平成9年12月定例会 第12回岩手県議会定例会会議録

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〇3番(須藤敏昭君) 清和会の須藤敏昭であります。
 質問に先立ち、去る10月16日御逝去されました、故佐藤一男議員に哀悼の誠をささげ、御冥福をお祈りいたします。
 さて、国も地方も新しい行政、財政システムの構築と創造の真っただ中にあり、明治の維新、戦後の改革に次ぐ第3の改革と言われますとおり、当県にとりましても歴史的に重要な転換期であります。地球的規模で、直接、間接にあらゆる社会が営まれている中で、国家システムと地方のシステムが問われ、中央と地方の理念の確立、質と量の改革、すなわち地方にあっては、中央や都市の仕組み、整備に追随することからの脱却と創造が問われていると考えます。増田知事は、この極めて困難な時局の負託にこたえ、みずからドリームランド岩手の実現に積極的な御努力を傾注され、敬意を表するものであります。また、改革は自己意識の改革であり、ドリームランドは県民一人一人がその心にドリームを築くことでもありますので、知事の理念と気概に希望と期待をし、県民の皆様と新しい時代を拓くフロンティアとして努力する覚悟でありますので、その旗手たる知事並びに部局長の具体的、かつ、県民の感性に響く御答弁をお願いいたします。
 第1に、人材育成について伺います。
 三顧の礼を引くまでもなく、古今東西、人材を求めることはいかなる組織、事業体にありましても、時として命運を決する欠くべからざる命題であります。なおまた、現在の人的需要等を俯瞰しますとき、県が求めるすぐれた人材は比較的容易であろうと思います。しかしながら、さきの宮古市の例を挙げるまでもなく、単に事務的ミスあるいは一個人の過失では済まされない、県民が信じられない不祥事が続き、じくじたる思いであります。知事も同じ思いでありましょう。国立公園、国定公園、遺跡や史跡等々、この広大な自然と文化が複雑に錯綜する中で、一個人、一部局の、端的に言えば縦割り行政では困難な社会状況の中で、行政機能確立の職員研修と組織研修が必要であると考えます。ならばこそ、行財政改革指針に人材育成のための計画が盛り込まれ、そのプログラムが必置になったものと推察いたしますが、知事の職員育成にかける抱負と決意をお聞かせ願います。
 次に、県立大学の運営についてお伺いをいたします。
 岩手大学学長船越先生を委員長とする県立大学基本構想委員会の答申、さらに平成7年2月議会の佐藤啓二議員の質問と工藤知事の答弁を拝見いたし、建学の崇高な理念とその情熱に感銘いたしました。久々に大いなる光明を見出した思いであります。青雲の志を抱き、21世紀を担う有為な青年の知性と感性が、見事に開花するものと期待いたすものであります。この大事業を増田知事が引き継がれ、名伯楽として西澤学長をお迎えするなど、万全の体制で進められておられます。文部省との関係もあり、その運営の細部は公表の段階でないことは承知いたしておりますが、これまでの議会答弁によれば、推薦入学は県内高校卒業生を対象に、入学定員の30%の選抜予定とのことであります。その30%の選抜について、知事の方針案をお伺いいたします。
 大学入学試験が、社会と子を持つ家庭にあって相当の位置と重きを持ち、あるいは人生のスタートラインを決定する場合もあります。その入試制度は、国立大学某教授の言葉を借りれば、現在、概して大学入試は知識と試験技能で、言いかえれば、受験技術であり、主体となるべき人格、素質は問題外と断じているのであります。昨今、世界の名立たる大学において教授の採用と学生の選抜に知恵が出され、それが結果として幾多の歴史的成果を上げていることは明らかであります。また、古くは、中国の科挙の試験が知られておりますが、四書五経の一部が出題され、答案から聖人の気概が伝わるかどうか、すなわち、人格、人徳がにじみ出ているかどうかが合否の分かれ目となったそうであります。科挙の制度のよしあしは別として、現在の試験のあり方に学ぶところがあると思います。
 人はさまざまな環境によって育てられると言われますが、例えて岩手の風があるとするならば、この広大な県土の中で海風が吹くところがあり、山風あるいは北や南の風があります。また、青少年を育てた大地もしかりでありましょう。さまざまな環境の中で、言いかえれば、岩手の数多い地域文化の中ではぐくまれた多才な県民の子弟がひとしく青雲の志を遂げることは、県下の公立79校、私立13校に学ぶ5万余名の喜びと励みであり、教職員、父兄、県民の切なる願いでもあります。当大学のスタートに当たり、均衡ある選抜と知事の次世代にかける情熱の信とするところをお伺いするものであります。
 次に、執行体制とその目指す行政の提供について伺います。
 人と組織は不可分であり、改革指針におきましても、地方分権時代の新たな行政執行体制の必要性を掲げております。既に本年4月には、農政部を除く全庁的改組、改編が実施され、特にも権限と予算の付与を初めとする地方振興局の重点的整備が、知事の方針と県民の期待にこたえて第一線の負託を担っております。この振興局について、さきの議会で知事は、新進気鋭の職員の重点的な配置を行ったと答弁されましたが、大いにうなずかされるものであります。また、同指針は、人件費の抑制を掲げ、具体的方策の例として新たな定数管理計画の策定を明記しております。国、地方自治体はもとより、民間企業、県民生活等々、日本全体がなぜこの改革に至ったのかの原点の一つを考えるとき、当然に検討されるべき事項であります。しかしながら、足らざれば一律に切るのではなく、重点的配分、すなわち、切るに足る真に県民の求める行政提供こそ必要であろうと思います。指針の具体的方策にいわく、県民の視点に立った行政サービス、いわく、公共施設の利用時間、窓口業務の改善等であり、なお、今次定例会に提案されております農政部の組織改革の目的としている集約的質の向上と推察をいたします。この定員管理と行政目的達成の相関的方針をどのようにお考えか、また、提起をされようとしているのかお伺いをいたします。
 次に、重要施策として取り組まれております7点についてお伺いします。
 まず第1に、連携と交流に関し、県際交流についてお伺いします。
 知事は、国際社会を初め従来の行政単位、すなわち、県境、市町村境のボーダーレス化の現状に強い認識を持たれ、重点施策のまずその第1に、連携・交流を位置づけされました。その地域間交流の中で特色のある顕著な県際交流は、地勢的かつ歴史的な要素のもとに、実際活動の最も多い県南と推察いたしております。その一例を挙げるなら、花泉町を主会場に、岩手の両磐、宮城の登米郡、栗原郡を主とするスポーツ文化等の交流は、ざっと数えても10指を超えます。また、水田、畑作の相互の出作、学校教育は言うに及ばず、商業圏、医療圏、産業圏、なお仙台以北は通勤圏内であります。テレビ電波もしかり、県南では宮城県政と宮城県知事に毎日接しているのであります。両磐の市町村16万人、登米、栗原の宮城県北18市町村約19万人、あわせて約35万人の生活圏にある県内市町村は、すべての点で岩手と宮城のボーダーレスの中で位置づけしなければならないのであります。
 しかしながら、県際の課題も多く、例えば花泉町は広域の核であります一関市の市街地と結ぶ国道、県道は342号ただ1本。県道を利用して一関市と結ばれるのは、宮城県を通過するか東磐井に接する一番遠いところに出るのであり、県都盛岡に東北本線を利用すれば、すべて一関で乗りかえをしなければならないボーダーがあり、米の出荷は属人主義で、宮城県人は岩手でつくって宮城米として高く売り、岩手県人は宮城でつくって収穫のとき岩手米として安く売られるなどなどの、時として県境のいわゆる行政の悲哀さえも感じるのであります。このような現状にあって、知事方針を一関地方振興局が中心となり、同千厩、大船渡が一丸となって両県民との各般にわたる諸施策を先導的かつ精力的に努力され、ハード、ソフト両面において大きな効果、向上が期待され、感謝を申し上げるものであります。
 日本未曾有の大変化は、三つ指摘されております。一つは少子化、二つはボーダーレス化、三つはソフト化であります。また、西洋史学者の増田四郎先生は、ドイツ、イタリア等の例をとって、人々が自分の住む自然と文化に強い誇りを持っているとし、国家を軸とする歴史観ではなく、地域を単位としてとらえ直す地域主義が重要と説いておられます。まさに、増田知事の大県岩手の重要施策と軌を一にし、ボーダーレスにかける知事の卓見と政策の眼力に敬意を表し、その一つ、県境整備に真に大いなる希望の光明を得て、期待いたすものでありますが、特にも、まず仙台圏を含む定住化の推進と交流、並びにこれに伴う条件整備の積極的お考えをお伺いいたします。
 次に、農業所得の向上策についてお伺いします。
 農業に係る現況と今後の見通しについては瀬戸際と形容されるごとくであり、議会におきましても各定例会はもちろんのこと、特別委員会においても各議員諸兄、鋭意努力いたしておりますが、私は、常々農作物の流通経費に関心を持っておりましたので、その資料を見ますと、販売額に占める流通経費の割合はリンゴで35・6%、レタス39・6%、リンドウ25・1%、キュウリ27・8%などであります。また、リンゴ生産者から直接お聞きした中には、物によっては40%を超えるとのことでありました。これらを見聞し、某市の生産者が、高いリンゴを出荷しているが採算が合わないとの話には、納得せざるを得ないのであります。仮に3、000円のリンゴを出荷したとすると、市場手数料の流通経費が1、068円、生産者の手取りは1、932円であります。この手取り額は生産者であります農家の再生産単価、言いかえれば再生産意欲に値するものでありましょうか。生産費と販売価格との対価を考えれば、生産者の採算に合わないとの嘆きがおのずと理解できるものであります。例えば、選果場の経費いわゆる選果手数料がありますが、この経費は固定費である設備費と流動費、すなわち稼働率との相関において算出されるものと認識いたしますが、これらの流通経費の実態をどうとらえているのかをお伺いします。
 茨城県のある農協は、手数料1%で180人の従業員、職員をやりくりするなど経費削減にしのぎが削られ、農家所得の向上に専心の努力を払うべきとき、行政が営農活動を支援する立場から、農産物の流通についてどう取り組まれるのかお伺いします。
 次に、県立美術館の整備についてお伺いします。
 本県におきましては、県民の芸術文化の祭典であります岩手芸術祭が今年50周年の記念すべき年を迎えたほか、県内各地で各種の文化施設の整備が進められ、県民の芸術文化水準の向上が日々図られているところであります。また、本県では、これまで数多くのすぐれた美術家を輩出し、県立美術館の整備は長年念願してきたものであります。加えて、近年、文化・芸術活動の多様化等を背景として、創造的な感性や個性の重要性が一層求められております。
 そこでお伺いしますが、県立美術館の規模や構造、収蔵予定作品をどのようにお考えでしょうか。また、美術品の相互交換の鑑賞も必然なことから、他県等との美術館と比較してその位置づけをどのようにお考えでしょうか。あわせて、現在の取り組み状況についてお伺いします。
 次に、自然との共生について伺います。
 豊かな自然を初めとする快適な環境は、真にゆとりと潤いのある暮らしを実現する上で必要不可欠であるとし、仮称県環境基本条例の制定に取り組むと伺っております。また、伝えられるところによりますと、内容の一つに、景観の保全と環境との調和があります。景観は、等しく県民と来県者等が享受するものであり、この考え方に賛同するものであります。また、他県の景観に関する規定の例では、直接高さを制限するのではなく、景観が望める高さとしている例もあるとのことでございます。県内にも高層ビルが建築される現状にあって、私は岩手のすばらしい景観を保全するためには、施策としてあるいは県民事業者それぞれの立場で、大きな意味での環境に配慮すべきときと痛感いたしております。
 そこで、来年を目途に制定する環境基本条例を景観を含めてどのように考えているのか、制定しようとしているのかお伺いいたします。
 次に、住宅対策についてお伺いします。
 県は、現在ポスト3県総いわゆる第4次の総合発展計画に着手され、平成11年度から22年度にわたる県勢の発展方向と、それを実現するための基本方策を定めようとしておられます。また、国においても、第5次全国総合開発計画が本年度中に策定される予定であります。21世紀に向けての日本の方向を定めるものとして、大きな注目を集めております。この計画のため、国土庁がまとめた報告書の中に、多自然型居住地域が、新しい日本を形づくる重要な要素として登場しております。戦後の日本における国土計画は、第1次から35年の歳月を費やして第4次まで、基本理念として掲げたのは一極集中の排除であり、過疎と過密の解消でありましたが、結果はまるで逆で、なお地方も同様であったことは我々も識者も一致して認めるところであります。これらの反省に立って、特に優良な住環境を提供する多自然型居住環境の実現に力点を置いたことは必然であり、当県土は特にも合致するものと考えます。これまでの県営住宅の立地は他の公営住宅と同様に、否、大都市圏と同じく、工業等の産業と都市化の進んだ中に建設供給されてまいりましたが、サービス産業が全労働力の3分の2を占めること、交通網の発達などの現況下で新たに多自然型居住環境の形成を図るべきと考えます。これは、主に広い敷地に一戸建てを想定していると推察するのですが、木材需要及び家具等の耐久消費財の需要にも期待ができ、当県の住宅供給にも早々の導入が好ましいことであり、積極的に進めるべきと考えますが、当局の見解をお伺いします。
 次に、交通事故対策についてお伺いします。
 本県の交通事故の発生状況は、11月25日現在、前年比、発生件数でプラス400件、死者数でプラス11人、傷者数でプラス505人と増加の一途をたどり、特に交通死亡事故は全国的に減少傾向にある中で、東北6県でも岩手県のみが、既に昨年より27日も早く昨年同期の死者数になるなど、極めて憂慮すべき事態にあります。一方、県警の取り締まりや安全教育あるいは交通安全団体や生活環境部の広報活動など、大変御苦労されていることはよく承知しており、敬意を表するものであります。しかしながら、これだけの御努力をされてなお死亡事故が増勢にあるのはなぜでしょうか。考えますに、これは運転者のモラルやマナーに起因するものが多いと思いますが、道路自体にも検討すべき問題があるのではないでしょうか。先ごろ、雫石町橋場地内の国道46号で大規模な交通事故が連続して発生したところであります。
 そこで、土木部長にお伺いいたしますが、日々発生する交通事故と道路構造に関心をお持ちでしょうか。お持ちとすれば、どのような対策を講じられているのか。さらに、道路の改良に当たっては、その安全策について警察等々の御意見を聞いておられるのか、その意見をどのように反映されておられるのかお伺いをいたします。
 次に、警察本部長にお伺いいたします。
 交通事故対策に努力されていることは前段のとおりでありますが、しかし、指導取り締まりだけでは限界があります。ハード面での対策が必要だと思います。例えば、信号機などもまだまだ不足していると思いますし、標識などももっと大型化し視認性を高めるべきだと思います。にもかかわらず、国においては、交通安全施設等整備事業の5カ年計画は、他の公共事業と横並びで7カ年計画に繰り延べされようとしております。私は、安全施設のような直接県民の命にかかわる事業は、他の公共事業と同様に取り扱うべきではないと考えます。必要なものはぜひ整備すべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。
 少年非行問題についてお伺いします。
 最近の少年非行の現状を見ますと、少年人口が急激に減少しているにもかかわらず、犯罪を犯し、警察に検挙された少年が増加の傾向にあり、しかも9月末に発生した高校生3人組みによる強盗事件など、その内容も年々悪化してきております。また、性の逸脱で補導された女子少年も年間七、八十人と増嵩し、少年非行は内容、件数ともに極めて深刻な状況下にあります。こうした背景には、非行を助長する環境の問題があることは論を待たないところであります。そこで、こうした少年を取り巻く有害環境の浄化について、どのように取り組んでおられるのかお伺いいたします。
 また、性非行の温床となりやすいテレホンクラブ等の誘惑をする産業を規制するため、いわゆるテレクラ条例を鋭意制定され、本年2月から施行されておりますが、この条例は性非行防止のため効果が上がっているのかどうか、もし、数的に示せるのであればお伺いいたします。
 次に、犯罪を犯した少年の再非行ということについてでありますが、犯罪少年は年々増加の傾向にあり、その数も年間で1、000件を超えているようであります。これらの少年がさらに犯行を重ね成長するとすれば、これはまさにゆゆしき問題であります。
 そこでお伺いしたいのは、犯罪を犯した少年がどれくらいの割合で再び犯行を繰り返しているのか。逆を言えば、どれくらい立ち直っているのかということであります。少年非行の現況から、その防止を図ることは重要な課題ではありますが、犯罪を犯した少年の更生ということも極めて重要な、いや、私たち社会人の責務あるいは責任であると思いますので、その状況をお伺いいたし、私の質問を終わらせていただきます。御清聴に感謝申し上げます。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 須藤敏昭議員の御質問にお答えを申し上げます。
 まず、職員育成にかける抱負と決意についてでございますが、今後、分権型地域社会の創造に向けまして、地域住民の知恵や工夫が行政に生かされ、活力に満ちた個性豊かな魅力ある地域づくりを進めていくためには、これまで以上に地方の自主性、自立性を高め、みずからの主体的判断により、地域の実情に合った施策をより一層積極的に展開をしていく必要がございます。このため、県行政に携わる職員一人一人が本県の目指す方向がどこにあるかをしっかりと見きわめ、過去の経験や先例にとらわれることなく、自由で新鮮な発想のもとに県民の視点に立って考え行動していかなければならないものと、このように考えております。このような考えから、本年10月に策定をいたしました行財政システム改革指針におきまして、新たなる時代を切り拓く人材を育成するための計画を策定することとしたところでございます。その中では、政策形成能力や創造的能力を高めるための職員の大学院派遣や、金融マーケティングなどに関する高度専門的な知識、能力を有する人材の養成のための民間企業派遣、あるいは地域ボランティアへの積極的な参画などによりまして、広く社会や文化と交わり、新しい価値を創造できる人間性豊かな人材の育成などの方策を盛り込みたいと、このように考えております。このような方策を講じながら、幅広い視野と深い洞察力や失敗を恐れず何事にもチャレンジをする精神と自立心を兼ね備え、現状に決して満足することなく高い目標を掲げて、常に総意と工夫を凝らしながら行動する職員の育成に努め、県民の皆様方の期待と信頼にこたえてまいる考えでございます。
 次に、県立大学の入学者選抜についてのお尋ねでございますが、県立大学は、ともに支え、ともに生きる、人間性豊かな社会の形成に寄与する創造力と人間性に満ちた人材の育成を基本理念といたしておりまして、こうした理念に沿った多くの優秀な学生を確保することが大学の運営の成否にかかわるものと、このように認識をいたしておりまして、特にも、初年度の入学者選抜は重要な意味を持つものと考えております。このため、入学者選抜は県立大学の基本理念や各学部の教育目標及び特色、専門分野などの特性にふさわしい入学者を適切に見出すという観点から実施をし、意欲のある優秀な学生の確保に努めてまいりたいと、このように考えております。
 また、選抜方法でございますけれども、学力検査のみに偏ることなく、小論文や面接、調査書などによりまして、入学志願者の個性や資質、意欲など多様な潜在能力にも配慮した選抜方法を取り入れてまいりたいと考えておりまして、学長予定者を委員長とする入試委員会により、厳正、公正な実施を期することとしているところでございます。初年度の入学者選抜の基本的方向といたしましては、まず一般選抜では、受験機会の複数化に配慮いたしまして、前期、後期の試験を実施いたしますほか、専門高校や総合学科の卒業生に対する特別枠を設けることといたしておりまして、特別選抜では、推薦入学や社会人を対象とした選抜を実施するなど、県立大学の特色を生かした入学者選抜としたいと考えているところでございます。
 ただいまお尋ねの推薦入学についてでございますが、地域の進学需要への対応と本県のあすを担う人材の育成という県立大学設立の趣旨を踏まえまして、将来性のある県内子弟ができるだけ多く入学できますように、県内高校の卒業生を対象に、各学部とも入学定員の3割を目安として実施することとしているものでございます。具体的な推薦に当たりましては、初年度は専門高校を含む県内の各高校から、本校、分校を問わず、募集単位でございます各学部学科に対して推薦できることとしておりまして、これらの者に対して小論文、面接などを行うことにより、定員の3割の者を選抜をしたいと、このように考えております。
 推薦入学は、県立大学を希望する意欲ある学生に対して、一般選抜とは異なる尺度で能力、適性などを判定し、各学部の目的にふさわしい学生を選抜しようとするものでございますが、開学後は、一部の大学で行われておりますアドミッション・オフィスによる選抜方法も参考としながら、望ましいこの入学者選抜について、さらに検討を加え、充実した内容にしてまいりたいと、このように考えております。
 入学者の選抜は、大学教育の一環といたしましては、その第一歩と位置づけられるものでございます。向学心に燃え、意欲あふれる多くの学生に、ぜひ県立大学に挑戦してほしいと思っているところでございますし、県立大学の教育理念や目的を十分反映をさせた選抜により、すぐれた学生を受け入れ、大きく育て上げていきたいと、このように考えているところでございます。
 次に、県際交流についてでございますが、私は少子・高齢化や高度情報化の急激な進展など、経済社会情勢が大きく変化をしてきている中で、質の高い自立的な地域社会を形成していくためには、それぞれの地域がその特性に応じた役割を担いながら、市町村、県といった行政単位の枠を超え、県内外においてさまざまな分野、レベルでの連携、交流を進めていくことがますます重要になってくるものと、このように考えております。岩手県南、そして宮城県北地域は、日常生活面を初めといたしまして、産業、経済、文化などさまざまな分野で、県境を越えた活動、そして交流が繰り広げられてきたところでございますけれども、近年は、北上川流域市町村長懇談会や、観光物産連携推進交流会、あるいは地域づくり団体による岩手・宮城県際交流会の開催など、市町村、民間レベルによる新たな連携、交流の輪が広がりを見せているところでございます。
 県といたしましては、このような地域における主体的な取り組みが一層活発化することを期待しているところでございまして、地域づくり団体のネットワーク化を図りながら、郷土芸能などの文化交流や特産品の共同開発、観光情報の共同発信などの地域の新たな取り組みに対して、地方振興局を中心に積極的に支援をしてまいりたいと、このように考えております。
 また、道路網など日常生活の利便性の向上のための条件整備につきましても、住民生活や産業活動の状況を十分に踏まえまして、宮城県との話し合いを進めながら、さらに努力をしてまいりたいと、このように考えております。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁をさせますので、御了承お願い申し上げます。
   〔総務部長大隅英喜君登壇〕

〇総務部長(大隅英喜君) 定員管理と行政目的達成の関係についてでありますが、定員管理に当たりましては、これまで新規の行政需要に対しても、事務事業の見直し、組織、機構の簡素合理化、民間委託、OA化などの推進により、原則として職員の配置転換により対応するなど、スクラップ・アンド・ビルドの徹底を基本として、極力定員の縮減を行うとともに、増員を抑制し、その適正化に努めてきたところであります。本格的な地方分権の時代を迎え、今後、県みずからの主体的判断により地域の実情に即した地域経営を行うためには、行政需要の消長に応じた事務事業の見直しを絶えず進めるとともに、あらゆる機会をとらえ、県民の皆様方の声を十分にお聞きしながら、施策の優先順位を厳しく選択し、その重点化を図っていくことが、ますます重要であると考えております。
 このため、今後におきましても、極力、総人件費の抑制に努めつつ、最大の行政効果を上げることを基本とし、多様化、高度化する行政需要の動向を的確に把握しながら、地域の実情に応じた簡素で効率的な行政体制となるよう適切に職員を配置し、県民の皆様方が真に求める行政サービスの提供に努めてまいりたいと考えております。
   〔農政部長中村盛一君登壇〕

〇農政部長(中村盛一君) 農産物の流通経費の実態及び農産物流通への取り組みについてでありますが、市場流通における流通コストは、包装資材費、選果場等の利用料及び輸送費などの固定されている経費と、系統及び市場の手数料などの販売額によって変動する経費で構成されております。本県におけるリンゴの流通経費の動向について見ますと、平成9年度の経済連の収益決算では、固定経費である包装資材費、選果場等の利用料が18・6%、輸送費が6・2%、変動経費である系統及び市場の手数料が10・8%で、合わせて35・6%となっております。これらを平成元年当時と比較してみますと、全体の流通経費は2・9ポイント減少し、構成割合の高い包装資材等の固定経費は3・9ポイント減少しております。この結果、生産者の手取り額だけについて比較しますと、10アール当たりで8万6、600円の増加となっているところであります。流通コストの縮減により農業所得の向上を図るためには、特にも固定経費を縮減していくことが極めて大事であります。今後とも広域的な集出荷による選果場の稼働率の向上や、出荷規格の見直し、包装資材の簡素化などを進めるとともに、変動経費であります手数料率につきましても、集出荷団体における取り扱い農産物の生産や出荷単位の拡大を促進しながら、その縮減が図られるよう集出荷団体に対する指導に努めてまいりたいと考えております。
 また、こうした取り組みとあわせて、新たに設置することにしております農産物流通専担課を核として、消費者ニーズを的確にとらえながら、岩手ブランドの多様な流通ルートによる販路の拡大と有利販売を図っていくとともに、マーケティング活動に携わる専門知識、技術を持った人材の育成確保に取り組んでまいりたいと考えております。
 さらには、生産者や集出荷団体との情報交換の場を設けながら、農産物の販売拡大、流通経費の縮減による農業所得の向上に向けた農産物流通対策を積極的に推進してまいる考えであります。
   〔生活環境部長吉田敏彦君登壇〕

〇生活環境部長(吉田敏彦君) 仮称、環境基本条例の制定に当たっての考え方と、検討の進捗状況についてでありますが、この条例は、本県の良好な環境の保全や創造あるいは復元についての基本となる理念などを定め、県の環境にかかわる自然環境保全条例、景観の保全と創造に関する条例や計画及び施策の推進に当たっての基本原則として位置づけるとともに、すべての県民の主体的な参加のもとに、本県の環境施策を総合的かつ積極的に推進しようとするものであります。その対象といたしましては、環境の時代の新しい価値観に基づき、持続的な生産も視野に置きつつ、自然環境や生活環境はもとより、歴史的、文化的環境や美観、さらには、御提案のございました景観をも含めた広い領域でとらえる方向で検討を進めているところであります。この検討に当たっては、部局横断的な取り組みを行うとともに、広く一般県民の皆様の御意見をいただいているほか、学識経験者など、さらには、市町村、各種団体の御意見をいただき、その趣旨をできるだけ多く条例案に反映するよう努めているところであります。
 今後におきましては、関係する審議会における御審議をいただいた上で、鋭意検討を進め、美しい自然に恵まれた魅力ある県土、岩手の環境の保全と創造のための条例の成案が得られるよう作業を進めてまいりたいと考えております。
   〔土木部長藤本保君登壇〕

〇土木部長(藤本保君) まず、住宅対策についてでありますが、議員御指摘のとおり、国の国土審議会におきまして、新しい全国総合開発計画の策定について審議がなされており、望ましい国土構造の基礎を築くための戦略的施策の一つとして、中小都市や山間地域等豊かな自然環境に恵まれた地域において、都市サービスとゆとりある居住環境の形成を図る多自然居住地域を創造するということを聞いております。広い県土を擁し、美しい自然と文化を有する本県は、この多自然居住地域を実現する条件に恵まれていると考えております。住宅、宅地の整備は、県民が豊かでゆとりある生活を営む上で欠くことのできないものであり、県では岩手県住宅マスタープランにおいて、21世紀につながる基本的な住宅施策の方向を平成8年に定めたところであります。この計画に基づき、住宅に困窮する低所得者向けの公営住宅の整備を初め、岩手県住宅供給公社や民間による岩手県の自然環境にふさわしい良質な住宅、住環境の形成等、住宅に対する多様なニーズ、地域性に対応した施策を総合的に推進していくこととしております。
 今後とも自然環境を生かした豊かな居住環境の形成が図られるよう、適正な土地利用計画に基づき、地域特性や定住化に対応し、Uターン、Iターン者等の受け皿ともなる市町村営の戸建て公共賃貸住宅の整備促進や、住宅供給公社、民間等によるゆとりのある良質な戸建て住宅の供給促進に努めてまいりたいと考えております。
 次に、交通事故と道路構造の関係についてでありますが、交通の安全を図るためには、基本的に道路利用者、特にも車両を運転する者が、法令の定めるところにより車両の安全な運転に努めることとされております。しかしながら、交通事故が繰り返し発生しているような箇所につきましては、道路管理者と交通管理者が事故発生現場を調査し、事故の再発防止の観点から視線誘導標、道路反射鏡及び防護さくの設置など交通安全施設の整備充実を図ってきたところであり、例えば、本年では主要地方道上米内湯沢線の盛岡市永井地区において右折レーンを新設するなどしたところであります。
 次に、交通管理者の意見聴取についてでありますが、道路整備は、道路構造の一般的技術的基準である道路構造令に基づき、計画を策定し実施しているところでありまして、この基準は建設省、運輸省、警察庁などの専門家により検討、審議され、定められたものでありますので、一般的に意見を求める必要はありませんが、他の道路との交差部分につきましては、道路法第95条2の規定に基づき、その形状や右折レーンの設置などについて県公安委員会の意見を求め、計画を策定し、事業を実施しているところであります。
 なお、道路整備に当たりましては、安全で快適な道路環境の確保を最優先として取り組んでいるところであり、地権者の方々の御理解と御協力をいただきながら、今後とも、より安全性の高い道路の整備に努めてまいりたいと考えているところであります。
   〔教育長細屋正勝君登壇〕

〇教育長(細屋正勝君) 県立美術館の整備についてでありますが、近年における公立美術館は、収集、展示のみならず、生涯学習の拠点施設として多様な機能が求められてきております。県立美術館におきましても、このようなニーズに対応するため常設の展示室に加え、国際的な大規模企画展にも対応可能な企画展示室、教育普及活動を行うための講堂や普及室などを設けるほか、インターネットによる内外とのネットワーク化などに対応し得る情報システムの構築を予定しており、他県に比して遜色のない美術館として整備してまいりたいと考えております。
 また、収蔵予定作品につきましては、萬鐵五郎、松本竣介、舟越保武氏など、本県出身及び本県ゆかりの作家の作品を中心に収集することを基本とし、特色のあるコレクションとなるよう収集に努めているところであります。御案内のように、これらの作家は近代以降の日本を代表する美術家として高い評価を得ており、本県のコレクションを生かしながら、7、8月に開催いたしました萬鐵五郎展のように、国立美術館や他県の美術館との作品の相互交流による企画展を開催するなど、国内外のすぐれた美術品鑑賞の機会を広く県民に提供してまいりたいと考えております。
 また、現在の取り組み状況でありますが、昨年度は建設予定地の造成を行うとともに、基本設計を作成し、現在は実施設計を進めているところであります。
   〔警察本部長池田克彦君登壇〕

〇警察本部長(池田克彦君) まず、交通安全施設の整備についてお答えいたします。
 交通事故の多くが、運転者や歩行者の過失により発生しておりますことは論をまたないところでございますが、同時に交通安全施設を整備することによりまして、相当数抑止できることも事実でございます。全国の交通事故死者が史上最高を記録いたしましたのは昭和45年でございますが、この年を境に死者は劇的に減少しております。これは、第1次交通安全施設等整備事業5箇年計画のスタートと軌を一にするものでありまして、このことからも安全施設の有効性は明らかであるというふうに考えております。特に、本県は四国4県に匹敵する広大な面積を抱えておりますことから、議員御指摘のとおり、警察のマンパワーによります交通事故防止にはおのずから限界がございまして、このような観点からもハード面での対応が必要だというふうに考えております。
 一方、現在、国会で審議中でございますけれども、御指摘のとおり、現在の第6次交通安全施設等整備事業5箇年計画が7箇年計画とされ、特定事業、つまり国費が入る事業でございますけれども、これが2年間先延ばしされる見通しになっております。しかしながら、県民の命に直結いたします交通安全施設の整備は、その水準を低下させるべきではないと考えておりますので、その緊急度を勘案しつつ、必要な施設の整備に努めてまいりたいと考えております。
 次に、少年非行についての御質問にお答えいたします。
 まず、有害環境の浄化についてでございますが、最近におきます少年を取り巻く社会環境は、議員御指摘のとおり、性的な感情を著しく刺激し、または残虐性を助長するおそれのある出版物、広告物、映画等がはんらんしており、また、少年の転落や非行化の誘因となりやすい享楽的な諸営業が増加するなど、まことに憂慮すべき事態だというふうに考えております。
 このため、県警察といたしましては、少年に有害な環境の浄化を少年警察活動の重要な柱として位置づけまして、関係機関、団体との連携を図りながら、ゲームセンター等の少年のたまり場になりやすいような場所の健全化、テレホンクラブやデートクラブなどの性を売り物にする営業の指導、取り締まり、風俗営業店におきます年少者の雇用といったような少年の福祉を阻害する犯罪の取り締まり、さらには、ピンクチラシのような有害な情報のはんらん阻止というような対策を講じているところでございます。この結果、県内各地区におきまして環境浄化の協力団体が多数結成されまして、例えば、ポルノ自販機の撤去活動とかピンクチラシの回収活動などが活発に展開されておると、そういう状況で、効果も徐々に浸透してきているというふうに考えております。
 次に、いわゆるテレクラ条例の効果についてでございますけれども、条例の施行になりました本年2月以降、女子高校生に宣伝のビラを交付した、あるいは学童の通学路に看板を出したというような広告宣伝の違反に対しまして、中止命令あるいは除却命令といった行政処分を8件執行しております。また、執行前には49台ありました利用カードの自動販売機、これは現在1台にまで減少しております。したがいまして、業者間にも条例の内容が浸透してきているというふうに考えている状況にございます。この結果、テレホンクラブを介在して性被害に遭いました女子少年は、昨年は23名おりましたけれども、本年は現在までのところ3名ということで、条例制定による効果は着実に上がっているんではないかというふうに認識しているところでございます。今後とも、この条例の適正な運用に努めてまいりたいというふうに考えております。
 次に、犯罪を犯した少年の再非行についてでございますけれども、昨年の犯罪少年の再犯率は全国平均で21・4%でございました。一方、本県では15・7%というふうになっております。本県におきましては関係者の御努力によりまして、全国平均より低い数値で推移してきたところでございますけれども、特に昨年の数字は10年前に比較いたしますと5ポイント下がっております。議員御指摘のように、少年をめぐる情勢というのは極めて深刻な状況下でございますけれども、このような中で再犯率の低下といいますのは、一つの明るい材料と考えられるわけでございますので、今後とも関係者との連携を強めながら、犯罪少年の保護、更生に努めてまいりたいというふうに考えております。

〇議長(那須川健一君) 次に、山内隆文君。
   〔42番山内隆文君登壇〕(拍手)


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