月定例会 第12回岩手県議会定例会会議録

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〇26番(折居明広君) 折居明広であります。
 受理番号第10号「夫婦別姓」制の導入反対について賛成討論を行います。
 人間社会は古今東西、それぞれの気候、風土をもとにした歴史と文化を創造し、それに従って個々の生活を形成してきたところであります。我が国もその例に漏れず、独自の日本文化あるいは価値観を長い時間を費やして創出してまいりました。どの時代にも社会の変化あるいは科学技術の進歩により、その文化と価値観には変化が伴うものでありますが、一方で、時代の変遷に左右されることのない価値観があることもまた見逃せない事実であります。昨年の2月、法務省が夫婦別姓の採用を柱とする民法の一部を改正する法律案要綱を法務大臣に答申したところ、多くの国民の強い反対意見によって国会への上程が見送られたことは既に御承知のとおりであります。
 しかし、その一方で、一部の方々は相変わらずこの制度の導入を主張し、さきの通常国会では民主党提出の民法改正案が衆議院に提出され、また、参議院でも一部有志議員が改正案を提出する等の動きも見られましたが、幸い全国的に波及していった別姓反対の地方議会決議や、良識ある方々の慎重な対応により両案とも廃案となりました。しかし、別姓推進派は民法改正をあきらめたわけではなく、この問題は新たな段階に入ったと申せましょう。
 この事実を踏まえて、私は、以下述べる理由によって、夫婦別姓制の導入反対に賛成するものであります。
 1、夫婦別姓制の導入は、我が国古来の習慣を根底より覆し、家庭の崩壊をさらに加速させることが予想され、大きな社会的混乱が予想されます。
 2、家庭は次の世代の育成にとって最も重要な場であり、教育の最も小さな単位であり、原点であります。今日、個人の尊厳なり自由は保障されなければならないことはもちろんでありますが、また、核家族化の流れの中で家庭崩壊が大きく社会問題化してきていることも見逃せない事実であります。こうした状況の中で夫婦別姓制を導入することは、我が国の将来に向かって禍根を残すことになりかねません。
 3、我が国における夫婦同姓制は、明治維新以降30年余の議論の末導入されたものであり、当初、儒教精神に基づき別姓制を採用しようとしていた政府に、国民の側からの強い反発があって同姓制となったものであります。それ以来、国民生活に長く支障なく定着してきた事実からすれば、別姓制の導入は伝統と文化を根底より崩しかねないものと思料されるものであります。今、我が国に求められていることは、むしろ独自の歴史に基づく伝統と文化の再認識と考えます。そして、最も懸念することは、民法相続法において家の系図、墳墓、祭礼神具等の分割相続を許さないとしている項を削除しようとすることも含めて、この制度の導入を可としたときのさらなる地方の過疎、そして地域社会や文化の崩壊であります。本県に限らず、今この国の各地方とその議会の最も重要な課題は、地域の活性化であり、若者の定着と結婚対策であり、地域古来の歴史と文化の再生であると言えます。極端な個人主義的発想に基づく制度を一部の人々の、しかも社会生活上のささいな理由によって改正することは、地方に住む者にとって心して避けなければならないことはもちろんであり、次の世代に誇りある文化と秩序を継承することは我々の努めでもあります。
 以上、申し上げましたが、何とぞ良識ある皆様方の御賛同を賜りたくお願い申し上げ、賛成討論といたします。終わります。(拍手)

〇議長(那須川健一君) 次に、斉藤信君。
   〔1番斉藤信君登壇〕


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