平成10年6月定例会 第14回岩手県議会定例会会議録

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〇2番(上澤義主君) 政和会の上澤義主であります。
 政和会の皆さんを初め、先輩諸氏の御理解をいただき質問できますことに深く感謝いたし、後日、辛い評価のあることを覚悟しながら質問に入ります。
 まず最初に、私の意とするところを述べ、通告に従いまして順次質問をいたしたいと思いますので、誠意のある御答弁をお願いするものであります。
 我が岩手県は四国4県に匹敵する広大な面積を擁する県であることは県民すべての知るところであり、その中にあって、北上山地はその3分の2を占めております。また、森林の占める割合は県土の77%で、北海道に次ぐ森林大県として国民の住環境を支えてきた戦後の歴史があります。燃料の不足したときには日本一の木炭の産地であり、34%を占める国有林は、生活者雇用の場として、国民に対する貢献度ははかり知れないものがありました。山林ばかりではありません。今日ある高度経済成長を担ってきた人材や食糧の供給地でもあり、さらに鉱山資源の果たしてきた役割など、北上山地を語らずして日本国や岩手県を語るなどは先人への恩も義理も感謝の念も忘れた不遜の子孫と言わなければなりません。
 かつて大平内閣時代に打ち出された田園都市国家構想は、まさに3全総の定住構想の上位に位置づけられる国づくりの基本理念であり、中山間地域の定住対策でありました。その推進の中核であった全国山村振興連盟の最たるリーダーは、だれあろう当時の本県選出参議院議員であった増田盛先生でありました。ふるさとの山や川に思いをはせながら活躍をしてきたその血脈が多くの政治家に受け継がれてきたことはひとしく認めるところであります。
 翻って、現今の行財政をめぐる諸情勢に目を転じてみると、地方財政を取り巻く環境は依然厳しく、より一層の努力が必要となっていることも全県民の知るところであります。各自治体は行財政改革を推進し、効率的な行政運営を図っていくことが急務となっております。先般、自治省によって示された地方自治、新時代に対応した地方公共団体の行政改革推進のための指針においても、地方公共団体に求められる視点の一つとして、地方分権に対応した事務事業の簡素効率化、総合化が挙げられており、県においても、今後、行政の担うべき分野や行政執行の方法などの検討が進む中で、新たな行政ニーズに対応し得る行政システムの構築が課題となっているわけであります。
 去る5月30日付の週刊ダイヤモンド誌の全国691都市と47都道府県の財政の破綻ランキングによると、財政力指数と交付税依存度ワースト100の中に北上山地に立地する都市が5市あることになっております。しかも、北上山地の中央に位置する市にあってはワーストテンとなっており、憂慮すべきところであります。それらの都市のすべては、地域産業の衰退によって大幅に人口が減少して地域経済が落ち込んでいることが最大の原因であります。ならば、47都道府県中、岩手県はどの位置にあるかを挙げてみますと、経常収支比率31位、起債制限比率19位、財政力指数ワースト11位、交付税依存度10位、公債費負担比率18位となっており、効率的な行財政運営と自主財源確保のための政策努力を図らなければならないということが明白であります。
 昨今、公共投資に対する風当たりが大変強くなっております。しかし、ここで重要なことは、3、300市町村のおよそ半分以上で公共投資が地域の最大の産業であり、すなわち雇用の機会であり、自治体の税源になっていることであります。人口の減少した過疎地域では、地元の雇用の大半が公共投資関連産業と役所や公立病院、学校の職員、公務員や団体職員などで占められているところもあるということなのであります。
 本県は、振興、発展を続けてきた国道4号線沿いと地域的におくれをとった北上山地、三陸沿岸がありますが、豊富な三陸自然海岸を有する岩手県の中央に横たわる、緑豊かで、多くの歴史や遺産、文化を持つ北上山地は、21世紀には環境の保護、保全、再生を推進していくべき場が備わっていると考えるものであります。知事が県政推進方針で掲げられた環境との共生社会の形成を実践する場が北上山地であります。よく言われる日本人の自然と心のふるさとというような表現が当たっていないとは言いませんが、最も具体的な日本の生きている自然と人間の博物公園、すなわち21世紀における多自然型居住の理想郷として位置づけて、国内にその存在価値を認めさせていくことが大切であり、その理念と信念を持って、豊かで暮らしやすい都市づくりや地域づくりを実現させるプロジェクトが展開されなければなりません。
 北上山地の振興についてどのようなお考えか、次からは具体的な項目によって質問をしますが、まず、さきに述べたことへのお考えがあればお伺いいたします。
 あわせて、新しい岩手県総合計画策定の中で、北上山地の課題解決のためにどのような姿勢で臨んでおられるかをお伺いいたします。
 特に、国の新しい全国総合開発計画では、新国土軸構想に関連して、太平洋沿岸から日本海沿岸へと岩手、秋田を結ぶ地域連携軸として取り上げられていますが、20年以上も前に構想された北上山系開発計画の中核とも言うべき大規模林業圏開発は、当時の53市町村、実に県土の80%を対象とするものであり、その根幹事業の大規模林道は、今日、自然との調和という観点から県民の関心を集めているところであります。これは、国道340号とあわせて、県土の新しい大動脈の役割を果たす可能性を十分に持っているものであります。
 そこで、新しい総合計画では、この大動脈を北上山系縦断新県土軸として位置づける考えはないでしょうか、知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、農業の振興策についてお伺いいたします。
 昭和36年に農業基本法が制定され、食糧不足の解消、農業の近代化、そして所得倍増、国内の資源不足を解消するための国際分業論が進められて40年近くになります。我が国は、国際社会の第一人者としてその役割を果たすまでに成長しました。農業基本法をつくり、国際分業論を唱え、その重要な役割を担った人物は、東畑清一という私の母校の理事長でありました。国際社会の一員として一翼を担うためには、農産物の自由化は避けて通ることのできない課題となることを力説されました。が、しかし、大きな流れや大きなうねりにただ流される人間や指導者になってはいけない。流れにさお差す知恵と勇気も必要であることも教わりました。確かに、大洪水を防ぐために人間はダムをつくり、地域の生活を守るという知恵を持っております。この考えから日本の農業を見詰めたとき、地域農業や農村を守るという思想も指導者もなく、日本の工業社会化やバブル経済に国民の目が向けられていたと思うものであります。
 まず、第1の質問は、再編された農業改良普及センターの普及活動のあり方と担い手育成についてであります。
 県では、平成10年4月の農政部機構改革にあわせ、農業改良普及センターも大幅に組織再編を行ったところでありますが、いま一つその新しい活動の姿が見えないという現地の声があります。かつて自転車で各部落やら農家を回りながら技術や経営相談に快く応じていた当時の普及活動を私は知っているだけに、今日の農業改良普及センターの活動に物足りなさを感ずるわけであります。
 本来、農業改良普及という役割は、農業の技術指導や経営指導はもちろんでありますが、古来から営々として続いてきた農村の持つ互助の精神や心の豊かさの高揚、また、逆に貧しさやむだや見えなどの生活改善に果たすべき二つの役割があると私は思っております。しかしながら、今日の農業・農村を取り巻く環境は、農業労働力の減少や高齢化及び農業の国際化など大きな課題が山積しており、これらの問題解決に普及活動の役割が期待されているところであります。最も重要な役割は、農村社会の再構築をするという目標にあると思います。
 そこでお伺いいたしますが、本年度の農業改良普及センターの組織再編によって、県ではどのように農業・農村の普及指導活動を展開しようとしているのか、普及活動のあり方についてお伺いいたします。
 また、農業の担い手が減少している今日、県では農業担い手中長期ビジョンを昨年度末に策定し、年間200人規模の後継者を育成するとしておりますが、今後どのように推進していこうとしているのか、その戦略についてお伺いいたします。
 第2の質問は、各地域の作目の産地づくりが経済活動に即応していないということであります。
 例えば、東京市場を想定した場合、県南と県北とでは市場までの運賃に差が出ることは明らかなことであります。それは農家の手取り額に大きな影響を及ぼすことになります。県内一律に同一作目を推奨する今までの指導は改めるべきであります。まして農産物の価格安定対策事業を充実させ、最近報道されている所得補償方式を取り入れるとするならば、各地域の産地づくりのメニューは重要な政策課題であると考えます。
 北上山系開発によって広大な草地面積を持ちながら、畜産の自由化によって一大畜産県を目指した夢は挫折しましたが、今求められている農業は、安全で健康によい、農薬や化学肥料に頼らない有機農業であり、低コスト農業の実現であります。戦後、主食である米づくりを中心にして米プラスアルファー方式の農業を推進してきたのでありますが、今では第1種、第2種兼業農家に定着し、本来の農業振興とはかけ離れたものとなっております。ここで方針の変換を求めたいことは、畜産プラス園芸という農業方針に改めることであります。それによって北上山系開発で改良した広大な草地が生かされ、国民に求められている安全で健康によい有機食糧の供給県として不動の地位が築かれるのではないかと思いますが、御所見をお伺いいたします。
 グリーン・ツーリズムについても触れておきます。
 我が国全体として、大都市を中心とする都市型ライフスタイルの問題、すなわち都市型犯罪、通勤地獄、ごみ問題、教育問題等が顕在化する中で、自然、ゆとり、落ち着き、人間性などをキーワードとしたより望ましいライフスタイルを志向する動きが始まっていることは皆様承知のことであります。こうしたことから、今後、岩手は、日本の原風景とも言うべき豊かな山里の暮らしを21世紀に向けた自然回帰、人間尊重、環境共生型の望ましいライフスタイルのモデルとして全国に向けて発信していく役割があると思います。そこでグリーン・ツーリズムという発想が生まれてきたのでありますが、推進をしていく中で、消防法、旅館業法、保健所との関連など、多くのクリアしなければならない問題があると聞いておりますが、受け入れ側の態勢づくりも相応の負担があると思いますが、グリーン・ツーリズムの推進方策について伺います。
 次に、観光行政について質問します。
 岩手県は、海、山、川、田園等のバラエティーに富んだ自然資源を有しており、県土には日本を代表する四季折々の美しい風景、景観が凝縮されており、このような自然資源や風景や景観は、いろいろのタイプのさまざまな観光活動を展開していく上で大きな資産であります。しかしながら、大都市圏から遠隔地にある上、広大な県土であり、多様な観光資源を有効に生かすことができにくいため、観光の入り込み客数の推移は伸び悩んでいる状況にあります。バラエティーに富んだ自然資源、自然景観の存在自体が岩手最大の観光資源であるとの認識から、周遊や滞在に重点を置いた交流型の観光振興を実現していくための戦略が必要であると考えます。
 振興プロジェクトで提言するとするならば、一つには、ウインタースポーツだけでなく、雪と共生した生活が営める長期滞在型の保養地があってもいいのではないかということ、二つには、海と山地景観をセットで周遊できるような施設の整備がなされていいのではないかということ、三つには、新緑、紅葉を最大限楽しめるような森林滞在型リゾートの施設の整備がなされていいのではないかということ、四つ目には、岩手の母なる大河北上川を観光資源として活用できないかということ、これらの観光資源が情報ネットワークを活用して観光宣伝されたとしたならばその効果があらわれること大であると思いますが、いかがでしょうか。
 県内それぞれの自治体が我が市、我が町、我が村の独自の観光宣伝をし、競争し合いながら努力している姿には頭の下がる思いがします。が、しかし、いずれも単発的であって、通年型の観光材料になっていないところに問題があるのではないでしょうか。県内の横軸、縦軸を詳細に調査して、自然との共生社会を目玉に据えて、それぞれの地域に残る自然遺産、歴史遺産、文化遺産、産業遺産等のマップ化を図り、観光宣伝をし、交通手段の整備とあわせて県が施策の推進をすることが重要と考えますが、御見解を賜りたいと思います。
 次に、介護保険制度についてお伺いいたします。
 自治体の新たな役割として、公的介護保険が2000年に導入されます。介護保険は、自治体にとって保険料徴収に伴う事務コストや新たな人件費、さらに保険証の発行事務など運営コストがかかります。平成7年度における介護費用はトータルで2兆2、000億円程度と言われており、消費税でほぼ1%分と聞いているのであります。トータルの国民負担が変わらないのであれば、消費税で徴収して、それを市町村の高齢者人口に沿って配分するような方法を考えてもよかったのではないかとする自治体の長も多くいると聞いております。事務の効率化、職員の削減などを迫られている自治体にとっては頭の痛い課題であることに変わりありません。大幅に人口が減少して地域経済が衰退し、税収の足りない自治体にあっては、特に高齢者人口も多く、わずかばかりの年金を頼りに生活しているというのも実態としてあります。国民健康保険の滞納者も多くあるという現実の中で、市町村、被保険者とも財政的にさらに厳しい事態に直面する可能性があるのではないかと危惧されるところであります。現在、福祉サービスの対象となっている方々が新しい制度でもし介護認定されなかった場合、市町村は単独で財政負担しても継続せざるを得ない状況が生ずることは容易に想定されます。
 そこでお伺いしますが、この制度で認定されなかった場合どうなるのか、また、経済的に恵まれない被保険者や交付税依存型の財政力の弱い市町村対応など、それぞれの負担軽減策があってしかるべきと考えますが、御高見をお伺いいたします。
 次に、教育行政についてであります。
 学校教育が始まって小学校で120年、新学制が発足して新制中学となって50年、旧制中学を含め、高校教育が始まってから早いところで100年と、長い歴史の中で教育に熱心であった岩手県は、日本の歴史に残る多くの逸材を育て上げてきたところであります。それぞれの学校が地域の文化の殿堂として校風を掲げ、伝統をつくり上げて21世紀に向けてさらなる躍進を図ろうとする教師の皆さんや子供たちと地域住民の熱意と希望が広がっていく思いが私には伝わってきます。振り返ってみるとき、明治、大正、昭和、平成と4代にわたって行われた教育は、それぞれの時代の持つ世相の影響を強く受けたとしても、学ぶ者の心の励精さは今も昔も変わっていないと思います。特にも太平洋戦争終了後の荒廃した国家の中で、食糧難に耐えながらの勉強や運動は、今は貴重な人生体験として心の中に生き続けており、苦しみに耐え抜く大きな原動力となっていることも確かであります。
 今ここで取り上げたい問題の一つは、飽食の時代と言われる中で学校給食を続けていることであります。学校給食の原点は欠食児童の救済であり、栄養不足の補給というものであったと思っております。それがいつの間にか教育の一環であるなどと言われておりますが、全生徒が同じものを食べることが教育とどうかかわりを持つのか、疑問を抱いているのは私だけではありますまい。親子の愛情、兄弟愛、家族のきずな、このことの原点は、家族全員で食卓を囲み、親のつくった愛情のこもった食事を食べて暮らすことにあるのではないでしょうか。ただ単に働く女性がふえて家族の面倒が見切れないからなどという理由で学校給食を続けているとしたならば家庭に戻すべきであります。職場の勤務時間も短縮されて、週40時間以上働くな、働くなの大合唱であります。弁当をつくり、親子の愛情を呼び戻すことが今求められている最大の答えと考えるものであります。学校給食の是非も含め、御見解をお伺いします。
 問題にしたい二つ目は、戦前の全体主義教育から一転して自由主義国家と民主主義教育という展開に戸惑う教育界であったことも確かであり、今なお理想と現実の矛盾する中で実験を続けている現状であります。戦前に比較して最たる教育の基本理念であったはずの自由、言いかえれば義務と権利ということや、平和、愛と勇気ということが実践され、教え込まれてきたかを考えてみると、経済復興を旗印に掲げる国家の理念に傾注し過ぎた嫌いがあったと思うことと、束縛から解放されただけの自由と民主主義国家であったと反省を迫られる思いがするのであります。特にテレビ報道などに映し出される残虐な事件を見るにつけ、豊かさとは裏腹の理性のなさに愕然とするところであり、教育の果たす役割の重要さを痛感するところであります。豊かで富める黄金の国ジパング、それが今日までの国家の理想であり、教育界もその一翼を担ってきたとするならば、黄金を心にかえて21世紀に申し送りたいと思うのでありますが、御所見をお伺いいたします。
 三つ目は、高校教育のあり方について伺います。
 生徒数の減少によって高校の再編計画が話題となっております。教育を数や経済的論理から発想したということは、さきにも述べた明治、大正、昭和の初めまでありません。教育の姿勢で最も重要視しなければならないのは、知事の演述で述べられている実践、実学の人材の育成にあるとのこの考えに協調するものであります。小規模校であっても、地方の時代、自治体主権の拡大が叫ばれている今こそ独自性を持った高校づくりが必要なのではないでしょうか。規模は小さくとも、そこには社会に出て即実践のできる生徒を育成できる情熱のあふれる教師と元気のいい子供たちが切磋琢磨している姿こそ最高の教育であり、単に経済効果や管理面のみの統廃合は教育の本質ではないと考えますが、御所見を伺いたいと思います。
 次に、道路網の整備について質問いたします。
 秋田、釜石を結ぶ高速横断道も先が見えてきたと言ってもいいかもしれませんが、地元住民にとっては一日も早い完成をと願う気持ちには変わりありません。遠野には国道283号、340号の2路線が東西南北の方向に走っておりますが、この国道は住民にとって極めて重要な意味を持っており、往路としては必ず利用しなければならない路線であります。それだけに、その整備については関心も高く、要望も強いことから、一日も早い整備が望まれているところであります。
 そこで、まず、横断道の今後の見通しについてお伺いいたしますし、それに並行して改良される国道283号の仙人峠道路及び上郷道路の改良の見通しについてもあわせてお聞かせ願います。
 さらに、340号の土淵地区の工事着工はいつの時点から始めるのかもお聞きいたします。
 特に、340号のうち、川井村、国道106号に接続する立丸峠のトンネル化について知事にお伺いいたします。
 近年、大きな話題となってきた立丸峠のトンネル化は、私の市議当時からの陳情項目でもあり、息の長い運動の必要なことは承知の上であります。新しい総合計画の中に、北上山系を縦断する道路網の整備、そして、新県土軸としての提起もしてまいりました。立丸峠のトンネル化を重点施策にぜひ取り入れていただき、この地域の長年の夢にこたえてほしいと思うわけでありますが、御見解をお伺いいたします。
 以上、住みよい豊かな北上山地にしていただくことを切に願い、質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 上澤義主議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、新しい総合計画における北上山系地域の位置づけ等についてお尋ねございましたが、この北上山系地域は、多様な自然や特色ある山村風景、あるいは神楽など貴重な民俗芸能や遠野物語に代表される特色ある地域文化などが、日常生活の中に溶け込みながら、時代を越えて着実に受け継がれてきている地域であると、このように考えております。
 これまで、我が国の経済発展の過程で多くの地域におきまして、残念ながら、豊かな自然や美しい景観、伝統文化が失われてきている中にございまして、北上山系地域が継承してまいりましたゆとりある生活空間は、人と環境との望ましいかかわりを重視した新しい生活様式を実現する場として、21世紀において全国に誇り得るフロントランナーとなる可能性があるものと、このように考えております。このため、北上山系地域におきましては、豊かな自然環境やうるおいのある人間関係の上に、地域内外の交流・連携を進めることによりまして、単に物質的な豊かさのみならず、精神的・文化的豊かさこそを享受し得る、人と自然が調和した地域社会の創造を目指していくことが重要であると考えておりまして、新しい総合計画の策定においても、そのような観点からの検討を進めているところでございます。
 特に、産業面につきましては、基幹産業であります農林業の振興に加えまして、地域にある農林産物を核として、人々の技術・技能などの資源を活用した複合的産業活動の展開を図りますほか、豊かな自然を生かしたグリーン・ツーリズムなどの積極的な推進によりまして、新たな地域産業の振興に努めてまいりたいと考えております。
 また、大規模林道等の新県土軸に関する御提言についてでございますが、新しい全国総合開発計画におきましては、効率的な交通・情報通信基盤のみならず、それらを活用した人、物、情報の活発な交流や生活、産業、文化などの諸活動が広域的に営まれる圏域、あるいはこうしたものの軸状の連なりが、国土軸、地域連携軸として提案されているところでございます。新しい総合計画におきましても、御提言の趣旨を参考とさせていただきながら、従来の行政単位の枠を越えてさまざまな分野、レベルでの交流・連携が活発に行われるよう、多様な圏域や圏域同士のつながりについての検討を進めてまいりたいと考えております。
 次に、国道340号の立丸峠のトンネル化についてでございますが、国道340号は、陸前高田市を起点といたしまして、遠野市や川井村を経由して青森県の八戸市に至る路線で、内陸部の国道4号と、そして沿岸部の国道45号の間を南北に縦断いたしておりまして、北上山系の各地域間の交流・連携と自立した地域社会の構築のためには、必要不可欠な路線となっているわけでございます。これまで、遠野市の赤羽根峠や川井村の江繋地区などで交通隘路区間の解消を図りまして、引き続き現在、陸前高田市や新里村などで路線の整備促進に努めているところでございます。この中で、遠野市と川井村にまたがっております立丸峠は、幅員が狭い、また急カーブが連続する未改良区間であることから、安全で円滑な交通確保を図るためには抜本的な整備が必要でございます。これまでの私どもの調査の結果を踏まえますと、この区間は長大トンネルが必要な大規模事業となる予定でございます。現在の厳しい財政環境下では、事業のより重点化・効率化が求められていることから、トンネル化による整備につきましては、地域性を考慮して今後策定される道路整備プログラムの中で慎重に検討してまいりたいと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承をお願いいたします。
   〔農政部長佐藤徳兵衛君登壇〕
〇農政部長(佐藤徳兵衛君) まず、農業改良普及センターの普及活動のあり方についてでありますが、このたびの再編は、これからの普及事業に求められる、高度かつ専門的な技術・経営の指導要請や多様化する農政推進上の諸課題にも的確に対応できるよう、活動体制を整備したものであります。再編後のセンターにおきましては、地域地域の実情や農業の発展方向に沿って意欲的に経営改善に取り組む農業者や、圃場整備等を契機として効率の高い営農システムを構築しようとする生産組織、園芸の産地化を図ろうとする地域などを重点対象として、それぞれの目標実現に向けて計画的な普及指導活動を展開しております。
 また、農村に住む人たちが、生きがいを持てるような、夢、ゆとり、豊かさのある生活の実現や、若者が誇りを持って定住できる魅力ある農村社会を形成することも重要な課題でありますので、農村生活環境の整備に向けた機運の醸成や中山間地域の活性化に向けた取り組みに対し、積極的に支援・指導しているところであります。
 申すまでもなく、農業改良普及事業の基本は、人づくり、組織づくり、地域づくりでありますので、今後におきましても、農協や市町村等との連携のもとに、地域農業の動向や農業者の要望等をお聞きしながら、きめ細かな普及活動に努めてまいる考えであります。
 次に、農業担い手育成の戦略についてでありますが、岩手県農業担い手育成中長期ビジョンの推進に当たりましては、施策の対象を、児童生徒が農業に対するあこがれを形成する段階、高校生、大学生等が職業として農業を選択する段階、就農に必要な技術、資金、農地等の準備をする段階、就農し、経営管理技術を高めながら経営自立するまでの4段階に区分し、それぞれの段階に応じた適時適切な対策を講ずることとしております。今年度はこうした対策を具体的に推進するため、各市町村が担い手の実情のもとに、新規就農者の育成目標人数を設定し、この目標達成に向けた実行計画を策定するよう指導しているところであります。今後におきましては、この実行計画に基づいて市町村、農業団体等と一体となり、本県農業の振興を図るため、新規就農者の育成確保に向け積極的に取り組んでまいる考えであります。
 次に、畜産プラス園芸方式による農業の振興についてでありますが、本県農業の特性を考えますと、広大な草地を基盤とする酪農や肉用牛、冷涼な気象条件を巧みに活用した高原野菜、さらには、全国でもトップクラスの良品質な米など、特色のある産地が各地で形成されてきております。また、畜産と耕種との連携による健康な土づくりなど、消費者が求める健康によい農産物を生産できる恵まれた諸条件を備えているところであります。このようなことから、本県においては、適地適作を基本とし、平場においても中山間地域においても、それぞれの地域の特性を踏まえて、低コスト高品質な畜産物の生産や地域に適合した作物の導入拡大による園芸産地の形成を一層進めるなど、米、園芸、畜産の三本柱による、収益性が高く体質の強い地域農業の確立に向けて努力してまいりたいと存じております。
 次に、グリーン・ツーリズムの推進についてでありますが、グリーン・ツーリズムは、農山漁村の豊かな自然や心温まる人情、郷土料理や伝統文化などに触れながら、心のゆとり、生きがいの実感などを求める都市住民の間で関心が高まってきている一方、農村地域にとっては、地域の活性化を図る有力な手段の一つとして期待されているところであります。このようなことから、昨年の6月、市町村、農林漁業団体、旅行業者など70団体から成る岩手県グリーン・ツーリズム推進協議会を組織し、グリーン・ツーリズムを強力に推進することとしているところであります。
 グリーン・ツーリズムの推進に当たりましては、人材の育成や多様な体験メニューの整備、都市住民の受け入れ拠点となる施設の整備が重要でありますが、とりわけ体験民宿の開業に当たりましては、各種の法規制に合致させるための改築に多額の費用を要するなど、さまざまな問題が横たわっております。こうした状況を考えますと、各地域に既にある集会施設を活用し、水洗化や宿泊機能の改善、パソコンによる情報提供機能、直売施設等も備えるなど、農家負担を極力軽減できる受け皿づくりなどを進めるとともに、今年度新たに受け入れマニュアルの作成や農林漁業体験インストラクターの育成を行うなど、ハード、ソフト両面にわたって受け入れ条件づくりの取り組みを支援してまいりたいと考えております。
   〔商工労働観光部長小野寺修君登壇〕
〇商工労働観光部長(小野寺修君) 観光行政についてでありますが、お話のありました雪と共生した生活が営める長期滞在型や自然に親しむ森林滞在型観光などは、今後の観光振興を図る上で重要な視点であると考えております。県といたしましては、御提言の一部を取り込んだものとして、平成9年度から新しい旅推進事業によりまして、県内を沿岸部の魚彩王国、県南部の黄金王国、県西部の湯雪王国、そして県北部の穀彩王国、この四つの広域的な地域に区分をし、その地域ごとに、市町村や地元関係者と一体となって、新たな観光資源の発掘、周遊型や滞在型観光ルートの設定、地域提案型旅行商品の開発などを推進しているところであります。
 具体的には、四つの王国ごとに、新幹線主要駅や花巻空港を起点とし、温泉や体験観光施設等をめぐる周遊型観光ルートを設定するとともに、これまでなかった新しいものとしましては、初夏の濃緑な自然景観を活用する、グリーンシーズンを観光客誘致の重点的な期間と位置づけ宣伝強化をしていることや、北上川、馬淵川の源流体験、冬期間におきましても、北上市大堤での白鳥の餌づけ体験など、新たな観光資源を盛り込んだ旅行商品を開発いたしております。また、首都圏等における情報発信を効果的に行うため、テレビ、新聞、ポスター、電車等の車内吊り広告を初め、インターネット等のニューメディアを活用した宣伝事業を展開しているところであります。
 さらに、最近の観光行動は、小グループや家族単位で、自然、歴史、温泉、花などのテーマ性を持った旅が志向されていることから、本年度には、これらのテーマ別観光パンフレットを作成するなど、きめ細かな観光情報の提供も行うことといたしております。
 また、交通アクセスにつきましては、JRやバス業界等との連携を強化するとともに、小グループや家族単位の旅にも対応できるよう、周遊型観光ルートには、会員バスや観光用タクシーを運行することといたしております。
 今後におきましても、御提言の趣旨を踏まえ、さらに観光需要に対応できるよう、本県の特色を打ち出した観光資源の発掘と効果的な観光情報の発信などについて、地域と一体となって積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
   〔保健福祉部長緒方剛君登壇〕
〇保健福祉部長(緒方剛君) 介護保険制度についてでありますが、要介護と認定されない被保険者については、介護保険による給付サービスの対象とならないことから、県としては、これらの方々が地域で安心して暮らせるよう、在宅介護支援センターや市町村保健センターなどによる相談・援助、地域の社会福祉協議会などによる食事サービス等の生活支援、ボランティア団体による援助などの地域保健福祉活動を積極的に支援してまいりたいと考えております。
 次に、低所得者の保険料負担の軽減についてでありますが、この制度では、低所得の高齢者の方々については、基準となる保険料の半額または4分の1を軽減する配慮がなされる予定と聞いております。また、市町村の財政負担の軽減については、後期高齢者の比率が高い市町村や65歳以上の被保険者の所得水準が低い市町村については、国の交付金による保険財政の格差を調整することとなっております。さらに、保険料未納により不足が生じた場合には、県が設置する財政安定化基金から、赤字相当額の2分の1を交付することとされております。
 他方、県の支援とともに、国に対して、この制度が将来にわたって安定的に運営されるためにも、市町村の負担が過重とならないように、的確な財源措置を講ずるよう、引き続き要請してまいりたいと考えております。
   〔土木部長大石幸君登壇〕
〇土木部長(大石幸君) 道路網の整備についてでありますが、まず、東北横断自動車道の釜石-花巻間につきましては、既に事業着工中の東和-花巻間は、日本道路公団において、新道路整備5カ年計画中の完成供用を目指しているほか、平成8年度に整備区間に格上げされた宮守-東和間は、早期に施工命令を受けることが重要と考えておりまして、残る釜石-宮守間の整備計画格上げについても、国、道路公団等に強く働きかけてまいるところであります。
 次に、国道283号の仙人峠道路についてでありますが、国の直轄代行事業と県事業による自動車専用道路として平成4年度より事業に着手し、重点的に整備を進めております。この工事は、仙人トンネルや秋丸トンネル等、大規模な事業であり、さらに未着工の長大トンネルもあることから、完成の時期は明確になっておりませんが、国に対して整備促進と早期完成を要望しているところであります。
 また、上郷道路は延長約6・7キロメートルのバイパス道路であり、平成8年度より事業化し、平成17年度の完成を目標にこれまで用地の買収等を進めてまいったところであります。今年度は、老朽化の著しい赤川橋のかけかえに着手する予定としており、今後とも地元の御協力を得ながら重点的な整備を図ってまいることとしております。
 また、国道340号の土淵地区の整備計画についてでありますが、現道は人家連捻地域で、歩道等の安全施設がなく拡幅は困難な状況にあることから、バイパスによる整備が必要な区間と考えております。同地区は、現在圃場整備の計画があると伺っており、この計画と整合を図った土地利用が望ましいことから、地元の御理解をいただいて、計画が調整された後に整備に着手すべく検討しているところであります。
   〔教育長大隅英喜君登壇〕
〇教育長(大隅英喜君) まず、学校給食についてでありますが、昭和23年の文部省通達で、学校給食は教育の一環であり、学童の体位向上や家庭における食生活の改善を図る教育事業とされております。また、現在の学習指導要領においては特別活動に位置づけられ、食事という生きた教材を通して、正しい食事のあり方や好ましい人間関係を体得することをねらいとした教育活動として進められております。殊にも今日、食生活が豊かになったとは言われるものの、カルシウム不足や脂肪等の過剰摂取など、偏った栄養摂取による生活習慣病の増加や若年化など、食に起因する新たな健康課題が増加してきており、学校給食は、生涯を通じた健康づくりの観点から、栄養バランスのとれた食生活や適切な衛生管理が実践されるよう指導することが求められております。
 食生活の原点は家庭であり、家族がそろって和やかに食事をすることが最も理想的な姿であることは論を待ちませんが、命の源である食に関する指導が学校教育活動を通して行われ、給食の場で実践化され、仲間とともに楽しく和やかな食事をすることは、生きる力や心を育てる教育の観点からも大切なものであると考えております。
 次に、心の教育についてでありますが、近年の経済社会の急速な発展により、豊かな社会が実現した反面、心の豊かさの欠如等が指摘されており、さらに、そうした社会の急激な変化に加え、核家族化、地域の教育力の低下等を背景に、さまざまな憂慮すべき事件が起こっております。
 中央教育審議会から昨日、幼児期からの心の教育のあり方についての最終報告が出され、子供たちに正義感・倫理観や思いやりの心など豊かな心をはぐくむため、学校、家庭、地域や大人たちが、それぞれもう一度足元を見直すこと、今なすべきことに取り組むこと、次世代を育てる心を失う危機を乗り越えていくこと等が提言されています。県教育委員会といたしましても、このような国の動向やこれまでの本県の実践研究等を踏まえながら、心の教育の核となるべき道徳教育の充実により、生命の尊重、思いやりの心、社会規範意識、さらには人としての生き方をしっかり身につけさせるとともに、学校、家庭、地域が一体となって子供たちを健やかに育てていく環境づくりに取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、高校教育のあり方についてでありますが、申し上げるまでもなく、高校時代は自立した個の確立と自分の進路をじっくりと模索する重要な時期であることから、各高校とも、生徒の実態や進路希望等に応じて特色ある学校づくりに取り組んでいるところであります。しかしながら、今日、社会の変化や生徒の進路志望の多様化などが一層進む中で、これからの高等学校のあり方について検討を進める必要があり、現在、県立高等学校長期構想検討委員会を設置して審議いただいているところであります。その中で、学校規模については、豊かな人間関係に恵まれた活力ある環境の中で、生徒一人一人がその個性や能力を最大限に伸ばすという観点から検討が進められているところでありますが、小規模校では、きめ細かい生徒指導を行いやすいことや生徒相互及び生徒と教師のコミュニケーションがとりやすいことなどのメリットがある反面、生徒間の切磋琢磨の機会に乏しいことや教員配置の関係等から多様な教育課程が編成しがたいなどのデメリットも指摘されております。県教育委員会といたしましては、検討委員会の報告を踏まえ、地域の特性等をも考慮しながら、適切な再編成計画の策定に取り組んでまいりたいと考えております。
〇2番(上澤義主君) 一つ、商工労働観光部関係で要望しておきたいと思うことは、大きな目標がないのではないかと、そういうことで一言申し上げておきたいと思います。
 岩手県は、やはり自然と人間の博物公園であるという大きな目標を持つべきであり、さらに、多自然型居住の理想郷であるという、そういう大きな目標を持って観光宣伝に向けていくということが私は必要だと、こう思っているところであります。そういう意味で、そういったことも考慮に入れながら、今後観光計画を樹立していただきたいとお願いを申し上げて終わります。
〇議長(那須川健一君) 次に、千葉伝君。
   〔9番千葉伝君登壇〕(拍手)

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