平成9年12月定例会 第12回岩手県議会定例会会議録

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〇22番(水上信宏君) 県民クラブの水上でございます。
 平成7年初当選議員の会長であり、大変御尊敬申し上げ指導をいただいていました佐藤一男先生が、去る10月16日、御逝去なされました。痛恨のきわみでございます。地域を重んじ、遠野市、さらには岩手県を真剣に考え、独特なキャラクターで質問しておられました佐藤一男先生の御生前のあり日をしのび、謹んで哀悼の誠をささげ、心より御冥福をお祈り申し上げます。
 通告に従い、順次質問または自分の提言を含め進めてまいりたいと存じますので、当局の誠意ある答弁をお願いしておきたいと思います。
 まず初めに、国の財政構造改革の推進と医療保険制度についてお伺いいたします。
 去る平成9年6月3日閣議決定され、11月6日衆議院本会議で可決された財政構造改革法では、主要経費の具体的な量的縮減目標等について、10年度の概算要求の段階から反映するとしております。財政構造改革の推進においては、当面の公共事業予算については、我が国経済の活力維持のため経済構造改革を早急に推進する必要性、官と民、国と地方の適切な役割分担、事業のより効果的な実施等の諸課題に対応すべく、生活関連の社会資本の整備や物流効率化対策に資するものなど5つの基本的考え方に基づくこととするとしております。私は、現在地域住民が安心して生活できる安住の基礎的条件としての交通網の整備について申し述べたいと思うのであります。
 交通網の整備は、ただ単に車を走らせるだけでなく、都市部と農村漁村部との交流を進めることにより、教育文化、医療等都市的サービスを地域全体に提供するとともに、ひいては、経済の波及効果等産業経済の活性化を促す上からも、その早急な整備が望まれておるものと存じます。しかしながら、今回の公共投資基本計画の中では、公共投資の地域的配分について、地域の活性化を通じた多極分散型国土の特色ある発展等国土の均衡ある発展を図ることを基本とし重点的、効率的配分を行い、地域経済への配慮や整備水準についての地域間の格差の是正にも留意しつつ、基礎的条件整備を積極的に推進するとあります。このことから本当に地域のニーズを踏まえ、本県のような社会資本整備のおくれている地域はこうしたときこそ、県を挙げて国に働きかけ、おくれている県内交通網を初めとした社会資本の整備充実を図るための積極的取り組みが必要であると考えるところであります。
 また、県民の声を県政にと積極的に知事は県内各地を回り懇談会を開催しておりますが、そのほとんどの地域で交通網の整備充実を図っていただきたいという声が多数を占めていることは御案内のとおりであります。そこで、お伺いしますが、今回の公共事業の見直しとの関係で、今後県内の道路網の整備はどのようになるのでしょうか、そして県の対応はどうなされるのでしょうか、知事の御所見をお伺いいたします。
 また、私は、県議会に席を得、最初の一般質問の際にも伺ったところですが、八戸・久慈自動車道を見ますと、久慈市内の一部での供用開始、八戸市内の一部工事着工とは言われておりますが、まだ久慈市と八戸市の中間の路線すら発表されていないのが現状であります。今回の公共事業見直しによりその見通しはますます厳しいものになるものと予想されますが、八戸・久慈自動車道の進捗状況と今後の見通しについてもあわせてお伺いしたいと存じます。
 次に、医療保険制度については、国は、平成12年度までのできるだけ早い時期に、医療保険制度等について抜本的な改正を行うための検討を行うほか、一定額以上の収入等を有する高齢者に対する老人保健法に基づく医療給付等のあり方についてそれぞれ検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることとしております。しかしながら、今後到来が予想されます少子・高齢化社会にあって、財政改革の名のもとに余りにも弱者に重い負担を求めていると感じるのは私だけでしょうか。本年9月からスタートしております医療費の負担を見てもわかりますように、一番困っているのは、長年社会に尽くしてこられ、これから余生をと考えていた高齢者の方々であり、その声には切実なものがあります。それでも大都会のように多くの医療機関があり、専門の医師が多くいる地域でありますならば、その時々の対応ができるのでありますが、岩手県のように各地域の集落から中央まで遠く医療機関にも恵まれていない地域にあっては、何日、何週目に病院にと準備してから通院する高齢者の患者さんも多くいると思うのであります。私は、こうしたことを思うとき、今回施行された患者負担の給付と負担の公平等の観点から高齢者等には一定の配慮を行いながらも、全国的に統一した定額負担をすることに対し疑問を持つものであります。国においては、医療保険福祉審議会において、医療保険制度の抜本的な改革に向けて論議が開始されたところでありますが、各県の置かれている環境、立場に十分考慮した医療保険制度となるよう働きかけていく必要があるのではないかと思うのでありますが、県当局の所見をお伺いします。
 次に、日本一と言っても過言でないと思います恵まれた自然環境の中の森林の持つ恵みについて申し上げ、県の思い切った施策をと期待し伺ってまいりたいと存じます。
 まず、みどりの日の目的は、国民が自然に親しみ、その恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむとともに、自然保護や緑化運動を盛り上げることとうたわれております。まさに森林の持つ地球環境温暖化防止等への効用あるいは国土保全など、特別の関心があって、全国各地での植樹祭や緑の羽根募金運動等々、自然の恵みを子孫に残そうと懸命の努力がされている一方で、乱開発や不慮の森林火災等によっての被害も多くあることも事実であります。
 また、森林は、木材の供給はもとより、水資源の涵養を初め、大気の浄化、保健休養の場を提供する公益的機能を持つなど、ますます多種多様な恵みを提供しております。開発か保護かは別といたしまして、例えば、1984年、埼玉県ではさいたま緑のトラスト基金を制定し、貴重な自然を残そうと計画しておると聞いておりますし、和歌山県本宮町の町長が提唱し、1992年に全国組織の森林交付税創設促進連盟を発足させ、森林を守り支えている中山間地域の現状を訴えております。
 本県におきましてもメニューはさまざまでも、先人、先輩たちがそれぞれの施設整備を行い、教育活動から森林浴と工夫を凝らしておると聞いておりますし、現在、山形村へのエコパーク平庭の整備等、本県の持つ環境を生かした施策に力を入れておられますことは、評価しておるところであります。県土の約77%は森林に覆われている本県の現状を見た場合、森林は公益的機能を持っているとするならば、その価値を提供している広い森林を持つ自治体や森林経営者に応分の優遇措置を講ずる施策を期待するものであります。森林造成は、長年にわたる地道な努力の積み重ねによって、初めて達成される極めて根気のいる事業と言われております。今取りざたされている地方分権の時代を先取りし、山林王国岩手県として、森林の多面的な公益的機能に着目し、森林を抱える自治体が森林保全に十分取り組めるように森林交付税の創設を国に働きかける必要があると思いますが、いかがでしょうか。
 また、森林経営者が継続的かつ安定的な林業経営ができるような施策を講ずるべきと考えるものですが、知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、新しい総合計画についてお伺いします。
 この新しい総合計画は、まさに先行きが不透明な時代の大きな転換期の中で、また、御案内のとおり国において財政構造改革を初めとする各種改革が進められているなど、厳しい社会経済情勢の中で策定しようとするものであり、その意味では非常な困難が伴うものと考えております。しかしながら、こうした時代であるからこそ、自由で新鮮な発想のもと、新時代に向けて明快な戦略を持って取り組む必要があるものと存じます。ことし7月の総合計画審議会に対する諮問以降、県ではこれまで県民1%アンケートの実施、各広域生活圏ごとの知事と市町村長との懇談会、県内10会場での21デザイン会議の開催、さらには岩手こども議会やレディースフォーラムの開催など県民意向の把握に取り組んでおられると伺っております。また、今月に入り、総合計画審議会では、環境共生、連携・交流・ネットワーク小委員会など、五つの小委員会が相次いで開催されるなど、その審議が本格化してきていると伺っております。そこで、お伺いしますが、今後計画策定作業を進めていく中で、県北、沿岸地域の振興について、どのような方法でその基本的な方向を盛り込もうとしているのか、お伺いします。
 次に、農業問題についてお伺いします。
 ことしは米の作況が105の豊作となり、また、園芸作物等についても順調な生育を示すなど、全体的には実りの多い出来秋を迎えたところであり、まずもって、このことについて農家の方々ともども関係者一同収穫の喜びを分かち合いたいと存じます。こうした喜びが本県農業の発展の弾みとなることを切に願うものであります。しかしながら、既に報道されているように、来年は転作制度が大きく変わるとともに、減反面積については、過去において経験のない大規模になると予想されておりますが、農家の方々にとっては、来年の営農に向けて今から準備しなければならない喫緊の重要課題であり、その対応に苦慮されていると思うと大変心を痛めているところであります。
 加えて、今、農業、農村は、外国産農産物の輸入が国内産地に大きな影響を及ぼすとともに、農産物価格の低下傾向が農業所得を直撃しており、また、中山間地域などでは、農業労働力の減少、高齢化が進行し、農業生産や農村活力の低下が懸念されるなど、極めて厳しい状況に置かれております。このような状況を乗り越えて、本県の重要な産業である農業が、今後とも安定的に発展していくためには、農家の方々が生きがいと魅力を持って農業を営んでいただくことであり、計画的かつ体系的な施策の展開を図っていくべきものであると考えるものであります。
 折しも、県においては、新しい農業計画を策定するため、その基本的方向について、先般、農政審議会に諮問したところであります。本県農業、農村のさらなる発展を願う私としては、新しい農業計画に大きな期待を寄せるものであります。そこで、お伺いしますが、県は、新しい農業計画について、どのような考え方で策定に取り組もうとしているのか、お示しいただきたいと存じます。
 次に、米の消費拡大についてお伺いします。
 現代の日本は、飽食の時代と言われている中で、米食を敬遠する傾向が見られることは、極めて残念であり、こうした風潮を何とかしなければならないものだと考えているものであります。現在の1人当たりの米の消費量を見てびっくりしておりますが、昭和30年代後半は120キログラム食べていたのが、最近のデータでは70キログラムを割って、約半減しております。日本の米は、アメリカなどに比べて価格が高いと言われていますが、仮に1人当たり70キログラムにすると、1日分でたったの100円にしかなりません。これまで県と農業団体は、一丸となって首都圏での県産米のPRや、米の消費拡大のための各種事業を積極的に展開されてきたことは、私も十分承知をしております。その取り組みを高く評価しているものであります。
 先般も報道で見ましたが、東京の女子大学で若い方々に消費拡大と県産米のPRをしておられましたが、その発想もすばらしいし、大事なことであります。特にも、県職員によるお米ブラザーズの活躍に対しては拍手を送るものであります。私は、今の米余りの中にあって、この米の消費拡大対策を、例えば、県内の学校給食へのさらなる拡大や県職員みずから積極的に米飯を進めるなど、一層強力に展開していくことが必要であると思いますが、この点についての県の考えを伺いたいと思います。
 次に、介護保険制度を展望した介護サービス基盤の整備についてお伺いいたします。
 今日、高齢化の進展に伴い、高齢者介護の問題が社会全体にとって、また国民一人一人にとって大きな問題となっております。介護を必要とする状態となっても自立した生活を送り、人生の最後まで人間としての尊厳を全うできるような、新たな社会支援システムの確立が求められております。このため、国においては、高齢者が介護を要する状態になったとしても、自立した生活を送れるよう、高齢者の介護を社会的に支える仕組みの創設を目指し、介護保険法案を国会に提案し、さきの通常国会において衆議院で可決され、現在参議院において審議されております。この介護保険制度は、40歳以上の者が被保険者となり、その保険料と公費により高齢者の介護を支えようとするものであり、平成12年度の導入が予定されておりますが、導入に当たっての一番の懸念は、保険料負担に見合った適切な介護サービスが受けられるのだろうか、保険料あってサービスなしという事態になりはしまいかということであろうと思います。
 介護サービス基盤の整備については、従来から、国においてはゴールドプラン、新ゴールドプランにより、県においては高齢者保健福祉計画により進められてきており、本県においてはおおむね順調に整備が進んでいると聞いておりますが、これらの計画は、現在の措置制度のもとでのサービスの利用状況を踏まえて策定されたものであり、措置制度から契約制度に移行する介護保険制度が実施されれば、在宅サービスや施設サービスの利用も精神的な抵抗感が少なくなり、利用が増加されることが予想されます。現在でも、特別養護老人ホームへの施設の入所は希望者が多く、順番待ちの状態であります。今後、介護保険制度の受け皿として必要な施設等の介護サービス基盤の整備を、従来の計画にも増して急ぐ必要があると考えます。そこで、お伺いいたしますが、本県における介護施設等の介護サービス基盤整備の見通しはどうなっているのでしょうか。また、現在の計画では見込んでいない介護保険制度の実施に伴い予想される利用増加分について、どのように対応されるお考えか、あわせてお伺いいたします。
 次に、少子化対策についてお伺いします。
 近年、マスコミ等を通じて少子化に関するいろいろな調査結果や意見などが報じられており、県民の関心も高まってきております。今後も少子化が進行すると、子供の健全な成長への影響を初め、家庭、地域社会、ひいては社会保障制度や経済社会全体に非常に大きな影響が及ぶものと懸念されるところであります。私の地域においても、幼少のころに比べ子供がみんなで一緒に遊ぶ姿はめっきり減って、活気がなくなっているように感ずるのですが、県内の各地域においても同様の状況にあるのではないかと存じます。このような現状をかんがみると、本県においては、子供を安心して産み育てることができる環境づくりを一層推進していくことが重要であると考えております。そこで、この施策の推進のため、県は少子化に関する県民、特に女性を対象とした意識調査を実施し、少子化対策の参考にすべきと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、臓器移植法についてお伺いします。
 先般、臓器提供をする場合に限り脳死を人の死として、心臓や肝臓などの臓器を摘出して移植することを可能にする臓器の移植に関する法律が、国会におかれまして可決、成立、先月16日から施行されております。この臓器移植法は、本人の生前において、脳死判定と臓器提供の意思表示を書面で明らかにし、家族が同意した場合に限って移植が可能になる制度であります。また、脳死判定には、移植に関係しない2人以上の専門医が実施することなどが盛り込まれております。この法律の成立は、臓器移植でしか助かる道のない、また、毎日が時間との戦いを強いられている重症の心臓病や肝臓病の患者にとっては、生きるための一筋の光明であり、その家族にとっては大きな朗報であったことと推察されるものであります。しかし、この移植医療には、善意の臓器提供が欠くことのできない医療であることから、現在、全国的に進められている意思表示カードの普及は、我々県民にとりましても、極めて重要な課題となっていると考えるものであります。そこで、伺いますが、臓器移植法の施行後、県として、意思表示カードの普及をどのように行われたのか、また、今後その普及拡大をどのように図っていくのか、あわせてお伺いします。
 次に、複式学級についてお伺いいたします。
 少子化傾向に加え、過疎地域においては、人口流出による児童生徒の減少が著しく、学級編制のあり方が大きな問題となっております。人数の多い学校にいると専門の教科の先生から学べるのに、人数が少なくなると勉強も満足に受けられないのではないかという不安の声も聞かれるところであります。児童生徒数が減少傾向にある今日、基準から見れば複式学級を持つことになるような学校においても、複式学級を解消し、少人数であっても単式学級を置くべきであると考えます。そこで、本県における複式学級の状況について、その数はどのようになっているのか、また、地域別にはどのようになっているのか、お伺いいたします。
 また、今後、少子化社会を迎えるに当たり、国において定めている基準の見直しの動きはあるのか、県として国の基準より上回った学級編制とする考えはないのか、あわせてお伺いいたします。
 以上で、県当局の前向きな答弁をお願いして、壇上からの私の質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 水上信宏議員の御質問にお答えを申し上げます。
 まず、公共事業の見直しと道路整備についてでございますが、平成10年度から始まる国の新たな道路整備5カ年計画案によりますと、今後は、道路整備のおくれから道路そのものを整備することを目的としていました時代から、事業目的と社会的な効果を十分に確認をしながら投資を判断する時代へ移行してきておりまして、道路事業の効率化、評価システムの導入、透明性の確保、役割の明確化が求められてきております。このような中で交通量や大規模プロジェクトが少ない地方にとりましては、国庫補助の採択は非常に厳しくなってきておりまして、計画的な道路整備を推進していくためには、国との役割分担を明確化をし、国庫補助事業と県の単独事業を適切に組み合わせることによりまして効率的な道路整備を進める必要がございます。
 本県におきましては、まだまだ整備すべき道路が多く残されておりますけれども、財政構造改革などへの対応も一方で求められていることから、より計画的・効率的な道路整備を推進する必要がございまして、新たな岩手県道路整備5カ年計画を策定をすることといたしまして、先般、本計画のビジョンとなりますドリームランド岩手の道づくりを策定をいたしたところでございます。
 ビジョンでは、活力と魅力ある自立した地域づくりを支える道づくり、安心・健やかな暮らしを支える道づくり、自然を大切に・自然とふれあう道づくり、この三つを基本的方針といたしまして、まず基本的な道路ネットワークとして、物流の効率化や地域の競争条件を確保するとともに、高度医療機能を享受できる高規格幹線道路や地域高規格道路などの骨格道路の整備、中心市街地の活性化を図り交通渋滞を緩和するとともに省エネルギーによる地球温暖化防止に資する都市内骨格道路の整備、若者の定住化などに資する地方生活圏中心都市と周辺町村を連結する道路の整備などを積極的に推進することといたしております。
 また、近年県民のニーズも多様化をいたしておりまして、整備に当たりましては、自然環境や景観などに配慮するとともに、道の駅などの交流触れ合い空間などの整備も推進をしていくことといたしておりまして、今後におきましても、県土の均衡ある発展を支える道路ネットワークの構築には積極的に取り組んでまいりたいと、このように考えております。
 次に、森林交付税の創設についてでございますけれども、近年、森林・林業をめぐる情勢は、木材価格の低迷に加えまして、林業労働力の減少や急激な高齢化、山村における過疎化の進行など、極めて厳しいものがございまして、適切な森林の整備が行われにくい状況となってきておりますことは御案内のとおりでございます。このため県といたしましては、平成5年度から、自治省、国土庁、そして林野庁の3省庁が打ち出しをいたしました森林・山村対策に基づく諸施策を導入いたしまして、ふるさと林道の整備や、森林整備の担い手対策として総額36億円の基金を造成するなど、森林の保全、整備や山村の活性化に積極的に取り組んできたところでございます。御提言の趣旨は十分理解するものでございますけれども、新たな交付税制度の創設には現行制度との調整などが必要でございまして、広大な森林を有する本県といたしましては、森林・山村対策は大変重要な課題でありますことから、さらなる地方財政措置の拡充について、市町村、関係団体と一体となりまして、従来にも増して強く国に要望してまいりたいと考えております。
 次に、継続的かつ安定的な林業経営の可能な施策についてでございますが、私は、適切な森林整備を通じ、森林が有するさまざまな公益的機能を高度に発揮できるようにするためには、その担い手でございます林業経営体が安心して林業経営に取り組むことのできる多様な施策を講ずることが重要であると考えております。したがいまして、本県の森林整備にとって今最も重要な間伐の推進や地域林業の活性化の拠点づくりのための県有林、県行造林を中心とした路網整備について、今年度から新たに県単独事業を創設するなど、施策の充実に努めているところでございます。
 今後におきましても、21世紀の本格的な県産材時代の到来を現実のものといたしまして、林業経営体の経営基盤を強化していくために、木材の生産から加工、流通に至る体制整備によります県産材のブランド化に努めますとともに、林業所得の確保を図るために、シイタケや木炭などの、この特用林産物の生産振興など、多方面にわたる施策を積極的に講じてまいりたいと、このように考えております。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁をさせますので、御了承をお願いいたします。
   〔土木部長藤本保君登壇〕

〇土木部長(藤本保君) 八戸久慈自動車道の進捗状況と今後の見通しについてでありますが、本路線は、八戸市を起点として久慈市に至る延長約50キロメートルの自動車専用道路であり、地域高規格道路の三陸北縦貫道路と一体となり三陸沿岸北部地域を有機的に連携し、それぞれの地域特性を生かした自立的な地域社会を形成するための発展基盤として極めて重要な路線と認識しております。
 本路線につきましては、平成5年12月、久慈市内の3・2キロメートルが供用されており、現在は青森県側から重点的に整備が進められているところであります。このうち八戸ジャンクションと八戸南インターチェンジ間8・6キロメートルについては、八戸南環状道路として平成3年度事業化され、現在用地買収が進められております。また、八戸南インターチェンジから階上町間約9キロメートルは、八戸南道路として平成7年度事業化され、測量等の調査がそれぞれ行われております。
 残っております未着工区間の本県側約27キロメートル、青森県側約2キロメートルの合計約29キロメートルにつきましては、関係機関の努力と地元の熱意により、本年2月に予定路線から基本計画区間に格上げがなされたところであり、現在国においてはルートの検討や調査を行っていると伺っております。最近の公共事業を取り巻く環境には厳しいものがありますが、県といたしましては、本路線の重要性に鑑み、早期の整備計画区間への格上げと早期着手に向け、引き続き国に強く働きかけてまいりたいと考えております。
   〔保健福祉部長緒方剛君登壇〕

〇保健福祉部長(緒方剛君) まず、医療保険制度についてでありますが、本制度は国民皆保険制度を堅持し、すべての県民を対象に医療サービスを提供するよう運営されてきたところでありますが、少子・高齢化社会の進展、医療技術の高度化に伴い、医療費は毎年1兆円を超えて増大しており、医療保険制度は財政的に大変厳しい状況になっております。
 このような中で、国においては各界の代表及び学識経験者からなる医療保険福祉審議会において制度の改革についての審議を始めているところであり、県としては、その審議の状況を見守るとともに、すべての国民が安心して良質な医療サービスを受けることができ、給付と負担の公平に配慮した医療保険制度となるよう、必要に応じて国に働きかけてまいりたいと考えております。
 次に、介護施設等の介護サービス基盤整備の見通しについてでありますが、特別養護老人ホームや老人保健施設などの介護施設は、これまで県の高齢者保健福祉計画に基づき整備を進めてきたところであります。平成9年度の整備状況は着工ベースで、特別養護老人ホームは73施設、定員4、300人、目標に対し101・7%、老人保健施設は45施設、定員3、906人、88・8%となっておりますが、療養型病床群については4施設にとどまっております。
 他方、特別養護老人ホームについては、高齢者保健福祉計画の整備目標を上回ったため、今後の国の事業採択は極めて困難な状況にあります。しかし、重度の要介護高齢者が増加していること等から、在宅サービスを十分に提供してもなお家庭での処遇が困難な高齢者が多い圏域については、施設の整備について国の理解が得られるよう、厳しい状況ではありますが努めてまいりたいと考えております。
 また、介護保険制度の実施に伴い、サービス利用希望者が増加することが予想されますが、これについては法案成立後に国が定める基本指針に基づき、平成10年度に介護需要等の調査を実施し、平成11年度に介護保険事業支援計画の策定とあわせて、高齢者保健福祉計画や地域保健医療計画の見直しを行い、新しい制度に対応した目標を定めるとともに介護基盤の整備を推進してまいりたいと考えております。
 次に、少子化対策についてでありますが、子供を安心して産み健やかに育てることのできる社会の形成は、重要な課題と考えております。このため県といたしましては、子供を産みたいと希望する人々が喜びや楽しみを感じながら安心して子供を産み育てることができるよう、官民一体となって子育てに優しい環境づくりに努めているところであります。本県の子供を育てる環境は、去る5月に経済企画庁から発表された新国民生活指標によると、例えば、子供を育てるの領域が全国第3位、住環境の住むが全国第5位となっておりますが、他方、本県の出生率は全国を上回る速度で減少いたしております。したがって、本県の現状、特性を踏まえて、子育てに優しい環境づくりをなお一層推進していく必要があると考えており、御提言のありました県民の少子化に関する意識調査の実施につきましても検討してまいりたいと考えております。
 次に、臓器移植法についてでありますが、この法律は、移植医療の適正な実施を図ることを目的として制定されたものであり、特に臓器の摘出については、臓器提供者本人が生前、任意、善意で臓器を提供すること等の意思を意思表示カードなどの書面で明らかにしておくことが前提となっております。この意思表示カードは、患者の主治医などが臨床的に脳死と判断した場合、臓器提供に関する意思表示を把握することや、移植コーディネーターが臓器のあっせんに係る連絡調整を行うことなどに重要な意義を有するものであります。また、心臓や肝臓の移植には、脳死体からの臓器摘出が必要でありますが、脳死の発生率はすべての死亡者の約1%であり、臓器移植の必要な方々が少なからずおられることから見ると、御指摘のとおり、意思表示カードの県民への普及は大きな課題であります。このため、県では当面、意思表示カード1万2、000枚を県民が入手しやすい保健所、市町村、病院、運転免許試験センターなどの窓口へ配備しているところであります。
 また、先般本県で開催された腎移植推進国民大会岩手大会や、いわて健康づくり推進県民大会などのイベントにおいても、参加者にカードやリーフレットを配布し普及啓発を行ったところであります。今後は、各種広報誌などを利用して県民に周知を図るとともに、カードの配備箇所の拡大や各種イベントの活用を通じて意思表示カードの普及にさらに努めてまいりたいと考えております。
   〔企画振興部長武居丈二君登壇〕

〇企画振興部長(武居丈二君) 新しい総合計画における県北沿岸地域の振興についてでありますが、新しい総合計画の策定に当たりましては、これまで地域21デザイン会議などの機会を通じまして全県的に、市町村を初め地域住民の方々から地域の将来ビジョンなどについての御意見、御提言をいただいてまいったほか、それぞれの地方振興局におきましても、地域住民の方々との間で情報提供や意見のやりとりを積極的に行うなど、創意工夫を凝らしたさまざまな取り組みを行っております。このような取り組みや、県民、企業に対する大規模なアンケート調査などを踏まえるとともに、各地域の現状を調査し、今後解決すべき課題などを抽出してまいりたいと考えております。
 これらの作業を進める中で、県北沿岸地域における基本的方向を明らかにしていきたいと考えておりますが、この地域は、地形や気象などの自然的条件が厳しく、また経済の中心から遠距離にあるなど、社会的条件が不利な地域となっていることから、これらの地理的、地勢的ハンディキャップの克服や圏域内外の地域との連携・交流の一層の促進、あるいはこの地域の農山漁村などが有する豊かな地域資源の活用を図ることに留意しながら、新しい総合計画に各般の施策が盛り込まれるよう努めてまいりたいと考えております。
   〔農政部長中村盛一君登壇〕

〇農政部長(中村盛一君) まず、新しい農業計画についてどのような考え方で策定に取り組もうとしているかについてでありますが、最近の農業を取り巻く環境は、輸入農産物の増大や消費者ニーズの多様化による食料需給の変化、さらには昭和一けた世代の担い手層の世代交代や中山間地域を中心とした農業労働力の減少、高齢化の進行など、農業構造が大幅に変動してきております。一方、国民の価値観や生活様式の変化に伴い、農業・農村に対しては、食料の安定供給はもとより、国土・自然環境の保全、自然に恵まれた居住・余暇空間の創出などへの期待が高まってきております。
 県といたしましては、このような大きな変革の時代に的確に対応し、本県農業・農村の一層の振興を図っていくため、農政審議会における審議を十分に踏まえるとともに、生産者や生産者団体など、各界各層の意見を伺いながら、新しい総合計画の部門別計画として農業計画を策定することとしているところであります。
 この計画の策定に当たりましては、まずもって、意欲ある農業者が希望を持って取り組める農業を実現し、産業としての農業を確立していくことが基本であると考えております。こうした観点に立って、経営感覚にすぐれた農業者の育成や、産地間競争に打ち勝つ体質の強い農業構造を確立するとともに、新技術の開発普及や高度情報化の推進、農業生産基盤・流通条件の整備、さらには食を軸とし、消費者ニーズを先取りした独自の宣伝・販売対策を推進し、総合食料供給基地としての地位を盤石なものとしていく必要があると考えております。
 また、中山間地域の活性化に向けた取り組みを進めるとともに、多彩な地域活動の助長や、農業・農村の総合的な情報の積極的な発信などにより、人的・物的交流の取り組みを促進し、豊かで潤いのある農村社会の形成を図っていくことが重要であると存じております。このような考え方のもとに、21世紀初頭を展望し、本県農業・農村の発展方向とそれを実現する基本方策を明らかにするため、新しい農業計画の策定に取り組んで参る考えであります。
 次に、米の消費拡大についてでありますが、近年国民の食生活が多様化し、米の消費量は年々減少していますが、米飯を中心とする日本型食生活は、栄養バランスにすぐれ理想型であると言われておりますので、現下の大幅な米余りの中で、改めてこの日本型食生活の普及・定着により米の消費拡大を推進していく必要があると考えております。こうした観点から、今年度におきましても、関係機関・団体と一体のもとに、国民の主食である米をみんなで考える機会にしていただくため、新たに8月18日を米の日として設定し、広く県内外から御飯に関する標語を募集するとともに、米の日宣言イベントを開催したところであります。
 また、若者を中心に米の消費が落ち込んでおりますことから、こうした方々に米飯について理解を深めていただくため、県内や首都圏の女子大の大学祭でのPR活動を行うなど、さまざまな面から消費の拡大に取り組んでいるところであります。
 さらに、議員御提言の米飯学校給食につきましては、本県は平均週3・2回と全国トップクラスとなっておりますが、米の消費の拡大を図るためには、子供のときから御飯になじんでいただくことが極めて重要でありますので、今後とも教育委員会とも連携しながら一層の推進に努めてまいる考えであり、また県職員の米飯推進につきましても、県産農産物全体の愛用運動の一環として取り組むなど、一層の米消費拡大運動を展開してまいる考えであります。
   〔教育長細屋正勝君登壇〕

〇教育長(細屋正勝君) 本県における複式学級の状況についてでありますが、今年度の複式学級数は、小学校307学級、中学校12学級、合わせて319学級であり、県全体の学級数の5・6%となっております。また、地域別に見ますと、宮古地区76学級、二戸地区54学級、久慈地区42学級であり、県北沿岸地区で県全体のほぼ2分の1となっております。
 複式学級の編制基準は、平成5年度から12年度までの第6次教職員配置改善計画により逐次進められてきており、小学校の場合、二つの学年の児童の合計数が18人で複式学級を編制していたものを16人に、中学校の場合には10人から8人とし、複式学級の1学級の人数を少なくする措置を行うこととなっております。
 本県におきましては、小規模校が多いという実情を踏まえ、順次対応を進め、中学校では平成6年度から、小学校では平成8年度からこの基準により実施しているところであります。
 また、複式学級の編制基準の見直しについてでありますが、国においては財政構造改革が進められているところであり、当面見直しを行う予定はないと聞いておりますし、本県におきましても、財政事情が厳しい状況にあることから、国の基準を上回る学級編制とすることは困難であると考えております。

〇22番(水上信宏君) 誠意ある御答弁をいただき、ありがとうございます。数点について再質問をさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
 私は、再三申し上げますように、現在の社会経済情勢では地域の発展は交通網の整備なくしてはあり得ないところであり、社会生活の活動領域の拡大等を支える基盤は今や道路にあると言われ、道路なくしては地域の発展は期待できるものではありません。先刻、岩手、青森、秋田の北東北3県の知事サミットが開かれた中でのテーマは、観光振興が中心となりましたが、その中の柱として、広域的道路交通網の整備充実がうたわれております。
 そこで伺いますが、長期的視点に立った広域的道路交通網の整備についての取り組みはどのようになっているのでしょうか。
 次に、医療保険制度についてですが、生活水準の向上や医療技術の進歩、さらには県や市町村の保健衛生対策等の充実によって平均寿命が延びているのは喜ばしいことですが、その反面、健康に不安を持ったり、障害を持つ高齢者が増加の傾向にあるとも聞いております。社会の第一線において長い期間社会に貢献してこられた高齢者にとっては、このたびの医療費の負担増は切実な訴えとなっておりますことは、既に申し上げたとおりであります。臓器移植法が成立したことをもろ手を上げて喜ぶことができるでしょうか。仮に善意の臓器提供者があったとしても、高額な医療費の負担、その後の医療費を負うところを思うとき、今回の医療費負担増は高齢者にとって相当な重荷になると思われています。医療や福祉の施策は一つの県や市町村では容易にできるものでないと言われており、私自身、この厳しい財政状況の中で申し上げることは大変心苦しいのですが、県の英知を結集して弱者救済のための助成制度をぜひお願いし、今一度その所見をお伺いいたします。
 なお、医療保険制度に関連しまして、現在医師の不足している地域、特に県立病院のない町村立病院の医師の確保が急がれる問題でありますが、その取り組み状況についてもあわせてお伺いいたします。
 以上、二つは質問でありますし、もう一点は、室根村が第12回の村アメニティコンクールで、豊かな自然や森は海の恋人、植樹祭などの環境保全の取り組みや都市・農村交流などが高く評価され全国一の栄誉に輝いたことに対し、御尽力くださった関係者の皆様に心から感謝と敬意を申し上げますとともに、このようなことが全県的に広がることを期待し、再質問を終わります。
   〔土木部長藤本保君登壇〕

〇土木部長(藤本保君) 広域的な道路網の整備についてでありますが、本県は広大な面積を有し、都市間距離も長く、また全域が積雪寒冷地であることに加え、奥羽山脈、北上山地が縦走しており、通年型観光や県境を越え隣県との交流連携の促進のためにも、距離、雪、峠を克服する骨格となる道路整備が必要であると認識しております。そのため、高規格幹線道路の整備促進に加え、平成5年12月には広域道路整備基本計画を策定し、約500キロメートルの交流促進型広域道路と約2、800キロメートルの地域形成型広域道路を定めたところであります。
 これらの広域道路を計画的、効率的に整備を推進するため、平成8年度より国庫補助事業と県単独事業を組み合わせて行う新交流ネットワーク道路整備事業に16ルート24路線を位置づけたところであります。今後とも、東北横断自動車道や三陸縦貫自動車道等の高規格幹線道路とともに、広域道路を含めたネットワークの早期構築に向け、計画的・効率的な整備を促進してまいる考えであります。
   〔保健福祉部長緒方剛君登壇〕

〇保健福祉部長(緒方剛君) 医療保険制度についてでありますが、現在本制度は、先ほど申し上げましたように厳しい財政状況にあり、今般、制度の安定的運営の確保を図るため、新たな改革を前提としつつ、世代間の負担の公平に配慮しながら、老人保健制度における一部負担の見直しが行われたところであります。今回の見直しでは、老人の場合、慢性疾患等のために月に何度も通院しなければならないケースが多いことなどを踏まえ、外来一部負担については同一保険医療機関等ごとに一月4回を限度とするとともに、入院の一部負担についても、低所得者に配慮した措置が講じられたところであります。
 県といたしましては、従来から実施しております重度の障害者への医療費助成に対し、今回の改正による一部負担の増加分についても助成のための所要の措置を講じたところでありますが、他方、現在の厳しい財政状況のもとにおきましては、県における全高齢者を対象とした助成制度を創設することは困難であると考えております。
 次に、町村立病院の医師確保の取り組みについてでありますが、県におきましては、地域医療を担う市町村立病院に対し、自治医科大学養成医師の派遣を行うとともに、市町村の奨学金制度に対し県単独補助を行っております。
 一方、地域における医師の定着を促進するため、第三次岩手県保健医療計画において、県立病院の所在しない地域における病院、診療所等の勤務医師の休日等の代診医の確保や、研修の確保について検討することとされたところであります。県立病院においては、地域医療部等において診療応援を既に行っているところであり、また、本年9月、岩手医科大学の協力のもとに、地域医療、市町村等の関係者による地域医療支援協議会を設置し、僻地医療の医師の確保支援方策あるいは市町村奨学金制度による養成医師の義務履行の支援等について協議を進めているところであり、今後さらに町村立病院を含めた地域医療支援の充実に努めてまいりたいと考えております。

〇議長(那須川健一君) 次に、渡辺幸貫君。
   〔19番渡辺幸貫君登壇〕(拍手)


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