平成9年12月定例会 第12回岩手県議会定例会会議録

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〇17番(高橋賢輔君) 新進・公明の高橋賢輔でございます。
 質問に入るに先立ち、去る10月16日、御逝去されました佐藤一男議員に対して、心から哀悼の意を表する次第であります。
 さて、任期半ばを経過した増田知事は、天皇、皇后両陛下をお迎えした全国豊かな海づくり大会を成功裏に終えたところでありますが、この大会では、森は海の恋人との視点から、これまで参加を見ていなかった栃木県など、海なし県を招待し、環境に関心が高まっている時代の要請に配慮されました。
 また、第1回北東北知事サミットを実現し、3人の知事が直接に、県境を越えた地域連携について話し合うなど、先駆的な取り組みにも力を注いでおりますが、今後もこのような新しい感覚で、一層の指導力を発揮されるよう期待いたすものであります。
 ところで、知事は、就任以来、開かれた県政を掲げて、みずから県内各地に出かけられ、生産活動や地域づくりに取り組んでいる方々と直接ひざを交えながら、親しく懇談し、県民提案型、県民参加型の県政を推進しております。また、県政懇談会などでの県民の意見や提案については、インターネットにその回答を掲げたり、インターネットで意見や提案を受け入れたりと、さまざまな手法を駆使して、県民の意向をくみ上げております。知事には、失礼ながら、岩手のことは必ずしも十分に理解していなかったものと拝察いたしますが、こうして県内隅々まで歩き、また、数多くの県民に触れて、県内の実情や県民の声に理解が深まってきたのではないでしょうか。そこで、知事は、こうしたこれまでの県民提案型、県民参加型の県政運営を通じて把握した本県の状況を踏まえて、残る任期において、どのような課題に重点的に取り組むつもりなのか、その基本的な考えについてお聞かせいただきたいと思います。
 今、県では、県の行事に女性が参加しやすいようにとの観点から、会場に臨時の託児所を設けるよう配慮しているところでありますが、現実には、昨年の春から2度しか設置されず、こうした配慮について徹底するよう話題となったとのことであります。これを要請した保健福祉部が、改めてみずから問題を提起したことは、県民の視点に立った行政サービスの提供に努めようとする民主的な土壤が培われつつあるものとして、評価するものであります。このような県民の側に立った気配りは、県行政と県民との間にある距離を縮め、県民との信頼関係をより緊密にするものであり、私は、気配り県政についても提唱したいのでありますが、知事の御所見をお聞かせ願います。
 次に、中山間地域対策についてお尋ねいたします。
 中山間地域についての国土庁が行ったアンケート調査によりますと、高齢化などによって、今後10年で約500の集落が人の住まない消滅状態になり、その後消滅する可能性のある集落を含めると約2、000にも上り、また、消滅はしないが、衰退する集落は1万1、000余にも上ることが明らかとなり、大きなショックを与えております。中山間地域の諸問題につきましては、各位御承知のとおりでありますので、詳しくは申しませんが、若者の流出による過疎化の進行に伴って、耕作放棄地が増加し、土地が荒れ放題となり、農用地や森林の保全、伝統文化の継承などが困難となっていくことが予想されるのであります。今こうした地域を抱える市町村では、その対応にいろいろと模索しながら、努力を続けておりますが、予算が十分とは言えず、地域住民の期待にこたえることができない状況にあります。
 このような中で、国は、平成10年度の予算について、公共事業費を7%減じようとしておりますし、また、中山間地域対策に大きな役割を果たしているガット・ウルグァイ・ラウンド対策関連の予算の状況も全く見通しが立たない状況であります。さらに、本県でも10%の削減を行おうとしております。このような状況では、広大な県土を抱える本県は、都市部との格差がますます増幅し、知事の提唱している均衡ある発展は到底かなえられなくなると思うのであります。来年度の予算を編成しようとしているこの時期に当たり、森林や農地の持つ保水能力や緑のダムの機能、そして人々の心を和ませてくれる景観など、中山間地域の持つプラスの効用を改めて評価し、対策を講ずることが急務と考えられるのであります。
 また、中山間地域対策は、決して農林業に関するものだけではなく、保健、福祉、教育、観光など、県政の各分野にわたる総合的なものでなければなりません。知事は、来年度予算の編成に当たって、中山間地域対策にどのような考えで取り組むつもりなのか、お聞かせ願いたいと思います。
 また、中山間地域の農用地や森林の荒廃は、洪水調節機能の低下などを招き、これらの地域を流域とする河川流域の都市、市街地に生活する人々にも影響を及ぼしてまいります。このように中山間地域対策は、この地域に住む住民のためだけではなく、広く周辺に生活する人々にとっても重要な課題であります。このため、施策の配分に当たりましても、こうした地域に重点的に行うなど工夫すべきとも思いますが、当局の所感はいかがでしょうか。
 次に、権限の委譲についてお尋ねいたします。
 県では、地方分権や国の行財政改革の流れを受けて、権限の委譲が進められており、地方振興局についても権限を委譲し、その機能を強化していると聞いております。しかし、今ひとつその効果が目に見えてこないのであります。現実に、市町村では、重要な事業の予算の獲得には県庁まで出かけて陳情しており、さらに、国まで出かけることもあります。これに要する人的、時間的なコストを考えると、とても合理的とは言えず、このような旧態依然としたやり方は、高度情報化の進んできた現在、改善すべき点の一つとして指摘したいのであります。せっかく振興局が置かれているのでありますから、ここで用が足りるよう、その機能をさらに強化すべきと考えますが、このためには、振興局にそれなりの権限が与えられなくてはなりません。また、権限のみならず、同時に、これを十分に行使できる人的な体制も整備する必要があります。来年度、県は、振興局の権限の強化とその体制の整備について、どのように取り組んでいくお考えでしょうか、お聞かせ願います。
 また、県では、地方分権に向けて、市町村に対する権限の委譲を進めております。身近な行政は市町村で賄えることは大いに結構ではありますが、県と段違いに組織の小さい市町村、特に、町村の行政体制を直接見てきた私には、権限の委譲に当たっては、十分な財源と事務執行に対する支援体制をとることが必要と痛感されるのであります。町村の職員は、県と異なり、1人で数多くの仕事をこなしており、時間がなくて県に処理を相談すると、勉強不足であると叱責されることもあると聞いております。また、市町村側から委譲事務の内容などについて不満の声が上がったこともあります。こうしたことから、委譲に当たっては、市町村の理解と協力を求め、委譲後も十分フォローするなどしていただきたいと思うのでありますが、県は来年度、どのような権限を委譲しようと考えているのか、また、どのようにして市町村の理解と協力を求めていくのか、お知らせ願います。
 次に、農業対策についてお尋ねいたします。
 農家は今、4年連続の豊作の喜びもつかの間、過剰在庫米による市場価格の低迷に見舞われ、さらには、減反の拡大など、労働力の満足感を味わういとまもなく、まことに厳しい環境に置かれ続けております。こうした状況のもとで、県内農家数も、昨年に比べて920世帯減少し、農家の高齢化率も26・9%と、県全体の18・7%を大きく上回り、また、総農家数の約40%で15歳以上の後継者がいないなど、農家経営そのものが危機に縦しております。今後、農産物の品質保持のための貯蔵施設の整備と並行して、計画的な生産出荷体制の整備を急ぎ、新鮮、安全を消費地に強くアピールするとともに、生産組織の充実強化、担い手の育成、さらには価格変動への対応など、農業に従事する人々が、安心して意欲を持って取り組める環境をつくり上げるべきであります。県では、農業振興についてさまざまな努力をいたしてはおりますが、来年度は農政部関係組織の再編の年でもあります。この際、こうした新しい体制のもとで、どのような施策に重点を置いて本県農業の振興に取り組む考えか、お答え願います。
 次に、中心市街地の活性化についてお尋ねいたします。
 今まさに、県内各地では、大型店の進出計画や構想がメジロ押しであり、なお、ますます増加の傾向にあります。郊外に大規模な駐車場を設ける大型店は、周辺市街地の商店街に大きな打撃を与え、中小企業庁の調査によれば、停滞、衰退している地方都市の商店街は95%にも上り、その理由として30%が大規模小売店舗に客をとられていると挙げているそうであります。中心市街地の衰退による空き店舗の増加は、近隣の商店主のみならず、まち全体の元気をなくし、消沈した雰囲気も漂わせて、にぎわいというまちの機能を欠落させていくものでもあります。
 このような中で、国では、来年度に向けて、中心市街地ににぎわいを取り戻そうと、概算要求にその活性化対策を盛り込んでいるとも言われており、私は、県でも、この絶好の機会を積極的にとらえて、商店街、さらにはその周辺部を含めた中心市街地の活性化対策に、本腰を入れて取り組むよう主張したいのであります。
   〔副議長退席、議長着席〕
 聞くところによりますと、国の概算要求については、通産省の商店街活性化のためのさまざまな支援策を初めとして、建設省、厚生省、国土庁など11の省庁にまたがっており、県では、こうした縦割りの事業を統合的に取り入れて総合化しなければ、効果的な対策は期待し得ないと思うのであります。このような国の動向に対応して、当局は、中心市街地の活性化のための国の各省庁の施策を総合的にとらえる中で、商店街の活性化にどのように取り組んでいくお考えか、お答えいただきたいと思います。
 次に、湯田ダムの活用についてお尋ねいたします。
 この夏、東北横断自動車道秋田線の北上西-湯田インター間の21・6キロが開通いたし、秋田方面から東北縦貫自動車道と結ばれました。私ども、北上、西和賀地方の住民にとっては、待望久しいものがあり、心からうれしく思い、これまで御尽力いただいた各位に感謝申し上げる次第であります。こうした交通基盤の整備を契機として、北上地方振興局では県境地域問題協議会を設けて、秋田県側との地域交流のあり方を検討し始めており、また、湯田町では、錦秋湖サービスエリアに隣接して、東北初の高速道路施設内の温泉である峠山パークランド・オアシス館を建設し、湯の町を売り込もうとするなど、地域活性化への取り組みが活発化いたしております。特に、湯田町では、建設省から湯田ダムが地域に開かれたダムとして指定を受け、湖面利用がさらに活発化されることを機会に、この錦秋湖や周辺地域を地域づくりの核にしようと、関係者によって湯田ダム地域整備協議会が設立されました。今後、この協議会で、水辺空間の景観や湖面を利用したイベントなどを企画し、また、必要な施設整備の計画を立てるなど、地域の活性化に役立てようと取り組んでいるところであります。県は、県北、沿岸地域については、組織的な支援をしておりますが、山村、豪雪地帯の西和賀地方においても、こうした市町村の地域振興に向けた活動に対しては、県の観光部門はもちろんのこと、特に、この協議会のメンバーである土木部門の積極的な支援を求めたいのでありますが、当局の所感をお聞かせ願います。
 次に、産業集積活性化対策事業についてお尋ねいたします。
 去る9月5日、北上川流域テクノポリス地域の花巻、北上、水沢、江刺、金ヶ崎の4市1町が、産業集積活性化対策事業の地域指定を受けたところであります。今後、国、県の支援のもとに、現在整備中の産業業務団地オフィスアルカディア・北上内に北上産業技術支援センターが、また、水沢には鋳物技術交流センターが新設され、既存の工業技術センターや、花巻市起業化支援センターの充実とあわせて、中小企業の技術革新や基盤強化に大きく貢献するものと期待いたすものであります。この地域は、これまで多くの企業が集積しており、県内工業の中心地でもありますが、この事業の導入によって、さらにその機能が高められていくものと思うのであり、これまでの県の取り組みに感謝申し上げますと同時に、事業の一日も早い促進を願うものでありますが、この際、県は来年度どのように具体的な事業に取り組もうとされているのか、お聞かせ願います。
 また、私は、この地域が持つ工業技術の集積という地域特性の効果は、広く県内の企業に波及させてこそ、均衡ある県土の発展に役立つものであり、県内多くの企業との連携や、この地域へ進出した企業の県内各地への2次展開が行われるべきとも考えるのであります。県は、この地域のこうした波及についてどのようにお考えか、お聞かせ願います。
 次に、地域情報化についてお尋ねいたします。
 郵政省が、全国の市町村を対象にして初めて実施した地域情報化指標というものがございます。これは、光ファイバー網を整備した事業者の有無や、ケーブルテレビのチャンネル数などの情報サービスや、行政のオンラインサービスの状況などを指標化したものであります。これによりますと、この地域情報化指数が県内一高かったのは北上市であり、以下、上位は北上川沿いの市が占めており、逆に、点数が低い市町村は県北や沿岸、山間地が多くなっております。私は、これを見て、道路整備では決して縮小しない県北、沿岸、山間地と内陸部との時間距離を短縮する最も有効な手段は情報化であるにもかかわらず、この面でも県内格差を生じていることに驚きを覚えたのであります。こうした格差の状況について、当局はどのような所感を持っておられるのか、お答え願います。
 また、北上市が県内一と申しましても、全国では283位であり、決して高いものではありません。すなわち、岩手県全体として情報化がおくれていることを如実に示したということもできるのであります。県は、今後どのようにして県全体の情報化を促進しようとしているのか、県内格差の是正策とともにお答え願います。
 最後に、平成11年度に本県で開催される全国高等学校総合体育大会の会場施設について、特に、高規格スポーツ施設を中心にお尋ねいたします。
 本県インターハイで競技会場となる市町村におきましては、会場施設あるいは関連道路などの整備に多額の経費を負担しながら、その開催に向け積極的に取り組んでおられることは、御案内のとおりであります。厳しい財政環境の中での、関係市町村の御努力に敬意を表するとともに、インターハイ関連スポーツ施設整備費補助制度を創設するなど、積極的な支援を行っている県当局の姿勢を、私は高く評価するものであります。
 そこで、まず伺いますが、この補助制度の助成対象となっております高規格スポーツ施設の整備状況はどのようになっているのか、一部施設につきましては、諸般の事情により完成時期がおくれぎみのものもあるやに聞いておりますので、この点について御答弁をいただきたいと思います。
 次に、本県インターハイ終了後のこれらの施設の活用方策についてであります。
 現在、県実行委員会を中心として、県、開催市町村、関係団体は、当面インターハイの開催が成功裏に終了することを目標として、開催準備に余念ないものとは思いますが、私は、より中期的な展望に立った視点から、若干の提言も織り込みつつ、以下、お尋ねいたします。
 本県でのインターハイ開催を契機として、多額の投資をした全国に誇るべき高規格のスポーツ施設が、県内に多数整備されるわけでありますから、各設置市町村では、ポストインターハイに向けた施設の活用方策の検討に着手していることと思います。しかしながら、私は、その企画内容などについて、各市町村やその団体だけでは、専門技術を持つ人材が十分とは言えないことから、おのずから限界があり、県としても広域的な観点から、これらの市町村と一体となって、施設活用のあり方を検討していく必要があると考えるものであります。
 一例で申し上げますと、盛岡市で整備する屋外飛び込み用プールなどは、将来に向けて指導者の充実、選手層の拡大などを進めてまいりませんと、いわば宝の持ち腐れとなることも懸念されるわけであります。また、北上市の陸上競技場、水沢市の体育館など、全国的にも屈指のこれらの高規格スポーツ施設を有効活用していくためには、県、施設設置市町村、県体育協会を初めとする関係団体が協議会等を設立し、連携しながら、例えば、国内外の高名なプロ、アマ選手を招聘し、次代を担う本県の若い選手たちを対象としたスポーツ教室を開催する、これは、民間では冠イベントとして単発的に行われているようですが、このような定期的なものを各施設でリレー開催するとか、あるいは地域スポーツクラブの活動拠点、地域の人々の交流拠点としての多面的活用のあり方を検討していくなど、今のうちから計画的に組織的な取り組みを推進していく必要があると考えるものであります。御自身がスポーツマンでもある教育長は、どのような御所見をお持ちか、お聞かせ願いたいと思います。
 以上で私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 高橋賢輔議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、今後任期中において重点的に取り組む課題についてのお尋ねでございますけれども、我が国は本格的な少子・高齢化や高度情報化の急激な進展などによりまして、これまでの経済・社会構造を支える制度や仕組みではもはや解決できない状況に現在直面をいたしております。さらには、地方分権の推進も極めて重要な課題となってきているところでございます。このような変革の時代を迎えております今日におきましては、これまで以上に本県が歩むべき方向をしっかりと見定め、明確な戦略をもって県政を運営していくことが求められているところでございます。
 このような認識のもとに、21世紀を展望した新しい総合計画の策定に取り組みますとともに、国、地方を通じた行政改革や財政構造改革の中ではありますが、各行政分野ごとに、優先度、緊急度の高い施策を重点施策として位置づけて一層の推進を図ることとしておりまして、特に環境との調和と保全、次代を担う人材の育成、地域情報化の推進、地域産業の高度化の推進という、こうした時代の潮流を見据えた四つの課題に重点的に取り組んでいく考えでございます。もとより、これらの施策の展開に当たりましては、市町村や県民との間にしっかりとしたパートナーシップを築きながら進めていく必要があると、このように考えております。
 就任以来私は、県民に開かれたわかりやすい県政を基本姿勢といたしまして、可能な限り県内各地に出向きまして、多くの県民の方々から御意見を直接お聞きしてきたところでございますが、そうした中で、それぞれの地域が自然、伝統、文化などの恵まれた資源を有しておりますことや、多くの方々が地域においてさまざまな分野での活動に意欲的に取り組んでおられることを強く実感をしてきたところでございます。このような何ものにもかえがたい本県の財産を大切にしながら、輝きのある岩手を創造していくために全力を傾けてまいりたいと考えております。
 次に、県民の視点に立った気配りの県政をというお話でございましたが、県政の推進に当たりましては、それを担います職員が、常に県民の視点に立って、より迅速、効果的でわかりやすい県民本位の行政サービスの提供に努めていくことが何よりも肝要であると考えております。このため、日ごろから職員に対しましては、従来の発想を転換をし県民の立場になって仕事を考え進めるよう意識改革を促しますとともに、民間企業におけるサービス精神を取り入れるため、民間派遣研修や官民合同研修の実施、さらには県の行事に女性が参加しやすいような環境づくりなどに配慮をしてきたつもりでございます。
 本年10月に策定をいたしました行財政システム改革指針においても、これまで以上に県民の視点に立って、わかりやすい、効果的なサービスを提供していくために、例えば公共施設の利用時間の延長、窓口業務の改善、インターネットを利用した県政情報の積極的提供などを初めといたします県民サービス向上のための行動計画を今年度内に取りまとめることとしているところでございます。
 今後、この計画を真に実効あるものとしていくために、各職場において職員一人一人が、どのようにすればより県民の皆様に満足していただけるか常に意識をいたしまして、そしてそれを日ごろのサービスの提供に実際に生かせるように、絶えずさまざまな創意と工夫を凝らしながら、よりきめ細やかな県民サービスの提供に努めていく考えでございます。
 次に、中山間地域対策についてでございますが、本県の中山間地域は県土の約8割を占めておりまして、県民の4割強の方々がそこで生活をし、産業活動の面におきましても、県全体の純生産額の4割近くを産出をしているという地域でございます。
 また、食料の供給はもとより、県土や環境の保全、保健休養の場の提供、地域に根ざした固有の伝統文化の継承など、多様な役割と機能を果たしておりまして、この地域の振興は県勢の発展を図る上でも極めて重要であると、このように認識をいたしております。
 こうした認識のもとに、これまでも中山間地域の定住人口を確保し地域の活力を維持・増進するために、置かれております自然条件や立地特性を最大限に生かした産業の展開ということを基本に据えまして、農林水産業の振興を初め、多彩な地域特産品の開発や販売などによる地場産業の振興、自然景観や伝統文化などを活用したグリーン・ツーリズムを促進いたしますほか、アクセス条件や集落排水施設などの生活環境の改善、高齢者の生きがいと健康づくりや伝統芸能の継承活動に対して積極的に支援をしてきたところでございます。
 しかしながら、中山間地域は依然として、人口の減少、高齢化が進行しておりますほか、地形や自然条件が厳しく、また時間や距離の制約から医療や教育などの利便性を受けがたいなど、経済社会条件が不利な状況に置かれているわけでございます。したがいまして、平成10年度におきましてはこれまで行ってまいりました対策の成果を踏まえつつ、こうした経済社会条件を克服し中山間地域の活性化をさらに着実に推進するために、部局を横断した緊密な連携のもとに多様な就業機会と快適な生活の確保に向けた生産・生活基盤など暮らしの条件の整備を進めるとともに、情報連絡ネットワークの整備を促進しその活用を図りながら、農山漁村の空間を多面的に活用した都市住民との交流や高齢者などの活動を促進するほか、生涯学習環境の整備や僻地医療対策を進めるなど、活力に満ちた地域社会が形成されますように総合的な視点に立って施策を展開してまいりたいと、このように考えております。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願い申し上げます。
   〔農政部長中村盛一君登壇〕

〇農政部長(中村盛一君) まず、中山間地域への施策の重点的配分についてでありますが、県といたしましては、中山間地域の活性化を図るため、これまで山村振興等農林漁業特別対策事業等の実施や過疎地域活性化特別措置法に基づく補助制度、地方債の活用など、より有利な国の助成制度を積極的に導入しながら、農林業の振興や若者の定住促進、高齢者の福祉増進のための施策を進めてきたところであります。
 さらに、こうした国の制度に加え、県単独によりまして、ふるさと農道及び林道などの基盤整備を進めるとともに、新いわて農業再編総合対策の優先配分を初め、シイタケ、木炭の主産地化や県産木材のブランド化と需要拡大、山間地域に特定した園芸作物の価格支持対策を推進するほか、県民の森など、森林を活用した保健休養の場の整備、合併処理浄化槽の整備による集落環境の改善、また今年度におきましては、地域活性化事業調整費の県北沿岸部等への重点的配分による個性ある地域づくりへの支援など、中山間地域を重視した施策を幅広く講じてきたところであります。
 今後におきましても、関係部局の横断的な取り組みのもとに、農林業の振興だけではなく、商工業、観光など、他分野と連携した地域おこしやグリーン・ツーリズム、産直による都市との交流を進めるための拠点施設の整備、ふるさとプラザの活用等による地域情報の発信など、中山間地域の活性化に向けて各般にわたる施策を積極的に展開してまいらなければならないと考えております。
 次に、本県農業の振興についてでありますが、近年の農業をめぐる情勢は、農産物輸入の増大や消費者ニーズの多様化に伴い食料需給が変化する中で、米価の低落や生産調整面積の拡大、国内外の産地間競争の激化、さらには、地域農業の担い手が不足するなど、大きな転換期を迎えております。
 我が国の総合食料供給基地を標榜する本県といたしましては、こうした事情の変化に適切に対処するため、農政部組織の再編の検討を行っているところであり、その主なものとして、本庁においては、農産物流通センター課の新設や農産、園芸、畜産の各部門の一元化、出先機関における地域農政推進体制の強化、家畜衛生指導や農業基盤整備部門の充実など、本庁出先機関を通じ、より機動的かつ効率的な執行体制を確立してまいりたいと考えております。
 新組織が発足する平成10年度においては、まず米をめぐる情勢に対処し、水田農業の再構築を図ることが喫緊の課題となっておりますことから、転作田を活用した園芸作物や麦・大豆などの土地利用型作物の導入拡大により、稲作と転作を合理的に組み合わせた望ましい水田営農の実現に向けた施策を強力に推進していく必要があると考えております。
 また、若い担い手や新規就農者、認定農業者への支援などにより、21世紀に向けたたくましい農業を支える経営体の育成確保を図るとともに、農産物流通対策として、米、園芸、畜産が三位一体となった首都圏での販売宣伝活動や地場流通の促進など、県産農産物の総合的なマーケティング戦略を展開していくほか、農林業と関連産業とが一体となった地域産業おこしによる所得機会の創出など、中山間地域の活性化対策を関係部局と連携して推進していくことが重要であると考えております。
 このような施策の推進に当たりましては、農業生産の拡大と所得の向上を基本としつつ、消費者の視点も踏まえながら新たな組織のもとで総力を挙げて取り組み、本県農業の一層の振興を図ってまいりたいと存じております。
   〔総務部長大隅英喜君登壇〕

〇総務部長(大隅英喜君) まず、地方振興局の権限強化と体制整備についてでありますが、地方振興局は、本年4月に土木事務所の統合、保健医療部門と福祉部門の組織的な連携の強化、本庁からの大幅な権限の委譲、企画部門の職員の増員、新進気鋭の職員の重点的な配置などにより、昭和61年の地方振興局の創設以来最も大幅な機能強化を図ったところであります。
 その運営につきましても、地方振興局の職員は、常に県民の立場に立って、地域のことは地域で完結させていくという意識を強く持って仕事に取り組むことが大切であるとの認識から、地方振興局と市町村との合同研修や新しい総合計画地域編の策定作業への参画などを通じて、職員の意識改革と政策形成能力の向上に努めているところであり、今後大きくその効果があらわれてくるものと考えております。
 また、先月作成いたしました行財政システム改革指針におきましては、行政運営面の改革の中の大きな柱として、地方分権時代の新たな行政執行体制の整備を掲げ、地方振興局を名実ともに地域振興の拠点として位置づけ、県民に身近な事務は地方振興局で完結する体制の実現に向けて本庁からの徹底した権限委譲を推進し、それに必要な人材を重点的に配置することとしております。
 来年度におきましても、この方針に基づき、なお一層の地方振興局の機能強化に努め、円滑な行政執行とサービスの向上を図ってまいりたいと考えております。
 次に、市町村への権限委譲についてでありますが、分権型地域社会においては市町村の役割が今後ますます重要となってくることから、県と市町村とは、ともに個性豊かな地域づくりを進めるパートナーとして適切な機能分担と支援協力関係を基本とした体制づくりに努めていくことが大切であると存じております。このような考え方に沿って、本年3月に策定いたしました岩手県事務委譲等推進指針に基づき、権限の計画的委譲に取り組んでいるところでありますが、来年度は民生・児童委員の指揮監督、商店街振興組合の指導監督など、35事務について委譲したいと考えております。
 また、市町村への権限委譲を円滑に進めるため、本年5月に設置いたしました県と市町村との協議機関での検討や全市町村に対するアンケート調査の結果などを踏まえ、財政的な面では、地方交付税の算定単価などを参考とした財源措置を適切に講ずるとともに、人的な面では、各種研修会の開催やマニュアルの作成などを主な内容とする実施計画案を現在、各市町村に個別にお示しして協議に入っているところでありますが、今後とも市町村がみずから進んで受け入れることができるよう、引き続き努力してまいる考えでございます。
   〔商工労働観光部長佐藤孝司君登壇〕

〇商工労働観光部長(佐藤孝司君) まず、中心市街地の活性化についてでありますが、消費者ニーズの多様化を初め、モータリゼーションの進展や住宅地の郊外への展開、さらには郊外型大型店の増加などを背景に、県内の中心市街地の商店街は、空き店舗の増加など厳しい状況にあります。
 このような中で県といたしましては、本年2月と6月の2回にわたる商工業振興審議会において、今後の中小小売商業の振興施策についてさまざまな角度から御議論いただくとともに、商店街の現場の実態調査などに取り組んできたところであります。
 このような調査検討を踏まえ、商店街づくりを担う若手リーダーを養成する観点から、県単独事業として、今年度から新たにいわてあきんど塾を開催するとともに、江刺市や遠野市などの地域の特色を生かしたまちづくりの動きへの支援に取り組んでいるところであります。
 また、国の平成10年度予算要求では、通商産業省や建設省等の11省庁が連携した中心市街地活性化のための諸施策が盛り込まれているところでありますが、これは夏の政府予算統一要望における本県の要望趣旨に沿ったものと考えております。このような国の中心市街地活性化のための諸施策の活用については、商店街の意欲を取り込んだ市町村の基本構想づくりが前提になっていることから、県といたしましては、現在県内各地の市町村や商店街への諸施策情報の提供や現場協議など、必要な指導支援に取り組んでいるところであります。
 また、中心市街地の活性化については、ハード・ソフト両面にわたる各省庁の事業の一体的な活用が肝要であることから、都市計画事業などを所管する庁内の関係部と連携しながら地元に対する指導を行っているところであります。
 今後とも、市町村や商店街の意欲的な取り組みを基本としながら、庁内関係部との十分な連携を進める中で商店街の活性化を支援してまいりたいと考えております。
 次に、産業集積活性化対策事業についてでありますが、近年、産業経済活動の国際化が急速に進展し、いわゆる産業の空洞化の懸念が高まっている中、特定産業集積の活性化に関する臨時措置法に基づき、本年9月、全国に先駆けて北上川流域基盤的技術産業集積の活性化に関する計画が承認されたところであります。今後、本計画に基づき、我が国の製造業の発展を支える部品、金型、試作品等を製造する基盤的技術産業の集積活性化を目指し、本地域に集積している電気機械製造業や精密機械製造業などの幅広い産業分野を支える高い加工技術を担う中堅・中小企業の集積を図ってまいりたいと考えております。
 本計画の具体的事業といたしましては、地域企業の超精密加工技術等に関する技術指導力の強化や新材料等の材料分析のための評価試験設備の充実など、県工業技術センターや財団法人岩手県南技術研究センターの研究開発機能を強化していくこととしております。
 さらに、地域企業の持つ基盤的技術の高度化とともに、財団法人岩手県高度技術振興協会を中心とする産学官の連携の推進や高い加工技術を担うすぐれた技術者の育成など、本地域の基盤的技術産業の集積に向けた総合的な施策を展開してまいりたいと考えております。
 また、本地域の工業集積の波及についてでありますが、地域の特性を生かした発展をしていくためには、北上川流域地域の工業集積の効果を広く県内全域に波及させていくことが極めて重要であると考えております。このため、関係市町村との適切な役割分担のもと、企業立地奨励事業費補助金の積極的な活用などによる北上川流域地域の誘致企業の県北、沿岸地域等への二次展開の促進や、岩手大学、財団法人岩手県高度技術振興協会を中心とする広域的な産学官のネットワークの形成を図りながら、本県工業の振興に積極的に取り組んで参ることとしております。
   〔土木部長藤本保君登壇〕

〇土木部長(藤本保君) 湯田ダムの活用についてでありますが、建設省では、湯田町がダムを活用した地域づくりに積極的に取り組んできた実績を踏まえ、町の申請に基づき、ことしの7月に地域に開かれたダムの指定を行ったものであります。この指定は、ダム本体や湖面利用、また周辺区域の整備などに関する事業を計画的かつ一体的に推進することにより、地域の自然環境、レクリエーションなどの機能を高め、地域活性化を図ろうとするものであります。錦秋湖では、既にボート等の湖面利用や湖水祭り等が行われており、また周辺にはスキー場や温泉があることから、ダムと周辺区域の観光資源を関連づけた整備を進めていくことが湯田町にとって重要であると考えているところであります。
 現在、学識経験者、ダム管理者である北上川ダム統合管理事務所、湯田町、県の土木部等の行政機関、地元の観光協会を初めとする各種団体等からなる湯田ダム地域整備協議会を設立し、整備計画の検討を始めたことは御案内のとおりであります。
 また、これまで国へ要望していた貯水池保全事業が今年度から新規に着手したことにより、事業完成後は川尻地区の湖面水位の維持が期待できることから、水辺環境や景観の向上を図られるとともに、新たな湖面利用が期待されているところであります。
 土木部といたしましても、これまで貯水池保全事業の新規採択や地域に開かれたダムの指定等に努力してまいりましたが、今後とも、協議会に積極的に参画していくことはもちろんのこと、地域の特性が生かされた整備計画が早期に具体化できるよう支援してまいりたいと考えているところであります。
   〔企画振興部長武居丈二君登壇〕

〇企画振興部長(武居丈二君) 地域情報化についてでありますが、郵政省の地域情報化指標は、情報通信、放送インフラやインターネット、プロバイダーなどの情報通信サービスの利用環境及び行政窓口オンラインサービスや観光・地域情報提供システムなどの整備状況を示す項目について市町村ごとに指標化したものであります。
 この調査結果を見ますと、大都市圏と比較して地方は概して低位となっておりますが、この指標は情報化の状況を一面的にとらえており、一つの目安とはなるものの、地域の情報化の度合いはそのポイント数のみをもって直ちに正確にあらわされるものではなく、利用者あるいは生活者としての県民の視点から、いかに地域の課題の解決や地域の機能強化などに活用されるかが重要であると認識しているところであります。したがいまして、この指標に示された現状はこれを事実として受けとめ、例えば利用環境の整備については、通信放送事業者や市町村と連携して、携帯電話のサービスエリアの拡大など、その整備促進に積極的に取り組んで参りたいと考えておりますが、特にこれからは、地域にとって真に必要とされる分野に情報化が活用されるよう、地域の特性を生かした自主的・独創的な取り組みを支援することにより、県内格差、県外格差の解消を図ってまいる必要があるものと考えております。
 いずれにいたしましても、広大な県土を有する本県におきましては、地域情報化を推進することが、時間・距離の制約を克服し住民福祉の向上、地域の活性化を図る上で戦略的な重要性を有するものと認識しているところでありまして、本年度策定を進めている高度情報化いわて構想に盛り込まれる事業の着実な推進を図ることにより、また来年秋に本県で開催される全国マルチメディア祭を契機として、広く県民の機運の醸成を図りながら地域情報化を積極的に推進してまいりたいと考えております。
   〔教育長細屋正勝君登壇〕

〇教育長(細屋正勝君) 平成11年に本県で開催される全国高等学校総合体育大会施設の整備状況についてでありますが、競技会場の整備についてはおおむね順調に進捗いたしております。このうち、インターハイ関連スポーツ施設整備費補助事業で整備している競技施設のうち、既に花巻市総合体育館や水沢市体育館等が完成しているほか、総合開会式の会場となる北上市の陸上競技場と関連施設、紫波町の自転車競技場等が今年度中に完成の予定であります。また盛岡市の南公園球技場など、残る五つの施設についても、平成10年度末には完成する予定であります。
 次に、インターハイ終了後の高規格スポーツ施設の活用方策についてでありますが、教育委員会としましては、これら施設が全国規模の競技に対応できる高規格の施設でありますことから、県民体育大会や高校総体など、県内競技大会の開催はもとより、御提言のように、市町村や県体育協会及び学校体育連盟などの競技団体と連携を図りながら、バレーやハンドボールの日本リーグ、ラグビーの東日本リーグなど、全日本クラスの各種競技大会の誘致など、施設の有効的な活用に取り組んでまいりたいと考えております。
 さらに、指導者の養成や各種スポーツ教室の開催を通して、岩手国体を契機とした岩手町のホッケーのような地域におけるさまざまなスポーツの活性化や掘り起こしを図るとともに、子供から高齢者まで、地域住民が主体的にスポーツを楽しむ生涯スポーツの場としても積極的な活用がなされるよう、市町村や関係団体を指導してまいりたいと考えております。
   

〇議長(那須川健一君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時35分 散 会


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