平成10年6月定例会 第14回岩手県議会定例会会議録

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〇1番(斉藤信君) 日本共産党の斉藤信でございます。
 議案第9号、議案第23号、議案第26号から議案第31号について反対の討論を行います。
 議案第9号は、看護職員修学資金貸付条例の一部を改正する条例であります。
 その内容は、国の実施要綱の改悪に追随するものですが、修学資金貸与学生が200床以上の病院に就職した場合、これまでの償還免除をなくそうとするものであります。昨年度の実績を見るなら、貸与学生93名中、県内の200床以上の病院に就職した学生は32名、34・4%となっています。今回の改悪が強行されるなら、貸与学生の3分の1以上が償還免除を適用されなくなるというものであります。県立病院に就職した場合は、就職先次第で免除される者、されない者が出るという矛盾に満ちたものであり、反対するものであります。
 議案第23号は、1998年度岩手県一般会計補正予算であります。
 今回の補正予算は、戦後最悪の不況に対応するとして、政府の総合経済対策に基づくものであります。今回の不況は、日銀及び経済企画庁の発表にも明らかなように、消費税が増税された昨年4月以降、急速に悪化したものであります。不況の原因は、橋本内閣による国民への9兆円の負担増の押しつけ、いわゆる消費税の5%への増税、9月以降の医療費の値上げ、特別減税の廃止等によるものであります。だとするなら、不況打開の決め手は、緊急に消費税をもとの3%に戻すことであります。消費税の減税は100%消費拡大につながり、一番苦しんでいる低所得者が直接潤う減税であります。また、中小業者の3割ないし5割が、消費税を転嫁できずに身銭を切っており、中小業者を潤す減税でもあります。さらに、今一番落ち込んでいる民間住宅建設を活性化する力ともなるものであります。県民の最終消費額は約2兆5、000億円であり、2%減税の効果は県内でも約500億円にも及ぶものであります。
 今県議会に、消費税の3%への減税を求める請願が提出されましたが、継続審議となったことは残念なことであります。
 増田県政の596億円余の補正予算は、橋本自民党政治に追随するものですが、16兆円の経済対策自身が円安、株安、内閣支持率低下に見られるように、市場からも国民からも見放されているものであります。特に重大なことは、今回の補正予算が、増田知事自身が3カ月前に打ち出した当初予算の編成方針を大きく転換、変質させるものだということであります。
 増田知事は、2月県議会の演述で、国、地方を通じ、行財政を取り巻く環境が一層厳しさを増すことが見込まれることから、県の行財政システム改革をさらに確実なものとし、財政運営の健全化と県民の視点に立った行政運営の徹底を図っていくと述べ、中期財政見通しを立て、マイナス3・8%の当初予算を編成したのであります。
 ところが、今回の補正予算は、6月議会としてはこれまでで最大規模の596億円余。その主な内容は、従来型の公共事業の積み増しであります。公共事業費は2、812億7、100万円となり、大盤振る舞いをした昨年同期と比べても113・9%となりました。
 私は、議案に対する質疑の中で港湾整備事業の問題を取り上げましたが、運輸事務次官経験者の官僚OBでさえ、大船渡港、宮古港の港湾整備計画には、その過大な整備の根拠がないと指摘されているものであります。特に小本港は、当初事業費101億円に対して既に106億円余が投入されましたが、まだ進捗率は半分程度で、整備目的の根拠が既に危うくなっているものであります。こうした六つの港湾すべてに予算がついていることは、事業の重点化、緊急度と優先度の高い施策を特に厳選するとした増田知事の方針を投げ捨てるものではないでしょうか。
 農政関係の補正も、農協支援策を除けばほとんどの83億円余が公共土木事業となっています。今、農政に求められていることは、米の暴落による80億円の減収、減反拡大による90億円の減収に対する補てん策であり、安心して生産できる価格補償、所得補償の充実であります。
 土木を見ても農政を見ても、補正予算の特徴は、従来型の公共事業の積み増しではありませんか。
 今必要なことは、消費税の減税をかち取ることとあわせ、県政としては、介護保険の実施を目前に、計画から見ても立ちおくれている高齢者保健福祉計画の目標達成のための緊急な対策であり、1、053名もの待機者のある特別養護老人ホームの緊急増設など、福祉・医療の抜本的充実、福祉型公共事業の推進であります。
 福祉・医療への公共投資は、県の試算でも経済効果は公共事業と変わらず、雇用効果ではその2・1倍にもなるものであります。中小業者への仕事の確保では、2・800億円余の官公需の中小企業発注比率を現在の73%から当面85%まで高めるなら、それだけで330億円余の新たな仕事をふやすことができるのであります。
 雇用の確保の問題では、年間実労働時間が1、982時間となっていますが、政府の目標である1、800時間を達成するなら、基本的に約3万人余の失業者を解決できるものであります。県民の実態と要求に基づく効果的な不況対策を強く求めるものであります。
 第2に、52億6、000万円余の貸し付けによる農協支援策は、国、県の農政推進の責任を明確にして行うべきであります。債務超過を抱えた農協には、個別の問題、要因もありますが、共通しているのは、牛肉の自由化による畜産価格の大幅な低下と、画一的な規模拡大路線が負債を拡大させたということであります。こうした国、県の農政の責任をあいまいにして、農協にだけ責任を押しつけることは正しくありません。
 さらに支援の条件として、農協の広域合併を押しつけることは問題であります。本来、農協の合併は、農協組合員の総意に基づいて決定するものであります。同時に、既に広域合併している農協を見ても、とても成功しているとは言えない状況となっていることであります。無理なリストラを押しつけた農民の一層の農協離れを促進しないよう、強く求めるものであります。
 第3に、教育関係では、児童生徒健全育成推進費として5、960万円が計上されました。これは、生徒たちの悩み、不安、ストレスに対応するとして、県内142校の中学校に心の教室相談員を配置しようとするものであります。子供たちの悩み、不安、ストレスの原因を明らかにすることなく、場当たり的に相談員を配置しても解決されるものではありません。子供たちの悩み、不安、ストレスの最大の原因は、異常な詰め込み教育、受験中心の競争教育にこそあります。
 最近、国連の子供の権利委員会が、日本政府に対して厳しい勧告、警告の文書を送付しました。その内容は、高度に競争的な教育制度によって、子供たちがストレスにさらされていること、及びその結果として、余暇、運動、休息の時間が欠如していることにより、発達障害にさらされているというものであります。本県議会で、30人学級の実現を求める請願が採択される見通しですが、今必要なことは、ゆとりある教育内容と教育条件の整備を図ることであります。
 最後に、公共事業の拡大が深刻な財政悪化、借金増大の最大の要因となっており、福祉・教育切り捨ての要因ともなっていることであります。県は、交付税措置のある優良起債を活用していると述べていますが、実態は、地方交付税はこの8年間で構成比で10%も低下し、額も減少しているのであります。
 行き詰まった自民党政治に追随する県政では、財政の再建も、福祉の充実も、真の不況打開も図られないことは明らかであります。
 議案第26号から議案第31号までは、県単独公共事業の一部を受益市町村に負担させるものであり、反対するものであります。
 以上で反対討論といたします。御清聴ありがとうございました。
〇議長(那須川健一君) 以上で通告による討論は終わりました。
 これをもって討論を終結いたします。
 これより、議案第9号、議案第23号及び議案第26号から議案第31号までを一括して採決いたします。
 各案件は、委員長の報告のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
〇議長(那須川健一君) 起立多数であります。よって、議案第9号、議案第23号及び議案第26号から議案第31号までは、委員長の報告のとおり決定いたしました。
 次に、議案第1号から議案第8号まで、議案第10号から議案第14号まで、議案第16号から議案第22号まで、議案第24号、議案第25号及び請願陳情を一括して採決いたします。
 各案件は、委員長の報告のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
〇議長(那須川健一君) 起立全員であります。よって、議案第1号から議案第8号まで、議案第10号から議案第14号まで、議案第16号から議案第22号まで、議案第24号、議案第25号及び請願陳情は、委員長の報告のとおり決定いたしました。
   
〇議長(那須川健一君) 日程第32に先立ち、地方自治法第117条の規定より、副議長と交代をさせていただきます。
   〔議長退場、副議長着席〕
   
日程第32 議案第15号一般県道相川平泉線高館橋工事の請負契約の締結に関し議決を求めることについて
〇副議長(吉田秀君) 日程第32、議案第15号一般県道相川平泉線高館橋工事の請負契約の締結に関し議決を求めることについてを議題といたします。
 本案に関し、委員長の報告を求めます。菊池土木委員長。
   〔土木委員長菊池勲君登壇〕

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